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  • 特許-回転支持部 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-22
(45)【発行日】2022-03-30
(54)【発明の名称】回転支持部
(51)【国際特許分類】
   F16H 57/021 20120101AFI20220323BHJP
   F16C 19/30 20060101ALI20220323BHJP
   F16C 19/46 20060101ALI20220323BHJP
   F16C 35/073 20060101ALI20220323BHJP
【FI】
F16H57/021
F16C19/30
F16C19/46
F16C35/073
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2017196723
(22)【出願日】2017-10-10
(65)【公開番号】P2019070404
(43)【公開日】2019-05-09
【審査請求日】2020-09-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000811
【氏名又は名称】特許業務法人貴和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長廣 佳
【審査官】増岡 亘
(56)【参考文献】
【文献】実開昭63-49020(JP,U)
【文献】特開2012-57666(JP,A)
【文献】特開昭50-52451(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 57/021
F16C 19/30
F16C 19/46
F16C 35/073
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向片側を向いた円輪状の段差面を有する軸と、
前記軸の周囲に前記軸に対する相対回転を可能に支持された環状の回転部材と、
互いに対向配置された前記段差面と前記回転部材の軸方向他端面との間に配置されたスラストニードル軸受と、を備え、
前記スラストニードル軸受は、全体が円輪状に構成され、軸方向他側面にスラスト軌道面が形成された平板状のレース本体と、前記レース本体と前記回転部材との間に設けられ、軸方向片側面が前記回転部材の軸方向他端面に支承されるとともに、径方向内端部または径方向外端部に軸方向片側に向けて折れ曲がった係合筒部を有するレース支持部材と、前記スラスト軌道面に沿って放射状に配列された複数本のニードルとを有するものであり、
前記係合筒部が、前記回転部材の軸方向他端部に嵌合しており
前記回転部材は、前記ニードルの全長よりも小さい径方向幅寸法を有しており、
前記レース本体の軸方向片側面は、前記レース支持部材の軸方向他側面に当接しており、かつ、前記レース支持部材の軸方向片側面は、前記回転部材の軸方向他端面に当接しており、
前記レース本体は、硬質金属板製で、前記レース支持部材よりも大きい厚さ寸法を有している、
回転支持部。
【請求項2】
前記レース支持部材のうちで、径方向に関して前記係合筒部が設けられた端部とは反対側の端部に、軸方向他側に向けて折れ曲がった保持筒部が設けられており、この保持筒部が前記レース本体の周面に嵌合している、請求項1に記載した回転支持部。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば自動車などの各種車両用の変速機(手動変速機及び自動変速機)や、エアコンディショナ用のコンプレッサ等の補機、エアコンプレッサ等の各種一般産業機械装置を構成する、回転支持部に関する。
【背景技術】
【0002】
図4は、特開2007-16965号公報に記載された、自動車用変速機を構成する回転支持部の従来構造の1例を示している。自動車用変速機では、図示しないクランクシャフトに対し結合されたメインシャフト1の周囲に、環状のギヤ2を回転自在に支持している。
【0003】
