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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-22
(45)【発行日】2022-03-30
(54)【発明の名称】プレスフィット端子
(51)【国際特許分類】
   H01R 12/58 20110101AFI20220323BHJP
【FI】
H01R12/58
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2017138871
(22)【出願日】2017-07-18
(65)【公開番号】P2018063937
(43)【公開日】2018-04-19
【審査請求日】2020-06-18
(31)【優先権主張番号】P 2016200607
(32)【優先日】2016-10-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】特許業務法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山中 拓哉
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 哲也
(72)【発明者】
【氏名】小林 和将
(72)【発明者】
【氏名】中西 雄一
(72)【発明者】
【氏名】島田 茂樹
【審査官】藤島 孝太郎
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2005/0087429(US,A1)
【文献】特開2008-165987(JP,A)
【文献】特開2012-169190(JP,A)
【文献】特開平01-232674(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 12/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路基板に設けられたスルーホール内に挿入され、前記スルーホールの内壁に対して弾性的に接触した状態で前記スルーホールと導通接続されるプレスフィット端子であって、
前記スルーホールに対する挿入方向の先端側に位置する先端部と、
前記先端部の反対側に位置する基部と、
開口部を介して互いに対向して配置され、前記先端部および前記基部の間に位置して両者を連結するとともに外側に向けて張り出す一対の弾性接触片と、を備え、
前記先端部は、前記弾性接触片の先端から前方方向に伸びる直線部分と、前記直線部分の先端から前記前方に向けて幅狭化した幅狭部と、を有し、
前記先端部の前記直線部分と前記弾性接触片との境界部を含む領域に、前記弾性接触片の張り出し方向と同方向に突出する応力分散部が設けられており、
前記幅狭部と前記応力分散部との間に前記直線部分が位置している、プレスフィット端子。
【請求項2】
前記応力分散部は前記張り出し方向に向けて円弧状に膨出している、請求項1に記載のプレスフィット端子。
【請求項3】
前記開口部のうち前記一対の弾性接触片の傾斜角度が変化する領域の内周縁部に、前記開口部の内側に向けて突出する内側応力分散部が設けられている請求項1または請求項2に記載のプレスフィット端子。
【請求項4】
前記一対の弾性接触片の間に当該一対の弾性接触片を連結して弾性力を付与する弾性付与部が設けられており、前記弾性付与部と前記弾性接触片と前記開口部との境界部に前記開口部の内側に向けて突出する内側応力分散部が設けられている請求項1または請求項2に記載のプレスフィット端子。
【請求項5】
前記内側応力分散部は前記開口部の内周縁部から円弧状に膨出している、請求項3または請求項4に記載のプレスフィット端子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示される技術は、プレスフィット端子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子機器に組み込まれる配線基板120のスルーホール121内に圧入され、導電回路と半田付けを行うことなく導通接続されるとともに、配線基板120に弾性力によって接触固定されるプレスフィット端子100が知られている(図10参照)。
【0003】
プレスフィット端子100は、タブ状端子の幅方向の中央部にスリット部106を設けるとともに、スリット部106を挟んで外側に向けて膨出させた一対の梁部材103のうち、最も外幅が大きい接触部105の外縁部間の幅をスルーホール121の内径よりも大きく設定し、梁部材103をスリット部106内に撓ませながらスルーホール121内に圧入することにより、スルーホール121と弾性的に接触させて、導通接続させるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-127610号公報
