(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-22
(45)【発行日】2022-03-30
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/16 20060101AFI20220323BHJP
【FI】
G03G15/16 103
G03G15/16 101
(21)【出願番号】P 2018040599
(22)【出願日】2018-03-07
【審査請求日】2020-12-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田畑 英二
(72)【発明者】
【氏名】夏原 敏哉
(72)【発明者】
【氏名】水本 乃文美
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 麻紀子
【審査官】稲荷 宗良
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-242224(JP,A)
【文献】特開2010-210805(JP,A)
【文献】特開2006-184685(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中間転写ベルトと、
前記中間転写ベルトに接し、前記中間転写ベルトの外側に位置する二次転写ローラーと、
前記中間転写ベルトに接し、前記中間転写ベルトを挟んで前記二次転写ローラーに対して対向配置され、前記二次転写ローラーとともにニップ部を構成する対向ローラーと、
前記中間転写ベルトの前記対向ローラー側において、前記ニップ部の近傍において、前記中間転写ベルトに接触するように配置される振動付与装置と、
を備え、
前記振動付与装置の前記中間転写ベルトに接触する位置を加振位置とし、
前記ニップ部の入口側または出口側の位置をニップ端位置とし、
前記ニップ部の中央の位置をニップ中央位置とし、
前記加振位置と前記ニップ端位置との間の距離をL1とし、前記ニップ中央位置と前記ニップ端位置との間の距離をL2とした場合に、L1/L2≦1.5の関係を満足する位置に、前記振動付与装置が配置され
、
前記振動付与装置は、前記中間転写ベルトに接触する振動板と、前記振動板に振動を与える振動発生装置と、前記振動発生装置を振動板に固定する基体とを有し、
前記振動板の前記中間転写ベルト側の端部は、前記中間転写ベルトから遠ざかる方向に折り曲げられた先曲げ部を含む、
画像形成装置。
【請求項2】
前記振動付与装置は、L1/L2≦1.0の関係を満足する位置に配置されている、請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記振動付与装置は、前記ニップ部の入口側で前記中間転写ベルトに接触するように配置されている、請求項1または請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記中間転写ベルトと前記二次転写ローラーとの間には、前記中間転写ベルトが前記二次転写ローラー側に巻き掛けられる巻き掛け部が設けられ、
前記振動付与装置は、前記巻き掛け部に接触するように配置されている、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記振動発生装置は、前記二次転写ローラーの軸方向に沿って複数配置されている、請求項
1から請求項4のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記先曲げ部は、前記二次転写ローラーの軸方向に沿って前記中間転写ベルトに線接触している、請求項
5に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ローラー転写方式の画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置に採用される転写方式の一例として、ローラー転写方式が挙げられる。このローラー転写方式において、二次転写部に振動付与する技術が下記の特許文献等に開示されている。
【0003】
特開2006―201201号公報(特許文献1)には、対向ローラーの芯金に振動付与することで、転写性の向上を図る技術が開示されている。また、加振装置が、二次転写位置よりも中間転写ベルトの周回方向下流側の所定位置において、中間転写ベルトと接触するようにして配置し、振動子の振動数を、中間転写ベルトの固有振動数に設定する技術が開示されている。
【0004】
特開2006―184685号公報(特許文献2)には、超音波振動子を、二次転写領域の下流側に設置する構成が開示され、中間転写ベルトのトナー担持面の法線方向に対して鋭角を成す方向に振動を与え、振動子の先端を中間転写ベルトに面接触させることで、転写性の向上を図る技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2006―201201号公報
【文献】特開2006―184685号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
画像形成装置に採用される転写方式の一例であるチャージャー転写方式において、超音波振動により転写性を向上する技術が知られている。一方、ローラー転写方式においても、転写性を向上するために、振動を利用する各種構成が、上記の特許文献1、および、特許文献2等で提案されている。
【0007】
転写方式としてはローラー転写方式の方が一般的であることから、ローラー転写方式で振動付与することにより転写性を向上する技術が望まれている。
【0008】
ローラー転写方式においても、中間転写ベルトに振動付与装置を接触させて振動付与すると、ある程度の転写性向上の効果が期待できる。しかし、十分な転写性向上効果を得るために付与する振動を強くすると、トナーの飛び散り等の画像乱れが発生して、画像品質が低下してしまうことが懸念される。
【0009】
近年、更に溝の深い凹凸紙への対応が求められていることもあり、振動付与による転写性向上と画像乱れ防止との両立が、依然として課題となっている。
【0010】
この発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、ローラー転写方式を採用した画像形成装置において、振動付与する構成を採用した場合に、転写性向上と画像乱れ防止とを両立させて、高品位の画像形成を安定的に可能にする、画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この画像形成装置においては、中間転写ベルトと、上記中間転写ベルトに接し、上記中間転写ベルトの外側に位置する二次転写ローラーと、上記中間転写ベルトに接し、上記中間転写ベルトを挟んで上記二次転写ローラーに対して対向配置され、上記二次転写ローラーとともにニップ部を構成する対向ローラーと、上記中間転写ベルトの上記対向ローラー側において、上記ニップ部の近傍において、上記中間転写ベルトに接触するように配置される振動付与装置と、を備える。
【0012】
上記振動付与装置の上記中間転写ベルトに接触する位置を加振位置とし、上記ニップ部の入口側または出口側の位置をニップ端位置とし、上記ニップ部の中央の位置をニップ中央位置とし、上記加振位置と上記ニップ端位置との間の距離をL1とし、上記ニップ中央位置と上記ニップ端位置との間の距離をL2とした場合に、L1/L2≦1.5の関係を満足する位置に、上記振動付与装置が配置されている。
【0013】
他の形態においては、上記振動付与装置は、L1/L2≦1.0の関係を満足する位置に配置されている。
【0014】
他の形態においては、上記振動付与装置は、上記ニップ部の入口側で上記中間転写ベルトに接触するように配置されている。
【0015】
他の形態においては、上記中間転写ベルトと上記二次転写ローラーとの間には、上記中間転写ベルトが上記二次転写ローラー側に巻き掛けられる巻き掛け部が設けられ、上記振動付与装置は、上記巻き掛け部に接触するように配置されている。
