(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-22
(45)【発行日】2022-03-30
(54)【発明の名称】パイロット式減圧弁
(51)【国際特許分類】
F16K 17/30 20060101AFI20220323BHJP
【FI】
F16K17/30 A
(21)【出願番号】P 2017143313
(22)【出願日】2017-07-25
【審査請求日】2020-07-15
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 [公開の事実] 1.公開日:平成29年6月22日 2.公開場所:株式会社キッツ甲信営業所キッツ茅野工場内の会議室(長野県茅野市金沢5125キッツ茅野工場内) 3.公開者:フシマン株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000112624
【氏名又は名称】フシマン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】守屋 紀彦
【審査官】大内 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-24793(JP,A)
【文献】特開2007-20997(JP,A)
【文献】特開2017-83981(JP,A)
【文献】特開2008-89071(JP,A)
【文献】特開平4-212382(JP,A)
【文献】特開2012-58807(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 17/18-17/34
F16K 27/00,31/126
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向の両端部に形成された配管接続口と、下側の前記配管接続口から上方に延びる上流側流体通路と、上側の前記配管接続口から下方に延びる下流側流体通路と、水平方向の一側部に形成されて前記下流側流体通路に開口する弁体挿入口と、前記弁体挿入口と対向する位置で水平方向に延びて前記下流側流体通路と上流側流体通路とを連通する連通孔とを有する弁箱と、
前記連通孔における前記下流側流体通路側の端部に設けられた弁座と、
前記弁箱の前記一側部に弁体挿入口を覆うように取付けられ、前記弁箱との間に流体室を形成する蓋体と、
前記弁体挿入口に挿入された状態で前記弁箱と前記蓋体とに水平方向へ移動自在に支持された弁体と、
前記弁体と一体的に設けられて前記弁箱内と前記蓋体内とを水平方向に仕切るダイヤフラムと、
前記弁体を前記弁座に向けて付勢するばね部材と、
前記上流側流体通路に上流側導圧通路を介して接続されるとともに前記下流側流体通路に下流側導圧通路を介して接続され、前記下流側導圧通路内の流体圧が所定圧力より低い場合にのみ開くパイロット弁と、
前記上流側導圧通路の途中に前記流体室の上端部を接続する連通路とを備え
、
前記上流側導圧通路と前記連通路との接続部と、
前記上流側導圧通路の前記接続部から前記パイロット弁に至る部分と、
前記パイロット弁内の流体通路と、
前記下流側導圧通路とは、
前記弁箱の設置状態で前記流体室の上端部より上に位置しているとともに、前記下流側流体通路と前記下流側導圧通路との接続部と同じ高さに位置していることを特徴とするパイロット式減圧弁。
【請求項2】
請求項1記載のパイロット式減圧弁において、
前記上流側導圧通路と前記連通路との前記接続部はエゼクタによって構成され、
前記エゼクタは、前記上流側流体通路から前記上流側導圧通路に流入した水が通るノズルと、このノズルの下流側に位置するディフューザーと、吸い込み口とを備え、
前記連通路は、前記吸い込み口に接続されていることを特徴とするパイロット式減圧弁。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載のパイロット式減圧弁において、
前記下側の配管接続口は、スプリンクラー設備のポンプに上流側水通路を介して接続され、
前記上側の配管接続口はスプリンクラー設備のスプリンクラーヘッドに下流側水通路を介して接続されていることを特徴とするパイロット式減圧弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体を下から上に向けて流すパイロット式減圧弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のパイロット式減圧弁としては、非特許文献1に記載されているものがある。この非特許文献1に開示されたパイロット式減圧弁1は、
図7~
図9に示すように、主弁部2とパイロット弁部3とを備えている。主弁部2は、
図9に示すように、弁箱4と、この弁箱4に取付けられた蓋体5と、これらの弁箱4と蓋体5の内部に移動自在に支持された開閉部材6などを備えている。
