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  • 特許-風洞装置の風路構造 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-22
(45)【発行日】2022-03-30
(54)【発明の名称】風洞装置の風路構造
(51)【国際特許分類】
   G01M 9/04 20060101AFI20220323BHJP
【FI】
G01M9/04
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2017251615
(22)【出願日】2017-12-27
(65)【公開番号】P2019117129
(43)【公開日】2019-07-18
【審査請求日】2020-10-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000168676
【氏名又は名称】株式会社コーアツ
(74)【代理人】
【識別番号】100102211
【弁理士】
【氏名又は名称】森 治
(72)【発明者】
【氏名】鴨 三範
【審査官】岩永 寛道
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-064156(JP,A)
【文献】特開2002-228542(JP,A)
【文献】特開2016-174940(JP,A)
【文献】特開2017-025767(JP,A)
【文献】特開2006-162310(JP,A)
【文献】特開平11-072414(JP,A)
【文献】特開2002-303563(JP,A)
【文献】特開2016-209570(JP,A)
【文献】特開2017-111057(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 9/00-10/00
A62C 13/76
A62C 31/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
風路内に送風手段を設けることによって該風路の途中に吹出口及び排気口を介して設けた試験室に空気流を発生させるようにした風洞装置の風路構造において、前記吹出口の開口面積が、試験室の空気流の流動方向と直交する面の面積より小さく形成されてなるとともに、該吹出口に、複数の金属多孔質部材を並設した金属多孔質部材の集合体を配設するようにしたことを特徴とする風洞装置の風路構造。
【請求項2】
風路内に送風手段を設けることによって該風路の途中に吹出口及び排気口を介して設けた試験室に空気流を発生させるようにした風洞装置の風路構造において、前記排気口の開口面積が、試験室の空気流の流動方向と直交する面の面積より小さく形成されてなるとともに、該排気口に、複数の金属多孔質部材を並設した金属多孔質部材の集合体を配設するようにしたことを特徴とする風洞装置の風路構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築設計(建物や建物集合体等の気流に関する実験や試験)や機械設計(自動車や航空機等の気流に関する実験や試験及びこれらに用いられるエンジン等の実験や試験)等において使用する風洞装置の風路構造に関し、特に、風路内に送風手段を設けることによって該風路の途中に吹出口及び排気口を介して設けた試験室に空気流を発生させるようにした風洞装置の風路構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車や航空機、これらのエンジン等の実験や試験を行うために、図5に示すように、風路1内に送風手段2を設けることによって該風路1の途中に吹出口3及び排気口4を介して設けた試験室5に空気流Aを発生させるようにした風洞装置の風路構造が使用されている(例えば、特許文献1~2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平11-64156号公報
【文献】特開2006-162310号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来の風洞装置の風路構造においては、排気口4側で発生する騒音を低減する手段を設けているが、吹出口3側で発生する騒音については、何ら対処されておらず、このため、試験室5に大きな流速の空気流Aを発生させる場合、すなわち、吹出口3から大きな流速の空気流Aを吹き出すようにする場合で、特に、吹出口3の開口面積が、試験室5の空気流Aの流動方向と直交する面の面積より小さく形成されているときに、吹出口3側で発生する騒音を低減する手段が要請されていた。
【0005】
また、排気口4側で発生する騒音を低減する手段についても、より高性能のものが要請されていた。
【0006】