【文献】WO2008/038331号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このようなプレスフィット端子100において、温度や振動等による影響に対して接続信頼性を保証するためには、スルーホール121の内壁に対して一定以上の接触荷重を確保することが求められる。接触荷重を高くするためには、端子100の厚みを厚くしたり、梁部材103の幅を広くしたりすることにより、梁部材103の剛性を高くすることが考えられる。
【0006】
しかし、上述したようにプレスフィット端子100の剛性を高く設定すると、スルーホール121へ挿入する際の梁部材103の変形に伴ってプレスフィット端子100にかかる応力(ひずみ)が増大する。このような応力は、プレスフィット端子100のうち、特にスルーホール121への挿入時に変形が開始する部分、すなわち、梁部材103の、挿入方向における先端側の根元部分(スリット部106の先端に位置する部分)であり、かつ、変形により引き延ばされる外側の縁部付近(図10のWが指す領域)において集中して発生する。このような過度な応力集中は、プレスフィット端子に亀裂が入ったり、破損したりする原因となる。
【0007】
本明細書に開示される技術は、スルーホール挿入時の変形に伴ってプレスフィット端子にかかる応力を分散させることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書に開示される技術は、回路基板に設けられたスルーホール内に挿入され、前記スルーホールの内壁に対して弾性的に接触した状態で前記スルーホールと導通接続されるプレスフィット端子であって、前記スルーホールに対する挿入方向の先端側に位置する先端部と、前記先端部の反対側に位置する基部と、開口部を介して互いに対向して配置され、前記先端部および前記基部の間に位置して両者を連結するとともに外側に向けて張り出す一対の弾性接触片と、を備え、前記先端部と前記弾性接触片との境界部を含む領域、および、前記基部と前記弾性接触片との境界部を含む領域の少なくとも一方に、前記弾性接触片の張り出し方向と同方向に突出する応力分散部が設けられている。
【0009】
このような構成によれば、プレスフィット端子のうち、特にスルーホールへの挿入時に変形が開始する部分、すなわち、先端部と弾性接触片との境界部を含む領域、および、前記基部と前記弾性接触片との境界部を含む領域の少なくとも一方に設けられた応力分散部により、従来その位置に集中的に発生していた応力が分散される。そのメカニズムは、次のようであると考えられる。
【0010】
すなわちプレスフィット端子において、応力が集中して発生する部分に外側に向けて突出した形態の応力分散部を設けると、応力を受ける領域の範囲が応力分散部により広がり、単位面積にかかる応力(最大値)が小さくなる。よって、集中的に発生する応力を分散させることができる。
【0011】
上記応力分散部は、張り出し方向に向けて円弧状に膨出している形態としてもよい。このような構成によれば、応力分散部を例えば角部を有する突状や三角状等に突出させる構成と比較して、応力分散部にかかる応力がより均等に分散され易くなる。なお円弧状とは、その両端部が弾性接触片、および、先端部または基部と緩やかに連続するように曲面状または平面状とされている場合を含む。
【0012】
また、開口部のうち一対の弾性接触片の傾斜角度が変化する領域の内周縁部に、開口部の内側に向けて突出する内側応力分散部を設ける構成としてもよい。
【0013】
あるいは、一対の弾性接触片の間に当該一対の弾性接触片を連結して弾性力を付与する弾性付与部が設けられており、弾性付与部と弾性接触片と開口部との境界部に開口部の内側に向けて突出する内側応力分散部が設けられる構成としてもよい。
【0014】
これらの構成によれば、スルーホールへの挿入時の変形により引き延ばされて大きな応力が集中的に発生する開口部の内周側において応力を広範囲に分散させることができるから、単位面積あたりにかかる応力を小さくすることができる。
【0015】
さらに、内側応力分散部は開口部の内周縁部から円弧状に膨出している形態としてもよい。このような構成によれば、応力分散部を例えば角部を有する突状や三角状等に突出させる構成と比較して、応力分散部にかかる応力がより均等に分散され易くなる。なお円弧状とは、その両端部が弾性接触片および弾性付与部と緩やかに連続するように曲面状または平面状とされている場合を含む。
