IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 住友ゴム工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-弾性クローラ 図1
  • 特許-弾性クローラ 図2
  • 特許-弾性クローラ 図3
  • 特許-弾性クローラ 図4
  • 特許-弾性クローラ 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-22
(45)【発行日】2022-03-30
(54)【発明の名称】弾性クローラ
(51)【国際特許分類】
   B62D 55/253 20060101AFI20220323BHJP
【FI】
B62D55/253 E
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018090035
(22)【出願日】2018-05-08
(65)【公開番号】P2019196058
(43)【公開日】2019-11-14
【審査請求日】2021-03-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(72)【発明者】
【氏名】吉田 知久
【審査官】志水 裕司
(56)【参考文献】
【文献】実開昭57-081973(JP,U)
【文献】特開2000-159161(JP,A)
【文献】特開2010-274885(JP,A)
【文献】特開平08-156850(JP,A)
【文献】特開2010-247595(JP,A)
【文献】特開2009-292204(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 55/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性クローラであって、
弾性体からなる無端帯状のクローラ本体と、
前記クローラ本体に、クローラ周方向に間隔を空けて埋設され、かつ、前記弾性体よりも硬質の材料からなる芯材と、
前記クローラ本体の外周面からクローラ厚さ方向に突出するラグとを含み、
前記クローラ本体は、クローラ幅方向の第1エッジと第2エッジとを有し、
前記芯材は、前記第1エッジ側に一端を有する第1芯材と、前記第1芯材とクローラ周方向に隣接し、かつ、前記第1芯材の前記一端よりも前記第1エッジ側に一端を有する第2芯材とを含み、
前記ラグは、前記クローラ本体の平面視において、前記第1芯材の前記一端及び前記第2芯材の前記一端に跨って重なる第1ラグを含み、
前記第1ラグは、前記ラグの外縁が前記第1芯材の前記一端側から前記第2芯材の前記一端側へ向かってクローラ幅方向に対して傾斜する傾斜縁を含む、
弾性クローラ。
【請求項2】
前記芯材は、前記第1芯材と前記第2芯材とが、クローラ周方向に交互に配される、請求項1記載の弾性クローラ。
【請求項3】
前記第2芯材は、前記第2エッジ側に他端を有し、
前記第1芯材は、前記第2芯材の前記他端よりも前記第2エッジ側に位置する他端を有し、
前記ラグは、前記クローラ本体の平面視において、前記第1芯材の前記他端及び前記第2芯材の前記他端に跨って重なる第2ラグを含み、
前記第2ラグは、前記ラグの外縁が前記第2芯材の前記他端側から前記第1芯材の前記他端側へ向かってクローラ幅方向に対して傾斜する傾斜縁を含む、請求項1又は2に記載の弾性クローラ。
【請求項4】
前記第1ラグ及び前記第2ラグは、クローラ周方向に千鳥状に配される、請求項3記載の弾性クローラ。
【請求項5】
前記ラグは、クローラ幅方向に沿って延びる幅方向部と、前記幅方向部のクローラ幅方向の外端に連なりクローラ幅方向に対して一方側に傾斜する傾斜部とを含む、請求項1ないし4のいずれかに記載の弾性クローラ。
【請求項6】
前記クローラ本体は、前記クローラ本体のクローラ幅方向の中央でクローラ厚さ方向に貫通する孔部を有し、
前記芯材は、前記孔部よりもクローラ幅方向の両外側に設けられる翼部を有し、
前記ラグは、前記クローラ本体の平面視において、前記第1芯材の前記翼部及び前記第2芯材の前記翼部の全部に重なる、請求項1ないし5のいずれかに記載の弾性クローラ。
【請求項7】
前記ラグは、前記孔部に連なる、請求項6記載の弾性クローラ。
【請求項8】