【0016】
他の形態においては、上記振動付与装置は、上記中間転写ベルトに接触する振動板と、上記振動板に振動を与える振動発生装置と、上記振動発生装置を上記振動板に固定する基体とを有する。
【0017】
他の形態においては、上記振動発生装置は、上記二次転写ローラーの軸方向に沿って複数配置されている。
【0018】
他の形態においては、上記振動板の上記中間転写ベルト側の端部は、上記中間転写ベルトから遠ざかる方向に折り曲げられた先曲げ部を含む。
【0019】
他の形態においては、上記先曲げ部は、上記二次転写ローラーの軸方向に沿って上記中間転写ベルトに線接触している。
【発明の効果】
【0020】
この画像形成装置においては、ローラー転写方式を採用した画像形成装置において、振動付与する構成を採用した場合に、転写性向上と画像乱れ防止とを両立させて、高品位の画像形成を安定的に可能にする、画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図2】
図1に示す二次転写部の概略構成を示す拡大図である。
【
図3】実施の形態の他の形態の画像形成装置の概略図である。
【
図4】
図3に示す二次転写部の概略構成を示す拡大図である。
【
図5】実施の形態の画像形成装置の二次転写部を拡大した模式断面図である。
【
図6】
図5の二次転写部の一部を拡大した模式図であり、振動付与前の状態を示す図である。
【
図7】
図5の二次転写部の一部を拡大した模式図であり、振動付与後の状態を示す第1図である。
【
図8】
図5の二次転写部の一部を拡大した模式図であり、振動付与後の状態を示す第2図である。
【
図9】L1/L2(横軸)と振動伝達効率γ(縦軸)との関係性を示す図である。
【
図10】巻き掛け部を示すニップ部の近傍の拡大図である。
【
図11】「ずれ転写現象」の発生する理由を説明する第1図である。
【
図12】「ずれ転写現象」の発生する理由を説明する第2図である。
【
図13】「ずれ転写現象」の発生する理由を説明する第3図である。
【
図14】実施の形態の振動付与装置の具体的構成を示す図である。
【
図15】実施の形態の振動板の軸方向の構成を示す第1図である。
【
図16】実施の形態の振動板の軸方向の構成を示す第2図である。
【
図17】各実施例および各比較例の総合評価結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図を参照しながら、各実施の形態における画像形成装置について説明する。以下に説明する各実施の形態において、個数、量などに言及する場合、特に記載がある場合を除き、本発明の範囲は必ずしもその個数、量などに限定されない。同一の部品、相当部品に対しては、同一の参照番号を付し、重複する説明は繰り返さない場合がある。図面においては、実際の寸法の比率に従って図示しておらず、構造の理解を容易にするために、構造が明確となるように比率を変更して図示している箇所がある。
【0023】
以下に説明する画像形成装置は、スキャナー機能、複写機能、プリンタとしての機能、ファクシミリ機能、データ通信機能、およびサーバ機能を備えたMFP(Multi Function Peripheral)を含む。
【0024】
(実施の形態1:画像形成装置1)
図1を参照して、実施の形態の画像形成装置1について説明する。
図1は、画像形成装置1の内部構成を示す概略図である。この画像形成装置1は、コピージョブ、画像印刷ジョブ、スキャンジョブ、ファクスジョブ、ボックスジョブを実行することができる、いわゆる、複合機(MFP:Multi Function Peripheral)である。ボックスジョブとは、画像形成装置1が備えるボックス(フォルダー)に記憶されたデータを用いて実行されるジョブである。
【0025】
(画像形成装置1の装置構成)
画像形成装置1は、画像読取部2と、画像処理部3と、画像形成部4と、用紙搬送部5と、定着装置6とを備えている。
【0026】
画像読取部2は、自動原稿給紙装置2aと、原稿画像走査装置2b(スキャナー)とを有している。このうち、原稿画像走査装置2bには、コンタクトガラスと、各種のレンズ系と、CCDセンサー7とが設けられている。CCDセンサー7は、画像処理部3に接続されている。画像処理部3は、入力された画像に所定の画像処理を行なう。
【0027】
画像形成部4は、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(ブラック)の各色トナーによる画像を形成する画像形成ユニット10(10Y,10M,10C,10K)を有している。これらについては、収容されるトナー以外はいずれも同じ構成を有するので、以後、色を表す記号を省略する。画像形成部4は、さらに、中間転写ユニット20および二次転写ユニット30を有している。
【0028】
画像形成ユニット10は、露光装置11と、現像装置12と、感光体ドラム13と、帯電装置14と、ドラムクリーニング装置15とを有している。感光体ドラム13の表面は、光導電性を有しており、例えば負帯電型の有機感光体である。感光体ドラム13は、トナー像を担持する像担持体である。
【0029】
帯電装置14は、例えばコロナ帯電器であるが、帯電ローラーや帯電ブラシ、帯電ブレードなどの接触帯電部材を感光体ドラム13に接触させて帯電させる接触帯電装置であってもよい。露光装置11は、例えば半導体レーザーで構成される。
【0030】
現像装置12は、例えば二成分現像方式の現像装置であるが、キャリアを含まない一成分現像方式の現像装置であってもよい。
【0031】
中間転写ユニット20は、中間転写ベルト21と、中間転写ベルト21を感光体ドラム13に圧接させる一次転写ローラー22と、対向部材としての対向ローラー24を含む複数の支持ローラー23と、ベルトクリーニング装置25とを有している。中間転写ベルト21は、無端状の転写ベルトである。ここで、主として一次転写ローラー22により、感光体ドラム13に担持されたトナー像を中間転写ベルト21に転写する一次転写部が構成されることになる。
【0032】
中間転写ベルト21は、複数の支持ローラー23によりループ状に張架され、移動可能となっている。複数の支持ローラー23のうちの少なくとも一つの駆動ローラーが回転することにより、中間転写ベルト21は矢印A方向に一定速度で走行する。
【0033】
中間転写ユニット20は、無端状の中間転写ベルト21に接し、中間転写ベルト21の外側に位置する二次転写ローラー33と、中間転写ベルト21に接し、中間転写ベルト21を挟んで二次転写ローラー33に対して対向配置され、二次転写ローラー33とともにニップ部Nを構成する対向ローラー24と、を備える。
【0034】
転写部材として二次転写ユニット30は、二次転写ローラー33を含む。二次転写ローラー33、対向ローラー24、および、ニップ部Nにより、中間転写ベルト21に担持されたトナー像を記録媒体に転写する二次転写部が構成されることになる。
【0035】
定着装置6は、記録媒体としての用紙に転写されたトナー像を用紙上に定着させるためのものであり、用紙上のトナーを加熱および融解する定着ローラー6aと、用紙を定着ローラー6aに向けて押圧する加圧ローラー6bとを有している。
【0036】
用紙搬送部5は、給紙部5aと、排紙部5bと、搬送経路部5cとを有している。給紙部5aを構成する給紙トレイユニット5a1~5a3には、坪量やサイズ等に基づいて識別された用紙が予め設定された種類ごとに収容される。搬送経路部5cは、レジストローラー対5c1などの複数の搬送ローラー対を有している。排紙部5bは、排紙ローラー5b1によって構成されている。
【0037】
搬送経路部5cにおける用紙の搬送速度は、制御部8によって決定される。搬送経路部5cは、上述した複数の搬送ローラー対に加えて、モーター、モータードライバ、ギア等を含んでいる。これら複数の搬送ローラー対、モーター、モータードライバ、ギア等は、制御部8からの電気信号を受けて各種モーターを回転させることで、記録媒体としての用紙を搬送する。
