(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-22
(45)【発行日】2022-03-30
(54)【発明の名称】立金物調整具および中間接続箱の設置方法
(51)【国際特許分類】
E02D 29/12 20060101AFI20220323BHJP
H02G 9/10 20060101ALI20220323BHJP
【FI】
E02D29/12 Z
H02G9/10
(21)【出願番号】P 2018107291
(22)【出願日】2018-06-04
【審査請求日】2021-03-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104190
【氏名又は名称】酒井 昭徳
(72)【発明者】
【氏名】美馬 賢司
(72)【発明者】
【氏名】鳥居 翔太
【審査官】三笠 雄司
(56)【参考文献】
【文献】実開昭59-107530(JP,U)
【文献】特開2005-184893(JP,A)
【文献】登録実用新案第3186256(JP,U)
【文献】実公昭41-017095(JP,Y1)
【文献】特開平09-065532(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0062293(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 29/12
H02G 9/00-9/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マンホール内の側壁に取り付けられ、ケーブルの接続に用いる中間接続箱を支持する複数の立金物を支持する立金物調整具であって、
一対の短辺および一対の長辺に囲まれた矩形の板形状をなす第1の部材と、
一対の短辺および一対の長辺に囲まれた矩形の板形状をなし、板面が、前記第1の部材の板面を含む平面に対して略平行に設けられた第2の部材と、
前記第1の部材がなす板面を含む平面と前記第2の部材がなす板面を含む平面との間に所定の間隔を空けた状態で、当該第1の部材および当該第2の部材を連結する連結部材と、
前記第1の部材に設けられて、当該第1の部材を板厚方向に貫通し、当該第1の部材を前記側壁に固定するための側壁固定用ボルトを貫通させる貫通孔と、
前記第2の部材に設けられて、当該第2の部材を板厚方向に貫通し、
前記立金物を固定するための立金物固定用ボルトを貫通させる、前記長辺方向を長手方向と
して前記短辺方向の寸法よりも前記長辺方向の寸法が長く形成される長孔と、
を備え
、
前記長孔は、前記長辺方向に沿って複数設けられていることを特徴とする立金物調整具。
【請求項2】
前記貫通孔は、前記短辺方向の寸法よりも前記長辺方向の寸法が長いことを特徴とする請求項
1に記載の立金物調整具。
【請求項3】
前記第1の部材および前記第2の部材は、それぞれ、前記一対の長辺のうちの一方の長辺において前記連結部材に連結され、他方の長辺が当該連結部材から相反する方向に離間し、長さ方向に直交する断面が略Z形状をなすことを特徴とする請求項1
または2に記載の立金物調整具。
【請求項4】
前記第1の部材および前記第2の部材は、それぞれの板面を対向させた状態で、前記一対の長辺のうちの一方の長辺において前記連結部材に連結され、長さ方向に直交する断面が略コの字形状をなすことを特徴とする請求項1
または2に記載の立金物調整具。
【請求項5】
前記第2の部材は、前記一対の長辺のうちの他方の長辺が、前記第1の部材における前記一対の長辺のうちの他方の長辺よりも前記連結部材側に位置づけられていることを特徴とする請求項
4に記載の立金物調整具。
【請求項6】
一対の短辺および一対の長辺に囲まれた矩形の板形状をなす第1の部材と、一対の短辺および一対の長辺に囲まれた矩形の板形状をなし、板面が、前記第1の部材の板面を含む平面に対して略平行に設けられた第2の部材と、前記第1の部材がなす板面を含む平面と前記第2の部材がなす板面を含む平面との間に所定の間隔を空けた状態で、当該第1の部材および当該第2の部材を連結する連結部材と、前記第1の部材に設けられて、当該第1の部材を板厚方向に貫通し、当該第1の部材をマンホールの側壁に固定するための側壁固定用ボルトを貫通させる貫通孔と、前記第2の部材に設けられて、当該第2の部材を板厚方向に貫通し、前記立金物を固定するための立金物固定用ボルトを貫通させる、前記長辺方向を長手方向として前記短辺方向の寸法よりも前記長辺方向の寸法が長く形成される長孔と、を備える立金物調整具を
前記側壁に前記側壁固定用ボルトを用いて固定し、
前記立金物調整具
の前記第2の部材の前記長辺方向に沿って複数設けられた前記長孔に前記立金物固定用ボルトを用いて複数の立金物を仮固定し、
ケーブルの接続に用いる中間接続箱および当該中間接続箱に対する当該ケーブルの接続位置の少なくとも一方に応じて、
前記長孔において前記立金物固定用ボルトを移動させ、前記立金物調整具に対する前記立金物の左右方向における位置を調整し、