【発明の効果】
【0016】
本明細書に開示される技術によれば、スルーホール挿入時の変形による応力を分散させることができるプレスフィット端子が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施形態1のプレスフィット端子の平面図
図2】プレスフィット端子を回路基板のスルーホール内に挿入する過程を示す平断面図
図3】プレスフィット端子を回路基板のスルーホール内に挿入した状態を示す平断面図
図4】実施形態2のプレスフィット端子を回路基板のスルーホール内に挿入する過程を示す平断面図
図5】プレスフィット端子を回路基板のスルーホール内に挿入した状態を示す平断面図
図6】実施形態3のプレスフィット端子の平面図
図7】実施形態4のプレスフィット端子の平面図
図8】プレスフィット端子の断面図
図9】他の実施形態のプレスフィット端子の断面図
図10】従来のプレスフィット端子を回路基板のスルーホール内に挿入した状態を示す平断面図
【発明を実施するための形態】
【0018】
<実施形態1>
実施形態1を図1ないし図3によって説明する。
【0019】
プレスフィット端子10は、回路基板20のスルーホール21に圧入されるものであって、銅合金等の導電性に優れた金属板材をプレス加工することにより、全体として細長いタブ状に形成されている。以下の説明においては、図1における下側を前方(挿入方向)、あるいは、先端側とし、上側を後方とする。
【0020】
本実施形態のプレスフィット端子10はニードルアイ型のプレスフィット端子であって、回路基板20のスルーホール21内に挿入される端子部11と、図示しない他の端子に装着するための取付部19と、を備えている。
【0021】
端子部11のうち先端側(図1の下側)に配される先端部12は、回路基板20のスルーホール21へガイドするべく先細状とされており、先端部12の反対側(図1の上側)は、上述した取付部19に繋がる基部14とされている。
【0022】
端子部11のうち、先端部12と基部14との間には、先端部12と基部14とを連結するとともに外側に向けて山形に張り出す一対の弾性接触片13が設けられている。弾性接触片13の外側の側縁部は、先端に向かって幅狭化した先端部12の側縁部と連続するとともに後方に向けて徐々に外側(張り出し方向)に張り出して、前後方向における中央部が最も外側に張り出した頂部15とされている。また、頂部15より後方側は徐々に縮径して、後方に向けてやや縮径している基部14の側縁部と連続するようになっている。
【0023】
これら一対の弾性接触片13の間は、前後方向に延びる長孔状の開口部16とされている。すなわち、一対の弾性接触片13は、開口部16を介して互いに対向して配置されている。この開口部16の孔幅は、前後方向における中央部がやや広くなるように設定されている。
【0024】
上述した一対の弾性接触片13のうち最も外側に張り出した部分、すなわち、頂部15は、開口部16の幅広部分と前後方向において同位置とされている。また、各弾性接触片13の幅寸法は、前後方向における中央部(頂部15の位置)が大きく、両端部(先端および後端)が小さくなるように設定されている。
【0025】
本実施形態のプレスフィット端子10は、先端部12と弾性接触片13との境界部を含む領域、換言すると、前後方向において開口部16の先端に対応する位置において、側縁部から外側(弾性接触片13の張り出し方向)に向けて膨出する応力分散部17が設けられている。応力分散部17は、その両端部が先端部12および弾性接触片13と緩やかに連続する円弧状に、換言すると、なだらかな山状に膨出している。
【0026】
より詳細に説明すると、応力分散部17は、その外側の縁部が滑らかな曲面で構成されているとともに、応力分散部17と先端部12との境界部、および、応力分散部17と弾性接触片13との境界部とが、ともに、滑らかな曲面で構成されている。
【0027】
これらの応力分散部17の一対の頂部18間の寸法L2は、自然状態において弾性接触片13の一対の頂部15間の寸法L0より小さくなるように設定されており、プレスフィット端子10が回路基板20のスルーホール21内に挿入された状態において、スルーホール21の内壁とは接触しないように設定されている。すなわち、応力分散部17の一対の頂部18間の寸法L2は、スルーホール21の内径L1よりも小さい寸法に設定されている。
【0028】
なお、これらの先端部12、一対の弾性接触片13、基部14、応力分散部17、および、取付部19は、全て同等の板厚の板状とされるとともに、同一面内に配されている。
【0029】
