(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-22
(45)【発行日】2022-03-30
(54)【発明の名称】高周波溶着装置
(51)【国際特許分類】
B29C 65/04 20060101AFI20220323BHJP
H05B 6/54 20060101ALI20220323BHJP
【FI】
B29C65/04
H05B6/54
(21)【出願番号】P 2018034844
(22)【出願日】2018-02-28
【審査請求日】2021-02-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000195649
【氏名又は名称】精電舎電子工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100187322
【氏名又は名称】前川 直輝
(72)【発明者】
【氏名】吉沢 正太郎
(72)【発明者】
【氏名】松岸 則彰
【審査官】▲高▼橋 理絵
(56)【参考文献】
【文献】実開昭48-107862(JP,U)
【文献】特開2005-100673(JP,A)
【文献】登録実用新案第3035749(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 65/04
H05B 6/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部電極と下部電極の間に被溶着物を挟み、上部電極と下部電極の間に高周波電流を流して、被溶着物を誘電溶着する高周波溶着装置であって、
上部電極と、
下部電極と、
前記上部電極に給電する上部電極用給電線と、
前記下部電極に給電する下部電極用給電線と、
高周波電流発生装置と、
電気的にアースされている筐体と、
管状アース部と、
絶縁物の間隔保持部材と、を備え、
前記上部電極には前記上部電極用給電線を接続し、
前記下部電極には前記下部電極用給電線を接続し、
前記上部電極用給電線と前記下部電極用給電線を、前記高周波電流発生装置にそれぞれ接続し、
前記上部電極用給電線には、前記管状アース部を被せ、
前記上部電極用給電線と前記管状アース部の間には、前記間隔保持部材を入れて、前記上部電極用給電線と前記管状アース部の表面が、所定間隔離れるように前記上部電極用給電線を前記管状アース部で電気的に絶縁した状態に囲んだ形で一体に支持し、
前記管状アース部を前記筐体に接続してアースし、
前記高周波電流発生装置で発生させた高周波電流を、前記上部電極と前記下部電極に流したときに、前記上部電極用給電線に沿って発生する放射ノイズを前記管状アース部で吸収させ、放射ノイズの発生を抑制するようにした、ことを特徴とする高周波溶着装置。
【請求項2】
前記所定間隔は、15mm以上の間隔であることを特徴とする請求項1に記載の高周波溶着装置。
【請求項3】
前記上部電極を前記下部電極に対して移動させる、上部電極移動手段を更に備えた、ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の高周波溶着装置。
【請求項4】
前記下部電極を前記上部電極に対して移動させる、下部電極移動手段を更に備えた、ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の高周波溶着装置。
【請求項5】
前記管状アース部を前記上部電極用給電線の長手方向に伸縮自在に構成した、ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の高周波溶着装置。
【請求項6】
前記上部電極用給電線を薄い平板状の給電線とした、ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の高周波溶着装置。
【請求項7】
前記上部電極用給電線は、一方の上部電極用給電線と、他方の上部電極用給電線と、凸に湾曲した湾曲部を持つ変形可能なU字型給電継手とからなり、前記一方の上部電極用給電線と、前記他方の上部電極用給電線とを前記U字型給電継手の各端部でつないだ構造として、
前記管状アース部は、一方の管状アース部と、他方の管状アース部と、凸に湾曲した湾曲部を持つ変形可能なU字型アース継手とからなり、前記一方の管状アース部と、前記他方の管状アース部とを前記U字型アース継手の各端部でつないだ構造として、
前記他方の上部電極用給電線と前記他方の管状アース部の間には、前記間隔保持部材を入れて、前記他方の上部電極用給電線と前記他方の管状アース部の表面が、所定間隔離れるように前記他方の上部電極用給電線を前記他方の管状アース部で電気的に絶縁した状態に囲んだ形で一体に支持し、
前記一方の上部電極用給電線と前記一方の管状アース部に対して、前記他方の上部電極用給電線と前記他方の管状アース部が、前記一方の上部電極用給電線の長手方向に対して直交する方向に変位自在に構成し、
更に、前記上部電極を前記下部電極に対して移動させる、上部電極移動手段を備え、
前記一方の上部電極用給電線を前記高周波電流発生装置に接続し、
前記一方の管状アース部を前記筐体に接続してアースし、
前記上部電極移動手段により、前記上部電極を前記下部電極に対して移動させ、
前記高周波電流発生装置で発生させた高周波電流を、前記一方の
上部電極用給電線、前記U字型
給電継手、と前記他方の
上部電極用給電線を介して前記上部電極と前記下部電極に流したときに、前記上部電極用給電線に沿って発生する放射ノイズを前記管状アース部で吸収させ、放射ノイズの発生を抑制するようにした、ことを特徴とする請求項1または2に記載の高周波溶着装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波溶着装置に係り、より詳しくは被溶着物である塩化ビニールシート等に押し当てる上部電極へ高周波電流を給電したときに、給電線に沿って発生する放射ノイズを低減させた高周波溶着装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の高周波溶着装置では、重ねた塩化ビニールシート等を上部電極と下部電極で挟み、上部電極と下部電極に27.12MHzや40.46MHzの高周波電流を通して誘電発熱作用で溶着している。
図25に示した従来の高周波溶着装置では、絶縁テーブル7の上に下部電極8を設け、下部電極8の上に一対の被溶着物6、6’を重ねて載せ、上部電極5で被溶着物6の上表面を押圧し、筐体1の中にある高周波電流発生装置2から薄板で帯状をした給電線10、10を介して高周波電流を上部電極5から、被溶着物6、6’そして下部電極8に流し、被溶着物6、6’を高周波誘電加熱して溶着していた(特許文献1参照)。
【0003】
図25の高周波溶着装置のように高周波電流発生装置2と上部電極5が近くにあって、高周波電流発生装置2から上部電極5に高周波電流を給電する給電部材である給電線10の長さ(L
