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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-22
(45)【発行日】2022-03-30
(54)【発明の名称】化粧材
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/00 20060101AFI20220323BHJP
   B32B 27/20 20060101ALI20220323BHJP
   E04F 13/07 20060101ALI20220323BHJP
   E04F 13/08 20060101ALI20220323BHJP
   B32B 33/00 20060101ALI20220323BHJP
【FI】
B32B27/00 E
B32B27/20 A
E04F13/07 B
E04F13/08 E
B32B33/00
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018549085
(86)(22)【出願日】2017-11-02
(86)【国際出願番号】 JP2017039824
(87)【国際公開番号】W WO2018084267
(87)【国際公開日】2018-05-11
【審査請求日】2020-10-21
(31)【優先権主張番号】P 2016215189
(32)【優先日】2016-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】東川 栄一
【審査官】弘實 由美子
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-300595(JP,A)
【文献】特開2001-315286(JP,A)
【文献】特開2004-90319(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
E04F 13/07
E04F 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に設けられた第1の艶調整層と、前記第1の艶調整層上に部分的に設けられ、前記第1の艶調整層の艶と異なる艶を有する第2の艶調整層とを備え、
前記第1の艶調整層と前記第2の艶調整層とのうち、少なくとも相対的に艶の低い艶調整層が艶消し剤を含み、前記相対的に艶の低い艶調整層に含まれる艶消し剤の平均粒径が6.0μm以上15.0μm以下であり、
前記相対的に艶の低い艶調整層の層厚は、1μm以上18μm以下であり且つ前記相対的に艶の低い艶調整層に含まれる艶消し剤の粒径の1.2倍以下の層厚であり、
前記艶消し剤は、1次粒子が2次凝集して形成された粒子であることを特徴とする化粧材。
【請求項2】
前記相対的に艶の低い艶調整層の層厚は、前記相対的に艶の低い艶調整層に含まれる艶消し剤の粒径の1/3以上の層厚であることを特徴とする請求項1に記載の化粧材。
【請求項3】
前記艶消し剤は、無機材料からなることを特徴とする請求項1又は2に記載の化粧材。
【請求項4】
前記無機材料は、シリカまたはガラスであることを特徴とする請求項3に記載の化粧材。
【請求項5】
前記基材と前記第1の艶調整層との間に設けられた柄インキ層を更に備え、
前記第2の艶調整層は、前記柄インキ層と重なる部分に形成されて、前記柄インキ層の柄模様と前記第2の艶調整層の艶とが同調していることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の化粧材。
【請求項6】
前記基材と前記第1の艶調整層との間に設けられた柄インキ層を更に備え、
前記第1の艶調整層は、前記基材の前記第1の艶調整層側の面の全面を被覆しており、
前記第2の艶調整層は、前記柄インキ層の直上以外の部分と重なる部分に形成されて、前記柄インキ層の柄模様と前記第1の艶調整層の艶とが同調していることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の化粧材。
【請求項7】
基材上に設けられた第1の艶調整層と、前記第1の艶調整層上に部分的に設けられ、前記第1の艶調整層の艶と異なる艶を有する第2の艶調整層とを備え、
前記第1の艶調整層と前記第2の艶調整層の両方が艶消し剤を含み、前記艶消し剤の平均粒径が6.0μm以上15.0μm以下であり、
前記第1の艶調整層と前記第2の艶調整層のうち、相対的に艶の低い艶調整層の層厚は、1μm以上18μm以下であり且つ前記相対的に艶の低い艶調整層に含まれる艶消し剤の粒径の1.2倍以下の層厚であり、
前記第1の艶調整層と前記第2の艶調整層の両方に含まれる前記艶消し剤の平均粒径は、互いに同じであり、
前記第1の艶調整層に含まれる前記艶消し剤の含有量は、前記第2の艶調整層に含まれる前記艶消し剤の含有量よりも多いことを特徴とする化粧材。
【請求項8】
前記艶消し剤の平均粒径は、6.4μm以上10.0μm以下であることを特徴とする請求項7に記載の化粧材。
【請求項9】
