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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-22
(45)【発行日】2022-03-30
(54)【発明の名称】防護服、およびシューカバー
(51)【国際特許分類】
   A41D 13/06 20060101AFI20220323BHJP
   A62B 17/00 20060101ALI20220323BHJP
   A41D 13/02 20060101ALI20220323BHJP
【FI】
A41D13/06
A62B17/00
A41D13/02
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2017151487
(22)【出願日】2017-08-04
(65)【公開番号】P2019031748
(43)【公開日】2019-02-28
【審査請求日】2020-05-12
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成29年2月24日~平成29年2月25日 一般社団法人日本環境感染学会主催の「第32回日本環境感染学会総会・学術集会」において文書をもって発表、平成29年5月19日~平成29年5月20日 一般社団法人日本感染管理ネットワーク主催の「第6回日本感染管理ネットワーク学会学術集会」において文書をもって発表
(73)【特許権者】
【識別番号】513322419
【氏名又は名称】株式会社モレーンコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100115749
【弁理士】
【氏名又は名称】谷川 英和
(72)【発明者】
【氏名】草場 恒樹
【審査官】▲高▼辻 将人
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-184805(JP,A)
【文献】特開2005-002545(JP,A)
【文献】特開2012-252021(JP,A)
【文献】登録実用新案第3185710(JP,U)
【文献】特開2011-184804(JP,A)
【文献】特開2011-184806(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0165973(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0144546(US,A1)
【文献】国際公開第2016/126597(WO,A1)
【文献】登録実用新案第3152355(JP,U)
【文献】特開2018-16895(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D13/00-13/12
A41D20/00
A62B 7/00-33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
異物に対する人体の防護に用いられる防護服であって、
人体の少なくとも一部を覆う服本体を具備し、
前記服本体の前面以外に開閉部を設け、
前記服本体の前面には開閉部を設けず、
前記服本体は、
靴を覆うシューカバーとの一体型であり、
前記シューカバーの足のかかの位置または土踏まずの位置に第二タブを設けた、防護服であって、
前記第二タブは、
左の前記シューカバーの足のかかとまたは土踏まずの位置であり、ユーザが一人で防護服を脱ぐ際に、右足で踏みつける部位に設けられている、または右の前記シューカバーの足のかかとまたは土踏まずの位置であり、ユーザが一人で防護服を脱ぐ際に、左足で踏みつける部位に設けられている、防護服
【請求項2】
前記服本体は、
頭部を覆うフードとの一体型であり、
前記開閉部の上方の先端は、
肩と頭頂との間であり、肩から頭頂までの1/4ないし3/4の間の高さに位置する請求項1載の防護服。
【請求項3】
前記フードは、透明素材でできたバイザーを有する、請求項記載の防護服。
【請求項4】
前記開閉部を構成するジップアップのスライダーにコードをさらに設けた請求項1から請求項いずれか一項に記載の防護服。
