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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-22
(45)【発行日】2022-03-30
(54)【発明の名称】圧電振動デバイス
(51)【国際特許分類】
   H03B 5/32 20060101AFI20220323BHJP
【FI】
H03B5/32 H
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2018143027
(22)【出願日】2018-07-31
(65)【公開番号】P2020022017
(43)【公開日】2020-02-06
【審査請求日】2021-01-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000149734
【氏名又は名称】株式会社大真空
(72)【発明者】
【氏名】金澤 啓弘
【審査官】石田 昌敏
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-034328(JP,A)
【文献】国際公開第2013/190749(WO,A1)
【文献】特開2013-065602(JP,A)
【文献】特開2016-208192(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03B 5/30- 5/42
H03H 9/00- 9/66
H01L 23/00-23/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁材料からなる基板部と枠部の積層体で構成され、上層と中層と下層の少なくとも3層以上の積層体により外装部と収納部を形成する直方体形状のベース、
上記ベース上層の枠部上面に接合され、上記ベース上層の枠部による収納部を気密封止する蓋、
上記ベースの収納部に収納される圧電振動素子と電子部品素子、
上記ベース上層と上記ベース中層と上記ベース下層との外周縁の4隅にのみ形成され、同一中心O点を起点とし、ベースの高さ方向に沿って伸長した円弧状の切欠き部、
上記ベース中層の切欠き部に形成され、上記圧電振動素子と電気的に接続される圧電接続端子、
上記ベース下層の下面に形成され、外部と接続するための外部接続端子、
上記ベース下層の下面の外部接続端子と上記ベース下層の下面の切欠き部との間に介在する離隔部、
を備えており、
ベースの平面視外形寸法のうち長辺の寸法が1.6mm以下で短辺の寸法が1.2mm以下であり、
上記ベース下層の4隅の切欠き部の半径をR1とし、
上記ベース中層の4隅の切欠き部の半径をR2とし、
上記ベース上層の4隅の切欠き部の半径をR3とし、
上記ベース下層の4隅の外部接続端子と切欠き部との最短距離をGとし、
上記ベース上層の枠部の4隅を除いた4辺のうちの最小幅寸法をWとした場合、
R1<R2、
R1<G、
R3<W、
R2の寸法を0.085mm以上0.2mm以下とし、
Gの寸法を0.085mm以上0.2mm以下、
としたことを特徴とする圧電振動デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は表面実装型の圧電発振器に関する。
【背景技術】
【0002】
圧電振動デバイスとして、例えば表面実装型の水晶発振器は、絶縁材料からなるベース(パッケージ)に設けられた収納部の中に、水晶などからなる圧電振動素子と集積回路素子などの電子部品素子が実装され、蓋で収納部を気密封止した構造となっている。前記ベースの外底面には複数の外部接続端子が形成されている。圧電振動デバイスは、外部接続端子で外部回路基板上の搭載パッドとはんだなどの導電性接合材により電気的機械的に接合されることで外部回路基板に搭載される。
【0003】
このような圧電振動デバイスの中には、特許文献1に開示されているように、圧電振動素子と接続された圧電接続端子を設けることで、ICなどの他の電子部品素子による電気的な特性に影響されることなく、圧電振動素子の単体としての電気的特性の評価や周波数調整を実施するものが従来から提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実開平5-65110号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述のような圧電振動デバイスは、近年のパッケージの小型化の進展とともに、パッケージ収納部の収納スペースの確保とパッケージの機械的な強度の確保が難しくなってきているのが現状である。