(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-22
(45)【発行日】2022-03-30
(54)【発明の名称】ネットワークユニット、保守システム、コンピュータプログラム及び蓄電素子データ送信方法
(51)【国際特許分類】
H01M 10/42 20060101AFI20220323BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20220323BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20220323BHJP
H02J 13/00 20060101ALI20220323BHJP
【FI】
H01M10/42 P
H01M10/48 P
H02J7/00 Y
H02J13/00 301A
(21)【出願番号】P 2020111718
(22)【出願日】2020-06-29
【審査請求日】2021-12-27
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】内堀 富勝
【審査官】宮本 秀一
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-101309(JP,A)
【文献】特開2015-181327(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R31/36-31/396
H01M10/42-10/48
H02J7/00-7/12
H02J7/34-7/36
H02J13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電素子の状態を測定するユニットから状態データを受信する第1通信部と、
特定のネットワークを介して通信する第2通信部と、
前記特定のネットワークと異な
り、前記特定のネットワークと相互に独立したネットワークで通信してデータを送受信する第3通信部と、
切替スイッチを含む操作部と、
第1通信部から第3通信部による通信を制御する制御部と
を備え、
前記制御部は、前記切替スイッチの状態に応じて、前記特定のネットワークにおける設定に従って前記第2通信部から前記状態データを送信し、
前記制御部は、前記切替スイッチの状態が所定の状態で起動した場合、前記第3通信部によって特定の通信装置との間で通信接続する
ネットワークユニット。
【請求項2】
前記操作部は、前記制御部へ割込みを発生させるリセットボタンを含み、
前記制御部は、
前記リセットボタンの押下によって割込みが発生する都度、前記切替スイッチの状態が前記所定の状態であるか否かを判断する
請求項1に記載のネットワークユニット。
【請求項3】
前記制御部は、前記切替スイッチの状態が所定の状態で起動してから所定のタイムアウト時間が経過したと判断される場合、前記第2通信部によって前記設定に従って通信する状態へ遷移する
請求項1又は2に記載のネットワークユニット。
【請求項4】
前記制御部は、前記切替スイッチの状態が所定の状態で起動した場合、前記第3通信部をアクセスポイントとして機能させ、有効なパスワードを送信する通信装置との間で通信接続する
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のネットワークユニット。
【請求項5】
蓄電素子の状態を測定するユニットから状態データを第1通信部によって受信して他へ送信するネットワークユニットと、前記ネットワークユニットと通信接続する通信部を備える保守端末装置とを含み、
前記ネットワークユニットは、
特定のネットワークを介して通信する第2通信部と、
前記特定のネットワークと異な
り、前記特定のネットワークと相互に独立したネットワークで前記保守端末装置と通信してデータを送受信する第3通信部と、
切替スイッチを含む操作部と、
第1通信部から第3通信部による通信を制御する制御部と
を備え、
前記制御部は、前記切替スイッチの状態に応じて、前記特定のネットワークにおける設定に従って前記第2通信部又は第3通信部から前記状態データを送信し、
前記制御部は、前記切替スイッチの状態が所定の状態で起動した場合に限り、前記設定に従わずに、前記第3通信部によって前記保守端末装置と通信接続し、前記保守端末装置へ前記状態データを送信する
保守システム。
【請求項6】
有線通信回線及び/又は無線通信媒体を介して通信する通信部、並びに、切替スイッチを含む操作部を備えるコンピュータに、
蓄電素子の状態を測定するユニットから状態データを受信しつつ、
前記切替スイッチの状態に応じて、特定のネットワークにおける設定に従って前記通信部から前記状態データを送信し、
前記切替スイッチの状態が所定の状態で起動した場合に限り、前記設定に従わずに、前記特定のネットワークと異な
り、前記特定のネットワークと相互に独立したネットワークで特定の通信装置との間で通信接続し、
前記特定の通信装置へ、前記状態データを送信する
