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特許7044275コンクリート養生湿潤管理装置及びコンクリート養生湿潤管理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-22
(45)【発行日】2022-03-30
(54)【発明の名称】コンクリート養生湿潤管理装置及びコンクリート養生湿潤管理方法
(51)【国際特許分類】
   E04G 21/02 20060101AFI20220323BHJP
   E21D 11/10 20060101ALI20220323BHJP
【FI】
E04G21/02 104
E21D11/10 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020133852
(22)【出願日】2020-08-06
(65)【公開番号】P2022030092
(43)【公開日】2022-02-18
【審査請求日】2021-11-05
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和2年4月24日~令和2年8月20日 佐賀県伊万里市黒川町黒塩 令和2年5月11日~令和2年6月10日 福岡県糸島市板持地内
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520297012
【氏名又は名称】勇建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134706
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 俊彦
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 大輔
【審査官】油原 博
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-165073(JP,A)
【文献】特開2006-348570(JP,A)
【文献】特開2018-059327(JP,A)
【文献】特開平04-016674(JP,A)
【文献】中国実用新案第205077873(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 21/02
E21D 11/10
G01N 27/00
E01C 7/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸水性を有する養生シートで覆われたコンクリートを給水部からの給水により湿潤養生するコンクリート養生を管理するコンクリート養生湿潤管理装置において、
互いに離れた状態で前記養生シートの表面に接触させて配される一対の電極を有する電極部と、
前記電極部を介して前記養生シートに電流を流す測定電源と、
前記電極部の一方の前記電極と他方の前記電極との間の養生シート抵抗に応じた電圧を、前記養生シートに電流を流した状態で検出電圧として検出する検出部と、
記給水を開始する前記検出電圧を第1設定値として設定する第1設定部と、
前記給水を停止する前記検出電圧を第2設定値として設定する第2設定部と、
検出された前記検出電圧を、前記第1設定値と比較して、前記養生シート抵抗が前記第1設定値に対応する抵抗値以上のときに前記給水部からの前記給水を開始し、前記第2設定値と比較して、前記養生シート抵抗が前記第2設定値に対応する抵抗値以下のときに前記給水部からの前記給水を停止する制御部と
を備えるコンクリート養生湿潤管理装置。
【請求項2】
前記給水の開始から停止までの継続時間を第3設定値として設定する第3設定部をさらに備え、
前記制御部は、検出した前記検出電圧と前記第2設定値との比較により前記養生シート抵抗が前記第2設定値に対応する抵抗値より低くなる場合であり、かつ、前記給水の開始から前記第3設定値を経過した後に、前記給水を停止する請求項1に記載のコンクリート養生湿潤管理装置。
【請求項3】
前記電極は、前記養生シートを挟持する挟持位置と、挟持を解除する解除位置との間で変位するクリップであり、
絶縁材料で形成されたクリップ本体と、
導電材料で形成され、前記クリップ本体の前記養生シートに接触する内面側に配された導電部材と
を有する請求項1または2に記載のコンクリート養生湿潤管理装置。
【請求項4】
吸水性を有する養生シートで覆われたコンクリートを給水部からの給水により湿潤養生するコンクリート養生を管理するコンクリート養生湿潤管理方法において、
前記養生シートの表面に接触するように一対の電極を配する電極設置工程と、
前記一対の電極を介して前記養生シートに電流を流し、電流を流した状態で、一方の前記電極と他方の前記電極との間の養生シート抵抗に応じた検出電圧を検出する電圧検出工程と、
検出された前記検出電圧を、前記給水部により前記養生シートへの前記給水を開始する前記検出電圧として予め設定された第1設定値と比較して、前記養生シート抵抗が前記第1設定値に対応する抵抗値以上のときに前記給水を開始し、前記給水を停止する前記検出電圧として予め設定された第2設定値と比較して、前記養生シート抵抗が前記第2設定値に対応する抵抗値以下のときに前記給水を停止する制御工程と
を有するコンクリート養生湿潤管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート養生湿潤管理装置及びコンクリート養生湿潤管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリートは所要の強度、劣化に対する抵抗性、ひび割れ抵抗性、水密性、美感などを確保するためには、セメントの水和反応を十分に進行させる必要がある。そのため、コンクリート養生(以下、単に「養生」と称する)が行われ、養生方法のひとつとして、コンクリートを湿潤状態に所定の時間保つ湿潤養生が知られている。湿潤養生は、打設したコンクリートを、水を供給する給水部からの給水により湿潤状態を保つ養生であり、湿潤状態をより効果的に保つために通常は養生シートでコンクリートを覆った状態にする。