特に、パッケージの主体となりセラミック材料などの積層体により構成するベースでは、ベース内底部分の周囲にある枠部の幅により、ベースの外形寸法とベースの収納部の容積が決定されるとともに、外部からの衝撃や気密性を確保するための機械的な強度にも大きく影響する。加えて、ベース底面に形成された外部接続端子以外の場所に圧電接続端子を別途形成する構成では、ベースの側面のいずれかの領域に圧電接続端子が形成されるため、圧電接続端子が形成される堤部分に形状的な制限を受けやすくなる。このような問題点は、圧電振動デバイスの小型化とともにますます困難になっているのが現状である。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、パッケージの小型化に対応させながらより信頼性の高い圧電接続端子を有する圧電振動デバイスを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本発明は、絶縁材料からなる基板部と枠部の積層体で構成され、上層と中層と下層の少なくとも3層以上の積層体により外装部と収納部を形成する直方体形状のベース、上記ベース上層の枠部上面に接合され、上記ベース上層の枠部による収納部を気密封止する蓋、上記ベースの収納部に収納される圧電振動素子と電子部品素子、上記ベース上層と上記ベース中層と上記ベース下層との外周縁の4隅にのみ形成され、ベースの高さ方向に沿って伸長した円弧状の切欠き部、上記ベース中層の切欠き部に形成され、上記圧電振動素子と電気的に接続される圧電接続端子、上記ベース下層の下面に形成され、外部と接続するための外部接続端子、上記ベース下層の下面の外部接続端子と上記ベース下層の下面の切欠き部との間に介在する離隔部、を備えており、上記ベース下層の切欠き部の半径をR1とし、上記ベース中層の切欠き部の半径をR2とし、上記ベース上層の切欠き部の半径をR3とし、上記ベース下層の外部接続端子と切欠き部との最短距離をGとし、上記ベース上層の枠部の4隅を除いた4辺のうちの最小幅寸法をWとして形成した場合、R1<R2、R1<G、R3<W、としたことを特徴とする。
【0008】
上記目的を達成するために本発明は、絶縁材料からなる基板部と枠部の積層体で構成され、上層と中層と下層の少なくとも3層以上の積層体により外装部と収納部を形成する直方体形状のベース、
上記ベース上層の枠部上面に接合され、上記ベース上層の枠部による収納部を気密封止する蓋、
上記ベースの収納部に収納される圧電振動素子と電子部品素子、
上記ベース上層と上記ベース中層と上記ベース下層との外周縁の4隅にのみ形成され、同一中心O点を起点とし、ベースの高さ方向に沿って伸長した円弧状の切欠き部、
上記ベース中層の切欠き部に形成され、上記圧電振動素子と電気的に接続される圧電接続端子、
上記ベース下層の下面に形成され、外部と接続するための外部接続端子、
上記ベース下層の下面の外部接続端子と上記ベース下層の下面の切欠き部との間に介在する離隔部、
を備えており、
ベースの平面視外形寸法のうち長辺の寸法が1.6mm以下で短辺の寸法が1.2mm以下であり、
上記ベース下層の4隅の切欠き部の半径をR1とし、
上記ベース中層の4隅の切欠き部の半径をR2とし、
上記ベース上層の4隅の切欠き部の半径をR3とし、
上記ベース下層の4隅の外部接続端子と切欠き部との最短距離をGとし、
上記ベース上層の枠部の4隅を除いた4辺のうちの最小幅寸法をWとした場合、
R1<R2、
R1<G、
R3<W、
R2の寸法を0.085mm以上0.2mm以下とし、
Gの寸法を0.085mm以上0.2mm以下、
としたことを特徴とする。
【0009】
また、上記ベース下層の切欠き部と同じ中心点となる円弧状で、上記ベース下層の下面の外部接続端子と上記ベース下層の下面の切欠き部との間に介在する離隔部が形成されており、上記ベース下層の切欠き部の半径をR1とし、上記ベース中層の切欠き部の半径をR2とし、上記ベース上層の切欠き部の半径をR3とし、上記ベース下層の外部接続端子と切欠き部との最短距離をGとし、上記ベース上層の枠部の4隅を除いた4辺のうちの最小幅寸法をWで形成した場合、R1<R2、R1<G、R3<W、として設定している。
【0010】
このような大小関係を成立させることで、次のような大きく三つの効果を奏することができる。一つ目は、外部接続端子がベース中央寄りに配置されてベース下層の切欠き部との間に形成された離隔部による絶縁領域が確保されるため、外部接続端子で接合されるはんだなどの導電性接合材がベース下層の切欠き部の方へはみ出すのを抑制することができる。
