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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-22
(45)【発行日】2022-03-30
(54)【発明の名称】メッシュ状シート
(51)【国際特許分類】
   D04H 3/007 20120101AFI20220323BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20220323BHJP
   C08L 53/02 20060101ALI20220323BHJP
   C08L 91/00 20060101ALI20220323BHJP
   D04H 3/16 20060101ALI20220323BHJP
【FI】
D04H3/007
C08J5/18 CEQ
C08J5/18 CET
C08L53/02
C08L91/00
D04H3/16
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2017052160
(22)【出願日】2017-03-17
(65)【公開番号】P2017186535
(43)【公開日】2017-10-12
【審査請求日】2019-11-29
(31)【優先権主張番号】P 2016071322
(32)【優先日】2016-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000104906
【氏名又は名称】クラレプラスチックス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】三輪 藍香
【審査官】鈴木 祐里絵
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-232246(JP,A)
【文献】特開2013-154498(JP,A)
【文献】特開2005-003019(JP,A)
【文献】特開平09-295382(JP,A)
【文献】特開2006-089546(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D04H1/00-18/04
C08J5/00-5/02
5/12-5/22
C08K3/00-13/08
C08L1/00-101/14
D03D1/00-51/46
D04B1/00-39/08
D04C1/00-7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、以下(a)および(c)、または(a)、(b)および(c)からなる樹脂組成物を含み、開口率が5~50%、0℃、30Hzにおける損失係数tanδが0.3以上であるメッシュ状シート。
(a)少なくとも2個のビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロック(A)と少なくとも1個の共役ジエン化合物を主体とし、かつイソプレン単独、またはイソプレンとブタジエンの混合物に由来する構造単位からなる重合体ブロック(B)とからなるブロック共重合体であって、イソプレン及び/またはブタジエンに由来する構造単位の3,4-結合単位および1,2-結合単位の含有量が50%以上であるブロック共重合体(a1)及び/または該ブロック共重合体の水素添加物(a2)、
(b)少なくとも2個のビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロック(A)と少なくとも1個の共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロック(B)とからなるブロック共重合体であって、イソプレン及び/またはブタジエンに由来する構造単位の3,4-結合単位および1,2-結合単位の含有量が45%未満であるブロック共重合体(b1)及び/または該ブロック共重合体の水素添加物(b2)、
(c)炭化水素系ゴム用軟化剤
【請求項2】
上記樹脂組成物が、(a)100質量部、または(a)+(b)100質量部に対し、(c)5~150質量部を含有することを特徴とする、請求項1記載のメッシュ状シート。
【請求項3】
(a)と(b)の質量比が(a):(b)=100:0~30:70である請求項1または2記載のメッシュ状シート。
【請求項4】
シートの形態が不織布である請求項1~3のいずれかに記載のメッシュ状シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制振性を有し、かつ通気性と伸縮性に優れたメッシュ状シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、制振性材料としては、熱可塑性エラストマーのスチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SIS)やスチレン-イソプレン-ブタジエン-スチレン-ブロック共重合体(SIBS)が使用されている。しかし、熱可塑性エラストマーにおいては、高い制振性をもつ材料は圧縮永久歪が大きく、制振性と圧縮永久歪を高いレベルでバランスをとることが困難である。近年、この制振性材料の圧縮永久歪を改善する方法が提案されている。
