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特許7044132両親媒性アルギン酸粒子群及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-22
(45)【発行日】2022-03-30
(54)【発明の名称】両親媒性アルギン酸粒子群及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 3/12 20060101AFI20220323BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20220323BHJP
   A61Q 1/02 20060101ALI20220323BHJP
   A61Q 19/10 20060101ALI20220323BHJP
   C08L 5/04 20060101ALI20220323BHJP
   C08K 5/09 20060101ALI20220323BHJP
   C08K 3/30 20060101ALI20220323BHJP
【FI】
C08J3/12 Z CEP
A61K8/73
A61Q1/02
A61Q19/10
C08L5/04
C08K5/09
C08K3/30
C08J3/12 101
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020101625
(22)【出願日】2020-06-11
(65)【公開番号】P2021195321
(43)【公開日】2021-12-27
【審査請求日】2021-07-28
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004374
【氏名又は名称】日清紡ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】特許業務法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋場 俊文
(72)【発明者】
【氏名】早川 和寿
(72)【発明者】
【氏名】松坂 恵里奈
【審査官】松元 洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-173863(JP,A)
【文献】特開2002-012669(JP,A)
【文献】特開平09-192471(JP,A)
【文献】特開昭62-074933(JP,A)
【文献】特開2004-300426(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00 - 101/16
C08J 3/00 - 3/28
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルギン酸多価金属塩をカルボン酸塩、アミノ酸誘導体塩、スルホン酸塩又は硫酸エステル塩である塩化合物である疎水化剤を用いて疎水化処理してなる両親媒性アルギン酸粒子群であって、
前記アルギン酸多価金属塩の一部の金属イオンと前記疎水化剤とが化学結合を伴うことによって疎水化されたものであり、当該粒子群に水滴を落した時の30秒後の接触角が30°以上150°以下であり、粒子100gあたりの吸水量が、粒子100gあたりの吸油量以上のものである両親媒性アルギン酸粒子群。
【請求項2】
前記疎水化剤が、カルボン酸塩及びアミノ酸誘導体塩から選ばれる少なくとも1種である請求項1記載の両親媒性アルギン酸粒子群。
【請求項3】
前記金属が、2価イオンとなる金属である請求項1又は2載の両親媒性アルギン酸粒子群。
【請求項4】
前記金属が、カルシウムである請求項3記載の両親媒性アルギン酸粒子群。
【請求項5】
25℃において、水に不溶であり、3質量%塩化ナトリウム水溶液に可溶である請求項1~4のいずれか1項記載の両親媒性アルギン酸粒子群。
【請求項6】
平均粒子径が、5mm以下である請求項1~5のいずれか1項記載の両親媒性アルギン酸粒子群。
【請求項7】
両親媒性アルギン酸粒子群を0.1質量%となるように3質量%塩化ナトリウム水溶液に分散させ、72時間、240時間及び720時間経過後の該分散液の波長560nmの光の透過率をそれぞれSD1、SD2及びSD3(%)とし、両親媒性アルギン酸粒子群を0.1質量%となるように水に分散させ、72時間、240時間及び720時間経過後の経過後の該分散液の波長560nmの光の透過率をそれぞれWD1、WD2及びWD3(%)としたとき、WD1/SD1、WD2/SD2及びWD3/SD3の少なくとも1つが0.9以下である請求項1~6のいずれか1項記載の両親媒性アルギン酸粒子群。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項記載の両親媒性アルギン酸粒子群を含む化粧品。
【請求項9】
請求項1~7のいずれか1項記載の両親媒性アルギン酸粒子群を含む塗料。
【請求項10】
請求項1~7のいずれか1項記載の両親媒性アルギン酸粒子群を含む樹脂組成物。
【請求項11】
請求項1~7のいずれか1項記載の両親媒性アルギン酸粒子群を含む成形品。
【請求項12】
請求項1~7のいずれか1項記載の両親媒性アルギン酸粒子群を含む電子材料。
【請求項13】
請求項1~7のいずれか1項記載の両親媒性アルギン酸粒子群を含むシート。
【請求項14】
アルギン酸多価金属塩を含むアルギン酸粒子群を疎水化剤を用いて当該疎水化剤を完全に溶解させない状態で疎水化処理する工程を含む、両親媒性アルギン酸粒子群の製造方法であって、前記疎水化剤が、カルボン酸塩、アミノ酸誘導体塩、スルホン酸塩又は硫酸エステル塩である塩化合物である製造方法。
【請求項15】
アルギン酸1価塩及び完全に溶解していない疎水化剤を含む溶液を噴霧乾燥し、粒子を得る工程と、多価金属塩を用いて前記粒子を架橋処理すると同時に疎水化処理する工程と、を含む両親媒性アルギン酸粒子群の製造方法であって、前記疎水化剤が、カルボン酸塩、アミノ酸誘導体塩、スルホン酸塩又は硫酸エステル塩である塩化合物である製造方法。
【請求項16】
水滴中にアルギン酸1価塩及び完全に溶解していない疎水化剤を含む油中水滴型エマルションを形成する工程と、多価金属塩を用いて架橋処理すると同時に前記疎水化剤が完全に溶解していない状態で疎水化処理する工程と、を含む両親媒性アルギン酸粒子群の製造方法であって、前記疎水化剤が、カルボン酸塩、アミノ酸誘導体塩、スルホン酸塩又は硫酸エステル塩である塩化合物である製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、両親媒性アルギン酸粒子群及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
微粒子は、基幹産業において主要材料として使用されている。微粒子の原料として、合成樹脂が使用されてきたが、近年、マイクロプラスチックによる環境汚染(海洋汚染)及び生態系への悪影響が問題となっており、マイクロプラスチックの発生を減らす取り組みが始まっている。
【0003】
微粒子の原料として、セルロース等の天然高分子に注目が集まっている。しかし、セルロースは、水を吸水しやすく、膨潤性も比較的高い。膨潤性が大きいと寸法安定性や触感、成形性の観点からも好ましくない。また、土壌中等陸地での分解性は高いものの海洋中での溶解性や分解性が低いという欠点を有する。
【0004】
アルギン酸は、海藻由来のポリマーであって、海洋微生物による分解や、海藻類、貝類等から放出される酵素等によって分解されるため、海洋中での分解は比較的早い。しかし、吸水性が大きすぎるという問題があり、産業上の使用が限定される。
【0005】
非特許文献1に記載されているように、アルギン酸をカルシウム架橋することで膨潤性を抑制できるため、吸放湿性を必要とする制汗剤のような化粧品であれば特徴を最大限に活用でき、優位性が高い。一方、例えば、ベースメイク、ポイントメイク等の場合、外気湿度が高くなると水蒸気を吸収しやすくなるため、天候によりべたつき感が出やすくなってしまい、使用顧客によっては不快感を覚えるおそれがある。また、アルギン酸カルシウム粒子は、吸水性が高く、高性能であるがゆえに化粧崩れが発生する原因にもなりやすい。また、吸水性が高すぎる場合、リキッド系のファンデーション、化粧下地等においては、油剤との相性が悪く、製品処方や用途が限定されてしまう可能性がある。
【0006】
一方、アルギン酸カルシウム粒子は、電材等の吸水性、吸湿性を嫌う分野では極端に吸水量が高すぎると性能低下を及ぼす危険性があるため、産業資材向けの用途が限定されてしまう。海洋汚染等の環境問題を考慮し、産業資材全般に有用な素材が求められている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【文献】佐藤貴哉 他2名、「アルギン酸カルシウム微粒子の開発と化粧品への展開」、繊維と工業、1996年、第20巻、第1号、p.20-26
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、前記事情に鑑みなされたもので、前記要望に応え得る、天然由来成分を原料とする、適度な吸水量を保持しつつも疎水性を有する両親媒性のポリマー粒子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、アルギン酸カルシウム等の架橋されたアルギン酸からなる粒子に化学結合を伴う疎水化をする方法を見出すとともに、部分的に疎水化されたアルギン酸粒子が、ある程度の撥水性や触感性に優れ、水に不溶であるにもかかわらず海水に溶解することで微生物によって分解され、海洋汚染対策に有用であることを見出し、本発明を完成させた。
【0010】
すなわち、本発明は、下記両親媒性アルギン酸粒子群及びその製造方法を提供する。
1.アルギン酸多価金属塩を疎水化剤を用いて疎水化処理してなる両親媒性アルギン酸粒子群であって、
前記アルギン酸多価金属塩の一部の金属イオンと前記疎水化剤とが化学結合を伴うことによって疎水化されたものであり、当該粒子群に水滴を落した時の30秒後の接触角が30°以上150°以下であり、粒子100gあたりの吸水量が、粒子100gあたりの吸油量以上のものである両親媒性アルギン酸粒子群。
2.前記疎水化剤が、塩化合物である1の両親媒性アルギン酸粒子群。
3.前記疎水化剤が、カルボン酸塩、アミノ酸誘導体塩、スルホン酸塩又は硫酸エステル塩である2の両親媒性アルギン酸粒子群。
4.前記疎水化剤が、カルボン酸塩及びアミノ酸誘導体塩から選ばれる少なくとも1種である3の両親媒性アルギン酸粒子群。
5.前記金属が、2価イオンとなる金属である1~4のいずれかの両親媒性アルギン酸粒子群。
6.前記金属が、カルシウムである5の両親媒性アルギン酸粒子群。
7.25℃において、水に不溶であり、3質量%塩化ナトリウム水溶液に可溶である1~6のいずれかの両親媒性アルギン酸粒子群。
8.平均粒子径が、5mm以下である1~7のいずれかの両親媒性アルギン酸粒子群。
9.両親媒性アルギン酸粒子群を0.1質量%となるように3質量%塩化ナトリウム水溶液に分散させ、72時間、240時間及び720時間経過後の該分散液の波長560nmの光の透過率をそれぞれSD1、SD2及びSD3(%)とし、両親媒性アルギン酸粒子群を0.1質量%となるように水に分散させ、72時間、240時間及び720時間経過後の経過後の該分散液の波長560nmの光の透過率をそれぞれWD1、WD2及びWD3(%)としたとき、WD1/SD1、WD2/SD2及びWD3/SD3の少なくとも1つが0.9以下である1~8のいずれかの両親媒性アルギン酸粒子群。
10.1~9のいずれかの両親媒性アルギン酸粒子群を含む化粧品。
11.1~9のいずれかの両親媒性アルギン酸粒子群を含む塗料。
12.1~9のいずれかの両親媒性アルギン酸粒子群を含む樹脂組成物。
13.1~9のいずれかの両親媒性アルギン酸粒子群を含む成形品。
14.1~9のいずれかの両親媒性アルギン酸粒子群を含む電子材料。
15.1~9のいずれかの両親媒性アルギン酸粒子群を含むシート。
16.アルギン酸多価金属塩を含むアルギン酸粒子群を疎水化剤を用いて当該疎水化剤を完全に溶解させない状態で疎水化処理する工程を含む、両親媒性アルギン酸粒子群の製造方法。
17.アルギン酸1価塩及び完全に溶解していない疎水化剤を含む溶液を噴霧乾燥し、粒子を得る工程と、多価金属塩を用いて前記粒子を架橋処理すると同時に疎水化処理する工程と、を含む両親媒性アルギン酸粒子群の製造方法。
18.水滴中にアルギン酸1価塩及び完全に溶解していない疎水化剤を含む油中水滴型エマルションを形成する工程と、多価金属塩を用いて架橋処理すると同時に前記疎水化剤が完全に溶解していない状態で疎水化処理する工程と、を含む両親媒性アルギン酸粒子群の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明の両親媒性アルギン酸粒子群は、凝集物等の異物も少なく、安定的に効率よく製造できるとともに、小径化、扁平化等の形状を制御することができ、耐熱性や耐(熱)薬品性を有する架橋性の粒子も安定的に作製できるため、様々な用途へ応用可能である。また、本発明の両親媒性アルギン酸粒子群は、ある程度の撥水性や触感性に優れ、環境にやさしい粒子、特に海洋汚染対策に有用な天然高分子由来の粒子であるため、用途に応じて塗料、インク、成形品、化粧品、焼成空孔化成形物等の環境対応に必要とされる用途へ有効に活用できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施例1-1で得られた粒子のSEM写真(2,000倍)である。