本発明は、上記要請に鑑み、風路内に送風手段を設けることによって該風路の途中に吹出口及び排気口を介して設けた試験室に空気流を発生させるようにした風洞装置の風路構造において、吹出口側及び/又は排気口側で発生する騒音を低減する手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の風洞装置の風路構造は、風路内に送風手段を設けることによって該風路の途中に吹出口及び排気口を介して設けた試験室に空気流を発生させるようにした風洞装置の風路構造において、前記吹出口の開口面積が、試験室の空気流の流動方向と直交する面の面積より小さく形成されてなるとともに、該吹出口に金属多孔質部材を配設するようにしたことを特徴とする。
【0008】
また、同じ目的を達成するため、本発明の風洞装置の風路構造は、風路内に送風手段を設けることによって該風路の途中に吹出口及び排気口を介して設けた試験室に空気流を発生させるようにした風洞装置の風路構造において、前記排気口の開口面積が、試験室の空気流の流動方向と直交する面の面積より小さく形成されてなるとともに、該排気口に金属多孔質部材を配設するようにしたことを特徴とする。
【0009】
この場合において、前記金属多孔質部材を、複数の金属多孔質部材を並設した金属多孔質部材の集合体で構成することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の風洞装置の風路構造によれば、風路内に送風手段を設けることによって該風路の途中に吹出口及び排気口を介して設けた試験室に空気流を発生させるようにした風洞装置の風路構造において、前記吹出口や排気口の開口面積が、試験室の空気流の流動方向と直交する面の面積より小さく形成されてなるとともに、該吹出口や排気口に金属多孔質部材を配設するようにすることにより、吹出口や排気口に配設した金属多孔質部材は、空気流に対する抵抗が小さいため、空気流の流速を大きく低下させることなく通過させるとともに、空気流が吹出口から空気流の流動方向と直交する面の面積が急拡大する試験室に吹き出されるときに発生する騒音や、空気流が試験室から空気流の流動方向と直交する面の面積が急縮小する排気口に排気されるときに発生する騒音を低く抑えることができる。
【0011】
また、前記金属多孔質部材を、複数の金属多孔質部材を並設した金属多孔質部材の集合体で構成することにより、金属多孔質部材の能力(容量)を、吹出口や排気口の開口面積及び空気流の流量に対応したものに容易に設定することができるとともに、個別に金属多孔質部材の交換等を容易にできることから、保守を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の風洞装置の風路構造の吹出口の一実施例を示し、(a)は左側面図、(b)は正面断面図、(c)は右側面図、(d)は金属多孔質部材の拡大正面断面図である。
図2】本発明の風洞装置の風路構造の吹出口の変形実施例を示し、(a)は左側面図、(b)は正面断面図、(c)は右側面図である。
図3】本発明の風洞装置の風路構造の吹出口の変形実施例を示し、(a)は左側面図、(b)は正面断面図、(c)は右側面図である。
図4】本発明の風洞装置の風路構造の吹出口の変形実施例を示し、(a)は左側面図、(b)は正面断面図、(c)は右側面図である。
図5】風洞装置の風路構造を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の風洞装置の風路構造の実施の形態を、図面に基づいて説明する。
【0014】
図1に、本発明の風洞装置の風路構造の一実施例を示す。
この風洞装置の風路構造は、図5に示す従来の風洞装置の風路構造と同様、風路1内に送風手段2を設けることによって該風路1の途中に吹出口3及び排気口4を介して設けた試験室5に空気流Aを発生させるようにしたもので、吹出口3の開口面積が、試験室5の空気流Aの流動方向と直交する面の面積より小さく形成されてなるとともに、吹出口3に金属多孔質部材6を配設するようにしている。
【0015】
ここで、風路1は、循環路のほか、一端側から外気を取り込み、他端側から排気する一方向流路とすることもでき、これに応じて、送風手段2の配設位置も適宜設定することができる。
また、試験室5に導入する空気の温度や湿度を適宜調整する空気調和機(図示省略)を、例えば、吹出口3の手前の風路1に設置することができる。
【0016】
吹出口3に配設する金属多孔質部材6は、各種の金属多孔質部材を用いることができるが、気孔率が大きく(90%以上)、かつ、剛性の高く、形状保持性のある多孔質金属体、例えば、発泡樹脂にニッケル等の金属原料を電気メッキし、次にそれを熱処理することによって樹脂を除去することにより得られる、三角柱状の骨格が3次元に連なった網目状組織体からなる多孔質金属体を好適に用いることができる。
【0017】