【請求項5】
前記開閉部は、
前記服本体の背面側に設けられている、請求項1から請求項いずれか一項に記載の防護服。
【請求項6】
病原体に対する感染予防に用いられる請求項1から請求項いずれか一項に記載の防護服。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異物に対する人体の防護に用いられる防護服等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、つなぎ形態の防護服本体の前面に、上方より股下部の近傍位置まで開閉可能なファスナーを取付けると共に、防護服本体の内側の背後位置に、廃棄時の防護服本体を収納するための収納袋部を取付け、この収納袋部の内面と外面の双方に結束バンドを取付けたことにより、防護服の廃棄時に、表面に付着したウイルスが飛散しないようにして、二次感染を防ぐことができる感染防護服が存在した(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実用新案登録第3141379号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の感染症防護服では、診療や検査などで病原体が付着しやすい前面側にファスナーがあるため、服の前面に付着した病原体が、ファスナーを下ろした時に内側に侵入しやすかった。また、着用者が、診療等の後、自分でファスナーを下ろして防護服を脱ぐ際に、服の前面に付着した病原体が手に着く場合があった。このため、従来の感染症防護服は、病原体に対する感染のリスクが高かった。
【0005】
また、他の従来の防護服でも、開閉部が前面側にあるため、異物に対するリスクが高かった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本第一の発明の防護服は、異物に対する人体の防護に用いられる防護服であって、人体の少なくとも一部を覆う服本体を具備し、服本体の前面以外に開閉部を設けた防護服である。
【0007】
かかる構成により、異物に対するリスクを低減できる。
【0008】
また、本第二の発明の防護服は、第一の発明に対して、開閉部の上方の先端は、肩より上の高さに位置する防護服である。
【0009】
かかる構成により、着用者が、一人で容易に防護服を脱ぐことができ、かつリスクを低減できる。
【0010】
また、本第三の発明の防護服は、第二の発明に対して、開閉部の上方の先端は、肩と頭頂との間であり、肩から頭頂までの1/4ないし3/4の間の高さに位置する防護服である。
【0011】
かかる構成により、一人で防護服を脱ぐのがより容易になり、かつリスクを低減できる。
【0012】
また、本第四の発明の防護服は、第一から第三いずれか1つの発明に対して、服本体は、頭部を覆うフードとの一体型である防護服である。
【0013】
かかる構成により、フードとの間に隙間がないため、リスクを低減できる。
【0014】
また、本第五の発明の防護服は、第一から第四いずれか1つの発明に対して、服本体は、靴を覆うシューカバーとの一体型である防護服である。
【0015】
かかる構成により、シューカバーと間に隙間がなく、リスクを低減できる。
【0016】
また、本第六の発明の防護服は、第五の発明に対して、シューカバーに第二タブを設けた防護服である。
【0017】
かかる構成により、着用者がシューカバーを容易に脱ぐことができ、かつリスクを低減できる。
【0018】
また、本第七の発明の防護服は、第六の発明に対して、第二タブは、足のかかとまたはその近傍に位置する防護服である。
【0019】
かかる構成により、着用者自身が、一方の足で他方の足のかかと付近にある第二タブを踏むことで、手を使わずに、シューカバーを容易に脱ぐことができ、かつリスクを低減できる。
【0020】
また、本第八の発明の防護服は、第一から第三いずれか1つの発明に対して、開閉部にコードをさらに設けた防護服である。
【0021】
かかる構成により、着用者自身が、背面側の開閉部をコードの操作で簡単に下ろせるので、一人で容易に防護服を脱ぐことができ、かつリスクを低減できる。
【0022】