図2】実施例1-2で得られた粒子のSEM写真(1,000倍)である。
図3】実施例1-3で得られた粒子のSEM写真(2,000倍)である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[両親媒性アルギン酸粒子群]
本発明の両親媒性アルギン酸粒子群は、親水性のアルギン酸多価金属塩粒子を疎水化処理してなるものである。
【0014】
一般的に、固体表面が水にぬれやすい場合、その固体は親水性であり、逆に水をはじく場合は疎水性である。親水性のアルギン酸多価金属塩粒子は、接触角が10°以下であり、超親水性と言われる領域である。本発明の両親媒性アルギン酸粒子群は、当該粒子群に水滴を落した時の30秒後の接触角が30°以上150°以下である。ここで、「両親媒性」とは、親水性の部分(もしくは親水基)と疎水性の部分(もしくは疎水基)の両方を持ち合わせていることを意味する。よって、疎水化の強弱により、親水性寄りであれば90°以下であり、疎水性寄りであれば90°を超える。
【0015】
前記アルギン酸多価金属塩としては、特に限定されないが、アルギン酸カルシウム、アルギン酸ストロンチウム、アルギン酸マグネシウム、アルギン酸バリウム、アルギン酸ラジウム、アルギン酸鉛、アルギン酸亜鉛、アルギン酸ニッケル、アルギン酸鉄、アルギン酸銅、アルギン酸カドミウム、アルギン酸コバルト、アルギン酸マンガン等が挙げられる。これらのうち、環境面、安全性、架橋度調整、汎用性、コストの等の点から、アルギン酸カルシウムが好ましい。
【0016】
前記疎水化処理に用いる化合物(以下、疎水化剤ともいう。)としては、カルボン酸、カルボン酸塩、アミノ酸誘導体、アミノ酸誘導体塩、有機ケイ素化合物、シリコーン化合物、フッ素化合物、硫酸エステル、硫酸エステル塩、スルホン酸、スルホン酸塩、リン酸エステル、リン酸エステル塩、乳酸エステル、乳酸エステル塩等が挙げられる。前記疎水化剤は、環境的配慮から水や塩水に対する溶解性と環境中の微生物分解性とを十分満たすよう設計すると、分子量が5,000以下のものが好ましく、分子量が50~1,000のものがより好ましく、分子量が100~600のものが更に好ましく、200~500のものが最も好ましい。なお、本発明において分子量は、ポリマーについては数平均分子量(Mn)を意味し、Mnはゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算測定値である。ポリマー以外のものについては、化学式量である。
【0017】
これらのうち、疎水化剤としては塩化合物であることが好ましい。具体的な塩化合物としては、カルボン酸塩、硫酸エステル塩、スルホン酸塩、硫酸エステル塩が好ましい。これらは低分子量のものが多く、環境中の微生物により分解されやすい。特に、これらの塩のカチオンは、金属イオンであることが望ましい。
【0018】
前記金属イオンとしては、リチウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、ナトリウムイオン、マグネシウムイオン、アルミニウムイオン、亜鉛イオン、鉄イオン、ニッケルイオン、すずイオン、鉛イオン、銅イオン、コバルトイオン、マンガンイオン、ストロンチウムイオン、バリウムイオン、カドミウムイオン、水銀イオン、銀イオン、白金イオン、金イオン等の各種金属イオンが挙げられる。中でも、環境、生体安全性、汎用性、コスト等の観点からカルシウムイオン、ナトリウムイオン、マグネシウムイオン、カリウムイオンが好ましい。特に、前記塩化合物が親水性になりやすい1価金属イオンが好ましく、具体的にはカリウムイオン、ナトリウムイオンが好ましく、汎用的な金属イオンであるナトリウムイオンが後述する点でも優れている。
【0019】
これら疎水化剤は、単独では水溶性や親水性でありながら、アルギン酸多価金属塩の一部と化学結合を伴うことによって疎水性へ変化する。この構造体が、疎水性を維持しつつ海水においては溶解性と生分解性を制御できる大きな特徴となっている。なお、化学結合とは、好ましくは分子内結合であり、より好ましくはイオン結合である。
【0020】
なお、疎水化処理について、詳細は後述する。
【0021】
前記カルボン酸としては、炭素数6~30のものが好ましく、炭素数8~25のものがより好ましく、炭素数10~20のものが最も好ましい。前記カルボン酸は、1価カルボン酸でもよく、多価カルボン酸でもよい。
【0022】
前記1価カルボン酸としては、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、オクチル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデシレン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、バクセン酸、リシノール酸、リノール酸、リノレン酸、エレオステアリン酸、オキシステアリン酸、アラキジン酸、ミード酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、ベヘン酸、ドコサヘキサエン酸、リグノセリン酸、ネルボン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸、ヤシ油脂肪酸、パーム油脂肪酸等が挙げられる。
【0023】
前記多価カルボン酸としては、オクタン二酸、ノナン二酸、デカン二酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、トリデカン二酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、ヘキサデカン二酸、ヘプタデカン二酸、オクタデカン二酸、ノナデカン二酸、エイコサン二酸等が挙げられる。また、これらの分岐構造を有する異性体でもよく、3価以上の多価カルボン酸を用いてもよい。
【0024】
前記カルボン酸塩としては、炭素数6~30のものが好ましく、炭素数8~25のものがより好ましく、炭素数10~20のものが更に好ましい。前記カルボン酸は、1価カルボン酸でもよく、多価カルボン酸でもよい。
【0025】
前記1価カルボン酸塩としては、カプリル酸カリウム、カプリル酸ナトリウム、カプリル酸亜鉛等のカプリル酸塩;オクチル酸カリウム、オクチル酸ナトリウム、オクチル酸亜鉛等のオクチル酸塩;ペラルゴン酸カリウム、ペラルゴン酸ナトリウム等のペラルゴン酸塩;カプリン酸カリウム、カプリン酸プリン酸ナトリウム等のカプリン酸塩;ウンデシレン酸カリウム、ウンデシレン酸ナトリウム等のウンデシレン酸塩;ラウリン酸カリウム、ラウリン酸ナトリウム、ラウリン酸カルシウム、ラウリン酸バリウム、ラウリン酸亜鉛等のラウリン酸塩;ミリスチン酸カリウム、ミリスチン酸ナトリウム、ミリスチン酸亜鉛、ミリスチン酸マグネシウム等のミリスチン酸塩;ペンタデシル酸カリウム、ペンタデシル酸ナトリウム等のペンタデシル酸塩;パルミチン酸カリウム、パルミチン酸ナトリウム、パルミチン酸カルシウム等のパルミチン酸塩;マルガリン酸カリウム、マルガリン酸ナトリウム等のマルガリン酸塩;ステアリン酸リチウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム等のステアリン酸塩;イソステアリン酸カリウム、イソステアリン酸ナトリウム等のイソステアリン酸塩;オレイン酸カリウム、オレイン酸ナトリウム等のオレイン酸塩;リシノール酸カルシウム、リシノール酸バリウム、リシノール酸亜鉛等のリシノール酸塩;リノール酸カリウム、リノール酸ナトリウム、リノール酸カルシウム等のリノール酸塩;リノレン酸カリウム、リノレン酸ナトリウム等のリノレン酸塩;アラキドン酸カリウム、アラキドン酸ナトリウム等のアラキドン酸塩;ベヘン酸カリウム、ベヘン酸ナトリウム、ベヘン酸カルシウム等のベヘン酸塩;ドコサヘキサエン酸ナトリウム等のドコサヘキサエン酸塩;ヤシ油脂肪酸カリウム、ヤシ油脂肪酸ナトリウム等のヤシ油脂肪酸塩;パーム油脂肪酸カルシウム等のパーム油脂肪酸塩;トリイソステアリン酸イソプロピルチタン等が挙げられる。これらのうち、ステアリン酸塩、ミリスチン酸塩等が好ましい。
【0026】
前記多価カルボン酸塩としては、オクタン二酸二ナトリウム、オクタン二酸二カリウム等のオクタン二酸塩;ノナン二酸二ナトリウム、ノナン二酸二カリウム等のノナン二酸塩;デカン二酸二ナトリウム、デカン二酸二カリウム等のデカン二酸塩;ウンデカン二酸二ナトリウム、ウンデカン二酸二カリウム等のウンデカン二酸塩;ドデカン二酸二ナトリウム、ドデカン二酸二カリウム等のドデカン二酸塩;トリデカン二酸二ナトリウム、トリデカン二酸二カリウム等のトリデカン二酸塩;テトラデカン二酸二ナトリウム、テトラデカン二酸二カリウム等のテトラデカン二酸塩;ペンタデカン二酸二ナトリウム、ペンタデカン二酸二カリウムのテトラデカン二酸塩;ヘキサデカン二酸二ナトリウム、ヘキサデカン二酸二カリウム等のヘキサデカン二酸塩;ヘプタデカン二酸二ナトリウム、ヘプタデカン二酸二カリウム等のヘプタデカン二酸塩;オクタデカン二酸二ナトリウム、オクタデカン二酸二カリウム等のオクタデカン二酸塩;ノナデカン二酸二ナトリウム、ノナデカン二酸二カリウム等のノナデカン二酸塩;エイコサン二酸二ナトリウム、エイコサン二酸二カリウム等のエイコサン二酸塩等のジカルボン酸塩が挙げられる。また、これらの分岐構造を有する異性体でもよく、3価以上の多価カルボン酸の塩を用いてもよい。特に前述のような炭素数6~30の多価カルボン酸で疎水化処理を行うと弾性力や柔らかさを付与できる。好ましくは、多価カルボン酸塩であり、更に好ましくは二酸二塩の構造がよい。
【0027】
前記アミノ酸誘導体としては、炭素数6~30のものが好ましく、炭素数8~25のものがより好ましく、炭素数10~20のものが更に好ましい。前記アミノ酸誘導体としては、ラウロイルサルコシン、ミリストイルサルコシン、パルミトイルサルコシン、ヤシ油脂肪酸サルコシン等のサルコシン誘導体;ラウロイルグルタミン酸、ミリストイルグルタミン酸、パルミトイルグルタミン酸、ステアロイルグルタミン酸、ヤシ油脂肪酸アシルグルタミン酸、ココイルグルタミン酸、アシルグルタミン酸、ジラウロイルグルタミン酸、等のグルタミン酸誘導体;ラウロイルグリシン、ミリストイルグリシン、パルミトイルグリシン、パルミトイルメチルグリシン、ヤシ油脂肪酸アシルグリシン、ココイルグリシン等のグリシン誘導体;ラウリルメチルアラニン、ミリストイルメチルアラニン、ココイルアラニン、ヤシ油脂肪酸メチルアラニン等のアラニン誘導体;ラウロイルリジン、ミリストノイルリジン、パルミトイルリジン、ステアノイルリジン、オレイルイルリジン、アシル化リジン等のリジン誘導体;ラウロイルアスパラギン酸、ミリストイルアスパラギン酸、パルミトイルアスパラギン酸、ステアロイルアスパラギン酸等のアスパラギン酸誘導体;ラウロイルタウリン、ラウロイルメチルタウリン、ミリストイルタウリン、ミリストイルメチルタウリン、パルミトイルタウリン、パルミトイルメチルタウリン、ステアロイルタウリン、ステアロイルメチルタウリン等のタウリン誘導体;ラウロイルプロリン、ミリストイルプロリン、パルミトイルプロリン等のプロリン誘導体等のアミノ酸誘導体が挙げられる。
【0028】