前記芯材よりもクローラ外周側に埋設され、かつ、前記クローラ本体に抗張力を付与するための抗張体を含み、
前記翼部は、クローラ幅方向のいずれか一方側に配される第1翼部と、前記第1翼部とはクローラ幅方向の逆側に配されかつ前記第1翼部よりもクローラ幅方向の長さが大きい第2翼部とを含み、
前記第1翼部は、前記抗張体と対向して配置されかつ前記抗張体から実質的に前記抗張力を受けないように前記抗張体との間のクローラ厚さ方向の距離L1を有して配されており、
前記第2翼部は、前記抗張体と対向して配置されかつ前記抗張体から前記抗張力を受けるように前記抗張体との間のクローラ厚さ方向の距離L2を有して配されており、
前記距離L1は、前記距離L2よりも大きい、請求項6又は7に記載の弾性クローラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無端帯状の弾性クローラに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、無端状のゴム弾性体と、ゴム弾性体内に配された複数本の芯金と、ゴム弾性体の外周面に部分的に形成されたラグとを含むゴムクローラが知られている。このようなゴムクローラは、例えば、瓦礫や砂利路等の未舗装路面を走行するための建設機械や農業機械等の走行部として採用される。このため、この種のゴムクローラは、例えば、未舗装路面の突起物の乗り上げ時では、芯金の有る部分と芯金の無い部分との間の剛性段差が大きくなり、これらの間に歪が集中するので、芯金が有る部分でラグの配されていないゴム弾性体の外周面には、「耳切れ」といわれるクラックや欠け等が生じ易いという問題があった。そこで、このような問題を解決するべく、ラグの容積を大きくして外周面の多くをラグで覆うことで外周面を補強することが提案されていた。関連する技術が、下記特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-292204号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、単にラグの容積を大きくするだけでは、ゴムクローラの質量が増加するという問題があった。
【0005】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、弾性クローラの質量の増加を抑制しつつ、耳切れを抑制して耐久性能を向上させた弾性クローラを提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、弾性クローラであって、弾性体からなる無端帯状のクローラ本体と、前記クローラ本体に、クローラ周方向に間隔を空けて埋設され、かつ、前記弾性体よりも硬質の材料からなる芯材と、前記クローラ本体の外周面からクローラ厚さ方向に突出するラグとを含み、前記クローラ本体は、クローラ幅方向の第1エッジと第2エッジとを有し、前記芯材は、前記第1エッジ側に一端を有する第1芯材と、前記第1芯材とクローラ周方向に隣接し、かつ、前記第1芯材の前記一端よりも前記第1エッジ側に一端を有する第2芯材とを含み、前記ラグは、前記クローラ本体の平面視において、前記第1芯材の前記一端及び前記第2芯材の前記一端に跨って重なる第1ラグを含み、前記第1ラグは、前記ラグの外縁が前記第1芯材の前記一端側から前記第2芯材の前記一端側へ向かってクローラ幅方向に対して傾斜する傾斜縁を含む、弾性クローラである。
【0007】
本発明に係る弾性クローラは、前記芯材が、前記第1芯材と前記第2芯材とが、クローラ周方向に交互に配されるのが望ましい。
【0008】
本発明に係る弾性クローラは、前記第2芯材が、前記第2エッジ側に他端を有し、前記第1芯材は、前記第2芯材の前記他端よりも前記第2エッジ側に位置する他端を有し、前記ラグは、前記クローラ本体の平面視において、前記第1芯材の前記他端及び前記第2芯材の前記他端に跨って重なる第2ラグを含み、前記第2ラグは、前記ラグの外縁が前記第2芯材の前記他端側から前記第1芯材の前記他端側へ向かってクローラ幅方向に対して傾斜する傾斜縁を含むのが望ましい。
【0009】
本発明に係る弾性クローラは、前記第1ラグ及び前記第2ラグが、クローラ周方向に千鳥状に配されるのが望ましい。
【0010】
