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特許7043902ロータコアの製造装置、ロータコアの製造方法、及びカルプレート
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-22
(45)【発行日】2022-03-30
(54)【発明の名称】ロータコアの製造装置、ロータコアの製造方法、及びカルプレート
(51)【国際特許分類】
   H02K 15/02 20060101AFI20220323BHJP
   H02K 15/03 20060101ALI20220323BHJP
   H02K 1/276 20220101ALI20220323BHJP
   H02K 1/22 20060101ALI20220323BHJP
【FI】
H02K15/02 J
H02K15/03 Z
H02K1/276
H02K1/22 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018045447
(22)【出願日】2018-03-13
(65)【公開番号】P2019161850
(43)【公開日】2019-09-19
【審査請求日】2020-10-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】特許業務法人平田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福田 義久
【審査官】服部 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-096942(JP,A)
【文献】特開平08-025424(JP,A)
【文献】特開2012-130130(JP,A)
【文献】特開2015-126671(JP,A)
【文献】特開2002-347087(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 15/02
H02K 15/03
H02K 1/27
H02K 1/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
周方向に間隔をおいて複数の磁石収容孔が形成された円筒状のコア本体と、前記複数の磁石収容孔にそれぞれ収容された複数の磁石と、前記複数の磁石収容孔のそれぞれに充填されて硬化した樹脂と、を備えるロータコアを製造するための製造装置であって、
前記コア本体が載置される固定型と、
前記コア本体上に設けられ、複数の樹脂流入口を有する可動型と、
前記コア本体と前記可動型との間に配置され、板状のプレート本体及び前記プレート本体に対してその板厚方向に相対移動可能な分割部材を有するカルプレートと、を備え、
前記プレート本体が前記可動型に対向して配置されると共に前記分割部材が前記コア本体に対向して配置され、
前記カルプレートには、前記複数の樹脂流入口から流入した樹脂を前記複数の磁石収容孔のそれぞれに導くと共に前記複数の磁石収容孔に充填されなかった樹脂の硬化物であるカルを保持する充填ポットが、前記複数の磁石収容孔のうち前記コア本体の周方向に隣り合った2つの磁石収容孔毎に1つずつ形成されており、
それぞれの前記充填ポットは、前記プレート本体の上面に開口して前記可動型の前記樹脂流入口と連通する接続部と、前記分割部材の下面に開口して前記接続部と前記2つの磁石収容孔のそれぞれとを連通する2つのノズル部と、を有し、
前記分割部材を前記プレート本体に対して前記板厚方向に相対移動させることで、前記充填ポットに保持された前記カルの少なくとも前記コア本体側の端部を、前記充填ポットから離脱可能とされている、
ロータコアの製造装置。
【請求項2】
前記2つのノズル部は、それぞれ一連のテーパ状に形成され、かつ前記プレート本体と前記分割部材にわたって形成されており、
前記プレート本体及び前記分割部材の一方に係止突起が設けられると共に他方に係止溝が設けられており、
前記プレート本体と前記分割部材とが、前記係止突起を前記係止溝に収容することで位置合わせされる、
請求項1に記載のロータコアの製造装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の製造装置を用い、前記コア本体に前記磁石を固定する方法であって、