前記アミノ酸誘導体の塩としては、炭素数6~30のものが好ましく、炭素数炭素数8~25のものがより好ましく、炭素数10~20のものが更に好ましい。前記アミノ酸誘導体塩としては、ラウロイルサルコシンカリウム、ラウロイルサルコシンナトリウム、ミリストイルサルコシンカリウム、ミリストイルサルコシンナトリウム、パルミトイルサルコシンカリウム、パルミトイルサルコシンナトリウム、ヤシ油脂肪酸サルコシンカリウム、ヤシ油脂肪酸サルコシンナトリウム等のサルコシン塩;ラウロイルグルタミン酸カリウム、ラウロイルグルタミン酸ナトリウム、ミリストイルグルタミン酸カリウム、ミリストイルグルタミン酸ナトリウム、パルミトイルグルタミン酸ナトリウム、パルミトイルグルタミン酸マグネシウム、ステアロイルグルタミン酸カリウム、ステアロイルグルタミン酸ナトリウム、ヤシ油脂肪酸アシルグルタミン酸カリウム、ヤシ油脂肪酸アシルグルタミン酸ナトリウム、ココイルグルタミン酸カリウム、ココイルグルタミン酸ナトリウム、アシルグルタミン酸カリウム、アシルグルタミン酸ナトリウム、ジラウロイルグルタミン酸リシンナトリウム、ポリグルタミン酸ナトリウム等のグルタミン酸塩;ラウロイルグリシンカリウム、ラウロイルグリシンナトリウム、ミリストイルグリシンカリウム、ミリストイルグリシンナトリウム、パルミトイルグリシンナトリウム、パルミトイルメチルグリシンナトリウム、ヤシ油脂肪酸アシルグリシンカリウム、ヤシ油脂肪酸アシルグリシンナトリウム、ココイルグリシンカリウム、ココイルグリシンナトリウム等のグリシン塩;ラウロイルメチルアラニンカリウム、ラウリルメチルアラニンナトリウム、ミリストイルメチルアラニンナトリウム、ココイルアラニンナトリウム、ヤシ油脂肪酸メチルアラニンナトリウム等のアラニン塩;ラウロイルアスパラギン酸カリウム、ラウロイルアスパラギン酸ナトリウム、ミリストイルアスパラギン酸カリウム、ミリストイルアスパラギン酸ナトリウム、パルミトイルアスパラギン酸カリウム、パルミトイルアスパラギン酸ナトリウム、ステアロイルアスパラギン酸カリウム、ステアロイルアスパラギン酸ナトリウム等のアスパラギン酸塩;ラウロイルタウリンナトリウム、ラウロイルタウリンカルシウム等のラウロイルタウリン塩;ラウロイルタウリンナトリウム、ラウロイルタウリンカルシウム、ラウロイルメチルタウリンナトリウム、ミリストイルタウリンカリウム、ミリストイルタウリンナトリウム、ミリストイルメチルタウリンナトリウム、パルミトイルタウリンカリウム、パルミトイルタウリンナトリウム、パルミトイルメチルタウリンカリウム、パルミトイルメチルタウリンナトリウム、ステアロイルタウリンカリウム、ステアロイルタウリンナトリウム、ステアロイルメチルタウリンナトリウム等のタウリン塩;ラウロイルプロリンナトリウム、ミリストイルプロリンナトリウム、パルミトイルプロリンナトリウム等のプロリン塩等が挙げられる。
【0029】
前記有機ケイ素化合物としては、炭素数6~30のアルキル基を少なくとも1つ有するアルキル化シラン、炭素数6~30のアルキル基を少なくとも1つ有するアルキル化シラザン、炭素数6~30のアルコキシ基を少なくとも1つ有するトリアルコキシシラン、オクチルトリアルコキシシラン、トリエトキシカプリリルシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0030】
前記シリコーン化合物としては、メチルハイドロジェンポリシロキサン、メチルポリシロキサン(メチコン)、ジメチルポリシロキサン(ジメチコン)、トリエトキシシリルエチルポリジメチルシロキシエチルジメチコン、メチルフェニルポリシロキサン、トリエトキシシリルエチルポリジメチルシロキシエチルヘキシルジメチコン、環状シリコーン、架橋型シリコーン、アクリル-シリコーン系グラフト重合体、有機シリコーン樹脂部分架橋型オルガノポリシロキサン重合物、テトラメチルテトラハイドロジェンシクロテトラシロキサン、トリメチルシロキシケイ酸、アミノ変性シリコーン、カルボン酸変性シリコーン、フッ素化シリコーン、シリコーンガム、アクリルシリコーン、シリコーンレジン、トリエトキシシリルエチルポリジメチルシロキシエチルジメチコン、トリエトキシシリルエチルポリジメチルシロキシエチルヘキシルジメチコン、フッ素化シリコーン等が挙げられる。
【0031】
前記フッ素化合物としては、パーフルオロアルキルリン酸エステル、パーフルオロアルキルシラン、パーフルオロアルキルアルコキシシラン、パーフルオロアルキル基含有エステル、パーフルオロアルキルリン酸エステル塩、パーフルオロポリエーテル、フルオロシリコーン、フッ素化シリコーン樹脂、トリメトキシ(3,3,3-トリフルオロプロピル)シラン、トリデカフルオロオクチルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0032】
前記硫酸エステル及び硫酸エステル塩としては、アルキル硫酸エステル、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアリールエーテル硫酸エステル、ポリオキシエチレンアリールエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンヒマシ油エーテル硫酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油エーテル硫酸エステル塩等が挙げられる。
【0033】
前記アルキル硫酸エステル及びアルキル硫酸エステル塩としては、炭素数6~30のアルキル基を有するものが好ましく、炭素数8~25のアルキル基を有するものがより好ましく、炭素数10~20のアルキル基を有するものが更に好ましい。前記アルキル硫酸エステル及びアルキル硫酸エステル塩の具体例としては、ラウリル硫酸、ラウリル硫酸カリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ミリスチル硫酸、ミリスチル硫酸カリウム、ミリスチル硫酸ナトリウム、セチル硫酸、セチル硫酸ナトリウム、ステアリル硫酸、ステアリル硫酸ナトリウム、オレイル硫酸、オレイル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸及びその塩、ドデシルベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸カリウム等のアルキルベンゼン硫酸及びその塩等が挙げられる。
【0034】
前記ポリオキシエチレンアリールエーテル硫酸エステル及びポリオキシエチレンアリールエーテル硫酸エステル塩としては、HLB値が11以下のものが好ましく、HLB値が6以下のものがより好ましい。例えば、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸エステル、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸エステルナトリウム等のポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸エステル塩;ポリオキシエチレンアリールエーテル硫酸エステル、ポリオキシエチレンアリールエーテル硫酸エステルナトリウム等が挙げられる。
【0035】
ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル及びポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩としては、HLB値が6以下のものが好ましく、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンミリスチルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンセチルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンステアリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンオレイルエーテル硫酸ナトリウム等が挙げられる。
【0036】
ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩としては、HLB値が11以下のものが好ましく、HLB値が6以下のものがより好ましい。例えば、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロック共重合体の硫酸エステルナトリウム塩、ポリオキシエチレン-ポリオキシブチレンブロック共重合体の硫酸エステルナトリウム塩、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロック共重合体のアルキルエーテルの硫酸エステルナトリウム塩等が挙げられる。前記ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル硫酸塩としては、HLB値が11以下のものが好ましく、HLB値が6以下のものがより好ましい。例えば、ポリオキシエチレン-ポリオキシアルキレンブロック共重合体のアルケニルエーテルの硫酸エステルナトリウム塩等が挙げられる。前記ポリオキシエチレンヒマシ油エーテル硫酸エステル及びポリオキシエチレンヒマシ油エーテル硫酸エステル塩としては、HLB値が11以下のものが好ましく、HLB値が6以下のものがより好ましい。例えば、ポリオキシエチレンヒマシ油エーテル硫酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油エーテル硫酸エステルナトリウム塩等が挙げられる。
【0037】
前記スルホン酸及びスルホン酸塩としては、炭素数6~30のものが好ましく、炭素数8~25のものがより好ましく、炭素数10~20のものが更に好ましい。前記スルホン酸及びスルホン酸塩は、1価のものでもよく、多価のものでも酸でもよい。前記スルホン酸及びスルホン酸塩の具体例としては、ラウリルスルホン酸、ラウリルスルホン酸ナトリウム、ミリスチルスルホン酸、ミリスチルスルホン酸ナトリウム、セチルスルホン酸、セチルスルホン酸ナトリウム、ステアリルスルホン酸、ステアリルスルホン酸ナトリウム、オレイルスルホン酸、オレイルスルホン酸ナトリウム等のアルキルスルホン酸及びアルキルスルホン酸塩;ドデシルベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸カルシウム等のドデシルベンゼンスルホン酸及びドデシルベンゼンスルホン酸塩;アルキレンジスルホン酸、アルキレンジスルホン酸ナトリウム等のアルキレンジスルホン酸及びアルキレンジスルホン酸塩、ジアルキルサクシネートスルホン酸、ジアルキルサクシネートスルホン酸ナトリウム等のジアルキルサクシネートスルホン酸及びジアルキルサクシネートスルホン酸塩;モノアルキルサクシネートスルホン酸、モノアルキルサクシネートスルホン酸ジナトリウム塩等のモノアルキルサクシネートスルホン酸及びモノアルキルサクシネートスルホン酸塩;ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物ナトリウム塩等のナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物及びナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物塩;オレフィンスルホン酸ナトリウム等のオレフィンスルホン酸塩;ラウロイルイセチオン酸、ミリストイルイセチオン酸、パルミトイルイセチオン酸、ステアロイルイセチオン酸等のイセチオン酸;ラウロイルイセチオン酸カリウム、ラウロイルイセチオン酸ナトリウム、ミリストイルイセチオン酸ナトリウム、パルミトイルイセチオン酸ナトリウム、ステアロイルイセチオン酸ナトリウム等のイセチオン酸塩;ジヘキシルスルホコハク酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ジデシルスルホコハク酸ナトリウム、ジイソブチルスルホコハク酸ナトリウム等のスルホコハク酸及びスルホコハク酸塩等が挙げられる。
【0038】
前記リン酸エステル及びリン酸エステル塩としては、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステル、アルキルリン酸エステル、アルキルリン酸エステル塩等が挙げられる。前記ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステルとしては、HLB値が6以下のものが好ましく、例えば、ポリオキシエチレン(2)ステアリルエーテルリン酸エステル等が挙げられる。
【0039】
前記アルキルリン酸エステル及びアルキルリン酸エステル塩としては、炭素数6~30のアルキル基を有するものが好ましく、炭素数8~25のアルキル基を有するものがより好ましく、炭素数10~20のアルキル基を有するものが更に好ましい。前記アルキルリン酸エステル及びアルキルリン酸エステル塩の具体例としては、オクチルリン酸、オクチルリン酸カリウム等のオクチルリン酸及びオクチルリン酸塩;ノニルリン酸、ノニルリン酸カリウム等のノニルリン酸及びノニルリン酸塩;、デシルリン酸、デシルリン酸カリウム等のデシルリン酸及びデシルリン酸塩;ウンデシルリン酸、ウンデシルリン酸カリウム等のウンデシルリン酸及びウンデシルリン酸塩;ラウリルリン酸、ラウリルリン酸カリウム等のラウリルリン酸及びラウリルリン酸塩;ミリスチルリン酸、ミリスチルリン酸カリウム等のミリスチルリン酸及びミリスチルリン酸塩;セチルリン酸、セチルリン酸カリウム、セチルリン酸ナトリウム、セチルリン酸カルシウム、セチルリン酸亜鉛等のセチルリン酸及びセチルリン酸塩;ステアリルリン酸、ステアリルリン酸カリウム等のステアリルリン酸及びステアリルリン酸塩等が挙げられる。
【0040】
前記乳酸エステル及び乳酸エステル塩としては、炭素数6~30のものが好ましく、炭素数8~25のものがより好ましく、炭素数10~20のものが更に好ましい。前記乳酸エステル及び乳酸エステル塩の具体例としては、乳酸ラウリル、乳酸ミリスチル、乳酸セチル、乳酸オレイル、乳酸オクチルドデシル、ステアロイル乳酸ナトリウム、ステアロイル乳酸カルシウム、イソステアロイル乳酸ナトリウム、ラウロイル乳酸ナトリウム等が挙げられる。
【0041】
また、前述した化合物のほか、例えば化粧品添加剤として使用される、油剤、アクリル化合物、アクリル樹脂、チタンカップリング剤、無機化合物、金属酸化物、固形潤滑剤、その他、公知の界面活性剤等も疎水化剤として使用することができる。
