(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-22
(45)【発行日】2022-03-30
(54)【発明の名称】アルコール濃度算出方法
(51)【国際特許分類】
G01N 9/36 20060101AFI20220323BHJP
【FI】
G01N9/36 Z
(21)【出願番号】P 2019560020
(86)(22)【出願日】2018-06-21
(86)【国際出願番号】 JP2018023617
(87)【国際公開番号】W WO2019123693
(87)【国際公開日】2019-06-27
【審査請求日】2021-04-07
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2017/045306
(32)【優先日】2017-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000161932
【氏名又は名称】京都電子工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083172
【氏名又は名称】福井 豊明
(72)【発明者】
【氏名】松岡 武志
(72)【発明者】
【氏名】西村 奈奈美
【審査官】野田 華代
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-194332(JP,A)
【文献】特開昭60-82832(JP,A)
【文献】特開2011-27521(JP,A)
【文献】特開2015-4611(JP,A)
【文献】国税庁,国税庁所定分析法,日本,2007年,3-15ページ
【文献】大場孝宏,水蒸気蒸留装置及び重量法を組み合わせたアルコール分の迅速分析法,日本醸造協会誌,第109巻第3号,日本,2014年03月,187~193頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 5/00-9/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容量V
1の蒸留前試料をアルコールが抜ける程度に水蒸気蒸留もしくは加水しながら加熱をし、容量V
2,密度ρ
R(もしくは比重R)のエキス分と純水からなる試料を得るステップと、
前記V
1,V
2,ρ
R(もしくはR)と純水の密度ρ
W(15℃)に基づいて、エキス分と純水からなる試料の密度ρ
CE(もしくは比重SG
E)を算出するステップと、
よりなる、エキス分算出方法。
【請求項2】
前記エキス分と純水からなる試料の密度ρ
CE、を算出する式が、
ρ
CE=(ρ
R-ρ
W)×(V
2/V
1)+ρ
W
である請求項1に記載のエキス分算出方法。
【請求項3】
前記各密度が比重で表される請求項1に記載のエキス分算出方法。
【請求項4】
容量V
1の蒸留前試料をアルコールが抜ける程度に水蒸気蒸留もしくは加水しながら加熱をし、容量V
2,密度ρ
R(もしくは比重R)のエキス分と純水からなる試料を得るステップと、
前記V
1,V
2,ρ
R(もしくはR)と純水の密度ρ
Wに基づいて、エキス分と純水からなる試料の密度ρ
CE、(もしくは比重SG
E)を算出するステップと、
前記蒸留前試料の密度ρ
SAMPと、純水密度ρ
Wとエキス分と純水からなる試料の密度ρ
CE、(もしくは比重SG
E)とに基づいて蒸留前試料のエキス分の影響を修正した密度ρ
CAを算出するステップと、
前記蒸留前試料のエキス分の影響を修正した密度ρ
CAをアルコール濃度に換算するステップと、
よりなるアルコール濃度算出方法。
【請求項5】
前記エキス分と純水からなる試料の密度ρ
CE、を算出する式が
ρ
CE=(ρ
R-ρ
W)×(V
2/V
1)+ρ
W
である請求項4に記載のアルコール濃度算出方法。
【請求項6】
前記蒸留前試料のエキス分の影響を修正した密度ρ
CAが以下の式で算出される請求項4に記載のアルコール濃度算出方法。
Δρ
CE =ρ
CE-ρ
W
ρ
CA =ρ
SAMP-Δρ
CE
【請求項7】
前記各密度が比重で表される請求項4に記載のアルコール濃度算出方法。
【請求項8】
エキス分濃度Eが、下記の式で表されるとき、
E=(S-A)×α+β
S:試料比重、蒸留前試料密度(15℃)/純水密度(4℃)
