(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-22
(45)【発行日】2022-03-30
(54)【発明の名称】対象物検知システム
(51)【国際特許分類】
G01S 17/86 20200101AFI20220323BHJP
G01S 17/93 20200101ALI20220323BHJP
【FI】
G01S17/86
G01S17/93
(21)【出願番号】P 2017083734
(22)【出願日】2017-04-20
【審査請求日】2019-12-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100176245
【氏名又は名称】安田 亮輔
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 将旭
(72)【発明者】
【氏名】林 俊寛
(72)【発明者】
【氏名】大田 尚
【審査官】山下 雅人
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-097360(JP,A)
【文献】特開2011-198099(JP,A)
【文献】特開2017-040530(JP,A)
【文献】特開2016-180623(JP,A)
【文献】特開2006-214854(JP,A)
【文献】特開2000-121337(JP,A)
【文献】特開平11-218417(JP,A)
【文献】特開平11-088867(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00-17/95
G01B11/00-11/30
G01C 3/06- 3/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも移動体の周囲の線状又は帯状の第1領域の情報を取得する第1センサと、
少なくとも前記第1領域の一部を含む第2領域の画像情報を取得する第2センサと、
前記第1センサで取得した情報に基づいて対象物を検出する第1処理部と、
前記第2センサで取得した画像情報及び前記第1処理部で検出された前記対象物の情報を前記第1処理部から出力された動作開始信号を受信することをきっかけとして照合する第2処理部と、
隣り合う複数の前記第1領域同士の情報について相対的な位置関係を補正する第1補正部と、を含
み、
前記第1領域の情報は、前記移動体の移動方向に連続する連続体に関する情報を含み、
前記第1補正部は、前記隣り合う複数の前記第1領域の前記連続体同士が連続するように、前記複数の第1領域同士の情報について相対的な位置関係を補正する対象物検知システム。
【請求項2】
前記移動体の位置情報を取得する位置情報センサを更に含み、
前記第1補正部は、前記位置情報に基づいて、複数の前記第1領域同士の情報について相対的な位置関係を補正する請求項1に記載の対象物検知システム。
【請求項3】
前記第1領域の情報に前記位置情報を関連づけて記憶する第1記憶部を更に備える請求項2に記載の対象物検知システム。
【請求項4】
前記第2領域の画像情報に前記位置情報を関連づけて記憶する第2記憶部を更に備える請求項2又は3に記載の対象物検知システム。
【請求項5】
隣り合う複数の前記第2領域同士の画像情報について相対的な位置関係を補正する第2補正部を含む請求項1~3の何れか一項に記載の対象物検知システム。
【請求項6】
前記移動体の移動経路上に存在する既知物体に関する情報を記憶する既知情報記憶部を更に備え、
前記第1処理部は、前記既知物体に関する情報に基づいて、前記対象物から前記既知物体を除外して、前記対象物を検出する請求項1~4の何れか一項に記載の対象物検知システム。
【請求項7】
前記第1センサは、前記第1領域の情報として、凹凸形状に関する情報を取得する請求項1~
6の何れか一項に記載の対象物検知システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、対象物検知システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、センサによって対象物を検出し、検出された対象物について危険であるか否かを判定する物体認識装置がある(例えば、特許文献1参照)。特許文献1の物体認識装置は、車両に搭載され、レーザを照射して車両前方の対象物を探知し、衝突の可能性がある物体を検出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術において、移動体の移動速度が上昇すると、移動体自体の振動が大きくなり、移動体に搭載されているセンサによって取得されたデータは、振動の影響を受けたものとなる。また、センサが移動体に搭載されておらず、移動体の周囲の対象物を検出するシステムにおいても、移動体の移動速度が上昇すると、移動体自体の振動が大きくなり、複数のデータ間における同一対象物の位置関係の把握が難しくなる。