本発明に係る弾性クローラは、前記ラグが、クローラ幅方向に沿って延びる幅方向部と、前記幅方向部のクローラ幅方向の外端に連なりクローラ幅方向に対して一方側に傾斜する傾斜部とを含むのが望ましい。
【0011】
本発明に係る弾性クローラは、前記クローラ本体が、前記クローラ本体のクローラ幅方向の中央でクローラ厚さ方向に貫通する孔部を有し、前記芯材は、前記孔部よりもクローラ幅方向の両外側に設けられる翼部を有し、前記ラグは、前記クローラ本体の平面視において、前記第1芯材の前記翼部及び前記第2芯材の前記翼部の全部に重なるのが望ましい。
【0012】
本発明に係る弾性クローラは、前記ラグが、前記孔部に連なるのが望ましい。
【0013】
本発明に係る弾性クローラは、前記芯材よりもクローラ外周側に埋設され、かつ、前記クローラ本体に抗張力を付与するための抗張体を含み、前記翼部は、クローラ幅方向のいずれか一方側に配される第1翼部と、前記第1翼部とはクローラ幅方向の逆側に配されかつ前記第1翼部よりもクローラ幅方向の長さが大きい第2翼部とを含み、前記第1翼部は、前記抗張体と対向して配置されかつ前記抗張体から実質的に前記抗張力を受けないように前記抗張体との間のクローラ厚さ方向の距離L1を有して配されており、前記第2翼部は、前記抗張体と対向して配置されかつ前記抗張体から前記抗張力を受けるように前記抗張体との間のクローラ厚さ方向の距離L2を有して配されており、前記距離L1は、前記距離L2よりも大きいのが望ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の弾性クローラは、芯材が、第1エッジ側に一端を有する第1芯材と、前記第1芯材とクローラ周方向に隣接し、かつ、前記第1芯材の前記一端よりも前記第1エッジ側に一端を有する第2芯材とを含んでいる。これにより、前記第1芯材の前記一端及び前記第2芯材の一端は、ラグによって覆われやすくなる。また、前記第1芯材は、弾性クローラの質量を小さくするのに役立つ。
【0015】
また、クローラ本体の平面視において、ラグが、第1芯材の一端及び第2芯材の一端に跨って重なっている。これにより、より大きな歪が作用する第1芯材の一端及び第2芯材の一端がラグに覆われるので、クローラ本体の耳切れの発生が抑制される。さらに、前記ラグの外縁が、前記第1芯材の前記一端側から前記第2芯材の前記一端側へ傾斜する傾斜縁を含んでいる。これにより、前記ラグの容積の増加を抑制することができる。
【0016】
したがって、本発明の弾性クローラは、弾性クローラの質量の増加が抑制されつつ耐久性能が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態を示す弾性クローラをクローラ外周側から見た平面図である。
図2図1の弾性クローラのクローラ幅方向の断面図である。
図3】弾性クローラをクローラ外周側から見た平面図である。
図4】弾性クローラをクローラ外周側から見た平面図である。
図5】(a)は、第1芯材をクローラ周方向から見た図、(b)は、第2芯材をクローラ周方向aから見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき詳細に説明される。
図1は、本実施形態の弾性クローラ1をクローラ外周側co(図2に示す)から見た平面図である。図2は、図1の弾性クローラ1のクローラ幅方向bの断面図である。本発明の弾性クローラ1は、例えば、バックホー等の建設機械の走行部として採用され得る。弾性クローラ1は、例えば、所定の位置に配された駆動輪(図示省略)、アイドラ、及び、駆動輪とアイドラとの間に配置された複数の転輪を含む走行装置(図示省略)の外周に巻き掛けされる。
【0019】
図1及び図2に示されるように、本実施形態の弾性クローラ1は、弾性体からなるクローラ本体2と、クローラ本体2に埋設された複数の芯材3と、クローラ本体2からクローラ厚さ方向cに突出する複数のラグ4とを含んでいる。本実施形態の弾性クローラ1は、さらに、クローラ本体2内で芯材3よりもクローラ外周側coに埋設されてクローラ本体2に抗張力を付与するための抗張体6を含んでいる。図1では、便宜上、ラグ4がハッチで特定される。
【0020】