【0003】
例えば、SISの水素添加物及び/またはSISに、制振性に優れるスチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体及び/又はスチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体の水素添加物を添加する方法が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
更には、高温時の機械的強度や圧縮永久歪を改善する目的で、SISの水素添加物及び/またはSISにポリフェニレンエーテル樹脂を添加する方法が開示されている(例えば、特許文献2、3参照。)。
【0005】
一方、上記制振性材料の用途としては、家電製品、産業機器、自動車等が広く知られている。更に、スポーツ用品の靴のインナーソールや、バット・ラケットのグリップ、医療用品のコルセットや、サポーターへの展開が考えられる。
【0006】
しかしながら、上記制振性材料をスポーツシューズやコルセットなど人が着用する用途に使用する場合、通気性の悪さによって蒸れが発生する。また、インナー類では着用時に軽い力で伸長し、装着後は適度に締め付ける性能、すなわち伸縮性が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平11-012430号公報
【文献】特開2011-111499号公報
【文献】特開2010-024275号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明の目的は、制振性を有し、かつ通気性と伸縮性に優れた構造を有する、蒸れの発生しないメッシュ状シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、特定の分子構造を有する熱可塑性エラストマーに対し、軟化剤を配合した樹脂組成物を含む、特定の構造を有するメッシュ状シートは、制振性を有し、かつ通気性と伸縮性に優れることを見出し、本発明を完成した。
【0010】
すなわち本発明は、少なくとも、以下(a)および(c)、または(a)、(b)および(c)からなる樹脂組成物を含み、開口率が5~50%、0℃、30Hzにおける損失係数tanδが0.3以上であるメッシュ状シートである。
(a)少なくとも2個のビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロック(A)と少なくとも1個の共役ジエン化合物を主体とし、かつイソプレン単独、またはイソプレンとブタジエンの混合物に由来する構造単位からなる重合体ブロック(B)とからなるブロック共重合体であって、イソプレン及び/またはブタジエンに由来する構造単位の3,4-結合単位および1,2-結合単位の含有量が50%以上であるブロック共重合体(a1)及び/または該ブロック共重合体の水素添加物(a2)、(b)少なくとも2個のビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロック(A)と少なくとも1個の共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロック(B)とからなるブロック共重合体であって、イソプレン及び/またはブタジエンに由来する構造単位の3,4-結合単位および1,2-結合単位の含有量が45%未満であるブロック共重合体(b1)及び/または該ブロック共重合体の水素添加物(b2)、(c)炭化水素系ゴム用軟化剤。
【0011】
また本発明は、好ましくは、(a)100質量部または(a)+(b)100質量部に対し、(c)5~150質量部、さらに好ましくは、(a)と(b)の質量比が(a):(b)=100:0~30:70であることを特徴とする樹脂組成物を含むメッシュ状シートであり、より好ましくはシートの形態が不織布である上記のメッシュ状シートである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、制振性を有し、かつ通気性と伸縮性に優れた構造を有し、さらに蒸れの発生しないメッシュ状シートを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のメッシュ状シートは、(a)少なくとも2個のビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロック(A)と少なくとも1個の共役ジエン化合物を主体とし、かつイソプレン単独、またはイソプレンとブタジエンの混合物に由来する構造単位からなる重合体ブロック(B)とからなるブロック共重合体であって、イソプレン及び/またはブタジエンに由来する構造単位の3,4-結合単位および1,2-結合単位の含有量が50%以上であるブロック共重合体(a1)及び/または該ブロック共重合体の水素添加物(a2)、または前記(a)と(b)少なくとも2個のビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロック(A)と少なくとも1個の共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロック(B)とからなるブロック共重合体であって、イソプレン及び/またはブタジエンに由来する構造単位の3,4-結合単位および1,2-結合単位の含有量が45%未満であるブロック共重合体(b1)及び/または該ブロック共重合体の水素添加物(b2)、との混合物、(c)炭化水素系ゴム用軟化剤を含有した樹脂組成物を含み、さらに開口率が5~50%の構造を有する。