前記艶消し剤は、1次粒子が2次凝集して形成されたシリカ粒子であることを特徴とする請求項1~8のいずれか1項に記載の化粧材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の内外装、建具、家具等の表面化粧等に使用するための化粧材に関する。さらに詳しくは、表面の艶の差により凹凸を立体的に表現した化粧材に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧材は、建築物の内外装、建具、家具等の表面化粧等に用いられる。このような用途の化粧材は、例えば、木目柄や石目柄等の柄模様を有する。また、単に木目柄や石目柄等の柄模様を平面的に表現するだけでなく、天然の木材や石材が持つ表面の凹凸感を併せて立体的に表現した化粧材も、高級感が所望される用途を中心に広く用いられている。
化粧材の表面に平面的な柄模様と併せて立体的な凹凸感を表現する手法としては、従来、様々な方法が考案され、目的に応じて使い分けられている。なかでも、化粧材の表面に実際に凹凸を形成するのではなく、凹部または凸部として表現したい部分の表面の艶状態(具体的には光沢度)を異ならせることによって、人間の目の錯覚を利用して視覚的に凹凸の立体感を表現する手法がある。この手法によれば、実際には凹凸形状が存在しなくても、人間の目には、相対的に艶の高い部分は凸部、艶の低い部分は凹部として認識される。
【0003】
具体的には、例えば、凹み模様を含む適宜模様が印刷された基材の印刷面の全面に、艶の低い透明または半透明の合成塗料層を形成した後、形成した合成塗料層の表面の凹み模様に対応する部分を除く部分に艶の高い透明または半透明の合成塗料層を形成する。勿論、艶の高低の関係を逆転させれば、凹凸の関係を逆転させた化粧材を得ることができる。
このような手法によれば、特殊な薬剤等を必要とすることなく、艶の異なる2種類の塗料を用意するだけで、いかなる基材に対しても、容易に立体的な凹凸感を賦与することができる。しかも、艶の異なる合成塗料層の形成は、柄模様(柄インキ層)の形成に引き続きグラビア印刷法等の慣用の印刷法で行うことができるので、特殊設備は一切不要で生産能率も高く、柄模様との同調も容易である。また、合成塗料層の厚みは表現しようとする凹凸の高低差と比較すれば遥かに薄く済むので、樹脂の使用量を削減できるほか、可撓性の面でも有利であり、折り曲げ加工適性に優れた化粧材を容易に実現できる。また、化粧材の表面に大きな凹凸が無いので、凹部に汚染物が留まることも無いという利点もある。
【0004】
かかる多くの利点に鑑み、この手法を採用した化粧材は、既に使用されているが、高級感の点では、まだ実際に凹凸を形成する手法を凌ぐには至っていないのが実情である。その理由を考察するに、例えば、機械式エンボス法によれば、天然木の導管等の凹凸形状を、導管等の断面形状まで含めて忠実に再現することが可能である。これに対し、艶の異なる2種類の塗料を使用した上述の手法では、表面の艶の段階は2種類であるから、表現できる凹凸の段階も2種類となる。したがって、天然木の導管等のように、深さ(高さ)が連続的に変化した斜面部を有する凹凸形状を表現することが難しいという問題点がある。
そこで、近年、深さが連続的に変化した斜面部を有する凹凸形状を表現する合成塗料層(以下、「艶調整層」とも呼ぶ)を設けることによって、天然木の導管等のように、斜面部を有する凹凸形状を表現可能な化粧材が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第3629964号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、艶調整層の艶の調整方法としては、バインダーとしての透明樹脂中に艶消し剤を添加する方法が一般的である。艶消し剤としては、無機材料または有機材料の微粒子が主に用いられており、特に、無機材料の微粒子(特にシリカ微粒子)は艶消し能が高く、広く用いられている。艶消し剤を添加することにより、艶消し剤が艶調整層の表面に凹凸を賦与し、この凹凸が光を散乱することで艶消し効果が得られる。これら艶消し剤の種類や添加量を調整することで、求められる艶を自在に作り出すことができる。
しかしながら、艶消し剤を用いた艶調整層を用いた場合、外部の物体の接触による表面の凸部の削れや、艶消し剤の脱落により、耐傷性が悪化することが知られている。そのため、例えば、家具の天板や棚板に求められる高度な耐傷性を満足することは困難であった。
【0007】
本発明は、上記のような点に着目したもので、耐傷性と意匠性とに優れた化粧材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の発明者等は、鋭意検討の結果、艶調整層の艶消し剤の平均粒径を6.0μm以上15.0μm以下の範囲とすることで、艶調整層が耐傷性と意匠性とに優れたものとなることを見出した。そして、相対的に艶の低い艶調整層、つまり、耐傷性が弱くなりやすい艶調整層が含有する艶消し剤の平均粒径を、このような範囲とすることによって、化粧材全体の耐傷性と意匠性とを向上でき、耐傷性と意匠性とに優れた化粧材を提供できることを見出した。