0)が短い場合は、露出している給電線10に沿って発生する放射ノイズの大きさを外部環境に悪影響を与えない所定の大きさ以内に抑えることができていた。
【0004】
ところが、
図26のように、高周波電流発生装置2から離れた位置にある被溶着物6の上表面を上部電極5で押圧するときは、露出している給電線10の長さ(L
1)が長くなって、給電線10に沿って発生する放射ノイズが大きくなり、外部環境に悪影響を与えない所定の大きさ以内にすることが困難な場合があった。
【0005】
このような場合は、
図27のように、高周波電流発生装置2と給電線10でつないだ上部電極5を天井の梁100から上下動手段101によって吊り下げる、いわゆる梁吊り式の構造にして、露出している給電線10の長さを短くして、露出している給電線10に沿って発生する放射ノイズを所定の大きさ以内に抑える方法が提案されていた(特許文献2参照)。
【0006】
なお、他の方法として、高周波電流を流す給電線にシールド線を用いて放射ノイズを低減させることも提案されていたが(特許文献3参照)、高周波溶着装置の薄板で帯状をした給電線10は、溶着条件に応じて、最適な大きさと厚さの銅(Cu)や真鍮(Bs)の薄板を用いるため、予めシールド処理をしたいわゆるシールド薄板材の既製品を入手したり、シールド薄板材を個別に制作したりすることは、製造コストと製造工程の煩雑さから現実的な方法ではなかった。また、薄い金属板に絶縁物を塗布して絶縁層を作っても、放射ノイズは期待するほど減らなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平8-267587号公報
【文献】実用新案登録第3035749号公報
【文献】特開平11-177258号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、高周波電流発生装置と上部電極をつなぐ給電線の長さが長い、いわゆる給電線が長い高周波溶着装置において、高周波電流発生装置から離れた位置の被溶着物の表面を上部電極で押圧して溶着するときに、給電線に沿って発生する放射ノイズを低減した高周波溶着装置を提供することを課題とし、高周波溶着装置の放射ノイズを外部環境に悪影響を与えない所定の大きさ以内に抑えることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した課題を達成するために、本発明に係る高周波溶着装置では、高周波電流発生装置と上部電極をつなぐ薄板で帯状をした給電線の周囲を管状アース部で給電線の長さ方向に同軸状に囲んで、給電線に沿って発生する放射ノイズを管状アース部で吸収するようにしている。特に管状アース部内で絶縁物の間隔保持部材により薄板で帯状をした給電線を支持して、管状アース部と給電線の表面が所定の空間をあけて電気的に絶縁する構造を採用している。
【0010】
本発明に係る高周波溶着装置は、高周波電流発生装置と、給電線と、管状アース部と、絶縁物の間隔保持部材と、上部電極と、下部電極と、を備え、給電線と管状アース部の間に間隔保持部材を入れて、給電線と管状アース部の表面が所定の間隔、例えば15mm以上離れるように給電線の周囲に管状アース部で空間をあけて電気的に絶縁した状態で同軸状に囲む構造にしている。
【0011】
そして、上部電極と下部電極の間に被溶着物を挟み、高周波電流発生装置で発生させた高周波電流を給電線から上部電極へ、上部電極から被溶着物へ、そして被溶着物から下部電極へ流して、被溶着物を誘電溶着させている。
【0012】
本発明の高周波溶着装置は、より具体的には、上部電極と下部電極の間に被溶着物を挟み、上部電極と下部電極の間に高周波電流を流して、被溶着物を誘電溶着する高周波溶着装置であって、上部電極と、下部電極と、上部電極に給電する上部電極用給電線と、下部電極に給電する下部電極用給電線と、高周波電流発生装置と、電気的にアースされている筐体と、管状アース部と、絶縁物の間隔保持部材と、を備え、上部電極には上部電極用給電線を接続し、下部電極には下部電極用給電線を接続し、上部電極用給電線と下部電極用給電線を、高周波電流発生装置にそれぞれ接続し、上部電極用給電線には、管状アース部を被せ、上部電極用給電線と管状アース部の間には、間隔保持部材を入れて、上部電極用給電線と管状アース部の表面が、所定間隔離れるように上部電極用給電線を管状アース部で電気的に絶縁した状態に囲んだ形で一体に支持し、管状アース部を筐体に接続してアースし、高周波電流発生装置で発生させた高周波電流を、上部電極と下部電極に流したときに、上部電極用給電線に沿って発生する放射ノイズを管状アース部で吸収させ、放射ノイズの発生を抑制するようにしている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、給電線の長い高周波溶着装置で、高周波電流発生装置から離れた位置の被溶着物の上表面を上部電極で押圧して溶着したとき、給電線の周囲を管状アース部で空間をあけて電気的に絶縁した状態で同軸状に囲んでいるため、給電線に沿って発生する放射ノイズは管状アース部に吸収されて低減する。そして放射ノイズの大きさを外部環境に悪影響を与えない所定の大きさ以内に抑えた高周波溶着装置を提供することを可能にしている。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態1にかかる給電線の長い高周波溶着装置の一部を断面とした、溶着作業前の待機時の要部正面図。
【
図2】本発明の実施形態1にかかる給電線の長い高周波溶着装置の一部を断面とした、溶着作業時の要部正面図。
【
図3】本発明の実施形態1にかかる給電線の長い高周波溶着装置の一部を断面とした外観図。
【
図4】本発明の実施形態1にかかる給電線の長い高周波溶着装置の上下動接続部近傍の部分拡大断面図。
【
図5】(a)本発明の実施形態1にかかる給電線の長い高周波溶着装置の
図1のX-X断面図、(b)本発明の実施形態1にかかる高周波溶着装置で、給電線と管状アース部の間に所定の空間をあけて電気的に絶縁するように一体に組み立てる手順を示した図。
【
図6】(a)(b)本発明の実施形態1にかかる高周波溶着装置の管状アース部近傍の外観斜視図。
【
図7】本発明の実施形態1にかかる高周波溶着装置で、管状アース部が無いときと、管状アース部が有るときの給電線の放射ノイズレベルを棒グラフで対比して示したイメージ図。
【
図8】(a)本発明の実施形態1の変形例にかかる高周波溶着装置の
図1のX-X断面に相当する断面図、(b)本発明の実施形態1の変形例にかかる高周波溶着装置で、給電線と管状アース部の間に所定の空間をあけて電気的に絶縁するように一体に組み立てる手順を示した図。
【
図9】本発明の実施形態2にかかる高周波溶着装置の一部を断面とした要部正面図。
【
図10】(a)(b)本発明の実施形態3にかかる給電線の長い高周波溶着装置の一部を断面とした、溶着作業前の待機時の要部正面図。
【