処理を実行させるコンピュータプログラム。
【請求項7】
有線通信回線及び/又は無線通信媒体を介して通信する通信部、並びに、切替スイッチを含む操作部を備えるネットワークユニットが、蓄電素子の状態を測定するユニットから状態データを受信し、他へ送信する方法であって、
前記ネットワークユニットが、
前記切替スイッチの状態に応じて、特定のネットワークにおける設定に従って前記通信部から前記状態データを前記特定のネットワークへ送信し、
前記切替スイッチの状態が所定の状態で起動した場合、前記設定に従わずに、前記特定のネットワークと異な
り、前記特定のネットワークと相互に独立したネットワークで特定の通信装置との間で通信接続し、
前記特定の通信装置へ、前記状態データを送信する
処理を含む蓄電素子データ送信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電素子を含むシステムの保守に関し、保守作業を円滑にするネットワークユニット、保守システム、コンピュータプログラム及び蓄電素子データ送信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
蓄電素子を含むシステムの運用には、定期的な点検を含む予防保全の取り組みが必須である。点検の際に保守作業者は、システムに含まれる複数の蓄電素子に取り付けられた監視ユニットから、蓄電素子に対する測定データを取得する。
【0003】
特許文献1は、保守作業者がデータを簡易に取得できるように、システムにネットワークユニットを接続することを開示している。ネットワークユニットは、データを管理用コンピュータに対して送信するための管理用ネットワーク用の通信部と、管理用ネットワークとは独立した無線通信回線用の無線通信部とを備える。保守作業者は、持参した情報端末を、無線通信部を介してネットワークユニットに通信接続させる。情報端末は、前記無線通信回線を介して、システムに記憶されたデータを取得できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
システムに接続されたネットワークユニットと、保守作業者の情報端末との間の無線通信接続を許可するためには、その無線通信接続に対して高いレベルの安全性が求められる。蓄電素子の設置場所における点検作業は、時間的な制限や顧客の立ち合いといった制限による安全性の確保を必要とする。ネットワークユニットと保守作業者の情報端末との間の通信を、より安全且つ円滑に接続させる方法が要求される。
【0006】
本発明は、ネットワークユニット、保守システム、コンピュータプログラム及び蓄電素子データ送信方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ネットワークユニットは、蓄電素子の状態を測定するユニットから状態データを受信する第1通信部と、特定のネットワークを介して通信する第2通信部と、前記特定のネットワークと異なる通信媒体を介して通信する第3通信部と、切替スイッチを含む操作部と、第1通信部から第3通信部による通信を制御する制御部とを備え、前記制御部は、前記切替スイッチの状態に応じて、前記特定のネットワークにおける設定に従って前記第2通信部から前記状態データを送信し、前記制御部は、前記切替スイッチの状態が所定の状態で起動した場合、前記第3通信部によって特定の通信装置との間で通信接続する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図3】ネットワークユニットの構成を示すブロック図である。
【
図4】保守端末装置の構成を示すブロック図である。
【
図6】ネットワークユニットの処理手順の一例を示すフローチャートである。
【
図7】第4の接続モードによる通信処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
ネットワークユニットは、蓄電素子の状態を測定するユニットから状態データを受信する第1通信部と、特定のネットワークを介して通信する第2通信部と、前記特定のネットワークと異なる通信媒体を介して通信する第3通信部と、切替スイッチを含む操作部と、第1通信部から第3通信部による通信を制御する制御部とを備え、前記制御部は、前記切替スイッチの状態に応じて、前記特定のネットワークにおける設定に従って前記第2通信部から前記状態データを送信し、前記制御部は、前記切替スイッチの状態が所定の状態で起動した場合、前記第3通信部によって特定の通信装置との間で通信接続する。
【0010】
上記構成により、保守作業者が形態する特定の通信装置は、保守作業者が切替スイッチを所定の状態にしてネットワークユニットを起動させた場合に限り、第3通信部によってネットワークユニットと通信接続する。ネットワークユニットは、特定の通信装置との間で用いる第3通信部を無効化していたとしても、強制的に、特定の通信装置である保守端末装置と通信接続が可能な状態に遷移する。ネットワークユニットは、顧客のネットワークを利用した第2通信部による通信をしている状況で、その通信を妨げることなく強制的に、保守端末装置と通信接続が可能になる。