前記磁石収容孔に前記磁石を収容した前記コア本体を前記固定型に載置し、前記コア本体と前記可動型との間に前記カルプレートを配置する準備工程と、
前記樹脂流入口から供給された前記樹脂を、前記充填ポットを介して前記磁石収容孔に流入させ充填し、前記磁石収容孔に充填した前記樹脂を硬化させる樹脂封止工程と、
前記可動型を離脱させ、その後前記カルプレートを前記コア本体から取り外すことで、前記コア本体から前記カルを分離させるカル分離工程と、
前記カルプレートから前記カルを取り除くカル除去工程と、を備え
前記カル除去工程では、前記分割部材を前記プレート本体に対して前記板厚方向に相対移動させることで、前記充填ポットに保持された前記カルの少なくとも前記コア本体側の端部を、前記充填ポットから離脱させる、
ロータコアの製造方法。
【請求項4】
周方向に間隔をおいて複数の磁石収容孔が形成された円筒状のコア本体と、前記複数の磁石収容孔にそれぞれ収容された複数の磁石と、前記複数の磁石収容孔のそれぞれに充填されて硬化した樹脂と、を備えるロータコアの製造に用いられるカルプレートであって、
板状のプレート本体及び前記プレート本体に対してその板厚方向に相対移動可能な分割部材を有し、前記分割部材が前記プレート本体と前記コア本体との間に配置され、
樹脂を前記複数の磁石収容孔のそれぞれに導くと共に前記複数の磁石収容孔に充填されなかった樹脂の硬化物であるカルを保持する充填ポットが、前記複数の磁石収容孔のうち周方向に隣り合った2つの磁石収容孔毎に1つずつ形成されており、
それぞれの前記充填ポットは、前記プレート本体における前記分割部材と反対側の面に開口する接続部と、前記分割部材における前記コア本体側の面に開口して前記接続部と前記2つの磁石収容孔のそれぞれとを連通する2つのノズル部と、を有し、
前記分割部材を前記プレート本体に対して前記板厚方向に相対移動させることで、前記充填ポットに保持された前記カルの少なくとも前記コア本体側の端部を、前記充填ポットから離脱可能とされている、
カルプレート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータに用いるロータコアの製造装置及び製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
モータに用いるロータコアとして、コア本体に形成された磁石収容孔に磁石を収容し、磁石を収容した磁石収容孔内に樹脂を充填し硬化させて、コア本体に磁石を固定したものが知られている。このようなロータコアを製造する際には、磁石収容孔内に充填した樹脂を硬化させた後に、磁石収容孔の外部に形成されたカルと呼称される不要な樹脂の硬化物を除去する必要がある。
【0003】
従来のロータコアの製造装置として、成型型とコア本体との間にカルプレートと呼称される板状の部材を配置し、このカルプレートにカルを保持させるように構成したものがある(例えば、特許文献1参照)。カルプレートを備えることにより、樹脂の硬化後にカルプレートをコア本体から取り外せば、カルプレートと共に複数のカルが一気にコア本体から分離されることとなり、カルを分離させる工程が容易になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5805385号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、コスト削減の観点から、カルプレートは繰り返し使用することが望まれる。そのため、使用後のカルプレートからカルを取り除く必要がある。
【0006】
カルプレートにおいては、カルの分離を容易とするために樹脂注入用の孔の出口の大きさが小さく形成されている。そのため、カルプレートからカルを除去する際には、樹脂注入用の孔の出口から細径のインジェクタピン等を押し込んでカルを孔から離脱させるしかなく、カルプレートからカルを取り除く作業が容易ではなかった。
【0007】