【0014】
<ブロック共重合体(a1)>
本発明に使用する(a)において、ブロック共重合体(a1)は、少なくとも2個のビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロック(A)と、少なくとも1種の共役ジエン化合物からなる重合体ブロック(B)とからなるブロック共重合体である。
前記ビニル芳香族化合物としては、例えばスチレン、α-メチルスチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、1,3-ジメチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン等が挙げられる。これらの中でも、スチレンおよびα-メチルスチレンが好ましい。芳香族ビニル化合物は1種を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0015】
前記ブロック共重合体(a1)におけるビニル芳香族化合物の含有量は5~75質量%が好ましく、5~50質量%がより好ましい。ビニル芳香族化合物の含有量がこの範囲内であると、本発明の樹脂組成物を成形して得られるメッシュ状シートの制振性がより向上する。
【0016】
前記共役ジエン化合物としては、例えばブタジエン、イソプレン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン等が挙げられる。共役ジエン化合物は1種を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0017】
前記ブロック共重合体(a1)における重合体ブロック(B)は、制振性の観点からイソプレン単独、またはイソプレンとブタジエンの混合物に由来する構造単位からなることが適している。なお、本明細書では、イソプレンに由来する構造単位における3,4-結合単位および1,2-結合単位、ブタジエンに由来する構造単位における1,2-結合単位をビニル結合単位と称し、その合計量をビニル結合含有量と称する。前記ブロック共重合体における重合体ブロック(B)のビニル結合含有量は45%以上、更に好ましくは50~80%の範囲のものが使用される。
【0018】
このようなブロック共重合体(a1)は、共役ジエン化合物からなる重合体ブロックに枝分かれが多く、嵩高い構造を有している。このため、本発明の組成物に振動エネルギーが及ぼされた際、分子同士が衝突する確率が高くなり、振動エネルギーが熱エネルギーに効率良く変換され、0℃、30Hzにおける損失係数tanδが0.3以上となり、得られるメッシュ状シートに良好な制振性を与える。
【0019】
<ブロック共重合体(a1)の水素添加物(a2)>
また(a)は、耐熱性や耐光性の観点から、前記ブロック共重合体(a1)と該ブロック共重合体の水素添加物(a2)との混合物かあるいは該ブロック共重合体(a1)の水素添加物(a2)単独の場合も含まれる。この場合、重合体ブロック(B)の共役ジエン化合物に由来する炭素-炭素二重結合の50%以上が水素添加されていることが好ましく、75%以上が水素添加されていることがより好ましく、95%以上が水素添加されていることが特に好ましい。
【0020】
<(a)>
(a)は、重合体ブロック(A)と重合体ブロック(B)とをそれぞれ少なくとも1個含有していればよいが、耐熱性、力学物性等の観点から、重合体ブロック(A)を2個以上、重合体ブロック(B)を1個以上含有していることが好ましい。重合体ブロック(A)と重合体ブロック(B)の結合様式は、線状、分岐状あるいはこれらの任意の組み合わせであってもよいが、重合体ブロック(A)をAで、重合体ブロック(B)をBで表したとき、A-B-Aで示されるトリブロック構造や、(A-B)n、(A-B)n-A、(ここでnは2以上の整数を表す)で示されるマルチブロック共重合体などを挙げることができ、これらの中でも、A-B-Aで示されるトリブロック構造のものが、耐熱性、力学物性、取り扱い性等の点で特に好ましい。
【0021】
(a)の重量平均分子量は4万~50万の範囲のものが用いられる。分子量が上記範囲より小さすぎる場合は、得られる樹脂組成物の力学物性の低下を招き好ましくない。逆に大きすぎる場合には粘度の上昇が著しくなり、成形加工性が損なわれ好ましくない。
