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特許7043824スピンドルモータおよびそれを備えるディスク駆動装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-22
(45)【発行日】2022-03-30
(54)【発明の名称】スピンドルモータおよびそれを備えるディスク駆動装置
(51)【国際特許分類】
   H02K 21/22 20060101AFI20220323BHJP
   H02K 1/2791 20220101ALI20220323BHJP
【FI】
H02K21/22 M
H02K1/2791
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2017240426
(22)【出願日】2017-12-15
(65)【公開番号】P2019110620
(43)【公開日】2019-07-04
【審査請求日】2020-09-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】日本電産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135013
【弁理士】
【氏名又は名称】西田 隆美
(72)【発明者】
【氏名】松村 一也
(72)【発明者】
【氏名】関井 洋一
(72)【発明者】
【氏名】井口 卓郎
【審査官】安池 一貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-103726(JP,A)
【文献】特開2002-084728(JP,A)
【文献】特開2015-104289(JP,A)
【文献】特開平03-277144(JP,A)
【文献】特開2008-061331(JP,A)
【文献】特開2009-207283(JP,A)
【文献】特開2003-324921(JP,A)
【文献】特開2004-056932(JP,A)
【文献】特開2009-187624(JP,A)
【文献】国際公開第2007/142334(WO,A1)
【文献】米国特許第05853513(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 21/22
H02K 1/2791
H02K 1/22
G11B 19/20
H02K 1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータを有する静止部と、
前記ステータと対向するマグネットを有し、前記静止部に対して中心軸周りに回転可能に支持される回転部と、
を備えるスピンドルモータであって、
前記ステータは、
前記中心軸を中心とする筒状のコアバックおよび前記コアバックの外周部から径方向外側に向かって延びる複数のティース部をもつステータコアと、
前記ステータコアが、複数の磁性鋼板を軸方向に積層して構成され、
前記ティース部のそれぞれに導線が巻かれて構成される複数のコイルと、
を有し、
前記マグネットの軸方向の長さは、前記ティース部の軸方向の長さよりも短く、
前記マグネットの軸方向の長さは、前記磁性鋼板2枚分の厚みを差し引いたときの前記ステータコアの軸方向の長さよりも長く、
前記ティース部の周方向の幅に相当する第1角度は、隣接する前記ティース部間の隙間に相当する第2角度よりも小さく、
前記マグネットは、ネオジムボンド磁石製であり、
前記マグネットの径方向の厚みは、0.8mm以上1.5mm以下であり、
前記マグネットの径方向内側の面と前記ティース部の外端面との間の径方向の距離は、0.17mm以上0.40mm以下であり、
前記静止部と前記回転部との間に生じるトルクのトルク定数が6mN・m/A以上13mN・m/A以下であり、
そのモータ定数が5mN・m/(A・√Ω)以上10mN・m/(A・√Ω)以下である、回転体駆動装置用のスピンドルモータ。
【請求項2】
請求項1に記載のスピンドルモータであって、
前記ステータコアが、複数の磁性鋼板を軸方向に積層して構成され、
前記複数の磁性鋼板の枚数が9であり、前記複数の磁性鋼板のそれぞれの軸方向の厚さ
が0.3mm以上0.4mm以下である、スピンドルモータ。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のスピンドルモータであって、
前記コアバックの内径が10mm以上17mm以下である、スピンドルモータ。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載のスピンドルモータであって、
前記複数のコイルのそれぞれの巻き数が、30回以上55回以下である、スピンドルモータ。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載のスピンドルモータであって、