調整した位置において前記立金物調整具に対する前記立金物の左右方向における位置を固定する、
ことを特徴とする中間接続箱の設置方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、マンホール内において立金物を支持する立金物調整具、および、立金物によって支持される中間接続箱の設置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地中に埋設された管路などに敷設される電力ケーブル、いわゆる地中ケーブルは、たとえば、マンホール内に設置された中間接続箱において接続されている。中間接続箱は、マンホール内の壁面にアンカーボルトなどを直接打設することによって設置した立金物に取付用金具を取り付け、当該取付用金具を介して立金物に固定している。
【0003】
中間接続箱は、マンホール内における規定位置に設置する必要がある。立金物には、長さ方向に沿って規定ピッチを空けてボルト孔が複数設けられており、従来、取付用金物を取り付けるボルト孔を変更することによって、中間接続箱の上下方向の位置を調整していた。また、従来は、立金物の位置を調整することによって中間接続箱の左右方向の位置調整をおこなっていた。
【0004】
特定の対象物の支持に関連する技術として、具体的には、従来、たとえば、躯体に略水平に固定して設けられる下地材の上縁と、下側パネルの上部に設けられた上部クリップに係止されて下側パネルの上端辺よりも上方に延出する連結具と、を上側パネルの下部に設けられた下部クリップによって挟持するようにしたパネルの重量受け部およびパネルの取付け構造に関する技術があった(たとえば、下記特許文献1を参照。)。
【0005】
また、関連する技術として、具体的には、従来、たとえば、太陽電池パネルを把持する把持機構を備え所定の長さを有するフレーム材と、フレーム材を下方から支持し所定の塗料が塗付された樹脂部材からなる複数のブロック材とを備えた太陽電池パネル用架台に関する技術があった(たとえば、下記特許文献2を参照。)。
【0006】
また、関連する技術として、具体的には、従来、たとえば、ALCパネルに埋設される略筒状の本体に長さ方向に伸長する略長方形の開口部を形成し、パネル取付用ボルトの一端に設けられたT字形の係止部を開口部に挿入した状態で当該パネル取付用ボルトを周方向に回転させることによって、係止部によりパネル取付用ボルトと本体とを係合させるようにしたアンカー金具に関する技術があった(たとえば、下記特許文献3を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2017-122386号公報
【文献】特開2017-189030号公報
【文献】特開2008-261096号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、中間接続箱はメーカーや電圧などによって大きさが異なっており、上述した従来の技術は、マンホール内の壁面にアンカーボルトなどを直接打設することによって立金物を固定しているため、ケーブルの張り替えなどに起因して、先に設置されていた中間接続箱と異なる大きさの中間接続箱をあらたに設置する場合に、あらたに設置する中間接続箱の左右方向の位置が規定位置に収まるように設置することが難しいという問題があった。
【0009】
上述した従来の技術は、大きさの違いなどに起因して、あらたに設置する中間接続箱における接続位置と先に設置されていた中間接続箱における接続位置とが異なって接続位置にずれが生じる場合、あらたに設置する中間接続箱の左右方向の位置を調整するためには、接続位置のずれに対応して立金物の位置を変更、すなわち、アンカーボルトの打ち直しをしなければならず、施工作業に手間がかかり作業者の負担が大きく、マンホールの側壁に対する負担も大きいという問題があった。
【0010】
また、打ち直すアンカーボルトの位置がマンホール内の鉄筋と干渉する場合は、さらに、マンホール内の鉄筋の位置に応じてアンカーボルトの位置を変更しなければならず、施工作業に一層の手間がかかり作業者の負担が大きく、マンホールの側壁に対する負担も大きいという問題があった。
【0011】
また、上述した特許文献1に記載された従来の技術は、接続箱を支持する十分な強度が確保できないため、重量のある接続箱に適用することは難しいという問題があった。また、上述した特許文献2に記載された従来の技術は、一旦取り付けた後に左右方向における接続箱の位置調整が難しいという問題があった。
【0012】
また、上述した特許文献3に記載された従来の技術は、ALCの内部にあらかじめアンカー金具を埋め込んでおかなくてはならないため、この技術を接続箱に適用した場合、接続箱の中にアンカー金具と同様の部材を設けなくてはならず、接続箱の構造から変更しなくてはならないため、重量のある接続箱に適用することは難しいという問題があった。
【0013】