【0042】
前記油剤としては、ワセリン、流動パラフィン、スクワラン、パラフィンワックス、アマニ油、綿実油、ヤシ油、ヒマシ油、卵黄油、ラノリン脂肪酸、ジカプリン酸プロピレングリコール、トリオクタン酸グリセリル、2-エチルヘキサン酸セチル、ステアリン酸イソセチル、ステアリルアルコール、セチルアルコール、オレイルアルコール、牛脂、ミツロウ、鯨ロウ、木ロウ、ラノリン、カルナバロウ、カンデリラワックス等が挙げられる。
【0043】
前記アクリル化合物としては、(メタ)アクリル酸アルキル等が挙げられる。前記アクリル樹脂としては、(メタ)アクリル酸とスチレン系化合物との共重合体及びその塩、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸エステル系化合物との共重合体及びその塩、(メタ)アクリル酸とビニルエステル系化合物との共重合体及びその塩、(メタ)アクリル酸とオレフィン系化合物との共重合体及びその塩、(メタ)アクリル酸と共役ジエン系化合物との共重合体及びその塩等が挙げられる。
【0044】
前記チタンカップリング剤としては、アルキルチタネート、ピロリン酸型のチタネート、亜リン酸型のチタネート、アミノ酸型のチタネート等が挙げられる。
【0045】
前記無機化合物としては、アルミナ等が挙げられる。前記金属酸化物としては酸化チタン等が挙げられる。
【0046】
前記固形潤滑剤としては、ポリオレフィンワックス(例えば、ポリエチレンワックス等)、パラフィンワックス(例えば、合成パラフィン、天然パラフィン等)、フッ素樹脂系ワックス(例えば、ポリテトラフルオロエチレン等)、脂肪酸アミド系化合物(例えば、ステアリン酸アミド、パルミチン酸アミド等)、金属硫化物(例えば、二硫化モリブデン、二硫化タングステン等)、グラファイト、フッ化黒鉛、窒化ホウ素、ポリアルキレングリコール、アルカリ金属硫酸塩等が挙げられる。
【0047】
本発明の両親媒性アルギン酸粒子群は、その平均粒子径が5mm以下であることが好ましく、1mm以下、500μm以下、100μm以下、60μm以下、30μm以下、15μm以下、10μmの順で好ましい。また、その下限は、0.1μmが好ましく、0.5μmがより好ましく、1.0μmが更に好ましい。なお、本発明において平均粒子径は、レーザー回析・散乱法による体積平均粒子径(MV)である。
【0048】
本発明の両親媒性アルギン酸粒子群の形状は、球状、略球状、扁平状、くぼみ状等の物理的、化学的に形状制御されたものや物理的に粉砕したもの等、特に限定されないが、風合い、滑り性、粒径分布を制御の観点から、球状、略球状、扁平状、くぼみ状等の物理的、化学的に形状制御されたものが好ましい。更に、略球状、扁平状、くぼみ状等の鋭角を持たない曲線で形成された異形粒子が、光学特性がよいため好ましい。
【0049】
本発明の両親媒性アルギン酸粒子群は、粒子100gあたりの吸水量(Aw、mL/100g)が粒子100gあたりの吸油量(Ao、mL/100g)以上((Aw/Ao)≧1)のものである。この関係を満たすことによって、使用時は疎水性の効果を発揮しつつ、水には溶けない状態を維持し、海水(塩水)中においては徐々に溶解し、粒子が微生物によって分解しやすくなる。前記効果を得やすいことから、Aw及びAoは、Aw/Ao>1を満たすことがより好ましく、Aw/Ao≧1.05を満たすことがより好ましく、Aw/Ao≧1.10を満たすことが更に好ましく、Aw/Ao≧1.15を満たすことが最も好ましい。なお、産業における実用的な疎水効果と海水での溶解、生分解性期間等の環境面を考慮すると、当該粒子群は、Aw/Ao≦20を満たすことが好ましく、Aw/Ao≦10を満たすことがより好ましく、Aw/Ao≦5を満たすことが更に好ましい。
【0050】
本発明の両親媒性アルギン酸粒子群の吸水量は、200mL/100g以下であることが好ましく、160mL/100g以下であることがより好ましく、150mL/100g以下であることが更に好ましく、130mL/100g以下が最も好ましい。吸水量が200mL/100g以下であれば、架橋効果による寸法安定性と本発明の特徴である疎水化剤による初期撥水効果によりアクリルやナイロン等の既存の汎用ポリマー粒子の用途と同様に損傷なく、使用可能となる。なお、吸水量の下限は、前記効果を得やすいことから、30mL/100gが好ましく、60mL/100g以上がより好ましく、80mL/100g以上が更に好ましい。
【0051】
一方、本発明の両親媒性アルギン酸粒子群は、その吸油量が、10mL/100g以上であることが好ましく、20mL/100g以上であることがより好ましく、30mL/100g以上であることが更に好ましい。吸油量が10mL/100g以上であれば、化粧品用途の場合、本発明の疎水化剤の効果により油剤との馴染みが良くなることで分散性が上がり、また、エマルションやクリームの安定性が上がる。吸油量の上限は、前記効果を得やすいことから、150mL/100g以下が好ましく、125mL/100g以下がより好ましく、100mL/100g以下が更に好ましく、80mL/100g以下が最も好ましい。
【0052】
吸水量及び吸油量は、後述する疎水化処理剤の種類、付着量等を調整することで、調整が可能である。なお、本発明において、吸油量は、JIS K 5101に記される煮あまに油法に準拠して測定される値である。吸水量は、以下の方法により得られる値である。500mLのビーカーに各粒子群1gを入れ、次にイオン交換水200mLを加え、30分間攪拌し、その後500mLの遠心管に移し、遠心分離機を用いて遠心分離を行う。遠心分離後、上清を静かに捨て遠心管より試料を取り出し、重量(Ww)を測定し、その後105℃の乾燥器で恒量になるまで乾燥し、乾燥(Dw)重量を測定し、下記式により吸水量を算出する。
吸水量(mL/100g)={(Ww-Dw)/Dw}×100
【0053】
本発明の両親媒性アルギン酸粒子群は、当該粒子群に水滴を落した時の接触角が30°以上150°以下のものである。接触角が前記範囲であれば、適度な疎水化の効果や、環境下における溶解性、分解性が十分に発揮される。前記効果を得やすいことから、接触角は、その下限が40°以上が好ましく、50°以上がより好ましく、60°以上が更に好ましい。接触角の上限は、140°以下が好ましく、135℃以下がより好ましく、125°以下が更に好ましい。150°を超えると疎水効果が大きすぎて、適度な吸水量が得られず、海洋中での生分解性に弊害をもたらす可能性がある。なお、産業における実用的な疎水効果と海水での溶解、生分解性期間等の環境面を考慮すると、当該粒子群の接触角は、好ましくは40°~140°であり、より好ましくは50°~135°であり、更に好ましくは60°~125°であり、最良は70°~120°である。
【0054】
また、本発明の両親媒性アルギン酸粒子群は、該両親媒性アルギン酸粒子群を0.1質量%となるように3質量%塩化ナトリウム水溶液に分散させ、72時間、240時間及び720時間経過後の該分散液の波長560nmの光の透過率をそれぞれSD1(%)、SD2(%)及びSD3(%)とし、該両親媒性アルギン酸粒子群を0.1質量%となるように水に分散させ、72時間、240時間及び720時間経過後の波長560nmの光の透過率をそれぞれWD1(%)、WD2(%)及びWD3(%)としたとき、WD1/SD1、WD2/SD2及びWD3/SD3の少なくとも1つが、0.9以下であることが好ましく、0.8以下であることがより好ましく、0.5以下であることが更に好ましい。0.9以下であれば、アルギン酸粒子の形状が変化し、溶解を伴い、透明化していく現象が確認できる。なお、WD1/SD1、WD2/SD2及びWD3/SD3の下限は、特に限定されないが、通常0.1程度である。
【0055】
720時間程度で溶解化現象が確認できない場合は、例えば海洋中において環境汚染(海洋汚染)、化学物質の吸着及び生態系への悪影響が懸念されることから、これらを超過し過ぎた長期間の粒子形状維持は好ましくない場合がある。よって、環境影響への配慮の観点からは、WD3/SD3≦0.9を満たすものが好ましく、WD2/SD2≦0.9を満たすものがより好ましく、WD1/SD1≦0.9を満たすものが更に好ましい。
【0056】
[両親媒性アルギン酸粒子群の製造方法]
本発明の両親媒性アルギン酸粒子群の製造方法としては、以下の方法が挙げられる。
(1)アルギン酸多価金属塩を含むアルギン酸粒子群を疎水化剤を用いて当該疎水化剤を完全に溶解させない状態で疎水化処理する工程を含む方法(方法1)
(2)アルギン酸1価塩及び完全に溶解していない疎水化剤を含む溶液を噴霧乾燥し、粒子を得る工程と、多価金属塩を用いて前記粒子を架橋処理すると同時に疎水化処理する工程とを含む方法(方法2)。
(3)水滴中にアルギン酸1価塩及び完全に溶解していない疎水化剤を含む油中水滴型(W/O)エマルションを形成する工程と、多価金属塩を用いて架橋処理すると同時に前記疎水化剤が完全に溶解していない状態で疎水化処理する工程とを含む方法(方法3)。
【0057】
方法1は、アルギン酸多価金属塩を含むアルギン酸粒子群を疎水化剤を用いて当該疎水化剤を完全に溶解させない状態で疎水化処理する工程を含むものである。前記アルギン酸粒子群は、公知の方法で製造することができる。例えば、特開平5-222208号公報に記載されているように、アルギン酸1価塩が溶解している溶液を噴霧乾燥させ、粒子化した後、多価金属塩を用いて架橋処理を行うことで製造することができる。前記アルギン酸1価塩や多価金属塩については後述する。
【0058】
また、アルギン酸粒子群は、水中にアルギン酸1価塩を含むW/Oエマルションを形成し、多価金属塩を用いて架橋処理することで製造することもできる。W/Oエマルションの形成方法としては、例えば、まず、水又は水及び親水性有機溶媒の混合溶媒にアルギン酸1価塩を溶解させた溶液Aを調製する。このとき、必要に応じて加熱してもよい。次に、溶液Aと疎水性有機溶媒とを混合し、攪拌装置やホモジナイザー等を用いて乳化させる。混合するときは、溶液Aを疎水性有機溶媒に加えてもよく、疎水性有機溶媒を溶液Aに加えてもよい。
【0059】
このとき、疎水性有機溶媒のかわりに、W/Oエマルション中の水滴の粒径を制御するため界面活性剤や高分子安定剤を疎水性有機溶媒に溶解させた溶液Bを用いてもよい。この場合、溶液A及び溶液Bを混合し、攪拌装置やホモジナイザー等を用いて乳化させる。混合するときは、溶液Aを溶液Bに加えてもよく、溶液Bを溶液Aに加えてもよい。
【0060】
また、W/Oエマルションの形成方法の他の例として、容器にアルギン酸1価塩、水、界面活性剤、疎水性有機溶媒、その他必要な成分を一括して仕込み、攪拌装置やホモジナイザー等を用いて乳化させてもよい。
【0061】
架橋処理は、W/Oエマルションに多価金属塩を含む溶液を添加し、攪拌することで行うことができる。または、多価金属塩を含む溶液にW/Oエマルションを添加し、攪拌することで行うことができる。多価金属塩を含む溶液については、方法2の説明において述べるものと同様のものを使用することができる。
【0062】
架橋処理は、必要に応じて加熱しながら行ってもよい。加熱は、分散液に多価金属塩を含む溶液を添加する際に行ってもよく、添加後攪拌する際に行ってもよく、これらの両方において行ってもよい。加熱温度は、10~100℃が好ましく、15~80℃が好ましい。処理時間は、0.5~24時間が好ましく、1~12時間が好ましい。
【0063】
架橋処理後、必要に応じて粒子の洗浄及び乾燥を行うことで、アルギン酸粒子群を得ることができる。洗浄は、通常の方法で行うことができ、例えば、架橋処理後溶媒を除去し、水を加えて遠心分離する等の方法が挙げられる。乾燥は、通常の方法で行うことができ、例えば、噴霧乾燥、真空乾燥、凍結乾燥等の方法で行うことができる。
【0064】
前記アルギン酸粒子群としては、市販品を使用することもでき、例えば、日清紡ケミカル(株)製フラビカファイン(登録商標)、(株)キミカ製アルギン酸カルシウムCAシリーズ等が挙げられる。
【0065】
アルギン酸粒子群を疎水化処理する方法としては、疎水化剤を溶媒に添加し、溶媒に疎水化剤が完全に溶解していない状態になるように調整し、そこにアルギン酸粒子群を入れ、分散させ、前記粒子表面又は表面と内部双方に疎水化剤を付着させる方法が挙げられる。溶媒に疎水化剤が完全に溶解していない状態は、溶媒を適切に選択したり、疎水化剤を溶媒に添加した後溶媒を加熱又は冷却したりすることにより、調整することができる。このとき、必要に応じて更に加熱や濃縮を行うと、効率よく付着させることができる。加熱する場合、疎水化剤の溶解度に注意を払う必要があるが、その温度は、10~100℃が好ましく、30~80℃がより好ましい。濃縮は、例えば、反応系を加熱し、蒸発した溶媒を除去することで行うことができる。疎水化処理時間は、0.5~24時間が好ましく、1~12時間がより好ましい。
【0066】