前記導線の直径が0.20mm以上0.40mm以下である、スピンドルモータ。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載のスピンドルモータであって、
前記ティース部は、径方向に延びる軸部を有し、
前記コアバックの径方向の厚みは、前記ティース部の前記軸部の周方向の幅の半分より
も大きく、かつ、前記ティース部の前記軸部の周方向の幅よりも小さい、スピンドルモー
タ。
【請求項7】
請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載のスピンドルモータであって、
前記マグネットの磁極の総数が8であり、前記複数のティース部の総数が12である、スピンドルモータ。
【請求項8】
請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載のスピンドルモータであって、
前記マグネットの磁極の総数が6であり、前記複数のティース部の総数が9である、スピンドルモータ。
【請求項9】
請求項1から請求項8までのいずれか1項に記載のスピンドルモータと、
前記スピンドルモータによって回転駆動される3.5型かつ1.75mm厚型のディスクと、
前記ディスクに対して情報の読み出しおよび書き込みの少なくとも一方を行うアクセス部と、
前記ディスクを前記回転部に固定するクランパと、
前記スピンドルモータ、前記ディスク、前記アクセス部、および前記クランパを収容するハウジングと、
を備えるディスク駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スピンドルモータおよびそれを備えるディスク駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、回転磁界を発生させるステータと、当該ステータの周面に沿って永久磁石の磁極が配列されて構成されるロータと、を備えたスピンドルモータが知られている。特開2000-316240号公報には、この種のスピンドルモータが開示されている。
【0003】
この特開2000-316240号公報に記載のスピンドルモータのステータは、ステータコアと、複数のコイルとを備えている。このステータコアは、中央の閉磁路円板部とこれから半径方向外側へ延びた複数の歯部とそれらの先端に形成されたハンマからなる薄板状のステータコア板を積層して構成されている。複数の歯部のそれぞれには、回転磁界を発生させるためのコイルが巻かれている。同文献の図3に記載されているように、このスピンドルモータでは、永久磁石の軸方向の長さが、歯部の軸方向の長さよりも長めに構成されていた。
【文献】特開2000-316240号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、この特開2000-316240号公報に記載のスピンドルモータでは、一般的に材料費が高額となりがちな永久磁石の体積が大きくなってしまうため、当該スピンドルモータの製造コストを低減することが困難であった。そこで、モータ特性を損なうことなく製造コストを削減できる、スピンドルモータの技術が求められていた。
【0005】
本発明は以上の事情に鑑みてなされたものであり、その潜在的な目的は、モータ特性を損なうことなく製造コストを削減できるスピンドルモータの技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0007】
本発明の観点によれば、以下の構成のスピンドルモータが提供される。即ち、このモータは、静止部と、回転部と、を備える回転体駆動装置用のスピンドルモータである。前記静止部は、ステータを有する。前記回転部は、前記ステータと対向するマグネットを有し、前記静止部に対して中心軸周りに回転可能に支持される。前記ステータは、ステータコアと、複数のコイルと、を有する。前記ステータコアは、前記中心軸を中心とする筒状のコアバックおよび前記コアバックの外周部から径方向外側に向かって延びる複数のティース部をもち、前記ステータコアが、複数の磁性鋼板を軸方向に積層して構成され、前記複数のコイルは、前記ティース部のそれぞれに導線が巻かれて構成される。前記回転部は、前記ティース部の径方向外側に位置するマグネットを有する。そして、前記マグネットの軸方向の長さは、前記ティース部の軸方向の長さよりも短く、前記マグネットの軸方向の長さは、前記磁性鋼板2枚分の厚みを差し引いたときの前記ステータコアの軸方向の長さよりも長い。前記ティース部の周方向の幅に相当する第1角度は、隣接する前記ティース部の周方向の間隙に相当する第2角度よりも小さい。前記マグネットは、ネオジムボンド磁石製である。前記マグネットの径方向の厚みは、0.8mm以上1.5mm以下である。