(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-22
(45)【発行日】2022-03-30
(54)【発明の名称】運転支援装置
(51)【国際特許分類】
G08G 1/16 20060101AFI20220323BHJP
B60T 7/12 20060101ALI20220323BHJP
【FI】
G08G1/16 C
B60T7/12 C
(21)【出願番号】P 2018050939
(22)【出願日】2018-03-19
【審査請求日】2021-01-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100132067
【氏名又は名称】岡田 喜雅
(72)【発明者】
【氏名】倉田 光次
【審査官】マキロイ 寛済
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-189074(JP,A)
【文献】国際公開第2018/037954(WO,A1)
【文献】特開2010-039717(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/16
B60T 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
送迎用車両の後方を走行する自車両の運転を支援する運転支援装置であって、
前記自車両の前方を撮像する撮像手段と、
前記撮像手段によって撮像される撮像画像に基づいて前記自車両の動作を制御する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記撮像画像に基づいて前記送迎用車両の停止及び発進を判定し、前記送迎用車両の停止後の発進が近いと判定した場合、前記自車両に対して所定の制御を実施
し、
前記送迎用車両の前後の識別は、前記撮像画像から運転手が確認できない場合、後ろ側と判定することを特徴とする運転支援装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記所定の制御として、前記自車両の運転者に対する警告及び/又は前記自車両の制動制御を実施することを特徴とする請求項1に記載の運転支援装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記送迎用車両の側方に存在する人物の動作に基づいて前記送迎用車両の発進を判定することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の運転支援装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記人物の動作について画像処理を利用して判定することを特徴とする請求項3に記載の運転支援装置。
【請求項5】
前記自車両は、自動運転車両であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の運転支援装置。
【請求項6】
前記撮像画像に基づき、挨拶動作中の人物の顔が前記自車両側に向いている場合は、前記送迎用車両の停止の可能性があると判定することを特徴とする請求項1から請求項
5のいずれかに記載の運転支援装置。
【請求項7】
前記制御手段は、道幅は前記自車両が通過できるスペースがあるか、又は前記自車両に対する前記送迎用車両の進路方向や発進加速度、又は前記送迎用車両付近の交通状況を考慮して判定することを特徴とする請求項1から請求項
6のいずれかに記載の運転支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両前方の横断歩道を横断しようとしている人物がいるときに、適切な走行支援制御を行う車両用走行支援装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の車両用走行支援装置では、ステレオカメラで撮像した画像に基づいて自車の前方の横断歩道や人物を認識し、当該人物が横断歩道から所定範囲内に位置しているか否かに基づいて所定の走行支援制御を実施する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、スクールバスや高齢者福祉施設向けの送迎用車両が自車の前方を走行している場合、当該送迎用車両においては、横断歩道の有無にかかわらず、停止して複数の人物の昇降が想定される。このような場合、自車の運転動作としては、送迎用車両を追い越すことや、当該送迎用車両が発進するのを待つこと等が考えられる。このため、送迎用車両の発進のタイミングによっては、自車と送迎用車両との接触の可能性があった。