【0011】
前記切替スイッチは例えば、複数のディップスイッチであってもよい。複数のディップスイッチ夫々の状態の組み合わせによって、前記所定の状態以外の複数の状態が可能になる。有線通信及び/又は無線通信を用いた特定のネットワークにおける通信接続と、保守端末装置との通信接続とについて、複数のバリエーションの設定が可能になる。
【0012】
保守作業者は、切替スイッチの操作及び制御部の起動という簡易な操作によって、保守端末装置に蓄電素子の状態データを取り込むことができる。保守作業者は、顧客のネットワークに保守端末装置を接続させなくてもよい。これにより、安全且つ円滑な保守作業が可能になる。
【0013】
ネットワークユニットの前記操作部は、前記制御部へ割込みを発生させるリセットボタンを含み、前記制御部は、前記リセットボタンの押下によって割込みが発生する都度、前記切替スイッチの状態が前記所定の状態であるか否かを判断してもよい。
【0014】
上記構成により、保守作業者は、切替スイッチを所定の状態としてリセットボタンを押下するという簡易な操作によって、保守端末装置に蓄電素子の状態データを取り込むことができる。
【0015】
ネットワークユニットの前記制御部は、前記切替スイッチの状態が所定の状態で起動してから所定のタイムアウト時間が経過したと判断される場合、前記第2通信部によって前記設定に従って通信する状態へ遷移してもよい。
【0016】
上記構成により、保守作業者は、保守端末装置に蓄電素子の状態データを取り込む作業の後に、前記切替スイッチを元の状態に戻すことを失念することが許される。切替スイッチを所定の状態としたままにしても、ネットワークユニットは、設定に従った第2通信部による状態データの送信を再開できる。
【0017】
ネットワークユニットの前記制御部は、前記切替スイッチの状態が所定の状態で起動した場合、前記第3通信部をアクセスポイントとして機能させ、有効なパスワードを送信する通信装置との間で通信接続してもよい。
【0018】
上記構成により、保守端末装置が、ネットワークユニットに対して有効なパスワードを安全に記憶しておけば、簡易な操作によって、顧客のネットワークに接続することなしに、保守端末装置に蓄電素子の状態データを取り込む作業を実行できる。
【0019】
保守システムは、蓄電素子の状態を測定するユニットから状態データを第1通信部によって受信して他へ送信するネットワークユニットと、前記ネットワークユニットと通信接続する通信部を備える保守端末装置とを含む。前記ネットワークユニットは、特定のネットワークを介して通信する第2通信部と、前記特定のネットワークと異なる通信媒体を介して通信する第3通信部と、切替スイッチを含む操作部と、第1通信部から第3通信部による通信を制御する制御部とを備える。前記制御部は、前記切替スイッチの状態に応じて、前記特定のネットワークにおける設定に従って前記第2通信部又は第3通信部から前記状態データを送信する。前記制御部は、前記切替スイッチの状態が所定の状態で起動した場合に限り、前記設定に従わずに、前記第3通信部によって前記保守端末装置と通信接続し、前記保守端末装置へ前記状態データを送信する。
【0020】
コンピュータプログラムは、有線通信回線及び/又は無線通信媒体を介して通信する通信部、並びに、切替スイッチを含む操作部を備えるコンピュータによって実行される。コンピュータプログラムは、蓄電素子の状態を測定するユニットから状態データを受信しつつ、前記切替スイッチの状態に応じて、特定のネットワークにおける設定に従って前記通信部から前記状態データを送信し、前記切替スイッチの状態が所定の状態で起動した場合に限り、前記設定に従わずに、前記特定のネットワークと異なる通信媒体を介して特定の通信装置との間で通信接続し、前記特定の通信装置へ、前記状態データを送信する処理を実行させる。
【0021】
蓄電素子データ送信方法は、有線通信回線及び/又は無線通信媒体を介して通信する通信部、並びに、切替スイッチを含む操作部を備えるネットワークユニットが、蓄電素子の状態を測定するユニットから状態データを受信し、他へ送信する方法である。蓄電素子データ送信方法は、前記ネットワークユニットが、前記切替スイッチの状態に応じて、特定のネットワークにおける設定に従って前記通信部から前記状態データを前記特定のネットワークへ送信し、前記切替スイッチの状態が所定の状態で起動した場合、前記設定に従わずに、前記特定のネットワークと異なる通信媒体を介して特定の通信装置との間で通信接続し、前記特定の通信装置へ、前記状態データを送信する処理を含む。
【0022】
本発明をその実施形態を示す図面を参照して具体的に説明する。
【0023】
図1は、保守対象のシステムの概要を示す。保守作業者は、ネットワークユニット1と、保守端末装置2とを用いて保守作業を実行する。ネットワークユニット1は、保守対象の蓄電素子30を含む蓄電装置3に設けられる。保守端末装置2は、保守作業者が用いる装置である。