本明細書において、クローラ周方向aは、弾性クローラ1の回転方向である。また、クローラ幅方向bは、弾性クローラ1が走行部に装着されるときの駆動輪の軸方向である。さらに、クローラ厚さ方向cは、クローラ周方向a及びクローラ幅方向bに直交する方向である。クローラ厚さ方向cのうち、弾性クローラ1の路面を向く側は、クローラ外周側coである。また、クローラ厚さ方向cのうち、クローラ外周側coとは逆向き側が、クローラ内周側ciである。
【0021】
クローラ本体2は、本実施形態では、クローラ幅方向bの第1エッジ2xと第2エッジ2yとを有している。本実施形態の第1エッジ2xは、図1では、クローラ本体2の左端を形成し、クローラ周方向aに沿って直線状に延びている。本実施形態の第2エッジ2yは、図1では、クローラ本体2の右端を形成し、クローラ周方向aに沿って直線状に延びている。なお、第1エッジ2x及び第2エッジ2yは、直線状に延びるものに限定されるものではない。
【0022】
クローラ本体2は、例えば、硬質のゴムや樹脂からなり、無端帯状に連続して形成されている。本実施形態のクローラ本体2は、クローラ幅方向bに略一定の幅を有している。クローラ本体2は、本実施形態では、クローラ外周側coの外周面2oとクローラ内周側ciの内周面2iとを有している。本実施形態の内周面2iには、クローラ内周側ciに突出する複数の突起7が形成されている。複数の突起7は、例えば、クローラ周方向aに略等間隔に配されている(図示省略)。
【0023】
クローラ本体2の外周面2oは、本実施形態では、抗張体6と対向する位置に配される第1面部2Aと、第1エッジ2x又は第2エッジ2yに連なる第2面部2Bとを含んでいる。第1面部2Aは、本実施形態では、クローラ本体2の中心2cを挟んで両側に設けられている。第1面部2Aは、例えば、クローラ幅方向bに沿って延び、抗張体6と略平行に形成されている。第2面部2Bは、本実施形態では、第1面部2Aに連なりクローラ外周側coに凸の円弧状で形成されている。このような第2面部2Bは、クローラ本体2の剛性を高く維持する。
【0024】
外周面2oは、本実施形態では、第1面部2A、2A間に配される第3面部2Cを含んでいる。本実施形態の第3面部2Cは、第1面部2Aよりもクローラ外周側coに位置している。なお、外周面2oは、このような態様に限定されるものではなく、第1面部2Aと第2面部2Bとのみで形成されても良い。
【0025】
芯材3は、それぞれ、クローラ本体2を構成する弾性体よりも硬質の材料から形成される。芯材3は、例えば、鋼、鋳鉄等の金属材料や、硬質樹脂により形成されている。このような芯材3は、クローラ本体2を補強し、クローラ本体2の形状を保持することができる。
【0026】
芯材3は、本実施形態では、クローラ本体2の平面視(以下、単に「平面視」という場合がある。)において、クローラ幅方向bの長さLがクローラ周方向aの幅Wに比して大きい略矩形状で形成されている。なお、芯材3は、このような態様に限定されるものではない。
【0027】
芯材3は、クローラ周方向aに隣接する第1芯材10と第2芯材11と含んでいる。第1芯材10と第2芯材11とは、本実施形態では、クローラ周方向aに交互に配されている。
【0028】
本実施形態の第1芯材10及び第2芯材11は、クローラ幅方向bに延びており、クローラ本体2の中心2cよりも第1エッジ2x側の一端10e、11eと、クローラ本体2の中心2cよりも第2エッジ2y側の他端10i、11iとを含んでいる。
【0029】
第1芯材10の他端10iは、第2芯材11の他端11iよりも第2エッジ2y側に配されている。第2芯材11の一端11eは、第1芯材10の一端10eよりも第1エッジ2x側に配されている。これにより、芯材3の質量増加が抑制される。
【0030】
第1芯材10と第2芯材11とがクローラ周方向aに交互に設けられているので、弾性クローラ1のクローラ幅方向bの質量バランスが保持される。
【0031】
図3は、弾性クローラ1をクローラ外周側coから見た平面図である。図3に示されるように、本実施形態のラグ4は、最もクローラ外周側coに配されて路面と接する踏面4Aと、踏面4Aとクローラ本体2の外周面2oとを継ぐ継ぎ面4Bとを含んでいる。継ぎ面4Bと外周面2oとの境界が外縁4eである。
【0032】