そこで、本発明は、カルプレートからカルを容易に取り除くことが可能なロータコアの製造装置、ロータコアの製造方法、及びカルプレートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決することを目的として、周方向に間隔をおいて複数の磁石収容孔が形成された円筒状のコア本体と、前記複数の磁石収容孔にそれぞれ収容された複数の磁石と、前記複数の磁石収容孔のそれぞれに充填されて硬化した樹脂と、を備えるロータコアを製造するための製造装置であって、前記コア本体が載置される固定型と、前記コア本体上に設けられ、複数の樹脂流入口を有する可動型と、前記コア本体と前記可動型との間に配置され、板状のプレート本体及び前記プレート本体に対してその板厚方向に相対移動可能な分割部材を有するカルプレートと、を備え、前記プレート本体が前記可動型に対向して配置されると共に前記分割部材が前記コア本体に対向して配置され、前記カルプレートには、前記複数の樹脂流入口から流入した樹脂を前記複数の磁石収容孔のそれぞれに導くと共に前記複数の磁石収容孔に充填されなかった樹脂の硬化物であるカルを保持する充填ポットが、前記複数の磁石収容孔のうち前記コア本体の周方向に隣り合った2つの磁石収容孔毎に1つずつ形成されており、それぞれの前記充填ポットは、前記プレート本体の上面に開口して前記可動型の前記樹脂流入口と連通する接続部と、前記分割部材の下面に開口して前記接続部と前記2つの磁石収容孔のそれぞれとを連通する2つのノズル部と、を有し、前記分割部材を前記プレート本体に対して前記板厚方向に相対移動させることで、前記充填ポットに保持された前記カルの少なくとも前記コア本体側の端部を、前記充填ポットから離脱可能とされている、ロータコアの製造装置を提供する。
【0009】
また、本発明は、上記課題を解決することを目的として、上記の製造装置を用い、前記コア本体に前記磁石を固定する方法であって、前記磁石収容孔に前記磁石を収容した前記コア本体を固定型に載置し、前記コア本体と前記可動型との間に前記カルプレートを配置する準備工程と、前記樹脂流入口から供給された前記樹脂を、前記充填ポットを介して前記磁石収容孔に流入させ充填し、前記磁石収容孔に充填した前記樹脂を硬化させる樹脂封止工程と、前記可動型を離脱させ、その後前記カルプレートを前記コア本体から取り外すことで、前記コア本体から前記カルを分離させるカル分離工程と、前記カルプレートから前記カルを取り除くカル除去工程と、を備え前記カル除去工程では、前記分割部材を前記プレート本体に対して前記板厚方向に相対移動させることで、前記充填ポットに保持された前記カルの少なくとも前記コア本体側の端部を、前記充填ポットから離脱させる、ロータコアの製造方法を提供する。
また、本発明は、上記課題を解決することを目的として、周方向に間隔をおいて複数の磁石収容孔が形成された円筒状のコア本体と、前記複数の磁石収容孔にそれぞれ収容された複数の磁石と、前記複数の磁石収容孔のそれぞれに充填されて硬化した樹脂と、を備えるロータコアの製造に用いられるカルプレートであって、板状のプレート本体及び前記プレート本体に対してその板厚方向に相対移動可能な分割部材を有し、前記分割部材が前記プレート本体と前記コア本体との間に配置され、樹脂を前記複数の磁石収容孔のそれぞれに導くと共に前記複数の磁石収容孔に充填されなかった樹脂の硬化物であるカルを保持する充填ポットが、前記複数の磁石収容孔のうち周方向に隣り合った2つの磁石収容孔毎に1つずつ形成されており、それぞれの前記充填ポットは、前記プレート本体における前記分割部材と反対側の面に開口する接続部と、前記分割部材における前記コア本体側の面に開口して前記接続部と前記2つの磁石収容孔のそれぞれとを連通する2つのノズル部と、を有し、前記分割部材を前記プレート本体に対して前記板厚方向に相対移動させることで、前記充填ポットに保持された前記カルの少なくとも前記コア本体側の端部を、前記充填ポットから離脱可能とされている、カルプレートを提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、カルプレートからカルを容易に取り除くことが可能なロータコアの製造装置、ロータコアの製造方法、及びカルプレートを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施の形態に係るロータコアの製造装置で製造するロータコア示す図であり、(a)は斜視図、(b)は中心軸線を含む断面を示す断面図である。