【0011】
二つ目は、圧電接続端子が形成されていないベース下層の切欠き部よりも圧電接続端子が形成されたベース中層の切欠き部をベース中央寄りの位置に引き込んで配置することができるため、外部接続端子で接合されるはんだなどの導電性接合材が仮に外部接続端子からはみ出してベースの中層の方に這い上がったとしても、これらの導電性接合材と圧電接続端子との短絡が避けられる。また、検査プローブや測定用治具の端子を圧電接続端子に接触させやすくできる。
【0012】
三つ目は、ベース上層の枠部の4隅の幅寸法をベース上層の枠部の4辺の幅寸法に対して極端に狭められることがないため、ベース上層の枠部の4隅の領域における機械的な強度を低下させることもなく、蓋を接合するための4隅の領域を狭めることもなくなる。
【0013】
また、上記構成において、上記ベース中層の切欠き部の半径をR2と上記ベース上層の切欠き部の半径をR3との関係は、R3≦R2、として設定することがより望ましい。この場合、ベース上層の切欠き部により、蓋を接合するための領域を狭めることもなくなる。
【0014】
また、上記構成において、外部接続端子は、ベース下層の下面の外周端部に拡幅して形成されていてもよい。この場合、外部接続端子で接合されるはんだなどの導電性接合材の圧電接続端子への短絡を防止しつつ、外部接続端子の面積を拡大することができるので、外部回路基板への接合強度を向上させることができる。
【0015】
また、上記構成において、ベースの平面視外形寸法のうち長辺の寸法が1.6mm以下で短辺の寸法が1.2mm以下であり、かつ上記ベース中層の切欠き部の半径R2の寸法を0.085mm以上0.2mm以下としてもよい。この場合、上述の作用効果に加えて、1.6mm×1.2mm以下に小型化された圧電振動デバイスでは、必要な収納部の容量を確保しながら枠部の幅寸法を確保することが困難となっており、ベースの機械的強度と気密封止性を低下させることなく、検査プローブや測定用治具の端子を圧電接続端子に確実に接触させる切欠き部が得られる。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、パッケージの小型化に対応させながらより信頼性の高い圧電接続端子を有する圧電振動デバイスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態に係る水晶発振器の概略構成を示す断面図である。
図2図1の底面図である。
図3図1のベースのみの平面図である。
図4図2の方形状の点線部分を拡大した図である。
図5】本発明の他の実施形態に係る水晶発振器の概略構成を示す断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。以下に述べる本発明の実施形態において、圧電振動デバイスとして、例えば発振回路を有するIC(電子部品素子)を内蔵した表面実装型水晶発振器を例に挙げて説明する。
【0019】
本発明の実施形態を図1乃至図4を用いて説明する。水晶発振器1は略直方体状のパッケージであり、平面視では略矩形、断面では凹形状となっている。水晶発振器1は、ベース2と、水晶振動素子(圧電振動素子)3と、IC4(電子部品素子)と、蓋5とが主な構成部材となっている。
【0020】
本実施形態では、例えば水晶発振器1の平面視の外形サイズ(ベース2の平面視外形寸法)は縦横が約1.6mm(長辺)×1.2mm(短辺)のもの(タイプA)と、縦横が約1.2mm(長辺)×1mm(短辺)のもの(タイプB)となっており、水晶発振器1は電子部品素子として発振回路を有するIC4を内蔵している。なお、前述の水晶発振器の平面視外形サイズは一例であり、前記外形サイズ以外のパッケージサイズであっても本発明は適用可能である。以下、水晶発振器1を構成する各部材の概略について詳述する。
【0021】
ベース2はセラミック材料(絶縁材料)からなる長辺と短辺を有する平面視略矩形の基板部と枠部の積層体で構成され、上層と中層と下層の少なくとも3層以上の積層体により外装部2bと収納部2aを形成する直方体形状の容器である。
【0022】
本実施形態では、ベース2は、ベース下層となる平板状(平面視略矩形)の基板部20と、当該基板部20の一主面201の外周部200に沿って上方に伸び外周縁210と内周縁211とが平面視略矩形で形成されベース中層となる第1枠部21と、当該第1枠部21の外周部200に沿って上方に伸び外周縁220と内周縁221とが平面視略矩形で形成されベース上層となる第2枠部22(枠部)とが主な構成部材(断面凹形状)との3層構成となっている。