ここで、「疎水化剤が完全に溶解していない状態」とは、溶媒に疎水化剤が溶解している部分と分散している部分との両方を備える状態をいう。すなわち、少なくとも乳化部分と溶解部分との両方を有する状態のことである。また、この状態のとき、外観は、半透明であったり薄白色であったりする。完全に乳化状態にすると微小粒子として安定して存在し、付着するので、得られるアルギン酸粒子群は、吸水性が高く、疎水化の指標とする接触角が維持できない可能性がある。一方、完全に溶解状態にすると疎水化とされる接触角は十分保てるが、吸水性が低下する傾向があり、両親媒性が保てなくなる場合がある。
【0067】
疎水化剤が完全に溶解していない状態は、例えば、JIS K 7136、7361に記載されたヘーズメーターを用いて、セル厚1cmのセルに溶液を投入して測定した全光線透過率によって判断することができる。この場合、疎水化剤が完全に溶解していない状態としては、全光線透過率が35~85%である状態が好ましく、40~80%である状態がより好ましく、45~75%である状態が更に好ましい。
【0068】
前記溶媒は、アルギン酸粒子群が分散可能であって、疎水化剤を添加し、溶媒に疎水化剤が完全に溶解していない状態になるようにできるものを適宜選択すればよい。また、疎水化剤を添加した後、加熱又は冷却調整により溶解性を調整し、溶媒に疎水化剤が完全に溶解していない状態になるよう調整する場合は、疎水化剤を分散できる溶媒を適宜選択すればよい。このような溶媒としては、例えば、水;メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、イソブチルアルコール、tert-ブチルアルコール、1-ペンタノール、2-ペンタノール、3-ペンタノール、2-メチル-1-ブタノール、イソペンチルアルコール、tert-ペンチルアルコール、1-ヘキサノール、2-メチル-1-ペンタノール、4-メチル-2-ペンタノール、2-エチルブタノール、1-ヘプタノール、2-ヘプタノール、3-ヘプタノール、2-オクタノール、2-エチル-1-ヘキサノール、ベンジルアルコール、シクロヘキサノール等のアルコール類;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、イソプロピルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ジエチレンブリコールモノブチルエーテル等のエーテルアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸エチル、セロソルブアセテート等のエステル類;ペンタン、2-メチルブタン、n-ヘキサン、シクロヘキサン、2-メチルペンタン、2,2-ジメチルブタン、2,3-ジメチルブタン、ヘプタン、n-オクタン、イソオクタン、2,2,3-トリメチルペンタン、デカン、ノナン、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、p-メンタン、ジシクロヘキシル、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の脂肪族又は芳香族炭化水素類;四塩化炭素、トリクロロエチレン、クロロベンゼン、テトラブロムエタン等のハロゲン化炭化水素類;ジエチルエーテル、ジメチルエーテル、トリオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;メチラール、ジエチルアセタール等のアセタール類;ギ酸、酢酸、プロピオン酸等のカルボン酸類;ニトロプロペン、ニトロベンゼン、ジメチルアミン、モノエタノールアミン、ピリジン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N-メチル-2-ピロリドン、アセトニトリル等の硫黄、窒素含有有機化合物類;イオン液体等が挙げられる。これらの溶媒は、1種単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0069】
前記疎水化剤としては、前述したものを使用することができる。疎水化剤として、特に前記塩化合物を用いると、イオン架橋されている多価の金属イオンの少なくとも一部とイオン交換を起こし、疎水化剤と化学結合を伴う。そのため、処理後は疎水性が強化された単分散架橋粒子が得られるため好ましい。さらに、化学結合を伴った疎水化をすることで親水性の強弱を定量的に制御することができる。前記疎水化剤としては、カルボン酸塩、硫酸エステル塩、スルホン酸塩、硫酸エステル塩が好ましく、バイオ由来が多いカルボン酸塩やアミノ酸誘導体塩がより好ましい。そうすることで環境に配慮した粒子が得られる。
【0070】
疎水化処理は、溶媒中のアルギン酸粒子群と疎水化剤との質量比が、アルギン酸粒子群:疎水化剤=99.9:0.1~70:30となるように行うことが好ましく、99.5:0.5~80:20となるように行うことがより好ましく、99:1~85:15となるように行うことがより一層好ましく、98:2~90:10となるように行うことが更に好ましい。
【0071】
疎水化処理後、必要に応じて粒子の洗浄及び乾燥を行うことで、両親媒性アルギン酸粒子群を得ることができる。洗浄は、通常の方法で行うことができ、例えば、疎水化処理後溶媒を除去し、水を加えて遠心分離する等の方法が挙げられる。乾燥は、通常の方法で行うことができ、例えば、噴霧乾燥、真空乾燥、凍結乾燥等の方法で行うことができる。
【0072】
方法2は、アルギン酸1価塩及び完全に溶解していない疎水化剤を含む溶液を噴霧乾燥し、粒子を得る工程と、多価金属塩を用いて前記粒子を架橋処理すると同時に疎水化処理する工程とを含む方法である。
【0073】
前記アルギン酸1価塩は、無機塩でも有機塩でもよく、例えば、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、アルギン酸アンモニウム等が挙げられる。また、前記アルギン酸1価塩は、その1質量%又は10質量%水溶液の粘度が、0.01~2,000mPa・sであるものが好ましく、0.1~1,000mPa・sであるものがより好ましく、1.0~500mPa・sであるものが最も好ましい。生産性を考えると、その10質量%水溶液の粘度が前記範囲を満たすものがより好ましい。なお、前記粘度は、B型粘度計BL形による20℃における測定値である。
【0074】
前記アルギン酸1価塩及び疎水化剤を含む溶液に用いる溶媒としては、水、又は水と親水性有機溶媒との混合溶媒が好ましい。水としては、水道水、イオン交換水、蒸留水等が挙げられる。親水性有機溶媒としては、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、プロピルセルソルブ、ジエチレンブリコールモノブチルエーテル、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、メチルカルビトール、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、エチルカルビトールアセテート、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、アセトン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、トリオキサン、テトラヒドロフラン、N-メチル-2-ピロリドン、ジメチルアミン、モノエタノールアミン、ピリジン、アセトニトリル等が挙げられる。これらは、1種単独で又は2種以上混合して用いることができる。これらのうち、水、又は水と炭素数1~3の低級アルコールとの混合溶媒が好ましい。
【0075】
前記溶媒には、必要に応じて更に疎水性有機溶媒を加えてもよい。疎水性有機溶媒としては、1-ブタノール、2-ブタノール、イソブチルアルコール、tert-ブチルアルコール、1-ペンタノール、2-ペンタノール、3-ペンタノール、2-メチル-1-ブタノール、イソペンチルアルコール、tert-ペンチルアルコール、1-ヘキサノール、2-メチル-1-ペンタノール、4-メチル-2-ペンタノール、2-エチルブタノール、1-ヘプタノール、2-ヘプタノール、3-ヘプタノール、2-オクタノール、2-エチル-1-ヘキサノール、ベンジルアルコール、シクロヘキサノール等の高級アルコール類;ブチルセロソルブ等のエーテルアルコール類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸エチル、セロソルブアセテート等のエステル類;ペンタン、2-メチルブタン、n-ヘキサン、シクロヘキサン、2-メチルペンタン、2,2-ジメチルブタン、2,3-ジメチルブタン、ヘプタン、n-オクタン、イソオクタン、2,2,3-トリメチルペンタン、デカン、ノナン、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、p-メンタン、ジシクロヘキシル、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の脂肪族又は芳香族炭化水素類;四塩化炭素、トリクロロエチレン、クロロベンゼン、テトラブロムエタン等のハロゲン化炭化水素類;ジエチルエーテル、ジメチルエーテル等のエーテル類;メチラール、ジエチルアセタール等のアセタール類;ヘキサメチルシクロトリシロキサン(D3)、オクタメチルシクロテトラシロキサン(D4)、デカメチルシクロペンタシロキサン(D5)、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン(D6)、テトラデカメチルシクロヘプタシロキサン(D7)、ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、デカメチルテトラシロキサン等のジメチルポリシロキサン、メチルトリメチコン、メチルフェニルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン、ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン、トリメチルシロキシフェニルジメチコン、カプリリルメチコン、セチルジメチコン等の環状、直鎖状又は分岐状のシリコーンオイル類及びその共重合体;ニトロプロペン、ニトロベンゼン等の硫黄、窒素含有有機化合物類等が挙げられる。
【0076】
なお、本発明において親水性有機溶媒とは、水との同容量混合液が均一な外観を維持するものを意味し、疎水性有機溶媒とは、1気圧(1.013×105Pa)において、温度20℃で同容量の純水と緩やかにかき混ぜ、流動がおさまった後に当該混合液体が均一な外観を維持できないものを意味する。
【0077】
方法2において、疎水化剤としては前述したものを使用できるが、前記溶媒に疎水化剤が完全に溶解していない状態になるようなものを適宜選択する必要がある。例えば、カルボン酸塩、アミノ酸誘導体塩、スルホン酸塩、硫酸エステル塩が好ましく、特に、バイオ由来が多いカルボン酸塩やアミノ酸誘導体塩が好ましい。そうすることで、環境に配慮した粒子が得られる。なお、加熱や冷却により溶解性を調整し、溶媒に疎水化剤が完全に溶解していない状態になるようなものであれば、疎水化剤として使用することができる。
【0078】
方法2は、噴霧乾燥時には少なくとも溶媒と温度調整の何れかの調整によりアルギン酸1価塩は溶解し、疎水化剤は溶媒に完全に溶解していない状態で噴霧乾燥することを特徴とする。
【0079】
前記溶液中、アルギン酸1価塩と疎水化剤との混合比は、アルギン酸1価塩:疎水化剤=99.9:0.1~70:30が好ましく、99.5:0.5~80:20がより好ましく、99:1~85:15がより一層好ましく、98:2~90:10が更に好ましい。混合比が前記範囲であれば、十分な疎水性が得られ、架橋度が低下するおそれもない。
【0080】
前記溶液中、固形分(アルギン酸1価塩及び疎水化剤)の濃度は、1~80質量%が好ましく、5~50質量%がより好ましい。
【0081】
噴霧乾燥は、公知の方法で行うことができる。例えば、前記溶液を熱風中へ噴霧することによって行われ、例えば通常のディスク型や二流体ノズル型、ジェット気流型等の噴霧乾燥機を用いることができる。ディスクの回転数は、1,000~40,000rpm程度で行うことができる。熱風の温度は、水分を蒸発するために必要な温度で60~250℃が好ましい。また、前記溶液を加熱しながら、熱風中へ噴霧してもよい。
【0082】
次に、噴霧乾燥によって得られた粒子(以下、架橋前粒子ともいう。)を、多価金属塩を用いて架橋する。架橋処理は、例えば、前記架橋前粒子を溶媒に分散させ、該分散液に多価金属塩を含む溶液を添加し、攪拌することで行うことができる。または、多価金属塩を含む溶液に前記分散液を添加し、攪拌してもよい。
【0083】
前記架橋前粒子は、その濃度が好ましくは1~80質量%、好ましくは30~60質量%となるように溶媒に分散させる。前記粒子を分散させる溶媒としては、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール等の低級アルコール類;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、イソプロピルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ジエチレンブリコールモノブチルエーテル等のエーテルアルコール類;アセトン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリドン、アセトニトリル等の親水性有機溶媒が好ましい。特に、低級アルコールの単一溶媒又は低級アルコールを含む混合溶媒が好ましい。