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の一態様は、基材上に設けられた第1の艶調整層と、前記第1の艶調整層上に部分的に設けられ、前記第1の艶調整層の艶と異なる艶を有する第2の艶調整層とを備え、前記第1の艶調整層と前記第2の艶調整層とのうち、少なくとも相対的に艶の低い艶調整層が艶消し剤を含み、前記相対的に艶の低い艶調整層に含まれる艶消し剤の平均粒径が6.0μm以上15.0μm以下であり、前記相対的に艶の低い艶調整層の層厚は、1μm以上18μm以下であり且つ前記相対的に艶の低い艶調整層に含まれる艶消し剤の粒径の1.2倍以下の層厚であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様によれば、相対的に艶の低い艶調整層が含有する艶消し剤の平均粒径の範囲を最適な範囲とすることで、耐傷性と意匠性とに優れた化粧材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態に係る化粧材を示す断面図である。
図2】変形例の化粧材を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施形態に係る化粧材1について、図面を参照して説明する。
ここで、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なる。また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための構成を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状および構造等を下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0013】
(構成)
図1に示すように、実施形態に係る化粧材1は、基材2上に設けられた第1の艶調整層5と、第1の艶調整層5上に部分的に設けられ、第1の艶調整層5の艶と異なる艶を有する第2の艶調整層6とを備えている。そして、これら第1、第2の艶調整層5、6のうちの相対的に艶の低い艶調整層は、平均粒径が6.0μm以上15.0μm以下の艶消し剤を含むことが重要である。これにより、相対的に艶の低い艶調整層の耐傷性を向上することができるため、意匠性と耐傷性とに優れた化粧材1を提供することができる。
なお、化粧材1は、基材2と第1の艶調整層5との間に、後述するように下地ベタインキ層3、柄インキ層4および透明樹脂層(不図示)等、他の層が配置する構成であってもよい。
【0014】
(基材)
基材2は、化粧材1の原紙として用いられるものであれば、特に限定されるものではない。基材2には、例えば、紙類、織布や不織布、合成樹脂系基材、木質系基材、無機系基材、金属系基材、またはこれらの複合材、積層体等、従来公知の材料を用いることができる。紙類としては、例えば薄葉紙、樹脂混抄紙、チタン紙、樹脂含浸紙、難燃紙、無機質紙等が挙げられる。織布もしくは不織布は、天然繊維または合成繊維からなる。合成樹脂系基材は、例えばホモまたはランダムポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂等のポリオレフィン樹脂、共重合ポリエステル樹脂、アモルファス状態の結晶性ポリエステル樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリブチレン樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、フッ素系樹脂等からなる。木質系基材としては、例えば木材単板、突板、合板、集成材、パーティクルボード、中密度繊維板等が挙げられる。無機系基材としては、例えば石膏板、セメント板、珪酸カルシウム板、陶磁器板等が挙げられる。金属系基材としては、例えば、鉄、銅、アルミニウム、ステンレス等が挙げられる。
また、基材2の形状としては、フィルム状、シート状、板状、異型成型体等を用いることができる。
【0015】
(下地ベタインキ層)
下地ベタインキ層3は、基材2と柄インキ層4との間に設けられ、求められる意匠に応じて、基材2の第1の艶調整層5側の面の全面を被覆する層である。また、下地ベタインキ層3は、隠蔽性等、必要に応じて2層以上の多層としてもよい。さらに、下地ベタインキ層3は、求められる意匠を表現するために必要な分版の数だけ積層して形成してもよい。このように、下地ベタインキ層3は、柄インキ層4との組合せによって求められる意匠、つまり、表現したい意匠に応じて様々な態様を取り得るが、特に限定されるものではない。
【0016】