図11】(a)(b)本発明の実施形態4にかかる給電線の長い高周波溶着装置の一部を断面とした要部正面図。
【
図12】(a)(b)本発明の実施形態4の変形例にかかる給電線の長い高周波溶着装置の一部を断面とした要部正面図。
【
図13】本発明の実施形態5にかかる給電線の長い高周波溶着装置の管状アース部近傍の外観斜視図。
【
図14】本発明の実施形態5にかかる給電線の長い高周波溶着装置の先端部、管部、上下動接続部、基部の各放射ノイズの大きさを、定性的に対比して示した棒グラフ。
【
図15】本発明の実施形態6にかかる給電線の長い高周波溶着装置の管状アース部近傍の外観斜視図。
【
図16】本発明の実施形態6にかかる給電線の長い高周波溶着装置の先端部、管部、上下動接続部、基部の各放射ノイズの大きさを、定性的に対比して示した棒グラフ。
【
図17】本発明の実施形態7にかかる給電線の長い高周波溶着装置の管状アース部近傍の外観斜視図。
【
図18】本発明の実施形態7にかかる給電線の長い高周波溶着装置の先端部、管部、囲いなし上下動接続部、基部の各放射ノイズの大きさを、定性的に対比して示した棒グラフ。
【
図19】本発明の実施形態8にかかる給電線の長い高周波溶着装置の上部電極の先端部と上下動接続部、基部近傍の外観斜視図。
【
図20】本発明の実施形態8にかかる給電線の長い高周波溶着装置の先端部と上下動接続部、基部の各放射ノイズの大きさを、定性的に対比して示した棒グラフ。
【
図21】本発明の実施形態9にかかる給電線の長い高周波溶着装置の上部電極の先端部と上下接続動部、基部近傍の外観斜視図。
【
図22】本発明の実施形態9にかかる給電線の長い高周波溶着装置の先端部と上下動接続部、基部の各放射ノイズの大きさを、定性的に対比して示した棒グラフ。
【
図23】本発明の実施形態10にかかる給電線の長い高周波溶着装置の上部電極の先端部と上下動接続部、水平動部近傍の外観斜視図。
【
図24】本発明の実施形態10にかかる給電線の長い高周波溶着装置の先端部と上下動接続部、水平動部の各放射ノイズの大きさを、定性的に対比して示した棒グラフ。
【
図26】従来の給電線の長い他の高周波溶着装置の部分斜視図。
【
図27】従来の更に他の高周波溶着装置の部分正面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の高周波溶着装置は、上部電極と下部電極の間に被溶着物を挟み、上部電極と下部電極の間に高周波電流を流して、被溶着物を誘電溶着する高周波溶着装置であって、上部電極と、下部電極と、前記上部電極に給電する上部電極用給電線と、前記下部電極に給電する下部電極用給電線と、高周波電流発生装置と、電気的にアースされている筐体と、管状アース部と、絶縁物の間隔保持部材と、を備え、前記上部電極には前記上部電極用給電線を接続し、前記下部電極には前記下部電極用給電線を接続し、前記上部電極用給電線と前記下部電極用給電線を、前記高周波電流発生装置にそれぞれ接続し、前記上部電極用給電線には、前記管状アース部を被せ、前記上部電極用給電線と前記管状アース部の間には、前記間隔保持部材を入れて、前記上部電極用給電線と前記管状アース部の表面が、所定間隔離れるように前記上部電極用給電線を前記管状アース部で電気的に絶縁した状態に囲んだ形で一体に支持し、前記管状アース部を前記筐体に接続してアースし、前記高周波電流発生装置で発生させた高周波電流を、前記上部電極と前記下部電極に流したときに、前記上部電極用給電線に沿って発生する放射ノイズを前記管状アース部で吸収させ、放射ノイズの発生を抑制するようにしている。
以下、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
【0016】
(実施形態1)
まず実施形態1について説明する。
図1は、本発明の実施形態1にかかる給電線の長い高周波溶着装置の一部を断面とした、溶着作業前の待機時の要部正面図であり、
図2は、本発明の実施形態1にかかる給電線の長い高周波溶着装置の一部を断面とした、溶着作業時の要部正面図である。
図3は、本発明の実施形態1にかかる高周波溶着装置の一部を断面とした外観図である。
【0017】
図1で、7は絶縁テーブルであり、絶縁テーブル7の上には下部電極8を取り付けている。下部電極8の上面には、塩化ビニールシート等の一対の被溶着物6、6’を重ねて載せている。被溶着物6、6’を重ねた位置の上方には、上部電極5の下面を対向させている。なお、
図1の上部電極5の下面にはコの字型断面の溝が掘ってあり、上部電極部材5aを交換可能に固定している。各種の溶着条件に応じて上部電極部材5aを最適形状のものと交換可能とすることで多様な被溶着物を対象とすることができる。
【0018】
上部電極5と下部電極8はそれぞれ高周波電流発生装置2に接続している。すなわち、高周波電流発生装置2から上部電極5へは、第一の上部電極用給電線10、U字型給電継手11、第二の上部電極用給電線12で接続している。高周波電流発生装置2と下部電極8は、下部電極用給電線9で接続している。そして、高周波電流発生装置2によって、上部電極5と下部電極8の間に周波数が27.12MHz等の高周波電流を流すようにしている。
【0019】
なお、
図1では、第一の上部電極用給電線10、U字型給電継手11、第二の上部電極用給電線12の断面形状を明確にするために、厚い金属板でできているように描いているが、少なくともU字型給電継手11については、0.1mm程度の薄い可撓性の金属板を用いている。また本十実施形態では、第一の上部電極用給電線10及び第二の上部電極用給電線12も薄い平板状をなしている。そして、U字型給電継手11のU字型の湾曲部でない端部をそれぞれ、第一の上部電極用給電線10あるいは第二の上部電極用給電線12に溶接、リベットあるいはビス50で止めている。
【0020】
第一の管状アース部20は横断面が矩形の管状をなしており、第一の管状アース部20の内側表面は、第一の上部電極用給電線10の表面から上下15mm以上の空間4をあけて囲んでいる。第一の管状アース部20の一端は高周波電流発生装置2のある筐体1に固定している。筐体1は、図示しないアース線でアースに落としている。
【0021】
第2の管状アース部22は、横断面が矩形の管状をなしており、継手部分から第二の上部電極用給電線12、上部電極部5にかけて囲んでいる。なお、第2の管状アース部22において、継手部分の上方や上部電極部5の下方は開口している。
【0022】
第一の上部電極用給電線10と第二の上部電極用給電線12は、U字型給電継手11で接続してある。そして、第二の上部電極用給電線12の表面と第二の管状アース部22の内側表面は、後述する
図5(a)に示したように絶縁物でできた間隔保持部材30a、30b、31a、31bを用いて15mm以上の空間4をあけている。第二の上部電極用給電線12の先端下面には上部電極5の上面が取り付けてある。
【0023】