【0023】
そして、これらの基板部20の一主面201による内底面と、第1枠部21の内周縁より内側の内部空間と、第2枠部の内周縁より内側の内部空間とを組み合わせることで、ベースの収納部2aが構成されている。
【0024】
ベース2の内部では、下方面には第1枠部21により構成され、後述するIC4を収納する第1の収納部21aが形成され、当該第1の収納部の底面から上部に突き出し、後述する水晶振動素子3の端部を保持する保持台21bと、前記第1の収納部を介して前記保持台と対向位置する枕部21dが形成されている。また、第1の収納部21aの上方には第2枠部22により構成された第2の収納部22aが形成されている。
【0025】
ベース2の外部では、基板部20と第1枠部21と第2枠部22とは、各外周縁が平面視略同一の矩形で形成され、かつ各外周縁の4隅にのみベースの高さ方向に沿って伸長した円弧状の切欠き部20cと21cと22cが形成されている。このうち、図1図4に示すように、同じ中心点Oにおいて、基板部20は半径R1の円弧状の切欠き部で、第1枠部21は半径R2の円弧状の切欠き部で、第2枠部22は半径R3の円弧状の切欠き部で構成している。
【0026】
つまり、基板部20の外周縁の4隅には半径R1の円弧状の切欠き部20cが形成され、第1枠部21の外周縁の4隅には半径R2の円弧状の切欠き部21cが形成され、第2枠部22の外周縁の4隅には半径R3の円弧状の切欠き部22cが形成されている。
【0027】
これらの基板部20の切欠き部20cと、第1枠部21の切欠き部21cと、第2枠部22の切欠き部22cとは、後述するように積層された際に重畳されることで、ベース2の一体化された切欠き部を構成する。
【0028】
このとき、基板部20の切欠き部の半径R1と第1枠部21の切欠き部の半径R2と第2枠部22の切欠き部の半径R3との関係は、例えば、R1<R2、R3<R2、R1=R3となるように構成している。本形態の一例としては、タイプAのものがR1とR3を0.1mm、R2を0.12mmとし、タイプBのものがR1とR3を0.085mm、R2を0.1mmとしている。
【0029】
なお、本実施形態の構成では第2枠部22の切欠き部の半径R3を第1枠部21の切欠き部の半径R2より小径化しているので、後述する封止部222の形成位置をベース4隅に延出して形成することができる。このため、蓋5を接合するための接合領域を拡大できるので、気密封止性を高めることができる。
【0030】
また、図3に示すように、第2枠部22の内周縁の4隅には、半径R4の円弧状の内側切欠き部22dが形成されている。
【0031】
このとき、第2枠部22の内側切欠き部22dの半径R4と、第2枠部22の切欠き部の半径R3と、第1枠部21の切欠き部の半径R2との関係は、R3<R2≦R4となるように構成してもよい。本形態の一例として、タイプAでは半径R4を0.15mmとし、タイプBでは半径R4を0.1mmとしている。
【0032】
また、図3に示すように、第2枠部22の外周縁と内周縁との4隅を除いた4辺の寸法が一定の幅寸法Wで形成されているため、4辺のうちの最小幅寸法もWとして形成している。このとき、第2枠部22の幅寸法Wと、第2枠部22の切欠き部の半径R3と、第1枠部21の切欠き部の半径R2との関係は、R3<R2≦Wとなるように構成している。本形態の一例としては、タイプAが幅寸法Wを0.15mmとし、タイプBが幅寸法Wを0.14mmとしている。また、第2枠部22の内側切欠き部22dの半径R4と第2枠部22の幅寸法Wとの関係は、R4≦Wとなるように構成することが望ましい。
【0033】
これらの構成により、小型化対応により第1枠部21と第2枠部22の幅が縮小されたとしても、幅に余裕のある4隅にのみ切欠き部20cと21cと22cと内側切欠き部22dとを形成することで、ベース全体としての機械的な強度を弱めることがない。また、第2枠部22の最小幅寸法Wに対して、第2枠部22の切欠き部の半径R3を小さくすることで、枠部の辺幅と4隅の幅のバランスが保たれ、かつ第2枠部22の切欠き部の半径R3を形成する枠部の四隅の領域もゆとりをもたせることができる。結果として、第2枠部22と蓋5との封止領域も必要以上に狭めることもなくなるので、水晶振動素子2の気密封止性能を低下させることもない。
【0034】
また、第2枠部22の幅寸法を短辺側と長辺側で区別することなく一定幅のWとしており、第2枠部によって得られる封止領域の幅寸法の均一化と第2枠部の外周強度の均一化が行える。さらに、第2枠部22の内側切欠き部22dの半径R4に対して、第2枠部22の4辺の幅寸法Wを同寸法以上にすることで、枠部の辺幅と4隅の幅のバランスが保たれ、かつ第2枠部22の切欠き部の半径R1を形成する枠部の四隅の領域もゆとりをもたせることができる。