また、本第九の発明の防護服は、第一から第八いずれか1つの発明に対して、開閉部の内側に1以上のタブをさらに設けた防護服である。
【0023】
かかる構成により、着用者自身が、背面側の開閉部を開けた後、その内側の1以上のタブをつまんで防護服を脱ぐことができるので、手が服本体の前面に触れずに済み、リスクを低減できる。
【0024】
また、本第十の発明の防護服は、第九の発明に対して、1以上のタブは、開閉部の最上位またはその近傍に位置する防護服である。
【0025】
かかる構成により、タブをつまみやすいので、一人で容易に防護服を脱ぐことができ、かつリスクを低減できる。
【0026】
また、本第十一の発明の防護服は、第一から第十いずれか1つの発明に対して、病原体に対する感染予防に用いられる防護服である。
【0027】
かかる構成により、病原体に対する感染のリスクを低減できる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、服本体の前面以外に開閉部を設けたことで、異物に対するリスクを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】実施の形態における防護服の背面図
図2】同防護服の正面図
図3】同右利き用の防護服の一例を示す背面図
図4】同左利き用の防護服の一例を示す背面図
図5】同開閉部の上端の位置の一例を示す図
図6】同水平方向の中心線に開閉部を設けた防護服の一例を示す背面図
図7】同人体に着用された防護服を示す正面図
図8】同人体に着用された防護服を示す背面図
図9】同防護服の脱衣手順を示す図
図10】同防護服の脱衣手順の一部を示す図
図11】同防護服の脱衣手順の他の一部を示す図
図12】同防護服の脱衣手順のその他の一部を示す図
図13】同防護服の脱衣手順のさらにその他の一部を示す図
図14】同防護服の脱衣手順の他の一部を示す図
図15】同防護服の脱衣手順のその他の一部を示す図
図16】同防護服の脱衣手順のさらにその他の一部を示す図
図17】同防護服の具体例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、防護服の実施形態について図面を参照して説明する。なお、実施の形態において同じ符号を付した構成要素は同様の機能を有するので、再度の説明を省略する場合がある。
【0031】
本実施の形態において、バックエントリー(リアエントリー)仕様の防護服に着いて説明する。バックエントリー(リアエントリー)仕様とは、ユーザが防護服を着たり脱いだりするための開閉部を、背面側に設けた仕様である。背面側とは、側面も含んでよいし、側面を含まなくてもよい。バックエントリー(リアエントリー)仕様は、通常、服本体の背面に開閉部が設けられた仕様であるが、例えば、服本体の側面に開閉部が設けられた仕様でも構わない。バックエントリー(リアエントリー)仕様は、服本体の前面以外に開閉部が設けられた仕様であればよく、広く解する。また、開閉部が背面に設けられている場合、背面における開閉部の位置は問わない。開閉部の位置は背面の中央でも良いし、左右のどちらかに寄った位置等でも良い。
【0032】
本実施の形態における防護服は、異物に対する人体の防護に用いられる防護服である。異物は、例えば、病原体、化学物質、放射性物質などであるが、人体に影響を与え得るものであれば、その種類は問わない。
【0033】
防護服は、例えば、ウイルスや細菌等の病原体に対する感染予防に用いられる防護服であることは好適である。防護服は、特に、例えば、エボラや鳥インフルエンザ等の高病原性微生物に対する感染防止用の防護服であることは、より好適である。防護服は、高病原性ウイルス等の高リスクの病原体の感染源に対して、例えば、医療や検査等の作業を行う医師、看護師、検疫職員等の人員の感染防止に有益である。
【0034】
ただし、防護服は、例えば、毒物や薬品等の化学物質に対する曝露防止に用いられる防護服であってもよい。また、防護服は、例えば、アスベスト等の発がん性物質や、核廃棄物等の放射性物質を含んだ粉塵の吸引防止に用いられる防護服であってもよい。さらに、防護服は、例えば、放射性物質からの放射線の被ばく防止に用いられる防護服であってもよく、その用途は問わない。防護服は、高リスクの物質に対して作業する人員の防護にも有益である。