メインシャフト1は、段付き形状で、軸方向片側(図4の左側)に設けられた小径軸部3と、軸方向他側(図4の右側)に設けられた大径軸部4と、これら小径軸部3と大径軸部4とを連続する、軸方向片側を向いた段差面5とを有している。
【0004】
ギヤ2は、小径軸部3の周囲に回転自在に支持されている。このために、ギヤ2の内周面と小径軸部3の外周面との間にラジアルニードル軸受6を配置するとともに、ギヤ2の軸方向他端面と段差面5との間にスラストニードル軸受7を配置している。
【0005】
スラストニードル軸受7は、レース8と、複数本のニードル9とを備えている。このうちのレース8は、肌焼鋼などの硬質金属板製で、全体が円輪状に構成されており、軸方向片側面にスラスト軌道面10が形成されている。このようなレース8は、軸方向他側面が、段差面5に対し支承(バックアップ)されている。また、レース8の内周縁部を、小径軸部3の外周面に対して当接又は近接させることで、レース8の径方向に関する位置決めを図っている。複数本のニードル9は、それぞれの中心軸の方向を、レース8の直径方向に一致させた状態で、スラスト軌道面10に沿って放射状に配列されている。また、複数本のニードル9は、ギヤ2の軸方向他端面とスラスト軌道面10との間に挟持されている。したがって、図示の例では、ギヤ2の軸方向他端面がスラスト軌道面として機能する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2007-16965号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、自動車の低燃費化の要求に応えるべく、自動車の構成部品のさらなる小型化および軽量化が進められている。このような事情に鑑みて、自動車用変速機を構成するギヤの径方向寸法を小さくすることが考えられている。ただし、この場合、ギヤの軸方向端面の径方向幅寸法を十分に確保することが難しくなるため、ギヤの軸方向端面を、スラスト軌道面として直接利用することが難しくなる。
【0008】
そこで、スラストニードル軸受を構成するレースを、ギヤの軸方向端面に対して添設することが考えられるが、ギヤの軸方向端面は通常、径方向全幅にわたり平坦面状に構成されているため、ギヤの軸方向端面を利用してレースの径方向に関する位置決めを図ることはできない。
【0009】
また、ギヤの軸方向端面の硬度を十分に確保できない場合や、ギヤの軸方向端面の径方向幅寸法を十分に確保できない(ニードルの全長に比べて端面の径方向幅寸法が小さい)場合には、ギヤの軸方向端面に薄肉のレースを添設しただけでは、ギヤの軸方向端面がレースに作用するスラスト力を支承しきれずに変形し、図5に誇張して示すように、レースが波打つように弾性変形する可能性がある。そして、このようにレースに弾性変形が生じると、レースとギヤの軸方向端面との接触面積が小さくなり、レースにクリープが発生しやすくなる(ギヤに対して相対回転しやすくなる)。
【0010】
本発明は、上述のような事情に鑑みてなされたもので、その目的は、ギヤなどの回転部材の軸方向端面に添設されるレースに関して、径方向に関する位置決めを図れるとともに、クリープの発生を抑制できる構造を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の回転支持部は、軸と、回転部材と、スラストニードル軸受とを備える。
前記軸は、たとえば自動車用変速機を構成するメインシャフトであり、段付軸で、軸方向片側を向いた円輪状の段差面を有している。
前記回転部材は、たとえば周面に歯部を有するギヤで、全体が環状に構成されており、前記軸の周囲に前記軸に対する相対回転を可能に支持されている。
前記スラストニードル軸受は、互いに対向配置された前記段差面と前記回転部材の軸方向他端面との間に配置されている。
【0012】