【0005】
この点、特許文献1は、あくまで横断歩道を横断しようとしている歩行者に対して車両の走行支援を実施するものであり、上記のような送迎用車両を想定したものではない。このため、走行支援制御として更なる改善が求められていた。
【0006】
本発明は係る点に鑑みてなされたものであり、前方の送迎用車両と自車両との接触可能性を極力回避することが可能な運転支援装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様の運転支援装置は、送迎用車両の後方を走行する自車両の運転を支援する運転支援装置であって、前記自車両の前方を撮像する撮像手段と、前記撮像手段によって撮像される撮像画像に基づいて自車両の動作を制御する制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記撮像画像に基づいて前記送迎用車両の停止及び発進を判定し、前記送迎用車両の停止後の発進が近いと判定した場合、前記自車両に対して所定の制御を実施し、前記送迎用車両の前後の識別は、前記撮像画像から運転手が確認できない場合、後ろ側と判定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、前方の送迎用車両と自車両との接触の可能性を極力回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施の形態に係る運転支援装置の運転支援対象となる道路の説明図(上面図)である。
【
図2】本実施の形態に係る運転支援装置の機能ブロック図である。
【
図3】本実施の形態に係る運転支援装置の撮像手段で撮影された撮影画像の一例の説明図である。
【
図4】本実施の形態に係る運転支援装置における運転支援動作を説明するためのフロー図である
。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。なお、以下においては、本発明に係る運転支援装置を自車両である手動運転車両に適用した例について説明するが、適用対象はこれに限定されることなく変更可能である。例えば、本発明に係る運転支援装置を自車両として自動運転車両に適用してもよい。また、車両のタイプは特に限定されることなく、四輪車、二輪車・三輪車等の鞍乗型車両のどちらのタイプの車両であってもよい。
【0011】
図1を参照して、本発明の適用対象となる道路の状況について説明する。
図1は、本実施の形態に係る運転支援装置の運転支援対象となる道路の説明図(上面図)である。なお、本実施の形態においては、運転支援装置が自車両に適用される場合について説明する。また、以下の説明では、自車両として二輪車及び四輪車を例示している。
【0012】
図1に示すように、自車両としての二輪車1及び四輪車2が走行する道路は、片道2車線の道路である。進行方向に対して、左側に位置する走行車線では、送迎用車両3が走行しており、送迎用車両3の後方には、他の四輪車4を介して、自車両である二輪車1及び四輪車2がこの順番に走行車線を走行している。また、四輪車4の右側に位置する追い越し車線では、他の四輪車5が走行している。なお、自車両と送迎用車両3との間に他の四輪車4が多数存在しているか、他の四輪車4が中・大型車両であった場合は、自車両にとっては、
図1に示す状況と比べた場合よりも、更に送迎用車両3の発進のタイミング判断がし難くなる。
【0013】
送迎用車両3は、幼稚園に通う園児等が乗るスクールバスであり、例えばマイクロバスで構成される。なお、送迎用車両3は、これに限らず、例えば高齢者福祉施設向けの車両であってもよい。
【0014】
一般に、上記した送迎用車両3は、園児や高齢者等を送迎するため、周囲の交通事情を考量しながら、当事者間で予め取り決めた場所で園児等の乗り降りが想定される。しかしながら、道路の混雑状況等の交通事情は常に変化している。特に、通期時間帯や荒天時等においては、交通量が通常に比べて多くなる。このため、園児等の乗り降りの度に送迎用車両3の停止/発進が繰り返されると、交通渋滞の要因と成り得る。よって、後続の車両は、送迎用車両3の傍を通過する際には注意が必要である。
【0015】
特に、送迎用車両3の発進のタイミングをある程度正確に把握できないと、後続車両の運転者は、送迎用車両3を追い越すのか、それとも送迎用車両3が完全に発進するのに合わせて減速するのか、等の判断がし難くなることが想定される。したがって、当該送迎用車両を起点として、交通渋滞が発生し易くなってしまう。また、二輪車1等の鞍乗型車両が送迎用車両3の横をすり抜ける場合や、四輪車2が送迎用車両3を追い越す場合には、送迎用車両3に対する異常接近や接触の可能性がある。