【0035】
図1は、本実施の形態における防護服1の背面図である。また、図2は、本実施の形態における防護服1の正面図である。防護服1は、服本体11、開閉部12、コード13、1または2以上のタブ14、および1または2以上の第二タブ15を備える。
【0036】
服本体11は、人体の少なくとも一部を覆う部材である。少なくとも一部とは、例えば、全身でもよいし、足以外の部分でもよいし、頭部以外の部分でもよいし、胴体のみでも構わない。
【0037】
服本体11は、頭部を覆うフード111、または靴を覆うシューカバー112のうち、1以上の部材との一体型であることは好適である。一体型とは、服本体11と、フード111またはシューカバー112のうち1以上の部材とが、一の生地で形成されていることでもよい。または、一体型とは、例えば、服本体11とは別体であるフード111またはシューカバー112のうち1以上の部材が、服本体11に対し、着脱不能に縫い付けられた又は接着されたものでもよい。
【0038】
別体とは、フード111等の部材が、服本体11とは別に製造された後、組み合わせて着用されるように形成されていることであってもよい。別体であるフード111等の部材は、服本体11に対し、例えば、マジックテープ(登録商標)のような面ファスナー等の部材を介して着脱可能に結合されることは好適である。フード111等の部材は、服本体11と同じ材質で形成されることは好適であるが、異なる材質で形成されてもよい。
【0039】
服本体11は、フード111およびシューカバー112との一体型であることは、より好適である。フード111およびシューカバー112との一体型である服本体11を、例えば、全身防護服と呼んでもよい。
【0040】
フード111は、例えば、PVCシートやポリエステルフィルム等の透明素材でできたバイザー111aを有する。
【0041】
開閉部12は、通常、ユーザが防護服1を着たり脱いだりする着脱用の部位であり、開閉可能な部位である。開閉部12は、異物に対するリスクを低減できる位置に設けられることは好適である。リスクを低減できる位置とは、異物が入らない又は入りにくい位置であり、特に、異物が付着しない又は付着し難い位置であることは好適である。かかる位置は、通常、防護服1の背面側である。
【0042】
また、開閉部12は、異物に対するリスクを低減できる位置であり、かつユーザが防護服1を一人で着脱しやすい位置に設けられることは、より好適である。つまり、リスクを低減するべく背面側に開閉部12を設けると、通常、防護服1を一人で着脱することが難しくなる。そこで、本実施の形態では、背面側の、出来るだけ一人で着脱しやすい位置に、開閉部12を設けるようにしている。
【0043】
開閉部12は、服本体11の背面に設けられる。背面とは、服本体11の背中側の面である。背面は、通常、側面は含まないが、側面も含むと考えてもよい。背面は、例えば、「後ろ見頃」と称してもよい。
【0044】
開閉部12の位置は、例えば、背面の中心線に沿う位置、またはその近傍が、脱ぎやすさの点で好適である。中心線とは、例えば、左右対称である背面の対称軸といってもよいし、背骨の線といってもよい。
【0045】
なお、開閉部12の位置は、背面の中心線に限らず、例えば、背骨と体側との間の線に沿う位置でもよい。背骨と体側との間の線とは、例えば、肩甲骨またはその近傍を通る線であり、背骨に平行な線であってもよい。
【0046】
このような、背骨に対して右側または左側に偏った開閉部12の位置は、例えば、ユーザの利き腕に依存してもよい。左利き用の防護服の一例を図3に示す。また、右利き用の防護服の一例を図4に示す。
【0047】
図3に示す左利き用の防護服1Aでは、服本体11Aの、背骨と左体側との間の線に沿う位置に、開閉部12Aが設けられている。背骨と左体側との間の線とは、例えば、左肩甲骨またはその近傍を通る線であり、背骨に平行な線であってもよい。
【0048】
図4に示す右利き用の防護服1Bでは、服本体11Bの、背骨と右体側との間の線に沿う位置に、開閉部12Bが設けられている。背骨と右体側との間の線とは、例えば、右肩甲骨またはその近傍を通る線であり、背骨に平行な線であってもよい。
【0049】