図2】本発明の一実施の形態に係るロータコアの製造装置を示す断面図である。
図3】カルプレートを示す図であり、(a)は平面図、(b)は充填ポットの近傍を拡大した断面図である。
図4】(a),(b)は、カルプレートからのカルの除去を説明する説明図である。
図5】(a),(b)は、カルプレートの変形例を示す断面図である。
図6】本実施の形態に係るロータコアの製造方法の手順を示すフロー図である。
図7】(a),(b)は、樹脂封止工程を説明する説明図である。
図8】(a),(b)は、カル分離工程を説明する説明図である。
図9】(a),(b)は、カルプレートの変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[実施の形態]
以下、本発明の実施の形態を添付図面にしたがって説明する。
【0013】
(ロータコアの説明)
図1は、本実施の形態に係るロータコアの製造装置で製造するロータコアを示す図であり、(a)は斜視図、(b)は中心軸線を含む断面を示す断面図である。図1(a),(b)に示すように、ロータコア10は、コア本体11と、コア本体11に形成された磁石収容孔13に収容された磁石14と、磁石収容孔13に充填され硬化された樹脂15と、を有している。
【0014】
コア本体11は、電磁鋼板からなる複数枚の鉄心片12が積層された積層体である。コア本体11は、全体として略円筒状に形成されており、その軸心部には、コア本体11を軸方向に貫通するように中心孔11aが形成されている。なお、図1(a),(b)における符号Cは、コア本体11の中心軸線を表している。コア本体11の内周面には、対向位置から径方向内方に突出するキー部11bが形成されている。キー部11bは、後述する固定型2に対する位置決めのために用いられる。
【0015】
磁石収容孔13は、中心孔11aの外周側に形成されると共に、コア本体11を軸方向に貫通するように形成されている。コア本体11には、周方向に間隔をおいて複数の磁石収容孔13が形成されている。磁石収容孔13は、長穴状に形成されており、その長軸方向が、コア本体11の径方向に対して傾斜するように形成されている。より具体的には、長軸方向がコア本体11の径方向に対して所定角度傾斜した磁石収容孔13と、長軸方向がコア本体11の径方向に対して反対方向に所定角度傾斜した磁石収容孔13とが、コア本体11の周方向に離間して交互に形成されている。
【0016】
各磁石収容孔13には、コア本体11の軸方向に沿って延在する板状の磁石14が収容されている。磁石収容孔13には、樹脂15が充填されており、この樹脂15により、磁石14がコア本体11に固定されている。樹脂15としては、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂を用いることができる。
【0017】
コア本体11の中心孔11aよりも外周側、かつ磁石収容孔13よりも内周側には、磁石14を冷却するための冷却媒体が流通される冷却孔11cが形成されている。コア本体11には、周方向に離間して複数の冷却孔11cが形成されている。各冷却孔11cは、コア本体11を軸方向に貫通するように形成されると共に、コア本体11の周方向に沿って湾曲した円弧状に形成されている。図示していないが、各冷却孔11cは、コア本体11の内部において分岐して中心孔11aと連通する連通部を有している。
【0018】
(ロータコアの製造装置の説明)
図2は、本実施の形態に係るロータコアの製造装置を示す断面図である。図2に示すように、ロータコアの製造装置1は、コア本体11に形成された磁石収容孔13に磁石14を収容し、磁石14を収容した磁石収容孔内13に樹脂を充填し硬化させて、コア本体11に磁石14を固定する装置である。ロータコアの製造装置1は、固定型2と、可動型3と、カルプレート4と、を備えている。
【0019】
固定型2は、磁石収容孔13に磁石14を収容したコア本体11が載置されるものであり、固定型本体21と、固定型本体21の上面に固定された支持部材22と、支持部材22の上面に配置されたスペーサ23と、を有している。
【0020】