次に、本実施形態のプレスフィット端子10の作用について説明する。図2に示すように、プレスフィット端子10を回路基板20のスルーホール21内に先端部12側から挿入すると、まず、一対の弾性接触片13の先端側の側縁部がスルーホール21の開口縁部に突き当たる。プレスフィット端子10をスルーホール21内にさらに挿入すると、弾性接触片13の側縁部がスルーホール21の開口縁部に押圧されることにより、弾性接触片13が開口部16内に徐々に撓みながらスルーホール21内に進入する。
【0030】
そして、一対の弾性接触片13の頂部15がスルーホール21の開口縁部を通り過ぎると、頂部15がスルーホール21の内壁に押し付けられた状態となる。さらに、所定位置まで挿入することにより、スルーホール21内とプレスフィット端子10とが正規の位置で良好に導通接続される。(図3参照)。
【0031】
このように、一対の弾性接触片13がスルーホール21の内壁に押し付けられて変形する際には、プレスフィット端子10のうち、特に変形が開始する部分、すなわち、先端部12および弾性接触片13の境界部分であり、かつ、変形により引き延ばされる外側の縁部付近において大きな応力集中が発生する。
【0032】
しかし本実施形態のプレスフィット端子10によれば、この大きな応力が発生する部分に応力分散部17が設けられているから、発生した応力を従来のように一箇所に集中させることなく広範囲に分散させることができ、もって、単位面積あたりにかかる応力を小さくすることができる。この結果、プレスフィット端子10に亀裂が入ったり、破損したりすることを抑制することができる。
【0033】
<実施形態2>
次に、本発明の実施形態2を図4および図5によって説明する。なお、以下においては実施形態1と異なる構成についてのみ説明するものとし、実施形態1と同様の構成には各構成に付した符号の数字に20を加えた数字の符号を用いるものとする。
【0034】
本実施形態のプレスフィット端子30は、上述した実施形態1のプレスフィット端子10とは、先端部および弾性接触片の形態が相違している。
【0035】
具体的には、本実施形態のプレスフィット端子30は、一対の各弾性接触片33の前後方向における幅寸法がどの位置もほぼ同等となるように設定されている。換言すると、開口部36の内周縁は一対の弾性接触片33の外側の側縁部に沿うように設定されている。
【0036】
また、一対の弾性接触片33は、先端側から後方に向けて徐々に張り出す第1傾斜部33Aと、第1傾斜部33Aに連なって軸方向(前後方向、挿入方向)に沿って延びる接触部33Bと、接触部33Bに連なって後方に向けて徐々に縮径する第2傾斜部33Cと、から構成されている。
【0037】
また、本実施形態の端子部31の先端部は、挿入ガイド部32とされている。挿入ガイド部32は、弾性接触片33の先端から軸方向(前方)に延びる姿勢ガイド部32Bと、この姿勢ガイド部32Bの先端から前方に向けて幅狭化した位置ガイド部32Aと、を備えている。
【0038】
本実施形態のプレスフィット端子30にも、挿入ガイド部32と弾性接触片33との境界部を含む領域、換言すると、前後方向において開口部36の先端に対応する位置において、側縁部から外側(弾性接触片33の張り出し方向)に向けて膨出する応力分散部37が設けられている。これらの応力分散部37も、その両端部が挿入ガイド部32および弾性接触片33と緩やかに連続する円弧状に、換言すると、なだらかな山状に膨出している。これらの応力分散部37の一対の頂部間の寸法L12は、自然状態における弾性接触片33の一対の接触部33B間の寸法L10より小さくなるように設定されており、かつ、プレスフィット端子30が回路基板20のスルーホール21内に挿入された状態において、スルーホール21の内壁とは接触しないように設定されている。すなわち、応力分散部37の一対の頂部間の寸法L12は、スルーホール21の内径よりも小さい寸法に設定されている。
【0039】
なお、本実施形態においても、挿入ガイド部32、一対の弾性接触片33、基部34、応力分散部37、および、取付部39は、全て同等の板厚の板状とされるとともに、同一面内に配されている。
【0040】
このような本実施形態のプレスフィット端子30によっても、上記実施形態1と同様に、スルーホール21への挿入時の変形により大きな応力が集中的に発生する部分に応力分散部37が設けられているから、発生した応力を広範囲に分散させることができ、もって、単位面積あたりにかかる応力を小さくすることができる。この結果、プレスフィット端子30に亀裂が入ったり、破損したりすることを抑制することができる。
【0041】
<実施形態3>