【0024】
保守対象の蓄電素子30は、鉛蓄電池及びリチウムイオン電池を含む二次電池や、キャパシタのような充電可能なものである。蓄電素子30の一部は、充電不可な一次電池であってもよい。本実施形態において蓄電素子30は、蓄電セルを複数接続した蓄電モジュールである。蓄電素子30は、蓄電セルそのもの又は蓄電モジュールを複数接続した蓄電モジュール群であってもよい。蓄電素子30は、鉛蓄電池であってもよい。
【0025】
蓄電装置3は具体的には、蓄電システムにおける蓄電モジュール群である。
図1の例では、蓄電装置3は、異なる3箇所(Site1~3)に設置されている。蓄電装置3は、無停電電源装置(UPS:Uninterruptible Power Supply)であってもよい。蓄電装置3は、鉄道用の安定化電源システム等に配設されている整流器(直流電源装置、又は交流電源装置)であってもよい。ネットワークユニット1は、ソーラー発電システムで得られる電力を適切に変換し、蓄電モジュール群又は電力供給先へ出力するパワーコンディショナ(PCS:Power Conditioning System )に搭載されてもよい。
【0026】
蓄電装置3に含まれる蓄電素子30の状態データを、顧客が管理する管理装置31に集約し、蓄電装置3の状態を把握するため、蓄電装置3には、ネットワークユニット1が設けられている。ネットワークユニット1は、蓄電素子30に備えられる電池管理装置(BMU)に接続される。蓄電装置3は、ネットワークユニット1によって、蓄電素子30の顧客(ユーザ)によって管理される顧客の顧客ネットワークCNに接続されている。顧客ネットワークCNは、有線通信回線又は無線通信回線のいずれであってもよい。蓄電装置3は、ネットワークユニット1によって、BMUによって取得された蓄電素子30の状態データを、管理装置31へ送信する。状態データは少なくとも蓄電素子30の電圧値を含む。状態データは、内部抵抗値、電流値、温度を含んでもよい。
【0027】
顧客が蓄電装置3の状態を把握すると共に、蓄電素子30の製造業者又は販売業者は、蓄電素子30に対して定期的な保守点検を行なう。蓄電素子30を含むシステムを長期にわたり運用するための予防保全のためである。製造業者又は販売業者は、ネットワークユニット1及び保守端末装置2を用いた保守点検を行なう。
【0028】
保守作業者は、保守端末装置2を持参して蓄電装置3が設置されている顧客管理エリアに赴く。保守作業者は、顧客管理エリア内で、保守端末装置2をネットワークユニット1と通信接続させる。ネットワークユニット1は上述したように、顧客ネットワークCNに接続されている。ネットワークユニット1を保守端末装置2に接続させるために顧客ネットワークCNから切り離すと、蓄電装置3からの管理装置31への状態データの送信が停止される。ネットワークユニット1は、顧客ネットワークCNとは独立した無線通信回線によって保守端末装置2と通信接続するための無線通信部を有する。これにより、管理装置31への状態データの送信を停止させずに、保守端末装置2はネットワークユニット1と通信接続することができる。
【0029】
保守端末装置2と無線通信部との通信接続は、保守作業者が顧客管理エリアに赴いたときにのみ有効である必要がある。無用に無線通信部を有効化しておくと、無線通信部を介した蓄電装置3への不当な接続のリスクが高まる。使用されない無線通信部は無効化しておくことが好ましい。
【0030】
使用されていない無線通信部を有効化させる場合、保守作業者は、保守端末装置2を顧客の顧客ネットワークCNに接続させ、顧客ネットワークCN経由でネットワークユニット1へ指示してもよい。しかしながら、ネットワークユニット1及びネットワークユニット1が備えられる蓄電装置3は、蓄電素子30を購入、又はレンタルしている顧客によって管理される。保守作業者の保守端末装置2を、顧客の顧客ネットワークCNに接続させることは、回避されるべきである。
【0031】
顧客ネットワークCNが無線通信回線である場合、蓄電装置3は、無線通信部を介して管理装置31と通信接続できる。顧客の通信管理機器(ルータ、DHCPサーバ)が、顧客の顧客ネットワークCNにおけるネットワークユニット1のIPアドレスを無線通信部に対して割り振ることで、管理装置31が無線通信部を介してネットワークユニット1に通信接続できる。この場合も、保守端末装置2がネットワークユニット1に接続するためには、顧客の顧客ネットワークCNに保守端末装置2を接続させる必要がある。しかしながら、保守端末装置2を顧客の顧客ネットワークCNへ接続することも回避されるべきである。
【0032】
保守作業時にのみ、保守端末装置2とネットワークユニット1の無線通信部とを、顧客ネットワークCNとは独立した無線通信回線で接続するため、本実施形態における無線通信部は一時的に、アクセスポイントとして機能する。以下、無線通信部の一時的な有効化を実現するための構成及び処理について説明する。
【0033】
