(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-22
(45)【発行日】2022-03-30
(54)【発明の名称】二酸化炭素の回収・放出装置
(51)【国際特許分類】
B01D 53/04 20060101AFI20220323BHJP
B01J 20/18 20060101ALI20220323BHJP
B01J 20/34 20060101ALI20220323BHJP
【FI】
B01D53/04 220
B01J20/18 B
B01J20/34 H
(21)【出願番号】P 2017229593
(22)【出願日】2017-11-29
【審査請求日】2020-11-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古川 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】高城 敏己
(72)【発明者】
【氏名】杉田 澄雄
【審査官】長谷部 智寿
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/185445(WO,A1)
【文献】特開2014-224472(JP,A)
【文献】特開2003-238116(JP,A)
【文献】特表平10-508791(JP,A)
【文献】特開2007-229602(JP,A)
【文献】特表2017-527500(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0053565(US,A1)
【文献】国際公開第2010/128599(WO,A1)
【文献】特開昭55-022332(JP,A)
【文献】特開昭56-044021(JP,A)
【文献】特開2011-152526(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/02-53/18
B01J 20/18
B01J 20/34
A01G 7/02
C01B 13/02
F02M 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
取り込んだ外気の二酸化炭素を濃縮し、二酸化炭素を
前記外気よりも高濃度で含有する気体を外部設備に放出する二酸化炭素の回収・放出装置であって、
シート状成形物であって通気性を有するゼオライト
シートを
折り畳んで収容した通気性容器と、前記通気性容器の周囲に設置されたヒータとを備える吸着ユニットを多段に積層した吸着部と、
前記吸着部を収容した主要部と、
前記外気を取り込み、前記吸着部に送る送風ユニットと、
前記主要部に接続する保管容器と、
前記主要部に取り付けた第1の開閉バルブと、
前記主要部と前記保管容器とを接続する配管に取り付けた第2の開閉バルブと、
前記保管容器と前記外部設備とを接続する配管に取り付けた第3の開閉バルブを備えるとともに、
前記第1の開閉バルブを開け、前記第2の開閉バルブ及び前記第3の開閉バルブを閉じた状態で前記送風ユニットにより前記外気を前記吸着部に所定時間送って前記ゼオライト
シートに前記外気中の二酸化炭素を吸着させた後、前記送風ユニットの送風を停止して前記第1の開閉バルブを閉じ、
次いで、前記ヒータにより前記ゼオライト
シートを加熱して前記ゼオライト
シートから前記二酸化炭素を放出させた後、前記第2の開閉バルブを開けて前記主要部内の気体を前記保管容器へと送り、
その後、前記第3の開閉バルブを開けて前記保管容器内の前記気体を前記外部設備に放出する
ものであり、
前記ゼオライトシートは、折り畳んだ際の弾性回復力で前記通気性容器の側壁を押圧するように、外方に拡大する折り畳み形状を有することを特徴とする二酸化炭素の回収・放出装置。
【請求項2】
前記ゼオライトシートに重石が載置されていることを特徴とする請求項1記載の二酸化炭素の回収・放出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、取り込んだ外気の二酸化炭素を濃縮し、二酸化炭素を高濃度で含有する気体を外部設備に放出する二酸化炭素の回収・放出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
農業作物や園芸作物の栽培では、温度管理等の目的でビニールハウス等の温室で栽培することが行われている。しかしながら、温室は密封空間であり、日中は光合成のために室内の二酸化炭素が消費されて、作物の成長に悪影響を与えることが懸念されている。
【0003】
そこで、温室内に二酸化炭素ガス、あるいは二酸化炭素を高濃度で含有する気体を供給して室内の二酸化炭素濃度を高めることが考えられている。
【0004】
例えば、特許文献1では、ゼオライトの一種であるフェリエライトを収容した吸着塔に外気を送り、フェリエライトに二酸化炭素を吸着させた後、吸着塔内を減圧して二酸化炭素を放出させている。
【0005】
特許文献2では、高濃度の二酸化炭素を含有する燃料排ガスをゼオライトに供給して吸着させ、その後で燃料排ガスよりも二酸化炭素濃度が低い外気をゼオライトに供給し、二酸化炭素の濃度差によってゼオライトから二酸化炭素を放出させている。
【0006】