【0005】
本発明は、移動体の移動に伴う振動の影響を抑制して、対象物の検出精度の低下を抑えることが可能な対象物検知システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る対象物検知システムは、少なくとも移動体の周囲の線状又は帯状の第1領域の情報を取得する第1センサと、少なくとも第1領域の一部を含む第2領域の画像情報を取得する第2センサと、第1センサで取得した情報に基づいて対象物を検出する第1処理部と、第2センサで取得した画像情報及び第1処理部で検出された対象物の情報を第1処理部から出力された動作開始信号を受信することをきっかけとして照合する第2処理部と、隣り合う複数の第1領域同士の情報について相対的な位置関係を補正する第1補正部と、を含み、第1領域の情報は、移動体の移動方向に連続する連続体に関する情報を含み、第1補正部は、隣り合う複数の第1領域の連続体同士が連続するように、複数の第1領域同士の情報について相対的な位置関係を補正する。
【0007】
この対象物検知システムでは、移動体を移動させながら第1センサ及び第2センサによって移動体の周囲の第1領域の情報を取得する。第2処理部は、第2センサで取得された画像情報と、第1処理部で検出された対象物の情報を照合するので、対象物の画像情報に基づいて対象物を確認することができる。この対象物検知システムは、第1補正部を含むので、隣り合う複数の第1領域同士の情報について相対的な位置関係を補正することができる。これにより、移動体の移動によって移動体が振動して、隣り合う複数の第1領域の情報の相対的な位置関係にズレが生じても第1補正部によって補正することができる。なお、「少なくとも第1領域の一部を含む第2領域」とは、第2領域の画像情報を取得する際に第1領域の一部を含むものに限定されず、第2領域の画像情報を取得した後に、第1領域に第2領域の一部が含まれることで、第1領域の一部を含むように第2領域が設定されるものでもよい。移動体が移動方向と交差する方向に位置ズレしても、移動方向に連続する連続体の位置に基づいて、複数の第1領域同士の情報の相対的な位置関係のズレを補正することができる。
【0008】
いくつかの態様において、対象物検知システムは、移動体の位置情報を取得する位置情報センサを更に含み、第1補正部は、位置情報に基づいて、複数の第1領域同士の情報について相対的な位置関係を補正してもよい。これにより、第1センサによって取得された第1領域の情報に、位置情報センサによって取得された位置情報を紐付けて、複数の第1領域同士の相対的な位置関係のズレを補正することができる。その結果、移動体の移動に伴う振動の影響を抑制して、対象物の検出精度の低下を抑制することができる。
【0009】
いくつかの態様において、第1領域の情報に位置情報を関連づけて記憶する第1記憶部を更に備える構成でもよい。これにより、第1領域の情報に位置情報を関連づけて記憶させることで、移動体の移動中にリアルタイムで第1領域の情報を使用することに加えて、オフラインで第1領域の情報を使用することもできる。
【0010】
いくつかの態様において、第2領域の画像情報に前記位置情報を関連づけて記憶する第2記憶部を更に備える構成でもよい。これにより、第2領域の画像情報に位置情報を関連づけて記憶させることで、移動体の移動中にリアルタイムで第2領域の画像情報を使用することに加えて、オフラインで第2領域の画像情報を使用することもできる。
【0012】
いくつかの態様において、対象物検知システムは、隣り合う複数の第2領域同士の情報について相対的な位置関係を補正する第2補正部を含んでもよい。これにより、第2補正部によって、隣り合う複数の第2領域同士の画像情報について相対的な位置関係を補正することができる。そのため、移動体の移動によって移動体が振動して、隣り合う複数の第2領域同士の画像情報について相対的な位置関係にズレが生じても、第2補正部によって位置関係を補正してズレを小さくすることができる。
【0013】
いくつかの態様において、対象物検知システムは、移動体の移動経路上に存在する既知物体に関する情報を記憶する既知情報記憶部を更に備え、第1処理部は、既知物体に関する情報に基づいて、対象物から既知物体を除外して、対象物を検出してもよい。これにより、既知物体が除外された後の情報に基づいて、対象物を検出するので、対象物の危険性を判定する際の判定精度を向上させることができる。また、対象物検知システムにおける負荷を軽減することができる。
【0014】