次に、実施形態3を図6によって説明する。なお、以下においては実施形態1と異なる構成についてのみ説明するものとし、実施形態1と同様の構成には各構成に付した符号の数字に30を加えた数字の符号を用いるものとする。
【0042】
本実施形態のプレスフィット端子40は、上述した実施形態1と類似するプレスフィット端子に内側応力分散部50を設けた形態とされている。
【0043】
本実施形態のプレスフィット端子40の一対の弾性接触片43は、上記実施形態2と同様に、各弾性接触片43の前後方向における幅寸法がどの位置もほぼ同等となるように設定されている。すなわち、開口部46の内周縁部(弾性接触片43の内側の側縁部)は一対の弾性接触片43の外側の側縁部にほぼ沿うように設定されている。
【0044】
一対の弾性接触片43は、先端側から後方に向けて徐々に張り出す第1傾斜部43Aと、第1傾斜部43Aに連なって軸方向(前後方向、挿入方向X)に沿って延びる接触部43Bと、接触部43Bに連なって後方に向けて徐々に縮径する第2傾斜部43Cと、から構成されている。第1傾斜部43Aおよび第2傾斜部43Cは、プレスフィット端子40のスルーホール21への挿入方向Xと交差する方向に延びている。
【0045】
第1傾斜部43Aおよび接触部43Bの境界部分、すなわち、第1傾斜部43Aの後方側の端部の、弾性接触片43の傾斜角度が変化する領域には、開口部46の内側に向けて突出する第1内側応力分散部50Aが設けられている。第1内側応力分散部50Aは、開口部46の内周縁部から内側に向けて、その両端部が第1傾斜部43Aおよび接触部43Bと緩やかに連続する円弧状に、換言すると、なだらかな山状に膨出している。
【0046】
また、接触部43Bおよび第2傾斜部43Cの境界部分、すなわち、第2傾斜部43Cの前方側の端部の、弾性接触片43の傾斜角度が変化する領域には、開口部46の内側に向けて突出する第2内側応力分散部50Bが設けられている。第2内側応力分散部50Bは、開口部46の内周縁部から内側に向けて、その両端部が接触部43Bおよび第2傾斜部43Cと緩やかに連続する円弧状に、換言すると、なだらかな山状に膨出している。
【0047】
このような本実施形態のプレスフィット端子40によれば、上記実施形態1と同じ応力分散部47に加え、スルーホール21への挿入時の変形により引き延ばされて大きな応力が集中的に発生する第1傾斜部43Aと接触部43Bとの境界部分(傾斜角度が変化する領域)の内側、および、接触部43Bと第2傾斜部43Cとの境界部分(傾斜角度が変化する領域)の内側に、内側応力分散部50A,50Bが設けられているから、開口部46の内周側において発生した応力を広範囲に分散させることができ、もって、単位面積あたりにかかる応力を小さくすることができる。
【0048】
<実施形態4>
次に、実施形態4を図7および図8によって説明する。なお、以下においては実施形態2と異なる構成についてのみ説明するものとし、実施形態2と同様の構成には各構成に付した符号の数字に30を加えた数字の符号を用いるものとする。
【0049】
本実施形態のプレスフィット端子60は、上述した実施形態2のプレスフィット端子30に、一対の弾性接触片63に対して弾性力を付与する弾性付与部71を設けるとともに、内側応力分散部70を設けた形態とされている。
【0050】
具体的には、一対の弾性接触片63の第1傾斜部63Aのうち先端側の領域には、当該先端側の全領域に亘って一対の第1傾斜部63Aに架け渡されて両者を連結する先端側弾性付与部71Aが設けられている。先端側弾性付与部71Aは弾性接触片63の板厚よりも薄い板状をなしており、図8に示すように、一対の弾性接触片63の板厚方向(高さ方向)における中央部において架け渡され、全体として断面H形状となるように配されている。また先端側弾性付与部71Aの開口部66側の縁部は、図7に示すように、開口部66の外側に向けて湾曲した湾曲面とされ、開口部66の内周縁部と緩やかに連続した形態とされている。
【0051】
一方、一対の弾性接触片63の接触部63Bおよび第2傾斜部63Cの全領域には、一対の接触部63Bおよび第2傾斜部63Cに架け渡されて全体を連結する基部側弾性付与部71Bが設けられている。基部側弾性付与部71Bは先端側弾性付与部71Aと同等の厚み、すなわち、弾性接触片63の板厚よりも薄い板状をなしており、一対の弾性接触片63の板厚方向(高さ方向)における中央部において架け渡されている(図8参照)。また基部側弾性付与部71Bの開口部66側の縁部も開口部66の外側に向けて湾曲した湾曲面とされており、開口部66の内周縁部と緩やかに連続した形態とされている(図7参照)。
【0052】