高周波電流発生装置2のある筐体1の上には、プレス支持板40を取り付けていて、プレス支持板40に空気プレス41を下向きに往復動自在に取り付けている。なお、空気プレス41を動作させる手段については、図示を省略した。空気プレス41のアクチュエータ42の先端は、第二の管状アース部22の上向きのボス部に差し込んで固定してある。
【0024】
U字型給電継手11、第二の上部電極用給電線12、上部電極5は、第二の管状アース部22に間隔保持部材30a、30b、31a、31bを用いて一体に組み立てられている。そのため
図2のように、空気プレス41で第二の管状アース部22を白抜き矢印3のように押し下げると、上部電極5の下面、より正確には上部電極5のコの字型断面の溝に固定された上部電極部材5aの下面、は下部電極8の上に置かれた被溶着物6を押圧する。
【0025】
上部電極5で下部電極8の上に置かれた被溶着物6を押圧した状態で、高周波電流発生装置2から、第一の上部電極用給電線10、U字型給電継手11、第二の上部電極用給電線12、を経て上部電極5に、そして、被溶着物6、6’から下部電極8に、周波数が27.12MHz等の高周波電流を流すと、被溶着物6、6’の重なった部分が誘電発熱して溶着する。つまり被溶着物6、6’の分子に高周波電流が流れると、分子の電気の極性(+、-)が反転を繰り返して発熱し、被溶着物6、6’の重なった部分が互いに溶融し、その後、高周波電流が止まると冷えて固まり溶着する。
【0026】
被溶着物6、6’の重なった部分が溶着した後は、空気プレス41で第二の管状アース部22を白抜き矢印3と逆方向(上方向)に移動させて、上部電極5を被溶着物6から離して溶着作業を完了する。
【0027】
図1と
図2で示したように、上部電極5へ高周波電流を給電する第一の上部電極用給電線10と第二の上部電極用給電線12は変形可能なU字型給電継手11でつないでいる。U字型給電継手11は、0.1mm程度の薄い可撓性の金属板を下方向に凸に湾曲させて用いていて変形可能であるため、空気プレス41で第二の管状アース部22を白抜き矢印3のように押し下げて、第二の上部電極用給電線12を図面左側の第一の上部電極用給電線10に対して紙面下方向に移動させると、U字型給電継手11の湾曲部がずれるように変形する。
【0028】
第一の管状アース部20と第二の管状アース部22も同様に、第一の管状アース部20の上部と第二の管状アース部22の上部を上方向に凸に湾曲して変形可能なU字型アース継手21のU字型の湾曲部でない端部をそれぞれ溶接、リベットあるいはビス50でつないでいる。第一の管状アース部20と第二の管状アース部22の下部は、互いに上下方向にスライド自在に当接している。
【0029】
なお、
図1では、第一の管状アース部20、U字型アース継手21、第二の管状アース部22の断面形状を明確にするために、厚い金属板でできているように描いているが、少なくともU字型アース継手21については、0.1mm程度の薄い可撓性の金属板を用いている。
【0030】
図4に、第一の上部電極用給電線10と第二の上部電極用給電線12を変形可能なU字型給電継手11でつないだ本発明の上下動接続部近傍の部分拡大断面図を示し、上下動接続部の動きを説明する。
【0031】
第一の上部電極用給電線10は高周波電流発生装置2の内部部品に接続固定されている。また、筐体1に第一の管状アース部20が固定されている。第一の上部電極用給電線10と第一の管状アース部20は動かない。そのため、第一の上部電極用給電線10に接続しているU字型給電継手11の左端部と、第一の管状アース部20に接続しているU字型アース継手21の左端部は、動かない。
【0032】
一方、第二の上部電極用給電線12に接続しているU字型給電継手11の右端部と、第二の管状アース部22に接続しているU字型アース継手21の右端部は、第二の管状アース部22の上下動に伴って動く。
【0033】
図4において、図示しない空気プレス41で第二の管状アース部22が白抜き矢印3のように押し下げられると、第二の管状アース部22に接続しているU字型アース継手21の右端部がΔLだけ下がる。同時に、第二の上部電極用給電線12に接続しているU字型給電継手11の右端部がΔLだけ下がる。図示しない空気プレス41で第二の管状アース部22が白抜き矢印3と反対側に引き上げたときは、逆の動きをする。
【0034】
U字型給電継手11の湾曲部と、U字型アース継手21の湾曲部では、それぞれの湾曲部の位置がずれるが、外見的にほぼ同じ形を保つ。そのため、第一の上部電極用給電線10、U字型給電継手11、第二の上部電極用給電線12と、第一の管状アース部20、U字型アース継手21、第二の管状アース部22とのそれぞれの表面の間隔を、例えば15mm以上に保つことが出来る。
【0035】
このように、第一の上部電極用給電線10に接続しているU字型給電継手11の左端部に対して第二の上部電極用給電線12に接続しているU字型給電継手11の右端部が下方に移動して、第二の上部電極用給電線12とその先端にある上部電極5が下降する。そして、一対の被溶着物6、6’を上部電極5と下部電極8の間で挟む。
【0036】
図1は、溶着作業前の待機状態であるため、上部電極5の下面は被溶着物6の上に一定距離をあけて向き合っている。第二の管状アース部22が空気プレス41により下方に押し下げられると、上部電極5は第二の上部電極用給電線12とともに紙面下方向に移動し、
図2のように、被溶着物6、6’を重ねた位置を押圧する。
【0037】
図2は、溶着作業時の状態を示しており、上部電極5が空気プレス41により、白抜き矢印3のように下方に押し下げられ、被溶着物6、6’を重ねた位置を押圧している。
図2の状態で、高周波電流発生装置2から高周波電流を第一の上部電極用給電線10、U字型給電継手11、第二の上部電極用給電線12経由で上部電極5に流すと、被溶着物6、6’の重なった部分を突き抜けて、下部電極8に高周波電流が流れる。このことにより、被溶着物6、6’の重なった部分は、誘電作用で発熱して溶着する。
【0038】
図5(a)は、第二の上部電極用給電線12と第二の管状アース部22の間にスペーサとして絶縁物の間隔保持部材30a、30bを入れて、第二の上部電極用給電線12と第二の管状アース部22の表面が、15mm以上離れるように空間4をあけて電気的に絶縁した構造部分のX-X断面を示している。
【0039】
図5(b)では、第二の上部電極用給電線12を第二の管状アース部22の中に、所定の空間4をあけて電気的に絶縁するように一体に組み立てる手順を示した。第二の上部電極用給電線12の上面と下面に絶縁物の間隔保持部材30a、30bをそれぞれ両面テープや接着剤で貼着し(ステップ1)、これを第二の管状アース部22の中に挿入し(ステップ2)、第二の管状アース部22に予めあけてある孔22hから絶縁物の間隔保持部材31a、31bを圧入して位置決め固定する(ステップ3)。なお、予め間隔保持部材30a、30bに雌ネジを、間隔保持部材31a、31bに雄ネジを形成しておいて、ネジ結合しても良い。
【0040】