【0016】
その対応策として、例えば、「送迎用車両3の停止時は追い越し禁止にする」というような条例を定めることが考えられる。しかしながら、全ての送迎用車両3に対してこのような条例を定めることは現実的ではなく、かえって交通渋滞の増加を助長し、更には交通事故を誘発する可能性がある。したがって、条例等による一律の規制では課題が残ることになる。
【0017】
一方で、送迎用車両3の方向指示器の点滅開始時期に基づいて、送迎用車両3の発進タイミングを推定することは、ある程度可能である。しかしながら、送迎用車両3と自車両(二輪車1又は四輪車2)との間に後続車両(他の四輪車4)が存在した場合、送迎用車両3の方向指示器が後続車両の陰に隠れてしまい、自車両から目視できないことが想定される(
図3参照)。また、方向指示器が点滅したからといって、直ちに送迎用車両3が発進するとは一概にはいえない。
【0018】
また、今後は自動運転車両を普及させていく必要があるが、そのためには、上記のような送迎用車両3の発進判断をより簡易かつ正確に行うことが求められる。また、地方においては、高齢者でも移動手段として四輪車を選択せざるを得ない場合が多い。更に、漫然運転に対する配慮も必要である。このような観点からも何らかの予防安全対策が望まれる。更には、自車両が二輪車1等の鞍乗型車両の場合、運転者がヘルメットを着用しているために視界が狭くなりがちであり、送迎用車両3の発進判断に際し、何らかの運転支援があるとより効果的である。
【0019】
本件発明者は、これらの事情に鑑みて、送迎用車両3の運転特性及び送迎用車両3を利用する人物等に着目し、本発明に想到した。本実施の形態では、自車両の前方を撮像手段12(
図2参照)で撮像し、制御手段13(
図2参照)が撮像画像に基づいて自車両の動作を制御する。
【0020】
具体的に制御手段13は、撮像手段12によって撮像される撮像画像を参照し、当該撮像画像に送迎用車両3が含まれる場合には、当該送迎用車両3の周囲の人物(例えば、園児の保護者)の動作に基づいて送迎用車両3の停止及び発進を推定する。そして、制御手段13は、送迎用車両3の停止後の発進が近いと判定した場合、自車両に対して所定の制御を実施する。
【0021】
詳細は後述するが、所定の制御としては、自車両の運転者に対する警告(報知)や自車両の制動制御が考えられる。これにより、送迎用車両3の発進時の危険を予知することが可能であり、自車両の前方の送迎用車両3と自車両との接触可能性を極力回避することができる。
【0022】
特に本件発明者は、送迎用車両3を利用する園児(高齢者)の保護者(関係者)の動きに着目した。通常、園児が送迎用車両3に対して乗り降りする際には、園児の保護者が送迎用車両3の側方、すなわち、道路の路肩や歩道に待機している。そして、保護者は、送迎用車両3が発進する際、送迎用車両3を見送るために送迎用車両3内の関係者や園児に向かってお辞儀や手振り等、何らかの挨拶を行う。この挨拶は、日本の慣例からいえば、ほぼ確実に行われる。
【0023】
本実施の形態では、このような保護者の挨拶動作を撮像手段12の撮像画像から認識し、送迎用車両3の発進の合図として活用している(例えば、
図3参照)。この結果、送迎用車両3の発進タイミングをより正確に推定することを可能にしている。
【0024】
次に、
図2を参照して、本実施の形態に運転支援装置の構成について説明する。
図2は、本実施の形態に係る運転支援装置の機能ブロック図である。なお、自車両は、以下に示す構成に限定されず、車両が通常備える構成(例えば車速センサ)は当然に備えているものとする。
【0025】
上記したように、本実施の形態に係る運転支援装置10は、送迎用車両3の後方を走行する自車両の運転支援するものであり、自車両に搭載される。具体的に運転支援装置10は、
図2に示すように、前方車両検出手段11と、撮像手段12と、制御手段13と、警告手段14と、減速手段15とを含んで構成される。
【0026】
前方車両検出手段11は、自車両の前方を走行する車両を検出するものである。具体的に前方車両検出手段11は、ミリ波レーダ、レーザレーダや超音波センサで構成され、例えば自車両の前方側に設けられる。前方車両検出手段11は、前方に向かってミリ波等を発信し、前方車両(送迎用車両3等)で反射したミリ波を受信することで前方車両を検出する。前方車両検出手段11で検知された前方車両の情報は、制御手段13に出力される。制御手段13は、前方車両検出手段11が受信したミリ波に基づいて、自車両と前方車両との車間距離や相対速度等を検出する。