【0084】
前記多価金属塩は、カルシウム塩、ストロンチウム塩、マグネシウム塩、バリウム塩、ラジウム塩、鉛塩、亜鉛塩、ニッケル塩、鉄塩、銅塩、カドミウム塩、コバルト塩、マンガン塩等が挙げられるが、環境面、安全性、汎用性の点から、カルシウム塩が好ましい。前記多価金属塩として具体的には、塩化カルシウム、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、酸化カルシウム等が挙げられるが、水への溶解性、取扱性、コスト等から塩化カルシウムが好ましい。
【0085】
多価金属塩を含む溶液中の多価金属塩の濃度は、1~40質量%が好ましく、10~30質量%がより好ましい。前記溶液の溶媒は、水;メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール等の低級アルコール系溶媒、及びこれらの混合溶媒が好ましいが、粒子を溶解させない範囲で目的の濃度になるよう塩を溶解できれば、他の有機溶剤との混合溶媒でも構わない。
【0086】
架橋処理は、必要に応じて加熱しながら行ってもよい。加熱は、分散液に多価金属塩を含む溶液を添加する際に行ってもよく、添加後攪拌する際に行ってもよく、これらの両方において行ってもよい。このときの温度は、10~100℃が好ましく、20~80℃が好ましい。処理時間は、0.5~24時間が好ましく、1~12時間が好ましい。加熱することによって、疎水化剤の溶解度を上昇させることができ、また溶媒の粘性が低下するため、粒子の内部にまで疎水化剤が含浸しやすくなる。
【0087】
前記架橋前粒子にはアルギン酸1価塩及び疎水化剤が含まれているため、架橋処理を行うことで、同時に疎水化処理も行われる。
【0088】
架橋処理後、必要に応じて粒子の洗浄及び乾燥を行うことで、両親媒性アルギン酸粒子群を得ることができる。洗浄は、通常の方法で行うことができ、例えば、疎水化処理後溶媒を除去し、水を加えて遠心分離する等の方法が挙げられる。乾燥は、通常の方法で行うことができ、例えば、噴霧乾燥、真空乾燥、凍結乾燥等の方法で行うことができる。
【0089】
方法3は、水滴中にアルギン酸1価塩及び疎水化剤を含むW/Oエマルションを形成する工程と、多価金属塩を用いて架橋処理すると同時に疎水化剤を用いて当該疎水化剤を完全に溶解させない状態で疎水化処理する工程とを含む方法である。前記アルギン酸1価塩としては、方法2の説明において述べたものと同様のものが挙げられる。また、疎水化剤はW/Oエマルションとしたときに水相に存在するものである必要があり、前述したカルボン酸塩、アミノ酸誘導体塩、スルホン酸塩、硫酸エステル塩が好ましく、特に、バイオ由来が多いカルボン酸塩やアミノ酸誘導体塩がより好ましい。そうすることで環境に配慮した粒子が得られる。
【0090】
W/Oエマルションの形成方法の一例を説明する。まず、水又は水及び親水性有機溶媒の混合溶媒にアルギン酸1価塩は溶解し、疎水化剤は完全に溶解していない状態となる溶液Aを調製する。このとき、必要に応じて加熱や冷却等の温度調整により目的の状態を調整してもよい。次に、溶液Aと疎水性有機溶媒とを混合し、攪拌装置やホモジナイザー等を用いて乳化させる。混合するときは、溶液Aを疎水性有機溶媒に加えてもよく、疎水性有機溶媒を溶液Aに加えてもよい。
【0091】
このとき、疎水性有機溶媒のかわりに、W/Oエマルション中の水滴の粒径を制御するため界面活性剤や高分子安定剤を疎水性有機溶媒に溶解させた溶液Bを用いてもよい。この場合、溶液A及び溶液Bを混合し、攪拌装置やホモジナイザー等を用いて乳化させる。混合するときは、溶液Aを溶液Bに加えてもよく、溶液Bを溶液Aに加えてもよい。
【0092】
また、W/Oエマルションの形成方法の他の例として、容器にアルギン酸1価塩、疎水化剤、水、界面活性剤、疎水性有機溶媒、その他必要な成分を一括して仕込み、攪拌装置やホモジナイザー等を用いて乳化させてもよい。
【0093】
アルギン酸1価塩と疎水化剤との混合比は、アルギン酸1価塩:疎水化剤=99.9:0.1~70:30が好ましく、99.5:0.5~80:20がより好ましく、99:1~85:15がより一層好ましく、98:2~90:10が更に好ましい。混合比が前記範囲であれば、十分な疎水性が得られ、架橋度が低下するおそれもない。
【0094】
W/Oエマルションを形成する際に、溶液Aの状態を安定させるため加熱や冷却操作を行ってもよい。適切な温度調節によって、W/Oエマルションを安定させることができるとともに、疎水化剤の望ましい状態(疎水化剤が完全に溶解していない状態)をより安定させることができるため、アルギン酸1価塩と均一化させることができる。W/Oエマルションを形成する際の温度は、疎水化剤の成分、溶媒等にも左右するが、5~100℃が好ましく、15~80℃が好ましい。
【0095】
W/Oエマルションを形成した後、架橋処理を行う。架橋処理はW/Oエマルションに多価金属塩を含む溶液を添加し、攪拌することで行うことができる。または、多価金属塩を含む溶液にW/Oエマルションを添加し、攪拌してもよい。多価金属塩を含む溶液については、方法2の説明において述べたものと同様のものを使用することができる。
【0096】
架橋処理は、必要に応じて加熱しながら行ってもよい。加熱は、分散液に多価金属塩を含む溶液を添加する際に行ってもよく、添加後攪拌する際に行ってもよく、これらの両方において行ってもよい。加熱温度は、10~100℃が好ましく、15~80℃が好ましい。処理時間は、0.5~24時間が好ましく、1~12時間が好ましい。加熱することによって、疎水化剤の溶解度を上昇させることができ、また溶媒の粘性が低下するため、粒子の内部にまで疎水化剤が含浸しやすくなる。
【0097】
前記W/Oエマルションの水相にはアルギン酸1価塩及び疎水化剤が含まれているため、架橋処理を行うことで、同時に目的の疎水化処理も行われる。
【0098】
架橋処理後、必要に応じて粒子の洗浄及び乾燥を行うことで、両親媒性アルギン酸粒子群を得ることができる。洗浄は、通常の方法で行うことができ、例えば、架橋処理後溶媒を除去し、水を加えて遠心分離する等の方法が挙げられる。乾燥は、通常の方法で行うことができ、例えば、噴霧乾燥、真空乾燥、凍結乾燥等の方法で行うことができる。
【0099】
方法2又は方法3によれば、疎水化剤を表面だけでなく内部にも含浸させることができるため、より親水性と疎水性のバランスを調整することができる。
【0100】
なお、得られた両親媒性アルギン酸粒子群は、必要に応じて公知の設備によって、表面処理を行ったり、粉砕処理を行ったりしてもよい。
【0101】
[両親媒性アルギン酸粒子群の用途]
本発明の両親媒性アルギン酸粒子群は、水、親水性有機溶媒、疎水性有機溶媒又はこれらの混合溶媒に分散させ、分散液として使用できる。
【0102】
本発明の両親媒性アルギン酸粒子群は、液体、塗膜、フィルム、板材、紙等の成型品への添加剤として利用することができる。例えば、光散乱剤や光学フィルタ材料、着色剤、化粧品、吸収剤、吸着剤、インク、接着剤、電磁波シールド材、蛍光センサー、生体マーカー、記録材料、記録素子、偏光材料、薬物送達システム(DDS)用薬物保持体、バイオセンサー、DNAチップ、検査薬、焼成空孔化成形物、アンチブロッキング剤等に広く利用することができる。
【0103】
更に、窓ガラス製品やカーテン、壁材等のインテリア製品等によって室内、及び車内等へ入射する光又は紫外線(UV)を遮蔽することは、人体の日焼け及び人体への悪影響を防ぐばかりでなく、室内や車内の装飾品等の劣化を防ぐことができるという点でも有用となる。
【0104】
本発明の両親媒性アルギン酸粒子群は、化粧品用添加剤として好適である。天然高分子由来の主成分であり、軽量性、触感性、流動特性、溶液分散性等を向上させつつ、リキッド系等の液状成分を多く使用する用途へ展開が可能となる。また、くぼみを有す形状の場合は、その独特の形状から一般の球状とは異なる付着力を有しており、光散乱性等の向上が得られるとともに、例えばファンデーション等の成形体の固着力、塗布後の保持力を向上させる効果がある。更に、その光学特性によって肌を明るく見せ、ぼかし効果によりカバー力を向上できる。また、形状特有のすべり性によって、肌の上でののびに優れ、更にキメの溝を細かく埋めることで、シワや毛穴を目立たなくしたり、製品全体の流れ性を自由にコントロールしたりすることができる。好ましい添加量としては、製品配合量に対して0.1~50質量%であり、好ましくは0.5~30質量%である。UV散乱効果、ぼかし効果等の光散乱性、流動性、成形性、付着向上、仕上り感等用途/目的に応じて適宜調整することができる。なお、本発明者らの検討では化粧品用添加剤としては、1~20質量%が特に好ましい。なお、市販の粒子と適宜調整し組み合わせて使用してもよい。
【0105】
特に、効果が高い化粧品として、具体的には、スキンケア製品、頭髪製品、制汗剤製品、メイクアップ製品、UV防御製品、香料製品等であってよい。例えば、乳液、クリーム、ローション、カラミンローション、サンスクリーン剤、化粧下地料、サンタン剤、アフターシェーブローション、プレシェーブローション、パック料、クレンジング料、洗顔料、アクネ対策化粧料、エッセンス等の基礎化粧料、ファンデーション、白粉、マスカラ、アイシャドウ、アイライナー、アイブロー、チーク、ネイルカラー、リップクリーム、口紅等のメイクアップ化粧料、シャンプー、リンス、コンディショナー、ヘアカラー、ヘアトニック、セット剤、ボディーパウダー、育毛剤、デオドラント、脱毛剤、石鹸、ボディーシャンプー、入浴剤、ハンドソープ、香水等が挙げられる。また、製品の形態についても特に限定は無く、液状、乳液状、クリーム状、固形状、ペースト状、ゲル状、粉末状、多層状、ムース状、スプレー状等であってよい。これら化粧品の添加剤として有用な効果が期待できる。
【0106】
本発明の両親媒性アルギン酸粒子群は、スクリーン印刷、オフセット印刷、プロセス印刷、グラビア印刷、タンポ印刷、コーター、インクジェット等に用いられる印刷インク用添加剤、マーキングペン用、ボールペン用、万年筆用、筆ペン用、マジック等の筆記具インク用添加剤、クレヨン、絵の具、消しゴム等の文房具類の添加剤として利用できる。
【0107】
本発明の両親媒性アルギン酸粒子群は、刷毛塗り、スプレー塗装、静電塗装、電着塗装、流し塗り、ローラー塗り、浸漬塗装等に用いられる塗料用添加剤として好適である。例えば、自動車、電車、ヘリコプター、船、自転車、雪上車、ロープウェイ、リフト、フォバークラフト、自動二輪車等の輸送用機器、サッシュ、シャッター、貯水タンク、ドア、バルコニー、建築用外板パネル、屋根材、階段、天窓、コンクリート塀等の建築用部材、建築物屋内外の外壁や内装、ガードレール、歩道橋、防音壁、標識、高速道路側壁、鉄道高架橋、橋梁等の道路部材、タンク、パイプ、塔、煙突等のプラント部材、ビニールハウス、温室、サイロ、農業用シート等の農業用設備、電柱、送電鉄塔、パラボラアンテナ等の通信用設備、電気配線ボックス、照明器具、エアコン屋外器、洗濯機、冷蔵庫、電子レンジ等の電気機器、及びそのカバー、モニュメント、墓石、舗装材、風防シート、防水シート、建築用養生シート等の物品に用いられる塗料用添加剤として好適である。
【0108】
塗料の形態としては、溶剤型塗料のほかに水分散型塗料、非水分散型塗料、粉体塗料、電着型塗料等、必要に応じて適宜選択することができる。
【実施例
【0109】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記実施例に限定されない。なお、下記実施例及び比較例において粒度分布及び体積平均粒子径(MV)は、MICROTRACK MT3000(日機装(株)製)を用いて測定した。
【0110】
[1]粒子群の製造
[実施例1-1]粒子群A1の製造
2,000mLフラスコに以下に示す各成分を仕込み、攪拌機を用いて1時間攪拌し、分散させた。
アルギン酸カルシウム球状ビーズ 194.0g
(日清紡ケミカル(株)製:商品名フラビカファイン、MV=20μm)
イオン交換水 80.0g
エタノール 720.0g
ラウリン酸ナトリウム 6.0g
【0111】
次に、オイルバスにより徐々に加熱し、ラウリン酸ナトリウムが前記混合溶媒に完全に溶解していない状態となる35℃で3時間一定に保持した。なお、ラウリン酸ナトリウムが前記混合溶媒に35℃で完全に溶解していない状態になることは、事前に全光線透過率を測定することで確認した(全光線透過率:74%)。その後、オイルバスにより徐々に加熱し、95℃で2時間加熱した後、蒸留により溶媒を除去して反応溶液を濃縮しながら表面処理を施すことで疎水化処理を行った。冷却後、イオン交換水により遠心洗浄を繰り返し、最終的に10質量%の水分散液とした。この分散液を、噴霧乾燥機を使用して噴霧乾燥(熱風温度220℃)させ、目的の粒子群A1を得た。粒子群A1を走査型電子顕微鏡((株)日立ハイテクノロジーズ製S-4800、以下、SEMという。)で観察し、形状を確認したところ、疎水化処理前とほぼ同等の粒径であった。また、粒度分布測定によって粒度分布を確認したところ、疎水化処理前と同様な分布を示したことから、凝集が無く単分散した粒子群であることを確認した。粒子群A1のSEM写真(2,000倍)を図1に示す。