支持部材22は、固定型本体21の上面に図略のボルトにより固定された板状のベース部22aと、ベース部22aの中央部から上方に突出し、コア本体11の中心孔11aに挿入される略円筒状のポスト部22bと、を有している。図示していないが、ポスト部22bの外周面には、コア本体11のキー部11bが挿入される一対のキー溝が形成されており、このキー溝にキー部11bを挿入することにより、固定型2に対するコア本体11の位置決めが行われる。
【0021】
スペーサ23は、板状に形成されており、その中央部にポスト部22bを挿通する挿通孔23aが形成されている。図示していないが、スペーサ23は、挿通孔23a内に突出しポスト部22bのキー溝に挿入される一対の規制突起を有しており、この規制突起をキー溝に挿入することで、支持部材22及びコア本体11に対するスペーサ23の位置決めがなされる。コア本体11は、スペーサ23の上面に載置され、コア本体11の下面とスペーサ23の上面とは当接する。
【0022】
スペーサ23におけるコア本体11の磁石収容孔13に対応する位置には、スペーサ23を板厚方向に貫通するピン用孔23bが形成されており、このピン用孔23bに、下方から規制ピン23cが挿入され固定されている。規制ピン23cの上端部は、スペーサ23の上面よりも上方に突出し、磁石収容孔13内に突出しており、磁石収容孔13に収容された磁石14を下方から支持する。
【0023】
可動型3は、固定型2に載置されたコア本体11上に、固定型2に対して離接可能に設けられている。可動型3は、可動型本体31と、可動型本体31の下面に固定されたプレート部32と、を有している。プレート部32は、カルプレート4よりも外形が大きくされている。可動型3は、磁石収容孔13を封止する樹脂を流入させるための複数の樹脂流入口33を有している。各樹脂流入口33は、可動型本体31及びプレート部32を貫通するように形成されており、平面視で円形状に形成されている。
【0024】
(カルプレート4の説明)
図3は、カルプレート4を示す図であり、(a)は平面図、(b)は充填ポット41の近傍を拡大した断面図である。なお、図3(a)では、カルプレート4をコア本体11に重ねた際の磁石挿入孔13の位置を破線にて表している。図2及び図3に示すように、カルプレート4は、板状に形成されており、コア本体11と可動型3(プレート部32)との間に配置されている。カルプレート4の下面はコア本体11の上面に当接し、カルプレート4の上面はプレート部32の下面に当接する。
【0025】
カルプレート4には、可動型3の樹脂流入口33から流入した樹脂を磁石収容孔13に導く複数の充填ポット41が形成されている。本実施の形態では、周方向に隣り合った2つの磁石収容孔13毎に、1つの充填ポット41が形成されている。詳細は後述するが、充填ポット41は、樹脂の硬化後に、不要な樹脂の硬化物であるカルを保持する役割も果たすものである。
【0026】
充填ポット41は、平面視で円形状に形成され、上面に開口し可動型3の樹脂流入口33と連通する接続部41aと、接続部41aの底壁を貫通し、接続部41aと磁石収容孔13とを連通する2つのノズル部41bと、を有している。ノズル部41bは、平面視で矩形状に形成されており、下方ほど(コア本体11側ほど)開口が狭くなるテーパ状に形成されている。これにより、樹脂の硬化後に、磁石収容孔13を封止している樹脂15と、不要なカルとを連結する連結部が細くなり、樹脂15からのカルの分離が容易となる。
【0027】
本実施の形態に係るロータコアの製造装置1では、カルプレート4は、板状のプレート本体42と、プレート本体42に対してその板厚方向に相対移動可能な分割部材43と、を有している。さらに、カルプレート4は、分割部材43をプレート本体42に対して板厚方向に相対移動させることで、充填ポット41に保持されたカルの少なくともコア本体11側(下方側)の端部を、充填ポット41から離脱可能とされている。
【0028】
本実施の形態では、分割部材43を板状に形成し、プレート本体42のコア本体11側(下方側)に分割部材43を重ね合わせることで、カルプレート4を構成するようにした。充填ポット41の接続部41aは、プレート本体42に形成されており、充填ポット41のノズル部41bは、プレート本体42と分割部材43とにわたって形成されている。このように、分割部材43には、分割部材を板厚方向に貫通するように、充填ポット41の一部(ここではノズル部41bの下部)が形成されている。
【0029】