【0035】
ベース2の下層である基板部20の下面には、図2に示すように、4隅の近傍に外部と接続するための外部接続端子GT1,GT2,GT3,GT4が形成されている。この外部接続端子GT1,GT2,GT3,GT4と切欠き部20cとの間には、当該各外部接続端子と当該各切欠き部との最短距離をGとした離隔部Z1,Z2,Z3,Z4を有している。
【0036】
このとき、上記最短距離Gと、基板部20の切欠き部の半径R1と、第1枠部21の切欠き部の半径R2との関係は、例えば、R1<G、R2=Gとなるように構成している。本形態の一例としては、タイプAのものがR1を0.1mm、R2とGを0.12mmとし、タイプBのものがR1を0.085mm、R2とGを0.1mmとしている。
【0037】
なお、本形態の外部接続端子GT1,GT2,GT3,GT4では、図2に示すように、基板部20の下面の外周端部に拡幅してもよい。この構成により、外部接続端子で接合されるはんだなどの導電性接合材の後述する圧電接続端子AT1,AT2への短絡を防止しつつ、外部接続端子GT1,GT2,GT3,GT4の面積を拡大することができるので、外部回路基板への接合強度を向上させることができる。
【0038】
以上から本発明では、上記各層の切欠き部R1~R3と外部接続端子と切欠き部との最短距離Gと第2枠部22の幅寸法Wとの関係が、R1<G、R1<R2、R3<W、として設定していることに特徴がある。このような大小関係を成立させることで、外部接続端子GT1,GT2,GT3,GT4がベース2の中央寄りに配置されて基板部20の切欠き部20cとの間に形成された離隔部Zによる絶縁領域が確保されるため、外部接続端子GT1,GT2,GT3,GT4で接合されるはんだなどの導電性接合材が基板部20の切欠き部20cの方へはみ出すのを抑制することができる。
【0039】
また、後述する圧電接続端子AT1,AT2が形成されていない基板部20の切欠き部20cよりも後述する圧電接続端子AT1,AT2が形成された第1枠部21の切欠き部21cをベース2の中央寄りの位置に引き込んで配置することができる。このため、外部接続端子GT1,GT2,GT3,GT4で接合されるはんだなどの導電性接合材が仮に外部接続端子GT1,GT2,GT3,GT4からはみ出して第1枠部21の方に這い上がったとしても、これらの導電性接合材と後述する圧電接続端子AT1,AT2との短絡が避けられる。また、検査プローブや測定用治具の端子を圧電接続端子AT1,AT2に接触させやすくできる。
【0040】
ベース2の下層である基板部20の上面(第1の収納部21aの内底面)には、図3に示すように、後述する集積回路素子2と接続される複数の配線パターンH21~H26が並んで形成されている。この配線パターンのうちH21~H24は、下部に貫通接続する導電ビアVを介して、各々が外部接続端子GT1,GT2,GT3,GT4に電気的に導出されている。
【0041】
ベース2の中層である第1枠部21の上面(第2の収納部22aの底面)には、後述する水晶振動素子3を搭載する保持台21bが形成されており、その上面には後述する水晶振動素子3と接続される第2の配線パターンH27,H28とが形成されている。保持台21bは第1枠部21の一部が収納部2a(第1の収納部21a)の方に突出することで構成されている。これら第2の配線パターンH27,H28は、後述する切欠き部21c1,21c2の上部にのみ形成された圧電接続端子AT1,AT2を介して、配線パターンH25,H26に電気的に導出されている。
【0042】
図1図2に示すように、ベース2の中層である第1枠部21の外周縁の4隅の切欠き部21cのうち、一部の切欠き部21c1,21c2の上部にのみ、後述する水晶振動素子3とのみ電気的に接続される圧電接続端子AT1,AT2が形成されている。圧電接続端子AT1は第2の配線パターンH27から電気的に導出されており、圧電接続端子AT2は第2の配線パターンH28から電気的に導出されている。このため、圧電接続端子AT1,AT2に対して、圧電振動素子特性装置のコンタクトプローブを接触することで後述する水晶振動素子3単独の特性を測定することができる。
【0043】