ただし、ユーザの利き腕と、開閉部12の位置との対応関係は、上記とは逆でもよい。また、開閉部12の位置は、利き腕とは無関係でも構わない。
【0050】
開閉部12の上方の先端12a(以下、上端12aと記す場合もある)は、例えば、肩より上の高さに位置する。また、開閉部12の上端12aは、通常、頭頂より下の高さに位置する。
【0051】
図5は、開閉部12の上端12aの位置の一例を示す図である。図5に示す開閉部12の上端12aは、例えば、肩と頭頂との間であり、肩から頭頂までの1/2の高さに位置する。ただし、開閉部12の上端12aは、肩から頭頂までの1/4ないし3/4の間の高さに位置することは、特に、一人で防護服1を脱ぐ際の脱ぎやすさの点で、好適である。
【0052】
または、開閉部12の上端12aの高さは、例えば、肩から頭頂までの1/2から3/4の間の高さでもよい。
【0053】
または、開閉部12の上端12aの高さは、例えば、肩から頭頂までの1/3より上、かつ頭頂より下の高さでもよい。
【0054】
なお、背面の中心線とは、上述した背骨の線のような、鉛直方向の中心線に限らず、例えば、水平方向の中心線でもよい。なお、本実施形態において、鉛直とは、概ね鉛直である場合も含み、水平とは、概ね水平である場合も含む。服本体の背面の、水平方向の中心線に、開閉部12を設けた防護服の一例を図6に示す。図6の防護服1Cでは、胴体のウエストまたはその近傍の高さの線であり、服本体11Cの背面を概ね半周するような線に沿って、開閉部12Cが設けられている。
【0055】
ただし、開閉部12の位置は、服本体11の背面側であれば、どこでも構わない。また、開閉部12の方向性も問わない。
【0056】
開閉部12は、例えば、ジップアップで構成されることは、気密性の点で好適である。ジップアップは、例えば、ジッパー、ファスナー、チャックなどとも呼ばれる。ただし、開閉部12は、例えば、面ファスナー、ボタン、ホックといった、ジップアップ以外の部材で構成されてもよい。
【0057】
詳しくは、服本体11の背面に裂け目が形成されており、開閉部12は、この裂け目に沿って服本体11に付加(例えば、縫い付け、接着等)される一対のテープと、これら一対のテープの裂け目側の辺に設けられる一対のエレメント(務歯)と、これら一対のエレメントを?み合わせたり、その?み合わせを解いたりするスライダーとを有する。
【0058】
コード13は、開閉部12の開閉操作のためのコードである。コード13は、例えば、紐、織テープ、鎖等で構成されるが、その素材は問わない。コード13は、通常、開閉部12を構成するジップアップのスライダーに設けられる。
【0059】
タブ14は、ユーザが一人で防護服を脱ぐ際に指でつまむ部位であり、開閉部12に設けられる。タブ14は、開閉部12の内側に設けられることは、病原体の指先への付着を防ぐ点で、好適である。内側とは、人体に接する側であり、開閉部12を閉じた状態で、開閉部12の下に隠れ、外界から遮断される位置である。
【0060】
服本体11には、開閉部12の内側に、通常、1以上のタブ14が設けられる。服本体11には、例えば、2つのタブ14が、開閉部12を構成する一対のスライダーの近傍に設けられることは好適である。
【0061】
ただし、例えば、前述した左利き用の防護服1(図3参照)では、一のタブ14が、開閉部12を構成する一対のスライダーのうち、右側のスライダーの近傍に設けられ、左側のスライダーには、タブ14は無くてもよい。同様に、右利き用の防護服1(図4参照)では、一のタブ14が左側のスライダーの近傍に設けられ、右側のスライダーには、タブ14は無くてもてもよい。
【0062】
1以上のタブ14は、開閉部12の最上位またはその近傍に位置することは好適である。開閉部12の最上位とは、例えば、後頭部の高さであり、1以上のタブ14がかかる高さに位置することは、ユーザが両腕を、指先が後頭部の位置に来るように回した状態で、容易にタブ14をつまめる点で好適である。
【0063】
第二タブ15は、シューカバー112に設けられる。第二タブ15は、ユーザがシューカバー112またはこれと一体型の服本体11を一人で脱ぐことを容易にするための部位である。例えば、服本体11が左右一対のシューカバー112と一体型である場合、一対のシューカバー112の各々に第二タブ15が設けられることは好適である。ただし、一対のシューカバー112のいずれか一方に第二タブ15が設けられ、他方には、第二タブ15は設けられなくてもよい。