【0112】
[実施例1-2]粒子群A2の製造
5,000mLの加熱可能容器に以下に示す各成分を仕込み、攪拌機を用いて分散させた。
アルギン酸ナトリウム 313.6g
((株)キミカ製:商品名キミカアルギンULV-L3(40mPa・s、10質量%水溶液))
イオン交換水 4260.0g
ステアロイルグルタミン酸ナトリウム 6.4g
【0113】
その後、60℃に加熱し、2時間かけて溶解させ、7.0質量%水溶液を調製した。次に、得られた水溶液を、ステアロイルグルタミン酸ナトリウムが前記溶媒に完全に溶解していない状態となる20℃で温度調整を行いつつ噴霧乾燥機を使用して噴霧乾燥(熱風温度200℃)させ、粒子群を得た。なお、ステアロイルグルタミン酸ナトリウムが前記溶媒に20℃で完全に溶解していない状態になることは、事前に全光線透過率を測定することで確認した(全光線透過率:65%)。得られた粒子群をSEMで観察し、形状を確認したところ、くぼみを有する扁平状の粒子であり、粒度分布においてMVが7μmの単分散した粒子群であった。
得られた粒子群300.0gをエタノール300.0gに入れ、攪拌し、50.0質量%のエタノール分散液とした後、予め作製しておいた20.0質量%塩化カルシウム水溶液へ攪拌しながら滴下し、架橋処理を行い、滴下終了後、更に50℃で2時間攪拌した。
攪拌終了後、イオン交換水により遠心洗浄を繰り返し、最終的に10質量%の水分散液とした。この分散液を、噴霧乾燥機を使用して噴霧乾燥させ、目的の粒子群A2を得た。粒子群A2をSEMで観察し、形状を確認したところ、架橋処理前とほぼ同等の粒径であった。また、粒度分布測定によって粒度分布を確認したところ、架橋処理前と同様な分布を示したことから、凝集が無く単分散した粒子群であることを確認した。粒子群A2のSEM写真(1,000倍)を図2に示す。
【0114】
[実施例1-3]粒子群A3の製造
5,000mLの加熱可能容器に以下に示す各成分を仕込み、ホモジナイザー(IKA社製T25)を用いて5分間攪拌し、乳化させた。
アルギン酸ナトリウム 200.0g
((株)キミカ製:商品名キミカアルギンULV-L3G(20mPa・s、10質量%水溶液))
イオン交換水 800.0g
ヘキサン 1000.0g
ソルビタンモノオレアート 5.0g
【0115】
そこへ、15.0質量%塩化カルシウム水溶液を滴下し、滴下終了後、50℃で2時間攪拌を行った。攪拌後冷却し、エタノール及びイオン交換水により遠心洗浄を繰り返し、真空乾燥し、粒子群を得た。得られた粒子群をSEMで観察し、形状を確認したところ、球状の粒子であった。また、粒度分布測定の結果、MVが10μmの単分散したアルギン酸カルシウム粒子群であった(以下、アルギン酸カルシウム粒子群Aという。)。
【0116】
次に、2,000mLフラスコに以下に示す各成分を仕込み、攪拌機を用いて1時間攪拌し、分散させた。
アルギン酸カルシウム粒子群A 142.5g
イオン交換水 648.0g
エタノール 72.0g
ステアリン酸ナトリウム 7.5g
【0117】
その後、オイルバスにより徐々に加熱し、ステアリン酸ナトリウムが前記混合溶媒に完全に溶解していない状態となる50℃で3時間一定に保持した。なお、ステアリン酸ナトリウムが前記混合溶媒に50℃で完全に溶解していない状態になることは、事前に全光線透過率を測定することで確認した(全光線透過率:58%)。その後、オイルバスにより徐々に加熱し、95℃で2時間、蒸留により溶媒を除去して反応溶液を濃縮しながら表面処理を施すことで疎水化処理を行った。冷却後、イオン交換水により遠心洗浄を繰り返し、最終的に10質量%の水分散液とした。この分散液を、噴霧乾燥機を使用して噴霧乾燥(熱風温度200℃)させ、目的の粒子群A3を得た。粒子群A3をSEMで観察し、形状を確認したところ、疎水化処理前とほぼ同等の粒径であった。また、粒度分布測定によって粒度分布を確認したところ、疎水化処理前と同様な分布を示したことから、凝集が無く単分散した粒子群であることを確認した。粒子群A3のSEM写真(2,000倍)を図3に示す。
【0118】
[実施例1-4]粒子群A4の製造
5,000mLの加熱可能容器にイオン交換水1,725.0gを入れ、50℃まで昇温し、アルギン酸ナトリウム(富士化学工業(株)製:商品名スノーアルギンSSL(40mPa・s、1質量%水溶液))148.5g及びミリストイルグルタミン酸ナトリウム1.5gを投入し、完全に溶解させた。そこへ、予めソルビタントリオレアート12.0gをヘキサン1,550.0gに溶解した溶液を投入し、温度を維持した状態でホモジナイザー(IKA社製T25)を用いて5分間攪拌し、乳化させた。
【0119】
その後、オイルバスにより徐々に加熱し、ミリストイルグルタミン酸ナトリウムが前記溶媒に完全に溶解していない状態となる45℃で一定に保持したまま、20.0質量%塩化カルシウム水溶液をゆっくり滴下した。なお、ミリストイルグルタミン酸ナトリウムが前記溶媒に45℃で完全に溶解していない状態になることは、事前に全光線透過率を測定することで確認した(全光線透過率:66%)。滴下終了後、同一温度で2時間攪拌し後、更に65℃までゆっくりと昇温した後、温度を維持しながら更に2時間攪拌を行った。
【0120】
攪拌終了後、室温まで冷却し、エタノール及びイオン交換水により遠心洗浄を繰り返し、最終的に10質量%の水分散液とした。この分散液を、噴霧乾燥機を使用して噴霧乾燥(熱風温度200℃)させ、目的の粒子群A4を得た。粒子群A4をSEMで観察し、形状を確認したところ、球状の粒子であった。また、粒度分布測定の結果、MVが3μmの単分散した粒子群であった。
【0121】
[実施例1-5]粒子群A5の製造
5,000mLフラスコに以下に示す各成分を仕込み、攪拌機を用いて3時間攪拌し、溶解させた。
アルギン酸カリウム 285.0g
((株)キミカ製:商品名キミカアルギンK-ULV-L3(40mPa・s、10質量%水溶液))
イオン交換水 3450.0g
パルミチン酸ナトリウム 15.0g
【0122】
得られた水溶液を、パルミチン酸ナトリウムが前記溶媒に完全に溶解していない状態となる20℃で温度調整を行いつつ噴霧乾燥機を使用して噴霧乾燥(熱風温度200℃)させ、粒子群を得た。なお、パルミチン酸ナトリウムが前記溶媒に20℃で完全に溶解していない状態になることは、事前に全光線透過率を測定することで確認した(全光線透過率:61%)。得られた粒子群をSEMで観察し、形状を確認したところ、球状又は略球状の粒子であった。また、粒度分布測定の結果、MVが33μmの単分散した粒子群であった。
【0123】
得られた粒子群270.0gをエタノール330.0gに入れ、攪拌し、45.0質量%のエタノール分散液とした後、予め作製しておいた20.0質量%塩化カルシウム水溶液へ攪拌しながら滴下し、架橋処理を行い、滴下終了後、更に50℃で3時間攪拌した。
攪拌終了後、イオン交換水により遠心洗浄を繰り返し、最終的に15質量%の水分散液とした。この分散液を、噴霧乾燥機を使用して噴霧乾燥させ、目的の粒子群A5を得た。粒子群A5をSEMで観察し、形状を確認したところ、架橋処理前とほぼ同等の粒径であった。また、粒度分布測定によって粒度分布を確認したところ、架橋処理前と同様な分布を示したことから、凝集が無く単分散した粒子群であることを確認した。
【0124】
[実施例1-6]粒子群A6の製造
5,000mLの加熱可能容器に以下に示す各成分を仕込み、攪拌機を用いて分散させた。
アルギン酸ナトリウム 368.0g
((株)キミカ製:商品名キミカアルギンULV-L3(40mPa・s、10質量%水溶液))
イオン交換水 3500.0g
ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム 32.0g
【0125】
その後、60℃に加熱し、2時間かけて溶解させ、10.0質量%水溶液を調製した。次に、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムが前記溶媒に完全に溶解していない状態となる50℃で温度調整を行いつつ、前記水溶液を噴霧乾燥機を使用して噴霧乾燥(熱風温度200℃)させ、粒子群を得た。なお、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムが前記溶媒に50℃で完全に溶解していない状態になることは、事前に全光線透過率を測定することで確認した(全光線透過率:70%)。得られた粒子群をSEMで観察し、形状を確認したところ、くぼみを有する扁平状の粒子であり、粒度分布においてMVが8μmの単分散した粒子群であった。
得られた粒子群300.0gをエタノール300.0gに入れ、攪拌し、50.0質量%のエタノール分散液とした後、予め作製しておいた20.0質量%塩化カルシウム水溶液へ攪拌しながら滴下し、架橋処理を行い、滴下終了後、更に40℃で2時間攪拌した。
攪拌終了後、イオン交換水により遠心洗浄を繰り返し、最終的に10質量%の水分散液とした。この分散液を、噴霧乾燥機を使用して噴霧乾燥させ、目的の粒子群A6を得た。粒子群A6をSEMで観察し、形状を確認したところ、架橋処理前とほぼ同等の粒径であった。また、粒度分布測定によって粒度分布を確認したところ、架橋処理前と同様な分布を示したことから、凝集が無く単分散した粒子群であることを確認した。
【0126】
[実施例1-7]粒子群A7の製造
5,000mLの加熱可能容器に以下に示す各成分を仕込み、攪拌機を用いて分散させた。
アルギン酸ナトリウム 368.6g
((株)キミカ製:商品名キミカアルギンULV-L3(40mPa・s、10質量%水溶液))
イオン交換水 3078.0g
エタノール 342.0g
ドデカン二酸二ナトリウム 11.4g
【0127】
その後、60℃に加熱し、2時間かけて溶解させ、10質量%水溶液を調製した。次に、事前に確認調整したドデカン二酸二ナトリウムが前記溶媒に完全に溶解していない状態となる45℃で温度調整を行いつつ、前記水溶液を噴霧乾燥機を使用して噴霧乾燥(熱風温度200℃)させ、粒子群を得た。なお、ドデカン二酸二ナトリウムが前記溶媒に45℃で完全に溶解していない状態になることは、事前に全光線透過率を測定することで確認した(全光線透過率:68%)。得られた粒子群をSEMで観察し、形状を確認したところ、くぼみを有する扁平状の粒子であり、粒度分布においてMVが12μmの単分散した粒子群であった。
得られた粒子群300.0gをイソプロピルアルコール300.0gに入れ、攪拌し、50.0質量%のイソプロピルアルコール分散液とした後、予め作製しておいた20.0質量%塩化カルシウム水溶液へ攪拌しながら滴下し、架橋処理を行い、滴下終了後、更に50℃で2時間攪拌した。
攪拌終了後、イオン交換水により遠心洗浄を繰り返し、最終的に10質量%の水分散液とした。この分散液を、噴霧乾燥機を使用して噴霧乾燥させ、目的の粒子群A7を得た。粒子群A7をSEMで観察し、形状を確認したところ、架橋処理前とほぼ同等の粒径であった。また、粒度分布測定によって粒度分布を確認したところ、架橋処理前と同様な分布を示したことから、凝集が無く単分散した粒子群であることを確認した。
【0128】
[比較例1-1]
実施例1-1で使用したアルギン酸カルシウム球状ビーズ(日清紡ケミカル(株)製:商品名フラビカファイン、MV=20μm)を、粒子群B1とした。
【0129】
[比較例1-2]粒子群B2の製造
5,000mLフラスコに以下に示す各成分を仕込み、攪拌機を用いて2時間攪拌し、溶解させた。
アルギン酸ナトリウム 400.0g
((株)キミカ製:商品名キミカアルギンULV-L3G(20mPa・s)10質量%)
イオン交換水 3600.0g
【0130】
得られた水溶液を噴霧乾燥機を使用して噴霧乾燥(熱風温度200℃)させ、粒子群B2を得た。得られた粒子をSEMで観察し、形状を確認したところ、球状又は略球状の粒子であった。また、粒度分布測定の結果、MVが11μmの単分散した粒子であった。
【0131】
[比較例1-3]
実施例1-2の途中で得られた架橋処理前の粒子群を、粒子群B3とした。
【0132】
[比較例1-4]粒子群B4の製造
2,000mLフラスコに、以下に示す各成分を一括で仕込み、国際公開第2016/181877号の比較例1-3と同じ方法で、平均粒子径が5μmのポリメタクリル酸メチル単一の球状ポリマー粒子群B4を作製した。
水 1386.5g
メタクリル酸メチル 173.4g
ラウリルパーオキサイド 8.6g
ポリビニルピロリドン(K-30) 17.3g
【0133】
粒子群A1~A7及びB1~B4の形状、主原料、疎水化剤、MVを、まとめて表1に示す。
【0134】
【表1】
【0135】
[2]基本物性の測定
[実施例2-1~2-7、比較例3-1~3-4]