ラグ4は、平面視において、第1芯材10の一端10e及び第2芯材11の一端11eに跨って重なる第1ラグ20と、第1芯材10の他端10i及び第2芯材11の他端11iに跨って重なる第2ラグ21とを含んでいる。このような第1ラグ20及び第2ラグ21は、より大きな歪が作用する第1芯材10の一端10eや他端10i及び第2芯材11の一端11eや他端11iを覆うので、クローラ本体2の耳切れの発生を効果的に抑制する。
【0033】
ラグ4の踏面4Aは、本実施形態では、クローラ幅方向bに沿って延びる幅方向面22Aと、幅方向面22Aのクローラ幅方向bの外端に連なりクローラ幅方向bに対して一方側に傾斜する傾斜面22Bとを含んでいる。本実施形態の幅方向面22Aは、クローラ周方向aの長さwが同じである矩形状を含んで形成されている。本実施形態の傾斜面22Bは、クローラ幅方向bの外側に向かってクローラ周方向aの長さwが漸減するテーパ状で形成されている。このような傾斜面22Bは、弾性クローラ1の質量を小さくする。
【0034】
ラグ4の外縁4eは、本実施形態では、踏面4Aの端縁4iに沿うように延びている。このような外縁4eは、ラグ4の剛性を高く維持する。
【0035】
図4は、弾性クローラ1をクローラ外周側coから見た平面図である。図4に示されるように、第1ラグ20及び第2ラグ21の外縁4eは、本実施形態では、それぞれ、第1傾斜縁25と第1幅方向縁26と第2傾斜縁27と第2幅方向縁28とを含んでいる。
【0036】
第1ラグ20の第1傾斜縁25は、第1芯材10の一端10e側から第2芯材11の一端11e側に向かってクローラ幅方向bに対して傾斜している。このように傾斜する第1傾斜縁25は、例えば、クローラ幅方向bに沿って延びる場合に比して、ラグ4の容積の増加を抑制して、弾性クローラ1の質量を小さくする。第1ラグ20の第1傾斜縁25は、本実施形態では、第1芯材10の一端10eから第2芯材11の一端11eと交差することなく第2芯材11の一端11eを超えてクローラ幅方向bの外側まで直線状に延びている。これにより、高い耳切れ抑制効果が発揮される。第1ラグ20の第1傾斜縁25は、例えば、第1エッジ2xに連なっている。なお、第1傾斜縁25は、第1エッジ2xに連なることなく外周面2o上で終端しても良い。
【0037】
本実施形態の第1ラグ20の第1幅方向縁26は、第1傾斜縁25のクローラ幅方向bの内端25iに連なり、クローラ幅方向bの内側ヘ向かって直線状に延びている。第1幅方向縁26は、本実施形態では、第1芯材10の外縁10x上をクローラ幅方向bに沿って延びている。なお、第1幅方向縁26は、このような態様に限定されるものではない。
【0038】
本実施形態の第1ラグ20の第2傾斜縁27は、第2芯材11の一端11eよりもクローラ幅方向bの外側から内側に向かって直線状に延びている。第2傾斜縁27は、本実施形態では、平面視、第1傾斜縁25と同じ向きに傾斜し、第2芯材11の外縁11x上で重なって終端している。第1ラグ20の第2傾斜縁27は、例えば、第1エッジ2xから第2芯材11の一端11eに接することなくクローラ幅方向bの内側に向かって延びている。このような第2傾斜縁27も、高い耳切れ抑制効果を発揮し得る。なお、第2傾斜縁27は、このような態様に限定されるものではない。
【0039】
本実施形態の第1ラグ20の第2幅方向縁28は、第2傾斜縁27に連なって、クローラ幅方向bの内側へ直線状に延びている。第2幅方向縁28は、本実施形態では、平面視、第2芯材11の外縁11xと重なってクローラ幅方向bに沿って延びている。第2幅方向縁28は、このような態様に限定されるものではない。
【0040】
第2ラグ21の第1傾斜縁25は、第2芯材11の他端11i側から第1芯材10の他端10i側に向かってクローラ幅方向bに対して傾斜している。このように傾斜する第1傾斜縁25は、例えば、クローラ幅方向bに沿って延びる場合に比して、第2ラグ21の容積の増加を抑制して、弾性クローラ1の質量を小さくすることができる。第2ラグ21の第1傾斜縁25は、本実施形態では、第2芯材11の他端11iから第1芯材10の他端10iと交差することなく第1芯材10の他端10iを超えてクローラ幅方向bの外側まで直線状に延びている。第2ラグ21の第1傾斜縁25は、例えば、第2エッジ2yで終端している。なお、第1傾斜縁25は、第2エッジ2yに連通することなく外周面2o上で終端しても良い。
【0041】