下地ベタインキ層3の構成材料は、特に限定されるものではない。例えば、マトリックスと、染料、顔料等の着色剤とを溶剤中に溶解、分散してなる印刷インキやコーティング剤を用いることができる。マトリックスとしては、例えば、油性の硝化綿樹脂、2液ウレタン樹脂、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリビニル系樹脂、アルキド樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、ゴム系樹脂等の各種合成樹脂類、またはこれらの混合物、共重合体等を用いることができる。また、着色剤としては、例えば、カーボンブラック、チタン白、亜鉛華、弁柄、黄鉛、紺青、カドミウムレッド等の無機顔料や、アゾ顔料、レーキ顔料、アントラキノン顔料、フタロシアニン顔料、イソインドリノン顔料、ジオキサジン顔料等の有機顔料、またはこれらの混合物を用いることができる。また、溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、水等またはこれらの混合物等を用いることができる。
【0017】
また、下地ベタインキ層3には、各種機能を賦与するために、体質顔料、可塑剤、分散剤、界面活性剤、粘着賦与剤、接着助剤、乾燥剤、硬化剤、硬化促進剤および硬化遅延剤等の機能性添加剤を添加してもよい。
ここで、下地ベタインキ層3、柄インキ層4および第1、第2の艶調整層5、6の各層は、グラビア印刷法、オフセット印刷法、スクリーン印刷法、静電印刷法、インクジェット印刷法等の各種印刷方法によって形成することができる。また、下地ベタインキ層3および第1の艶調整層5は、基材2の第1の艶調整層5側の面の全面を被覆しているため、ロールコート法、ナイフコート法、マイクログラビアコート法、ダイコート法等の各種コーティング方法によっても形成できる。これらの印刷方法、コーティング方法は、形成する層によって、形成する方法を別々に選択してもよいし、同じ形成方法を選択して一括加工してもよい。
【0018】
(柄インキ層)
柄インキ層4は、基材2と第1の艶調整層5の間に設けられ、化粧材1に柄模様を付加するための層である。柄模様としては、木目模様、石目模様、砂目模様、タイル貼模様、煉瓦積模様、布目模様、皮絞模様、幾何学図形等を用いることができる。図1では、柄インキ層4の形成箇所は、第2の艶調整層6を形成する位置の直下の部分のみとなっている。すなわち、第2の艶調整層6が、柄インキ層4と重なる部分にのみ形成された構成となっている。すなわち、柄インキ層4の柄模様は、第2の艶調整層6の艶と同調している。これにより、本実施形態の化粧材1は、柄インキ層4による意匠性に、第2の艶調整層6による意匠性を付加することができる。それゆえ、本実施形態の化粧材1は、天然木や天然石に近い高級感のある意匠表現を有した化粧材とすることができる。
【0019】
なお、本実施形態では、第2の艶調整層6が柄インキ層4と重なる部分にのみ形成されている例、つまり、柄インキ層4の直上の部分にのみ形成されている例を示したが、他の構成を採用することもできる。第2の艶調整層6は、例えば、柄インキ層4と重なる部分であればよく、柄インキ層4の直上の部分に加え、直上以外の部分の一部にも形成する構成としてもよい。
柄インキ層4の構成材料は、特に限定されるものではない。例えば、下地ベタインキ層3と同様に、マトリックスと、染料、顔料等の着色剤とを溶剤中に溶解、分散してなる印刷インキやコーティング剤を用いることができる。また、柄インキ層4には、各種機能を賦与するために、体質顔料、可塑剤、分散剤、界面活性剤、粘着賦与剤、接着助剤、乾燥剤、硬化剤、硬化促進剤、および硬化遅延剤等の機能性添加剤を添加してもよい。
【0020】
(第1、第2の艶調整層)
第1の艶調整層5は、下地ベタインキ層3および柄インキ層4の上に設けられ、化粧材1表面の艶状態を調整するための層である。第1の艶調整層5の形成箇所は、下地ベタインキ層3および柄インキ層4の面の全面となっており、第1の艶調整層5は、基材2における化粧材1の表面側の面の全面を被覆している。また、第2の艶調整層6は、第1の艶調整層5の上に設けられる。第2の艶調整層6は、第1の艶調整層5の艶と異なる艶を有し、化粧材1表面の艶状態を調整するための層である。第2の艶調整層6の形成箇所は、第1の艶調整層5における化粧材1の表面側の面の一部となっている。そして、化粧材1は、これら第1、第2の艶調整層5、6の艶の差により凹凸形状が表現可能となっている。
【0021】
また、第1、第2の艶調整層5、6のうち少なくとも相対的に艶の低い艶調整層は、艶消し剤を含む。その艶消し剤の含有量は、樹脂組成物100質量部に対して5質量部以上40質量部以下が好ましい。さらに好ましくは、10質量部以上30質量部以下とする。5質量部未満である場合には、艶消し効果が不足するため、相対的に艶の高い艶調整層との艶の差が小さくなり、凹凸感が不足してしまう。また、40質量部より大きい場合には、艶消し剤の量に対して樹脂組成物が相対的に不足するため、艶消し剤の脱落や、脱落による耐傷性の低下を招いてしまい、化粧材1に求められる耐久性が大きく損なわれてしまう。
【0022】
相対的に艶の高い艶調整層においても、任意の艶消し剤を含有することが可能である。これらは最終的な凹凸感や意匠性に応じて適宜調整されるべきものである。また、第1、第2の艶調整層5、6に用いられる艶消し剤および樹脂組成物は、同じでも異なっていてもよい。これらは凹凸感および各種要求特性から自由に選択することができる。