【0038】
上述した各種モーターによって回転させられる部材には、例えば現像装置12に含まれる現像ローラーや、感光体ドラム13、中間転写ベルト21、二次転写ローラー33、定着ローラー6a、上述した搬送ローラー対等があるが、これらの部材は、1個のモーターで一元的に駆動されてもよいし、複数のモーターで別々に駆動されてもよい。ただし、これら部材の外周面は、同じ線速度(この線速度は、一般にシステム速度と称される)で駆動されることが好ましい。なお、制御部8は、これら各種モーターの回転数やギアを切り替えることにより、システム速度を変更させることができる。
【0039】
(画像形成の処理)
次に、画像形成装置1による画像形成の処理について説明する。原稿画像走査装置2bは、コンタクトガラス上の原稿を光学的に走査して読み取る。原稿からの反射光は、CCDセンサー7により読み取られ、入力画像データとなる。入力画像データは、画像処理部3において所定の画像処理が施され、露光装置11に送られる。なお、入力画像データは、外部パソコンやモバイル機器などから画像形成装置1に送付されたものであってもよい。
【0040】
感光体ドラム13は、一定の周速度で回転する。帯電装置14は、感光体ドラム13の表面を一様に負極性に帯電させる。露光装置11は、各色成分の入力画像データに対応するレーザー光を感光体ドラム13に照射し、感光体ドラム13の表面に静電潜像を形成する。現像装置12は、感光体ドラム13の表面にトナーを付着させ、感光体ドラム13上の静電潜像を可視化させる。こうして感光体ドラム13の表面に静電潜像に応じたトナー像が形成される。
【0041】
感光体ドラム13の表面のトナー像は、中間転写ユニット20によって中間転写ベルト21に転写される。転写後に感光体ドラム13の表面に残存する転写残トナーは、感光体ドラム13の表面に摺接するドラムクリーニングブレードを有するドラムクリーニング装置15によって除去される。一次転写ローラー22によって中間転写ベルト21が感光体ドラム13に圧接されることにより、中間転写ベルト21に各色のトナー像が順次重なって転写される。
【0042】
二次転写ローラー33は、中間転写ベルト21を介して、対向ローラー24に圧接される。これにより、転写ニップ(ニップ部N)が形成される。用紙は、用紙搬送部5によって転写ニップへ搬送され、この転写ニップを通過する。用紙の傾きの補正および搬送のタイミングの調整は、レジストローラー対5c1が配設されたレジストローラー部により行われる。
【0043】
転写ニップに用紙が搬送されると、二次転写ローラー33へ所定の電圧が印加される。この電圧の印加によって、中間転写ベルト21に担持されているトナー像は用紙に転写される。中間転写ベルト21の表面に残存する転写残トナーは、中間転写ベルト21の表面に摺接するベルトクリーニングブレードを有するベルトクリーニング装置25によって除去される。ベルトクリーニング装置25については、中間転写ベルト21上の残留トナーを清掃するものであれば、ブラシによるクリーニング方式を採用したものであってもよい。転写率の高いトナーを使用する場合には、クリーニング装置を使用しない態様もありえる。トナー像が転写された用紙は、定着装置6に向けて搬送される。
【0044】
定着装置6は、トナー像が転写されて搬送されてきた用紙を加熱および加圧する。こうしてトナー像は用紙に定着する。トナー像が定着された用紙は、排紙ローラー5b1を備えた排紙部5bにより機外に排紙される。
【0045】
トナーは、バインダー樹脂中に着色剤や、必要に応じて荷電制御剤や離型剤等を含有させ、外添剤を処理させたものであり、一般に使用されている公知のトナーを使用することができる。トナーの体積平均粒径は、好ましくは2μm以上12μm以下の範囲の粒子であり、画質の点でより好ましくは、3μm以上9μm以下の範囲の粒子がよい。
【0046】
トナーの外添剤は、シリカやチタニアといった金属酸化物の微粒子が使用され、大きさは30nmといった小粒径のものから、100nmといった比較的大きな粒径のものが使用される。粉体流動性や帯電制御等の目的で、平均1次粒径が40nm以下の無機微粒子を用いてもよい。さらに、必要に応じて付着力低減のため、それより大径の無機あるいは有機微粒子を併用してもよい。無機微粒子としては、シリカやチタニアのほかに、アルミナ、メタチタン酸、酸化亜鉛、ジルコニア、マグネシア、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、リン酸カルシウム、酸化セリウム、チタン酸ストロンチウム等が挙げられる。分散性や粉体流動性をあげるため、無機微粒子の表面を別途処理してもよい。
【0047】
中間転写ベルトは、樹脂層のみで構成されていてもよいし、基層、弾性層に加えて、表層やその他の層を設け、本発明の効果を損なわない範囲でさらに多層化することもできる。
【0048】
基層は有機高分子化合物層であり、これによってベルト全体の機械的強度の向上を達成できる。基層を構成する樹脂材料としては、例えば、ポリカーボネート、フッ素系樹脂、ポリスチレン、クロロポリスチレン、ポリ-α-メチルスチレン、スチレン-ブタジエン共重合体、スチレン-塩化ビニル共重合体、スチレン-酢酸ビニル共重合体、スチレン-マレイン酸共重合体、スチレン-アクリル酸エステル共重合体(スチレン-アクリル酸メチル共重合体、スチレン-アクリル酸エチル共重合体、スチレン-アクリル酸ブチル共重合体、スチレン-アクリル酸オクチル共重合体およびスチレン-アクリル酸フェニル共重合体等)、スチレン-メタクリル酸エステル共重合体(スチレン-メタクリル酸メチル共重合体、スチレン-メタクリル酸エチル共重合体、スチレン-メタクリル酸フェニル共重合体等)、スチレン-α-クロルアクリル酸メチル共重合体、スチレン-アクリロニトリル-アクリル酸エステル共重合体等のスチレン系樹脂(スチレンまたはスチレン置換体を含む単重合体または共重合体)、メタクリル酸メチル樹脂、メタクリル酸ブチル樹脂、アクリル酸エチル樹脂、アクリル酸ブチル樹脂、変性アクリル樹脂(シリコーン変性アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂変性アクリル樹脂、アクリル・ウレタン樹脂等)、塩化ビニル樹脂、スチレン-酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ロジン変性マレイン酸樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエステルポリウレタン樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、ポリ塩化ビニリデン、アイオノマー樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ケトン樹脂、エチレン-エチルアクリレート共重合体、キシレン樹脂およびポリビニルブチラール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、変性ポリフェニレンオキサイド樹脂、変性ポリカーボネート、およびそれらの混合物等が挙げられる。
【0049】
基層には抵抗値調整用に導電剤が添加されてもよい。基層における導電剤の含有量は基層材料100重量部に対して0.1重量部~20重量部であるが、必ずしもこの範囲に限定されない。
【0050】
弾性層は、基層の外周面上に形成される、導電性と粘弾性を有する有機化合物層である。
【0051】