前記マグネットの径方向内側の面と前記ティース部の外端面との間の径方向の距離は、0.17mm以上0.40mm以下である。前記静止部と前記回転部との間に生じるトルクのトルク定数が6mN・m/A以上13mN・m/A以下である。このスピンドルモータのモータ定数が5mN・m/(A・√Ω) 以上10mN・m/(A・√Ω) 以下である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の観点によれば、スピンドルモータのモータ特性を損なうことなく、当該スピンドルモータの製造コストを削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本実施形態に係るディスク駆動装置を示す図である。
図2図2は、本実施形態に係るスピンドルモータの構成を示す図である。
図3図3は、ステータの平面図である。
図4図4は、スピンドルモータの一部を拡大して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本願の例示的な実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本願では、ディスクの回転軸と平行な方向を「軸方向」、ディスクの回転軸に直交する方向を「径方向」、ディスクの回転軸を中心とする円弧に沿う方向を「周方向」、とそれぞれ称する場合がある。また、本願では、軸方向を上下方向とし、ベース部材に対してカバーが取り付けられる側を上として、各部の形状および位置関係を説明する場合がある。ただし、この上下方向の定義により、本発明に係るスピンドルモータおよびディスク駆動装置の使用時の向きを限定する意図はない。
【0011】
さらに、本願において「平行な方向」とは、略平行な方向も含む。また、本願において「直交する方向」とは、略直交する方向も含む。
【0012】
<1.ディスク駆動装置の全体構成>
以下では、本実施形態に係るスピンドルモータ1が搭載されるディスク駆動装置100の全体的な構成について、図1を参照して説明する。図1は、本実施形態に係るディスク駆動装置100の縦断面図である。
【0013】
本実施形態のディスク駆動装置100は、中央に円孔を有する円板状の磁気ディスク(ディスク、回転体)14を回転駆動させながら、当該磁気ディスク14に対して情報の読み取りおよび書き込みを行う装置である。図1に示すように、ディスク駆動装置100は、スピンドルモータ1、ベース部材12、カバー13、磁気ディスク14、およびアクセス部15を主として備える。ベース部材12およびカバー13により、ディスク駆動装置100の外郭をなすハウジング17が構成されている。ハウジング17の内部に、スピンドルモータ1、磁気ディスク14、アクセス部15、および後述するクランパ35が収容されている。
【0014】
本実施形態の磁気ディスク14は、3.5型かつ1.75mm厚型の規格品である。
【0015】
スピンドルモータ1は、磁気ディスク14を支持しながら、第1軸91を中心として磁気ディスク14を回転させる装置である。スピンドルモータ1は、静止部2と回転部3とを備える。静止部2は、ベース部材12に対して相対的に静止している。静止部2では、回転磁界が発生される。回転部3は、静止部2と中心軸(第1軸91)を一致させた状態で、静止部2に対して回転可能に支持される。回転部3は、ハウジング17内に収容される。回転部3は、静止部2との間の磁束の相互作用で回転する。回転部3が回転すると、それに支持される磁気ディスク14も一体となって回転する。
【0016】
アクセス部15は、アーム151と、当該アーム151の先端に設けられたヘッド152と、揺動機構153とを有する。アーム151は、ベース部材12に軸受を介して取り付けられる。揺動機構153は、アーム151およびヘッド152を揺動させるための機構である。揺動機構153を駆動させると、アーム151は、第2軸92を中心として揺動する。これにより、ヘッド152が、磁気ディスク14の記録面に沿って移動する。ヘッド152は磁気ディスク14の上面および下面に対向し、回転する磁気ディスク14に対して情報の読み取りおよび書き込みを行う。
【0017】
なお、ヘッド152は、磁気ディスク14に対して情報の読み取りおよび書き込みのいずれか一方のみを行うものであってもよい。また、ディスク駆動装置100は、2枚以上の磁気ディスク14を有するものであってもよい。
【0018】
回路基板(図示省略)は、ベース部材12の底板部の下面に固定される。前記回路基板には、ディスク駆動装置100の駆動に必要な電気回路が実装されている。より具体的には、前記回路基板には、スピンドルモータ1の駆動に必要な電気回路が実装されている。前記回路基板は、柔軟性の大きい、いわゆるフレキシブルプリント基板を介して、スピンドルモータ1の後述するコイル23と接続されている。