【0027】
撮像手段12は、自車両の前方を撮像するものである。具体的に撮像手段12は、車載カメラで構成され、例えば自車両の前方側に設けられる。撮像手段12は、
図1に示すように所定の撮像範囲Rを有している。撮像範囲Rは、カメラの種類に応じて適宜変更が可能である。撮像手段12によって撮像される撮像画像は、制御手段13に出力され、自車両の運転支援制御に用いられる。
【0028】
制御手段13は、自車両の動作を統括制御するものである。具体的に制御手段13は、ECU(Electronic Control Unit)に備えられており、例えば各種処理を実行するプロセッサ(CPU:Central Processing Unit)やメモリ等により構成される。メモリは、用途に応じてROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等の一つ又は複数の記憶媒体で構成される。また、制御手段13は、上記した前方車両検出手段11、撮像手段12から出力される各種信号に基づいて自車両の動作を制御する。
【0029】
例えば、制御手段13は、撮像手段12によって撮像される撮像画像に基づいて自車両の動作を制御するに際し、撮像画像に含まれる送迎用車両3の停止及び発進を判定する。送迎用車両3の停止及び発進の判定は、撮像画像に含まれる送迎用車両3の側方に存在する人物の動作に基づいて実施される。画像処理を利用した判断手法としては、例えば、一般的に用いられるパターンマッチングやテンプレートマッチングが採用される。なお、これに限らず、他の画像処理を利用した判断手法が採用されてもよい。
【0030】
また、制御手段13は、予めメモリに判定対象となる送迎用車両の画像パターンを複数記憶している。また、制御手段13は、入力される撮像画像から自車両に関係しそうな送迎用車両のパターン(車種等)を取得し、学習機能によって随時更新してもよい。これにより、撮像画像から送迎用車両の認識精度を向上することが可能である。
【0031】
警告手段14は、制御手段13の指令に基づいて、自車両に対する運転支援の一例として所定の警報を発する。警報の例としては、音を発生したり、スピードメータのディスプレイやナビゲーションシステムのディスプレイ(共に不図示)に警告を促すメッセージを表示することが考えられる。なお、警報を発する手段としてはこれに限らず、例えば、ステアリングやシートに振動を発生して運転者に警告を促す構成としてもよい。
【0032】
減速手段15は、自車両の速度を減速するものである。本実施の形態において減速手段15は、制御手段13の指令に基づいて、自車両に対する運転支援の一例として自車両の制動を実施する。減速手段15の例としては、車輪の回転を制動するブレーキ装置等が挙げられる。なお、減速手段15は、運転者の直接の操作に伴って作動するブレーキ装置に限らず、その他、ハイブリッド車や電動自動車における回生ブレーキや、変速に伴うエンジンブレーキ等、ECU等によって自動的に制御される手段も含むものとする。
【0033】
ここで、
図3及び
図4を参照して送迎用車両の発進を判定する具体的な方法について説明する。
図3は、本実施の形態に係る運転支援装置の撮像手段で撮影された撮影画像の一例の説明図である。
図3に示す撮像画像は、
図1の道路状況に対応しており、説明の便宜上、自車両である二輪車1及び四輪車2を含めている(実際は自車両から撮像される撮像画像であるため、自車両は撮像画像には表れない)。
図4は、本実施の形態に係る運転支援装置における運転支援動作を説明するためのフロー図である。なお、以下に示すフローでは、特に明示が無い限り、動作(算出(演算)や判定等)の主体は制御手段(ECU)とする。
【0034】
図1及び
図3に示すように、自車両(二輪車1及び四輪車2)の前方に送迎用車両3が存在している。この例を想定して、以下、
図4に示す制御フローについて説明する。
【0035】
図4に示すように、制御が開始されると、ステップST101において、制御手段13は、自車両の前方に停車中の送迎用車両3があるか否かを判定する。制御手段13は、
図3に示すような撮像画像に基づいて自車両の前方の所定範囲内に送迎用車両3の存在を判定する。なお、自車両の前方の所定範囲は、カメラの種類等に応じて適宜変更が可能である。
【0036】