弾性層を構成する弾性層材料としては、例えば、ブチルゴム、フッ素系ゴム、アクリルゴム、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、ニトリルブタジエンゴム(NBR)、アクリロニトリルブタジエンスチレンゴム、天然ゴム、イソプレンゴム、スチレン-ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、エチレン-プロピレンゴム、エチレン-プロピレンターポリマー、クロロプレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、ウレタンゴム、シンジオタクチック1、2-ポリブタジエン、エピクロロヒドリン系ゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、多硫化ゴム、ポリノルボルネンゴム、水素化ニトリルゴム、熱可塑性エラストマー(例えばポリスチレン系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、ポリウレタン系、ポリアミド系、ポリウレア、ポリエステル系、フッ素樹脂系)等からなる群より選ばれる1種類あるいは2種類以上を使用することができる。弾性層を構成する好ましい弾性層材料はNBRであるが、この材料に限定されるものではない。
【0052】
弾性層には導電性を発現するために導電剤が含有されている。導電剤には、ベルトに導電性を付与するための公知の材料が用いられる。導電剤は一種でもそれ以上でもよい。導電剤の含有量は弾性層材料100重量部に対して0.1重量部~30重量部であるが、必ずしもこの範囲に限定されない。弾性層における導電剤の含有量は、総量で、中間転写ベルトの所望の体積抵抗率を実現する量である。中間転写ベルトの体積抵抗率は、例えば1×108Ω・cm~1×1012Ω・cmである。
【0053】
導電剤としてはイオン導電剤および電子導電剤が含まれる。イオン導電剤としては、ヨウ化銀、ヨウ化銅、過塩素酸リチウム、過塩素酸リチウム、過塩素酸リチウム、トリフロオロメタンスルホン酸リチウム、有機ホウ素錯体のリチウム塩、リチウムビスイミド((CF3SO2)2NLi)およびリチウムトリスメチド((CF3SO2)3CLi)が含まれる。電子導電剤の例には、銀や銅、アルミニウム、マグネシウム、ニッケル、ステンレス鋼などの金属、グラファイトやカーボンブラック、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブなどの炭素化合物が含まれる。
【0054】
弾性層には、非繊維形状の樹脂や繊維形状の樹脂を含有させてもよい。非繊維形状の樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、熱硬化性ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、反応性モノマー等の熱硬化性樹脂、あるいはポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ酢酸ビニル(PVA)、熱可塑性ウレタン等の熱可塑性樹脂等が挙げられる。非繊維形状の樹脂の弾性層材料に対する添加量は、弾性層材料100の質量部に対して20質量部以上60質量部以下の範囲であるが、必ずしもこの範囲に限定されない。
【0055】
繊維形状の樹脂としては、例えば、綿、麻、絹、レーヨン、アセテート、ナイロン、アクリル、ビニロン、ビニリデン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリプロピレン、アラミドなどの樹脂系繊維を挙げることができる。繊維形状の樹脂の添加量は、弾性層材料100質量部に対して、10質量部以上40質量部以下の範囲であるが、必ずしもこの範囲に限定されない。
【0056】
非繊維形状の樹脂や繊維形状の樹脂の他に、慣用の添加剤、例えば加硫剤、加硫促進剤、加硫助剤、共架橋剤、軟化剤、可塑剤等をゴム中に含有させてもよい。これら添加剤は、単独で又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0057】
加硫剤としては、例えば硫黄、有機含硫黄化合物、有機過酸化物が使用可能である。
共架橋剤としては、有機過酸化物による共架橋剤としての、エチレングリコール・ジメタクリレート、トリメチロールプロパン・トリメタクリレート、多官能性メタクリレートモノマー、トリアリルイソシアヌレート、含金属モノマー等、従来から使用されているものが挙げられる。共架橋剤の弾性層材料に対する添加量は、通常、弾性層材料100質量部に対して5質量部以下の範囲であるが、必ずしもこの範囲に限定されない。
【0058】
弾性層の上に表層を設けてもよい。表層の材料に制限はないが、弾性中間転写ベルト表面へのトナーの付着力を小さくし、二次転写性を高めるものが好ましい。例えば、ポリウレタン、ポリエステル、エポキシ樹脂等の1種類あるいは2種類以上を使用するとともに、表面エネルギーを小さくし潤滑性を高める材料、例えばフッ素樹脂、フッ素化合物、フッ化炭素、二酸化チタン、シリコーンカーバイド等の粉体、粒子を1種類あるいは2種類以上分散させたものを使用することができる。これら粉体、粒子の粒径を異ならせたものを分散させ使用することもできる。フッ素系ゴム材料のように熱処理を行うことで表面にフッ素リッチな層を形成させ表面エネルギーを小さくさせてもよい。
【0059】
基層および弾性層は、公知の方法によって作成することが可能である。
本実施の形態の中間転写ベルトにおける表層の十点平均表面粗さRzは、0.5μm以上9.0μm以下の範囲であることが好ましく、3.0μm以上6.0μm以下の範囲であることがより好ましい。十点平均表面粗さRzが0.5μm未満であると、接触部材と密着する懸念があり、十点平均表面粗さRzが9.0μmよりも大きい場合には、凹凸部分にトナーおよび紙粉等が溜まり易くなり、画像品質が低下する場合がある。なお、十点平均表面粗さRzとは、JIS B0601(2001年)に規定された表面粗さのことである。
【0060】
(対向ローラー24)
対向ローラー24としては、芯金にゴム層を付与したもの、スポンジ層を付与したもの、およびスポンジ層の表面にゴム層を付与したものなど、一般的なローラーを用いることができる。対向ローラー24の表面は低摩擦の部材でコートされていてもよい。低摩擦の材料としては、4フッ化エチレン樹脂やメラミン樹脂、ナイロン、ポリエチレン、ユリア樹脂、ポリアセタール、ABS樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリプロピレン、フェノール樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、アクリル樹脂、エポキシ樹脂などが好適である。
【0061】
(二次転写部の概略構成)
次に、
図2から
図4を参照して、本実施の形態における二次転写部の概略構成について説明する。
図2は、
図1に示す二次転写部の概略構成を示す拡大図であり、振動付与装置44が、対向ローラー24から見て中間転写ベルト21の上流側に設けられている図である。一方、
図3は、
図1に示す画像形成装置1と基本構成は同じであるが、振動付与装置44が、対向ローラー24から見て中間転写ベルト21の下流側に設けられている図であり、
図4は、
図3に示す二次転写部の概略構成を示す拡大図である。
【0062】
図2および
図4に示すように、中間転写ベルト21は、画像形成装置1の二次転写部を通過するように配置される。
【0063】
二次転写部は、互いに対向するように平行に配置された二次転写ローラー33および対向ローラー24、ならびにニップ部Nを含んでいる。ニップ部Nは、二次転写ローラー33と対向ローラー24との間に形成されている。中間転写ベルト21は、このニップ部Nを挿通するように配置されており、用紙等の記録媒体1000も同じくこのニップ部Nを通過するように供給される。
【0064】
二次転写ローラー33は、導電性の材料からなり、当該二次転写ローラー33には、二次転写電源33cが接続されている。対向ローラー24は、導電性の材料からなる芯金24aと、当該芯金24aの周面を覆う導電性の弾性層24bとを含んでおり、このうちの芯金24aは、接地されている。これにより、ニップ部Nには、二次転写ローラー33、対向ローラー24および二次転写電源33cによって所定の電界が形成される。
