(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-22
(45)【発行日】2022-03-30
(54)【発明の名称】抵抗溶接機用電極装置
(51)【国際特許分類】
B23K 11/14 20060101AFI20220323BHJP
B23K 11/30 20060101ALI20220323BHJP
【FI】
B23K11/14 310
B23K11/30 311
(21)【出願番号】P 2018080230
(22)【出願日】2018-04-02
【審査請求日】2021-02-25
(73)【特許権者】
【識別番号】392014760
【氏名又は名称】新光機器株式会社
(72)【発明者】
【氏名】蕗澤 武夫
【審査官】岩見 勤
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-226750(JP,A)
【文献】実開昭63-41376(JP,U)
【文献】実開昭62-92080(JP,U)
【文献】特開昭60-99490(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 11/14
B23K 11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項2】
前記挿入溝は、前記切欠き部の開口と同方向の側方に開口したことを特徴とした請求項1記載の抵抗溶接用電極装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークに溶接ナットを溶接するための抵抗溶接用電極装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来この種の電極装置として、特許文献1に示すように、ガイドピンを備えた下部電極に、ガイドピンにてワークと溶接ナットを保持し、上部電極を下降してワークに溶接ナットを溶接するものがあるが、このようなものでは、略コ字形に折り曲げられたワークの対向片の対向面の各々に溶接ナットを溶接する場合、
図6に示すように、上部電極51の下方に一方の側方を開口した四角形の切欠き部51aを形成し、略コ字形に折り曲げられたワーク52の一方対向片52aの対向面に溶接ナット53を溶接したのち、下部電極54にガイドピン55によってワーク52の他方対向片52bと溶接ナット53を嵌め込むとともに、溶接ナット53を溶接した一方対向片51aを上部電極51の切欠き部51aに挿入して下部電極54にワーク52と溶接ナット53を保持し、上部電極51を下降して、ワーク52の他方対向片51bの対向面に溶接ナット53を溶接していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記のものでは、一方対向片52aの対向面に溶接ナット53を溶接できても、他方対向片52bの対向面に溶接ナット53を溶接する場合、対向片52a,52b間の間隔が狭いと、一方対向片52aの対向面に溶接した溶接ナット53が上部電極51に当たり、上部電極51切欠き部51aに挿入できず、ワーク52の他方対向片52bの対向面に溶接ナット53を溶接することができないという問題があった。
【0005】
本発明は、前記の問題を解決し、コ字形に折り曲げられたワークの対向片の対向面の各々に溶接ナットを溶接する場合、一方対向片の対向面に溶接ナットを溶接できれば、他方対向片の対向面にも溶接ナットを溶接することができる抵抗溶接用電極装置を提供することを目的になされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するためになされた本発明の抵抗溶接用電極装置は、上部電極とガイドピンを備えた下部電極とからなる抵抗溶接用電極装置において、上部電極の下部に一方の側方が開口した切欠き部を形成するとともに、この切欠き部の下部水平片の上部に、上部の切欠き部側が開口し、ワークに溶接された溶接ナットが挿入される挿入溝を形成したことを特徴とするものである。
【0007】
前記挿入溝は、前記切欠き部の開口と同方向の側方に開口したものであることが好ましく、これを請求項2に係る発明とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1の発明では、上部電極の下部に一方の側方が開口した切欠き部を形成するとともに、この切欠き部の下部水平片の上部に、上部の切欠き部側が開口し、ワークに溶接された溶接ナットが挿入される挿入溝を形成したので、コ字形に折り曲げられたワークの対向片の各々の対向面に溶接ナットを溶接する場合、一方対向片の対向面に溶接ナットを溶接できれば他方対向片の対向面にも溶接ナットを溶接できる。