いくつかの態様において、第1センサは、第1領域の情報として、凹凸形状に関する情報を取得するものでもよい。これにより、凹凸形状に関する情報に基づいて、対象物を検出することができる。また、第2センサで取得した画像情報と、第1センサで検出された凹凸形状に関する情報とを照合することで、対象物の危険性を判定する際の判定精度を向上させることができる。
【発明の効果】
【0015】
本開示によれば、移動体の移動に伴う振動の影響を抑制して、対象物の検出精度の低下を抑えることが可能な対象物検知システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本開示の実施形態に係る支障物検知装置を搭載する車両が高速道路を走行する状態を示す斜視図である。
【
図4】第1領域E及び第2領域Fの配置を示す図である。
【
図5】本開示の実施形態に係る支障物検知装置を示すブロック構成図である。
【
図6】高速ラインスキャンセンサによるデータ取得について模式的に示す図である。
【
図7】
図7(a)及び
図7(b)は振動補正部による補正前のイメージを模式的に示す図である。
【
図8】
図8(a)は振動補正部による補正前のイメージを模式的に示す図である。
図8(b)は振動補正部による補正後のイメージを模式的に示す図である。
【
図9】支障物検知処理部で実行される処理手順を示すフローチャートである。
【
図10】監視処理部で実行される処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図において同一部分又は相当部分には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0018】
図1及び
図2に示される支障物検知装置(対象物検知システム)1は、例えば、車両(移動体)Mに搭載されて、車両前方の対象物(例えば落下物B)を検出するものである。支障物検知装置1は、高速ラインスキャンセンサ(第1センサ)2、高精細カメラ(第2センサ)3、支障物検知ユニット(
図4参照)4を備えている。
【0019】
また、支障物検知装置1は、検出された対象物Bが支障物であるか否かを判定する。「支障物」とは、車両の走行の妨げになるおそれがある対象物であり、当該対象物を回避するように走行を変更したり、停止して取り除いたりすることが必要となるものである。
【0020】
高速ラインスキャンセンサ2は、
図4に示されるように、車両Mの周囲の線状又は帯状の第1領域Eの情報を取得する。高速ラインスキャンセンサ2は、
図2及び
図3に示されるように、車両Mの前部に設けられ、下方に向けられている。高速ラインスキャンセンサ2は、路面の上方から下方にレーザを照射して、路面上の対象物Bで反射した反射レーザを受信する。高速ラインスキャンセンサ2で受信した反射レーザに関する情報(検出データ)は、支障物検知ユニット4に入力される。
【0021】
第1領域Eは、例えば、車両Mの移動方向Yと交差する方向に長手方向を有する。第1領域は、例えば、車両Mの移動方向に沿って所定の長さを有する。また、高速ラインスキャンセンサ2は、複数(例えば2個)設けられていてもよい。複数の高速ラインスキャンセンサ2は、車両Mの車幅方向Xの中央Oを挟んで離間して配置されている。
【0022】
例えば、車両Mの速度が一定である場合には、
図4に示されるように、第1領域Eの移動方向Yにおける長さ及び間隔は一定となる。なお、複数の第1領域Eは、移動方向Yにおいて、部分的に重なり合うように設定されてもよく、隙間が生じるように設定されてもよく、隙間がなく隣接するように設定されてもよい。
【0023】
高精細カメラ3は、第1領域Eを含むように設定された面状の第2領域Fの情報を取得する。高精細カメラ3は、
図2及び
図3に示されるように、車両Mの前側上部に設けられ、前方の路面に向けられている。高精細カメラ3は、車両Mの前方の路面を撮影することができる。高精細カメラ3で撮影された第2領域Fの画像情報は、支障物検知ユニット4に入力される。第2領域Fは、第1領域Eの一部を含むものでもよい。
【0024】
なお、高速ラインスキャンセンサ2及び高精細カメラ3により情報を取得する時点において、高精細カメラ3により画像情報が取得される第2領域Fは、高速ラインスキャンセンサ2により情報が取得される第1領域Eよりも前方に配置されている。すなわち、画像情報が取得される時点において、第2領域Fは第1領域Eを含んでいない状態である。しかしながら、車両Mが前進することで、その後の第1領域Eは第2領域Fに含まれるようになる。同一地点を含む第1領域E及び第2領域Fの情報は、同時に取得されてもよく、第1領域Eの情報が先に取得されて、その後に第2領域Fの画像情報が取得されてもよい。
【0025】
また、支障物検知装置1は、