【0019】
<2.スピンドルモータの構成>
以下では、本実施形態に係るスピンドルモータ1のより詳細な構成について、図2から図4までを参照して説明する。図2は、スピンドルモータ1の構成を示す縦断面図である。図3は、静止部2に備えられるステータ20およびその周辺の構成を示す平面図である。図4は、スピンドルモータ1の一部を拡大して示す断面図である。
【0020】
図2に示すように、静止部2は、ステータ支持部21、ステータコア22、複数のコイル23、および軸受ユニット24を有する。なお、ステータコア22と複数のコイル23とで、ステータ20が構成されている。
【0021】
ステータ支持部21は、第1軸91の周囲において、軸方向に円筒状に延びている。ステータ支持部21はスピンドルモータ1の静止部2の一部であるとともに、ベース部材12の一部でもある。
【0022】
図4に示すように、ステータコア22は、複数枚の磁性鋼板220が軸方向に積層されて構成されるものである。本実施形態では、軸方向において0.35mm以上かつ0.4mm以下の一定の厚みを有する磁性鋼板が9枚、軸方向に重ねられることにより、ステータコア22が形成されている。ただし、磁性鋼板220が積層される枚数は、9枚に限るものではなく、8枚以下または10枚以上であってもよい。
【0023】
図3に示すように、ステータコア22は、コアバック221と、ティース部222とを有する。
【0024】
コアバック221は、第1軸91を中心とする円筒状の部位である。コアバック221の内径D2は、10mm以上かつ17mm以下である。図2に示すように、コアバック221(ステータコア22)の内周面は、ステータ支持部21の外周面に固定されている。
【0025】
ティース部222は、コアバック221の外周部から径方向外側に向かって延びる部位である。ティース部222は、コアバック221の全周にわたって、一定のピッチで複数形成されている。本実施形態においては、ティース部222は、周方向に30°おきに12個形成されている。各ティース部222は、軸部223と、規制部224とを有する。別の言い方をすれば、各ティース部222は、平面視で略T字状の形状を有する。軸部223は、径方向に直線状に延びる。規制部224は、軸部223のコアバック221に接続される側とは反対側の先端部に形成される。規制部224は、軸部223の前記先端部から周方向の両側に向かって延びている。
【0026】
ティース部222の軸部223の周方向の幅T3は、コアバック221の径方向の厚みT4と、以下の大小関係が成り立つように設計されている。即ち、図3に示すように、コアバック221の径方向の厚みT4は、ティース部222の軸部223の周方向の幅T3の半分よりも長い(T4>(T3)/2)。また、コアバック221の径方向の厚みT4は、ティース部222の軸部223の周方向の幅T3よりも短い(T4<T3)。
【0027】
さらに、図3に示すように、ティース部222の軸部223の周方向の幅に相当する第1角度(A1°)は、隣接するティース部222,222の間の隙間に相当する第2角度(A2°)よりも、小さい(A1<A2)。別の言い方をすれば、ティース部222のうち規制部224を除いた部分の周方向の幅に相当する第1角度(A1°)は、隣接するティース部222の周方向の間隙に相当する第2角度(A2°)よりも小さい。なお、第1角度(A1°)および第2角度(A2°)は、いずれも、第1軸91に対する中心角である。
【0028】
コイル23は、ティース部222の軸部223に導線が巻かれることにより構成される。図3に示すように、コイル23は、各ティース部222に対して設けられる。詳細には、各ティース部222の軸部223に巻かれる導線の巻き数は、30回以上55回以下である。また、この導線の直径は、0.2mm以上かつ0.4mm以下である。なお、コイル23は、上述の規制部224によって規制されることにより、巻き崩れが防止されている。
【0029】
図2に示す軸受ユニット24は、回転部3側のシャフト31を、回転可能に支持する。軸受ユニット24には、公知の様々な機構を採用し得るが、本実施形態では、流体動圧軸受機構が用いられる。
【0030】
回転部3は、概ねカップ状に構成される。図2に示すように、回転部3は、シャフト31、ロータハブ32、ヨーク33、ロータマグネット34、およびクランパ35を主として有する。
【0031】
シャフト31は、回転部3の中心軸(第1軸91)に沿って延びる長い円柱状の部材である。シャフトの下端部は、軸受ユニット24の内部に収容される。
【0032】
ロータハブ32は、上側が閉塞されているカップ状の部材であり、その中心軸部にシャフト31が固定されている。シャフト31が軸受ユニット24の内部に収容されることにより、ロータハブ32がステータ支持部21に対して回転可能となっている。ロータハブ32の下部は、下方に向かって円筒状に延びている。上方からみたとき、上述のステータコア22は、ロータハブ32により覆われている。