粒子群A1~A7及びB1~B4について、下記方法によって、接触角、吸水量及び吸油量を測定し、耐熱性、耐薬品性及び耐熱薬品性を評価した。
【0136】
[接触角の測定]
粒子群A1~A7及びB1~B4をそれぞれ両面テープを貼り付けたアクリル板に塗布した後、水滴を落とし、接触角計(協和界面科学(株)製Drop Master 300)を用いて30秒後の接触角を測定した。結果を表2に示す。
【0137】
[吸油量の測定]
吸油量はJIS K 5101に記される煮あまに油法に準拠して測定した。結果を表2に示す。
【0138】
[吸水量の測定]
500mLのビーカーに各粒子群1gを入れ、次にイオン交換水200mLを加え、30分間懸濁攪拌(150rpm、25℃)を行い、その後500mLの遠心管に移し、遠心分離機(himac CR20GII、工機ホールディングス(株)製)を用いて2,000G、30分間遠心分離を行った。遠心分離後、上清を静かに捨て遠心管より試料を取り出し重量を測定(Ww)し、その後105℃の乾燥器で恒量になるまで乾燥し乾燥重量を測定(Dw)し、下記式により吸水量を算出した。結果を表2に示す。
吸水量(mL/100g)={(Ww-Dw)/Dw}×100
【0139】
[耐熱性の評価]
アルミシャーレに各粒子群0.5gを入れ、乾燥機内で180℃で2時間熱を加えた後、目視により粒子の溶融を確認し、SEMにより形状の確認を行い、下記評価基準に従って評価した。結果を表2に示す。
[評価基準]
目視:○:大きな変化なし、△:一部溶融、×:溶融
SEM:1:作製粒子の形状である、2:形状維持、部分的に表面溶融化、3:一部溶融、一部粒子形状維持、4:粒子形状なし(完全溶融)
【0140】
[耐薬品性の評価]
300mLフラスコに各粒子群1g及び表3に示した溶媒99g(1質量%)を入れ、室温(25℃)で2時間攪拌した後、目視により粒子の分散状態の確認を行い、SEMにより形状の確認を行い、下記評価基準に従って評価した。結果を表3に示す。
【0141】
[耐熱薬品性の評価]
300mLフラスコに各粒子群1g及び表3に示した溶媒99g(1質量%)を入れ、70℃で2時間攪拌した後、目視により粒子の分散状態の確認を行い、SEMにより形状の確認を行い、下記評価基準に従って評価した。結果を表3に示す。
[評価基準]
◎:目視分散、SEMで作製粒子の形状
○:目視分散、SEMで形状維持、部分的に表面溶融化
△:目視一部分散、SEMで変形有
×:目視溶解、SEMで形状無
【0142】
【表2】
【0143】
【表3】
【0144】
[3]官能試験及び付着力評価
[実施例3-1~3-7、比較例3-1~3-4]
粒子群A1~A7及びB1~B4について、下記方法にて、肌触り、滑り性及び粒子付着力の評価を行った。結果を表4に示す。
(1)肌触り
各粒子群を皮膚上に伸ばした際の感触を下記評価基準に従って評価した。
(2)滑り性
黒色合皮上に各粒子群1gを載せて、指で伸ばした際の長さを下記評価基準に従って評価した。
(3)粒子付着力
黒色合皮上に各粒子群1gを載せて、パフで均等に伸ばした後、合皮を3回たたき、粒子の残存量をデジタルマイクロスコープ((株)キーエンス製VHX200)で観察し、下記評価基準に従って評価した。
[評価基準]
◎:極めて良好、○:良好、△:標準、×:不良
【0145】
【表4】
【0146】
肌触り、滑り性について、疎水化処理されたアルギン酸粒子群である粒子群A1~A7は、ポリマー粒子B4と同等以上の性質を有し、粒子付着力は同レベルの粒子径であれば同等の付着力が維持できた。一方、疎水化処理をしない粒子群B1及びB2は、吸湿性に起因して肌触り、滑り性若干低下する傾向であった。また、架橋していない疎水化処理粒子群B3も、ベース粒子の吸湿性悪化に伴い、肌触り、滑り性が低下する傾向であった。
【0147】
[4]塩化ナトリウム水溶液溶解試験
[実施例4-1~4-7、比較例4-1~4-4]
粒子群A1~A7及B1~B4を、それぞれ0.1質量%となるように、水又は塩化ナトリウム水溶液(塩化ナトリウム濃度3質量%)に分散させ、溶解性試験を行った。
(1)外観:分散後、72時間経過したときの状態を目視にて確認した。
(2)形状:塩化ナトリウム水溶液に分散後、72時間、240時間及び720時間経過したときの形状の変化を粒度分布測定にて確認した。
(3)透過率:各粒子群を塩化ナトリウム水溶液に分散させ、72時間、240時間及び720時間経過後の該分散液の波長560nmの光の透過率をそれぞれSD1(%)、SD2(%)及びSD3(%)とし、各粒子群を水に分散させ、72時間、240時間及び720時間経過後の該分散液の波長560nmの光の透過率をそれぞれWD1(%)、WD2(%)及びWD3(%)とし、WD1/SD1、WD2/SD2及びWD3/SD3を求めた。透過率は、紫外可視分光光度計(日本分光(株)製UV-2450)を用いて測定した。
結果を表5に示す。
【0148】
【表5】
【0149】
[5]光学測定シートの作製及びその評価
[実施例5-1~5-7、比較例5-1~5-4]
粒子群A1~A7及びB1~B4各15.0gに、バインダー樹脂((株)クラレ製PVA樹脂)35.0g及び精製水75.0gを加え、混合して光学測定シート用組成物を調製した。得られた各組成物を、厚み100μmのPETフィルム(東洋紡(株)製E-5000)の片面に市販のバーコーターを使用してコーティングした後、乾燥機を60℃に設定し20分間熱風乾燥を行い、塗工層の厚みが40μmの光学シート1~11を作製した。
光学シート1~11について、自動変角光度計((株)村上色彩技術研究所製Gonio Photometer GP-200)を用い、入射角45°で光を一定量照射し、反射光の光散乱分布を測定し、下記評価基準に従って拡散性能を評価した。結果を表6に示す。
[評価基準]
光学シート11(ポリマー粒子群B4)を基準に
A:拡散性良好
B:拡散性ほぼ同等
C:拡散性劣る
【0150】
【表6】
【0151】
疎水化処理を行うことにより、汎用的なポリマー粒子群と同等以上の性能が得られることを確認した。
【0152】
[6]撥水性評価
[実施例6-1~6-7、比較例6-1~6-4]
粒子群A1~A7及びB1~B4をそれぞれ市販の油性塗料(ロックペイント(株)製プロタッチ)に5質量%となるように添加し、アルミニウム基板に塗布し、乾燥させ、乾燥後膜厚2μmの皮膜を形成し、塗膜シート1~11を作製した。
得られた塗膜シートの光の反射性及び艶の有無を目視にて評価し、触感作用の官能評価を行った。触感作用は、塗膜を指でなぞり、下記評価基準に従ってソフト感を評価した。ブランクとして、皮膜を形成していないアルミニウム基板を使用した。結果を表7に示す。
[評価基準]
○:有り、△:若干有り(感じる)、×:無し
【0153】
【表7】
【0154】
粒子群A1~A7を含む塗膜シート1~7は、隠ぺい性が高く、艶消し剤として使用可能となることが示された。
【0155】
[7]皮膚洗浄用組成物の作製及び評価
[実施例7-1~7-3、比較例7-1]
粒子群A1、A5、A7又はB1を用い、下記表8に示した組成に従って、皮膚洗浄用組成物(洗浄用組成物1~4)を作製した。
【0156】
【表8】
【0157】
作製した各洗浄用組成物について、下記方法により評価を行った。結果を表9に示す。
【0158】
パネラーとして10人を選定し、皮膚洗浄用組成物を用いて洗顔による使用試験を行い、使用感1、使用感2、起泡性、皮膚の汚れ、角質除去効果、マッサージ効果、刺激性の6項目を下記評価基準に従って各々評価し、それに基づき総合的にスクラブ剤としての評価を行った。
・使用感1:使用中の塗心地の良さ及び肌へのなじみ
・使用感2:洗浄剤を洗い流した後のスクラブ剤の残留感や肌のツッパリ感の少なさ
・起泡性:洗浄剤を使用した際の泡立ちと泡持ちの良さ
・皮膚の汚れ、角質除去効果:使用後の化粧料の落ち具合
・マッサージ効果:洗浄後に肌のくすみ解消、顔色の改善、血行促進等のマッサージ効果を感じるかどうか
・刺激性:洗浄剤を洗い流した後の赤味やヒリヒリ感等の少なさ
【0159】
[各項目別評価基準]
◎:効果あり(好感触)[8名以上が高評価]
○:効果認められる(やや好感触)[6~7名が高評価]
□:効果認められる(やや好感触)[4~5名が高評価]
△:効果があまりない(やや不感触)[2~3名が高評価]
×:効果なし(不感触)[1名以下が高評価]
[点数評価]
◎:8点 ○:6点 □:4点 △:2点 ×:0点
[総合評価]
A:36点以上
B:28~35点
C:20~27点
D:19点以下
【0160】
【表9】
【0161】
表9に示したように、本発明の両親媒性アルギン酸粒子群は触感、起泡性の面からも身体洗浄用組成物の添加剤(素材)としても有用であることがわかった。
【0162】
[8]皮膚化粧料の作製及び評価1
[実施例8-1~8-4、比較例8-1~8-2]
粒子群A2、A3、A4、A7、B1又はB4を用い、下記表10の組成にしたがって、メイクアップ組成物(ファンデーション1~6)を作製した。
【0163】
【表10】
【0164】
パネラーとして15人を選定し、ファンデーション1~6について使用感や使用前後の差を「肌への付着性」、「塗布時のフィット感」、「使用感触」、「ソフトフォーカス性」、「化粧効果の持続性(4時間)」の5項目を総合的に評価し、化粧品配合可否について以下のA~Gで評価した。
A:ファンデーション1がよい
B:ファンデーション2がよい
C:ファンデーション3がよい
D:ファンデーション4がよい
E:ファンデーション5がよい
F:ファンデーション6がよい
G:いずれも同じ
【0165】
その結果、パネラーの評価は
A:4名
B:3名
C:5名
D:2名
E:0名
F:1名
G:0名
であった。
【0166】
なお、ファンデーション1及び3については「肌への付着性」、「ソフトフォーカス性」、「化粧効果の持続性(4時間)」が特に優れ、総合的な仕上がりが良いという意見が多かった。「塗布へのフィット感」、「使用触感」についてはファンデーション1~4で好みがあり、意見が分かれたものの粒径が小径化及び疎水化処理されていることにより、ファンデーション6のポリマー成分と同等以上の性能で損傷なく使用可能であるとの意見が多かった。また、ファンデーション4は弾性(柔らかさ)を感じるとの意見が多かった。一方、ファンデーション6については、「肌への付着性」、「使用触感」にやや欠けるとの意見が多かった。このことより、本発明のアルギン酸粒子群は、化粧品原料としても今までのアルギン酸粒子群と同等以上の特性を発揮できることを確認した。
【0167】
[9]皮膚化粧料の作製及び評価2
[実施例9-1~9-4、比較例9-1~9-2]
粒子群A2、A3、A4、A7、B1又はB4を用い、下記表11の組成にしたがって、メイクアップ組成物(リキッドファンデーション7~12)を作製した。
【0168】
【表11】
【0169】
パネラーとして15人を選定し、ファンデーション7~12について使用感や使用前後の差を「肌への付着性」、「塗布時のフィット感」、「使用感触」、「ソフトフォーカス性」、「化粧効果の持続性(4時間)」の5項目を総合的に評価し、化粧料配合可否について以下のA~Gで評価した。
A:ファンデーション7がよい
B:ファンデーション8がよい
C:ファンデーション9がよい
D:ファンデーション10がよい
E:ファンデーション11がよい
F:ファンデーション12がよい
G:いずれも同じ
【0170】
その結果、パネラーの評価は
A:4名
B:3名
C:3名
D:4名
E:0名
F:1名
G:0名
であった。
【0171】
なお、ファンデーション7~10については「肌への付着性」、「塗布へのフィット感」、「使用触感」、「ソフトフォーカス性」、「化粧効果の持続性(4時間)」について、総合的な仕上がりが良いという意見が多かった。特に、ファンデーション7~10は好みがあり、意見はわかれたものの、疎水化処理による滑らかさの付与の観点から「塗布へのフィット感」、「使用触感」については良好であるとの意見が多かった。また、乳化の取扱性、安定化性、分散性に優れているとの意見があり、従来のファンデーション12のポリマー成分と同等以上の性能で損傷なく使用可能であるとの意見が多かった。また、ファンデーション10は弾性(柔らかさ)を感じるとの意見が多かった。一方、ファンデーション11については、「肌への付着性」、「塗布へのフィット感」、「使用触感」にやや欠けるとの意見が多かった。このことより、本発明のアルギン酸粒子群は、リキッド系の化粧品原料としても今までのアルギン酸粒子群と同等以上の特性を発揮できることを確認した。
【0172】
以上のように、本発明の両親媒性アルギン酸粒子群は、凝集物等の異物も少なく、安定的に効率よく製造できるとともに、耐熱性、耐(熱)薬品性架橋性の粒子も安定的に作製できるため、様々な用途へ応用可能である。
【0173】
また、本発明の両親媒性アルギン酸粒子群は、粒径が制御され、環境にやさしい粒子であり、特に海洋汚染対策に有用な天然高分子由来の溶解可能な成分として、用途に応じて塗料、インク、成形品、化粧品、焼成空孔化成形物等の環境対応に必要とされる用途へ有効に活用できる。
図1
図2
図3