少なくとも相対的に艶の低い艶調整層に含有する艶消し剤の平均粒径は、6.0μm以上15.0μm以下である。平均粒径が6.0μm未満である場合には、平均粒径が小さすぎるため、外部の物体が第1、第2の艶調整層5、6の樹脂部分に接触しやすくなるので、耐傷性が十分に得られないおそれがある。一方、平均粒径が15.0μmより大きい場合には、平均粒径が大きすぎるため、第1、第2の艶調整層5、6表面からの艶消し剤の露出量が大きくなり、艶消し剤が脱落しやすくなるので、耐傷性が十分に得られないおそれがある。また、平均粒径が15.0μmより大きい場合には、第1、第2の艶調整層5、6表面での光の散乱が大きく、第1、第2の艶調整層5、6の白濁を招いたり、目視での粒子感が大きくなったりし、艶の差による凹凸感が損なわれてしまうため、意匠性が十分に得られないおそれがある。
【0023】
ここで、粒径は、用いる艶消し剤の粒度分布測定により得られる値としてもよいし、得られた化粧材1の断面観察から艶消し剤の粒径を実測してもよい。また、艶消し剤の粒子形状が球状で無い場合には、楕円体状とみなし長径と短径との平均値を粒径とすればよい。
艶消し剤としては、市販されている公知の艶消し剤等を用いることができる。艶消し剤としては、例えば、シリカ、ガラス、アルミナ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、アクリル等の無機材料からなる微粒子が挙げられる。第1、第2の艶調整層5、6は、透明性が高いことが要求されるため、なかでも、透明性の高いシリカ、ガラス、アクリル等の微粒子を用いることが望ましい。特に、シリカ微粒子のなかでも、中実の真球状粒子ではなく、微細な1次粒子が2次凝集してなる嵩密度の低い艶消し剤は添加量に対する艶消し効果が高い。それゆえ、このような艶消し剤を用いることで、より艶の低い艶調整層を形成できる。これにより、第1の艶調整層5と第2の艶調整層6の艶の差を大きくすることができ、得られる凹凸感を大きくすることができる。これにより、より深みのある優れた意匠表現が可能となる。
【0024】
第1、第2の艶調整層5、6を構成する樹脂部分(樹脂組成物)としては、ポリウレタン系、アクリルシリコン系、フッ素系、エポキシ系、ビニル系、ポリエステル系、メラミン系、アミノアルキッド系、尿素系等を用いることができる。また、樹脂組成物の形態は、水性、エマルジョン、溶剤系等、特に限定されるものではない。さらに、樹脂組成物の硬化法としては、一液タイプ、二液タイプ、紫外線硬化法等を用いることができる。
樹脂組成物としては、作業性、価格、樹脂自体の凝集力等の観点から、イソシアネートを用いたウレタン系のものが好適である。イソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート(TDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、リジンジイソシアネート(LDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、メチルヘキサンジイソシアネート(HTDI)、ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン(HXDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI)等の誘導体であるアダクト体、ビュレット体、イソシアヌレート体等の硬化剤を用いることができる。
【0025】
これらのうち、耐候性が求められる用途では、直鎖状の分子構造を有するヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)を用いることが好ましい。また、表面硬度が求められる用途では、イソホロンジイソシアネート(IPDI)を用いることが好ましい。さらに、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)とイソホロンジイソシアネート(IPDI)との利点を組み合わせるべく、混合して用いることも有効である。この他にも、表面硬度の向上を図る場合には、紫外線や電子線等の活性エネルギー線で硬化する樹脂を用いることが好ましい。なお、これらの樹脂は、相互に組み合わせて用いることが可能である。
【0026】
また、第1、第2の艶調整層5、6の層厚は、任意の数値を選択できる。ただし、艶消し剤を含有する場合には、前述の通り、艶消し剤の平均粒径は6.0μm以上15.0μm以下が好ましいため、第1、第2の艶調整層5、6の層厚は1μm以上18μm以下が好ましく、さらに、艶消し剤の粒径の1.2倍以下の層厚とすることが好ましい。これにより、艶消し剤の一部が表面から露出した状態とすることができる。層厚は、艶消し剤の間の樹脂部分を複数箇所で測長し、得られた値を平均化することで求めることができる。また、艶消し剤の粒径の1.2倍以下の層厚を決定する際の当該粒径は、例えば、含有した艶消し剤の平均粒径を採用する。なお、実際に、粒径の1.2倍以下の層厚になっているかの検証は、例えば艶調整層を切断した断面に存在する複数(例えば100点以上)の艶消し剤の粒径を測定し、その平均値で検証すれば良い。