図5に示されるように、定点検出センサ(位置情報センサ)5、車輪速センサ6及び加速度センサ7を備える。これらの定点検出センサ5、車輪速センサ6及び加速度センサ7は、支障物検知ユニット4と電気的に接続されている。
【0026】
定点検出センサ5は、車両Mの位置情報を取得する。例えば、走行路には予め一定間隔で、例えば1kmごとに複数の定点が設けられている。定点は地上に設置されていてもよく、地中に埋め込まれていてもよい。定点検出センサ5は、車両Mの移動に合わせて、複数の定点を検出する。定点検出センサ5で検出された定点に関する情報は、支障物検知ユニット4に入力される。なお、支障物検知装置1は、定点検出センサ5に代えて、例えば自車位置を検出可能なGPSセンサなどを備える構成でもよい。
【0027】
車輪速センサ6は、車両Mの車輪の回転角度に関する情報を取得するセンサである。車輪速センサ6は、例えばエンコーダを備え、このエンコーダは、車輪の回転パルスを計測する。車輪の回転パルスに関する信号は、支障物検知ユニット4に入力される。
【0028】
加速度センサ(車両運動計測センサ)7は、車両Mに生じた加速度に関する情報を取得するセンサである。加速度センサ7は、例えば、車両Mの加速における速度変化及び減速における速度変化に関する情報を検出する。加速度センサ7で検出された車両Mの加速度に関する情報は、支障物検知ユニット4に入力される。
【0029】
また、支障物検知装置1は、車両Mの運動状態を検出するその他のセンサとして、例えばジャイロセンサ、角加速度センサなどを備えていてもよい。これらのセンサで取得された情報に基づいて、車両Mの姿勢について算出することができる。
【0030】
支障物検知ユニット4は、
図5に示されるように、支障物検知処理部(第1処理部)10及び監視処理部(第2処理部)20を備える。支障物検知ユニット4は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、およびRAM(Random Access Memory)等のハードウェアと、ROMに記憶されたプログラム等のソフトウェアとから構成されたコンピュータである。支障物検知ユニット4は、入力信号回路、出力信号回路、電源回路などを含む。
【0031】
また、支障物検知ユニット4は、各種情報を記憶する記憶部(第1記憶部、第2記憶部)31を備える。記憶部31は、移動経路上に存在する既知物体に関する情報を記憶する既知情報記憶部として機能する。記憶部31に記憶されている既知物体に関する情報は、後述するマスク処理部15で利用することができる。
【0032】
支障物検知処理部10は、定点計数部11、形状計測部12、振動補正部(第1補正部)13、支障物判定部14、マスク処理部15を備えている。支障物検知処理部10は、高速ラインスキャンセンサ2で取得した情報に基づいて対象物Bを検出する。例えば、路面より上方に天面が存在する物体を対象物Bとして検出することができる。
【0033】
定点計数部11は、定点検出センサ5で検出された定点に関する情報に基づいて、定点を検出した数量を算出する。これにより、定点計数部11は、走行路において、基点からの車両Mの移動距離を算出することができる。
【0034】
形状計測部12は、高速ラインスキャンセンサ2から出力された第1領域Eの情報に基づいて、第1領域Eの凹凸形状(断面形状)を作成する。形状計測部12は、定点計数部11で算出された車両Mの位置情報に関するデータを、第1領域Eの情報が取得された位置の位置情報として関連付ける。これにより、第1領域Eの位置を特定することができる。また、形状計測部12は、車輪速センサ6から出力された情報に基づいて、第1領域Eの情報が取得された位置を特定してもよい。支障物検知処理部10は、路面よりも高い位置で検出信号を検出した場合には、その位置に対象物Bが存在すると判定できる。
【0035】
また、形状計測部12は、
図6(a)に示されるように、移動方向Yに隣り合う複数の第1領域Eの情報について、
図6(b)に示されるように、移動方向Yに沿って順次配列する。
【0036】
振動補正部13は、移動方向Yに隣り合う複数の第1領域E同士の情報について相対的な位置関係を補正する。詳しくは後述する。
【0037】
支障物判定部14は、複数の第1領域Eの凹凸形状に基づいて、対象物Bを検出し、検出された対象物Bが支障物であるか否かを判定する。支障物判定部14は、車両Mが走行する走行路に沿う建築物の建築限界内に支障物が存在するか否かを判定してもよい。
【0038】
マスク処理部15は、複数の第1領域Eの凹凸形状に基づいて検出された対象物Bが、所定の条件を満足する場合に、その対象物Bは支障物ではないと判定する。これにより、支障物検知処理部10における計算負荷を軽減する。所定の条件としては、例えば、検出された対象物の危険度が低く、車両Mの走行に影響を与えないものと判定できる条件である。また、マスク処理部15は、記憶部31に記憶されている既知物体である対象物Bを支障物ではないと判定することができる。