なお、本明細書でいう重量平均分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定によって求めた標準ポリスチレン換算の重量平均分子量をいう。
【0022】
測定条件:
GPC;LC Solution (SHIMADZU社製)
検出器:示差屈折率計 RID-10A(SHIMADZU社製)
カラム:TSKgelG4000Hxlを2本直列(TOSOH社製)
ガードカラム:TSKguardcolumnHxl-L(TOSOH社製)
溶媒:テトラヒドロフラン
温度:40℃
流速:1ml/min
濃度:2mg/ml
【0023】
さらに本発明の組成物においては、前記(a)と、イソプレン及び/またはブタジエンに由来する構造単位の3,4-結合単位および1,2-結合単位の含有量が45%未満のブロック共重合体(b1)及び/または該ブロック共重合体の水素添加物(b2)で構成される(b)との混合物の場合においても、優れた通気性、伸縮性を達成することができる。なお、(b)の重量平均分子量は5万~40万の範囲のものが用いられる。
なお、制振性(0℃、30Hzにおける損失係数tanδが0.3以上)の観点から、(a)と(b)の混合比率は、質量比で100:0~30:70であることが好ましく、95:5~35:65であることがより好ましく、90:10~40:60であることがさらに好ましい。
【0024】
<炭化水素系ゴム用軟化剤(c)>
本発明の炭化水素系ゴム用軟化剤(c)としては、例えばパラフィン系オイル、ナフテン系オイル、アロマ系オイル等のプロセスオイル、流動パラフィン等が挙げられ、中でもパラフィン系オイル、ナフテン系オイル等のプロセスオイルが好ましい。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0025】
本発明のメッシュ状シートを構成する樹脂組成物においては、前記(a)100質量部、又は(a)+(b)100質量部に対して、前記炭化水素系ゴム用軟化剤(c)が5~150質量部含有していることが、柔軟性を発現させる点で好ましい。前記炭化水素系ゴム用軟化剤(c)の含有量が5質量部より少ないと、高硬度となり伸縮性が悪くなる。前記炭化水素系ゴム用軟化剤(c)の含有量が150質量部より多いと硬度が低過ぎてべたつく問題や、樹脂組成物中における(a)の比率が低下し、0℃、30Hzにおける損失係数tanδが0.3未満となり、制振性が低下する問題が発生する場合がある。前記(a)100質量部、又は(a)及び(b)100質量部に対する、前記炭化水素系ゴム用軟化剤(c)の配合量はより好ましくは10~120質量部、さらに好ましくは50~100質量部である。
【0026】
<その他の成分>
本発明のメッシュ状シートを構成する樹脂組成物には、強度や成形性、耐薬品性、耐熱性の改善の目的からさらにポリオレフィン系樹脂(d)を含有させることができる。ポリオレフィン系樹脂(d)としては、プロピレン系重合体、エチレン系重合体等が挙げられる。プロピレン系重合体としては、例えばホモポリプロピレン、ランダムポリプロピレン、ブロックポリプロピレン、アタクチックポリプロピレン、シンジオタクチックポリプロピレン等を使用することができる。中でも、ランダムポリプロピレン、ブロックポリプロピレンを用いるのが好ましい。エチレン系重合体としては、例えば中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)等のエチレン単独重合体;エチレン・1-ブテン共重合体、エチレン・1-ヘキセン共重合体、エチレン・1-ヘプテン共重合体、エチレン・1-オクテン共重合体、エチレン・4-メチル-1-ペンテン共重合体、エチレン・1-ノネン共重合体、エチレン・1-デセン共重合体等のエチレン・α-オレフィン共重合体等を使用することができる。
【0027】
本発明のメッシュ状シートを構成する樹脂組成物においては、前記(a)100質量部、又は(a)+(b)100質量部に対して、ポリオレフィン系樹脂(d)が5~70質量部含有していることが、上記目的を達成する点から好ましく、5~50質量部がより好ましい。
【0028】
また、本発明メッシュ状シートを構成するに用いられる樹脂組成物には、高温での耐圧縮永久歪特性の改善の目的からさらにポリフェニレンエーテル樹脂を含有させることもできる。ここで用いられるポリフェニレンエーテル樹脂は、下記一般式で表される繰り返し単位からなる単独重合体又は、該繰り返し単位を含む共重合体である。
【0029】
【化1】
【0030】
(式中、R1、R2、R3、及びR4はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子又は炭化水素基を表す。)
【0031】