これにより、図4(a)に示すように、分割部材43をプレート本体42に対して板厚方向(下方)に相対移動させ、プレート本体42から分割部材43を取り外すと、カル5のコア本体11側の端部(下端部)が、充填ポット41から離脱される。この状態では、カル5がプレート本体42に残ったままとなるので、図4(b)に示すように、平板状の台座6に、カル5の下端部を当接させ、プレート本体42を台座6側に押し込む。すると、カル5がプレート本体42の上方に押し出され、カル5をカルプレート4から除去することができる。
【0030】
本実施の形態では、プレート本体42と分割部材43とを重ね合わせてカルプレート4を構成しているため、両者の位置合わせを容易に行うことが望まれる。そこで、本実施の形態では、分割部材43に係止突起44aを設けると共に、プレート本体42に係止突起44aを収容する係止溝44bを設け、係止突起44aを係止溝44bに収容することで、プレート本体42と分割部材43との位置合わせを容易に行えるようにしている。なお、突起と溝の関係は逆であってもよく、プレート本体42に係止突起を設け、分割部材43に係止溝を設けてもよい。
【0031】
ここでは、プレート本体42と分割部材43の分割位置を、ノズル部41bの途中としたが、これに限らず、プレート本体42と分割部材43の分割位置を、接続部41aの途中、あるいは接続部41aとノズル部41bの境界位置とすることもできる。この場合、図5(a)に示すように、接続部41aを上方ほど拡径するテーパ状に形成するか、あるいは、図5(b)に示すように、接続部41aの内壁を上方ほど拡がる階段状に形成し、分割部材43の取り外し時にカル5をプレート本体42側に残すことができるようにするとよい。
【0032】
(ロータコアの製造方法の説明)
図6は、本実施の形態に係るロータコアの製造方法の手順を示すフロー図である。図6に示すように、本実施の形態に係るロータコアの製造方法では、まず、ステップS1にて、コア本体11を形成するコア本体形成工程を行う。ステップS1のコア本体形成工程では、電磁鋼板をプレスして鉄心片12を形成し、形成した鉄心片12を複数積層して上下からプレスしてコア本体11を形成する。なお、コア本体11を形成する具体的な工程については、これに限定されるものではない。
【0033】
その後、ステップS2にて、コア本体11をロータコアの製造装置1にセットする準備工程を行う。ステップS2の準備工程では、コア本体11を固定型2に載置すると共に、コア本体11の磁石収容孔13に磁石14を収容する。また、コア本体11上に、カルプレート4と可動型3とを順次配置する。
【0034】
その後、ステップS3にて、樹脂封止工程を行う。ステップS3の樹脂封止工程では、図7(a)に示すように、封止用の樹脂15の原料となる熱硬化性樹脂からなる母材15aを、可動型3の樹脂流入口33に挿入し、プランジャ7により母材15aを下方(コア本体11側)へと押し込みつつ、母材15aを熱により溶融させて、樹脂流入口33から樹脂(溶融させた母材15a)を供給する。図7(b)に示すように、樹脂流入口33から供給された樹脂は、充填ポット41を介して磁石収容孔13に流入し、樹脂が充填ポット41に充填される。熱により磁石収容孔13に充填した樹脂が硬化されると、磁石収容孔13を封止する樹脂15が形成されると共に、カルプレート4の充填ポット41にカル5が形成される。なお、樹脂封止工程においては、コア本体11やロータコアの製造装置1の一部を予め加熱しておき、この熱により母材15aの溶融及び樹脂の硬化を行うとよい。
【0035】
その後、ステップS4にて、カル分離工程を行う。ステップS4のカル分離工程では、図8(a)に示すように、可動型3を上方に移動させて離脱させ、その後、図8(b)に示すように、カルプレート4をコア本体11から取り外すことで、コア本体11からカル5を分離させる。カル5を分離させたコア本体11を固定型2から取り外せば、図1のロータコア10が得られる。
【0036】
その後、ステップS5にて、カルプレート4からカル5を取り除くカル除去工程を行う。ステップS5のカル除去工程では、図4(a),(b)にて説明したように、分割部材43をプレート本体42に対して板厚方向(下方)に相対移動させることで、充填ポット41に保持されたカル5のコア本体11側の端部を、充填ポット41から離脱させる。その後、平板状の台座6に、カル5の下端部を当接させ、プレート本体42を台座6側に押し込むと、カル5がカルプレート4から除去される。