【0003】
例えば特許文献1には、コンクリート養生マット(養生シート)を敷設して、敷設された領域を複数に分割し、分割されたそれぞれの領域に対して湿潤状態を維持する。また、コンクリート養生マットの下で湿潤度を計測している。また、特許文献2は、リボン型で薄く柔軟性があり厚み方向に対して湾曲する2枚の金属シートをコンクリート養生マットに当接させ、2つの電極間に電圧をかけてコンクリート養生マットを充電した後、充電した電荷を放電させて残留電圧を計測して湿潤状態を検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-196755号公報
【文献】特開2018-003240号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の発明は、湿潤状態を維持するためにコンクリート養生マットの複数の領域において、コンクリート養生マットの下で水分計測しなければならない。コンクリート養生マットが大きければ大きい程、より多くの領域で湿潤度を計測しなければならないから、コンクリート養生の管理が簡便とは言えない。また、特許文献2の発明は、コンクリート養生マットへの充電をやめてから放電させて残留電圧を測定する。このため、充電のオンとオフとを切り替え、充電動作と放電動作と電圧測定動作とが必要であり、制御が煩雑である。
【0006】
そこで、本発明は、より簡便にコンクリート養生を管理することができるコンクリート養生湿潤管理装置及びコンクリート養生湿潤管理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のコンクリート養生湿潤管理装置は、電極部と測定電源と検出部と制御部と第1設定部と第2設定部とを備える。電極部は、互いに離れた状態で養生シートの表面に接触させて配される一対の電極を有する。測定電源は、電極部を介して養生シートに電流を流す。検出部は、電極部の一方の電極と他方の電極との間の養生シート抵抗に応じた電圧を、養生シートに電流を流した状態で、検出電圧として検出する。第1設定部は、給水を開始する検出電圧を第1設定値として設定する。第2設定部は給水を停止する検出電圧を第2設定値として設定する。制御部は、検出された検出電圧を、第1設定値と比較して、養生シート抵抗が第1設定値に対応する抵抗値以上のときに給水部からの給水を開始し、第2設定値と比較して、養生シート抵抗が第2設定値に対応する抵抗値以下のときに給水部からの給水を停止する。
【0008】
給水の開始から停止までの継続時間を第3設定値として設定する第3設定部をさらに備えることが好ましい。この場合、制御部は、検出した検出電圧と第2設定値との比較により養生シート抵抗が第2設定値に対応する抵抗値より低くなる場合であり、かつ、給水の開始から第3設定値を経過した後に、給水を停止する。
【0009】
電極は、養生シートを挟持する挟持位置と、挟持を解除する解除位置との間で変位するクリップであり、絶縁材料で形成されたクリップ本体と、導電材料で形成され、クリップ本体の養生シートに接触する内面側に配された導電部材とを有することが好ましい。
【0010】
本発明のコンクリート養生湿潤管理方法は、電極設置工程と、電圧検出工程と、制御工程とを有し、吸水性を有する養生シートで覆われたコンクリートを給水部からの給水により湿潤養生するコンクリート養生を管理する。電極設置工程は、養生シートの表面に接触するように一対の電極を配する。電圧検出工程は、一対の電極を介して養生シートに電流を流し、電流を流した状態で、一方の電極と他方の電極との間の養生シート抵抗に応じた検出電圧を検出する。制御工程は、検出された検出電圧を、給水部により養生シートへの給水を開始する検出電圧として予め設定された第1設定値と比較して、養生シート抵抗が第1設定値に対応する抵抗値以上のときに給水を開始し、給水を停止する検出電圧として予め設定された第2設定値と比較して、養生シート抵抗が第2設定値に対応する抵抗値以下のときに給水を停止する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、より簡便にコンクリート養生を管理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】コンクリート養生湿潤管理システムの概略図である。
図2】本体部の概略図である。
図3】電極部の概略図である。
図4】養生シートを挟持している挟持姿勢の電極の斜視図である。
図5】コンクリート養生湿潤管理装置のブロック図である。
図6】電圧検出部の構成図である。
図7】第1設定部の構成図である。
図8】コンクリート養生を管理する管理方法のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1に示すコンクリート養生湿潤管理システム11は、打設したコンクリート12を、養生シート13を用いて湿潤養生する。コンクリート養生湿潤管理システム11は、コンクリート養生湿潤管理装置15と給水部17とを備える。給水部17は、養生シート13に給水して、コンクリート12を湿潤状態に保つことで湿潤養生を行うためのものである。コンクリート養生湿潤管理装置15は、本発明の実施形態の一例である。コンクリート養生湿潤管理装置15は、給水部17によるコンクリート養生としての湿潤養生を管理(支援)するためのものである。コンクリート養生の管理は、養生シート13の濡れ度合である湿潤度を管理することで行う。なお、コンクリート12は型枠内に設けられているが、図1においては型枠の図示を略してある。
【0014】
コンクリート養生湿潤管理装置15は、電源ユニット21と、本体部22と、電極部23とを備える。給水部17は、ポンプ24と、水を蓄えるタンク25と、放水する放水部26とを備える。ポンプ24は、タンク25及び放水部26に接続され、タンク25に蓄えられた水を放水部26に送る。ポンプ24は、本体部22と電気的に接続され、本体部22の制御の下で、タンク25から放水部26へ水を送る。放水部26は、コンクリート12を覆う養生シート13の上に配され、放水部26からの放水により養生シート13に給水され、これによりコンクリート12へ水が供給されて、湿潤養生が行われる。