本発明の回転支持部にあっては、前記スラストニードル軸受は、全体が円輪状に構成され、軸方向他側面にスラスト軌道面が形成された平板状のレース本体と、前記レース本体と前記回転部材との間に設けられ、軸方向片側面が前記回転部材の軸方向他端面に支承されるとともに、径方向内端部又は径方向外端部に軸方向片側に向けて折れ曲がった係合筒部を有するレース支持部材と、前記スラスト軌道面に沿って放射状に配列された複数本のニードルとを有するものであり、前記係合筒部が、前記回転部材の軸方向他端部に嵌合(内嵌又は外嵌)している。
また、本発明の回転支持部にあっては、前記回転部材は、前記ニードルの全長よりも小さい径方向幅寸法を有している。
前記レース本体の軸方向片側面は、前記レース支持部材の軸方向他側面に当接しており、かつ、前記レース支持部材の軸方向片側面は、前記回転部材の軸方向他端面に当接している。
前記レース本体は、硬質金属板製で、前記レース支持部材よりも大きい厚さ寸法を有している。
【0013】
本発明では、前記レース支持部材のうちで、径方向に関して前記係合筒部が設けられた端部とは反対側の端部に、軸方向他側に向けて折れ曲がった保持筒部を設け、この保持筒部を前記レース本体の周面に嵌合させることができる。
【0014】
本発明では、前記スラストニードル軸受を、前記複数本のニードルを転動自在に支持するための保持器を備えたものとすることもできる。
本発明では、前記レース本体と前記レース支持部材とを、互いに相対変位不能に固定することができる。
【発明の効果】
【0015】
上述の様に構成する本発明の回転支持部によれば、ギヤなどの回転部材の軸方向端面に添設されるレースに関して、径方向に関する位置決めを図れるとともに、クリープの発生を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本発明の実施の形態の第1例にかかる回転支持部の断面図である。
図2図2は、本発明の実施の形態の第2例にかかる回転支持部の断面図である。
図3図3は、本発明の実施の形態の第3例にかかる回転支持部の断面図である。
図4図4は、従来構造の回転支持部の1例を示す断面図である。
図5図5は、従来構造の回転支持部に組み込まれるレースに関して、ニードルとの接触に基づく弾性変形状態を誇張して示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[実施の形態の第1例]
実施の形態の第1例について、図1を用いて説明する。
図1は、本例の回転支持部11を示している。回転支持部11は、自動車用無段変速機の遊星歯車機構を構成するもので、メインシャフト1aと、ギヤ2aと、ブッシュ12と、スラストニードル軸受13とを備えている。
【0018】
メインシャフト1aは、特許請求の範囲に記載した軸に相当し、図示しないエンジンのクランクシャフトに対しクラッチ機構を介して結合されるものであり、たとえば炭素鋼製で、段付軸状に構成されている。メインシャフト1aは、軸方向片側(図1の左側)に設けられた小径軸部3aと、軸方向他側(図1の右側)に設けられた大径軸部4aと、これら小径軸部3aと大径軸部4aとを連続する、軸方向片側を向いた段差面5aとを有している。段差面5aは、メインシャフト1aの中心軸に直交する仮想平面上に存在する平坦面であり、スラスト軌道面として機能する。
【0019】
ギヤ2aは、特許請求の範囲に記載した回転部材に相当し、メインシャフト1aの周囲に、メインシャフト1aに対する相対回転を自在に配置されたサンギヤである。ギヤ2aは、たとえば炭素鋼製で、全体が円環状に構成されており、外周面には、円周方向に関する凹凸形状の歯部14が設けられている。ギヤ2aは、小径軸部3aの周囲に回転自在に支持されている。このために、ギヤ2aの内周面と小径軸部3aの外周面との間に円環状のブッシュ(滑り軸受)12を配置するとともに、互いに対向配置されたギヤ2aの軸方向他端面と段差面5aとの間にスラストニードル軸受13を配置している。本例のギヤ2aは、前記図4に示した従来構造のギヤ2に比べて、径方向幅寸法が小さく、後述するニードル17の全長よりも径方向幅寸法が小さくなっている。このため、本例では、ギヤ2aの軸方向他端面をスラスト軌道面として利用していない。また、ギヤ2aの軸方向他端面と内周面との連続部(角部)には、部分円すい面状の面取り15が形成されている。なお、ギヤ2aの内周面と小径軸部3aの外周面との間には、ブッシュ12に代えて、ラジアルニードル軸受を配置することもできる。