【0064】
第二タブ15は、例えば、左右一対のシューカバー112各々の、足のかかとに対応する位置に設けられる。左のシューカバー112のかかとに設けられた第二タブ15は、ユーザが一人で防護服1を脱ぐ際に、右足で踏みつける部位である。右のシューカバー112のかかとに設けられた第二タブ15は、ユーザが一人で防護服1を脱ぐ際に、左足で踏みつける部位である。
【0065】
以下、本実施の形態における防護服1の具体的な着用例について説明する。本例における防護服1は、エボラや鳥インフルエンザ等の高病原性微生物に対する感染予防用である。例えば、航空機内でウイルス感染の疑われる患者が発生し、検疫所の職員が機内に赴く場面を想定する。
【0066】
職員は、事前に、例えば、マスク、インナーの手袋、靴等を装着しておく。その後、職員は、防護服1を着用するべく、コード13を下に引っぱり、開閉部12を開く。職員は、開いた開閉部12から、まず、両手を挿入し、次に、頭部をフード111内に収めた後、一方の脚、他方の脚の順に挿入していく。全身が防護服1内に収まると、職員は、コード13を上に引っぱり、開閉部12を閉じる。開閉部12の上端12a付近には、コード13を収納するためのポケット(図示しない)が設けられており、職員は、引っぱり上げたコード13をこのポケットに収納する。その後、職員は、インナーの手袋の上から、防護服1の袖口をたくし込むようにして、アウターの手袋を装着する。なお、かかる着用作業は、職員一人でも行えるが、他の職員が手伝っても構わない。
【0067】
こうして職員により着用された防護服1の外観を、図4および図5に示す。図4は正面図、図5は背面図である。この防護服1において、開閉部12は、図5に示すように、服本体11の前面に設けられている。開閉部12の上端12aは、肩から頭頂までの概ね1/2の高さに位置している。
【0068】
開閉部12が背面側にある防護服1では、着用者から開閉部12が目視できないため、その開閉操作は、開閉部12が前面側にある従来の防護服と比べて難しくなる。特に、開閉部12の上端12aが肩の高さよりも低いと、着用者によっては、そこに手が届かない、又は届きにくい場合があり、開閉操作はより困難となる。この点、開閉部12の上端12aを、例えば、図5のように、肩から頭頂までの概ね1/2の高さとしたことで、背面側に開閉部12がありながら、開閉時の操作性の悪化を抑制できる。
【0069】
また、開閉部12の下方の先端は、図5に示すように、概ね脚の付け根の高さに位置している。脚の付け根の高さとは、股の高さと同義であってもよい。これによって、極力広い開閉部12を確保できるため、一人での着脱が容易になる。
【0070】
他方、防護服1の前面側には、図4に示すように、開閉部12は設けられていない。こうして、病原体が付着しやすい前面には、開閉部12を設けないことで、感病原体の感染源に対して作業する場合等に、感染リスクを低減できる。
【0071】
防護服1の着用が完了すると、職員は、機内に乗り込み、例えば、患者の検査、機内の消毒等の活動を行う。活動を終えた職員は、所定の場所に移動し、防護服1を自力で脱ぐ。活動後の防護服1には、病原体が付着している可能性が高いため、脱衣作業を他の職員が手伝うことは、その職員への感染のリスクがあるため、好ましくない。
【0072】
着用者が防護服1を一人で脱ぐ手順を、図9図16に示す。着用者は、事前に、アウターの手袋を外し、インナーの手袋をアルコール等で手指消毒する。その後、着用者は、図9に示すように、開閉部12の上端12a付近の上記ポケットから、コード13を取り出す。
【0073】
次に、着用者は、取り出したコード13を左手で持ち、また、開閉部12の上端12a付近に付けられた左右一対のタブ14のうち右側のタブ14を右手で持つ。そして、着用者は、図10に示すよう、右側のタブ14の位置を右手で維持しながら、左手で背面側に持ったコード13を、開閉部12を構成するスライダーが下端に達するまで、引き下ろす。なお、図10の操作における左右の持ち手は、これとは逆でも構わない。