【0015】
ポンプ24は、本例では水中ポンプを使用しており、水が蓄えられているタンク25において水没させて使用している。ただし、図1においては、図の煩雑化を避けるために、ポンプ24をタンク25の外に描いてある。ポンプ24は給水を開始する指示を本体部22から受け取ると稼働状態となり、タンク25の水を汲み上げ、給水管L15を介して放水部26へ送る。ポンプ24はタンク25の外に設けるいわゆる外付けタイプのものでもよい。タンク25は貯水できるものであれば既存の容器を使用すればよいし、給水する水量に合わせた容積のものを使用すればよい。本例では、プラスチック製の軽量で運搬しやすいものを使用している。
【0016】
放水部26は、複数の放水口30が形成されたU字型の管である。複数の放水口30は、U字型の管の長手方向に沿って形成されている。放水部26は養生シート13の表面に放水口30が位置するように設けられる。放水部26は、給水管L15を介してポンプ24に接続され、ポンプ24は、タンク25に収容されている水を給水管L15を通じて放水部26に送る。放水部26は送られてきた水を放水口30から養生シート13へ放出する。放水部26は、U字型の管に限定されず、例えば、直線状(I字型)、L字型等の他の形状の管でもよいし、変形自在な可撓性の管でもよい。本例では、放水部26を1つとしているが養生シート13の面積に応じて放水部26の数を増やしてもよい。放水部26を複数用いる場合には、複数の放水部26を並列接続にし、これにより、複数の放水部26から放出される水の流量を互いに等しくすることが好ましい。この場合には、養生シート13の上面を複数の領域に区画分けし、形成された複数の領域の各々に放出部26を設置することが好ましい。これにより、後述の電極部23を養生シート13の面方向におけるいずれの位置に配しても、養生シート13の全域にわたって水がより均等に保持されることになり、コンクリート12の全域にわたってより均等な湿潤養生が行われる。なお、区画分けは、仕切部材などを用いて行ってもよいが、仕切部材などを用いることなく仮想的に区画分けしてもよい。並列接続にした複数の放水部26を用いる場合には、放水部26の個々に対応してポンプ24を設けてもよい。例えば、ポンプ24と放水部26とを直列接続にし、複数のポンプ24を並列接続にする態様である。また放水口30の数や形状も特段の定めはなく、適宜決定することができる。放水方法は流水として放水してもよく、散水でもよい。
【0017】
コンクリート養生湿潤管理装置15は、コンクリート養生湿潤管理装置15を稼働させるための電源ユニット21と電源ユニット21から送られた電流を養生シートへ伝える電極部23と電極部23で得られた電圧を処理する本体部22等で構成される。電極部23は一対の電極27を有する。
【0018】
電源ユニット21は本体用電源28とポンプ用電源29として機能する。本体用電源28は第1接続ケーブルL11を介して接続する本体部22の電源である。本体部22は導電線L12で一対の電極27のそれぞれに接続される。一対の電極27のそれぞれはコンクリート12に敷設された養生シート13の表面に接触して配される。これにより、本体部22は、養生シート13に電極部23の一対の電極27を介して電流を流す。なお、養生シート13の表面とは、養生シート13がコンクリート12と接している面を下面とした場合にコンクリート12と接していない上面を指す。ポンプ24は本体部22に第2接続ケーブルL13で接続されるとともに、ポンプ用電源29に第3接続ケーブルL14で接続されている。このように接続されたポンプ24は、ポンプ用電源29を電源として、本体部22により駆動が制御される。実際には、本体部22は、ポンプ24とポンプ用電源29との間の接続をオン・オフすることにより、ポンプ24の駆動を制御している。
【0019】
コンクリート12は、板状の普通ポルトランドセメントを用いたコンクリートである。コンクリート12は、湾曲した形状でもよく、養生できる形状は限定されない。また、コンクリート12は、ポルトランドセメントを用いたコンクリートに限られず、フライアッシュセメントや高炉セメント、早強セメントを用いたコンクリートでもよい。
【0020】
養生シート13は、コンクリート12の表面を覆うことでコンクリート12を湿潤養生するためのものである。養生シート13は、吸水性を有するものを使用している。養生シート13としては、例えば布製の養生シートが挙げられ、起毛素材やパイル素材等、公知の吸水性を有する養生シートであればよい。ただし、後述のように、養生シート抵抗に応じた検出電圧を検出するために、絶縁素材で形成されているものとする。養生シート13における絶縁素材とは、完全な絶縁性を示す素材である必要はなく、保持されている水の量に応じた養生シート抵抗を示す程度の絶縁性をもつ素材であればよい。養生シート13の面積は、コンクリート12の養生シート13で覆う上面の面積より大きくされており、厚みは概ね5mmである。養生シート13の寸法は湿潤養生するコンクリートの上記面積より大きいものであればよく、厚みは本例に限定されず、保持する水の量(保水量)を十分に確保する観点で好ましくは概ね3mm以上15mm以下の範囲内である。
【0021】
一対の電極27は、互いに離れた状態で配されるとともに、養生シート13に接触されて配される。本体部22は、一対の電極27の一方と他方との間の抵抗、すなわち養生シート抵抗に基づいて、給水部17のポンプ24を制御する。具体的には、本体部22は、養生シート抵抗に応じて増減される検出電圧を検出し、その検出電圧と、予め設定した設定値とを比較し、その比較結果によって養生シート13が十分に水を含んだ状態ではなくなったと判断した場合に、本体部22から給水部17に給水を開始するようポンプ24をオンにする(給水の開始の指示を出す)。また、十分に水を含んだ状態と判断し、本例では、これに加えて、設定した給水の継続時間が過ぎたと判断した場合に、給水部17に給水を停止するようポンプ24をオフにする(給水の停止の指示を出す)。