このポリフェニレンエーテル樹脂としては公知のものを用いることができ、具体的には、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2-メチル-6-エチル-1,4フェニレンエーテル)、ポリ(2,6-ジフェニル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2-メチル-6-フェニル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2,6-ジクロロ-1,4-フェニレンエーテル)などが挙げられ、また、2,6-ジメチルフェノールと1価のフェノール類(例えば、2,3,6-トリメチルフェノールや2-メチル-6-ブチルフェノール)との共重合体の如きポリフェニレンエーテル共重合体も用いることができる。なかでも、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレンエーテル)や2,6-ジメチルフェノールと2,3,6-トリメチルフェノールとの共重合体が好ましく、さらに、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレンエーテル)が好ましい。
ポリフェニレンエーテル樹脂は、本発明のメッシュ状シートを構成する樹脂組成物に含まれる上記成分の合計100質量部に対して、0.01~3.0質量部であることが好ましく、0.05~1.0質量部であることがより好ましい。
【0032】
本発明のメッシュ状シートを構成する樹脂組成物は、本発明の効果を著しく損なわない範囲であれば、必要に応じて、粘着付与材を含有させてもよい。粘着付与材としては、従来より粘着性を付与する樹脂として使用されているものを特に制限無く用いることができる。例えば、ガムロジン、トール油ロジン、ウッドロジン、水添ロジン、不均化ロジン、重合ロジン、これらのグリセリンエステル、ペンタエリスリトールエステル等のロジンエステルなどのロジン系樹脂;α-ピネン、β-ピネン、ジペンテンなどを主体とするテルペン樹脂、芳香族変性テルペン樹脂、水添テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂などテルペン系樹脂:(水添)脂肪族系(C5系)石油樹脂、(水添)芳香族系(C9系)石油樹脂、(水添)共重合系(C5-C9共重合系)石油樹脂、(水添)ジシクロペンタジエン系石油樹脂、脂環式飽和炭化水素など水素添加されていてもよい石油樹脂;ポリα-メチルスチレン、α-メチルスチレン-スチレン共重合体、スチレン系モノマー-脂肪族系モノマー共重合体、スチレン系モノマー-芳香族系モノマー(スチレン系モノマーを除く)共重合体などのスチレン系樹脂;フェノール系樹脂;キシレン樹脂;クマロン-インデン系樹脂等の合成樹脂等が挙げられる。これらの中でも、樹脂組成物の着色抑制の観点から、水添テルペン樹脂、脂環式飽和炭化水素樹脂、(水添)脂肪族系(C5系)石油樹脂
が好ましい。これらは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
本発明のメッシュ状シートを構成する樹脂組成物に粘着付与材を含有させる場合、その量はブロック共重合体(a)100質量部に対して、好ましくは100質量部以下であり、耐熱性の観点からは80質量部以下であることがより好ましい。
【0033】
本発明のメッシュ状シートを構成する樹脂組成物は、クレー、珪藻土、シリカ、タルク、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、金属酸化物、マイカ、グラファイト、水酸化アルミニウムなどのリン片状無機系添加剤、各種の金属粉、木片、ガラス粉、セラミックス粉、粒状あるいは粉末ポリマー等の粒状あるいは粉末状固体充填材、その他の各種の天然または人工の短繊維、長繊維(例えば、わら、毛、ガラスファイバー、金属ファイバー、その他各種のポリマーファイバー等)などを配合することができる。
また、中空フィラー、例えば、ガラスバルーン、シリカバルーンなどの無機中空フィラー、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン共重合体などからなる有機中空フィラーを配合することにより、軽量化をはかることができる。
【0034】
本発明のメッシュ状シートを構成する樹脂組成物は、上記の成分の他に、用途に応じて各種のブロッキング防止剤、熱安定剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、結晶核剤、発泡剤、着色剤等を含有することも可能である。ここで、酸化防止剤としては、例えば、2,6-ジtert-ブチル-p-クレゾール、2,6-ジtert-ブチルフェノール、2,4-ジメチル-6-tert-ブチルフェノール、4,4'-ジヒドロキシジフェニル、トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ブタン、テトラキス[メチレン-3-(3,5-ジtert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、3,9-ビス{2-[3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ]-1,1-ジメチルエチル}-2,4,8,10-テトラオキサスピロ-5,5-ウンデカンなどのフェノール系酸化防止剤、ホスファイト系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤等を使用することができる。中でもフェノール系酸化防止剤、ホスファイト系酸化防止剤が特に好ましい。酸化防止剤は、本発明の樹脂組成物に含まれる上記成分(a)~(d)の合計100質量部に対して、0.01~3.0質量部であることが好ましく、0.05~1.0質量部であることがより好ましい。