この発明は、上述した従来技術による問題点を解消するため、中間接続箱の設置にかかる作業者の負担軽減を図ることができる立金物調整具および中間接続箱の設置方法を提供することを目的とする。
【0014】
また、この発明は、上述した従来技術による問題点を解消するため、中間接続箱の設置にかかる作業者の負担軽減を図るとともに、マンホールの側壁にかかる負担軽減を図ることができる立金物調整具および中間接続箱の設置方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、この発明にかかる立金物調整具は、一対の短辺および一対の長辺に囲まれた矩形の板形状をなす第1の部材と、一対の短辺および一対の長辺に囲まれた矩形の板形状をなし、板面が、前記第1の部材の板面を含む平面に対して略平行に設けられた第2の部材と、前記第1の部材がなす板面を含む平面と前記第2の部材がなす板面を含む平面との間に所定の間隔を空けた状態で、当該第1の部材および当該第2の部材を連結する連結部材と、前記第2の部材に設けられて、当該第2の部材を板厚方向に貫通し、前記長辺方向を長手方向とする長孔と、を備えたことを特徴とする。
【0016】
また、この発明にかかる立金物調整具は、上記の発明において、前記長孔が、前記長辺方向に沿って複数設けられていることを特徴とする。
【0017】
また、この発明にかかる立金物調整具は、上記の発明において、前記第1の部材に設けられて、当該第1の部材を板厚方向に貫通する貫通孔を備えたことを特徴とする。
【0018】
また、この発明にかかる立金物調整具は、上記の発明において、前記貫通孔が、前記短辺方向の寸法よりも前記長辺方向の寸法が長いことを特徴とする。
【0019】
また、この発明にかかる立金物調整具は、上記の発明において、前記第1の部材および前記第2の部材が、それぞれ、前記一対の長辺のうちの一方の長辺において前記連結部材に連結され、他方の長辺が当該連結部材から相反する方向に離間し、長さ方向に直交する断面が略Z形状をなすことを特徴とする。
【0020】
また、この発明にかかる立金物調整具は、上記の発明において、前記第1の部材および前記第2の部材が、それぞれの板面を対向させた状態で、前記一対の長辺のうちの一方の長辺において前記連結部材に連結され、長さ方向に直交する断面が略コの字形状をなすことを特徴とする。
【0021】
また、この発明にかかる立金物調整具は、上記の発明において、前記第2の部材が、前記一対の長辺のうちの他方の長辺が、前記第1の部材における前記一対の長辺のうちの他方の長辺よりも前記連結部材側に位置づけられていることを特徴とする。
【0022】
また、この発明にかかる中間接続箱の設置方法は、マンホール内の側壁に、上記の立金物調整具を固定し、前記立金物調整具に立金物を仮固定し、ケーブルの接続に用いる中間接続箱および当該中間接続箱に対する当該ケーブルの接続位置の少なくとも一方に応じて、前記立金物調整具に対する前記立金物の左右方向における位置を調整し、調整した位置において前記立金物調整具に対する前記立金物の左右方向における位置を固定する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
この発明にかかる立金物調整具および中間接続箱の設置方法によれば、中間接続箱の設置にかかる作業者の負担軽減を図ることができるという効果を奏する。
【0024】
また、この発明にかかる立金物調整具および中間接続箱の設置方法によれば、中間接続箱の設置にかかる作業者の負担軽減を図るとともに、マンホールの側壁にかかる負担軽減を図ることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図2】この発明にかかる実施の形態の立金物調整具の構成を示す説明図である。
【
図4】この発明にかかる実施の形態の立金物調整具を用いた中間接続箱の設置作業例を示す説明図(その1)である。
【
図5】この発明にかかる実施の形態の立金物調整具を用いた中間接続箱の設置作業例を示す説明図(その2)である。
【
図6】この発明にかかる実施の形態の立金物調整具を用いた中間接続箱の設置作業例を示す説明図(その3)である。
【
図7】この発明にかかる実施の形態の立金物調整具の別の構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる立金物調整具および中間接続箱の設置方法の好適な実施の形態を詳細に説明する。
【0027】
(マンホールの一例)
まず、立金物調整具を取り付けるマンホールの一例について説明する。
図1は、マンホールの一例を示す説明図である。
図1において、マンホール100は、地中に設置される。マンホール100は、メンテナンス空間部101と、縦孔部102と、を備えている。
【0028】
メンテナンス空間部101は、底板103と側壁104と天板105とによって囲まれる空間(以下、「メンテナンス空間」という)101aを備えている。メンテナンス空間101aは、作業者が1名または複数名入って作業ができる程度の大きさが確保されている。