【0022】
電源ユニット21は、蓄電池、この蓄電池を充電する充電回路、電圧変換回路等で構成されており、前述のように本体用電源28とポンプ用電源29として機能する。電源ユニット21は、ソーラーパネル(図示無し)またはAC(交流)100V電源に接続され、ソーラーパネルまたはAC100V電源から供給される電圧を所定の電圧に変換して本体部22,ポンプ24に供給する。すなわち、本体用電源28は本体部22に、ポンプ用電源29はポンプ24に、それぞれ駆動電圧を供給する。この例では、本体部22、ポンプ24に供給される駆動電圧はいずれも12Vである。なお、電源ユニット21は、ソーラーパネルまたはAC100V電源に接続される態様に代えて、例えば、タンク25を備える給水車等のDC(直流)電源に接続する態様でもよい。その場合、例えばDC電源と接続し、供給される電圧を、ソーラーパネルまたはAC100V電源に接続する場合と同様に、所定の電圧に変換して本体部22,ポンプ24に供給してもよいし、または、DC電源からの電圧によっては、その供給される電圧と等しい電圧を本体部22,ポンプ24に供給する態様でもよい。本体部22では、本体用電源28から供給される駆動電圧により各種の回路が動作するとともに、駆動電圧が本体部22内に設けた測定電源71(図5参照)に供給される。測定電源71は、本体用電源28からの駆動電圧を測定電圧(この例では5V)に変換する。この測定電源71からの5Vの電圧は、一方の電極27を介して養生シート13に印加される。なお、電源ユニット21は、ソーラーパネルまたはAC100V電源から供給される電圧で内蔵した蓄電池を充電し、ソーラーパネルまたはAC100V電源からの入力がなくなった場合あるいは入力電圧が低下した場合に、蓄電池を電源として本体部22及びポンプ24に駆動電圧を供給する。これにより、夜間や停電時等においても継続してコンクリート養生湿潤管理システム11を動作させる。なお、電源ユニット21の構成は、上記のものに限定されるものではない。例えば、別途用意した蓄電池にポンプ24を直接に接続して電源供給したり、ポンプ24としてAC100Vで動作するものを用いた場合には、直接にまたは電源ユニット21を介してAC100V電源からポンプ24に駆動電圧を供給したりしてもよい。
【0023】
本体部22は、図2に示すように、電源スイッチ31と、第1設定値を決める第1ダイヤル32と、第2設定値を決める第2ダイヤル33と、第3設定値を決める第3ダイヤル34とを有する。本体部22は、さらにモニタ36と切替ボタン37とを有することが好ましく本例でもこれらを設けてある。設定された第1設定値と第2設定値と第3設定値とは、モニタ36に表示される。切替ボタン37は、突出した突出位置に付勢されており、押圧されることにより内部に挿入されて、突出位置よりも低い高さの挿入位置にされる。切替ボタン37は、このように、突出位置と挿入位置との間で高さが変化するボタンである。切替ボタン37は、突出位置と挿入位置との変位で、モニタ36に表示される内容を切り替える。本例では、切替ボタン37が突出位置にあるときには、現在の日時(例えば、年,月,日,時刻)及び養生シート13の湿潤度がモニタ36に表示され、挿入位置にあるときには、第1設定値,第2設定値,第3設定値の現在の各値が表示されるようになっている。なお、切替ボタン37が突出位置にあるときにモニタ36に表示する内容について、養生シート13の湿潤度に代えて検出電圧としてもよい。また、切替ボタン37の突出位置と挿入位置とでモニタ36に表示される内容は、上記の例と逆であってもよい。
【0024】
切替ボタン37が挿入位置にある状態で、第1ダイヤル32と、第2ダイヤル33と、第3ダイヤル34とのそれぞれが回転されると、回転方向と回転量(操作量)とに応じた各値が、第1設定値,第2設定値,第3設定値として表示される。本体部22は、さらに電源タイマ38を備えることが好ましく、本例でも備える。電源タイマ38は、例えば本体部22による給水の開始及び停止等の制御をオフにする曜日や時間(時刻でもよいし、現在からの経過時間でもよい)を入力する入力ボタン(図示無し)と表示部38aとを有する。入力ボタンにより入力された曜日や時間が表示部38aに表示され、また、設定された曜日や時間に基づいて本体部22の電源を切ることができる。
【0025】
本体部22は、矩形の箱状であり、電源スイッチ31やモニタ36などが設けられている面を前面とする場合に、前面を覆うように閉じる閉じ位置と、図2に示すように前面が露呈する状態に前面を開放する開放位置との間で変位する扉40が設けられている。扉40は本体部22の前面に侵入する水などを防ぐためのものである。扉40には張り部41があり、扉40を閉じたときに掛け部42とかみ合うように突出した張り部41が設けられている。掛け部42が張り部41に引っ掛けられた状態で、扉40が本体部22の前面を覆うことにより水密性が高く(水が入らないように)扉40を閉じることができる。また、図2における上側を本体部22の上側とする場合に、本体部22の上部には屋根43が設けられており、雨による本体部22への水の侵入がより確実に防がれる。これにより、本体部22は屋外でも使用することができる。
【0026】
本体部22は、防水コネクタ45が2つ設けられている。2つの防水コネクタ45の一方が本体用電源28と接続され、他方がポンプ24と接続される。このように、水周りでの使用や屋外での使用をする場合のコネクタ(接続部品)は防水性であることが好ましい。また、本体部22には、本体部22と接続している部分がゴムキャップで覆われた防水コネクタ46を備える接続コネクタ47が設けられている。接続コネクタ47は外周が絶縁性のゴム素材で覆われており、接続コネクタ47の先端部はゴム素材で被覆されておらず、防水性の接続コネクタ52(図3参照)に連結されて、本体部22は電極部23に電気的に接続される。