【0003】
弁箱4は、
図7において左側の端部に位置する上流側の配管接続口7から下流側(
図7において右側)に延びる上流側流体通路8と、
図7において右側の端部に位置する下流側の配管接続口9から上流側(
図7において左側)に延びる下流側流体通路10とを有している。この減圧弁1内を流れる流体は液体である。上流側流体通路8と下流側流体通路10とは、弁座11を有する円筒状のシート部材12によって互いに連通されている。
【0004】
蓋体5は、開閉部材6を弁箱4と協働して移動自在に支持する状態で弁箱4にダイヤフラム13を介して取付けられている。ダイヤフラム13は、中央部において開閉部材6と結合されており、弁箱4と蓋体5との間を仕切っている。
また、蓋体5は、開閉部材6を支持する中央部が弁箱4とは反対側に突出する断面山形状に形成されている。蓋体5とダイヤフラム13との間には、流体室14が形成されている。蓋体5の頂部には空気抜き弁15が設けられている。
【0005】
開閉部材6は、複数の部材を組み合わせて円柱状に形成された円柱部16と、この円柱部16の軸心部を貫通する軸部17とによって構成されている。円柱部16には、弁座11に着座する弁体18が設けられている。円柱部16と蓋体5との間には圧縮コイルばね19が弾装されている。
【0006】
パイロット弁部3は、
図7および
図8に示すように、パイロット弁21と、このパイロット弁21に主弁部2を接続する第1~第3の管路22~24などによって構成されている。第1の管路22は、パイロット弁21の第1の配管接続部25を弁箱4内の上流側流体通路8に接続している。第2の管路23は、パイロット弁21の第2の配管接続部26を弁箱4内の下流側流体通路10に接続している。第3の管路24は第1の管路22の途中を流体室14に接続している。
【0007】
第3の管路24には流量調節弁27と絞り弁28とが設けられている。第3の管路24は、流体室14の上流側の端部に接続されている。ここでいう「上流側の端部」とは、弁箱4の上流側の配管接続口7に近接する端部である。
パイロット弁21は、第2の管路23内の圧力(下流側流体通路10の圧力)が所定の圧力より低い場合にのみ開き、その他の場合は閉じている。
【0008】
このように構成された従来のパイロット式減圧弁1に最初に液体を通すときには、蓋体5の空気抜き弁15を開いた状態で上流側流体通路8に液体を供給する。このときは第1の管路22から第3の管路24を通って液体が流体室14に流入し、エア抜きが行なわれる。エア抜きを行うことによって流体室14内が液体で満たされる。エア抜き後に空気抜き弁15を閉じると、流体室14内に上流側流体通路8の圧力が伝播され、このパイロット式減圧弁1が閉じる。そして、上流側流体通路8内の流体が第1の管路22からパイロット弁21と第2の管路23とを通って下流側流体通路10に流入する。
【0009】
このパイロット式減圧弁1においては、下流側流体通路10内の圧力が低下してパイロット弁21が開くと、第1および第3の管路22,24内の圧力が低下し、これに伴って流体室14の圧力も低下する。このように流体室14の圧力が低下すると、開閉部材6を弁座11に押し付ける押圧力が減少するために、開閉部材6が上流側流体通路8内の流体から受ける押圧力で押されて圧縮コイルばね19のばね力に抗して移動し、上流側流体通路8内の流体がシート部材12の中空部からなる連通孔29(
図9参照)を通って下流側流体通路10に流入する。
【0010】
ところで、この種のパイロット式減圧弁1においては、長期間にわたって閉じた状態に保持されることにより流体室14内に空気が溜まることが知られている。この空気は、液体に混入されていた微小な気泡が上昇し、流体室14に集められた空気であると考えられる。このような空気は、空気抜き弁15を開くことによって大気中に放出される。
また、従来のパイロット式減圧弁1は、
図9に示すように、液体の流れる方向が水平方向となる姿勢で使用される他に、流体の流れる方向が下から上、あるいは上から下に向けて流れるような姿勢で使用されることがある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0011】
【文献】FUSHIMAN総合カタログVol.115(P56,PFD42型減圧弁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従来のパイロット式減圧弁1では、流体が下から上に向けて流れる姿勢で使用するときに問題が生じる。すなわち、流体室14内に溜まった空気を排出するために空気抜き弁15を開いたとしても、空気抜き弁15より高い位置にある流体室14の上端部に空気が残ってしまう。この場合に流体室14内に空気が残る範囲は、
図9中に二点鎖線Aで示す範囲である。