図6に、本発明の実施形態1にかかる高周波溶着装置の第一の管状アース部20、第二の管状アース部22の近傍を外観斜視図として示した。
図6(a)には、第一の管状アース部20と第二の管状アース部22をU字型アース継手21で接続している状況と、第一の上部電極用給電線10と第二の上部電極用給電線12をU字型給電継手11で接続している状況を示した。U字型給電継手11は、0.1mm程度の薄い可撓性の金属板を用いており変形可能である。また、U字型アース継手21も0.1mm程度の薄い可撓性の金属板を用いており変形可能としている。そのため、図示していない空気プレス41で第二の管状アース部22を押し下げると、U字型アース継手21の湾曲部がずれて変形し、第二の管状アース部22が下方に移動する。
【0041】
図6(b)には、図示していない空気プレス41によって、第一の管状アース部20に対して、第二の管状アース部22が白抜き矢印3のように下方に移動したときの第一の管状アース部20と第二の管状アース部22近傍の状況を示した。
図6(a)と
図6(b)を対比してみれば、
図6(a)から
図6(b)へと、U字型給電継手11とU字型アース継手21の湾曲部がずれて変形し、第二の管状アース部22が、第一の管状アース部20に対して下方に移動していることが分かる。
【0042】
このように、第二の管状アース部22と、絶縁支持された第二の上部電極用給電線12と上部電極5が下方に移動し、上部電極5の下面が被溶着物6、6’が重なった位置を押圧した状態で、高周波電流発生装置2から高周波電流を第一の上部電極用給電線10、U字型給電継手11、第二の上部電極用給電線12経由で上部電極5に流すと、高周波電流発生装置2から上部電極5までの第一の上部電極用給電線10と第二の上部電極用給電線12の長手方向に沿って発生する放射ノイズは、第一の管状アース部20、U字型アース継手21、そして第二の管状アース部22で吸収される。放射ノイズは、第一の管状アース部20、U字型アース継手21、そして第二の管状アース部22の外に漏れてこない。
【0043】
図7に、本発明の実施形態1にかかる高周波溶着装置で、第一の管状アース部20、U字型アース継手21、そして第二の管状アース部22が無いときと、第一の管状アース部20、U字型アース継手21、そして第二の管状アース部22が有るときの第一の上部電極用給電線10、U字型給電継手11、第二の上部電極用給電線12と上部電極5から放射される放射ノイズレベルを棒グラフで対比し、低減した放射ノイズの大きさをイメージ図として示した。
【0044】
第一の管状アース部20、U字型アース継手21、そして第二の管状アース部22を被せたときには、
図7の右の棒グラフのように放射ノイズの大きさ、つまりノイズのレベルが低下した状態で、被溶着物の高周波溶着を行うことができる。実測したところ、第一の管状アース部20、U字型アース継手21、そして第二の管状アース部22を被せなかったときより、20dbμV/mの放射ノイズが低下したことを確認した。
【0045】
なお、第一の上部電極用給電線10、U字型給電継手11と第二の上部電極用給電線12を囲む、第一の管状アース部20と第二の管状アース部22は、材質として好ましくは、銅(Cu)、真鍮(Bs)、アルミニュウム(Al)を用いている。特に、加工容易なことからアルミニュウム(Al)の管状の押し出し材または引き抜き材を用いるとよい。U字型アース継手21には、アースが取れる可撓性金属板として可撓性の銅(Cu)、真鍮(Bs)等の金属平板を用いるとよい。なお、絶縁物である間隔保持部材の材質としては、絶縁物であって一定の機械的強度があればポリプロピレン(PP)、テフロン(登録商標)などの合成樹脂を用いることができる。
【0046】
(実施形態1の変形例)
実施形態1の変形例として、形を変えた絶縁物の間隔保持部材32a、32bを用いた場合について説明する。
図8(a)(b)は、
図5(a)(b)に相当する。
【0047】
図8(a)に、実施形態1の変形例について、
図1のX-X断面図に相当する図を示した。実施形態1では、第二の上部電極用給電線12に間隔保持部材30a、30bを両面テープあるいは接着剤で貼着していたが、実施形態1の変形例では、第二の上部電極用給電線12を絶縁物の間隔保持部材32a、32bで挟持している。
【0048】
図8(b)に、第二の上部電極用給電線12を第二の管状アース部22の中に、所定の空間4をあけて電気的に絶縁して一体に組み立てる手順を示した。すなわち、第二の上部電極用給電線12の上面と下面を絶縁物の間隔保持部材32aと32bで挟持し(ステップ1)、これを第二の管状アース部22の中に挿入し(ステップ2)、第二の管状アース部22に予めあけてある孔22hから絶縁物の間隔保持部材31a、31bを圧入して位置決め固定する(ステップ3)。なお、予め間隔保持部材32a、32bに雌ネジを、間隔保持部材31a、31bに雄ネジを形成しておいて、ネジ結合しても良いことは、実施形態1と同じである。
【0049】
実施形態1の変形例では、第二の上部電極用給電線12を絶縁物の間隔保持部材32a、32bで挟んでいるため、両面テープや接着することなく、第二の上部電極用給電線12と第二の管状アース部22の距離を安定的に支持できる利点がある。
【0050】
なお、第二の管状アース部22と第二の上部電極用給電線12の間に、絶縁物の間隔保持部材32a、32bを設ける箇所は、複数箇所にしてもよい。
図1から
図3、
図6では、第二の管状アース部22と第二の上部電極用給電線12の長手方向に2ケ所、絶縁物の間隔保持部材を設けた場合を示した。
【0051】
実施形態1の高周波溶着装置では、第一の上部電極用給電線10、U字型給電継手11、第二の上部電極用給電線12と上部電極5を第一の管状アース部20、U字型アース継手21と第二の管状アース部22で囲んだ形を示し、変形例も示した。そして、給電線に沿って発生する放射ノイズを管状アース部やU字型アース継手に吸収させて低減させていること、放射ノイズの大きさを外部環境に悪影響を与えない所定の大きさ以内に抑えた高周波溶着装置を提供可能にしていることを説明した。
【0052】
(実施形態2)
次に実施形態2について説明する。
図9は本発明の実施形態2にかかる高周波溶着装置の一部を断面とした要部正面図である。本発明の実施形態2にかかる高周波溶着装置では、筐体1の中において、一つの上部電極用給電線12aの一端(図中左端)に凸状に湾曲したU字型給電用継手11aを取り付け、U字型給電用継手11aの他端を高周波電流発生装置2に接続している。そして、一つの管状アース部22sの端面(図中左端面)を筐体1に対して上下方向にスライド自在に接触させている。管状アース部22sは筐体1に接していてアースに落ちている。
【0053】
なお、管状アース部22s中に上部電極用給電線12aが、絶縁物でできた間隔保持部材30a、30bでお互いの表面が15mm以上の空間4をあけて一体に支持されていること、上部電極用給電線12aの他端の下面に上部電極5が取り付けてあること、そして、空気プレス41で上下動自在であることは、実施形態1と同じである。また、U字型給電継手11aは、0.1mm程度の薄い可撓性の金属板を用いており変形可能であることも、実施形態1と同じである。