【0020】
スラストニードル軸受13は、円輪状のレース16と、複数本のニードル17と、保持器24とを備えている。このうちのレース16は、レース本体18と、レース支持部材19とから構成されている。レース本体18は、たとえば肌焼鋼や浸炭鋼、クロムモリブデン鋼などの硬質金属板製で、全体が円輪状に構成されている。また、レース本体18は、断面矩形状で、平板状に構成されている。レース本体18の厚さ寸法(板厚)は、ニードル17から作用するスラスト力に起因して生じる弾性変形を十分に抑えられる程度に曲げ剛性を高めるべく、前記図4及び図5に示した従来構造のレース8の厚さ寸法よりも十分に大きくなっている。つまり、レース本体18の厚さ寸法は、荷重の大きさなどの条件をもとに弾性変形を十分に抑えられるように適宜決定する。また、このようなレース本体18の厚さ寸法は、レース本体18の表面からニードル17の直径の2%程度の深さ位置に相当する、最大せん断応力の発生位置(最大せん断深さ)を考慮して決定する。また、レース本体18の軸方向他側面は、レース本体18の中心軸に直交する仮想平面上に存在する平坦面であり、スラスト軌道面20が形成されている。
【0021】
レース支持部材19は、たとえばステンレス鋼板などの金属板にプレス加工(曲げ加工)を施して造られており、断面クランク形で、全体が円環状に構成されている。レース支持部材19を構成する金属板の厚さ寸法は、レース本体18の厚さ寸法よりも小さい。レース支持部材19は、円輪状の被挟持板部21と、円筒状の係合筒部22と、円筒状の保持筒部23とを有している。
【0022】
被挟持板部21は、ギヤ2aの軸方向他端面とレース本体18との間に軸方向に挟持されている。これにより、被挟持板部21の軸方向片側面は、ギヤ2aの軸方向他端面に支承(バックアップ)されている。
【0023】
係合筒部22は、被挟持板部21の径方向内端部から軸方向片側に向けて直角に折れ曲がるように設けられている。係合筒部22の外径寸法は、ギヤ2aの軸方向他端部の内径寸法よりもわずかに小さくなっており、係合筒部22aの内径寸法は、メインシャフト1aの小径軸部3aの外径寸法よりも大きくなっている。本例では、このような係合筒部22を、ギヤ2aの軸方向他端部に、隙間嵌めにより内嵌している。これにより、係合筒部22を、ギヤ2aの軸方向他端部の内周面に対し径方向に係合させて、ギヤ2aに対するレース支持部材19の径方向に関する位置決めを図っている。また、係合筒部22の軸方向寸法は、被挟持板部21の軸方向片側面をギヤ2aの軸方向他端面に当接させた状態で、係合筒部22の軸方向片端部(先端部)が、ブッシュ12の軸方向他端部と干渉しない長さに規制されている。
【0024】
保持筒部23は、被挟持板部21の径方向外端部から軸方向他側に向けて直角に折れ曲がるように設けられている。保持筒部23の内径寸法は、レース本体18の外径寸法よりもわずかに大きくなっている。本例では、このような保持筒部23を、レース本体18の外周面に、隙間嵌めにより外嵌している。これにより、保持筒部23を、レース本体18の外周面に対し径方向に係合させて、レース支持部材19に対するレース本体18の径方向に関する位置決めを図っている。
【0025】
複数本のニードル17は、それぞれの中心軸の方向を、レース16の直径方向に一致させた状態で、スラスト軌道面20に沿って放射状に配列されている。また、複数本のニードル17は、円輪状の保持器24により転動自在に保持された状態で、スラスト軌道面20と段差面5aとの間に挟持されている。
【0026】
以上のような構成を有する本例の回転支持部11によれば、ギヤ2aの軸方向他端面に添設されるレース16に関して、径方向に関する位置決めを図れるとともに、クリープの発生を抑制できる。
すなわち本例では、レース16を、単一の部材から構成するのではなく、互いに別体のレース本体18とレース支持部材19とを組み合わせて構成している。