【0013】
この空気は、パイロット弁21が開いて第1および第3の管路22,24内の圧力が低下したとしても、流体室14から排出されることなく残る。
流体室14に空気が溜められていると、開閉部材6を弁体18が弁座11に着座する方向へ押す押圧力が一定になり難く、この減圧弁1が開閉するときに開閉部材6がハンチングを起こすことがある。開閉部材6がハンチングを起こすと、液体の振動が下流側流体通路10から下流側の配管内を伝播し、広い範囲にわたって騒音が生じるおそれがある。
【0014】
このパイロット式減圧弁1を例えばスプリンクラー設備に使用すると、この設備の点検が行われて開閉部材6が開閉したときに上述したハンチングが起こり、騒音が発生することがあった。
【0015】
本発明の目的は、流体が下から上に向けて流れる姿勢で使用しても内部に空気が溜まることがないパイロット式減圧弁を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
この目的を達成するために、本発明に係るパイロット式減圧弁は、上下方向の両端部に形成された配管接続口と、下側の前記配管接続口から上方に延びる上流側流体通路と、上側の前記配管接続口から下方に延びる下流側流体通路と、水平方向の一側部に形成されて前記下流側流体通路に開口する弁体挿入口と、前記弁体挿入口と対向する位置で水平方向に延びて前記下流側流体通路と上流側流体通路とを連通する連通孔とを有する弁箱と、前記連通孔における前記下流側流体通路側の端部に設けられた弁座と、前記弁箱の前記一側部に弁体挿入口を覆うように取付けられ、前記弁箱との間に流体室を形成する蓋体と、前記弁体挿入口に挿入された状態で前記弁箱と前記蓋体とに水平方向へ移動自在に支持された弁体と、前記弁体と一体的に設けられて前記弁箱内と前記蓋体内とを水平方向に仕切るダイヤフラムと、前記弁体を前記弁座に向けて付勢するばね部材と、前記上流側流体通路に上流側導圧通路を介して接続されるとともに前記下流側流体通路に下流側導圧通路を介して接続され、前記下流側導圧通路内の流体圧が所定圧力より低い場合にのみ開くパイロット弁と、前記上流側導圧通路の途中に前記流体室の上端部を接続する連通路とを備えている。
【0017】
本発明は、前記パイロット式減圧弁において、前記下流側流体通路と前記下流側導圧通路との接続部と、前記パイロット弁内の流体通路とは、前記弁箱の設置状態で前記流体室の上端部より上に位置していてもよい。
【0018】
本発明は、前記パイロット式減圧弁において、前記下側の配管接続口は、スプリンクラー設備のポンプに上流側水通路を介して接続され、前記上側の配管接続口はスプリンクラー設備のスプリンクラーヘッドに下流側水通路を介して接続されていてもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係るパイロット式減圧弁の連通路は、流体室の上端部に接続されている。このため、流体室内に溜められた空気は、パイロット弁が開いたときに連通路から上流側流体通路とパイロット弁および下流側流体通路とを通って下流側流体通路に排出される。
したがって、本発明によれば、流体が下から上に向けて流れる姿勢で使用しても内部に空気が溜まることがないパイロット式減圧弁を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明に係るパイロット式減圧弁の正面図である。
【
図2】本発明に係るパイロット式減圧弁の側面図である。
【
図3】本発明に係るパイロット式減圧弁の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係るパイロット式減圧弁の一実施の形態を
図1~
図6を参照して詳細に説明する。
図1に示すパイロット式減圧弁31は、水を流す設備に用いられるものである。この設備としては、例えばスプリンクラー設備がある。この実施の形態においては、本発明に係るパイロット式減圧弁31をスプリンクラー設備32に取付けて使用する場合の一例を説明する。
【0022】
パイロット式減圧弁31は、
図1において最も右に位置する弁箱33を有する主弁部34と、この主弁部34に接続されたパイロット弁部35とを備えている。
【0023】
<主弁部の説明>
主弁部34は、
図3に示すように、弁箱33に後述する複数の構成部品を組付けて構成されている。弁箱33は、下から上に水が流れる姿勢で使用される。弁箱33の下端部と上端部とには、それぞれフランジ36,37が設けられている。下側のフランジ36には、スプリンクラー設備32の上流側水通路38を形成する配管(図示せず)が接続され、上側のフランジ37には、スプリンクラー設備32の下流側水通路39を形成する配管(図示せず)が接続される。下側のフランジ36に形成された下側の配管接続口36aは、スプリンクラー設備32の水供給用ポンプ41に上流側水通路38を介して接続される。上側のフランジ37に形成された上側の配管接続口37aは、スプリンクラー設備32のスプリンクラーヘッド42に下流側水通路39を介して接続される。