A:留液比重、留液密度(15℃)/純水密度(15℃)
α、β:係数(国税庁所定分析法3-7ではα=260、β=0.21)
前記Δρ
CE={(E-β)/α}×ρ
0
であらわされる請求項6に記載のアルコール濃度算出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアルコール濃度測定方法に関し、特に、留液を得るための蒸留工程を必要としないアルコール濃度算出方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
酒類のアルコール濃度を測定するについて、蒸留酒以外ではエキス分を含むことから、エキス分のない試料すなわち、試料を一旦蒸留した留液のアルコール濃度を得るようにしている。
【0003】
蒸留の方法としては直火蒸留、水蒸気蒸留等があるが、例えば水蒸気蒸留を用いる場合、試料の100ml(15℃)を計量し、これに対して水蒸気蒸留をする。98mlまで留液を回収し、これを100ml(15℃)にメスアップしてその密度から留液のアルコール容量%(v/v%)を求めることで、試料のアルコール容量%(v/v%)を求めることができる。これにより、エキス分の影響を排除したアルコール濃度が得られることになる。このとき、残渣には当然のことながらエキス分が残ることになる。
【0004】
一方、ウイスキー、ブランデー等の蒸留酒はエキス分が少ない、あるいは殆ど零であるため、前記の蒸留工程を省いてアルコール濃度を求めることができるものがある。すなわち、蒸留酒の所定温度(15℃)での所定容量の重量から直接アルコール濃度を求める方法が許容されているものがある。
【0005】
上記の留液あるいは蒸留酒の場合は試料そのもののアルコール濃度を算出するについて、密度からアルコール濃度を換算するテーブルが用意されている(所定分析法第2表:国税庁提示)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記サンプルを一旦蒸留して留液を得る必要のある場合には、当該蒸留工程に時間を要する上、厳密な温度管理下での厳密な容量測定が必要となる。また、蒸留法では試料を留液として完全に回収できないところから、得られた値には-0.3~-0.1vol%の誤差を含んでいる(後掲表2参照)。
【0008】
また、樽貯蔵を行っている蒸留酒(例えばウイスキー、ブランデー)は、蒸留酒であっても貯蔵中に樽から色素とともにエキス分が溶出しており、測定値には多くて-0.5vol%の誤差があるため、蒸留後の密度測定によるアルコール濃度測定が義務付けられている。
【0009】
本発明は上記従来の事情に鑑みて提案されたものであって、エキス分を含む酒類であっても、留液を得るための蒸留工程を経ないで精度の高いアルコール濃度を得る方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は以下の手段を採用する。
【0011】
まず、容量V1の蒸留前試料をアルコールが抜ける程度に水蒸気蒸留もしくは加水しながら加熱し、容量V2,密度ρR(もしくは比重R)のエキス分と純水からなる試料(蒸留残液)を得る。
【0012】
次いで、前記V1,V2,ρR(もしくはR)と純水の密度ρW(15℃)に基づいて、元容V1に戻したときのエキス分と純水からなる試料の密度ρCE(もしくは比重SGE)を例えば以下の式で算出する。
【0013】
ρCE=(ρR-ρW)×(V2/V1)+ρW
更に、上記のようにして得られた、エキス分と純水からなる試料の密度(もしくは比重SGE)と、蒸留前試料の密度ρSAMP(もしくは比重S)とに基づいて、蒸留前試料のエキス分の影響を補正した密度ρCA(もしくは比重A)を得ることができる。
【0014】
前記蒸留前試料のエキス分の影響を補正した密度ρCAを得る式は例えば以下の式が用いられる。
【0015】
ΔρCE=ρCE-ρW
ρCA=ρSAMP-ΔρCE
尚、日本の国税庁は、エキス分濃度に対応する比重Eを求める式として、以下の式を提示している。
【0016】
E=(S-A)×α+β
α=260、β=0.21、
ここで、純水密度をρ0(4℃)、ρW(15℃)として、前記エキス分と純水からなる液を試料として得られる比重S0=ρCE/ρ0と、純水の比重A0=1(ρW/ρW)とに基づいて求めたエキス分濃度に対応する比重Eを用いると、アルコール濃度(比重Aに対応)が逆算できる。