【0035】
<メッシュ状シート>
本発明のメッシュ状シートは、不織布状、パンチングシート状など形態は問わないが、通気性と伸長しやすさの点から、開口率が5%~50%であることが必要である。開口率が5%より小さいと通気性が悪くなり、かつ伸長時の抵抗が大きくなる。開口率が50%より大きいとシートの強度が低下し、伸長時に破断する可能性がある。開口率は10~50%が好ましく、20~50%がより好ましい。
【0036】
<メッシュ状シートの製造方法>
本発明のメッシュ状シートを構成する樹脂組成物の製造方法としては、通常の樹脂組成物の製造あるいはゴム組成物の製造に際して用いられる方法が採用でき、単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、加熱ロール、各種ニーダー等の溶融混練機を用いて各成分を均一に混合することにより製造できる。加工機の設定温度は150℃~300℃の中から任意に選ぶことができる。
【0037】
このようにして得られる樹脂組成物は、公知の方法を用いて成形することで、メッシュ状シートとなるが、中でも不織布の形態に加工されたメッシュ状シートとすることが好ましい。前記樹脂組成物を不織布の形態に加工する方法としては、湿式法や、乾式法(エアレイ法、カード法など)でウェブを形成し、その後、接着および/または絡合して不織布とする通常の方法があげられる。また、繊維化工程と不織布製造工程を直結して製造する方法としては、スパンボンド法やメルトブローン法などが挙げられる。
【0038】
本発明のメッシュ状シートは、一般的なシート材料と同様、任意の形状に成形することが可能である。具体的には、シューズの底材やバットのグリップ材などのスポーツ用品、コルセットなどの医療用衣類、ブラジャーなどのインナー類などの用途に適用可能である。
【実施例
【0039】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、以下の実施例および比較例の物性評価は、以下に示す方法によって行った。
【0040】
(1)損失係数(tanδ)の測定
動的粘弾性測定装置を用いて、下記条件にて測定を実施した。温度が0~23℃における損失係数(tanδ)の値を求めた。
機種:Rheogel-E4000
測定法:動的粘弾性率測定(正弦波)
測定モード:温度依存性
チャック:引っ張り
波形:正弦波
サンプル形状:幅4.90mm、厚み2.02mm、長さ15mm
条件:周波数30Hz、開始温度100℃、 ステッフ゜温度2℃、 終了温度200℃、昇温速度3℃/min
【0041】
(2)通気性評価
10人を対象とし、各シートを腕に装着して3時間後に、下記4段階にて官能評価を実施し、平均値をとった。平均値3以上を合格(○)、3未満を不合格(×)とした。
○4段階評価
4.蒸れない
3.僅かに蒸れる
2.蒸れる
1.かなり蒸れる
【0042】
(3)伸縮性評価
10人を対象とし、各シートを伸縮した際の感触を、下記2段階にて官能評価を実施し、2を選択した人数が8人以上の場合は合格(○)、8人未満だった場合は(×)とした。
○2段階評価
2.伸長時の抵抗が小さく、戻りがよい
1.伸長時の抵抗が大きいが戻りがよい、又は伸長時の抵抗が小さいが戻りが悪い、又は伸長時の抵抗が強く戻りも悪い
【0043】
(4)開口率評価
下記の計算式により、算出した。
開口率=(目開き÷線と線のピッチ)2×100
【0044】
<実施例1~10 及び比較例1~5>
二軸押出機(口径46mm、L/D=46)を使用して、下記の各構成成分を表1に示す配合に従って混合した後、190℃で溶融混練し、ペレット状の樹脂組成物を得た。これらの樹脂組成物を用い、ノズル温度290℃の条件で吐出し、温度290℃の加熱空気により細化させながらコンベア上に集積し、メルトブローン不織布を得た。
【0045】
<ブロック共重合体(a)>
・成分(a-1)
種類:スチレン-イソプレン-スチレン型トリブロック共重合体の水添ブロック共重合体、スチレンの含有量:20質量%、重量平均分子量90000、イソプレン及び/またはブタジエンに由来する構造単位の3,4-結合単位および1,2-結合単位の含有量55%
・成分(a-2)
種類:スチレン-イソプレン-スチレン型トリブロック共重合体の水添ブロック共重合体、スチレンの含有量:32質量%、重量平均分子量290000、イソプレン及び/またはブタジエンに由来する構造単位の3,4-結合単位および1,2-結合単位の含有量55%
・成分(a-3)
種類:スチレン-イソプレン-スチレン型トリブロック共重合体、スチレンの含有量:20質量%、重量平均分子量120000、イソプレン及び/またはブタジエンに由来する構造単位の3,4-結合単位および1,2-結合単位の含有量56%