【0024】
弁箱33の内部には、下側の配管接続口36aから上方に延びる上流側流体通路43と、上側の配管接続口37aから下方に延びる下流側流体通路44とが形成されている。これらの上流側流体通路43と下流側流体通路44とは、弁箱33の上下方向の中央部に水平方向へ延びる状態で設けられた円筒状のシート部材45の中空部46を介して互いに連通されている。シート部材45の一端部は、上流側流体通路43内に開口し、他端部は、下流側流体通路44内に開口している。シート部材45の他端部(下流側流体通路44側の端部)にはリング状の弁座47が設けられている。この実施の形態においては、シート部材45の中空部46が本発明でいう「連通孔」に相当する。シート部材45の軸心部には、後述する弁棒51の一端部を移動自在に支持する軸受部48が設けられている。
【0025】
弁箱33の水平方向の一側部には、ダイヤフラム52と蓋体53とが複数のボルト54とナット55とによって固定されているとともに、弁体挿入口56が形成されている。弁体挿入口56は、シート部材45と対向する位置に同一中心線上に位置するように形成されている。
【0026】
ダイヤフラム52は、詳細には図示してはいないが、円板状に形成され、外周部が弁箱33と蓋体53とに挟まれた状態で弁箱33に固定されている。ダイヤフラム52は、弁箱33内と蓋体53内とを水平方向に仕切っている。
蓋体53は、断面山形状の中央部53aを有し、弁体挿入口56を覆うように弁箱33に取付けられている。中央部53aの突出端には空気抜き弁57が設けられている。この蓋体53と弁箱33との間には、ダイヤフラム52によって水平方向に仕切られた流体室58と、弁体挿入口56側の空間(
図3においては図示されていない)とが形成されている。
このため、弁箱33の弁体挿入口56は、ダイヤフラム52によって閉塞されることになる。
【0027】
弁体挿入口56には、円柱状を呈する開閉部材61が挿入されている。開閉部材61は、弁棒51と、この弁棒51が貫通する複数の部材とによって構成されている。弁棒51の一端部は、上述した軸受部48に水平方向へ移動自在に支持され、他端部は、ブッシュ62を介して蓋体53に水平方向へ移動自在に支持されている。この弁棒51は、一端側から順に弁体押え63と、弁体64を有するダイヤフラム受65と、ダイヤフラム押え66と、ワッシャ67と、締結用ナット68などを貫通している。これらの部材は、締結用ナット68を弁棒51にねじ込むことよって、この締結用ナット68と弁棒51の大径部51aとの間に挟まれて弁棒51に固定されている。
【0028】
弁体押え63は、リング状に形成され、外周部が弁体64の径方向内側の端面に接触する状態でこの弁体64と弁棒51の大径部51aとによって挟まれている。
ダイヤフラム受65は、円筒状に形成され、一端部に弁体64が取付けられているとともに、他端部にダイヤフラム52が接続されている。弁体64は、ゴム材料によってリング状に形成されており、軸方向の一端部がダイヤフラム受65から突出する状態でダイヤフラム受65に取付けられている。弁体64の外周部は弁座47に接触し、内周部は弁体押え63に接触している。
【0029】
ダイヤフラム押え66は、ダイヤフラム受65と協働してダイヤフラム52の中心部を挟んで保持している。すなわち、ダイヤフラム52は、弁体64と一体的に設けられて流体室58内を水平方向に仕切っている。このダイヤフラム押え66と蓋体53との間には、圧縮コイルばねからなるばね部材69が圧縮された状態で設けられている。弁棒51の他端部は、このばね部材69の中心部を貫通している。
【0030】
<パイロット弁部の説明>
パイロット弁部35は、
図1および
図2に示すように、弁箱33の下部に一端が接続された第1の管路71と、弁箱33の上部に一端が接続された第2の管路72と、蓋体53の上端部に一端が接続された第3の管路73と、第1および第2の管路71,72の他端にそれぞれ接続されたパイロット弁74とによって構成されている。
第1の管路71は、
図1に示すように、弁箱33の下部に第1の継手75を介して一端が接続された第1のパイプ76と、この第1のパイプ76の他端に第2の継手77を介して一端が接続されるとともに他端がパイロット弁74の第1の接続口78に接続されたエゼクタ79などによって構成されている。エゼクタ79と、後述するパイロット弁74内の流体通路81(
図6参照)とは、弁箱33の設置状態で流体室58の上端部より上に位置している。この実施の形態においては、この第1の管路71が本発明でいう「上流側導圧通路」に相当する。
【0031】