【0027】
なお、第1、第2の艶調整層5、6の層厚は、艶消し剤の脱落の防止を考慮すると、艶消し剤を含有する場合には艶消し剤の粒径の1/3以上とするのが好ましい。艶消し剤の粒径の1/3以上の層厚を決定する際の当該粒径は、例えば、含有した艶消し剤の平均粒径を採用する。なお、実際に、粒径の1/3以上の層厚になっているかの検証は、例えば艶調整層を切断した断面に存在する複数(例えば100点以上)の艶消し剤の粒径を測定し、その平均値で検証すれば良い。
また、第1、第2の艶調整層5、6は、化粧材1の最表面となる層のため、化粧材1として必要な耐摩耗性、耐擦傷性、耐溶剤性、耐汚染性等の表面物性が求められる。なかでも、耐摩耗性や耐擦傷性は層厚による影響があり、層厚が厚い方が有利となる。したがって、艶消し剤を含有する場合には、第1、第2の艶調整層5、6のさらに好ましい層厚は2μm以上12μm以下となる。1μm未満の場合、耐摩耗性および耐擦傷性が大幅に悪くなるため、化粧材1としての用途が限られる。また、18μmより大きい場合、艶消し剤を含有する場合には第1、第2の艶調整層5、6自体の可撓性が悪くなるため、化粧材1としての加工性が悪化する。
【0028】
第1、第2の艶調整層5、6の層厚の調整方法としては、例えば、前述の印刷方法およびコーティング方法において塗布量を調整する方法を用いることができる。塗布量は、各種印刷方法およびコーティング方法において、基材2に第1、第2の艶調整層5、6を形成したものと、形成しないものとを作製し、それらの質量差から算出することができる。
また、第1、第2の艶調整層5、6には、各種機能を賦与するために、抗菌剤、防カビ剤等の機能性添加剤を添加してもよい。また、必要に応じて紫外線吸収剤、光安定化剤を添加してもよい。紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系、ベンゾエート系、ベンゾフェノン系、トリアジン系を用いることができる。また、光安定化剤としては、ヒンダードアミン系を用いることができる。さらに、汚染防止性能やセロテープ(登録商標)離型性が求められる場合には、シリコーン骨格を持つ離型剤を添加することができる。この場合、離型剤の種類は特に限定されないが、樹脂組成物に対して反応性を有する末端官能基を持つシリコーン離型剤を用いることで、汚染防止性能やセロテープ離型性の耐久性を向上できる。
【0029】
(透明樹脂層)
また、特に、化粧材1の特性として、耐摩耗性が要求される場合には、柄インキ層4と第1の艶調整層5の間に透明樹脂層(不図示)を設けることができる。透明樹脂層としては、例えば、オレフィン系樹脂を主成分とした樹脂組成物を用いることが好ましい。オレフィン系樹脂としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブテン等の他に、αオレフィン(例えば、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、トリデセン、1-テトラデセン、1-ペンタデセン、1-ヘキサデセン、1-ヘプタデセン、1-オクタデセン、1-ノナデセン、1-エイコセン、3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、3-エチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ペンテン、4-エチル-1-ヘキセン、3-エチル-1-ヘキセン、9-メチル-1-デセン、11-メチル-1-ドデセン、12-エチル-1-テトラデセン等)を単独重合あるいは2種類以上共重合させたものや、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・ビニルアルコール共重合体、エチレン・メチルメタクリレート共重合体、エチレン・エチルメタクリレート共重合体、エチレン・ブチルメタクリレート共重合体、エチレン・メチルアクリレート共重合体、エチレン・エチルアクリレート共重合体、エチレン・ブチルアクリレート共重合体等のように、エチレンまたはαオレフィンとそれ以外のモノマーとを共重合させたものを用いることができる。特に、表面強度の更なる向上を図る場合には、高結晶性のポリプロピレンを用いることが好ましい。
【0030】
また、透明樹脂層には、熱安定剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、ブロッキング防止剤、触媒捕捉剤および着色剤等の添加剤を添加してもよい。これらの添加剤は、公知のものから適宜選択して使用することができる。透明樹脂層は、熱圧を応用した方法、押出ラミネート方法、ドライラミネート方法等の各種積層方法によって形成することができる。
【0031】
(作用その他)
(1)以上のように、本実施形態の化粧材1では、相対的に艶の低い艶調整層は、平均粒径が6.0μm以上15.0μm以下の艶消し剤を含有する。