特許文献3では、ゼオライトでセル壁を形成した多数の流路を備えるハニカム構造体に外気を流通させるとともに、セル壁と接する、またはセル壁の交差点でセル壁内に埋めこまれた熱伝導性フィラメントにより、個々の流路を加熱・冷却して二酸化炭素を吸着・放出させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許第6090810号公報
【文献】特許第6179915号公報
【文献】特許第5904420号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかながら、特許文献1のように吸着塔を減圧したり、特許文献2のように二酸化炭素の濃度差を利用してゼオライトから二酸化炭素を放出させる方法では、放出される二酸化炭素量が十分とは言えず、効率に難がある。また、ゼオライトから二酸化炭素を放出のための時間も長くなるという問題がある。
【0009】
特許文献3では、ハニカム構造体の製造のためには、熱伝導性フィラメントをセル壁に接するように設けたり、熱伝導性フィラメントをセル壁の交差点に埋め込むのに精緻な成形が必要であり、ハニカム構造体が高価になる。
【0010】
そこで本発明は、簡単な装置構成でありながらも、取り込んだ外気中の二酸化炭素を効率よく高め、二酸化炭素を高濃度で含有する気体を外部設備に供給することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために本発明は、下記の二酸化炭素の回収・放出装置を提供する。
(1)取り込んだ外気の二酸化炭素を濃縮し、二酸化炭素を高濃度で含有する気体を外部設備に放出する二酸化炭素の回収・放出装置であって、
ゼオライトを収容した通気性容器と、前記通気性容器の周囲に設置されたヒータとを備える吸着ユニットを多段に積層した吸着部と、
前記吸着部を収容した主要部と、
前記外気を取り込み、前記吸着部に送る送風ユニットと、
前記主要部に接続する保管容器と、
前記主要部に取り付けた第1の開閉バルブと、
前記主要部と前記保管容器とを接続する配管に取り付けた第2の開閉バルブと、
前記保管容器と前記外部設備とを接続する配管に取り付けた第3の開閉バルブを備えるとともに、
前記第1の開閉バルブを開け、前記第2の開閉バルブ及び前記第3の開閉バルブを閉じた状態で前記送風ユニットにより前記外気を前記吸着部に所定時間送って前記ゼオライトに前記外気中の二酸化炭素を吸着させた後、前記送風ユニットの送風を停止して前記第1の開閉バルブを閉じ、
次いで、前記ヒータにより前記ゼオライトを加熱して前記ゼオライトから前記二酸化炭素を放出させた後、前記第2の開閉バルブを開けて前記主要部内の気体を前記保管容器へと送り、
その後、前記第3の開閉バルブを開けて前記保管容器内の前記気体を前記外部設備に放出することを特徴とする二酸化炭素の回収・放出装置。
(2)前記ゼオライトが、ペレット状成形物またはシート状成形物であることを特徴とする上記(1)記載の二酸化炭素の回収・放出装置。
【発明の効果】
【0012】
本発明の二酸化炭素の回収・放出装置では、吸着ユニットが通気性容器にゼオライトを収容し、吸着ユニットの周囲のヒータで加熱する構成としたため、特許文献3のような熱伝導性フィラメントを有するハニカム構造体に比べて、構造が簡素で作製も容易である。また、吸着部は複数の吸着ユニットで構成したため、吸着能力が低下したり、破損した吸着ユニットのみを交換するだけでよく、メンテナンスコストでも有利である。
【0013】
また、ゼオライトに吸着した二酸化炭素を放出させる方法も、ゼオライトを加熱するため、特許文献1のような圧力差や引用文献2のような濃度差を利用した方法よりも効率良く二酸化炭素を放出させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の二酸化炭素の回収・放出装置の全体構成を示す概略図である。
【
図2】
図1の吸着ユニットの一例(ゼオライトペレット使用)を示す概略図であり、(A)はその上面図、(B)は(A)のAA断面図である。
【
図3】
図1の吸着ユニットの他の例(ゼオライトシート使用)を示す概略図であり、(A)はその上面図、(B)は(A)のAA断面図である。
【
図4】吸着部に外気を送風している状態を示す説明図である。
【
図5】吸着部から二酸化炭素を放出させている状態を示す説明図である。
【
図6】主要部内の気体を保管容器に移送している状態を示す説明図である。
【
図7】保管容器内の気体を外部設備に放出している状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に関して図面を参照して詳細に説明する。
【0016】
図1は、本発明の二酸化炭素の回収・放出装置の全体構成を示す概略図である。図示されるように、内部に吸着部1を収容した主要部2と、吸着部1に外気を供給するための送風ユニット3と、主要部2に接続する保管容器4とを備える。また、保管容器4には外部設備が接続している。
【0017】
吸着部1は、ゼオライト10を収容した通気性容器11と、通気性容器11の周囲に設置されたヒータ12とを備える吸着ユニット1aを、多段に積層したものである。また、吸着部1では、複数の吸着ユニット1aが、積層した状態で一体に漏斗状の外枠5に収容されており、外枠5の外側に、吸着ユニット1aごとにヒータ12が設けられている。
【0018】
吸着ユニット1aにおいて、通気性容器11は、金属製のメッシュ籠や、金属製の篩等とすることができる。また、ゼオライト10は、天然ゼオライト、合成ゼオライトの何れでもよい。また、ゼオライト10は、