本実施形態の第2ラグ21の第1幅方向縁26は、第1傾斜縁25のクローラ幅方向bの内端25iに連なり、クローラ幅方向bの内側ヘ向かって直線状に延びている。第1幅方向縁26は、本実施形態では、第2芯材11の外縁11x上をクローラ幅方向bに沿って延びている。
【0042】
本実施形態の第2ラグ21の第2傾斜縁27は、第1芯材10の他端10iよりもクローラ幅方向bの外側から内側に向かって直線状に延びている。第2傾斜縁27は、平面視、第2ラグ21の第1傾斜縁25と同じ向きに傾斜し、第1芯材10の外縁10x上に重なって終端している。第2ラグ21の第2傾斜縁27は、例えば、第2エッジ2yに連なっている。
【0043】
本実施形態の第2ラグ21の第2幅方向縁28は、第2ラグ21の第2傾斜縁27に連なって、クローラ幅方向bの内側へ直線状に延びている。第2ラグ21の第2幅方向縁28は、本実施形態では、平面視、第1芯材10の外縁10xと重なって、クローラ幅方向bに沿って延びている。これにより、第2ラグ21も、平面視、芯材3と重なっているので、高い耳切れ抑制効果を発揮する。また、第2ラグ21は、弾性クローラ1の質量の過度な増加を抑制する。
【0044】
このように、本実施形態では、平面視において、ラグ4が第1芯材10の翼部14及び第2芯材11の翼部14の全部に重なる。
【0045】
また、各第1幅方向縁26及び第2幅方向縁28は、本実施形態では、それぞれ、第1芯材10の外縁10x又は第2芯材11の外縁11xと重なっている。これにより、弾性クローラ1の質量の過度の増加が抑制される。
【0046】
本実施形態の第1ラグ20は、クローラ周方向aに一定のピッチで隔設されている。本実施形態の第2ラグ21は、クローラ周方向aに一定のピッチで隔設されている。これにより、弾性クローラ1のクローラ幅方向bの質量バランスが高く維持される。
【0047】
第1ラグ20及び第2ラグ21は、例えば、クローラ周方向aに千鳥状に配される。第1ラグ20と第2ラグ21とは、本実施形態では、クローラ周方向aに半ピッチ位置ずれしている。これにより、クローラ周方向aにおいて、ラグ4のクローラ幅方向bの剛性段差が小さくなるので、耳切れが抑制されて耐久性能が向上する。
【0048】
クローラ本体2は、本実施形態では、クローラ本体2のクローラ幅方向bの中央でクローラ厚さ方向cに貫通する複数の孔部8を有している。この孔部8は、駆動輪、例えば、スプロケットの歯が挿入されることにより駆動力が伝達されて弾性クローラ1が回転する。孔部8は、第1芯材10と第2芯材11との間でクローラ周方向aに略等間隔に隔設されている。孔部8は、本実施形態では、第3面部2C(図2に示す)で開口している。
【0049】
クローラ周方向aに隣接する孔部8の間には、外周面2oからクローラ外周側coに突出する突部9が設けられている。突部9は、本実施形態では、芯材3を覆うように配され、クローラ周方向aに隔設されている。換言すると、平面視において、突部9は、第1芯材10及び第2芯材11と重なっている。突部9及び孔部8は、本実施形態では、ラグ4の継ぎ面4Bを介して踏面4Aと連なっている。
【0050】
図2に示されるように、抗張体6は、本実施形態では、クローラ周方向aに延びる複数本の金属コード6aがクローラ幅方向bに所定の隙間をもって並べて構成されている。
【0051】
抗張体6は、クローラ本体2のクローラ幅方向bの中心2cよりも両側に配されている。抗張体6は、本実施形態では、第1エッジ2x側の第1抗張体6Aと、第2エッジ2y側の第2抗張体6Bとから構成されている。第1抗張体6A及び第2抗張体6Bは、本実施形態では、クローラ本体2のクローラ幅方向bの中心2cに対して実質的に線対称の位置に設けられている。
【0052】
芯材3は、例えば、クローラ本体2の中心2cに配されかつ駆動輪が噛み合う芯材基部13と、芯材基部13よりもクローラ幅方向bの外側に配される翼部14と、芯材基部13に連なり、クローラ内周側ciに向かって突出する一対の角部15、15とを含んでいる。角部15は、本実施形態では、突起7に覆われている。
【0053】
翼部14は、本実施形態では、第1翼部14Aと、第1翼部14Aよりもクローラ幅方向bの長さの大きい第2翼部14Bとからなる。第1翼部14Aは、クローラ本体2の中心2cよりもクローラ幅方向bのいずれか一方側に配され、第2翼部14Bは、第1翼部14Aとは、クローラ幅方向bの逆側に配される。