【0033】
ヨーク33は、ロータハブ32の下部(前述の円筒状の部分)の外周部に固定されている。別の言い方をすれば、円筒状の形状を有するヨーク33の内周面は、ロータハブ32の外周面に固定されている。ヨーク33の材料には、例えば、磁性体である鉄が用いられる。ヨーク33は、ロータハブ32よりも下方に突出するように配置されている。したがって、図2に示すように、ロータハブ32とヨーク33との接続部に段差が形成されている。
【0034】
ロータマグネット34は、円筒状の部材であり、ヨーク33の内周部に固定されている。より具体的には、ロータマグネット34は、ロータハブ32とヨーク33との接続部の前記段差に嵌め込まれて、固定されている。ロータマグネット34の内周面には、N極とS極とが周方向に交互に着磁されている。詳細には、本実施形態のロータマグネット34では、磁極の総数が8となるように、その内周面が公知の方法により着磁されている。また、ロータマグネット34の径方向外側にヨーク33が配置されることにより、ロータマグネット34から生じる磁束の漏れが抑制される。
【0035】
ロータマグネット34について、図3および図4を参照して、より詳しく説明する。本実施形態のロータマグネット34は、ネオジムボンド磁石製(Nd-Fe-B BOND MAGNET)である。図3に示すように、ロータマグネット34の径方向の厚みT1は、0.8mm以上かつ1.5mm以下である。また、図4に示すように、ロータマグネット34の軸方向の長さL1は、ティース部222の軸方向の長さL2よりも短い(L1<L2)。ただし、ロータマグネット34の軸方向の長さL1は、磁性鋼板220の厚みT2の2枚分を差し引いたときのステータコア22の軸方向の長さよりも長い(L1>{L2-2×(T2)})。本実施形態のステータコア22は、上述したように9枚の磁性鋼板220が積層されて構成されている。したがって、ロータマグネット34の軸方向の長さL1は、磁性鋼板220の厚みT2の7枚分よりも長くなっている(L1>{7×(T2)})。
【0036】
図2および図4に示すように、ロータマグネット34は、ティース部222の径方向外側に位置している。図3に示すように、ロータマグネット34は、ティース部222の規制部224の外周面との間に、径方向に0.17mm以上かつ0.40mm以下の間隔(距離)D1を開けて、規制部224と対向して配置される。この構成により、ロータマグネット34の各極と、ステータコア22のティース部222と、の間に磁気吸引力が発生する。
【0037】
図1および図2に示すクランパ35は、磁気ディスク14を上方から押さえ付けて、当該磁気ディスク14をロータハブ32に対して固定する部材である。
【0038】
このような構成のスピンドルモータ1において、コイル23に電流を流すことにより、当該スピンドルモータ1を駆動させたら、ティース部222と、ロータマグネット34の各極と、の間に磁気吸引力が発生する。その結果、静止部2と回転部3との間にトルクが生じる。このトルクのトルク定数Ktは、6mN・m/A以上かつ13mN・m/A以下である。
【0039】
また、このスピンドルモータ1のモータ定数Kmは、5mN・m/(A・√Ω)以上かつ10mN・m/(A・√Ω)である。なお、ここで言うモータ定数Kmは、トルク定数Ktと、複数のコイル23全体の導線抵抗Rと、を用いて、Km=Kt/√(R)で定義される値である。モータ定数Kmは、スピンドルモータ1の単位スペース当たりどれだけのトルクを発生できるかを表す指標である、と言うことができる。
【0040】
なお、1.75mm厚型のディスク駆動装置では、例えば、7mm厚型のディスク駆動装置に搭載されるスピンドルモータを1.75mm厚型に合わせてそのまま薄くしても、十分なトルク定数Ktを確保することができない。導線の直径を小さくしてコイルの巻き数を増大させることにより、モータを薄型化しつつトルク定数Ktを確保することはできるが、コイルの導線抵抗Rが大きくなる。コイルの導線抵抗Rが大きいスピンドルモータは、導線抵抗Rが小さいスピンドルモータに比べて、同一電源で駆動した場合の起動時の電流が小さくなる。その結果、スピンドルモータの起動時におけるトルクが小さくなり、スピンドルモータの回転数が定格回転数に到達するまでの時間である起動時間が、長くなる。ここで、ディスク駆動装置用のスピンドルモータにおいては、十分なトルクを確保するだけではなく、起動時間が所定の時間以内であることも求められる。そのため、本実施形態の1.75mm厚型のディスク駆動装置100のスピンドルモータ1では、限られたスペースであっても、十分にトルクを発生しつつ起動時間が短くなるように、かつ、コストが高くなってしまわないように、各部の寸法や定数等を上述したように適宜に設定している。