【発明の効果】
【0017】
上記で、従来のように蒸留前試料の留液を得る必要がないため、アルコールを全部追い出す水蒸気蒸留もしくは加水しながらの加熱処理で足りる。また、アルコール分を含まない試料のエキス分から、蒸留前試料のアルコール濃度に含まれるエキス分による誤差を補正することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は密度―アルコール濃度―エキス分濃度の3次元空間を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0019】
アルコール濃度と密度(または比重)との関係は、アルコール濃度が増えるに従って密度は低下する。一方、酒類に含まれるエキス分の濃度と密度(または比重)との関係は、エキス分濃度が増えるに従って密度は増加する。
【0020】
以上のことから、酒類(エキス分濃度が比較的少ない酒類)は、密度を測定するだけでは真のアルコール濃度が得られたことにはならず、エキス分によるアルコール濃度の誤差を補正する必要がある。
【0021】
以下の説明に当たって用いられる符号について、以下の表1に定義しておく。
【0022】
【0023】
まず、容積V1の試料を水蒸気蒸留(または加水しながら加熱)して、アルコール分を追い出し、純水とエキス分からなる試料を形成する。(以下前記蒸留前の試料を「蒸留前試料」、蒸留後に残った試料を「蒸留残試料」とする。)
前記蒸留残試料は、水蒸気蒸留で容積が前記V1より大きい容積になっているものとし、当該蒸留残液の密度をρR、前記容積をV2とすると、体積を元容(V1)に戻した純水とエキス分からなる試料の密度ρCE(比重SGE)は例えば以下の式で算出できる。
【0024】
ρCE =(ρR-ρW)×(V2/V1)+ρW・・・(1)
SGE=ρCE/ρ0 (ρ0:4℃の純水の密度)
一方、純水中のアルコール濃度(エタノール濃度)が増加した場合、純水とアルコールの混合物の密度は低下するが、このときの前記アルコールと純水の混合物の密度ρCAを次のように考えることができる。:
ΔρCA =ρCA-ρW・・・(2)
ΔρCA : 特定のアルコール濃度での密度変化量
また、純水中のエキス分濃度が増加した場合は、エキス分と純水の混合物の密度が上昇し、このときのエキス分と純水の混合物の密度ρCEを次のように考えることができる。
【0025】
ΔρCE =ρCE-ρW・・・(3)
ΔρCE : 特定のエキス濃度での密度変化量
蒸留前試料は純水+アルコール分+エキス分と仮定することができ、エキス分濃度が小さい場合には、密度の加成性が成立しやすい為、次のような式を用いても、補正密度を算出することができる。
【0026】
ρSAMP =ρW+ΔρCA+ΔρCE・・・(4)
ρCA=ρW+ΔρCA=ρSAMP-ΔρCE・・・(5)
上記式(5)で試料の真のアルコール密度ρCAが求まったことになるので、アルコール濃度から密度を計算する式を使用し、前記密度ρCAからアルコール濃度を逆計算して求めることができる。
【0027】
以上のことから、蒸留前試料の密度ρSAMPは、密度―アルコール濃度―エキス分濃度の3次元空間に存在することになる。
【0028】
ここで、理解しやすいように、前記3次元空間を密度―アルコール濃度面と、密度―エキス分濃度面に分けて表すと、
図1のようになる。
【0029】
すなわち、密度―アルコール濃度面(a)(エキス濃度零)上には、アルコール濃度の増加にともなって密度が低下する、密度―アルコール濃度曲線P1を引くことができる。一方、密度―エキス分濃度面(b)(エキスアルコール濃度零)上にはエキス濃度が増加するにともなって密度が増加する曲線Q1を引くことができる。温度は15℃である。
【0030】
ここで、特定の成分のエキス濃度曲線Q
1の蒸留前試料の密度ρ
SAMPを、予め密度計(例えば振動式密度計)で測定しておき、エキス分密度ρ
CEが前記式(1)で求まると、
図1で密度―エキス分濃度面(b)で曲線Q
1上の前記ρ
CEに対応する点と、エキス分濃度に対応する密度の増加分Δρ
CEが得られることになる。
【0031】