【0027】
本体部22は、さらに、図3に示すように一対の電極27に導通する一対の電極ケーブル50と電極チューブ51と接続コネクタ52とを備えることが好ましく、図2に示す接続コネクタ47は接続コネクタ52と連結される。電極チューブ51と一対の電極ケーブル50との各内部には、線状に形成された導体が設けられている。電極ケーブル50,電極チューブ51,接続コネクタ52,防水コネクタ46(図2参照),接続コネクタ47(図2参照)は、前述の導電線L12(図1参照)として機能する。電極チューブ51の一端は、一対の電極ケーブル50に連結されており、本体部22(図2参照)から一対の電極ケーブル50を介して電極27に電流が流れる。電極27は、第1クリップ部材27Aと第2クリップ部材27Bと回転軸55とを備え、養生シート13を挟持する挟持位置(挟持姿勢)と、挟持を解除する解除位置(解除姿勢)との間で変位するクリップである。第1クリップ部材27Aと第2クリップ部材27Bとの各後端53を互いに近づけるように押圧して閉じると先端54が離れるように回転軸55を中心に開く。このように、第1クリップ部材27Aと第2クリップ部材27Bとは、挟持姿勢と解除姿勢との間で、互いの相対的な姿勢を変える。第1クリップ部材27Aと第2クリップ部材27Bとは、挟持位置に付勢されており、これにより、養生シート13を先端54で挟持する。
【0028】
電極27は、絶縁材料で形成されたクリップ本体56と、導電部材57とを備える。本例の養生シート13の厚みは概ね5mmであるが、厚みが異なる養生シートであってもクリップであれば挟持でき、これより厚くても薄くても対応することができる。電極27は、クリップに限られず、棒状でもよく針状でもよく、板状でもよいが、厚みが異なる養生シートに対応させるためにクリップであることが好ましい。
【0029】
導電部材57は、挟持されている養生シート13と接触する電極27の内面27aを構成する。クリップ本体56の内部には、電極ケーブル50から延びている前述の導線が配されており、導線の先端が導電部材57に接続する。これにより、電極27の導電部材57と本体部22とは導通し、本体部22から送られた電流を導電部材57に接触している養生シート13に流すことができる。
【0030】
導電部材57は導電材料として銅板を使用して形成されており、一枚の銅板を折り曲げた状態で、クリップ本体56の内側全面に設けてある。これにより、養生シート13を露呈した表面側からつまむように挟持するだけで、各電極27は養生シート13と簡単に電気的に接続し、養生シート13に電流を流すことができる。導電部材57の素材は銅板に限られず、導電性を有するものであればよい。
【0031】
電極27は、図4に示すように、付勢された状態で養生シート13を挟持している挟持位置においては、養生シート13を露呈した表面側からつまみ上げるようにして挟持する。したがって、電極27は、折り曲げられた導電部材57の少なくとも一部が、挟持された養生シート13の挟持部分60で確実に接触するから、養生シート13が水を含んでいる状態では電流が流れる。一対の電極27は、距離(以下、電極間距離と称する)L20が一定、例えば200mmとなるようにセットされる。これにより、互いに離れた状態で養生シート13の表面に接触している。電極間距離L20は200mmであることが好ましいがこれに限られず、電極27同士が互いに接触しておらず、離れすぎていない距離であればよい。上述のように電極間距離L20は、一定の距離とすることが好ましく、このようにすることで第1設定値と第2設定値との電極間距離L20に応じた調整を省略することができる。
【0032】
本体部22は、図5に示すように、測定電源71、制御部72、電圧検出部73、電圧記憶部74、第1設定部81、第1記憶部82、第2設定部83、第2記憶部84を備える。本体部22は、さらに、第3設定部85、第3記憶部86、時間測定部87を備えることが好ましく、本例でもこれらを備えている。制御部72は、測定電源71、給水部17のポンプ24、時間測定部87の各々と接続し、これらを統括的に制御する。
【0033】
測定電源71は、供給された駆動電圧を測定電圧(この例では前述のように5V)に変換し、制御部72の制御により、電極部23を介して養生シート13に電流を流す。養生シート13が水で濡れている場合には養生シート13には電流が流れ、養生シート13が含んでいる水の量が多いほど養生シート抵抗が小さくなり大きな電流が流れる。一方の電極27と他方の電極27との間の養生シート抵抗に応じた検出電圧(この例では0V以上)が電圧検出部73により検出される。検出電圧は、養生シート13に電流を流した状態で検出する。電圧検出部73は、検出した検出電圧を電圧記憶部74にデータとして記憶する。記憶された検出電圧のデータは制御部72により読み出される。
【0034】
第1設定部81は、第1ダイヤル32(図2参照)に接続しており、第1ダイヤル32が回転されることにより第1設定部81は第1設定値を設定し、第1記憶部82に記憶する。第2設定部83は、第2ダイヤル33(図2参照)に接続しており、第2ダイヤル33が回転されることにより、第2設定部83は第2設定値を設定し、第2記憶部84に記憶する。第3設定部85は第3ダイヤル34(図2参照)に接続し、第3ダイヤルが回転されることにより第3設定部85は第3設定値を設定し、第3記憶部86に記憶する。第1ダイヤル32の回転方向に応じて、設定される第1設定値は上下(増減)する。また、第1ダイヤル32の回転量に応じて、設定される第1設定値の変化量が決定される。同様に、第2ダイヤル33,第3ダイヤル34の回転方向に応じて、設定される第2設定値,第3設定値は上下(増減)する。また、第2ダイヤル33,第3ダイヤル34の回転量に応じて、設定される第2設定値,第3設定値の変化量が決定される。
【0035】