図2は、ネットワークユニット1の外観を示し、
図3は、ネットワークユニット1の構成を示すブロック図である。ネットワークユニット1は、ネットワークカード型の通信デバイスである。ネットワークユニット1は、制御部10、記憶部11、BMU通信部12、有線通信部13、無線通信部14、シリアル通信部15、及び、操作部16を備える。シリアル通信部15は必須ではない。
【0034】
制御部10はCPU(Central Processing Unit )を用いたマイクロプロセッサである。制御部10は、内蔵するROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等のメモリを用い、各構成部を制御して処理を実行する。メモリのROMは、予め規定された制御プログラム1P、接続モードデータ、及び、無線LANデータを記憶する。制御プログラム1Pは、後述する通信処理用のプログラム、蓄電素子30に対する測定データの取得処理用のプログラム、及び、Webサーバプログラムを含む。制御プログラム1Pは、記録媒体8に記憶してある制御プログラム8Pを制御部10が読み出して記憶部11に複製したものであってもよい。
【0035】
記憶部11は、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリである。記憶部11は、蓄電素子30からBMUを介して受信した状態データを記憶する。
【0036】
BMU通信部12は、ネットワークユニット1が接続されている蓄電素子30のBMUとの通信を実現する通信インタフェースである。BMU通信部12は、例えばRS-232C又はRS-485等のシリアル通信インタフェースである。
【0037】
有線通信部13は、顧客ネットワークCNが有線である場合の通信接続を実現する通信デバイスである。有線通信部13は、顧客ネットワークCNが有線である場合に第2通信部として機能する。有線通信部13は、顧客ネットワークCNの規格に対応する接続インタフェースを含む。顧客ネットワークCNは、例えばEthernet(登録商標)である。顧客ネットワークCNは、光回線であってもよい。顧客ネットワークCNは、ECHONET /ECHONET Lite(登録商標)対応のネットワークであってもよい。ネットワークユニット1は、蓄電素子30からBMU通信部12を介して取得した状態データを、有線通信部13によって管理装置31へ送信する。
【0038】
無線通信部14は、無線LANに基づく通信用の無線通信デバイスである。無線通信部14は、
図2に示すように、アンテナの取り付けインタフェースを含み、アンテナは外付けであってもよい。無線通信部14は、Bluetooth(登録商標)に対応する無線通信デバイスであってもよい。顧客の顧客ネットワークCNが無線である場合、無線通信部14は第2通信部として機能し、制御部10は、状態データを無線通信部14によって管理装置31へ送信してもよい。
【0039】
無線通信部14は、保守作業者が点検する場合に、顧客ネットワークCNと異なる通信媒体を介して保守端末装置2と通信接続するための第3通信部として用いられる。保守作業者は、無線通信部14を用いて、保守端末装置2をネットワークユニット1と接続させる場合、外付けのアンテナを使用時にのみ取り付けてもよい。
【0040】
蓄電素子30のBMUと接続されるBMU通信部12、有線通信部13、及び、無線通信部14は各々異なるハードウェアとした。しかしながら、各接続先との通信プロトコルに応じて各々個別の通信接続が可能であれば、これらの3つの通信部の機能は、同一のハードウェアによって達成されてもよい。例えば、顧客ネットワークCNが無線である場合、無線通信部14によって、第2通信部及び第3通信部の両方の機能を達成してもよい。この場合、ネットワークユニット1は有線通信部13を有さない構成であってもよい。
【0041】
シリアル通信部15は、外付けのシリアル通信デバイスである。シリアル通信部15は、シリアル通信用の接続インタフェースを含む。シリアル通信部15は、例えばUSB(Universal Serial Bus )インタフェースである。ネットワークユニット1は、シリアル通信部15によって初期的に、保守端末装置2又は他の装置から設定データを取得する。シリアル通信部15は必須ではない。
【0042】
操作部16は、リセットボタン161及びスイッチ162を備える。リセットボタン161は制御部10に対してリセット割込みを発生させる。リセットボタン161が押下された場合、制御部10はこれを検知して再起動し、メモリに記憶された制御プログラム1Pに基づく処理を開始する。
【0043】
スイッチ162は、切替スイッチである。スイッチ162は、1又は複数のディップスイッチを含む。