吹出口3に金属多孔質部材6を配設する方法は、特に限定されるものではなく、ブロック状や板状の金属多孔質部材6を吹出口3に取り付けるようにするほか、例えば、図1(d)に示すような金属多孔質部材6を単独で吹出口3に配設したり、あるいは、本実施例に示すように、複数(7個)の金属多孔質部材6を並設した金属多孔質部材6の集合体として吹出口3に配設するようにすることができる。
この場合、金属多孔質部材6の目詰まりを防止するために、金属多孔質部材6の空気流Aの上流側にフィルタ部材(図示省略)を配設することが望ましい。
【0018】
吹出口3に複数の金属多孔質部材6を並設して配設する場合、吹出口3に複数の開口32を形成した隔壁31を取り付け、この隔壁31の開口32を設けた箇所に、金属多孔質部材6を配設するようにする。
【0019】
ここで、金属多孔質部材6は、一体構造の1つのブロック状や板状のもので構成するほか、図1(d)に示すように、中心部材61、周面部材62及び中心部材61と周面部材62の端面をカバーする端面部材63からなる分割構造のもので構成することができ、これらの部材は、リング部材64を介して、ボルト65によって隔壁31に取り付けるようにしている。
なお、図1(d)に示すものの場合、端面部材63の直径を、例えば、約100mmに設定し、直径約400mmの吹出口3に7個の金属多孔質部材6を並設するようにしている。
【0020】
金属多孔質部材6を構成する中心部材61、周面部材62及び端面部材63の空隙の孔径は、全体を均質な材料で構成するほか、気体が流通する方向に変化させた材料、より具体的には、気体が流通する方向に小さくした材料で構成することができ、例えば、本実施例においては、中心部材61の空隙の孔径よりも、周面部材62及び端面部材63の空隙の孔径が小さくなるような材料で構成することができる。
【0021】
そして、吹出口3に配設した金属多孔質部材6を、複数の金属多孔質部材6を並設した金属多孔質部材6の集合体で構成することにより、全体の金属多孔質部材6の能力(容量)を、吹出口3の開口面積及び空気流Aの流量に対応したものに容易に設定することができるとともに、個別に金属多孔質部材6の交換等を容易にできることから、保守を容易に行うことができる。
ここで、金属多孔質部材6の個数や配置は、吹出口3の開口面積及び空気流Aの流量に応じて適宜設定することができ、具体的には、図2に示す変形実施例のように、隔壁31を取り付ける金属多孔質部材6の個数や配置を適宜変更したり、図3図4に示す変形実施例のように、矩形をした吹出口3(ここで、隔壁31の開口32の形状は、円形(図3)や矩形(図4)に形成することができる。)にも、個数や配置を適宜変更して適用することができる。
【0022】
この風洞装置の風路構造によれば、吹出口3の開口面積が、試験室5の空気流の流動方向と直交する面の面積より小さく形成されてなるとともに、吹出口3に金属多孔質部材6を配設するようにすることにより、吹出口3に配設した金属多孔質部材6は、空気流Aに対する抵抗が小さいため、空気流Aの流速を大きく低下させることなく通過させるとともに、空気流Aが吹出口3から空気流Aの流動方向と直交する面の面積が急拡大する試験室5に吹き出されるときに発生する騒音を低く抑えることができる。
【0023】
ところで、この風洞装置の風路構造で用いた金属多孔質部材6は、開口面積が、試験室5の空気流の流動方向と直交する面の面積より小さく形成された排気口4にも適用することができる。
この場合、金属多孔質部材6は、排気口4のみに適用するほか、吹出口3及び排気口4の両方に適用することができる。
そして、排気口4に金属多孔質部材6を配設するようにすることにより、排気口4に配設した金属多孔質部材6は、空気流Aに対する抵抗が小さいため、空気流Aの流速を大きく低下させることなく通過させるとともに、空気流Aが試験室5から空気流Aの流動方向と直交する面の面積が急縮小する排気口4に排気されるときに発生する騒音を低く抑えることができる。
【0024】
以上、本発明の風洞装置の風路構造について、その実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明の風洞装置の風路構造は、風路内に送風手段を設けることによって該風路の途中に吹出口及び排気口を介して設けた試験室に空気流を発生させるようにした風洞装置の風路構造において、吹出口側及び/又は排気口で発生する騒音を低減することができるという特性を有していることから、建築設計(建物や建物集合体等の気流に関する実験や試験)や機械設計(自動車や航空機等の気流に関する実験や試験及びこれらに用いられるエンジン等の実験や試験)等において使用する風洞装置の風路構造に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0026】
1 風路
2 送風手段
3 吹出口
31 隔壁
4 排気口
5 試験室
6 金属多孔質部材
図1
図2
図3
図4
図5