第1設定値は、給水部17(図1参照)に給水を開始させる検出電圧として予め設定される値である。第2設定値は、給水部に給水を停止させる検出電圧として予め設定された値である。制御部72は、一定の時間間隔で、検出された検出電圧を電圧記憶部74から読み出すとともに、第1記憶部82から第1設定値、第2記憶部84から第2設定値を読み出し、検出された検出電圧を第1設定値及び第2設定値と比較する。制御部72は、検出された検出電圧が第1設定値以下であるときに、ポンプ24をオンにする(稼働させる)。なお、検出された検出電圧を制御部72が一定の時間間隔で電圧記憶部74から読み出す態様の代わりに、電圧検出部73が検出電圧を検出して制御部72に出力し、制御部72にその検出電圧が入力される態様でもよい。
【0036】
また、第3設定値は、給水部17に給水を停止させるまでの開始からの継続時間として設定される値である。本例の制御部72は、時間測定部87を制御しており、時間測定部87による時間の測定を所定のタイミング、本例では給水の開始のタイミングで開始させる。制御部72は、一定の時間間隔で、時間測定部87から、給水を開始した時点からの時間を読み出すとともに、第3記憶部86から第3設定値を読み出し、読み出した時間を第3設定値と比較する。ただしこの態様に代えて、時間測定部87が、給水を開始した時点からの時間を制御部72に出力し、制御部72にその時間が入力されると、制御部72が時間測定部87から取得した時間と第3設定値とを比較する態様としてもよい。制御部72は、本例では、電圧検出部73で検出した電圧が第2設定値以上であり、かつ時間測定部87で測定された時間が第3設定値を経過した場合に、制御部72はポンプ24をオフにする(給水を停止させる)。
【0037】
電圧検出部73は、図6に示すように、A/D変換器91と抵抗92とを有する。この抵抗92は、一対の電極27の間における養生シート13の抵抗である養生シート抵抗と直列接続されて、測定電源71からの測定用の電圧を分圧する分圧回路を構成し、養生シート抵抗に応じた検出電圧を出力する。これにより、養生シート13が含んでいる水の量に応じて、検出される検出電圧が変化する。この例では、養生シート13が含んでいる水の量が多いほど、すなわち養生シート13が湿潤しているほど養生シート抵抗が低くなるため検出電圧が高くなる。A/D変換器91は、検出電圧をデジタル変換する。デジタル変換された検出電圧のデータは電圧記憶部74(図5参照)に記憶される。
【0038】
第1設定部81は、図7に示すように、可変抵抗95、A/D変換器96、抵抗97を有する。可変抵抗95と抵抗97とは、直列接続されており、測定電源71からの測定用の電圧を分圧する分圧回路を構成する。可変抵抗95は、第1ダイヤル32に接続されており、第1ダイヤル32の操作によってその抵抗値が増減され、それにともなって分圧回路から出力される電圧が変化する。可変抵抗95と抵抗97との分圧回路から出力される電圧は、A/D変換器96によりデジタル変換されて第1設定値として、第1記憶部82に記憶される。第2設定部83は、第1設定部81と同様の構成であり、第2ダイヤル33の操作によって可変抵抗の抵抗値が増減され、その抵抗値に応じた電圧が第2設定値として第2記憶部84に記憶される。第3設定部85は、例えば第3ダイヤル34の回転量に応じたエンコードパルスを出力するロータリーエンコーダやロータリーエンコーダからの出力されるエンコードパルスに応じてカウント値を増減するカウンタ等で構成されているおり、カウンタのカウント値が時間を示すデジタル情報になっている。第3設定部85は、カウンタのカウント値を第3設定値として第3記憶部86に記憶する。制御部72は、この第3設定値と給水を開始してからの経過時間とを比較する。
【0039】
第1設定部81及び第2設定部83の可変抵抗の抵抗値は、それぞれ養生シート抵抗に相当し、第1設定値及び第2設定値(電圧)と検出電圧との比較により、養生シート13の湿潤の程度(湿潤度)に基づいた養生シート抵抗と可変抵抗の抵抗値との大小関係を判別することができ、養生シート13の湿潤の程度に応じた給水の制御を行うことができる。すなわち、養生シート抵抗が第1設定値に対応した抵抗値よりも高いときに給水を開始し、養生シート抵抗が第2設定値に対応した抵抗値よりも低い場合に給水を停止するように制御する。なお、この例では、養生シート13が湿潤しているほど検出電圧が高くなる構成であるため、第1設定値は、第2設定値よりも低く設定されるのはいうまでもない。また、養生シート13が湿潤しているほど検出電圧が低くなる構成であってもよい。この場合には、第1設定値は、第2設定値よりも高く設定され、第1設定値以上で給水を開始し、第2設定値以下で給水を停止するように制御すればよい。
【0040】
本体部22の電圧検出部73,第1設定部81,第2設定部83,第3設定部85等を除く制御及び記憶に関与する機能部は、コンピュータで構成されており、ハードディスクなどの記憶部(図示無し)に記憶されたプログラムを実行することにより、制御部72,電圧記憶部74,第1記憶部82,第2記憶部84,第3記憶部86,時間測定部87などとして機能する。
【0041】
上記構成の作用を説明する。コンクリート養生湿潤管理システム11は、電極部23で挟持された養生シート13に電流を流した状態で、養生シート抵抗に応じた検出電圧を養生シート13の湿潤度として検出し、検出した検出電圧に基づき、養生シートへの給水部17からの給水を制御することで湿潤養生を管理する。一対の電極27は養生シート13を挟持するようにセットされる。本体用電源28から第1接続ケーブルL11で接続された本体部22に駆動電圧が供給され、電源スイッチ31がオンにされることで本体部22は駆動する。本体用電源28は測定電源71にも電圧を供給しており、制御部72による制御のもとで測定電源71により一方の電極27に測定電圧が印加される。これにより、養生シート抵抗と抵抗92とに応じた電流が養生シート13に流れ、養生シート抵抗に応じた電圧が電圧検出部73により検出電圧として検出される。検出電圧は電流を流しながら検出するから、充電と放電とを行って残留電圧を測定する場合のように充電動作、放電動作、電圧測定動作及びこれらの動作を切り替える制御動作という多くの動作が不要である。また、コンクリート養生湿潤管理装置15では、養生シート13の湿潤の程度に応じた検出電圧の検出する回路として、充電動作及び放電動作のための各回路が不要であり回路構成が簡単である。