【0054】
実施形態2では、実施形態1にあったU字型アース継手が無い。U字型給電継手11aが筐体1の中にある。上部電極用給電線12aを、実施形態1のときのように、第一の上部電極用給電線10と第二の上部電極用給電線12に分けてU字型給電継手11で接続する必要がない。また、管状アース部22sも第一の管状アース部20と第二の管状アース部22に分けてU字型アース継手21で接続する必要もない。構造が簡単であるという利点がある。
【0055】
本発明の実施形態2に係る高周波溶着装置も、上部電極5と上部電極用給電線12aを管状アース部22sで囲んでいるので、高周波電流発生装置2から上部電極5までの第一の上部電極用給電線12aの長手方向に沿って発生する放射ノイズは、管状アース部22sで吸収され管状アース部22sの外に漏れてこない。実施形態1と同じく、
図7のように上部電極用給電線12aの放射ノイズレベルは低下する。
【0056】
(実施形態3)
次に実施形態3について説明する。
図10(a)は本発明の実施形態3に係る高周波溶着装置の溶着作業前の状態を示す一部を断面とした正面図、
図10(b)は本発明の実施形態3に係る高周波溶着装置の溶着作業時の状態を示す一部を断面とした正面図である。
【0057】
実施形態3では、上部電極5の上下動はさせず、上部電極5の上下方向の位置を固定している。そして、被溶着物6、6’を載せた下部電極8を絶縁テーブル7からプレス手段45で上部電極5に向けて上下動動させ、被溶着物6、6’を上部電極5に押圧する構造にしている。なお、下部電極8に接続している下部電極用給電線9にはS字型折り曲げ部9sを形成して、下部電極8が上下動したときに、下部電極用給電線9の変位を吸収させていることを示した。
【0058】
本発明の実施形態3では、上部電極5が上下動しないので、一つの上部電極用給電線10aと一つの管状アース部22aを高周波電流発生装置2と筐体1にそれぞれ接続すればよい。上部電極用給電線10aを、実施形態1のときのように、第一の上部電極用給電線10と第二の上部電極用給電線12に分けてU字型給電継手11で接続する必要がない。また、管状アース部22aも第一の管状アース部20と第二の管状アース部22に分けてU字型アース継手21で接続する必要もない。
【0059】
本発明の実施形態3に係る高周波溶着装置も、上部電極5と給電線10aを管状アース部22aで囲んでいるので、高周波電流発生装置2から上部電極5までの上部電極用給電線10aの長手方向に沿って発生する放射ノイズは、管状アース部22aで吸収され管状アース部22aの外に漏れてこない。実施形態1と同じく、
図7のように給電線10aの放射ノイズレベルは低下する。
【0060】
実施形態3の高周波溶着装置では、上部電極用給電線10aと上部電極5を管状アース部22aで囲んだ形を示した。上部電極用給電線に沿って発生する放射ノイズを管状アース部に吸収させて低減させていること、放射ノイズの大きさを外部環境に悪影響を与えない所定の大きさ以内に抑えた高周波溶着装置を提供可能にしていることは、実施形態1と同じである。
【0061】
(実施形態4)
次に実施形態4について説明する。
図11(a)は本発明の実施形態4に係る高周波溶着装置の上部電極5を上部電極用給電線10bの長手方向、つまり紙面の水平方向の右に移動したときの状態を示す一部を断面とした正面図、
図11(b)は本発明の実施形態3に係る高周波溶着装置の上部電極5を紙面の水平方向の左に移動したときの状態を示す一部を断面とした正面図である。
【0062】
実施形態4では、管状アース部20b、21b、22bを管状の金属を用いた互いに摺動して重なり合う多層構造として、長手方向に伸縮自在にしている。具体的には筐体に接続された基部の管状アース部20b内に中央の管状アース部21bが嵌挿され、当該中央の管状アース部22b内に先端の管状アース部22bが嵌挿された、三層構造をなしている。そして、管状アース部22bの中に上部電極用給電線10bを絶縁物の間隔保持部材30a、30bで固定し、上部電極用給電線10bの一方の端の下面に上部電極5を接続している。上部電極用給電線10bの他方の端は、高周波電流発生装置2に接続している。実施形態4では、高周波電流発生装置2の下部にキャスター(車輪)を付けて筐体1の中で水平移動できるようにしている。そのため、高周波電流発生装置2を白色矢印の向きに水平移動すると、
図11(a)または
図11(b)のように上部電極5を上部電極用給電線10bの長手方向に移動することができる。
【0063】
本発明の実施形態4に係る高周波溶着装置では、上部電極5が、高周波電流発生装置2と一体的に水平移動することができるので、被溶着物6を押圧して溶着する位置を任意に設定できる利点がある。
【0064】
なお、実施形態4に係る高周波溶着装置では、被溶着物6、6’と下部電極8を乗せた絶縁テーブル7については、実施形態3と同じく、プレス手段45で上部電極5に向けて上下動動させ、被溶着物6を上部電極5に押圧する構造としている。
【0065】
本発明の実施形態4に係る高周波溶着装置も、上部電極5と上部電極用給電線10bを水平方向に伸縮自在な管状アース部20b、21b、22bで囲んでいるので、実施形態1と同じく、
図7のように給電線の放射ノイズレベルは低下する。
【0066】
(実施形態4の変形例)
次に実施形態4の変形例について説明する。
図12(a)は本発明の実施形態4の変形例に係る高周波溶着装置の上部電極5を上部電極用給電線10bの長手方向、つまり紙面の水平方向の右に移動したときの状態を示す一部を断面とした正面図、
図12(b)は本発明の実施形態4の変形例に係る高周波溶着装置の上部電極5を紙面の水平方向の左に移動したときの状態を示す一部を断面とした正面図である。
【0067】
実施形態4の変形例では、管状アース部20c、21c、22cを、導電性繊維と管状の金属を用いた伸縮自在な蛇腹構造としている。具体的には筐体に接続された基部の管状アース部20cと上部電極5を覆う先端の管状アース部22cが蛇腹状の管状アース部21cにより接続されている。そして、管状アース部22cの中に上部電極用給電線10bを絶縁物の間隔保持部材30a、30bで固定し、上部電極用給電線10bの一方の端の下面に上部電極5を接続している。上部電極用給電線10bの他方の端は、高周波電流発生装置2に接続している。実施形態4の変形例でも、高周波電流発生装置2の下部にキャスター(車輪)を付けて筐体1の中で水平移動できるようにしている。そのため、高周波電流発生装置2を白色矢印の向きに水平移動すると、
図12(a)または
図12(b)のように上部電極5を上部電極用給電線10bの長手方向に移動することができる。本発明の実施形態4の変形例に係る高周波溶着装置では、実施形態4と同様に上部電極5が給電線の長手方向に移動するので、被溶着物6、6’を押圧して溶着する位置を任意に設定できる利点がある。