【0074】
次に、着用者は、図11に示すように、開閉部12の上端12aの一対のタブ14のうち、左側のタブ14を左手で持ち、右側のタブ14を右手で持つ。そして、着用者は、図12に示すように、一対のタブ14を持った両手を顔の前に移動させることで、頭部をフード111から抜き取る。さらに、着用者が、図13に示すように、一対のタブ14を持った両手を、腹部の前方までを下ろすと、防護服1は、頭部から上腕部まで脱げる結果となる。
【0075】
次に、着用者は、図14に示すように、右手で防護服1の内側を持ちながら、左手を抜く。引き続き、着用者は、左手で防護服1の内側を持ちながら、右手を抜く。なお、左右の手を抜く順序は、これとは逆でも構わない。こうして両腕が抜けると、着用者は、一方の手で持っている防護服1を下に落とす。これによって、防護服1は、図15に示すように、頭部から膝まで脱げた状態となる。
【0076】
その後、着用者は、例えば、図16に示すように、立ったまま、左足のシューカバー112のかかと付近に設けられた第二タブ15を、右足のつま先で踏み付けながら、左足を抜き取る。さらに、右足のシューカバー112のかかと付近に設けられた第二タブ15を、左足のつま先で踏み付けながら、右足を抜き取れば、防護服1の脱衣は完了する。なお、左右の足を抜き取る順序は、これとは逆でもよい。また、第二タブ15は、例えば、かかと、土踏まず等、足のどの部分で踏みつけても構わない。
【0077】
なお、着用者は、例えば、椅子に座り、防護服1の内側を両手で持って、左右の脚を順番に防護服1から抜き取ってもよい。これは、椅子が置かれた専用の脱衣場を利用する場合や、第二タブ15を有さない防護服(図示しない)を脱ぐ場合に、好適である。
【0078】
以上、本実施の形態によれば、異物に対する人体の防護に用いられる防護服であって、人体の少なくとも一部を覆う服本体11を具備し、服本体11の前面以外に開閉部12を設けた防護服1により、異物に対するリスクを低減できる。
【0079】
また、上記防護服1において、開閉部12の上端12aは、肩より上の高さに位置することにより、着用者が、一人で容易に防護服1を脱ぐことができる。
【0080】
また、上記防護服1において、開閉部12の上端12aは、肩と頭頂との間であり、肩から頭頂までの1/4ないし3/4の間の高さに位置することにより、一人で防護服1を脱ぐのがより容易になる。
【0081】
また、上記防護服1において、服本体11は、頭部を覆うフード111との一体型であることにより、フード111との間に隙間がないため、リスクを低減できる。
【0082】
また、上記防護服1において、服本体11は、靴を覆うシューカバー112との一体型であることにより、シューカバー112と間に隙間がなく、リスクを低減できると共に、一人で防護服1を脱ぐのがより容易になる。
【0083】
また、上記防護服1において、シューカバー112に第二タブ15を設けたことにより、着用者がシューカバー112を容易に脱ぐことができ、かつリスクを低減できる。
【0084】
また、上記防護服1において、第二タブ15は、足のかかとまたはその近傍に位置することにより、着用者自身が、一方の足で他方の足のかかと付近にある第二タブ15を踏むことで、手を使わずに、シューカバー112を容易に脱ぐことができ、かつリスクを低減できる。
【0085】
また、上記防護服1において、開閉部12にコード13をさらに設けたことにより、着用者自身が、背面側の開閉部12をコード13の操作で簡単に下ろせるので、一人で容易に防護服1を脱ぐことができる。
【0086】
また、上記防護服1において、開閉部12の内側に1以上のタブ14をさらに設けたことにより、着用者自身が、背面側の開閉部12を開けた後、その内側の1以上のタブ14をつまんで防護服1を脱ぐことができるので、手が服本体11の前面に触れずに済み、リスクを低減できる。
【0087】
また、上記防護服1において、1以上のタブ14は、開閉部12の最上位またはその近傍に位置することにより、タブ14をつまみやすいので、一人で容易に防護服1を脱ぐことができる。
【0088】
さらに、上記防護服1は、高病原性病原体に対する感染予防に用いられることにより、病原体に対する感染のリスクを低減できる。