【0029】
メンテナンス空間部101には、電源側のケーブルや負荷側のケーブルなどの電気ケーブル106が敷設される管路107が連結されている。管路107は、地中に埋設され、メンテナンス空間部101の側壁104を貫通して、メンテナンス空間部101に連通されている。管路107に敷設された電気ケーブル106は、メンテナンス空間101a内において、中間接続箱108を介して接続される。
【0030】
縦孔部102は、軸心方向が鉛直方向に平行に設置される管形状をなす。縦孔部102は、メンテナンス空間部101の天板105に接続される下端側の開口を介して、メンテナンス空間101aと連通されている。縦孔部102は、メンテナンス空間101aと地上空間とを連通する。
【0031】
縦孔部102において、上端側の開口には、蓋部材109が、取り外し可能に設けられる。蓋部材109は、通常は縦孔部102の上端側の開口を塞ぎ、メンテナンス空間101a内での作業に際して縦孔部102から取り外され、メンテナンス空間101aと地上空間とを連通する。
【0032】
縦孔部102の内壁面には、足場金物110が設けられている。足場金物110は、縦孔部102の内壁面に直接取り付けられた複数のステップによって実現してもよく、梯子によって実現してもよい。足場金物110を実現する梯子は、縦孔部102の内壁面に沿って移動可能であってもよい。
【0033】
縦孔部102の内壁面に沿って移動可能な梯子を設ける場合、当該梯子は、作業者がメンテナンス空間101aに入る際に下へ下ろしてメンテナンス空間101a内に位置づけ、作業が終了して最後の作業者が地上に上がる際に上へ引き上げて縦孔部102内に位置づける。縦孔部102の内径は、作業者が上下移動できる程度の大きさが確保されている。
【0034】
この発明にかかる実施の形態の立金物調整具111は、マンホール100におけるメンテナンス空間101a内に設置され、立金物112を支持する。立金物112は、中間接続箱108を支持する。立金物112は、具体的には、たとえば、長さ方向に直交する平面に沿って切断した断面が略L字形状をなす棒状の部材によって実現することができる。
【0035】
立金物112は、略L字形状をなす2面のうちの一方の面に、長さ方向に沿って複数設けられた高さ調整用の貫通孔(
図5における符号502を参照)を備えている。また、立金物112は、略L字形状をなす2面のうちの他方の面に、位置固定用の貫通孔(
図5における符号501を参照)を備えている。高さ調整用の貫通孔および位置固定用の貫通孔は、いずれも、略L字形状をなす2面の各面を板厚方向に貫通している。
【0036】
立金物112は、鋼などの金属材料を用いて形成されている。具体的には、立金物112は、たとえば、SUS304などのステンレス鋼を用いて形成することができる。また、具体的には、立金物112は、たとえば、鉄鋼材であるSS材の一つであるSS400を用いて形成してもよい。
【0037】
(立金物調整具111の構成)
つぎに、この発明にかかる実施の形態の立金物調整具111の構成について説明する。
図2は、この発明にかかる実施の形態の立金物調整具111の構成を示す説明図である。
図2において、立金物調整具111は、マンホール100におけるメンテナンス空間101a内に設置される。立金物調整具111は、第1の部材210と、第2の部材220と、連結部材230と、を備えている。
【0038】
第1の部材210、第2の部材220および連結部材230は、たとえば、鋼などの金属材料を用いて形成されている。具体的には、第1の部材210、第2の部材220および連結部材230は、たとえば、立金物112と同様に、SUS304などのステンレス鋼を用いて形成することができる。第1の部材210および第2の部材220は、一対の短辺および一対の長辺に囲まれた矩形の板形状をなす。第1の部材210と第2の部材220とは、連結部材230によって連結されている。
【0039】
連結部材230は、第1の部材210がなす板面と、第2の部材220がなす板面と、が略平行な状態となるように、第1の部材210および第2の部材220を連結する。また、連結部材230は、第1の部材210がなす板面を含む平面(
図3における符号301を参照)と、第2の部材220がなす板面を含む平面(
図3における符号302を参照)との間に、所定の間隔を空けた状態で、第1の部材210および第2の部材220を連結する。
【0040】
第1の部材210および第2の部材220は、それぞれが備える一対の長辺の一方の長辺において連結部材230に連結され、他方の長辺が当該連結部材230から相反する方向に離間している。立金物調整具111は、長さ方向に直交する平面に沿って切断した断面が、Z形鋼のような略Z形をなす。第1の部材210と第2の部材220と連結部材230とは、たとえば、溶接によって連結することができる。
【0041】