第2の管路72は、弁箱33の上部に第3の継手82を介して一端が接続された第2のパイプ83と、この第2のパイプ83の他端をパイロット弁74の第2の接続口84に接続する第4の継手85およびニップル86などによって構成されている。この第2の管路72は、弁箱33の設置状態で流体室58の上端部より上に位置している。この実施の形態においては、この第2の管路72が本発明でいう「下流側導圧通路」に相当する。
【0032】
第3の管路73は、
図2に示すように、蓋体53の上端部に第5の継手87とニップル88とを介して接続された絞り弁89と、この絞り弁89に第6の継手90を介して一端が接続された第3のパイプ91と、この第3のパイプ91の他端とエゼクタ79の吸い込み口79a(
図3参照)との間に設けられた流量調節弁92などによって構成されている。
第5の継手87は、蓋体53の上端部を貫通するねじ孔53b(
図3参照)に螺着されている。絞り弁89は、
図1に示すように、流体室58の上端部と同等の高さに設けられている。流量調節弁92は、流体室58の上端部より上に位置している。この実施の形態においては、この第3の管路73が本発明でいう「連通路」に相当する。
【0033】
エゼクタ79は、
図4に示すように、第2の継手77から流入した水が通るノズル93と、このノズル93の下流側に位置するディフューザー94などを備えている。
絞り弁89は、詳細には図示してはいないが、内部の通路の通路断面積を変える弁体と、この弁体の位置を変えるハンドル95などを備えている。
流量調節弁92は、
図5に示すように、内部の通路96の通路断面積を変えるニードル形の弁棒97と、この弁棒97が貫通するリング状の弁体98とを備えている。弁棒97は、バルブボディ99に螺合されており、バルブボディ99の一端部からキャップ100を外してロックナット101を緩めた状態で回されることによって、前進あるいは後退する。
【0034】
弁体98は、バルブボディ99の他端部に螺着された継手部材102に、圧縮コイルばね103によって押し付けられて保持されている。この継手部材102は、エゼクタ79の吸い込み口79aに接続される。この流量調節弁92は、第3のパイプ91からエゼクタ79に流入する水の流量を調整する。なお、水がエゼクタ79側から第3のパイプ91に向けて流れるときは、弁体98が水によって押されて圧縮コイルばね103のばね力に抗して継手部材102から離れ、水が圧力に応じた流量で流量調節弁92を通過する。
【0035】
<パイロット弁の説明>
パイロット弁74は、
図6に示すように、流体通路81が形成された弁箱111と、この弁箱111の下端部にダイヤフラム112を介して取付けられた蓋体113とを備えている。流体通路81は、第1の管路71(エゼクタ79)に接続された第1の通路114と、第2の管路72(ニップル86)に接続された第2の通路115とによって構成されている。第1の通路114の一端は、弁箱111の中央部で上方に向けて開口する弁座116によって形成されている。
【0036】
ダイヤフラム112は、円板状に形成されており、外周部が弁箱111と蓋体113とによって挟まれた状態で弁箱111に固定されている。このダイヤフラム112は、中央部が弁体117の下端部に接続された状態で弁箱111と蓋体113との間を仕切っている。
弁体117は、ダイヤフラム112に接続された下端部から弁座116の側方を通って上方に延びる連結部117aと、この連結部117aの上端に設けられた柱状部117bとを備えている。この弁体117の下端部は、円板状のダイヤフラム押え117cと、このダイヤフラム押え117cから下方に突出するボルト117dとによって構成されている。ボルト117dは、ダイヤフラム112と、円板状のダイヤフラム受118とをこの順に貫通している。
【0037】
ダイヤフラム112の中央部は、ボルト117dにナット119が締め込まれることによって、ダイヤフラム押え117cとダイヤフラム受118とによって挟まれて保持されている。ダイヤフラム受118と蓋体113との間には圧縮コイルばね120が圧縮された状態で装着されている。圧縮コイルばね120の下端部は、調整用ボルト121に接続されたばね受部材122に支持されている。圧縮コイルばね120のばね力は、調整用ボルト121を締め込んだり緩めたりすることによって調整される。調整用ボルト121は、蓋体113の下端部に取付けられたキャップ123の中に収容されている。
【0038】
弁体117の柱状部117bは、弁座116と同一軸線上に位置しており、弁体117が上方することにより弁座116から上方に離間し、弁体117が下降することによって弁座116に上方から着座する。柱状部117bが弁座116から離間することにより、第1の通路114と第2の通路115とが連通されて第1の管路71と第2の管路72とが連通される。一方、柱状部117bが弁座116に着座すると、第1の通路114の一端が閉塞され、第1の管路71と第2の管路72との連通が遮断される。