【0039】
監視処理部20は、定点計数部21、映像取得部22、振動補正部(第2補正部)23、支障物抽出部24、画像処理部25を備えている。監視処理部20は、「高精細カメラ3で取得した画像情報」及び「支障物検知処理部10で検出された対象物Bの情報」を照合する。
【0040】
定点計数部21は、定点検出センサ5で検出された定点に関する情報に基づいて、定点を検出した数量を算出する。これにより、車両Mの基点からの移動距離を算出することができる。監視処理部20は、例えば、支障物検知処理部10の定点計数部11で算出されたデータを利用してもよい。
【0041】
映像取得部22は、高精細カメラ3から出力された複数の第2領域Fの画像情報を取得する。また、映像取得部22は、定点計数部21で算出された車両Mの位置情報に関するデータを、第2領域Fの情報が取得された位置の位置情報として関連付ける。これにより、第2領域Fの位置を特定することができる。また、映像取得部22は、車輪速センサ6から出力された情報に基づいて、第2領域Fの画像情報が取得された位置を特定してもよい。
【0042】
また、映像取得部22は、車両Mの移動方向Yに隣り合う複数の第2領域Fの画像情報について、移動方向Yに沿って順次配列される。
図6(a)では、第1領域Eについて図示しているが、第2領域Fについても、同様に、移動方向Yに沿って順次並べられる。
【0043】
振動補正部23は、移動方向Yに隣り合う複数の第2領域F同士の情報について相対的な位置関係を補正する。振動補正部23は、対象となる領域が異なるだけであり振動補正部13と同様の機能を有する。詳しくは後述する。
【0044】
支障物抽出部24は、支障物検知処理部10から支障物に関する情報を取得する共に、振動補正部23から補正後の画像情報を取得して、第2領域Fの画像情報から支障物を抽出する。支障物抽出部24は、高精細カメラ3で取得した画像情報及び支障物検知処理部10で検出された対象物Bの情報を照合する。支障物抽出部24は、支障物検知処理部10で検出された対象物Bの情報を、画像情報に重ね合わせ、画像情報から支障物を抽出することができる。抽出された支障物に関する画像情報は、位置情報と共に、例えば、記憶部31に記憶される。
【0045】
画像処理部25は、高精細カメラ3から入力した第2領域Fの画像情報について、画像処理を行う。画像処理部25は、画像処理として、例えば2値化処理を行い、対象物に関する情報、道路の白線に関する情報を検知する。
【0046】
また、支障物検知ユニット4には、表示部32及び操作部33が電気的に接続されている。表示部32は、例えば、液晶表示装置であり、高精細カメラ3で取得した画像を表示する。操作部33は、例えば、液晶表示装置のタッチパネルであり、運転者の操作入力に基づく信号を支障物検知ユニット4に出力する。使用者は、例えば、支障物ではないと確認された対象物について入力操作する際に、操作部33を操作する。
【0047】
また、支障物検知ユニット4には、取り外し可能な記憶媒体として記録デバイス34を電気的に接続することができる。記録デバイス34としては、例えばUSBメモリ(Universal Serial Bus memory)を使用することができる。これにより、記憶部31に記憶されている情報を、記録デバイス34に書き込むことができる。また、この記録デバイス34に記憶されている情報について、オフラインで他の端末を用いて処理することができる。
【0048】
監視処理部20は、例えば支障物検知処理部10から出力された動作開始信号(トリガー)を受信することをきっかけとして、「高精細カメラ3で取得した画像情報」及び「支障物検知処理部10で検出された対象物Bの情報」を照合する。このとき、高精細カメラ3で取得した画像情報の第2領域Fの位置と、同時刻において高速ラインスキャンセンサ2で取得した情報の第1領域Eの位置とが前後にずれているときは、動作開始信号又は高精細カメラ3で取得した画像情報をバッファリングしておき(一時的に記憶させておき)、高速ラインスキャンセンサ2で、画像情報の第2領域Fの位置と同じ位置の情報を取得した段階で、画像情報と対象物Bの情報を照合して、表示部32に表示させてもよい。
【0049】
次に
図4、
図7及び
図8を参照して、振動補正部13、23における振動補正について説明する。
【0050】
支障物検知処理部10の振動補正部13は、隣り合う複数の第1領域E同士の情報について相対的な位置関係を補正する。
図4に示す状態は、例えば、一定の速度で車両Mが移動した場合において、振動がなく理想的な状態で並ぶ第1領域E及び第2領域Fを示している。