【0065】
中間転写ベルト21は、記録媒体1000よりも対向ローラー24側を挿通するように配置されており、記録媒体1000は、中間転写ベルト21よりも二次転写ローラー33側を通過するように供給される。
【0066】
二次転写ローラー33は、図中に示す矢印AR1方向に回転駆動され、対向ローラー24は、図中に示す矢印AR2方向に回転駆動される。二次転写ローラー33は、トナー像の転写に際して図中に示す矢印AR3方向に向けて図示しない押圧機構によって押圧されている。これにより二次転写ローラー33と対向ローラー24とは、中間転写ベルト21および記録媒体1000を介して圧接する。
【0067】
二次転写ローラー33の回転と対向ローラー24の回転とに基づき、中間転写ベルト21および記録媒体1000は、それぞれ図中に示す矢印AR4方向および矢印AR5方向に搬送される。その際、ニップ部Nを通過するに当たり、中間転写ベルト21および記録媒体1000が二次転写ローラー33と対向ローラー24とによって加圧された状態で挟み込まれて密着することになる。
【0068】
その際、密着した部分の中間転写ベルト21および記録媒体1000には、上述した所定の電界が作用することになる。これにより、中間転写ベルト21の第1主面21s1に付着していたトナーが記録媒体1000の記録面1001に付着することになり、トナー像の転写が行なわれる。
【0069】
中間転写ベルトと対向ローラーとの間で、ニップ部Nの外側に、振動付与装置44が設置されている。
図1および
図2は、ニップ部Nの上流側、
図3および
図4は、ニップ部Nの下流側に設置する例である。
【0070】
振動付与装置44の先端部は、中間転写ベルト21の裏面のニップ部Nの近傍に接触している。振動付与装置44が振動すると、その振動が中間転写ベルト21に伝達し、中間転写ベルト21の表面(トナー像を担持する面)が振動することによって、中間転写ベルト21へのトナーの付着力が低下し、転写性が向上する。
【0071】
(振動付与装置44の作用原理)
図5を参照して、対向ローラー24から見て中間転写ベルト21の上流側に振動付与装置44を設置する場合をまず説明した後、下流側の場合について、上流との共通点および差異点を中心に説明する。
図5は、二次転写部を拡大した模式断面図である。
【0072】
二次転写ローラー33の中心と対向ローラー24との中心とを結ぶ直線C1(図中、一点鎖線で表す)が中間転写ベルト21と交わる点をニップ中央位置(a)とする。中間転写ベルト21の裏面と対向ローラー24の外周面とが接するニップ内の最上流の点を入口側のニップ端位置(b)とする。振動付与装置44の先端と中間転写ベルト21裏面とが接する点を加振位置(c)とする。
【0073】
加振位置(c)と入口側のニップ端位置(b)との間の距離をL1[mm]とする。ニップ中央位置(a)と入口側のニップ端位置(b)との間の距離をL2[mm]とする。
【0074】
本願の発明者らは、加振位置(c)を、ニップの近傍、具体的には、[L1/L2≦1.5]、より好ましくは[L1/L2≦1]となる位置に設定すれば、トナーの飛び散りを防止しながら、十分な転写性向上効果が得られる設定が可能となることを見出した。以下に詳細に説明する。
【0075】
(加振位置の作用効果)
振動付与による転写性向上の作用原理について詳しく説明する。
図5を参照して、振動付与装置44の先端は、中間転写ベルト21の裏面と接触するように配置されている。振動付与装置44が振動すると、その振動が中間転写ベルト21に伝達し、加振位置(c)でベルトが振動する。加振位置(c)でベルトが振動すると、その振動が中間転写ベルト21を伝ってベルト搬送方向に伝播し、入口側のニップ端位置(b)で中間転写ベルト21が振動する。
【0076】
入口側のニップ端位置(b)付近で中間転写ベルト21が十分高い周波数、あるいは、十分大きい振幅を持って振動すると、中間転写ベルト21上のトナーが揺さぶられて、中間転写ベルト21へのトナーの付着力が低下する。
【0077】
ここで、二次転写ローラー33と対向ローラー24との間にはトナーを中間転写ベルト21上から記録媒体1000上へ転写する為の電圧が印加されている(図示は省略)ので、入口側のニップ端位置(b)付近よりも下流側のニップ内では、トナーを中間転写ベルト21上から記録媒体1000上へ移動させようとする電界が形成される。振動によってトナーの付着力が低下すると同時に、トナーを移動させようとする電界が働くことにより、中間転写ベルト21上のトナーが記録媒体1000上へ転写される。
【0078】
記録媒体1000には、表面に凹凸の形成された、エンボス紙が含まれる。エンボス紙の凹部には、空気層の為に、トナーを移動させる電界が掛かり難く、凹部にトナーを転写させるのは難しい。しかし、上記のように、振動の作用によってトナーの付着力が低下した状態では、弱い電界でもエンボス紙の凹部にトナーを転写させることが可能になるので、エンボス紙に対しても高品位の画像形成が可能になる。
【0079】
ニップ中央位置(a)では、二次転写ローラー33と対向ローラー24との間の圧力が最も高くなる。従って、ニップ中央位置(a)に近づく程、中間転写ベルト21が対向ローラー24と記録媒体1000との間で強い圧力で挟持されて、自由に動き難くなる。この為、中間転写ベルト21の振動は、ニップの中央(a)に近づくにつれて急速に減衰する。
【0080】
入口側のニップ端位置(b)よりも上流側では、中間転写ベルト21と対向ローラー24との間に空気層が存在する為にトナーを転写させる電界が掛かり難い。一方、ニップ中央位置(a)に近づくにつれてベルトの振動が減衰する為に、転写を補助する作用が弱くなる。従って、中間転写ベルト21の振動が比較的大きく、かつ、トナーを転写させる電界も掛る、入口側のニップ端位置(b)付近において、トナーが最も転写され易くなる。
【0081】
ここで、加振位置(c)で付与した振動が全く減衰せずに中間転写ベルト21の搬送方向に伝播して入口側のニップ端位置(b)に達するのが理想的である。しかし、現実は、加振位置(c)と入口側のニップ端位置(b)との距離L1が長くなると、振動が減衰してしまう。振動が減衰してしまう場合、入口側のニップ端位置(b)で十分強い振動を得る為に、途中の減衰分を見越して、加振位置(c)により強い振動を付与する必要がある。
【0082】
加振位置(c)で強い振動を付与すると、中間転写ベルト21がトナーを保持しきれなくなり、ニップ部Nに達する前にトナーが飛び散る。トナーが飛び散ると、文字およびドットの一部が欠ける等の画像欠陥が発生する原因となる。
【0083】
そこで、加振位置(c)で付与した振動が入口側のニップ端位置(b)に達するまでの減衰を抑制する為、中間転写ベルト21と対向ローラー24との接触ニップの近傍で、中間転写ベルト21に振動付与することとした。
【0084】
このようにすることで、加振位置(c)で付与した振動が概ね減衰せずに入口側のニップ端位置(b)に達する。加振位置(c)で付与する振動を、トナーの飛び散りは発生しない程度の比較的弱い振動としても、加振位置(c)で付与した振動が概ね減衰せずに入口側のニップ端位置(b)に達し、入口側のニップ端位置(b)では転写電界による移動力が働くので、記録媒体1000に対してトナーを転写させることができる。
【0085】
振動付与装置44としては、従来、ランジュバン型と呼ばれるタイプの超音波振動子を用いることが多い。ランジュバン型の超音波振動子は、超音波領域の高周波数の振動が安定して得られる反面、サイズが大きいという欠点がある。従って、ランジュバン型の超音波振動子を用いる場合、加振位置(c)を入口側のニップ端位置(b)に近づけるのは容易ではない。そこで、加振位置(c)を入口側のニップ端位置(b)にどの程度まで近づけるのが好ましいのか、指標が必要である。
【0086】
図6から
図8は、
図5の二次転写部の一部を拡大した模式図である。