図2に示すように、ネットワークユニット1は例えば2つのディップスイッチを含む。制御部10は、2つのディップスイッチによって最大4つのスイッチ状態を取得する。ディップスイッチの数は2つに限定されず、1つのみ、又は3つ以上であってもよい。スイッチ状態と、接続モードデータとの対応がメモリに記憶されている。制御部10は、起動時にスイッチ状態を取得し、取得したスイッチ状態に対応する接続モードデータに従って各構成部を制御する。スイッチ162は、ディップスイッチに限らず、他の態様のスイッチであってもよい。
【0044】
図4は、保守端末装置2の構成を示すブロック図である。保守端末装置2は、デスクトップ型若しくはラップトップ型のパーソナルコンピュータであってもよい。保守端末装置2は、所謂スマートフォン又はタブレット型の通信端末であってもよい。保守端末装置2は、制御部20、記憶部21、通信部22、表示部23及び操作部24を備える。
【0045】
制御部20は、CPU又はGPU(Graphics Processing Unit)を用いたプロセッサである。制御部20は、記憶部21に記憶されているWebブラウザプログラムに基づき、Webサーバとして機能するネットワークユニット1が提供するデータにアクセスできる。
【0046】
記憶部21は、例えばハードディスク、フラッシュメモリ、SSD(Solid State Drive )等の不揮発性メモリを用いる。記憶部21は、制御部20が参照するデータを記憶する。記憶部21は、Webブラウザプログラムを含む各種プログラムを記憶する。記憶部21は、ネットワークユニット1から取得する状態データを記憶する。記憶部21は、ネットワークユニット1と通信接続するための無線LANデータを記憶する。無線LANデータは、アクセスポイントのSSID及びパスワードを含む。
【0047】
通信部22は、公衆通信網又はキャリアネットワークを介したデータ通信を実現するための通信デバイスである。通信部22は、ネットワークユニット1の無線通信部14に対応する無線LAN対応の通信デバイスを含む。ネットワークユニット1がアクセスポイントとして機能する際に、制御部20は、通信部22によってネットワークユニット1に通信接続できる。逆に通信部22がアクセスポイントとして機能し、ネットワークユニット1からの通信接続を受け付けてもよい。通信部22は、有線通信用のネットワークカードと、移動通信用のキャリアネットワーク対応の無線通信デバイスとを含んでよい。
【0048】
表示部23は、液晶ディスプレイ、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ等のディスプレイである。表示部23は、ネットワークユニット1から提供されるWebページのイメージを表示する。表示部23は、タッチパネル内蔵型ディスプレイであってもよい。
【0049】
操作部24は、制御部20との間で入出力が可能なキーボード及びポインティングデバイス等のユーザインタフェースである。操作部24は、音声入力部であってもよい。操作部24は、表示部23のタッチパネルであってもよい。操作部24は、物理ボタンであってもよい。操作部24は、保守作業者による操作データを制御部20へ通知する。
【0050】
無線通信部14の一時的な有効化を実現するために設定されている接続モードについて説明する。
図5は、接続モードの例を示す。接続モードは、スイッチ162の構成に応じて4通り用意されている。制御部10のメモリは、
図5に示す接続モードとスイッチ162のスイッチ状態との対応を、接続モードデータとして記憶している。
【0051】
第1の接続モードは、顧客の顧客ネットワークCNを介した通信のためのモードである。第1の接続モードは、蓄電装置3の運用中、通常使用される。第1の接続モードの場合、有線通信部13及び無線通信部14は、顧客による設定に基づき顧客ネットワークCNに接続する。顧客ネットワークCNが有線の場合、ネットワークユニット1は、有線通信部13によって顧客ネットワークCNに接続する。顧客ネットワークCNが無線通信回線の場合、ネットワークユニット1は、無線通信部14によって顧客ネットワークCNに接続する。第1の接続モードでは、有線通信部13又は無線通信部14が、顧客の顧客ネットワークCNのルータ及びDHCPサーバに割り振られたアドレスによって他の通信機器と通信接続する。第1の接続モードでは、無線通信部14は無効であってもよい。
【0052】
第2の接続モードは、顧客の顧客ネットワークCNを介した通信のためのモードである。第2の接続モードは、蓄電装置3の運用中に、特定のケースで使用される。第2の接続モードの場合、ネットワークユニット1は、有線通信部13により、予め設定された固定のIPアドレスで有線回線である顧客ネットワークCNに接続する。第2の接続モードの場合、ネットワークユニット1は、無線通信部14により、顧客の設定に基づき顧客が管理する他の無線通信回線に接続してもよい。第2の接続モードでは、無線通信部14は無効であってもよい。
【0053】
第3の接続モードは、蓄電素子30の製造業者又は販売業者が利用するための予備のモードである。第3の接続モードは、事後的に設定される通信条件のために用意されている。
【0054】