【0009】
請求項2の発明では、前記挿入溝は、前記切欠き部の開口と同方向の側方に開口したものであるので、ワークと溶接ナットの保持が容易にできる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施の形態におけて、ワークの一方対向片と溶接ナットをセットした状態を示す一部切欠き正面図である。
【
図2】
図1の溶接時の状態を示す一部切欠き正面図である。
【
図3】本発明の実施の形態におけて、ワークの他方対向片と溶接ナットをセットした状態を示す一部切欠き正面図である。
【
図4】
図3の溶接時の状態を示す一部切欠き正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の好ましい実施の形態について
図1乃至
図5に基づいて説明する。
【0012】
1は、下部に一方の側方である左側が開口した四角形の切欠き部1aを形成した上部電極であり、上部電極1の切欠き部1aを形成する下部水平片1bの上面には、左側と上面が開口した溶接ナット2の挿入溝1cが形成されている。即ち、挿入溝1cは切欠き部1aの開口と同方向と、切欠き部1a方向に開口している。
【0013】
3は下部電極であり、下部電極3の上面略中央には、ガイドピン4が突出している。
【0014】
5は略コ字形に折り曲げられたワークであり、ワーク5の両端の対向片5a、5bの略中央には対向片5a、5bに溶接される溶接ナット2に螺合されるボルト(図示しない。)の軸部が挿通する挿通穴5c、5dが形成されている。
【0015】
次に、ワーク5の対向片5a、5bの対向面に溶接ナット2を溶接する方法を説明すると、
図1に示すように、ワーク5の一方対向片5aの挿通穴5cと溶接ナット2のねじ穴2aを下部電極3のガイドピン4に嵌め込むとともにワーク5の他方対向片5cを上部電極1の切欠き部1aに開口より挿入し、ワーク5と溶接ナット2を下部電極3に保持させる。
【0016】
さらに、
図2に示すように、上部電極1を下降し、上部電極1を溶接ナット2に接触押圧させ、溶接電流を上部電極1、溶接ナット2、ワーク5、及び下部電極3に流し、ワーク5の一方対向片5aの対向面に溶接ナット2を溶接する。
【0017】
この後、ワーク5を電極装置から外し、180°回転して、
図3に示すようにワーク5の他方対向片5bの挿通穴5dと溶接ナット2のねじ穴2bを下部電極3のガイドピン4に嵌め込むとともに、溶接ナット2を溶接したワーク5の一方対向片5aを上部電極1の切欠き部1aに開口より挿入し、ワーク5と溶接ナット2を下部電極3に保持させる、このとき、上部電極1の切欠き部1aを形成する下部水平片1bの上面には、切欠き部1aの開口と同方向と、切欠き部1a方向に開口した挿入溝1dが形成されているため、一方対向片5aに溶接された溶接ナット2は挿入溝1dに挿入されるので、一方対向片5aに溶接ナット2を溶接できるワーク5であれば、下部電極3にワーク5の他方対向片5bと溶接ナット2を保持でき、ワーク5の他方対向片5bの対向面にも溶接ナット2を溶接できる。
【0018】
さらに、
図4に示すように、上部電極1を下降し、上部電極1を溶接ナット2に接触押圧させ溶接電流を上部電極1、溶接ナット2、ワーク5、及び下部電極3に流し、ワーク5の一方対向片5aの対向面に溶接ナット2を溶接する。
【0019】
以上のように、上部電極1の下部に一方の側方が開口した切欠き部1aを形成するとともに、この切欠き部1aの下部水平片1bの上部に、上部の切欠き部1a側が開口し、ワーク5に溶接された溶接ナット2が挿入される挿入溝1cを形成したので、コ字形に折り曲げられたワーク5の対向片5a、5bの各々の対向面に溶接ナット2を溶接する場合、一方対向片5aの対向面に溶接ナット2を溶接できれば他方対向片5bの対向面にも溶接ナット2を溶接でき、また前記挿入溝1cは、前記切欠き部1aの開口と同方向の側方に開口したものであるので、ワーク5の一方対向片5aの対向面に溶接された溶接ナット2は側方から挿入溝1cに挿入されるので、ワーク5と溶接ナット2の下部電極3への保持が容易にできる。
【符号の説明】
【0020】
1 上部電極
1a 切欠き部
1b 下部水平片
1c 挿入溝
2 溶接ナット
3 下部電極
4 ガイドピン
5 ワーク
5a、5b 対向片