【0068】
なお、被溶着物6、6’と下部電極8を乗せた絶縁テーブル7については、実施形態4と同じく、プレス手段45で上部電極5に向けて上下動動させ、被溶着物6を上部電極5に押圧する構造としている。
【0069】
本発明の実施形態4の変形例に係る高周波溶着装置も、上部電極5と上部電極用給電線10bを水平方向に伸縮自在な蛇腹構造をした管状アース部20c、21c、22cで囲んでいるので、実施形態1と同じく、
図7のように給電線の放射ノイズレベルは低下する。
【0070】
実施形態4の高周波溶着装置では、上部電極用給電線10bと上部電極5を水平方向に伸縮自在な管状アース部で囲んだ形を示した。
【0071】
(実施形態5)
以下の実施形態5から実施形態10では、上部電極用給電線を管状アース部で電気的に絶縁した状態で囲んだ範囲を、上部電極用給電線の長手方向の一部にした場合を説明する。そして、実施形態5から実施形態10では、既に説明した実施形態1から4と同様に、上部電極用給電線に沿って発生する放射ノイズを管状アース部やU字型アース継手に吸収させて低減させていること、放射ノイズの大きさを外部環境に悪影響を与えない所定の大きさ以内に収めた高周波溶着装置を提供可能にしていることを説明する。
【0072】
実施形態5について説明する。
図13は、本発明の実施形態5にかかる給電線の長い高周波溶着装置の管状アース部近傍の外観斜視図である。
図14は、本発明の実施形態5にかかる給電線の長い高周波溶着装置の先端部、管部、上下動接続部、基部の各放射ノイズの大きさを、定性的に対比して示した棒グラフである。
【0073】
実施形態5では、第一の管状アース部20、U字型アース継手21と第二の管状アース部22dで囲んでいるのは第一の上部電極用給電線10、U字型給電継手11、第二の上部電極用給電線12の大部分の領域に限定して、先端部(A)として示した領域、つまり上部電極5の近傍は第二の管状アース部22dで囲んでいない。
【0074】
図13では、第一の管状アース部20で第一の上部電極用給電線10を囲んでいる領域を基部(F)として示し、第二の管状アース部22dで第一の上部電極用給電線10、U字型給電継手11と第二の上部電極用給電線12を囲んでいる領域を、上下動接続部(C)と管部(B)として示し、第二の管状アース部22dで囲んでいない先端部(A)と区分けした外観図を示した。
【0075】
図14では、
図13で区分けした、基部(F)、上下動接続部(C)、管部(B)、先端部(A)に対応した各領域の放射ノイズの大きさを、大、中、小の3段階に定性的に示した。実施形態4の先端部(A)では、上部電極5の近傍が第二の管状アース部22dに囲まれていないので、上部電極5の近傍の放射ノイズの大きさは大であり、第二の管状アース部22dに囲まれている管部(B)と上下動接続部(C)の放射ノイズの大きさは小である。なお、第一の管状アース部20で第一の上部電極用給電線10を囲んでいる領域である基部(F)の放射ノイズの大きさは小である。
【0076】
図13に示した実施形態5のようにすれば、溶着作業の必要により、上部電極5と被溶着物の押圧状態と溶着作業状態を目視したり、近づいたりすることができる。第二の管状アース部22dの先端に小型監視カメラを付けて、上部電極5と被溶着物の押圧状態や溶着作業状態をモニターしなくてもよく、第二の管状アース部22dで上部電極5を囲んでいなかった従来と同じ使い勝手で作業できるという効果がある。
【0077】
(実施形態6)
実施形態6について説明する。
図15は、本発明の実施形態6にかかる給電線の長い高周波溶着装置の管状アース部近傍の外観斜視図である。
図16は、本発明の実施形態6にかかる給電線の長い高周波溶着装置の先端部、管部、上下動接続部、基部の各放射ノイズの大きさを、定性的に対比して示した棒グラフである。
【0078】
実施形態6では、第一の上部電極用給電線10の一端部と第二の上部電極用給電線12の一端部をU字型給電継手11でつないだ上下動接続部(D)の側面を第二の管状アース部22eで囲まず、上下動接続部(D)の上面はU字型給電継手11に対してU字型アース継手21を対向させ、上下動接続部(D)の下面はU字型給電継手11に対して管状アース部22eの下面を対向させて、上下動接続部(D)の放射ノイズが上下方向に出るのを制限している。
【0079】
図15では、第一の管状アース部20で第一の上部電極用給電線10を囲んでいる領域を基部(F)として示し、第二の管状アース部22eで囲んでいるのは第二の上部電極用給電線12の管部(B)の領域のみとして、先端部(A)と上下動接続部(D)の側面を第二の管状アース部22eで囲んでいないときの外観図を示した。
【0080】
図16では、実施形態6の高周波溶着装置の給電線の長手方向の領域を、基部(F)、上下動接続部(D)、管部(B)、先端部(A)と区分けして、各領域の放射ノイズの大きさを、大、中、小の3段階に定性的に示した。実施形態6の先端部(A)では、上部電極5の近傍が第二の管状アース部22eに囲まれていないので、上部電極5の近傍の放射ノイズの大きさは大であり、第二の管状アース部22eに囲まれている管部(B)の放射ノイズの大きさは小である。
図15のように、上下動接続部(D)の放射ノイズは、上下方向に制限されているから、放射ノイズの大きさは、大でもない、小でもない、中になる。なお、第一の管状アース部20で第一の上部電極用給電線10を囲んでいる領域である基部(F)は放射ノイズの大きさは小である。
【0081】
実施形態6のようにすれば、溶着作業の必要により、上部電極5と被溶着物の押圧状態と溶着作業状態を目視したり、近づいたりすることができる。上下動接続部(D)の放射ノイズが上下方向に一定程度制限されている。また、U字型アース継手21やU字型給電継手11を目視出来るので、装置の点検、メンテナンス作業がしやすいという利点がある。
【0082】
(実施形態7)
実施形態7について説明する。
図17は、本発明の実施形態7にかかる給電線の長い高周波溶着装置の管状アース部近傍の外観斜視図である。
図18は、本発明の実施形態7にかかる給電線の長い高周波溶着装置の先端部、管部、囲いなし上下動接続部、基部の各放射ノイズの大きさを、定性的に対比して示した棒グラフである。
【0083】
実施形態7では、上下動接続部が第一の上部電極用給電線10の一端部と第二の上部電極用給電線12の一端部をU字型給電継手11でつないだのみの囲いなし上下動接続部(E)であり、第二の管状アース部22fやU字型アース継手で囲んでいない。先端部(A)も第二の管状アース部22fで囲んでいない。
【0084】
図17では、第一の管状アース部20で第一の上部電極用給電線10を囲んでいる領域を基部(F)として示し、第一の上部電極用給電線10、U字型給電継手11、第二の上部電極用給電線12に対して第二の管状アース部22fで囲んでいるのは第二の上部電極用給電線12の管部(B)の領域のみとして、先端部(A)と囲いなし上下動接続部(E)を第二の管状アース部22fやU字型アース継手で囲んでいないときの外観図を示した。