【0051】
図7(a)では、車両Mが振動して、複数の第1領域Eが車幅方向Xに相対的に位置ズレしている場合を示している。このような場合、振動補正部13は、走行路において、車両Mの移動方向Yに連続する連続体の位置に基づいて、隣り合う第1領域Eの相対的な位置関係を補正する。振動補正部13は、連続体の位置が車幅方向Xにおいて同じ位置となるように、第1領域Eの情報について相対的な位置関係を補正する。移動方向Yに連続する連続体としては、例えば、路面上の白線、道路の脇に設置されている縁石、ブロック体、中央分離体などが挙げられる。また、移動方向Yに一定間隔で配置され、車幅方向Xにおいて同じ位置に配置されているポール、反射体、その他の物体の位置に基づいて、隣り合う第1領域Eの情報について相対的な位置関係を補正してもよい。補正後の状態として、
図4に示されるように、複数の第1領域Eは車幅方向Xにおいて、同じ位置に配置される。
【0052】
図7(b)では、車両Mが振動して、複数の第1領域Eが上下方向に延在する軸回りに相対的に位置ズレしている場合を示している。このような場合、振動補正部13は、各種センサから入力された車両Mの運動状態に関する情報に基づいて、隣り合う第1領域Eの相対的な位置関係を補正する。振動補正部13は、例えば、加速度センサ7やジャイロセンサから入力した情報に基づいて、車両Mの上下方向に延在する軸回りの姿勢変化を算出して、第1領域Eの情報について相対的な位置関係を補正する。振動補正部13は、第1領域Eの上下方向に延在する軸回りの傾斜を補正する。振動補正部13は、移動方向Yに連続する連続体が、車幅方向Xにおいて同じ位置となるように、複数の第1領域Eの情報の相対的な位置関係を補正する。
【0053】
図8(a)では、車両Mが振動して、複数の第1領域Eが移動方向Yにおける間隔がずれた場合を示している。このような場合、振動補正部13は、定点Gの位置に基づいて、隣り合う第1領域Eの相対的な位置関係を補正する。振動補正部13は、定点Gの位置が移動方向Yにおいて、一定間隔となるように、第1領域Eの位置をずらす。振動補正部13は、例えば、第1領域Eの移動方向Yにおける長さを変えたり、間隔を変えたりする。例えば、振動補正部13は、車両Mの移動速度に応じて、移動方向Yにおける第1領域Eの長さ、間隔を変更することができる。
図8(b)は、補正後の第1領域Eの配置を示している。
【0054】
なお、振動補正部23による振動補正は、振動補正部13による振動補正と対象が異なっている。振動補正部23は、第1領域Eに代えて、第2領域Fの画像情報の相対的な位置を補正するものである。振動補正部23の振動補正の説明については省略する。
【0055】
次に、支障物検知装置1の動作について、
図9及び
図10に示すフローチャートに沿って説明する。
図9は、支障物検知処理部10における処理手順を示すフローチャートである。
図10は、監視処理部20における処理手順を示すフローチャートである。
【0056】
まず、
図9を参照して、支障物検知処理部10における処理について説明する。支障物検知処理部10は、各種センサからセンサデータを入力する(ステップS1)。具体的には、支障物検知処理部10は、定点検出センサ5から定点に関する情報を入力する。また、支障物検知処理部10は、車輪速センサ6から車両Mの車輪の回転角度に関する情報を入力する。また、支障物検知処理部10は、加速度センサ7から車両Mに作用する加速度に関する情報を取得する。
【0057】
次に支障物検知処理部10の定点計数部11は、自車位置を算出する(ステップS2)。支障物検知処理部10は、定点に関する情報に基づいて、車両Mの基点からの移動距離を算出して、自車位置を算出する。また、支障物検知処理部10は、車両Mの車輪の回転角度に基づいて、車両Mの移動距離を算出してもよい。
【0058】
次に支障物検知処理部10は高速ラインスキャンセンサ2から第1領域Eの情報を入力し(ステップS3)、形状計測部12が第1領域Eの凹凸形状(断面形状)を作成する。また、形状計測部12は、第1領域Eの凹凸形状に、当該第1領域Eの位置情報を関連付ける。
【0059】
次に支障物検知処理部10の振動補正部13は、形状計測部12で作成された凹凸形状について、振動補正を行う(ステップS4)。具体的には、隣り合う複数の第1領域E同士の凹凸形状の情報について、相対的な位置関係を補正する。例えば、第1領域Eの位置情報に基づいて、正しい位置となるように、第1領域E同士の相対的な位置関係を補正する。
【0060】
次に支障物検知処理部10の支障物判定部14は、複数の第1領域Eの凹凸形状に基づいて、対象物Bを検出し、検出された対象物Bが支障物であるか否かを判定する(ステップS5)。そして、支障物判定部14は、建築限界内の支障物の存在の有無を判定する。