【0041】
以上で示したように、本実施形態のスピンドルモータ1においては、一般的に材料費が高額となりがちなロータマグネット34の体積を、従来よりも小さくできるように、各部の寸法や各定数の値を適宜に調整している。
【0042】
ここで、スピンドルモータ1の製造コスト、ひいてはディスク駆動装置100全体としての製造コストを削減するために、単にロータマグネット34の体積を小さく設計しただけでは、以下のような問題点が生じる。即ち、例えば、ロータマグネット34の軸方向の長さを従来よりも短めに設定した場合、ステータコア22のティース部222からの磁束をロータマグネット34で受け止める際に、磁束の一部が取りこぼされてしまう。そのため、静止部2と回転部3との間に生じるトルクが小さくなってしまい、モータ特性が低下してしまう。
【0043】
この点、本実施形態のスピンドルモータ1においては、各部の寸法や各定数の値を上述のように適宜に調整している。このため、ティース部222の軸部223に巻かれる導線の巻き数を従来よりも多くしたり、あるいは、上記軸部223に巻かれる導線の太さを従来よりも太くしたりすることが可能となる。別の言い方をすれば、ロータマグネット34の体積を従来よりも小さくした代わりに、コイル23に流れる電流を多くすることで、ティース部222の磁束密度が高くなるように構成している。このため、ロータマグネット34の各極と、ステータコア22のティース部222と、の間に発生する磁気吸引力を十分に大きい状態に保つことができる。その結果、モータ特性を損なうことなく、製造コストを削減することができる。
【0044】
以上で説明したように、本実施形態のスピンドルモータ1においては、ロータマグネット34の軸方向の長さを従来よりも短くすることで、高価になりがちなロータマグネット34の体積を抑えている。また、ティース部222の軸部223の径方向の長さを長めに確保することで、導線を巻くためのスペースを広めに確保している。また、ティース部222の軸部223の周方向の幅に相当する第1角度(A1°)を、隣接するティース部222,222の間の隙間に相当する第2角度(A2°)よりも、小さくしているため(A1<A2)、軸部223の周囲に広めのスペースを確保することができている。
【0045】
この構成によれば、ロータマグネット34の体積を小さく抑えることができ、低コストでスピンドルモータ1を製造することができる。また、ティース部222に巻かれる導線の巻き数を大きく確保し、あるいはティース部222に巻かれる導線の太さを太くすることが可能である。これにより、ロータマグネット34の体積を従来よりも小さくしても、スピンドルモータ1のモータ特性を維持することができる。さらに言えば、ロータマグネット34の体積を小さくできるので、仮に、ロータマグネット34を周方向に配列された複数のマグネットにより構成したとしたときに、それらの複数のマグネットの軸方向の取付位置がバラついていたとしても、励振力を小さく抑えることができる。これによっても、モータ特性を良好にすることができる。
【0046】
また、本実施形態においては、ステータコア22をなす磁性鋼板220の積層枚数、および各磁性鋼板220の厚みT2が、上記のように好適に構成されている。この構成によれば、ステータコア22のティース部222に径方向の磁束を良好に発生させることができる。また、入手が容易な厚みの磁性鋼板220が利用されることにより、スピンドルモータ1の製造コストを抑えることができる。
【0047】
また、本実施形態のロータマグネット34の軸方向の長さL1は、磁性鋼板220の7(=9-2)枚分の軸方向の厚みよりも長い。この構成によれば、ロータマグネット34から磁性鋼板220、とりわけロータマグネット34から一番上と一番下の磁性鋼板220に入る磁束量が極端に少なくならないようにすることができる。これにより、ロータマグネット34から磁性鋼板220に入る磁束量が極端に少なくならない範囲で、ロータマグネット34の軸方向の長さL1を短めに設計することが可能となる。よって、モータ特性を大きく損なうことなく、スピンドルモータ1の製造コストを削減できる。
【0048】
また、本実施形態のコアバック221の内径D2は、上述の数値範囲に設定される。この構成によれば、ティース部222の径方向の長さを十分に確保することができる。よって、ティース部222に巻かれる導線の巻き数をより増やしたり、あるいはより太い導線を巻いたりすることが可能となる。
【0049】
また、本実施形態においては、コイル23のそれぞれの巻き数は、上述の数値範囲に設定される。この構成によれば、コイル23の巻き数を十分に確保することができる。よって、ロータマグネット34の体積を小さく設計しても、モータ特性を良好に維持することができる。
【0050】