【0037】
(カルプレート4の変形例)
本実施の形態では、分割部材43を板状とし、プレート本体42と分割部材43とを重ね合わせることでカルプレート4を構成する場合について説明したが、分割部材43の形状等はこれに限定されるものではない。例えば、図9(a),(b)に示すように、分割部材43を下方から上方に押し込むことで、充填ポット41に保持されたカル5を上方に押し出すように構成することも可能である。
【0038】
図9(a),(b)の例では、分割部材43は、板状の押圧部43aと、押圧部43aから下方に延びる軸部43bと、を一体に有している。プレート本体42の接続部41aの底壁には、当該底壁を貫通する貫通孔42aが形成されており、この貫通孔42aに上方から軸部43bを挿入することで、分割部材43が板厚方向に移動可能にプレート本体42に保持されている。押圧部43aの上面は充填ポット41内に露出しており、充填ポット41内に形成されるカル5の下面に当接する。
【0039】
軸部43bを治具や指等で上方に押し、分割部材43をプレート本体42に対して板厚方向(ここでは上方)に相対移動させると、充填ポット41に保持されたカル5が、押圧部43aにより樹脂の流入側(可動型3側、上方側)へと押し出され、カル5が充填ポット41から離脱される。軸部43bを押し込み易くするため、プレート本体42の下面には凹部42bが形成されており、軸部43bの下端部が凹部42b内に突出するようになっている。
【0040】
なお、ここでは、コア本体11との干渉を避けるために、軸部43bの下端部がプレート本体42の下面よりも下方に突出しないようにしているが、軸部43bの下端部をプレート本体42の下面よりも下方に突出させ、コア本体11の上面に、軸部43bの下端部を避ける溝や孔を形成してもよい。これにより、平板状の台座等にカルプレート4を押し付けるのみで、分割部材43を上方に押し込みカル5を離脱させることが可能となり、カル5の除去作業がより容易になる。
【0041】
(実施の形態の作用及び効果)
以上説明したように、本実施の形態に係るロータコアの製造装置1では、カルプレート4は、板状のプレート本体42と、プレート本体42に対してその板厚方向に相対移動可能な分割部材43と、を有し、分割部材43をプレート本体42に対して板厚方向に相対移動させることで、充填ポット41に保持されたカル5の少なくともコア本体11側の端部を、充填ポット41から離脱可能とされている。
【0042】
このように構成することで、従来のように細径のインジェクタピン等でカル5を押し出す場合と比較して、カルプレート4からカル5を容易に取り除くことが可能になる。その結果、ロータコア10の製造効率を向上させることが可能になり、量産性を向上させることが可能となる。
【0043】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上記に記載した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。また、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変形して実施することが可能である。
【符号の説明】
【0044】
1…ロータコアの製造装置、2…固定型、21…固定型本体、22…支持部材、22a…ベース部、22b…ポスト部、23…スペーサ、23a…挿通孔、23b…ピン用孔、23c…規制ピン、3…可動型、31…可動型本体、32…プレート部、33…樹脂流入口、4…カルプレート、41…充填ポット、41a…接続部、41b…ノズル部、42…プレート本体、42a…貫通孔、42b…凹部、43…分割部材、43a…押圧部、43b…軸部、44a…係止突起、44b…係止溝、5…カル、6…台座、7…プランジャ、10…ロータコア、11…コア本体、11a…中心孔、11b…キー部、11c…冷却孔、12…鉄心片、13…磁石収容孔、14…磁石、15…樹脂、15a…母材
図1
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図9