【0061】
次に支障物検知処理部10のマスク処理部15は、複数の第1領域Eの凹凸形状に基づいて検出された対象物Bが、所定の条件を満足する場合に、その対象物Bは支障物ではないと判定する(ステップS6)。例えば、対象物Bの大きさが基準の寸法より小さい場合には、マスク処理部15は、その対象物Bを支障物ではないと判定することができる。
【0062】
次に支障物検知処理部10は、算出された第1領域Eの凹凸形状の情報、対象物Bに関する情報、支障物に関する情報、マスク処理された対象物Bに関する情報を位置情報と共に記憶部31に保存する(ステップS7)。
【0063】
次に、
図10を参照して、監視処理部20における処理について説明する。監視処理部20は、各種センサからセンサデータを入力する(ステップS11)。具体的には、監視処理部20は、定点検出センサ5から定点に関する情報を入力する。また、監視処理部20は、車輪速センサ6から車両Mの車輪の回転角度に関する情報を入力する。また、監視処理部20は、加速度センサ7から車両Mに作用する加速度に関する情報を取得する。監視処理部20は、例えばジャイロセンサから車両Mの運動に関する情報を取得する。
【0064】
次に監視処理部20の定点計数部21は、自車位置を算出する(ステップS12)。監視処理部20は、定点に関する情報に基づいて、車両Mの基点からの移動距離を算出して、自車位置を算出する。また、監視処理部20は、車両Mの車輪の回転角度に基づいて、車両Mの移動距離を算出してもよい。
【0065】
次に監視処理部20は高精細カメラ3から第2領域Fの画像情報を入力する(ステップS13)。例えば、高精細カメラ3で撮影されたカラー画像を取得する。また、監視処理部20は、第2領域Fの画像情報に、当該第2領域Fの位置情報を関連付ける。
【0066】
次に監視処理部20の振動補正部23は、高精細カメラ3から入力した画像情報について、振動補正を行う(ステップS14)。具体的には、隣り合う複数の第2領域F同士の画像情報について、相対的な位置関係を補正する。例えば、第2領域Fの位置情報に基づいて、正しい位置となるように、第2領域F同士の相対的な位置関係を補正する。
【0067】
次に監視処理部20の支障物抽出部24は、相対的な位置関係が補正された複数の第2領域Fの画像情報から支障物を抽出する(ステップS15)。具体的には、支障物検知処理部10で検出された支障物の情報に基づいて、画像情報から当該支障物を抽出する。
【0068】
ステップS15の処理では、支障物検知処理部10から出力された動作開始信号を受信することをきっかけとして、画像情報から支障物の情報を抽出する。このとき画像情報の位置と、高速ラインスキャンセンサで取得した情報の位置とが前後にずれているときは、動作開始信号又は高精細カメラ3で取得した画像情報をバッファリングしておき、高速ラインスキャンセンサ2で、画像情報の位置と同じ位置の情報を取得した段階で、画像情報から支障物を抽出してもよい。
【0069】
次に監視処理部20の画像処理部25は、画像処理を行い(ステップS16)、補正後の画像情報を表示部32に出力し、(リアルタイム)表示を行う。また、画像処理部25は、抽出された支障物について、例えば強調表示を行ってもよい。また、画像処理部25は、マスク処理された対象物について、表示しないようにすることができる。
【0070】
次に監視処理部20は、補正後の第2領域Fの画像情報、対象物Bに関する情報、抽出された支障物に関する情報、マスク処理された対象物Bに関する情報を位置情報と共に記憶部31に保存する(ステップS17)。
【0071】
このような支障物検知装置1は車両Mを移動させながら高速ラインスキャンセンサ2及び高精細カメラ3によって車両Mの周囲の路面及び路面上の対象物Bの情報を取得する。この支障物検知装置1は、振動補正部13を備え、隣り合う複数の第1領域E同士の情報について相対的な位置関係を補正することができる。これにより、車両Mの移動によって車両Mが振動して、隣り合う複数の第1領域Eの相対的な位置関係にズレが生じても振動補正部13によって補正することができる。この結果、支障物検知装置1は、車両Mの移動に伴う振動の影響を抑制して、対象物Bの検出精度の低下を抑えることができる。また、支障物検知装置1では、振動の影響を抑制することができるので、車両Mの移動速度を増加させて、対象物Bを検出することができる。また、車両Mが走行する路面の凹凸による振動の影響を抑制することができる。
【0072】
また、支障物検知装置1は、車両Mの位置情報を取得する定点検出センサ5を備え、振動補正部13は、位置情報に基づいて、複数の第1領域E同士の情報について相対的な位置関係を補正することができる。これにより、高速ラインスキャンセンサによって取得された第1領域Eの情報に、定点検出センサ5によって取得された位置情報を紐付けて、複数の第1領域E同士の相対的な位置関係のズレを補正することができる。その結果、車両Mの移動に伴う振動の影響を抑制して、対象物Bの検出精度の低下を抑制することができる。