そして、このうちのレース支持部材19に、径方向に関する位置決め機能を持たせるべく、径方向内端部に軸方向片側に向けて折れ曲がった係合筒部22を設け、この係合筒部22を、ギヤ2aの軸方向他端部に内嵌している。このため、ギヤ2aのように軸方向他端面が平坦面状に構成された部材に対しても、径方向に関する位置決めを図ることができる。
このように本例では、レース支持部材19に、径方向に関する位置決め機能を持たせることができ、スラスト軌道面20が形成されたレース本体18には、位置決め機能を持たせる必要がないため、レース本体18として、厚さ寸法が十分に大きく、曲げ剛性の高いものを使用可能になる。このため、ギヤ2aのうち、歯部14にのみ焼入れなどの硬化処理を施し、その他の部分には硬化処理を施していないなどの理由で、ギヤ2aの軸方向他端面がバックアップ面としての十分な硬度を有しない場合や、スラストニードル軸受13に作用するスラスト荷重が過大になるなどした場合にも、レース本体18に生じる弾性変形量を小さく抑えることができる。これにより、レース本体18に、前記図5に示したような、波打つような弾性変形が生じることを防止できる。したがって、レース本体18(レース16)にクリープが発生することを有効に防止できる。
以上のように本例では、ギヤ2aの軸方向他端面に添設されるレース16に関して、径方向に関する位置決めを図れるとともに、クリープの発生を抑制できる。
【0027】
さらに、本例の構造は、ギヤ2aの軸方向他端面の径方向幅寸法がニードル17の全長に比べて小さくなっているため、ギヤ2aの軸方向他端面に薄肉のレースを添設する構造を採用すると、当該レースの外径側部分(ギヤ2aによりバックアップされていない部分)が軸方向に折れ曲がるように変形し、レースのスラスト軌道面とニードル17の転動面との面圧が過大になり、これらスラスト軌道面や転動面にはく離に至る損傷を生じる可能性がある。これに対し、本例では、レース本体18の厚さ寸法(曲げ剛性)を十分に確保しているため、レース本体18に軸方向に折れ曲がるような変形が生じることを有効に防止できる。したがって、レース本体18の軸方向他側面に形成したスラスト軌道面20やニードル17の転動面に、面圧が過大になることに起因した、はく離に至る損傷が生じることを防止できる。
【0028】
また、本例のレース16は、径方向に関する位置決め機能を発揮するレース支持部材19と、クリープの発生を抑制する機能を発揮するレース本体18とを、組み合わせて構成されている。このため、例えば、単一の部材で両機能を発揮させるべく、厚さ寸法が十分に大きいレースを用意し、このレースに対して切削加工を施してギヤとの係合部(嵌合部)を形成するような場合に比べて、本例の構造では、製造作業を容易化できるとともに、製造コストを抑えることができる。
【0029】
さらに、レース支持部材19をギヤ2aに対して支持する作業以前に、レース支持部材19に設けた保持筒部23をレース本体18に外嵌することで、これらレース本体18とレース支持部材19とを組み合わせておけば、ギヤ2aに対して、レース支持部材19とレース本体18とを一体的に取り付けることができる。このため、組立作業の作業効率を向上することができる。
【0030】
[実施の形態の第2例]
実施の形態の第2例について、図2を用いて説明する。
図2は、本例の回転支持部11aを示している。本例では、メインシャフト1aの周囲に回転自在に支持されるギヤ2bとして、前述した実施の形態の第1例のギヤ2aに比べて内径寸法及び外径寸法が大きいものを用いている。このような構成を有するギヤ2bとしては、たとえば内周面に歯部14aを有する内歯車(リングギヤ)がある。
【0031】
本例では、上述のようにギヤ2bの構造を変更することにともない、スラストニードル軸受13aの構造を変更している。すなわち、ギヤ2bに対するレース16aの径方向に関する位置決めを図るために、レース支持部材19aを構成する係合筒部22aを、被挟持板部21aの径方向外端部に設けている。そして、係合筒部22aを、ギヤ2bの軸方向他端部に、隙間嵌めにより外嵌している。
【0032】