この構成によれば、相対的に艶の低い艶調整層、つまり耐傷性が弱くなりやすい艶調整層の艶消し剤の平均粒径を、艶調整層が耐傷性と意匠性とに優れたものとなるようにする最適な範囲とすることができる。これにより、化粧材1全体の耐傷性と意匠性とを向上でき、耐傷性と意匠性とに優れた化粧材1を提供することができる。
【0032】
なお、本実施形態の化粧材1のように、第1の艶調整層5が基材2の全面を被覆し、第2の艶調整層6が第1の艶調整層5の一部しか被覆しない構成では、第1の艶調整層5も化粧材1の表面に露出するので、高度な耐傷性を有する化粧材1とするためには、第1、第2の艶調整層5、6両方の耐傷性を向上させる必要があるようにも思われる。しかしながら、本発明の発明者等は、鋭意検討の結果、耐傷性の悪化傾向が艶消し剤の含有量に凡そ比例することを見出し、第1、第2の艶調整層5、6両方の耐傷性を向上させなくても、耐傷性が悪化しやすい相対的に艶の低い艶調整層だけの耐傷性を向上させることで、化粧材1全体の耐傷性を飛躍的に向上できることを発見した。そして、このような発見をもとに、相対的に艶の低い艶調整層の艶消し剤の平均粒径を上記の最適な範囲としている。
もちろん、相対的に艶の高い側の艶調整層にも、平均粒径が6.0μm以上15.0μm以下の艶消し剤を含有させてもよい。
【0033】
(2)また、本実施形態の化粧材1では、相対的に艶の低い艶調整層の層厚を、1μm以上18μm以下とし、さらに、艶消し剤の粒径の1.2倍以下とした。
この構成によれば、艶消し剤の一部が表面から露出した状態とすることができ、耐傷性をより確実に向上できる。
(3)このとき、相対的に艶の低い艶調整層の層厚は、艶消し剤の粒径の1/3以上が好ましい。
この構成によれば、艶消し剤の脱落を防止でき、耐傷性をより確実に向上できる。
(4)また、本実施形態の化粧材1では、柄インキ層4の柄模様と第2の艶調整層6の艶とが同調している。
この構成によれば、柄インキ層4による意匠性に、第2の艶調整層6による意匠性を付加でき、天然木等に近い高級感のある意匠表現を有した化粧材1を形成できる。
【0034】
(5)さらに、本実施形態の化粧材1では、艶消し効果の高い無機材料からなる艶消し剤を用いている。
この構成によれば、艶調整層の艶を大きく下げることができる。そのため、第1の艶調整層5の艶と第2の艶調整層6の艶との差を大きくすることができ、得られる凹凸感を大きくすることができる。これにより、より深みのある優れた意匠表現が可能となる。
(6)また、本実施形態の化粧材1では、艶消し剤を構成する無機材料として、シリカまたはガラスを用いている。
この構成によれば、艶消し効果を向上でき、より艶の低い艶調整層を形成できる。
【0035】
(変形例)
(1)上記の説明では、第2の艶調整層6が柄インキ層4と重なる部分に形成され、柄インキ層4の柄模様と第2の艶調整層6の艶とが同調している例を示したが、他の構成を採用することもできる。例えば、図2に示すように、第2の艶調整層6が柄インキ層4の直上以外の部分に形成され、柄インキ層4の柄模様と第1の艶調整層5の艶とが同調していてもよい。この場合、柄インキ層4の柄模様に、露出している第1の艶調整層5の艶が賦与され、柄インキ層4による意匠性に第1の艶調整層5による意匠性を付加できる。それゆえ、天然木や天然石に近い高級感のある意匠表現を有した化粧材1を形成できる。
(2)ここで、同調は、同調させる2つの層が層厚方向で完全に一致するように重なっていなくても良い。同調は、第2の艶調整層6が、例えば幅方向において、同調させる他の層と7割以上重なるように調整されていればよい。
【実施例
【0036】
以下に、本実施形態の化粧材1の具体的な実施例について説明する。
(実施例1)
実施例1では、坪量50g/mの含浸紙(GFR-506:興人(株)製)を基材2として用いた。そして、基材2の一方の面に、油性硝化綿樹脂系グラビア印刷インキ(PCNT(PCRNT)各色:東洋インキ(株)製)を使用して、下地ベタインキ層3と、柄インキ層4とをこの順に形成した。柄インキ層4の柄模様は、木目柄とした。
続いて、柄インキ層4を形成した基材2上に、第1の艶調整層5用のインキを、基材2の一方の面の全面を被覆するように塗布し、第1の艶調整層5を形成した。インキは、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート100質量部に対して、アクリルポリオール(6KW-700:大成ファインケミカル(株)製)20質量部、シリカ系艶消し剤(サイリシア370:富士シリシア化学(株)製)10質量部、紫外線ラジカル開始剤(IRGACURE184:BASF製)5質量部、ポリイソシアネート(UR190B硬化剤:東洋インキ(株)製)6質量部から構成した。インキの塗布量は5g/mとした。続いて、第2の艶調整層6用のインキを、第1の艶調整層5上の、柄インキ層4の直上の部分に塗布することで、第2の艶調整層6を形成した。インキは、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート100質量部に対して、シリカ系艶消し剤(サイリシア370:富士シリシア化学(株)製)5質量部、紫外線ラジカル開始剤(IRGACURE184:BASF製)5質量部から構成した。なお、艶消し剤の平均粒径は6.4μmであった。