送迎用車両3が停止中であるか否かは、撮像画像中での送迎用車両3と周囲の風景との関係にて判定することが可能である。例えば、撮像画像に相対変化がない場合には、停止中と判定することができる。また、レーダ等の前方車両検出手段11の出力も用いて送迎用車両3との相対距離や相対速度から送迎用車両3が移動していないかどうかの確認をすれば、更に精度を向上することが可能である。自車両の前方に送迎用車両3がある場合(ステップST101:YES)、ステップST102の処理に進む。自車両の前方に送迎用車両3がない場合(ステップST101:NO)、ステップST101の処理が繰り返される。
【0037】
ステップST102において、制御手段13は、送迎用車両3が自車両と進行方向が同一であるか否かを判定する。本実施の形態では、自車両が送迎用車両3の後方側から接近する場合を前提としており、送迎用車両3の前後の識別は、撮像画像から運転手が確認できるか否かで識別することが可能である。例えば、撮像画像から運転手が確認できた場合、自車両と送迎用車両3とは対向しており、互いの進行方向は異なっていると判定することが可能である。送迎用車両3が自車両と進行方向が同一である場合(ステップST102:YES)、ステップST103の処理に進む。送迎用車両3が自車両と進行方向が同一でない場合(ステップST103:NO)、ステップST101の処理に戻る。
【0038】
ステップST103において、制御手段13は、送迎用車両3の側方(左方)である歩道/路肩側に所定の人物がいるか否かを判定する。上記したように、幼稚園等のスクールバスにおいては、通常、保護者や関係者が路肩や歩道に待機しているため、これらの人物を認識するためである。歩道/路肩側に所定の人物がいる場合(ステップST103:YES)、ステップST104の処理に進む。歩道/路肩側に所定の人物がいない場合(ステップST103:NO)、ステップST101の処理に戻る。
【0039】
ステップST104において、制御手段13は、所定の人物(保護者等)が送迎用車両3に対して所定の動作(お辞儀等)をしているか否かを判定する。上記したように、保護者は、送迎用車両3の発進の際、送迎用車両3内の園児や関係者に対して何らかの挨拶を行うため、これを認識するためである。本実施の形態では、保護者の挨拶動作を送迎用車両3の発進タイミングを推定するための判断材料としている。挨拶としては、
図1及び
図3に示すように、お辞儀(人物A参照)、会釈、所定時間の手振り(手を上げて振る(人物B参照)、胸の前で手を振る(人物C参照))等が挙げられる。先に記載したように、これら人物の姿勢や手や腕の位置等の画像における特徴を、パターンマッチングやテンプレートマッチング等の画像処理を使用した判断手法に活用する。
【0040】
保護者等が送迎用車両3に対して、お辞儀、会釈、所定時間の手振り、胸の前で手を振る等をしている場合(ステップST104:YES)、ステップST105の処理に進む。所定の人物(保護者等)が送迎用車両3に対して、お辞儀、会釈、所定時間の手振り、胸の前で手を振る等をしていない場合(ステップST104:NO)、ステップST101の処理に戻る。
【0041】
なお、送迎用車両3が到着(停止)する場合も同様に、これらの挨拶が行われる場合があるが、到着の場合、通常は減速して接近してくる送迎用車両3に顔を向けて行い、送迎用車両が到着して停車したときには上記動作はほぼ終わっている。仮に挨拶動作が終わっていなくても、すぐに乗車が始まるので、一般的にはごく短時間となる。一方、発進の場合の挨拶は、通常は停止している送迎用車両3に顔を向けて行い、送迎用車両3が停止状態から動き出すまでの間に行われることが多い。
【0042】
すなわち、撮像画像において、挨拶動作中の保護者等の顔の向きを認識することで、送迎用車両3が停止するのか発進するのかを判定することが可能である。具体的に制御手段13は、撮像画像において、挨拶動作中の保護者等の顔が自車両側に向いている場合、その後に送迎用車両3が停止する可能性があると判定する。この場合、撮像画像では、保護者の表情を認識することが可能である。一方、制御手段13は、撮像画像において、挨拶動作中の保護者等の顔が送迎用車両側(側方又は前方)に向いている場合、その後に送迎用車両3が発進する可能性がある、すなわち、発進が近いと判定する。この場合、撮像画像では、保護者の横顔、又は後頭部を認識する。なお、保護者の顔の向きを判定するステップを104と105の間に追加することも可能である。システムとしては現状に対して多少複雑にはなるが、システムの確実性は向上する。
【0043】
ステップST105において、制御手段13は、送迎用車両3が発進する可能性があると判定する。そして、ステップST106の処理に進む。
【0044】