【0042】
検出電圧は、A/D変換器91によりデジタル変換され、制御部72が扱うことができるデジタル情報として電圧記憶部74に記憶される。本例の電圧記憶部74は検出電圧を所定のビット数(本例では10bit=2の10乗(=1024)の分解能)のデジタル情報に変換して電圧記憶部74に記憶している。上述のように、検出電圧は、養生シート13の湿潤度に対応している。したがって、湿潤度は1024レベル(段階)に細かくレベル分けされて検出電圧として取得される。第1設定値と第2設定値についても、検出電圧と同様に、10ビットのデジタル情報に変換して記憶される。このため、用いる養生シート13の素材や厚み、気候(気温と湿度とを含む)等に応じて、第1設定値と第2設定値とをより細かく設定し、検出電圧に基づいて湿潤度に応じた給水の制御をより細かく行うことができる。その結果、節水効果が高く、また、乾きすぎによるセメントの水和反応の鈍化がより確実に抑えられる。ただし、湿潤度のレベル分けの数は、1024に限られない。
【0043】
第1設定部81,第2設定部83,第3設定部85では測定電源71からの電圧が分圧回路に印加される。第1ダイヤル32が回転されることにより回転方向と回転量とに応じて可変抵抗95の抵抗値が変化するから、第1設定値の分圧回路から出力される電圧が変化し、その電圧が第1設定値として設定される。このとき、第1設定部81の分圧回路から出力される電圧は、A/D変換器96によってデジタル情報に変換され、第1記憶部82に記憶される。第2設定部83についても第1設定部81と同様である。第1設定部81と第2設定部83とは湿潤度と関連付けられた電圧が第1設定値,第2設定値としてそれぞれ第1記憶部82と第2記憶部84とに記憶されるから、電圧記憶部74で記憶された検出電圧と第1設定値及び第2設定値との比較を行うことができる。また、第3記憶部86には給水の開始時点からの時間の情報と関連付けた電圧が記憶されており、これにより、時間測定部87で測定した給水を開始してからの経過時間と関連付けた電圧と第3設定値との比較を行うことができる。
【0044】
制御部72は、電圧記憶部74からの検出電圧と第1設定値及び第2設定値とを比較し、また、時間測定部87から取得した時間(給水の開始時点からの経過時間)と第3設定値とを比較する。そして、制御部72は、比較結果に応じて、ポンプ24に対して給水の開始または停止を指示する制御を行う。
【0045】
ポンプ24は、制御部72による制御に基づくポンプ用電源29からの電圧の供給によりオン状態とされ、これにより、タンク25に蓄えられた水は吸い上げられて給水管L15を通じて放水部26へ送られる。
【0046】
放水部26に案内された水は、放水口30から養生シート13へ放出される。この放水により、養生シート13は湿潤度が上昇し、湿潤状態が保たれる。
【0047】
制御部72は、検出電圧と第2設定値とを比較し、本例ではさらに、給水開始からの経過時間と第3設定値とを比較し、これらの比較結果に基づいて養生シート13が十分濡れていると判定した場合に、ポンプ24に対して給水を停止させる指示を出し、オン状態のポンプ24をオフにして給水が止まる。検出電圧と第1設定値との比較に基づいて養生シート13の湿潤の程度が不十分であると判定された場合には給水が開始されるから、養生シート13の湿潤状態が確実かつ簡便に保持され、湿潤養生が簡便になされる。また、養生シート13が十分濡れていると判定した場合に給水が停止されるから、使用する水の量が最低限で抑えられるため、無駄が少なくなり省エネルギーである。
【0048】
本体部22は、切替ボタン37を押圧された状態(切替ボタン37が挿入位置にある状態)で、第1ダイヤル32により第1設定値を設定し、第2ダイヤル33により第2設定値を設定し、第3ダイヤル34により第3設定値を設定する。それぞれの設定値はモニタ36に表示されるから目視で確認しながら設定値を設定できる。また、切替ボタン37の押圧が解除される(切替ボタン37が突出位置にされる)と、設定値の表示から、現在の(最も近時に取得した)検出電圧と現在時刻との表示に切り替わる。このように、切替ボタン37の押圧と押圧の解除とにより、モニタ36における表示が変更される。また、電源タイマ38により電源をオフにする曜日や時間が設定され、目的とするタイミングで電源をオフにすることができる。これによりコンクリート養生湿潤管理システム11の稼働を抑えることができて有意義である。また、記憶媒体を使用してデータ出力をすることができるため、データを持ち出すことができる。データ出力はこれに限られず、外部端末へ送る構成としてもよい。
【0049】
本体部22には、扉40と屋根43があるから、雨による浸水を防げる。また、張り部41と掛け部42とを設けているから、扉40が隙間を少なく閉めることができるため水密性が向上する。そのため、本体部22が故障するリスクが軽減される。
【0050】
電極部23は、測定電源71から電圧を印加され、これにより、電極27に挟持された養生シート13には電流が流れる。電極27は、クリップであることにより、挟持している養生シート13を厚み方向に押圧するから、養生シート13の保持している水分量に対応する養生シート抵抗がより精緻に検出される。また、電極27はクリップ形状であるから、養生シート13を挟むだけで測定姿勢が整うため、検出電圧が簡便かつ継続的に安定して検出される。さらに、養生シート13の表面で検出箇所を変更することができるから、湿潤度の測定が簡便である。電極部23は、本例のようにひとつ、すなわち、一対の電極27を用いるだけで、湿潤養生が管理される。そのため、湿潤養生がより簡便に管理される。
【0051】
電極27は、外部に露呈した外表面が絶縁材料で形成されているから、安全性がより高く確保されている。導電部材57として折り曲げた形状の一枚の銅板を内面27aに設けているから、挟持位置においてより確実に導電部材57が養生シート13に接触する。