また、被挟持板部21aの径方向内端部から軸方向他側に向けて直角に折れ曲がるように、保持筒部23aを設けている。そして、保持筒部23aを、レース本体18aの内周面に、隙間嵌めにより内嵌している。これにより、保持筒部23aを、レース本体18aの内周面に対し径方向に係合させて、レース支持部材19aに対するレース本体18aの径方向に関する位置決めを図っている。
【0033】
以上のような構成を有する本例の場合にも、ギヤ2bの軸方向他端面に添設されるレース16aに関して、径方向に関する位置決めを図れるとともに、クリープの発生を抑制できる。また、スラスト軌道面20及びニードル17の転動面に、はく離に至る損傷が生じることを防止できる。
その他の構成及び作用効果については、実施の形態の第1例と同じである。
【0034】
[実施の形態の第3例]
実施の形態の第3例について、図3を用いて説明する。
図3は、本例の回転支持部11bを示している。本例では、レース支持部材19bを構成する保持筒部23bの軸方向長さを、前述した実施の形態の第1例の構造よりも延長し、保持筒部23bの軸方向他端部を、レース本体18の軸方向他側面よりも軸方向他側に突出させている。また、保持筒部23bの軸方向他端部の円周方向複数個所(たとえば3個所または4個所)を径方向内方に曲げ形成して、当該部分に係止部25を形成している。係止部25の内接円の直径は、ニードル17を転動自在に保持するための保持器24の外径よりも少しだけ小さい。なお、係止部25は、保持筒部23bの軸方向他端部に全周にわたり連続するように形成することもできる。
【0035】
本例では、保持筒部23bの軸方向他端部に形成した係止部25を、保持器24の外周縁に係合させることにより、保持器24及び保持器24に保持された複数本のニードル17が、レース本体18から離れる方向(軸方向他側)に変位することを防止できる。このため、スラストニードル軸受13bの構成要素である、レース支持部材19bと、レース本体18と、保持器24と、複数本のニードル17とを、一体的に取り扱うことができる。したがって、組立作業の作業効率のさらなる向上を図れる。
その他の構成及び作用効果については、実施の形態の第1例と同じである。
【0036】
本発明を実施する場合に、レースを構成するレース本体とレース支持部材とを、たとえば接着剤や溶着などの固定手段を用いて、互いに相対変位不能に予め固定することもできる。また、前述した実施の形態の各例では、回転部材としてギヤを用いた場合について説明したが、回転部材はギヤに限らず、たとえばローラなど、周面に歯部を有しないものを用いることもできる。さらに、前述した実施の形態の各例では、メインシャフトに設けた段差面をスラスト軌道面として利用する場合について説明したが、この段差面をスラスト軌道面として利用せずに、段差面にスラスト軌道面が形成されたレースを添設して使用することもできる。また、本発明を実施する場合に、レース支持部材の径方向端部に設ける係合筒部及び保持筒部は、全周にわたり連続した構造に限らず、円周方向1乃至複数個所に不連続部を有する構造を採用しても良い。また、係合筒部は、回転部材の軸方向他端部に対して、隙間嵌めにより嵌合する構造に限らず、締り嵌め(圧入)により嵌合しても良いし、保持筒部についても、レース本体に対して、隙間嵌めにより嵌合する構造に限らず、締り嵌め(圧入)により嵌合しても良い。また、周囲に回転部材が支持される軸は、自身が回転する回転軸であっても良いし、自身は回転しない静止軸であっても良い。
【符号の説明】
【0037】
1、1a メインシャフト
2、2a、2b ギヤ
3、3a 小径軸部
4、4a 大径軸部
5、5a 段差面
6 ラジアルニードル軸受
7 スラストニードル軸受
8 レース
9 ニードル
10 スラスト軌道面
11、11a、11b 回転支持部
12 ブッシュ
13、13a、13b スラストニードル軸受
14、14a 歯部
15 面取り
16、16a レース
17 ニードル
18、18a レース本体
19、19a、19b レース支持部材
20 スラスト軌道面
21、21a 被挟持板部
22、22a 係合筒部
23、23a、23b 保持筒部
24 保持器
25 係止部
図1
図2
図3
図4
図5