前記密度―エキス分濃度面(b)上のエキス分密度ρCEを、密度―アルコール濃度面(a)の密度軸に移行し、当該点から前記密度―アルコール濃度曲線P1に平行な曲線P2を描くと、前記蒸留前試料の密度ρSAMPはこの曲線P2上にあることになる。
【0032】
そこで、前記曲線P2上で蒸留前試料の密度ρSAMPに対応する点を求めると、この点に対応するエキス分零の密度―アルコール濃度曲線P1上の点を得ることができ、この点は前記密度ρSAMP、から前記増加分ΔρCEを引いた位置に存在し、この点が求めるアルコール濃度に対応する密度ρCAとなる。
【0033】
前記密度―エキス分濃度面(b)上では、密度ρCAを起点として前記曲線Q1に平行な曲線Q2上の前記ρCEに対応する点が蒸留前試料の密度ρSAMPとなる。
【0034】
前記密度―アルコール濃度の関係を表す曲線P1は、既に明らかな事項であり、前記曲線Q(Q1・Q2・Q3)は、エキス成分が分かっている場合は予め測定することができる。従って、エキス成分が分かっている場合は、蒸留前試料の密度ρSAMPが得られると一義的にエキス分濃度による影響を補正した真のアルコール濃度を得ることができる。
【0035】
日本の国税庁は、国税庁所定分析法3-7でエキス分濃度(比重E)を求める式として下記(11)式を用いることを提示している。
【0036】
E=(S-A)×α+β・・・(11)
S:試料比重、蒸留前試料密度(15℃)/純水密度(4℃)
A:留液比重、留液密度(15℃)/純水密度(15℃)、従って、Aは留液のアルコール濃度を比重に換算した値。但し「留液」は、蒸留前試料が所定量になるまで蒸留したときの留液を元容にまでメスアップした状態をいう。
【0037】
α、β:係数(国税庁所定分析法3-7ではα=260、β=0.21)。
従って、この式からA:アルコール濃度を逆算すると、以下のようになる。
【0038】
A=S-{(E-β)/α}・・・(12)
この式を前記式(5)と比較すると、
ΔρCE={(E-β)/α}×ρ0
となり、式(5)と式(12)の整合性が取れることになる。
【0039】
ここで、前記蒸気加熱によって得られた純水とエキス分よりなる蒸留残試料(容積V2)を元容(V1)に戻した試料を、前記比重Sの対象となる試料とするとき、その密度は、前記式(1)で得られることになり、前記式(11)の比重SをS0と置き直すと、当該比重S0は以下のようになる。
【0040】
S0=ρCE/ρ0
(ρ0=0.99997は4℃での純水の密度)
また、純水とエキス分よりなる試料の液分は純水と仮定できるので、式(11)の比重Aの対象は純水である。従って、ρwを15℃の純水の密度とし、比重AをA0と置き直すと、
A0=ρw/ρw=1
となる。
【0041】
従って、式(11)より、エキス分濃度に対応する比重Eは、前記式(11)より、
E={(ρCE/ρ0)-1.00000}×α+β・・・(13)
となる。
【0042】
エキス分濃度に対応する比重Eが得られたので、式(12)に基づいて試料のアルコール濃度を算出することができる。
【0043】
式(12)での蒸留前試料の比重Sは、15℃での蒸留前試料の密度(実測値)と4℃での純水密度の比(ρSAMP /ρ0)であり、当該蒸留前試料の比重Sと前記エキス分濃度に対応する比重Eを式(13)に代入することによって、蒸留前試料のエキス分濃度による誤差を除いた比重Aが得られる。このアルコール比重に対応する密度を濃度に換算(前記所定分析法、第2表)すると、求めるアルコール濃度が得られることになる。
【0044】
以上に基づいてエキス分による誤差を補正したアルコール濃度の具体例を、国税庁所定分析法3-7に準拠(α=260、β=0.21)して求めると以下のようになる。
【0045】
(a) アルコール分を含まない試料(残試料)のエキス分濃度の計算
蒸留前試料の体積(測定値):10.067ml(V1)
蒸留残試料の体積(測定値):63.711ml(V2)
蒸留残試料の密度(測定値):0.99917g/cm3:(ρR)
純水の密度(文献値): 0.99910g/cm3:(ρw)
以上に基づいて(1)式を計算するとアルコール分を含まない試料の密度(推定値)ρCEを求めることができる。
【0046】
ρCE=[ (0.99917-0.99910)×(63.711/10.067)]+0.99910=0.99954
ここで式(11)E=(S-A)×260+0.21のS=S0とA=A0とおくと、アルコール分を含まない試料のエキス分濃度に対応する比重Eは、