なお、ベース2の平面視の外形サイズが1.6mm×1.2mm以下に小型化されたものにおいては、圧電接続端子AT1,AT2が形成される第1枠部21の切欠き部の半径R2は、0.085mm~0.2mmに設定することが望ましい。これは、検査プローブや測定用治具の端子などをスムーズかつ確実に接触させながら、ベースの機械的強度を低下させない寸法範囲となる。つまり、0.085mmより小さいと上記端子とのコンタクトが取れにくくなり、0.2mmより大きいと第1枠部21の4隅の幅が小さくなり機械的強度が弱くなりやすく、気密性も確保しにくくなる。
【0044】
また、第2枠部22の切欠き部の半径R3については、0.05mm以上の大きさで形成することで、ベースのコーナー部における欠けの抑制や蓋との接合時の応力を緩和の面で望ましい構成となる。また、ベース2の平面視の外形サイズが1.6mm×1.2mm以下の小型化されたものにおいては、第2枠部22の4辺の最小幅寸法Wについては、収納部の容積確保の面と機械的強度確保の面、封止領域確保の面などを考慮して、0.085mm~0.2mmに設定することが望ましい。
【0045】
なお、圧電接続端子AT1,AT2は、ベース2の中層である第1枠部21の切欠き部21c1,21c2の上面にのみ形成されており、この切欠き部に上下に隣接するベース2の下層である基板部20の切欠き部20cの上面とベース2の上層である第2枠部22の切欠き部22cの上面には形成されないように構成している。
【0046】
ベース2の上層である第2枠部22の上面には、後述する蓋5を接合するための封止部222が形成されている。本形態では封止部222をメタライズにより構成しており、この封止部222と後述する蓋5とは金属ろう材など接合材によって接合される。
【0047】
以上のように構成された基板部20と第1枠部21と第2枠部22の各々は、セラミックグリーンシート(アルミナ)となっている。外部接続端子GT1~GT4、配線パターンH21~H26、第2の配線パターンH27,H28、圧電接続端子AT1,AT2、封止部222の各々は、タングステンあるいはモリブデン等によるメタライズ層の上面にニッケルメッキ層、金メッキ層の各層が形成された構成である。これら3つのシートが積層された状態で焼成によって一体成形されることで、ベース2を構成している。
【0048】
なお、これらの各シート(基板部のシート・第1枠部のシート・第2枠部のシート)については、積層間の内部配線の延出形態に応じて単層だけでなく複数層に分けて形成してもよい。より具体的には、第1枠部21と第2枠部22の間に他の枠体に相当するシートを1層以上追加し、4層以上の積層体からなるベースとして構成してもよい。
【0049】
第1の収納部21aの内底面に搭載されるIC4は、C-MOSなどのインバータ増幅器(発振用増幅器)を内蔵したワンチップの集積回路素子であり、後述する水晶振動素子3とともに発振回路を構成する。IC4の底面側には複数のパッドが形成されている。IC4は、例えば金などの金属バンプCを介して、IC4の複数のパッドとベース2に形成された配線パターンH21~H26とを例えばFCBにより接続される。本形態では、金属バンプにより接合した構成を例にしているが、金属ワイヤバンプを用いてもよい。
【0050】
なお、本形態で用いられるIC4は、水晶振動素子3の周波数信号を増幅する発振回路部のみを具備したいわゆるSPXO用のICに限らず、周波数調整回路を付加機能として具備されたいわゆるVCXO用のICであってもよく、温度補償機能などが付加機能として具備されたいわゆるTCXO用のICでもよい。また、これらを組みあわされたICであってもよい。IC4としては、CMOS以外のバイポーラ、バイCMOSなどであってもよい。
【0051】
IC4の上方で、収納部2aの同一空間である第2の収納部22aには所定の間隔を持って水晶振動素子3が搭載される。水晶振動素子3は例えば矩形状のATカット水晶振動板であり、その表裏面には励振電極と引出電極が各々形成されている。これらの電極は、例えば、クロムまたはニッケルの下地電極層と、銀または金の中間電極層と、クロムまたはニッケルの上部電極層とから構成された3層の積層薄膜、またはクロムやニッケルの下地電極層と、銀または金の上部電極層とから構成された2層の積層薄膜である。これら各電極は真空蒸着法やスパッタリング法等の薄膜形成手段により形成することができる。
【0052】