ステップST106において、制御手段13は、自車両が自動運転車両か否かを判定する。自車両が自動運転車両である場合(ステップST106:YES)、ステップST107の処理に進む。自車両が自動運転車両でない、すなわち手動運転車両である場合(ステップST106:NO)、ステップST108の処理に進む。
【0045】
ステップST107において、制御手段13は、自車両を自動制御する。自動制御の内容としては、例えば、減速やステアリング操作が挙げられる。これにより、自車両が送迎用車両3に接触することを回避することが可能である。そして、制御は終了する。
【0046】
ステップST108において、制御手段13は、自車両に対して警告を実施する。警告(警報)の例としては、音を発生したり、ディスプレイに警告を促すメッセージを表示することが考えられる。これにより、自車両の運転者は、送迎用車両3の発進を明確に認識することが可能である。そして、ステップST109の処理に進む。
【0047】
ステップST109において、制御手段13は、自車両が送迎用車両3の横(例えば右側)を通過しようとしているか否かを判定する。制御手段13は、例えば、ステアリング操作やアクセル操作の有無、上記した撮像画像やレーダ(前方車両検出手段11)等の出力に基づいて自車両が送迎用車両3の横を通過しようとしているか否かを判定する。自車両が送迎用車両3の横を通過しようとしている場合(ステップST109:YES)、ステップST110の処理に進む。自車両が送迎用車両3の横を通過しようとしていない場合(ステップST109:NO)、制御は終了する。
【0048】
ステップST110において、制御手段13は、自車両が送迎用車両3に対して接触可能性があるか否かを判定する。制御手段13は、道幅(自車両通過スペースの有無)、自車両に対する送迎用車両3の進路方向や発進加速度、送迎用車両付近の交通状況(渋滞状況)を考慮して判定することが可能である。これらの情報は、撮像画像やレーダ(前方車両検出手段11)等から取得する。自車両が送迎用車両3に対して接触可能性がある場合(ステップST110:YES)、ステップST111の処理に進む。自車両が送迎用車両3に対して接触可能性がない場合(ステップST110:NO)、制御は終了する。
【0049】
ステップST111において、制御手段13は、自車両に対して減速又は停止制御を実施する。減速又は停止制御は、上記したように、ブレーキ装置等の作動によって実現される。これにより、自車両が減速又は停止され、送迎用車両3に対する接触を回避することが可能である。以上により、制御が終了する。
【0050】
以上説明したように、本実施の形態によれば、送迎用車両3の特有の行動パターンをトリガにして所定の運転支援を実施することにより、送迎用車両が停止から発進する際の自車両との接触の可能性を簡易かつ安価な構成で極力回避することが可能である。また、高齢者の運転負担軽減や、漫然運転状態に陥った運転者に対する予防安全を実現することも可能である。
【0051】
なお、上記実施の形態では、送迎用車両3を認識する際に、予め記憶した画像パターンに基づくパターンマッチングやテンプレートマッチングを実施する場合について説明したが、これに限定されない。例えば、送迎用車両3の特有の表示がデザインに基づいて前方車両が送迎用車両3であることを認識してもよい。
【0052】
また、本実施の形態及び変形例を説明したが、本発明の他の実施の形態として、上記実施の形態及び変形例を全体的又は部分的に組み合わせたものでもよい。
【0053】
また、本発明の実施の形態は上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の趣旨を逸脱しない範囲において様々に変更、置換、変形されてもよい。更には、技術の進歩又は派生する別技術によって、本発明の技術的思想を別の仕方で実現することができれば、その方法を用いて実施されてもよい。従って、特許請求の範囲は、本発明の技術的思想の範囲内に含まれ得る全ての実施形態をカバーしている。
【産業上の利用可能性】
【0054】
以上説明したように、本発明は、前方の送迎用車両と自車両との接触の可能性を極力回避することができるという効果を有し、特に、幼稚園等のスクールバスの後方を走行する車両の運転支援装置に有用である。
【符号の説明】
【0055】
1 :二輪車
2 :四輪車
3 :送迎用車両
4 :四輪車
5 :四輪車
6 :送迎用車両
7 :送迎用車両
10 :運転支援装置
11 :前方車両検出手段
12 :撮像手段
13 :制御手段
14 :警告手段
15 :減速手段
60 :表示
70 :外装部品
A :人物
B :人物
C :人物
R :撮像範囲