【0039】
柱状部117bは、流体通路81内の圧力でダイヤフラム112が押されて圧縮コイルばね120のばね力に抗して下がることによって、弁座116に着座する。このようにパイロット弁74が閉じるときの第2の通路115の圧力(第2の管路72内の圧力であって下流側流体通路44の圧力)を以下においては定常圧力という。また、弁体117は、第2の通路115(下流側流体通路44)の圧力が定常圧力より低下することによって、圧縮コイルばね120のばね力によって押されて上昇する。このため、柱状部117bが弁座116から離れてパイロット弁74が開く。
【0040】
<パイロット式減圧弁の動作の説明>
この実施の形態によるパイロット式減圧弁31は、下側のフランジ36が下に位置する状態でスプリンクラー設備32の配管(図示せず)に接続される。このパイロット式減圧弁31は、水が供給されていない初期の状態では、弁体64がばね部材69のばね力で弁座47に押し付けられており、閉じた状態にある。また、このとき、パイロット弁74は、弁体117が圧縮コイルばね120のばね力によって押されて開いた状態である。
【0041】
このような状態でポンプ41から水が送られると、水は上流側流体通路43から第1の管路71を通ってパイロット弁74に流入し、さらに、第2の管路72を通って下流側流体通路44に流入する。このときに空気抜き弁57を開くことにより、第1の管路71を流れる水の一部がエゼクタ79から第3の管路73を通って流体室58に流入する。空気抜き弁57は、流体室58から空気が排出された後に閉じられる。
【0042】
下流側流体通路44からスプリンクラー設備32のスプリンクラーヘッド42までの間の全ての配管内が水で満たされ、この配管内の圧力が定常圧力に達することによって、パイロット弁74が閉じ、水の供給が遮断される。
スプリンクラー設備32は、このように配管内の圧力が定常圧力となる状態に維持される。
【0043】
スプリンクラー設備32に使用されるパイロット式減圧弁31の流体室58には、時間の経過に伴って空気が溜まることがある。
しかし、この空気は、スプリンクラー設備32の点検時などでパイロット弁74が開いたときに流体室58の上端部から第3の管路73と、第1の管路71と、パイロット弁74および第2の管路72とを通って下流側流体通路44に排出される。このようにパイロット弁74が開いて流体室58の圧力が低下することにより、開閉部材61が上流側流体通路43内の水圧で押されてばね部材69のばね力に抗して弁座47から離れ、パイロット式減圧弁31が開く。パイロット式減圧弁31は、下流側流体通路44の圧力が定常圧力に達した時に閉じる。
【0044】
このとき、流体室58を含めて第3の管路73や第1の管路71に空気が存在しない状態であるから、開閉部材61を閉方向へ付勢する押圧力が安定し、ハンチングが起きることはない。
したがって、この実施の形態によれば、流体が下から上に向けて流れる姿勢で使用しても内部に空気が溜まることがなく、流体の振動に伴う騒音が発生することがないパイロット式減圧弁を提供することができる。
【0045】
この実施の形態による第2の管路72(下流側導圧通路)と下流側流体通路44との接続部である第3の継手82と、パイロット弁74内の流体通路81とは、弁箱33の設置状態で流体室58の上端部より上に位置している。
このため、流体室58内の空気が第3の管路73(連通路)と第1の管路71(上流側導圧通路)とを通ってパイロット弁74側に移動するから、空気がより一層溜まり難いパイロット式減圧弁を提供することができる。
【0046】
この実施の形態による下側の配管接続口36aは、スプリンクラー設備32のポンプ41に上流側水通路38を介して接続されている。上側の配管接続口37aは、スプリンクラー設備32のスプリンクラーヘッド42に下流側水通路39を介して接続されている。
このため、この実施の形態によれば、内部に空気が溜まり難いパイロット式減圧弁31がスプリンクラー設備32に使用されるから、減圧弁31のハンチングに起因する騒音が生じることがないスプリンクラー設備を提供することができる。
【符号の説明】
【0047】
31…パイロット式減圧弁、32…スプリンクラー設備、33…弁箱、36a,37a…配管接続口、38…上流側水通路、39…下流側水通路、41…ポンプ、42…スプリンクラーヘッド、43…上流側流体通路、44…下流側流体通路、45…シート部材、46…中空部(連通孔)、56…弁体挿入口、47…弁座、52…ダイヤフラム、53…蓋体、58…流体室、64…弁体、69…ばね部材、71…第1の管路(上流側導圧通路)、72…第2の管路(下流側導圧通路)、73…第3の管路(連通路)、74…パイロット弁、81…流体通路、82…第3の継手(下流側流体通路と下流側導圧通路との接続部)。