【0037】
(実施例2)
実施例2では、第1の艶調整層5用のインキの艶消し剤、および第2の艶調整層6用のインキの艶消し剤として、シリカ系艶消し剤(CARPLEX CS-801:エボニックジャパン(株)製)を用いた。艶消し剤の平均粒径は7.8μmであった。それ以外は実施例1と同様の構成とした。
(実施例3)
実施例3では、第1の艶調整層5用のインキの艶消し剤、および第2の艶調整層6用のインキの艶消し剤として、シリカ系艶消し剤(ミズカシルP-510:水澤化学工業(株)製)を用いた。艶消し剤の平均粒径は10.0μmであった。それ以外は実施例1と同様の構成とした。
(実施例4)
実施例4では、第1の艶調整層5用のインキの艶消し剤として、シリカ系艶消し剤(CARPLEX CS-801:エボニックジャパン(株)製)を用い、第2の艶調整層6用のインキに艶消し剤を添加しなかった。それ以外は実施例1と同様の構成とした。
【0038】
(実施例5)
実施例5では、第1の艶調整層5用のインキの艶消し剤として、シリカ系艶消し剤(サイリシア370:富士シリシア化学(株)製)5質量部を用い、第2の艶調整層6用のインキの艶消し剤として、シリカ系艶消し剤(CARPLEX CS-801:エボニックジャパン(株)製)10質量部を用いた。それ以外は実施例1と同様の構成とした。なお、実施例5では第2の艶調整層に用いる艶消し剤の添加量が相対的に多いため、相対的に艶の低い艶調整層は第2の艶調整層6となっている。
(実施例6)
実施例6では、第2の艶調整層6用のインキの艶消し剤として、シリカ系艶消し剤(CARPLEX CS-801:エボニックジャパン(株)製)10質量部を用い、第1の艶調整層5用のインキに艶消し剤を添加しなかった。それ以外は実施例1と同様の構成とした。
【0039】
(比較例1)
比較例1では、第1の艶調整層5用のインキの艶消し剤、および第2の艶調整層6用のインキの艶消し剤として、シリカ系艶消し剤(ミズカシルP-707:水澤化学工業(株)製)を用いた。艶消し剤の粒径は4.0μm(<6.0μm)であった。それ以外は実施例1と同様の構成とした。
(比較例2)
比較例2では、第1の艶調整層5用のインキの艶消し剤、および第2の艶調整層6用のインキの艶消し剤として、シリカ系艶消し剤(ミズカシルP-78F:水澤化学工業(株)製)を用いた。艶消し剤の粒径は18.0μm(>15.0μm)であった。それ以外は実施例1と同様の構成とした。
【0040】
(評価)
以上の実施例1~6、比較例1~2について、意匠性と耐傷性の評価を行った。
(意匠性)
艶調整層の白濁(印刷柄の見え方)および艶の差による凹凸感を目視観察によって評価した。そして、問題無い場合を「○」、僅かに白濁が見られる場合または僅かに凹凸感が弱い場合を「△」、明確に白濁が見られる場合または凹凸感が弱い場合を「×」とした。(耐傷性)
化粧材1に対して、スチールウール(#0000)を用いて荷重500[g/m]、30回往復の耐傷性試験を実施した後、化粧材1の表面の傷や光沢度変化の有無を目視観察によって評価した。そして、傷や光沢度変化が見られない場合を「○」、傷や光沢度変化が僅かに見える場合を「△」、大きな傷や光沢度変化が見える場合を「×」とした。
これらの評価結果を表1に示す。表1に記載の粒径は、平均粒径である。
【0041】
【表1】
【0042】
実施例1~6の化粧材1では、表1に示すように、耐傷性と意匠性との両方が「○」となった。
一方、比較例1の化粧材1では、意匠性は「○」となったが、耐傷性が「×」となった。耐傷性が「×」となった理由としては、艶消し剤の平均粒径が小さすぎるために、スチールウールが第1、第2の艶調整層5、6の樹脂部分に接触しやすくなったためと考えられる。また、比較例2では、耐傷性と意匠性との両方が「×」となった。耐傷性が「×」となった理由としては、艶消し剤の平均粒径が大きすぎるために、第1、第2の艶調整層5、6表面からの艶消し剤の露出量が大きくなり、艶消し剤が脱落しやすくなったためと考えられる。また、意匠性が「×」となった理由としては、第1、第2の艶調整層5、6の表面での光の散乱が大きく、第1、第2の艶調整層5、6に白濁を招いたり、目視での粒子感が大きくなったりし、艶の差による凹凸感が損なわれたためと考えられる。
【0043】
以上の結果から、第1、第2の艶調整層5、6の艶消し剤の平均粒径を最適な範囲とした実施例1~6の化粧材は意匠性と耐傷性とに優れた化粧材1となることが明らかとなった。
なお、本発明の化粧材1は、上記の実施形態および実施例に限定されるものではなく、発明の特徴を損なわない範囲において種々の変更が可能である。
ここで、本願が優先権を主張する、日本国特許出願2016-215189号(2016年11月2日出願)の全内容は、参照により本開示の一部をなす。
【符号の説明】
【0044】
1…化粧材、2…基材、3…下地ベタインキ層、4…柄インキ層、5…第1の艶調整層、6…第2の艶調整層
図1
図2