あるいは、第1の部材210と第2の部材220と連結部材230とは、一体に形成されていてもよい。第1の部材210と第2の部材220と連結部材230と一体に形成する場合、具体的には、たとえば、圧延加工によって立金物調整具111を形成することができる。また、第1の部材210と第2の部材220と連結部材230とを一体に形成する場合、具体的には、たとえば、所定厚さの金属板(鋼板)を曲げ加工することによって立金物調整具111を形成してもよい。
【0042】
第1の部材210には、当該第1の部材210を板厚方向に貫通する貫通孔211が設けられている。貫通孔211は、内径が、立金物調整具111のマンホール100への取り付けに際して用いるアンカーボルト(
図4における符号401を参照)における軸部の直径と同等以上であって、当該アンカーボルトの頭部よりも小さい寸法とされている。
【0043】
貫通孔211は、正円形状であってもよく、
図2に示すように長孔形状であってもよい。貫通孔211を長孔形状とすることにより、後述する立金物調整具111のマンホール100への取り付けに際しての、立金物調整具111の側壁104に対する位置を調整することができる。
【0044】
第2の部材220には、長孔221が設けられている。長孔221は、第2の部材220を板厚方向に貫通し、第2の部材220(立金物調整具111)における長辺方向を長手方向として設けられている。長孔221の幅寸法は、立金物調整具111が固定対象とする立金物112を立金物調整具111に取り付ける際に用いるボルト222における軸部の直径寸法と同等の寸法であって、当該ボルト222の頭部よりも小さい寸法とされている。
【0045】
(立金物調整具111の寸法例)
つぎに、立金物調整具111の寸法例について説明する。
図3は、立金物調整具111の寸法例を示す説明図である。
図3において、立金物調整具111は、たとえば、長さ寸法L1を650mm~700mm程度とすることができる。長さ寸法L1は、第1の部材210および第2の部材220の長辺長さと一致する。第1の部材210および第2の部材220の短辺の寸法H1、H2は、50mm~60mm程度とすることができる。寸法H1と寸法H2とは、同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0046】
また、長孔221の長さ方向の寸法L2、L3は、たとえば、100mm~200mm程度とすることができる。寸法L2と寸法L3とは、同じであってもよく、異なっていてもよい。
図3において、符号301は、第1の部材210がなす板面を含む平面の位置を示している。同様に、符号302は、第2の部材220がなす板面を含む平面の位置を示している。
【0047】
(中間接続箱108の設置作業例)
つぎに、この発明にかかる実施の形態の立金物調整具111を用いた中間接続箱108の設置作業例について説明する。
図4~
図6は、この発明にかかる実施の形態の立金物調整具111を用いた中間接続箱108の設置作業例を示す説明図である。
【0048】
中間接続箱108の設置作業に際しては、まず、
図4に示すように、立金物調整具111をマンホール100の側壁(内壁面)104に固定する。立金物調整具111は、たとえば、アンカーボルト401を用いてマンホール100の側壁104に固定する。より具体的に、立金物調整具111は、たとえば、金属拡張アンカーなどのあと施工アンカーによってマンホール100の側壁104に固定する。長さ方向に直交する断面を略Z形状とすることにより、立金物調整具111をマンホール100の側壁104に固定することによって、第2の部材220とマンホール100の側壁104との間に隙間402が形成される。
【0049】
つぎに、立金物112を立金物調整具111に固定する。具体的には、
図5に示すように、まず、立金物調整具111の長孔221に、立金物112を固定するためのボルト222を挿入する。ボルト222は、立金物調整具111に対して、マンホール100の側壁104側から挿入する。つぎに、長孔221に挿入したボルト222を、立金物112に設けられた位置固定用の貫通孔501に挿入する。そして、長孔221および位置固定用の貫通孔501に挿入されたボルト222にナット223を螺合する。これにより、立金物112を立金物調整具111に固定することができる。なお、
図5において、符号502は、高さ調整用の貫通孔を示している。
【0050】
つぎに、立金物112の左右方向(水平方向)における位置を調整する。具体的には、まず、ボルト222とナット223との螺合を緩める。このとき、ボルト222からナット223を完全に取り外さず、緩めるだけでよい。つぎに、
図6に示すように、長孔221内においてボルト222を、両方向矢印601に沿ってスライド移動させる。これにより、立金物112の左右方向における位置を調整することができる。そして、立金物112の左右方向(水平方向)における位置を定めた状態で、ボルト222およびナット223を締め付ける。これにより、立金物112の左右方向における位置を固定することができる。