【0085】
図18では、実施形態7の高周波溶着装置の給電線の長手方向の領域を、基部(F)、囲いなし上下動接続部(E)、管部(B)、先端部(A)と区分けして、各領域の放射ノイズの大きさを、定性的に示した。実施形態6の先端部(A)と、囲いなし上下動接続部(E)は、第二の管状アース部22fに囲まれていないので、放射ノイズの大きさは大であり、第二の管状アース部22fに囲まれている管部(B)の放射ノイズの大きさは小である。なお、第一の管状アース部20で第一の上部電極用給電線10を囲んでいる領域を基部(F)は放射ノイズの大きさは小である。
【0086】
実施形態7のようにすれば、第二の上部電極用給電線12の管部(B)を第二の管状アース部22fで被せるという簡単な構造で、全体として放射ノイズの大きさを小さくできる効果がある。少なくとも、給電線が長くなったとしても、給電線が伸びた長さ分を第二の管状アース部22fで覆うことにより、給電線が短いときのレベルまで放射ノイズが低減される。
【0087】
(実施形態8)
実施形態8について説明する。
図19は、本発明の実施形態8にかかる高周波溶着装置の上部電極の先端部と上下動接続部、基部近傍の外観斜視図である。
図20は、本発明の実施形態8にかかる高周波溶着装置の先端部と上下動接続部、基部の各放射ノイズの大きさを、定性的に対比して示した棒グラフである。
【0088】
実施形態8では、第一の上部電極用給電線10、U字型給電継手11、第二の上部電極用給電線12を、基部(F)、上下動接続部(D)と先端部(A)で構成した。
図19では、管状アース部20で第一の上部電極用給電線10を囲んでいる領域を基部(F)として示し、
図15にあった管部(B)がない実施形態8の外観図を示した。
【0089】
図20では、実施形態8の高周波溶着装置の給電線の長手方向の領域を、基部(F)、上下動接続部(D)、先端部(A)と区分けして、各領域の放射ノイズの大きさを定性的に示した。第一の上部電極用給電線10の一端部と第二の上部電極用給電線12の一端部をU字型給電継手11でつないだ上下動接続部(D)は、U字型給電継手11の上方をU字型アース継手21で、下方をアース部23の下面で覆っているので、放射ノイズが低減される。なお、管状アース部20で第一の上部電極用給電線10を囲んでいる領域である基部(F)は放射ノイズの大きさは小である。
【0090】
(実施形態9)
実施形態9について説明する。
図21は、本発明の実施形態9にかかる給電線の長い高周波溶着装置の上部電極の先端部と上下接続動部、基部近傍の外観斜視図である。
図22は、本発明の実施形態9にかかる給電線の長い高周波溶着装置の先端部と上下動接続部、基部の各放射ノイズの大きさを、定性的に対比して示した棒グラフである。
【0091】
実施形態9では、高周波電流発生装置側から第一の上部電極用給電線10、U字型給電継手11、第二の上部電極用給電線12を、基部(F)、上下動接続部(D)、先端部(A)の順に構成している。
【0092】
図21では、紙面の左から、基部(F)で第一の上部電極用給電線10を第一の管状アース部20で囲んでいる。第一の上部電極用給電線10の一端部と第二の上部電極用給電線12の一端部をU字型給電継手11でつないだ上下動接続部(D)では、上方をU字型アース継手21で、下方をアース部23で覆っている。先端部(A)では、第二の上部電極用給電線12をアース部23で囲んでいない。
【0093】
図22では、実施形態9の高周波溶着装置の給電線の長手方向の領域を、基部(F)、上下動接続部(D)、先端部(A)と区分けして、各領域の放射ノイズの大きさを定性的に示した。第一の上部電極用給電線10を第一の管状アース部20で囲んだ基部(F)と、第一の上部電極用給電線10の一端部と第二の上部電極用給電線12の一端部をU字型給電継手11でつないだ上下動接続部(D)の放射ノイズが低減されることを示した。
【0094】
(実施形態10)
実施形態10について説明する。
図23は、本発明の実施形態10にかかる給電線の長い高周波溶着装置の上部電極の先端部と上下動接続部、水平動部近傍の外観斜視図である。
図24は、本発明の実施形態10にかかる給電線の長い高周波溶着装置の先端部と上下動接続部、水平動部の各放射ノイズの大きさを、定性的に対比して示した棒グラフである。
【0095】
実施形態10では、高周波電流発生装置側から第一の上部電極用給電線10の長さ方向に、水平動部(G)、上下動接続部(D)、先端部(A)の順に構成している。
図23では、紙面の左から、第一の上部電極用給電線10を管状アース部20c、20d、20eを多層に重ねて、水平方向にスライド自在にした水平動部(G)としている。実施形態10は、実施形態9の基部(F)を水平動部(G)に置き換えたもので、他は実施形態9と同じである。
【0096】
そのため、各領域の放射ノイズの大きさを定性的に示した
図24は、
図20、
図22と類似した形になっている。実施形態10では、上部電極5の水平動作と上下動作を同時に実現できる利点がある。
【0097】
図24では、実施形態10の高周波溶着装置の給電線の長手方向の領域を、水平動部(G)、上下動接続部(D)、先端部(A)と区分けして、各領域の放射ノイズの大きさを定性的に示した。第一の上部電極用給電線10を管状アース部20c、20d、20eで囲んだ水平動部(G)と、第一の上部電極用給電線10の一端部と第二の上部電極用給電線12の一端部をU字型給電継手11でつないだ上下動接続部(D)の放射ノイズが低減されることを示した。
【0098】
上記の実施形態5から実施形態10では、給電線の長手方向の一部を管状アース部で電気的に絶縁した状態で囲んで、給電線に沿った方向で発生する放射ノイズを低減する場合を説明した。そして、給電線に沿って発生する放射ノイズを管状アース部やU字型アース継手に吸収させて低減させていること、放射ノイズの大きさを外部環境に悪影響を与えない所定の大きさ以内に収めた高周波溶着装置を提供可能にしていることを説明した。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明は、高周波溶着装置をはじめ、高周波溶着溶断装置など、他の高周波利用装置に適用できる。
【符号の説明】
【0100】
1:筐体
2:高周波電流発生装置
3:電極で被溶着物を押圧する方向を示した矢印
4:空間
5:上部電極
5a:上部電極部材
6、6’:被溶着物
7:絶縁テーブル
8:下部電極
9:下部電極用給電線
10:第一の上部電極用給電線
11:U字型給電継手
12:第二の上部電極用給電線
20:第一の管状アース部
21:U字型アース継手
22:第二の管状アース部
23:アース部材
40:プレス支持板
41:空気プレス
42:アクチュエータ
50:ビス