第4の接続モードは、ネットワークユニット1が保守端末装置2と通信接続するためのモードである。第4の接続モードでは、ネットワークユニット1が有線通信部13によって、顧客の設定に基づき有線通信回線である顧客ネットワークCNに接続しつつ、無線通信部14が、保守端末装置2に対するアクセスポイントとして機能する。無線通信部14は、予め記憶してあるSSIDを含む電波を出力して、このSSIDに対応するパスワードを知る通信機器との間で通信接続を確立する。第4の接続モードでは、ネットワークユニット1は、有線通信部13によって、状態データの管理装置31への送信を継続する。逆に保守端末装置2の通信部22がアクセスポイントとして機能し、ネットワークユニット1がクライアントとして機能する設定であってもよい。
【0055】
図6は、ネットワークユニット1の処理手順の一例を示すフローチャートである。制御部10は、図示しない電源部からの電力の供給を受けると、制御プログラム1Pに基づいて以下の処理を開始する。制御部10は、電力の供給が停止するまで以下の処理を継続する。
【0056】
制御部10は、スイッチ162のスイッチ状態を取得する(ステップS101)。制御部10は、スイッチ状態が第4の接続モードに対応するか否かを判断する(ステップS102)。
【0057】
第4の接続モードに対応しないと判断された場合(S102:NO)、制御部10は、第1の接続モード又は第2の接続モードに従って顧客ネットワークCNに対して通信接続する(ステップS103)。
【0058】
制御部10は、蓄電素子30の状態データをBMU通信部12から取得する(ステップS104)。制御部10は、取得した状態データを記憶部11に記憶すると共に、有効な有線通信部13又は無線通信部14から管理装置31へ送信する(ステップS105)。
【0059】
制御部10は、リセットボタン161が押下されたか否かを判断する(ステップS106)。リセットボタン161が押下されないと判断された場合(S106:NO)、制御部10は、処理をステップS104へ戻す。制御部10は、蓄電素子30の状態データの取得及び送信を、継続する。
【0060】
リセットボタン161が押下されたと判断された場合(S106:YES)、制御部10は、処理をステップS101へ戻す。
【0061】
スイッチ状態が第4の接続モードに対応すると判断された場合(S102:YES)、制御部10は、第4の接続モードによる通信処理を試みる(ステップS107)。制御部10は、第4の接続モードによる通信処理を実行すると原則として、処理をステップS103へ戻す。
【0062】
図7は、第4の接続モードによる通信処理の手順の一例を示すフローチャートである。
図7は、
図6に示したステップS107の通信処理の詳細に対応する。
【0063】
制御部10は、予めメモリに記憶されている無線LANデータ(SSID及び対応するパスワード)を読み出す(ステップS701)。
【0064】
制御部10は、無線通信部14及び無線アンテナからビーコンを発信する(ステップS702)。制御部10は、ステップS701で読み出したSSIDと一致するSSIDを含むリクエストを、保守端末装置2から受信する(ステップS703)。制御部10は、リクエストを受信できない場合、処理をステップS705へ進めてもよい。
【0065】
制御部10は、リクエストの送信元の保守端末装置2に対し、ステップS701で読み出したパスワードに基づく認証が成功するか否かを判断する(ステップS704)。
【0066】
認証が失敗したと判断された場合(S704:NO)、所定時間を経過したか否かを判断する(ステップS705)。所定時間を経過していないと判断された場合(S705:NO)、制御部10は、ステップS702へ処理を戻す。
【0067】
所定時間を経過したと判断された場合(S705:YES)、制御部10は、処理を
図6のステップS103へ戻す。この場合、制御部10は、第4の接続モードでの通信を中止して第1の接続モードに従って有線通信部13又は無線通信部14を顧客ネットワークCNへ接続する。
【0068】
所定期間内に認証が成功したと判断された場合(S704:YES)、制御部10は、リクエストの送信元の保守端末装置2との通信接続を確立する(ステップS706)。制御部10は、通信接続した保守端末装置2へ、記憶部11に蓄積されている状態データを送信する(ステップS707)。制御部10は、Webサーバとして保守端末装置2からのアクセスを受け付け、Webページデータを送信してもよい。
【0069】
制御部10は、リセットボタン161が押下されたか否かを判断する(ステップS708)。リセットボタン161が押下されたと判断された場合(S708:YES)、制御部10は、無線通信部14による通信接続を切断し(ステップS709)、
図6のステップS101へ処理を戻し、起動時と同様の処理を開始する。リセットボタン161が押下される前にスイッチ162のスイッチ状態が変わっていれば、制御部10は、変更後のスイッチ状態に応じて処理を実行する。
【0070】