【0054】
図5(a)は、第1芯材10をクローラ周方向aから見た図である。図5(b)は、第2芯材11をクローラ周方向aから見た図である。図5(a)及び図5(b)に示されるように、第1芯材10及び第2芯材11は、本実施形態では、それぞれ、第1翼部14Aと第2翼部14Bとを有している。
【0055】
第1芯材10の第1翼部14Aは、本実施形態では、第1芯材10の一端10eを含んでいる。第1芯材10の第2翼部14Bは、本実施形態では、第1芯材10の他端10iを含んでいる。第2芯材11の第1翼部14Aは、本実施形態では、第2芯材11の他端11iを含んでいる。第2芯材11の第2翼部14Bは、本実施形態では、第2芯材11の一端11eを含んでいる。
【0056】
第1翼部14Aは、本実施形態では、抗張体6と対向して配置されかつ前記抗張体6から実質的に抗張力を受けないように前記抗張体6から離間して配されている。第1芯材10の第1翼部14Aは、第1抗張体6Aと対向して配置されている。第2芯材11の第1翼部14Aは、第2抗張体6Bと対向して配置されている。
【0057】
第2翼部14Bは、本実施形態では、抗張体6と対向して配置されかつ前記抗張体6から前記抗張力を受けるように前記抗張体6に接近して配されている。第1芯材10の第2翼部14Bは、第2抗張体6Bと対向して配置されている。第2芯材11の第2翼部14Bは、第1抗張体6Aと対向して配置されている。
【0058】
平面視において、第1芯材10の第1翼部14A及び第2芯材11の第2翼部14Bの全部には、第1ラグ20が重なっている。また、第1芯材10の第2翼部14B及び第2芯材11の第1翼部14Aの全部には、第2ラグ21が重なっている。これにより、クローラ本体2の耳切れの発生がより効果的に抑制される(図4に示す)。
【0059】
芯材3は、本実施形態では、抗張体6と向き合ってクローラ幅方向bに延びる外側頂面17と、外側頂面17よりもクローラ内周側ciに配され、クローラ幅方向bに延びる内側頂面18を含んでいる。
【0060】
本実施形態の外側頂面17は、第1翼部14Aを形成しかつ最もクローラ外周側coに配さる第1外側頂面17aと、第2翼部14Bを形成しかつ最もクローラ外周側coに配さる第2外側頂面17bとを含んでいる。
【0061】
本実施形態では、第1外側頂面17aは、第2外側頂面17bよりもクローラ内周側ciに位置している。換言すると、第1翼部14Aと抗張体6との間のクローラ厚さ方向cの距離L1は、本実施形態では、第2翼部14Bと抗張体6との間のクローラ厚さ方向cの距離L2よりも大きい。これにより、第1翼部14Aの質量をさらに低減できる。また、例えば、スプロケットの歯と孔部8との間に異物が噛み込まれた場合、第2翼部14Bは、クローラ内周側ciへ回転する力が作用する。これにより、第1翼部14Aは、抗張体6、図5(a)では、第1抗張体6Aに大きな抗張力を作用させることなく第1抗張体6A側に逃げる(回転する)ことができる。このため、抗張力による第1抗張体6Aや第1芯材10の第1翼部14Aに生じる傷が抑制されて耐久性能が向上する。
【0062】
本実施形態の内側頂面18は、第1翼部14Aを形成して最もクローラ内周側ciに配される第1内側頂面18aと、第2翼部14Bを形成して最もクローラ内周側ciに配される第2内側頂面18bとを含んでいる。第1内側頂面18a及び第2内側頂面18bは、本実施形態では、実質的にクローラ幅方向bに沿って直線状に延びている。第1内側頂面18a及び第2内側頂面18bは、本実施形態では、クローラ厚さ方向cに同じ高さ位置に配されている。なお、第1内側頂面18a及び第2内側頂面18bは、このような態様に限定されるものではない。
【0063】
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は、上述の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施し得る。
【符号の説明】
【0064】
1 弾性クローラ
2 クローラ本体
2x 第1エッジ
3 芯材
4 ラグ
4e 外縁
10 第1芯材
10e 一端
11 第2芯材
11e 一端
21 第1ラグ
図1
図2
図3
図4
図5