【0051】
その後、立金物112における、複数の高さ調整用の貫通孔502のうちの一つを利用して、立金物112に中間接続箱108を取り付ける。中間接続箱108を立金物112に取り付ける前に、メンテナンス空間101aの底などに中間接続箱108を置いて、電源側のケーブルおよび負荷側のケーブルを接続しておいてもよい。
【0052】
従来、中間接続箱108を立金物112に取り付ける前に電源側のケーブルおよび負荷側のケーブルを接続する場合、中間接続箱108を立金物112に固定する際に、立金物112の位置によってはケーブルの長さが不足して突っ張った状態になってしまうことがあった。また、中間接続箱108はメーカーや電圧などによって大きさや、当該中間接続箱108におけるケーブルの接続位置などが異なっている場合がある。
【0053】
従来は、マンホール100の側壁104にアンカーボルト401を打設することによって立金物112を直接マンホール100の側壁104に固定していたため、このような場合、アンカーボルト401の打ち直しをしなければならなかった。このため、施工作業に手間がかかり作業者の負担が大きくなってしまっていた。また、マンホール100の側壁104の複数箇所にアンカーボルト401を打ち込むため、マンホール100の側壁104に大きな負担をかけてしまっていた。
【0054】
これに対し、この発明にかかる実施の形態の立金物調整具111を用いて、高さ調整用の貫通孔502を複数備えた立金物112を支持することにより、高さ調整用の貫通孔502によって上下方向(鉛直方向)における中間接続箱108の高さ位置を調整するとともに、長孔221内においてボルト222をスライドさせることによって中間接続箱108の左右方向における位置を調整することができる。
【0055】
長孔221内においてボルト222をスライドさせる際には、ボルト222に対するナット223の締め具合を緩めればよく、ボルト222からナット223を完全に取り外す必要がない。これにより、作業性を向上させるとともに、ナット223の紛失を防止できる。
【0056】
(立金物調整具の別の構成)
つぎに、この発明にかかる実施の形態の立金物調整具の別の構成について説明する。
図7は、この発明にかかる実施の形態の立金物調整具の別の構成を示す説明図である。
図7においては、上述した立金物調整具111と同一部分は同一符号で示し、説明を省略する。
【0057】
図7に示す立金物調整具700において、第1の部材210および第2の部材220は、それぞれの板面を対向させた状態で、連結部材230によって連結されている。第1の部材210および第2の部材220は、それぞれ、一対の長辺のうちの一方の長辺において連結部材230に連結されており、長さ方向に直交する断面が略コの字形状をなす。
【0058】
第2の部材220は、一対の長辺のうち、連結部材230に連結されていない方の他方の長辺が、第1の部材210における一対の長辺のうちの他方の長辺よりも連結部材230側に位置づけられている。すなわち、第2の連結部材230の板面積は、第1の部材210の板面積よりも小さい。第1の部材210には、第1の部材210および第2の部材220の板面に直交する方向において、第2の部材220と重複していない部分にアンカーボルト401用の貫通孔211が設けられている。
【0059】
以上説明したように、この発明にかかる実施の形態の立金物調整具111、700は、一対の短辺および一対の長辺に囲まれた矩形の板形状をなす第1の部材210と、一対の短辺および一対の長辺に囲まれた矩形の板形状をなし、板面が、第1の部材210の板面を含む平面に対して略平行に設けられた第2の部材220と、第1の部材210がなす板面を含む平面と第2の部材220がなす板面を含む平面との間に所定の間隔を空けた状態で、当該第1の部材210および当該第2の部材220を連結する連結部材230と、第2の部材220に設けられて、当該第2の部材220を板厚方向に貫通し、長辺方向を長手方向とする長孔221と、を備えたことを特徴としている。
【0060】
この発明にかかる実施の形態の立金物調整具111、700によれば、マンホール100の側壁104にアンカーボルト401を用いて固定した立金物調整具111に対して、第2の部材220に設けられた長孔221と立金物112に設けられた位置固定用の貫通孔とに挿入したボルト222にナット223を螺合することによって、立金物112を固定することができる。
【0061】
立金物112は直接マンホール100の側壁104に固定していないため、立金物調整具111と立金物112とを連結するボルト222の長孔221内における位置を調整することによって、左右方向における立金物112の位置を調整することができる。
【0062】