【0052】
コンクリート養生湿潤管理装置15による給水部17の管理方法のフローを、図8を参照しながら説明する。制御部72は、第1設定値と第2設定値と第3設定値とを第1記憶部82と第2記憶部84と第3記憶部86とから順次読み込む(S11)。なお、図8では、順次行われる読み込みを、図示の煩雑化を避けるためにひとつのステップとして描いてある。第1設定値,第2設定値,第3設定値の読み込みの順序は特に限定されない。
【0053】
養生シート抵抗に応じた検出電圧を測定して(S12)、検出電圧と第1設定値とを比較する。検出電圧が第1設定値以下であるか判定し、ポンプ24がオフ状態である(給水が停止しているか)判定する(S13)。ステップ13(S13)でYESの場合には、ポンプ24をオン(稼働)させて給水を開始する(S14)。ステップ13(S13)でNOの場合には、再度、第1設定値,第2設定値,第3設定値の読み込み(S11)を行う。給水を開始した後(給水の開始に応じて)、制御部72の制御により時間測定部87による時間の測定を開始させる(S15)。再度、検出電圧を測定して(S16)、検出電圧が第2設定値以上か否かの判定を行う(S17)。ステップ17(S17)でNOであれば再び検出電圧の測定(S16)に戻る。ステップ17(S17)でYESの場合には、時間測定部87で測定された経過時間が第3設定値以上であるか判定する(S18)。ステップ18(S18)でNOの場合には再び検出電圧の測定(S16)に戻る。
【0054】
ステップ18(S18)でYESの場合には、ポンプ24をオフ(停止)させ、給水を停止させる(S19)。その後、時間測定部87に時間の測定を停止させる(S20)。停止させた後は再び第1設定値,第2設定値,第3設定値を読み込む(S11)。この一連の流れが繰り返されることで、湿潤養生が管理される。湿潤養生の管理は、セメントの水和反応が進んで養生を終えるときに、コンクリート養生湿潤管理装置15の電源を切ることで終了する。
【0055】
なお、湿潤養生を開始する際には、十分な湿潤の程度で養生が開始されるように、設定された第1設定値,第2設定値,第3設定値に基づく上記の各ステップの制御フローの前に、さらに、養生シートの湿潤度や上記の継続時間に関わらずに、給水を予め設定した設定時間行うステップ(時間指定給水ステップと称する,図示無し)を設けることが好ましく、本例でもそのようにしている場合がある。この時間指定給水ステップでの上記設定時間は、第3設定部85により設定して行うことができる。ただし、時間指定給水ステップは、コンクリート養生湿潤管理装置15により行わなくてもよく、作業者により例えば給水部17を操作して行ってもよい。そして、この時間指定給水ステップを終えた後に、ステップS11に移行して、上記のステップS11以降の一連のフローの制御を制御部72により行うことが好ましく、本例でもそのようにしている。こうした湿潤養生の開始からの一連の制御は、前述のプログラムとして組み込まれ、各部を機能させることで行うことができる。
【0056】
電圧検出部73は養生シート13に電流を流しながら検出電圧を検出する。そのため、コンクリート養生湿潤管理装置15は、養生シート13に電流を流す電源(本例では測定電源71)のオンオフを繰り返す必要がなく、測定電源71、電極部23、制御部72、及びこれらを電気的に相互に接続するケーブル等への負荷も軽減されている。
【0057】
上記のコンクリート養生湿潤管理装置15によると、例えば、下記の方法により、吸水性を有する養生シート13で覆われたコンクリート12を給水部17からの給水により湿潤養生するコンクリート養生を管理するコンクリート養生湿潤管理を行うことができる。コンクリート養生湿潤管理方法は、電極設置工程と、電圧検出工程と、制御工程とを有する。
【0058】
電極設置工程は、養生シート13の表面に接触するように一対の電極27を配する。電圧検出工程は、一対の電極27を介して、養生シート13に電流を流し、電流を流した状態で、一方の電極27と他方の電極27との間の養生シート抵抗に応じた検出電圧を、例えば、養生シートが湿潤するほど高い電圧として検出する。制御工程は、検出された検出電圧を、給水部17により養生シート13への給水を開始する検出電圧として予め設定された第1設定値として比較して、養生シート抵抗が第1設定値に対応する抵抗値より高いときに給水を開始し、給水を停止する検出電圧として予め設定された第2設定値と比較して、養生シート抵抗が第2設定値に対応する抵抗値より低いときに給水を停止する。第1設定値と第2設定値とは、電極設置工程の前に予め設定してもよいし、電極設定工程中、電圧検出工程中、電極設定工程と電圧検出工程との間等のいずれのタイミングで設定してもよい。また、第1設定値と第2設定値とは、コンクリート養生湿潤管理装置15により湿潤養生をしている間に、コンクリート12及び養生シート13の周辺の雰囲気の温度、湿度、天候、養生シート13の保水力及び乾きやすさ等に基づいて、変更するように再設定してもよい。
【符号の説明】
【0059】
11 コンクリート養生湿潤管理システム
12 コンクリート
13 養生シート
15 コンクリート養生湿潤管理装置
17 給水部
21 電源ユニット
22 本体部
23 電極部
24 ポンプ
25 タンク
26 放水部
27 電極
27a 内面
28 本体用電源
29 ポンプ用電源
30 放水口
31 電源スイッチ
32 第1ダイヤル
33 第2ダイヤル
34 第3ダイヤル
50 電極ケーブル
51 電極チューブ
52 接続コネクタ
53 後端
54 先端
55 回転軸
56 クリップ本体
57 導電部材
71 測定電源
72 制御部
73 電圧検出部
L11 第1接続ケーブル
L12 導電線
L13 第2接続ケーブル
L14 第3接続ケーブル
L15 給水管
L20 電極間距離
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8