リセットボタン161が押下されないと判断された場合(S708:NO)、制御部10は、第4の接続モードで起動してからの時間が、所定のタイムアウト時間を経過しているか否かを判断する(ステップS710)。タイムアウト時間は、例えば1時間等、保守作業時間に必要な時間にゆとりを持たせた時間である。制御部10のメモリは、タイムアウト時間を記憶する。
【0071】
第4の接続モードで起動してからの時間が、所定のタイムアウト時間を経過していないと判断された場合(S710:NO)、制御部10は処理をステップS708へ戻す。リセットボタン161が押下されるか、タイムアウト時間が経過するまで、制御部10は、保守端末装置2との通信接続を維持する。この間、制御部10は、保守端末装置2からのリクエストで状態データの送信を継続してもよい。制御部10は、ネットワークユニット1のWebサーバの機能によって、ネットワークユニット1に対する指示を保守端末装置2から受け付けてもよい。
【0072】
第4の接続モードで起動してからの時間が、所定のタイムアウト時間を経過したと判断された場合(S710:YES)、制御部10は、無線通信部14による通信接続を切断する(ステップS711)。制御部10は、
図6のステップS103へ処理を戻す。制御部10は、第1の接続モードに従って顧客ネットワークCNに対し接続する。保守作業者がスイッチ162のスイッチ状態を保守作業の前の状態に戻し忘れても、ネットワークユニット1は、第1の接続モードで顧客ネットワークCNに対し接続する。
【0073】
保守作業者は、蓄電素子30を利用する顧客の管理区域に保守点検のために赴いた場合、以下の手順で保守作業を実施する。保守作業者は、予めネットワークユニット1に対応するSSID及びパスワードを記憶した保守端末装置2を携帯して保守作業場所へ赴く。保守作業者は、顧客の許可を得て、顧客の立ち合いの下、保守対象の蓄電素子30を含む蓄電装置3のネットワークユニット1のスイッチ162を、第4の接続モードに対応させる。保守作業者は、具体的には、スイッチ162のディップスイッチをいずれもON状態にする。保守作業者は、スイッチ162を第4の接続モードに対応させた状態で、ネットワークユニット1のリセットボタン161を押下する。これにより、ネットワークユニット1は、顧客の顧客ネットワークCNを介した通信接続と共に、顧客ネットワークCNと独立した通信回線での通信接続が可能になる。
【0074】
保守作業者は、保守端末装置2の表示部23及び操作部24を操作し、アクセスポイントとして機能するネットワークユニット1への通信接続を試みる。保守端末装置2は、表示部23に、ネットワークユニット1からのビーコンに含まれるSSIDによって、接続可能なネットワークユニット1の候補を出力できる。操作部24で候補の内のいずれかが選択されると、保守端末装置2は、選択されたネットワークユニット1へリクエストを送信する。これにより、目的のネットワークユニット1と、保守作業者が携帯する保守端末装置2との通信接続が確立される。
【0075】
通信接続が確立されると、保守端末装置2は自動的に、ネットワークユニット1を介して、蓄電素子30の状態データを取得し、記憶部21に記憶する。保守端末装置2の制御部20は、状態データを蓄電素子30の識別データ、又はネットワークユニット1の識別データと共に記憶部21に記憶するとよい。
【0076】
保守作業者は、保守端末装置2による状態データの取得が完了すると、スイッチ162を第1又は第2の接続モードに対応させた状態に戻し、リセットボタン161を押下する。ネットワークユニット1は、第1又は第2の接続モードで顧客ネットワークCNに接続し、状態データの取得及び送信を継続する通常モードに戻る。
【0077】
上述したように、ネットワークユニット1は、顧客ネットワークCNへの接続を維持したまま、特定の保守端末装置2との通信接続を実現する。保守端末装置2はネットワークユニット1と容易に接続できると共に、顧客の顧客ネットワークCNに接続しない。これにより、保守作業者は、円滑に且つ顧客の顧客ネットワークCNにとって安全に、作業できる。
【0078】
上述の例では、ネットワークユニット1は、無線通信部14によって保守端末装置2と通信接続した。しかしながら無線通信に限られない。ネットワークユニット1は、第4の接続モードにおいて、無線通信部14によって管理装置31への状態データへの送信を継続しつつ、有線通信部13によって、予め設定されているIPアドレスで、保守端末装置2とP2P通信してもよい。
【0079】
上述のように開示された実施の形態は全ての点で例示であって、制限的なものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0080】
1 ネットワークユニット
10 制御部
11 記憶部
12 BMU通信部
13 有線通信部
14 無線通信部
16 操作部
161 リセットボタン
162 スイッチ
1P 制御プログラム
2 保守端末装置
23 表示部
3 蓄電装置
30 蓄電素子
CN 顧客ネットワーク