これにより、たとえば、中間接続箱108を介して電源側や負荷側の電気ケーブル106を接続し、中間接続箱108を組み立てた後であっても、電気ケーブル106の長さや張り具合などに応じて中間接続箱108の左右方向における位置の調整を容易におこなうことができる。そして、これによって、アンカーボルト401の打ち直しをおこなうことなく、中間接続箱108を容易かつ確実に規定位置に設置することができる。
【0063】
また、電気ケーブル106の張り替えなどに起因して、先に設置されていた中間接続箱108と異なる大きさの中間接続箱108をあらたに設置する場合に、アンカーボルト401の打ち直しをおこなうことなく、あらたに設置する中間接続箱108の左右方向における位置の調整を容易におこなうことができる。これにより、中間接続箱108の大きさにかかわらず、中間接続箱108を容易かつ確実に規定位置に設置することができる。
【0064】
中間接続箱108の左右方向における位置の調整に際しては、ナット223をボルト222から完全に取り外すことなく緩めるだけで、長孔221内において容易にボルト222をスライド移動させることができる。これにより、中間接続箱108の左右方向における位置を無段階に調整することができるので、中間接続箱108の左右方向における位置の微調整をおこなうことができる。
【0065】
このように、この発明にかかる実施の形態の立金物調整具111によれば、中間接続箱108を容易かつ確実に規定位置に設置することができるので、中間接続箱108の設置にかかる作業者の負担軽減を図ることができる。また、この発明にかかる実施の形態の立金物調整具111によれば、アンカーボルト401の打ち直しをおこなうことなく中間接続箱108を設置することができるので、中間接続箱108の設置にかかる作業者の負担軽減を図るとともに、マンホール100の側壁104にかかる負担軽減を図ることができる。
【0066】
また、この発明にかかる実施の形態の立金物調整具111は、長孔221が、長辺方向に沿って複数設けられていることを特徴としている。
【0067】
この発明にかかる実施の形態の立金物調整具111によれば、1つの立金物調整具111に複数の長孔221を設けることにより、左右方向における立金物112の位置調整にかかる自由度を確保することができる。なお、第2の部材220の短辺方向の寸法や第2の部材220の板厚寸法を調整することにより、複数の長孔221を設けることによって立金物調整具111の強度を確保することができる。
【0068】
また、この発明にかかる実施の形態の立金物調整具111は、第1の部材210に設けられて、当該第1の部材210を板厚方向に貫通する貫通孔211を備えたことを特徴としている。
【0069】
この発明にかかる実施の形態の立金物調整具111によれば、長孔221が設けられた第2の部材220ではなく第1の部材210に、アンカーボルト401を貫通させる貫通孔211を設けることにより、長孔221内においてボルト222をスライドさせる際に、アンカーボルト401が作業者の手に干渉するなどして作業の支障になることを回避できる。これにより、作業者の負担軽減を図ることができる。
【0070】
また、この発明にかかる実施の形態の立金物調整具111は、貫通孔211が、短辺方向の寸法よりも長辺方向の寸法が長い形状をなすことを特徴としている。
【0071】
この発明にかかる実施の形態の立金物調整具111は、マンホール100の側壁104に対する立金物調整具111の位置を変えることなく、アンカーボルト401を打ち込む位置を調整することができる。これにより、マンホール100の側壁104に対する立金物調整具111の位置が、アンカーボルト401を打ち込む位置によって左右されることをなくし、立金物調整具111の取り付けにかかる自由度を確保することができる。
【0072】
また、この発明にかかる実施の形態の立金物調整具111は、第1の部材210および第2の部材220が、それぞれ、一対の長辺のうちの一方の長辺において連結部材230に連結され、他方の長辺が当該連結部材230から相反する方向に離間し、長さ方向に直交する断面が略Z形状をなすことを特徴としている。
【0073】
この発明にかかる実施の形態の立金物調整具111によれば、長さ方向に直交する断面を略Z形状とすることにより、マンホール100の側壁104に立金物調整具111を固定した状態において、第2の部材220とマンホール100の側壁104との間に隙間402を確保することができる。これにより、マンホール100の側壁104に立金物調整具111を固定した後に、隙間402を利用してボルト222を長孔221に挿入し、立金物調整具111に立金物112を取り付けることができる。
【0074】
このように、マンホール100の側壁104に立金物調整具111を固定する作業と、立金物調整具111に立金物112を取り付ける作業とを別々にして順番におこなうことにより、たとえば、マンホール100の側壁104に立金物調整具111を固定する前に、長孔221にボルト222を挿入しておかなければならないなどの制約をなくし、作業者の負担軽減を図ることができる。
【0075】