【0089】
なお、防護服は、具体的には、例えば、図17のように構成されていてもよい。図17は、全身防護タイプの防護服21を示す図である。防護服21の背面側には、上記開閉部12に対応するファスナー22、上記コード13に対応する第一の織テープ23a、ファスナー22を着脱可能に覆うフラップ24、およびフラップ24を防護服21の背面側に接着する1以上の面ファスナー25が設けられる。
【0090】
フラップ24の内側には、1以上の面ファスナー25が設けられており、これらが、防護服21の背面側の1以上の面ファスナー25と結合することで、フラップ24は、防護服21の背面側に接着される。また、フラップ24の上端近傍には、第一の織テープ23aを収納するポケット26が設けられる。フラップ24の内側には、通気口27が設けられる。ファスナー22の内側には、上記タブ14に対応する掴み布28が設けられる。第一の織テープ23aは、ファスナー22のスライダーに取り付けられる。
【0091】
防護服21の前面側には、上記バイザー111aに対応するバイザー29が設けられる。バイザー29は、PVCシートやポリエステルフィルム等29aを有する。PVCシートやポリエステルフィルム等29aの四隅には、これを防護服21のフード部分に密着させるために超音波溶着させるか、または4本の第二の織テープ23bが取り付けられる。
4本の各第二の織テープ23bの、PVCシートやポリエステルフィルム等29aの四隅に取り付けられる側とは反対側の端部には、例えば、凸形状を有するドットボタン29bが設けられる。防護服21のフード部分の側面には、例えば、凹形状を有する図示しない4つのドットボタンが設けられており、これらが、4本の第二の織テープ23bのドットボタン29bと結合され、それによって、PVCシートやポリエステルフィルム等29aは、防護服21のフード部分に密着した状態で固定される。
【0092】
また、PVCシートやポリエステルフィルム等29aの上辺および下辺には、その鋭利な切断面で顔や布を傷つけないように、パイピング29cが設けられる。さらに、PVCシートやポリエステルフィルム等29aの内面には、例えば、補強用に、リング状の塩ビボード29dが設けられる。
【0093】
また、防護服21の前面側、背面側を問わず、生地を縫い合わせた部分には、シームテープ30が貼り付けられ、それによって、防護性能が高められる。ただし、上記のような構成および各構成要素の機能は、例示に過ぎず、本発明を何ら限定するものではない。
【0094】
なお、図17の防護服21において、背面側の足のかかとの位置に、上記第二タブ15に対応する2つの第二タブ(図示しない)が設けられていることは好適である。
【0095】
また、図1等の防護服1、または図17の防護服21において、足を覆う部分がなくてもよい。かかる防護服の着用者は、例えば、別体のシューカバー(図示しない)を、靴に装着してもよい。別体のシューカバーとは、異物に対する人体の防護に用いられるシューカバーであって、靴の少なくとも一部を覆うカバー本体を具備し、前記カバー本体に第二タブを設けたシューカバーである。カバー本体は、上記カバー112と同様の機能を有し、カバー本体に設けられた第二タブもまた、上記第二タブ15と同様の機能を有する。かかるシューカバーにおいて、第二タブは、足のかかとまたはその近傍に位置することは好適である。
【0096】
また、防護服1にシューカバーが存在しない場合、裾にタブが付加されたものでも良い。
【0097】
本発明は、以上の実施の形態に限定されることなく、種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0098】
以上のように、本発明にかかる防護服は、背面側に開閉部を設けたことで、異物に対するリスクを低減できるという効果を有し、防護服等として有用である。
【符号の説明】
【0099】
1 防護服
11,11A,11B,11C 服本体
12,12A,12B,12C 開閉部
12a 上端(上方の先端)
13 コード
14 タブ
15 第二タブ
111 フード
112 シューカバー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17