また、本実施形態においては、コイル23をなす導線の直径は、上述の数値範囲に設定される。この構成によれば、ロータマグネット34の体積を小さく設計しても、ステータコア22のティース部222に入る磁束量が極端に少なくならないようにすることができる。よって、スピンドルモータ1のモータ特性を良好に維持することができる。
【0051】
また、本実施形態においては、コアバック221の径方向の厚みT4は、ティース部222の軸部223の周方向の幅T3との関係で、上述のような数値範囲に設定される。この構成によれば、コアバック221の径方向の厚みT4を、薄めに設計することが可能となる。これにより、ティース部222の軸部223に巻かれる導線の巻き数を増やしたり、あるいはより太い導線を巻いたりすることが可能となる。
【0052】
なお、本実施形態のティース部222の規制部224の径方向の幅は、従来よりも狭く構成されている。これは、本実施形態においては、ロータマグネット34の軸方向の長さL1を短めに設定した故に、ロータマグネット34からティース部222(規制部224)に入る磁束が減少し、その分だけ規制部224の径方向の幅を狭くすることが実現できたものである。より詳細には、従来は、ロータマグネット34から規制部224に入る磁束が飽和状態にならないようにするために、規制部224の径方向の幅をある程度厚めに構成する必要があったが、本実施形態では、ロータマグネット34から規制部224に入る磁束が従来よりも少なくなるため、規制部224の径方向の幅を薄く構成することができた。その結果、軸部223の軸方向の寸法をより一層長めに設定でき、ティース部222の軸部223に巻かれる導線の巻き数を増やしたり、あるいはより太い導線を巻いたりすることが可能となる。
【0053】
また、本実施形態においては、ロータマグネット34の全周における磁極の総数は8であり、1つのステータコア22についての複数のティース部222の総数は12である。この構成によれば、市場でのニーズの高い、いわゆる8極12スロット型のスピンドルモータ1を、モータ性能を損なわずに低コストで製造することができる。
【0054】
また、本実施形態においては、上記の構成のスピンドルモータ1を備えるディスク駆動装置100について開示した。この構成によれば、スピンドルモータ1を、モータ性能を損なわずに低コストで製造できるので、ディスク駆動装置100全体としてみたときにも、良好な製品を低コストで製造することができる。
【0055】
<3.変形例>
以上、本発明の例示的な実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態には限定されない。
【0056】
上記の実施形態のスピンドルモータ1においては、ロータマグネット34の全周における磁極の総数が8であり、かつ、複数のティース部222の総数が12であるものとした。しかしながら、これに代えて、ロータマグネット34の全周における磁極の総数が6であり、かつ、複数のティース部222の総数が9である構成としてもよい。この場合、とりわけディスク駆動装置用のスピンドルモータにおいて需要が高い、いわゆる6極9スロット型のスピンドルモータを、モータ性能を損なわずに低コストで製造することができる。
【0057】
上記の実施形態では、ロータマグネット34は円筒状の部材であり、その内周面に、N極とS極とが周方向に交互に着磁されているものとした。しかしながら、これに限るものではなく、例えばこれに代えて、個別に着磁された複数の磁石がヨーク33の内周部に交互に貼り付けられるものとしてもよい。
【0058】
上記の実施形態では、「回転体」は磁気ディスク14であるものとしたが、これに限るものではない。例えばこれに代えて、「回転体」を光ディスクとしてもよい。あるいは、「回転体」をフライホイールとしてもよい。このフライホイールは、例えば光源を搭載するものとし、スピンドルモータによって回転駆動されることにより光を走査させるものとしてもよい。このようなフライホイールは、例えばディスプレイ装置に仮想現実的な表示をさせるために利用することができる。
【0059】
上記の実施形態や変形例に登場した各要素を、矛盾が生じない範囲で、適宜に組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は、スピンドルモータおよびそれを備える回転体駆動装置に利用できる。
【符号の説明】
【0061】
1 スピンドルモータ
2 静止部
3 回転部
4 磁気ディスク(ディスク、回転体)
15 アクセス部
17 ハウジング
22 ステータコア
23 コイル
32 ロータハブ
34 ロータマグネット(マグネット)
35 クランパ
91 第1軸(中心軸)
100 ディスク駆動装置(回転体駆動装置)
229 磁性鋼板
221 コアバック
222 ティース部
223 軸部
224 規制部
図1
図2
図3
図4