図6は、振動を付与する前の状態である。図示において上側が対向ローラー24、下側が二次転写ローラー33であり、中間転写ベルト21が両ローラー間に挟持されている。記録媒体1000は表示を省略している。なお、
図6から
図8では、振動の伝達の様子を分かり易くする為に、振動の振幅や周期を実際とは異なる大きさで描いている。
【0087】
ニップ中央位置(a)には上下ローラー間に強い圧力が掛るので、中間転写ベルト21は半固定され、この状態を三角記号(▽と△)とで表現している。このような状態で、加振位置(c)に振動付与した時の中間転写ベルト21の振動の仕方は、ニップ中央位置(a)が固定された片持ち梁のように考えることができる。
【0088】
図7および
図8は、振動付与中の状態を示している。
図7は加振位置(c)と入口側のニップ端位置(b)との距離L1’が比較的小さい場合、
図8はL1’’が比較的大きい場合の振動の様子である。
【0089】
加振位置(c)に振動付与装置44を用いて振動付与すると、中間転写ベルト21は、付与した振動に応じて往復運動する。d0が加振位置(c)での中間転写ベルト21の振動の振幅である。
【0090】
図7に示すように、入口側のニップ端位置(b)が加振位置(c)に近い場合、中間転写ベルト21はある程度の剛性を持つので、中間転写ベルト21の入口側のニップ端位置(b)では、加振位置(c)の動きに追随して動こうとする。この結果、入口側のニップ端位置(b)での中間転写ベルト21の振幅d1’は、加振位置での振幅d0に近い大きさとなる。さらに、ニップ中央位置(a)に近づいて行くにつれて上下ローラーからの圧力が高まってベルトの動きが規制され、振幅が急激に小さくなる。
【0091】
一方、
図8に示すように、入口側のニップ端位置(b)が加振位置(c)から遠い場合、中間転写ベルト21の剛性はそれ程高くはないので、中間転写ベルト21の入口側のニップ端位置(b)は、加振位置(c)の振動の動きに対して追随して動き難くなる。逆に、上下ローラーからの圧力によって中間転写ベルト21の動きが抑制される作用が、相対的に強くなる。この結果、入口側のニップ端位置(b)での中間転写ベルト21の振幅d1’’は、加振位置(c)での振幅d0よりも小さくなる。
【0092】
加振位置(c)での動きに追随してベルトを変位させようとする力と、両ローラー間の圧力(ニップ中央位置(a)でピーク圧となる)により中間転写ベルト21の変位を抑止しようとする力の両方が作用し、その大小関係によって、入口側のニップ端位置(b)での振幅が決まる。これは、加振位置(c)と入口側のニップ端位置(b)との距離L1と、ニップ中央位置(a)と入口側のニップ端位置(b)との距離L2との大小関係によって、入口側のニップ端位置(b)での振動の振幅が決まることを意味する。
【0093】
すなわち、L2≫L1のとき、
図7に示す状態となり、入口側のニップ端位置(b)での振幅d1’は大きくなる。L2≪L1のとき、
図8に示す状態となり、入口側のニップ端位置(b)での振幅d1’’は小さくなる。
【0094】
図9を参照して、以上の関係性をまとめる。
図9において、横軸は、L1/L2、縦軸は入口側のニップ端位置(b)での振幅d1と加振位置での振幅d0との比d1/d0を振動伝達効率γとしている。
【0095】
図9に示す結果から、[L1/L2≦1.5]とすれば、振動伝達効率γが60%以上の状態が得られる。すなわち、加振位置での振幅の60%以上の振幅での振動が、入口側のニップ端位置(b)で実現できることになる。これにより、加振位置(c)で付与する振動を、トナーの飛び散りは発生しない程度の比較的弱い振動としても、加振位置(c)で付与した振動の少なくとも60%以上の強度の振動が入口側のニップ端位置(b)付近で得られるので、大きな転写性向上効果を得ることができる。
【0096】
更にL1/L2≦1とすれば、振動伝達効率γが80%以上の状態が安定的に得られる。すなわち、加振位置(c)での振幅の80%以上の強度の振動が、入口側のニップ端位置(b)付近で安定的に実現できることになる。これにより、常に安定した転写性が得られ、高画質が安定的に実現する。
【0097】
(従来との差異)
前述した通り、振動付与装置44として、ランジュバン型と呼ばれるタイプの超音波振動子が用いられることが多かった。ランジュバン型の超音波振動子は、サイズが大きい為、加振位置(c)を入口側のニップ端位置(b)に近づけて、L1/L2を小さくするのは容易ではない。
【0098】
L1/L2を小さくするには、L2を大きくするのも一つの方法であり、L2を大きくするには、ニップ幅を大きくすれば良い。ニップ幅を大きくするには、ローラー径を大きくするのが一つの方法ではある。しかし、ローラー径を大きくすると、中間転写ベルト21と対向ローラー24との間の断面においてクサビ型の空間が狭くなり、加振位置(c)を入口側のニップ端位置(b)に近づけて設置するのがより困難になってしまう。
【0099】
上記特許文献の中には、中間転写ベルト21の裏面に振動を付与する技術が開示されている。しかし、振動を付与する位置について具体的に記載したものは無い。上記特許文献に開示される振動付与位置は、記載されている振動子の形状やローラーの径、図面等に基づけば、L1/L2は少なくとも3以上である。
【0100】
すなわち、
図9において、二点鎖線(B)で囲まれた領域で使用していることになる。振動伝達効率が25%以下の領域であり、十分な転写性向上効果を得るには、加振位置(c)で大きな振動を付与する必要がある。その為に、トナーの飛び散りが発生し易くなる。
【0101】
一点鎖線(A1)で囲まれた領域、もしくは、破線(A2)で囲まれた領域が、本実施の形態での使用領域である。破線(A2)で示すように、L1/L2を1.5以下とすることで、60%以上の高い振動伝達効率が得られる。一点鎖線(A1)で示すように、L1/L2を1以下とすることで、80%以上の高い振動伝達効率が安定して得られる。これにより、加振位置でむやみに大きな振動を付与する必要が無くなり、トナーの飛び散りが発生しない。従って、振動付与による転写性向上とトナーの飛び散り防止とが両立することができる。
【0102】
(L1/L2に着目する事の補足)
振動伝達効率は、厳密には、ベルトの剛性や二次転写部でのローラー間の圧力、二次転写ローラー33、および、対向ローラー24の硬度等によっても変化する。しかし、これらの数値は、電子写真方式において好適に用いられる範囲が概ね決まっている。
【0103】
前述した通り、
図6から
図8に示す構造は、片側が固定された片持ち梁と考えることができる。片持ち梁の場合、先端荷重W[N]に対する先端の撓みδ[mm]の関係は、[δ=WL
3/(3EI)]で表され、撓みδは梁の長さLの3乗に比例する。
【0104】
これは、梁の長さが2倍になると、撓みは8倍になることを意味する。Eは材質で決まるヤング率、Iは断面形状で決まる断面二次モーメントである。
【0105】
このような理由で、
図9からも分かるように、振動伝達効率は、L1およびL2に対してダイナミックに変化し、他のパラメータの影響は相対的に小さくなる。
【0106】
以上の理由により、他の設定値が概ね電子写真方式の画像形成装置で好適に用いられる範囲であれば、L1とL2の関係を適切に設定することによって、実用上十分な作用効果が得られる。
【0107】
(下流側で振動を付与する場合)
図2および
図4で示したように、ニップ部Nの近傍で中間転写ベルト21の裏面に振動付与する構成において、ニップ部Nの上流側で振動付与する場合(
図2)と、ニップ部Nの下流側で振動付与する場合(
図4)とが考えられる。
【0108】
大部分のトナーは二次転写部で記録媒体1000の上に転写されるが、一部のトナーは転写残トナーとなって中間転写ベルト21の上に残る。ニップ部Nの下流側で振動を付与する場合、中間転写ベルト21の上の転写残トナーが飛び散る場合がある。転写残トナーは通常は量が少ないので、飛び散ったとしても画質に与える直接的な影響は軽微である。