水晶振動素子3とベース2との接合は、例えばペースト状であり銀フィラー等の金属微小片を含有するシリコーン系の導電樹脂接着剤(導電性接合材)Sを用いている。図1に示すように、導電性樹脂接着剤Sは、第2の配線パターンH27,H28のうちの一部の上面に塗布されるとともに、導電性樹脂接着剤Sを水晶振動素子3と保持台21bの間に介在させ硬化させることで、お互いを電気的機械的に接合している。以上により、水晶振動素子3の一端部をベース2の第1の収納部21aの底面から隙間を設けながら、水晶振動素子3の対向する他端部をベースの保持台21bに接合して、片持ち保持される。なお、本形態では、シリコーン系の導電樹脂接着剤により接合した構成を例にしているが、この導電性接合材として他の導電性樹脂接着剤や金属バンプ、金属メッキバンプなどのバンプ材料、ろう材を用いてもよい。
【0053】
ベース2を気密封止する蓋5は、例えば、コバール等からなるコア材に図示しない金属ろう材(封止材)が形成された構成である。この金属ろう材からなる接合材がベース2の封止部222と接合される構成となる。金属製の蓋5の平面視外形はセラミックベースの当該外形とほぼ同じであるか、若干小さい構成となっている。
【0054】
収納部2aにIC4と水晶振動素子3が格納されたベース2の封止部222に対して金属製の蓋5にて被覆し、金属製の蓋5の接合材とベースの封止部222を溶融硬化させ、気密封止を行うことで表面実装型の水晶発振器1の完成となる。
【0055】
このように構成された表面実装型の水晶発振器1は、図示しない回路基板の配線パターンに対してはんだなどの導電性接合材を用いて接合される。
【0056】
本発明の実施形態では基板部20の一主面側(上方)のみに枠部を形成した断面凹形状のベースを例にして説明しているが、図5に示すように、2層の基板部23(ベース中層1)と基板部24(ベース中層2)の一主面側(上方)と他主面側(下方)の両面に上枠部25と下枠部26を形成した断面略H型のベースのものに適用してもよい。例えば、図5では、ベースの中層となる基板部23と基板部24との円弧状の切欠き部(23c,24c)の半径R2と離隔部Zの最短距離Gとを同じ寸法とし、ベースの上層となる上枠部25の円弧状の切欠き部(25c)の半径R3とベースの下層となる下枠部26の円弧状の切欠き部(26c)の半径R1とを同じ寸法とするとともに、(R3=R1)<(R2=G)となるように構成している。
【0057】
また、上枠部25の外周縁と内周縁との4隅を除いた4辺の寸法が一定の幅寸法Wで形成されているため、4辺のうちの最小幅寸法もWとして形成している。このとき、上枠部25の幅寸法Wと、上枠部25の切欠き部の半径R3と、基板部23と基板部24との切欠き部の半径R2との関係は、R3<R2≦Wとなるように構成している。
【0058】
圧電接続端子AT1,AT2は基板部23,24の切欠き部23c,24cの一部に形成している。
【0059】
なお、本形態では、上記各層の切欠き部R1~R3と外部接続端子と切欠き部との最短距離Gと第2枠部22の幅寸法Wとの関係が、R1<G、R1<R2、R3<W、として設定していることに特徴があるため、これらの関係を崩すことがなければ、本形態に限らず、切欠き部の一部の半径や最短距離寸法などを異ならせてもよい。
【0060】
また、上記した本実施例では、圧電振動素子としてATカット水晶振動板を用いているが、これに限定されるものでなく、音叉型水晶振動片であってもよい。また、圧電振動素子として水晶を材料としているが、これに限定されるものではなく、圧電セラミックスやLiNbO3等の圧電単結晶材料を用いてもよい。すなわち、任意の圧電振動素子が適用可能である。また、圧電振動素子を片持ち保持するものを例にしているが、圧電振動素子の両端を保持する構成であってもよい。
【0061】
また、上述した本発明の実施形態では電子部品素子としてICを使用した水晶発振器(圧電発振器)を例にしているが、サーミスタやダイオードなどの感温素子やその他の機能電子部品素子を使用した機能部品付きの水晶振動子(圧電振動子)にも本発明は適用可能である。
【0062】
また、本実施例では、金属ろう材による封止を例にしたが、これに限定されるものではなく、シーム封止、ビーム封止(例えば、レーザビーム、電子ビーム)やガラス封止等でも適用することができる。
【0063】
本発明は、その精神または主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形で実施することができる。そのため、上述の実施の形態はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0064】
圧電発振器の量産に適用できる。
【符号の説明】
【0065】
1 水晶発振器(圧電振動デバイス)
2 ベース
3 水晶振動素子(圧電振動素子)
4 IC
5 蓋
C 金属バンプ
S 導電性樹脂接着剤
図1
図2
図3
図4
図5