S0:残試料の比重(15℃/4℃):ρCE/ρ0=0.99957
A0:純水の比重(15℃/15℃): 1.00000(ρw/ρw)
アルコール濃度0 vol%を比重(15℃/15℃)に換算
であるので、エキス分濃度に対応する比重Eは、
E= (0.99957-1.00000)×260+0.21=0.10
従って、試料のエキス分濃度(推定値)に対応する比重Eは0.10
(b) 試料比重S、エキス分濃度に対応する比重Eと式(12)より、アルコール度の逆算をすると以下のようになる。
【0047】
S:試料比重(15℃/4℃)(計算値):0.95547
試料密度(15℃の測定値): 0.95544g/cm3
純水密度(4℃): 0.99997g/cm3
A=0.95547-[(0.10-0.21)/260]=0.95589
アルコール比重(15℃/15℃)(推定値) A:0.95589
アルコール密度(推定値):0.95589×ρw=0.95503g/cm3
アルコール濃度(密度から計算):37.440vol%
となる。
【0048】
(c)上記は、国税庁提示の式を用いたが、式(5)を用いると以下のようになる。
【0049】
ΔρCE=0.99954(ρCE)-0.99910(ρW)=0.00044
ρCA=ρSAMP-ΔρCE=0.95544-0.00044=0.95500 g/cm3
となり、前記式(12)から得られた値0.95503g/cm3との誤差は殆どないことが分かる。
【実施例】
【0050】
上記本発明に係る方法を用いて測定したウィスキーのアルコール濃度について、従来から用いられている所定法(直火法)、SDK法での測定と比較した結果を表2に示す。ここで、後述の手順で得られる、測定対象のウィスキーの推定アルコール濃度の真値は37.680vol%である。
【0051】
尚、直火法は、所定量の試料を直火で70%以上流出するまで蒸留し、留液に水を加えて15℃での前記所定量にまでメスアップして、15℃における比重を得、当該比重を前記表を用いてアルコール濃度に換算する方法である。
【0052】
SDK法は、試料の15℃における密度をρ15、重量をm15、当該試料を蒸気蒸留して得た留液の15℃の密度がρ20、重量がm20である場合、前記表を用いて留液の前記密度ρ20からアルコール濃度Aを得たとき、試料のアルコール濃度XはX=A・m20・ρ15/(m15・ρ20)であることを利用して、温度管理、メスアップを伴わずに測定できる方法である。
【0053】
上記本発明に係る方法は、国税庁提示の式を用いた「本願発明の方法(1)」と、式(5)を用いた「本願発明の方法(2)」である。
【0054】
各測定法で3回の平均値より推定真値との差を得たが、本発明に係る方法で得た2通りの結果が従来法と同等かそれより誤差が小さいことが確認できる。
【0055】
前記推定真値は以下のようにして求める。
【0056】
真値が判っているエタノール標準液(ラベル表示濃度40.640 vol%)を直火法とSDK法で測定すると表3に示すようになる。ここで両法についての真値との差(直火法-0.065 vol%、SDK法-0.47 vol%)の平均値-0.056 vol%を得る。一方、両法でのウィスキーの測定結果の平均値は37.623 vol%であり、この値に前記0.056 vol%を加算すると、推定真値37.680 vol%が得られる。
【0057】
尚、表3の最終段(ウイスキー推定値)は、直火法、SDK法それぞれの測定濃度の平均値37.637 vol%、37.610 vol%のそれぞれに前記0.056 vol%を加算して得られる値である。
【0058】
【0059】
【産業上の利用分野】
【0060】
以上説明したように、本発明は留液を得るための蒸留工程を経ないで、エキス分によるアルコール濃度の誤差を補正したアルコール濃度を得ることができるので、従来の直火法、SDK法に比してより正確に、しかも簡単に酒類のアルコール濃度を求める作業が極めて簡単になる。
【符号の説明】
【0061】
P1、P2・・ アルコール濃度曲線
Q1、Q2・・ エキス濃度曲線
ρSAMP・・・試料密度
ρCA・・・・アルコール分と純水からなる試料の密度
ρCE・・・・エキス分と純水からなる試料の密度
ΔρCE・・・純粋密度とρCEとの差