【0109】
しかし、転写残トナーが画像形成装置1内に飛散して随所に付着し、画像形成を繰り返すにつれて蓄積した場合、耐久使用時に様々な不具合を引き起こす原因となる。例えば、部材に付着したトナーが画像形成中の記録媒体1000上にこぼれて汚れとなり、画像品位を大きく落とすことがある。二次転写ローラー33等に付着したトナーがそのまま固着して、画像欠陥を引き起こすことがある。
【0110】
従って、ニップ部Nの下流側に振動を付与する場合にも、上流側と同様に、転写性向上と飛び散り防止との両立は重要な課題である。上流と下流の違いは、上流付与の場合、飛び散りが発生すると一枚目から画像品質低下に繋がるのに対し、下流付与の場合、耐久使用時の画像品質低下に繋がることである。
【0111】
振動伝達の特性は、上流/下流に関わらず同様なので、適正条件も同様に考えることができる。すなわち、下流側に振動を付与する場合にも、上流側と同様に、出口側のニップ近傍に振動付与することが好ましい。
【0112】
ニップ部Nの上流側に振動付与する場合、L1を加振位置(c)と入口側のニップ端位置(b)との間の距離、L2をニップ中央位置(a)と入口側のニップ端位置(b)との間の距離とした。下流側に振動付与する場合、L1を加振位置(c)と出口側のニップ端位置(b)との間の距離、L2をニップ中央位置(a)と出口側のニップ端位置(b)との間の距離として、L1/L2を適正に設定すれば良い。
【0113】
(上流側で振動付与することによる効果)
上流側で振動付与する場合、以下に述べるようなメリットが発生する。従来、ニップ部Nよりも上流側で放電が起こって転写性が悪化するのを抑制する為に、中間転写ベルト21と二次転写ローラー33とが上流側で接触する、巻き掛け部(前ニップ部、プレニップ等とも呼ばれる)を有することが一般的である。
【0114】
(i)「巻き掛け部」があることによって、中間転写ベルト21と対向ローラー24との間に、断面がクサビ型の空間が生まれる。これにより、振動付与装置44の先端を中間転写ベルト21と対向ローラー24との接触ニップの近傍に配置し易くなる。
【0115】
(ii)「巻き掛け部」において振動付与することにより、ニップ突入時にトナーの位置がずれる現象を防止することができる。
【0116】
(「ずれ転写現象」、巻き掛け部Mに振動付与することによる効果)
図10を参照して、上記(ii)について、以下に更に詳しく説明する。
図10は、巻き掛け部M(
図10中のL3に示す領域)を示すニップ部Nの近傍の拡大図である。
【0117】
中間転写ベルト21に振動付与する場合、トナーの飛び散りを防止したとしても、中間転写ベルト21の上のトナーが記録媒体1000上に転写される際に、トナーの位置が上流側もしくは下流側にずれて転写される場合があることが分かった。トナーの位置がずれると、細線(横線)や文字が本来よりも太くなったりする。
【0118】
図11から
図13を参照して、この「ずれ転写現象」の発生する理由を説明する。
図11のように、中間転写ベルト21の表面形状が、振動によって(i)から(ii)へと変化した場合、中間転写ベルト21と記録媒体1000とで挟まれた断面がクサビ型の空間内の圧力が高くなり、図中の右向きの矢印で示すように空気の流れA1が発生する。これにより、中間転写ベルト21上の(イ)の位置にあるトナーTが本来転写されるべき位置(ロ)に転写されずに、空気流により流されて(ハ)の位置に転写される。
【0119】
逆に、
図12のように、中間転写ベルト21の表面形状が(i)から(iii)へと変化した場合、クサビ型の空間内の圧力が低くなり、図中の左向きで示すように空気の流れA2が発生する。これにより中間転写ベルト21上の(イ)の位置にあるトナーTが本来転写されるべき位置(ロ)に転写されずに、空気流により流されて(ニ)の位置に転写される。
【0120】
このようにして、細線(横線)や文字が本来よりも太くなったりする。これは、ニップ部Nの入口付近において、中間転写ベルト21と記録媒体1000とがある角度を成している(中間転写ベルト21が二次転写ローラー33側に巻き掛けられていない)場合に、中間転写ベルト21に振動付与したときに起こる現象である。
【0121】
中間転写ベルト21と二次転写ローラー33との間には、中間転写ベルト21が二次転写ローラー33側に巻き掛けられる巻き掛け部Mが設けられている場合、中間転写ベルト21と記録媒体1000とのギャップが小さくなり、トナーが自由に動ける余地が小さくなる。したがって、巻き掛け部Mにおいて中間転写ベルト21に振動付与した場合には、ニップ部Nの入口付近にてトナーが転写される際にも、トナーが自由に動ける余地が小さいので、トナーの位置がずれて転写されることが無い。
【0122】
このようにして、トナーの位置がずれて、細線(横線)や文字が本来よりも太くなったり、ベタパターンのエッジが乱れたりするのを防止することができる。
図13は、巻き掛け部Mにおけるトナーの状態を模式的に表す図である。具体的には、
図10に示したように、巻き掛け部M(長さL3)の中間転写ベルト21の裏面に接するように、振動付与装置44を設置すれば良い。
【0123】
(振動付与装置44について)
図14に、具体的な振動付与装置44の構成について説明する。振動付与装置44は、中間転写ベルト21に接触する振動板44cと、振動板44cに振動を与える振動発生装置と、振動発生装置と振動板44cとを保持する基体44aとを有する。振動板44cには、SUS板を用いた。振動発生装置には、印加電圧に応じて伸縮する電気機械変換素子の一例として、圧電アクチュエータ44bを用いることができる。圧電アクチュエータ44bは、基体44aと振動板44cとの間に取り付けられている。
【0124】
基体44aは、画像形成装置1の壁面等に固定されている。圧電アクチュエータ44bは印加電圧に応じて伸縮する。このとき、基体44aは固定されて動かないので、振動板44cが圧電アクチュエータ44bに押されて変位する。振動板44cの一方端は基体44aに固定されている。振動板44cの他方端は固定されておらず、動くことができる。この他方端(可動端)が対象物に接触して振動付与する。圧電アクチュエータ44bが伸縮するとき、振動板44cの基体44aに固定された端が支点、反対側の可動端が作用点、圧電アクチュエータ44bと接する点が力点となって、テコの原理により、変位が増幅される。
【0125】
図15および
図16を参照して、振動板44cの軸方向の構成について説明する。振動板44cの軸方向の振動の均一化を図るために、軸方向に沿って圧電アクチュエータ44bを複数配置すると良い。さらに、振動板44cの先端部を折り曲げた先曲げ部44eを設けると良い。振動板44cの耐久性が向上し、振動板44cの先端が、中間転写ベルト21に食い込むことによる、中間転写ベルト21へのキズ付け、摩耗を抑制することができる。さらに先曲げ部44eが二次転写ローラー33の軸方向に沿って中間転写ベルト21の裏面に線接触することで、中間転写ベルト21に均一な振動を付与することができる。
【0126】
(実施例A:振動付与装置44を、ニップ部Nの上流側)
以下、実験例Aとして、振動付与装置44を、ニップ部Nの上流側に設けた場合について説明する。実施例Aにおいては、コニカミノルタ社製の画像形成装置(デジタル印刷機:bizhub PRESS C8000)を用い、これに必要な改造を施すことによってプロセス条件を変更して、画像形成を実際に行なった。
【0127】
中間転写ベルト21は、抵抗約1×109Ω・cm、厚み80μmのポリイミドベルトを用いた。二次転写ローラー33および対向ローラー24は、直径24mmの芯金24aの周りにゴムからなる弾性層24bを設けた、直径40mmのローラーとした。弾性層24bの材料は、NBR(ニトリルブタジエンゴム)を用いた。
【0128】