【0073】
また、支障物検知装置1は、第1領域Eの情報に位置情報を関連づけて記憶する記憶部31を備えている。これにより、支障物検知装置1は、車両Mの移動中にリアルタイムで第1領域Eの情報を使用することに加えて、オフラインで第1領域Eの情報を使用することもできる。支障物検知装置1は、オフラインで、対象物Bの存在の有無、対象物Bの位置、大きさ等を確認することができる。
【0074】
また、支障物検知装置1の記憶部31は、第2領域Fの画像情報に位置情報を関連づけて記憶することができる。これにより、支障物検知装置1は、オフラインで第2領域Fの画像情報を使用することもできる。支障物検知装置1は、オフラインで、対象物Bの存在の有無、対象物Bの位置、大きさ等を確認することができる。
【0075】
また、支障物検知装置1は、記憶部31に、過去に検出された対象物(既知物体)Bに関する情報が記憶されているので、この既知物体に関する情報に基づいて、次回の測定の際に検出された対象物Bから既知物体を除外することができる。これにより、既知物体が除外された後(マスク処理された後)の情報に基づいて、対象物Bを検出するので、対象物Bの危険性を判定する際の判定精度を向上させることができる。
【0076】
また、支障物検知装置1の高速ラインスキャンセンサ2は、第1領域Eの情報として、凹凸形状に関する情報を取得する。これにより、凹凸形状に関する情報に基づいて、対象物Bを検出することができる。また、支障物検知装置1は、高精細カメラ3で取得した画像情報と、高速ラインスキャンセンサ2で検出された凹凸形状に関する情報とを照合することで、対象物Bの危険性を判定する際の判定精度を向上させることができる。凹凸形状に関する情報に、画像情報を重ね合わせることで、対象物Bの質感や材質等を考慮して、対象物Bが危険物であるか否かを判定することができる。
【0077】
本発明は、前述した実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で下記のような種々の変形が可能である。
【0078】
例えば、上記の実施形態では、第1センサを高速ラインスキャンセンサとしているが、第1センサはその他のセンサでもよい。例えば、電磁波や超音波など、対象物を検出可能な検出波を出力するセンサを、第1センサとして使用してもよい。また、第1センサは、車両Mの前部に設置されるものに限定されず、例えば車両Mの後部、底部、側部に設けられているものでもよい。
【0079】
また、上記の実施形態では、第2センサを高精細カメラ3としているが、第2センサはその他のセンサでもよい。例えば、カラーではなくモノクロの画像を取得するカメラを第2センサとしてもよい。また、第2センサは、高精細ではない画像情報を取得するものでもよい。また、対象物検知システムは、第2センサとして、複数種類のカメラを備える構成でもよい。
【0080】
また、移動体の周囲の第1領域及び第2領域は、移動体が移動する路面(移動体より下方の領域)に限定されず、移動体より側方の領域でもよく、移動体より上方の領域でもよい。
【0081】
また、支障物検知システムは、オンライン検査に限定されず、支障物を判定するためのパラメータや条件を変えてオフラインで処理(オフラインシミュレート機能)を実施してもよい。
【0082】
また、上記実施形態では、支障物検知システムを車両に搭載した場合について説明しているが、支障物検知装置システムを車両以外の移動体に搭載してもよい。例えば、ロボット、飛行機、船舶、鉄道などに、支障物検知システムを搭載してもよい。また、支障物検知システムは、移動体に搭載せずに、その他の場所や物に設置してもよい。例えば、工場、店舗、病院、空港、駅、走行路周辺の建築物などに、支障物検知システムを設置して、危険のおそれがある対象物を支障物として検知してもよい。なお、対象物は静止物に限定されず、移動する物、人、動物でもよい。また、支障物は、危険な対象物に限定されず、障害となる対象物、特定の条件に合致する対象物でもよい。
【符号の説明】
【0083】
1 支障物検知装置(対象物検知システム)
2 高速ラインスキャンセンサ(第1センサ)
3 高精細カメラ(第2センサ)
4 支障物検知ユニット
5 定点検出センサ(位置情報センサ)
10 支障物検知処理部(第1処理部)
13 振動補正部(第1補正部)
20 監視処理部(第2処理部)
23 振動補正部(第2補正部)
31 記憶部(第1記憶部、第2記憶部、既知情報記憶部)
B 落下物(対象物、支障物)
E 第1領域
F 第2領域
M 車両(移動体)