図2に示すようにゼオライトペレット10aを、適度に隙間を開けて通気性容器11に敷き詰めてもよいし、
図3に示すようにゼオライトシート10bを折り畳んで通気性容器11に収容してもよい。尚、ゼオライトシート10bは、ゼオライト10をシート状に成形したものであり、通気性を有する。
【0019】
尚、後述するように、吸着ユニット1aには送風ユニット3からの風圧が作用するため、ゼオライトシート10bを用いる場合は、折り畳んだ際の弾性回復力で通気性容器11の側壁を押圧するように、外方に拡大する折り畳み形状にすることが好ましい。あるいは、外気の流通を阻害しないような大きさの重石を載置してもよい。
【0020】
上記のように、吸着部1を吸着ユニット1aの多段構成にしたことにより、吸着能力が低下した、もしくは破損した吸着ユニット1aのみを交換すればよいため、吸着部1が単一で、全部を交換しなければならない場合に比べて、メンテナンス費用を軽減することができる。
【0021】
主要部2は気密容器であり、第1の開閉バルブ20を備える。第1の開閉バルブ20は、例えば図示されるように天井面2aの吸着部1の直上となる位置に設けることができる。また、底面2bには、保管容器4に連結する配管30を備えており、配管30の途中に第2の開閉バルブ21を備えている。
【0022】
保管容器4は、気密容器であり、外部設備に連結する配管40の途中に、第3の開閉バルブ22を備えている。
【0023】
尚、外部設備としては、二酸化炭素濃度の高い空気を必要とするものであれば制限はないが、例えば農業作物や園芸作物を栽培しているビニールハウスを挙げることができる。
【0024】
上記の回収・放出装置を用いて外気から二酸化炭素を回収し、放出するには以下の操作を行う。先ず、
図4に示すように、第2の開閉バルブ21を閉じるとともに、第1の開閉バルブ20を開放状態にする。外気及び装置内の気流を図中に白抜きの矢印で示すが(以降の図面でも同様)、送風ユニット3を稼働させて外気を取り込み、外気を外枠5の底部から吸着部1へと送る。上記のように各吸着ユニット1aは、隙間を開けてゼオライトペレット10aを通気性容器11に敷き詰めたり、ゼオライトシート10bを折り畳んで通気性容器11に収容して構成されているため、吸着部1に送られた外気は、最下段の吸着ユニット1a(1)からその上の吸着ユニット1aへと次々に通過して上昇し、最上段の吸着ユニット1a(n)から第1の開閉バルブ20を通じて主要部2の外部に放出される。その間に、空気中の二酸化炭素が各吸着ユニット1aのゼオライト10(ゼオライトペレット10aやゼオライトシート10b)に吸着される。
【0025】
送風ユニット3による外気の送風を所定時間行い、ある程度の量の二酸化炭素をゼオライト10に吸着させた後に送風ユニット3を停止して、主要部2の第1のバルブ20を閉じる。その後、ヒータ12を通電して各吸着ユニット1aのゼオライト10を加熱する。加熱温度は、60~180℃程度、加熱時間は5~20分程度がそれぞれ適当である。この加熱により、ゼオライト10に吸着していた二酸化炭素がゼオライト10から放出され、ゼオライト10の周辺に滞留する。
【0026】
次いで、
図5に示すように、送風ユニット3を数秒~数分程度稼働させて吸着部1に外気を送り、ゼオライト10の周辺に滞留している二酸化炭素を外気とともに吸着部1の外部に送り出す。そして、二酸化炭素と外気との混合ガスが吸着部1と主要部2との間の空間を通り、主要部2の底部に充満する。この二酸化炭素と外気との混合ガスは、送り込まれた外気に含まれている二酸化炭素に、ゼオライト10から放出された二酸化炭素を加味したものであり、外気よりも高濃度で二酸化炭素を含んでいる。
【0027】
次いで、
図6に示すように、第2の開閉バルブ21を開け、混合ガスを保管容器4に移送する。保管容器4には二酸化炭素用の濃度計(図示せず)が付設されており、二酸化炭素濃度が所定の濃度閾値になるまで上記の吸着・放出工程を繰り返す。濃度閾値としては、例えば農業作物や園芸作物の成長促進に適した1000~2000ppmが適当である。即ち、外気の二酸化炭素濃度は400ppm程度であり、これにゼオライト10から放出された二酸化炭素を加味して保管容器4における二酸化炭素濃度が1000~2000ppmになるまで吸着・放出工程を繰り返し行う。
【0028】
次いで、保管容器4における二酸化炭素濃度が濃度閾値に達した後、
図7に示すように、第3の開閉バルブ22を開き、送風ユニット3から外気を送り、保管容器4に溜まっている混合ガスを外部設備に送り出す。このとき、保管容器4の二酸化炭素濃度が外気の二酸化炭素濃度と同レベルになるまで送風を続け、保管容器4の内部の混合ガスを全て外部設備に送り出すことが好ましい。所要時間としては、数分程度である。
【0029】
上記の一連の操作を行うことで、外気から二酸化炭素を回収し、二酸化炭素を高濃度で含有する混合ガスを外部設備へと放出させることが可能になる。
【0030】
尚、上記では保管容器4と外部設備とを直結していたが、保管容器4の混合ガスを他の容器に一旦保管し、他の容器から外部設備に混合ガスを供給してもよい。
【符号の説明】
【0031】
1 吸着部
1a 吸着ユニット
2 主要部
3 送風ユニット
4 保管容器
10 ゼオライト
11 通気性容器
12 ヒータ
20 第1の開閉バルブ
21 第2の開閉バルブ
22 第3の開閉バルブ