マイクロゴム硬度計(高分子計器社製MD-1)で計測した弾性層の硬度は40度であった。弾性層の抵抗は約1×108Ω・cmであった。ニップ部N(二次転写部)におけるピーク圧は200kPaであった。二次転写部の軸方向長さは340mmとした。システム速度(画像形成時の記録媒体1000の搬送速度)は、400mm/secとした。
【0129】
振動付与装置44としては、圧電アクチュエータ44bは、トーキン株式会社製のAE0505D44H40(積層圧電アクチュエータ)を用い、振動板44cには、厚みt=0.2mmの材質SUSを用いた。支点-作用点間距離は、La=40mmとした(
図14参照)。支点-力点間距離は、Lb=5mmとした(
図14参照)。印加電圧は、標準設定として、100Vpp、10kHzとした。
【0130】
図17に、実施例1から実施例5および比較例1および比較例2について、L1,L2,L3を変化させた場合の画像の総合評価結果を示す。加振位置(c)から入口側のニップ端位置(b)までの距離L1は、
図17に示す通りである。ニップ中央位置(a)から入口側のニップ端位置(b)までの距離L2は、2.8mmであった。中間転写ベルト21の二次転写ローラー33への巻き掛け量L3は5.3mmから2.0mmである。
【0131】
L1、L2およびL3は、ニップ部N(二次転写部)の観察が可能なように、画像形成装置内にCCDカメラを設置し、画像形成中のニップ部N(二次転写部)を撮影して、得られた画像から各部位の位置を求め距離を計算した。
【0132】
(転写性の評価方法)
転写性の良否の確認には、記録媒体として特種東海製紙株式会社製のエンボス紙、商品名レザック(登録商標)66を使用した。坪量は、302[g/m2]であった。形成する画像は、ベタ画像とした。判定に際しては、マイクロデンシトメーターを用いてシャープで深さの深い凹部の反射濃度と凸部の反射濃度とを測定し、これらの濃度差を算出した。濃度差が0.25未満である場合には、「良(○)」と判定し、濃度差が0.25以上0.40未満である場合には、「可(△)」と判定し、濃度差が0.40以上である場合には、「不可(×)」と判定した。
【0133】
(トナー飛び散りの評価方法)
トナー飛び散りの評価は、記録媒体の上に各色のベタ画像およびハーフトーン画像を形成し、形成した画像を下記基準に従って評価した。より詳しくは、Y、M、C、K各色の印字サンプルとして、印字率25%の全面ハーフトーン画像、および、印字率100%の全面ベタ画像をそれぞれ5枚~10枚連続して形成し、得られた各色印字サンプルを下記の基準に基づき評価した。
【0134】
転写ムラが目視でほとんど確認されない場合は、「○(良)」と評価した。若干の転写ムラはあるものの、実用上問題ないレベルの場合は、「△(可)」と評価した。ムラが著しく発生し、実用上問題となるレベルの場合には、「×(不可)」と評価した。
【0135】
(トナーの位置ずれ(細線太り)の評価方法)
トナーの位置ずれは、以下のように、細線再現性を評価した。上記画像形成装置を用いて、記録媒体上にレッド(イエロー+マゼンタ)の8ドットのクロスライン画像を形成した。形成した画像に対し、ハンディ型画像評価システム(PIAS-II:トレックジャパン株式会社)を使用し、クロスラインの横線についてライン分析を行い、閾値10%で測定した両端のブラーリネスの幅の合計値を線幅とし、下記基準に従って評価した。
【0136】
線幅が、260μm未満の場合には、「○(良)」と評価した。線幅が、260μm以上、290μm未満の場合には、「△(可)」と評価した。線幅が、290μm以上の場合には、「×(不可)」と評価した。
【0137】
(実施例の結果)
実施例1は、L1/L2=0.9、実施例2は、L1/L2=1.0となるように設定した。この場合、標準とした振動付与設定にて十分な振動効果が得られ、飛び散りの結果も良好であった。巻き掛け部にて振動付与する設定の為、トナーの位置ずれが起こらず、横線の線幅も振動付与しない場合と同程度であった。従って、総合評価を「○(良好)」とした。
【0138】
実施例3は、L1/L2=1.1となる設定とした。標準とした設定(アクチュエータへの印加電圧)にて、可レベル(△)の転写性が得られたものの、実施例1および実施例2に比べれば、転写性が若干劣る結果となった。しかし、圧電アクチュエータへの印加電圧を調整して振動強度を強めると、実施例1および実施例2と同じレベルの良好な転写性となった。このとき、飛び散りによるドットの乱れは見られなかった。総合評価を「○(良好)」とした。
【0139】
実施例4は、L1/L2=1.5となる設定とした。標準とした振動付与設定にて、不可レベル(×)の転写性となった。しかし、圧電アクチュエータへの印加電圧を調整して付与する振動強度を実施例3の時よりも更に強めると、実施例1および実施例2と同じレベルの良好な転写性となった。このとき、飛び散りによるドットの乱れは見られなかった。実施例4は、振動強度の調整により、凹凸紙転写性と飛び散りの良好な設定とすることができるので、総合評価を「○(良好)」とした。
【0140】
実施例5は、実施例4と同じく、L1/L2=1.5となる設定とした。但し、この時、二次転写ローラー33への中間転写ベルト21の巻き掛けの設定を変更して、巻き掛け量L3を2.0mmとした。この為に、巻き掛け部Mの外側で振動を付与する設定となった。この結果、トナーの位置ずれが起こり、横線の線幅が若干増加した。横線の線幅は増加したものの、実用上問題ないレベルではある為、総合評価を「△(可)」とした。
【0141】
比較例1は、L1/L2=1.6となる設定とした。標準とした振動付与設定にて、不可レベル(×)の転写性となった。圧電アクチュエータへの印加電圧を調整して、付与する振動強度を強くしていったところ、ある条件にて凹凸紙への転写性が可レベル(△)になったものの、この条件で、トナーの飛び散りによるドットの乱れが不可レベル(×)になってしまった。このように、L1/L2>1.5となる条件では、付与する振動強度を調整しても、凹凸紙への転写性と画像乱れの防止とを両立することはできなかった。
【0142】
比較例2は、L1/L2=2.1となる設定とした。凹凸紙転写性および飛び散りについては、比較例1と同じく、両立できなかった。更にこの場合、巻き掛け部Mよりも上流側で振動付与した為、ニップ突入時にトナーの位置ずれが起こり、細線の幅が若干拡がった。
【0143】
(実施例B:振動付与装置44を、ニップ部Nの下流側)
振動付与装置44を、ニップ部Nの下流側に設置した場合も、上流側に設置した場合と同じく、L1/L2を適正に設定することで、転写性向上と飛び散り防止とが両立できた。下流側では中間転写ベルト21は通常は二次転写ローラー33に巻き掛けられてないので、いずれの条件においてもニップ出口付近での位置ずれが若干発生し、細線の評価は可レベル(△)となった。
【0144】
下流側においても、中間転写ベルト21を二次転写ローラー33に巻き掛ける設定とし、巻き掛け部Mの中間転写ベルト21に振動付与することで、トナーの位置ずれを防いで、細線再現性を向上することが可能である。
【0145】
今回開示された実施の形態および各実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0146】
1 画像形成装置、2 画像読取部、2a 自動原稿給紙装置、2b 原稿画像走査装置、3 画像処理部、4 画像形成部、5 用紙搬送部、5a 給紙部、5a1,5a2,5a3 給紙トレイユニット、5b 排紙部、5b1 排紙ローラー、5c 搬送経路部、5c1 レジストローラー対、6 定着装置、6a 定着ローラー、6b 加圧ローラー、7 センサー、8 制御部、10 画像形成ユニット、11 露光装置、12 現像装置、13 感光体ドラム、14 帯電装置、15 ドラムクリーニング装置、20 中間転写ユニット、21 中間転写ベルト、22 一次転写ローラー、23 支持ローラー、24 対向ローラー、25 ベルトクリーニング装置、30 二次転写ユニット、33 二次転写ローラー、44 振動付与装置、44a 基体、44b 圧電アクチュエータ、44c 振動板、N ニップ部。