本実施形態のプレスフィット端子60において、先端側弾性付与部71Aと第1傾斜部63A(弾性接触片63)と開口部66との境界部には、開口部66の内側に向けて膨出する第1内側応力分散部70Aが設けられている。第1内側応力分散部70Aは、その両端部が先端側弾性付与部71Aおよび第1傾斜部63A(弾性接触片63)と緩やかに連続する円弧状に、換言すると、なだらかな山状に膨出している。第1内側応力分散部70Aは、先端側弾性付与部71Aと同等の厚みを有しており、表裏において先端側弾性付与部71Aと面一とされている。
【0053】
また、基部側弾性付与部71Bと、第1傾斜部63Aおよび接触部63Bの境界部(弾性接触片63)と、開口部66と、の境界部には、開口部66の内側に向けて膨出する第2内側応力分散部70Bが設けられている。第2内側応力分散部70Bも、その両端部が基部側弾性付与部71Bおよび第1傾斜部63A(弾性接触片63)と緩やかに連続する円弧状に、換言すると、なだらかな山状に膨出している。第2内側応力分散部70Bは、基部側弾性付与部71Bと同等の厚みを有しており、基部側弾性付与部71Bと表裏において面一とされている。
【0054】
このような本実施形態のプレスフィット端子60によれば、上記実施形態2と同様の応力分散部67に加え、スルーホール21への挿入時の変形により大きな応力が集中的に発生する開口部66の内周側の特定の部分に内側応力分散部70が設けられているから、発生した応力を広範囲に分散させることができ、もって、単位面積あたりにかかる応力を小さくすることができる。
【0055】
<他の実施形態>
本明細書に開示される技術は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も技術的範囲に含まれる。
【0056】
(1)上記実施形態では、プレスフィット形状としてニードルアイ型を実施例の構成としたが、これに限るものではなく、例えばS型、N型、H型、M型、船型等種々のプレスフィット形状を用いてもよい。
【0057】
(2)上記実施形態では、応力分散部17,37,47,67を先端部12,42(挿入ガイド部32,62)と、弾性接触片13,33,43,63との境界部を含む領域に設ける構成としたが、同様の応力分散部を、弾性接触片13,33,43,63と基部14,34,44,64との境界部を含む領域に設けたり、両方に設けたりしてもよい。
【0058】
(3)上記実施形態1,2,4では、応力分散部17,37,67の膨出寸法分、その位置における弾性接触片13,33,63の幅寸法が広くなる構成としたが、例えば、図6に示す実施形態3のように、開口部46の内周縁部を応力分散部47の側縁部に沿う形態とし、各弾性接触片43の幅寸法が応力分散部47を設けた部分においても他の部分と同等幅となるようにしてもよい。
【0059】
(4)応力分散部の形態は上記実施形態に限るものではなく、例えば、平面視矩形の突状や、三角状、あるいは、一般的な円弧状等、任意の形態とすることができる。
【0060】
(5)上記実施形態3では、弾性接触片43を第1傾斜部43A、接触部43B、第2傾斜部43Cで構成し、開口部46のうち第1傾斜部43Aと接触部43Bとの境界部分、および、接触部43Bと第2傾斜部43Cとの境界部分の内周縁部に内側応力分散部50を設ける構成としたが、接触部43Bを省略したく字形状の弾性接触片とし、第1傾斜部と第2傾斜部との境界部(傾斜角度が変化する部分)に内側応力分散部を設ける構成としてもよい。
【0061】
(6)あるいは、弾性接触片を3回以上の複数回屈曲させた形態とし、各屈曲部(傾斜角度が変化する部分)に内側応力分散部を設ける構成とすることもできる。
【0062】
(7)上記実施形態4では、弾性付与部71が弾性接触片63と断面H形状になるように配される形態を示したが、弾性付与部の形態は上記実施形態に限るものではない。例えば図9に示すように、断面N字形状になるように配したり、一対の弾性接触片を断続的に連結する片状としてもよく、要は、弾性接触片の弾性力が向上する形態であればどのような形態でもよい。
【符号の説明】
【0063】
10,30,40,60:プレスフィット端子
11,31,41,61:端子部
12,42:先端部
13,33,43,63:弾性接触片
14,34,44,64:基部
15:頂部
16,36,46,66:開口部
17,37,46,67:応力分散部
18:頂部
20:回路基板
21:スルーホール
32,62:挿入ガイド部(先端部)
50,70:内側応力分散部
71:弾性付与部
X:挿入方向
図1
図2
図3
図4
図5
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図8
図9
図10