また、この発明にかかる実施の形態の立金物調整具111によれば、長さ方向に直交する断面を略Z形状とすることにより、第1の部材210および第2の部材220の板面に直交する方向において、第1の部材210と第2の部材220とが重複しないため、長孔221内においてボルト222をスライドさせる際に、マンホール100の側壁104に立金物調整具111を固定するためのアンカーボルト401が作業者の手に干渉するなどして作業の支障になることを回避できる。これにより、作業者の負担軽減を図ることができる。
【0076】
また、この発明にかかる実施の形態の立金物調整具111によれば、長さ方向に直交する断面を略Z形状とすることにより、第1の部材210および第2の部材220の板面に直交する方向から立金物調整具111を見た場合に、第1の部材210および第2の部材220の双方を、容易かつ確実に視認することができる。これにより、マンホール100の側壁104に対する立金物調整具111の取付状態、および、立金物調整具111に対する立金物112の取付状態の双方を容易に確認することができ、作業者の負担軽減を図ることができる。
【0077】
また、この発明にかかる実施の形態の立金物調整具111は、第1の部材210および第2の部材220が、それぞれの板面を対向させた状態で、一対の長辺のうちの一方の長辺において連結部材230に連結され、長さ方向に直交する断面が略コの字形状をなすことを特徴としている。
【0078】
この発明にかかる実施の形態の立金物調整具111によれば、長さ方向に直交する断面を略コの字形状とすることにより、第1の部材210および第2の部材220の板面に直交する方向において、第1の部材210と第2の部材220とを重複させ、立金物調整具111の小型化を図ることができる。これにより、作業者は、立金物調整具111を握るようにして持つことができ、持ちやすくなるため、作業者の負担軽減を図ることができる。また、立金物調整具111の取扱い性を高めるとともに、設置に要するスペースを小さく抑えることができる。
【0079】
また、この発明にかかる実施の形態の立金物調整具111は、第2の部材220が、一対の長辺のうちの他方の長辺が、第1の部材210における一対の長辺のうちの他方の長辺よりも連結部材230側に位置づけられていることを特徴としている。
【0080】
この発明にかかる実施の形態の立金物調整具111によれば、第1の部材210および第2の部材220の板面に直交する方向において、第1の部材210と第2の部材220とを重複させることで立金物調整具111の設置に要するスペースを小さく抑えるとともに、第1の部材210における第2の部材220と重複していない部分に貫通孔211を設けることによって、アンカーボルト401が作業者の手に干渉するなどして作業の支障になることを回避できる。これにより、作業者の負担軽減を図ることができる。
【0081】
また、第2の部材220越しに第1の部材210をのぞき込むような姿勢をとることなくマンホール100の側壁104に対する立金物調整具111の取付状態、および、立金物調整具111に対する立金物112の取付状態の双方を容易に確認することができるので、作業者の負担軽減を図ることができる。
【0082】
また、この発明にかかる実施の形態の中間接続箱108の設置方法は、マンホール内の側壁104に、立金物調整具111を固定し、立金物調整具111に立金物112を仮固定し、電気ケーブル106の接続に用いる中間接続箱108および当該中間接続箱108に対する当該電気ケーブル106の接続位置の少なくとも一方に応じて、立金物調整具111に対する立金物112の左右方向における位置を調整し、調整した位置において立金物調整具111に対する立金物112の位置を固定する、ことを特徴としている。
【0083】
この発明にかかる実施の形態の中間接続箱108の設置方法によれば、アンカーボルト401の打ち直しをおこなうことなく中間接続箱108を設置することができるので、中間接続箱108の設置にかかる作業者の負担軽減を図るとともに、マンホール100の側壁104にかかる負担軽減を図ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0084】
以上のように、この発明にかかる立金物調整具および中間接続箱の設置方法は、マンホール内において立金物を支持する立金物調整具および立金物によって支持される中間接続箱の設置方法に有用であり、特に、マンホール内において中間接続箱などの重量物の設置に用いる立金物を支持する立金物調整具および中間接続箱の設置方法に適している。
【符号の説明】
【0085】
100 マンホール
101a メンテナンス空間
106 電気ケーブル
108 中間接続箱
111、700 立金物調整具
112 立金物
210 第1の部材
211 貫通孔
220 第2の部材
221 長孔
230 連結部材
401 アンカーボルト
501 位置固定用の貫通孔
502 高さ調整用の貫通孔