【0046】
<ブロック共重合体(b)>
・成分(b-1)
種類:スチレン-イソプレン・ブタジエン-スチレン型トリブロック共重合体の水添ブロック共重合体、スチレンの含有量:30質量%、重量平均分子量270000、イソプレン及び/またはブタジエンに由来する構造単位の3,4-結合単位および1,2-結合単位の含有量8%
・成分(b-2)
種類:スチレン-ブタジエン-スチレン型トリブロック共重合体の水添ブロック共重合体、スチレンの含有量:34質量%、重量平均分子量260000、イソプレン及び/またはブタジエンに由来する構造単位の3,4-結合単位および1,2-結合単位の含有量8%
【0047】
<炭化水素系ゴム用軟化剤(c)>
・成分(c-1)
ダイアナプロセスオイルPW-380(商品名)、出光石油化学株式会社製、パラフィン系オイル、動粘度(40℃):381.6mm2/s、環分析パラフィン:73%、環分析ナフテン:27%、重量平均分子量:1304
・成分(c-2)
ダイアナプロセスオイルPW-90(商品名)、出光石油化学株式会社製、パラフィン系オイル、動粘度(40℃):95.5mm2/s、環分析パラフィン:71%、環分析ナフテン:29%、重量平均分子量:790
【0048】
<ポリオレフィン系重合体(d)>
・成分(d-1)
ポリプロピレン:プライムポリプロ F219DA(商品名)、株式会社プライムポリマー製、MFR(230℃):8.0g/10分
・成分(d-2)
ポリプロピレン:プライムポリプロ J108M(商品名)、株式会社プライムポリマー製、MFR(230℃):45g/10分
【0049】
【表1】
【0050】
実施例1~10に示すように、(a)成分(少なくとも2個のビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロック(A)と少なくとも1個の共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロック(B)とからなるブロック共重合体であって、イソプレン及び/またはブタジエンに由来する構造単位の3,4-結合単位および1,2-結合単位の含有量が45%以上であるブロック共重合体及び/または該ブロック共重合体の水素添加物)、又は、前記(a)成分と(b)成分(少なくとも2個のビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロック(A)と少なくとも1個の共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロック(B)とからなるブロック共重合体であって、イソプレン及び/またはブタジエンに由来する構造単位の3,4-結合単位および1,2-結合単位の含有量が45%未満であるブロック共重合体及び/または該ブロック共重合体の水素添加物)、および(c)成分(炭化水素系ゴム用軟化剤)を含有した樹脂組成物をメルトブローン不織布化した、開口率が5~50%であるメッシュ状シートは、制振性(0℃、30Hzにおける損失係数(tanδ)が0.3以上である)と通気性及び伸縮性に優れる。
【0051】
一方、比較例1のように、(a)成分(少なくとも2個のビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロック(A)と少なくとも1個の共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロック(B)とからなるブロック共重合体であって、イソプレン及び/またはブタジエンに由来する構造単位の3,4-結合単位および1,2-結合単位の含有量が45%以上であるブロック共重合体及び/または該ブロック共重合体の水素添加物)を含有しない場合、該樹脂組成物をメルトブローン不織布化したメッシュ状シートは0℃、30Hzにおける損失係数(tanδ)が0.3未満となり、制振性を有しない。比較例2のように、(c)成分(炭化水素系ゴム用軟化剤)を含有しない場合、該樹脂組成物をメルトブローン不織布化したメッシュ状シートは伸縮性が不足していた。比較例3,4のようにシートの開口率が5%未満の場合、通気性と伸縮性が悪い結果となった。比較例5のようにシートの開口率が50%より大きい場合、伸縮性が悪い結果となった。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明のメッシュ状シートは、制振性を有し、かつ通気性と伸縮性に優れる為、人肌に触れたり、人が着用する、日用品・スポーツ用品の手袋、防具、シューズのインナーソールやバットなどのグリップ、医療用品のコルセットやサポーター、車両用の内装材等に有効に使用することができる。
また、他の材料との積層体の1層としての使用も可能である。
【0053】
以上のとおり、本発明の好適な実施形態を説明したが、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、種々の追加、変更または削除が可能であり、そのようなものも本発明の範囲内に含まれる。