(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-22
(45)【発行日】2022-03-30
(54)【発明の名称】構造化仮想ドメインのテンソル信号の処理に基づく互いに素なエリアアレイの二次元到来方向の推定方法
(51)【国際特許分類】
G01S 3/46 20060101AFI20220323BHJP
【FI】
G01S3/46
(21)【出願番号】P 2021541669
(86)(22)【出願日】2020-05-03
(86)【国際出願番号】 CN2020088569
(87)【国際公開番号】W WO2021068496
(87)【国際公開日】2021-04-15
【審査請求日】2021-07-19
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】505072650
【氏名又は名称】浙江大学
【氏名又は名称原語表記】ZHEJIANG UNIVERSITY
(74)【代理人】
【識別番号】100103872
【氏名又は名称】粕川 敏夫
(74)【代理人】
【識別番号】100088856
【氏名又は名称】石橋 佳之夫
(74)【代理人】
【識別番号】100149456
【氏名又は名称】清水 喜幹
(74)【代理人】
【識別番号】100194238
【氏名又は名称】狩生 咲
(74)【代理人】
【識別番号】100205648
【氏名又は名称】森田 真一
(72)【発明者】
【氏名】史 治国
(72)【発明者】
【氏名】▲ジェン▼ 航
(72)【発明者】
【氏名】周 成▲ウェイ▼
(72)【発明者】
【氏名】▲チェン▼ ▲ジ▼明
【審査官】佐藤 宙子
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第107037392(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第109471086(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第110927661(CN,A)
【文献】特開2017-116425(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 3/00- 3/74
G01S 7/00- 7/42
G01S 13/00-13/95
H01Q 3/00- 3/46
H01Q 21/00-25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
【請求項2】
【請求項3】
【請求項4】
【請求項5】
【請求項6】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アレイ信号を処理する技術分野に関し、特に、スパースエリアアレイの仮想ドメインにおける二次統計量に基づく統計信号処理技術に関し、具体的に、構造化仮想ドメインのテンソル信号の処理に基づく互いに素なエリアアレイの二次元到来方向(direction of arrival (DOA))の推定方法に関し、多目標への位置付けに用いられる。
【背景技術】
【0002】
互いに素なアレイは、典型的な体系的なスパースアレイアーキテクチャとして、従来の均一アレイの自由度が制限されてしまうボトルネックを破ることができる。自由度を高めるためには、互いに素なアレイの受信信号を仮想ドメインに導き、アレイの拡張を実現し、それに対応する二次仮想ドメインの等価受信信号を統計処理することが一般的な手法である。二次元到来方向推定の自由度を高めるためには、互いに素なエリアアレイ及びその対応する二次元の仮想ドメインの信号処理が広く注目され始まる。従来の互いに素なエリアアレイに基づく二次元到来方向の推定方法では、多次元空間構造情報を有する受信信号を、相互相関統計量について、平均化処理し、二次仮想ドメインの等価受信信号をベクトル化により導出すると共に、一次元の到来方向の推定方法を二次元/多次元の信号の場合に拡張し、更なる統計処理により、到来方向推定を実現することは、通常の手法である。上記方法は、互いに素なエリアアレイの最初受信信号の多次元空間情報構造を破壊してしまうだけではなく、ベクトル化により導出された仮想ドメインモデルには、線形スケールが大きく、仮想ドメインの構造化情報が失われてしまう問題が存在している。
【0003】
テンソルは、複雑な多次元信号情報を格納するために使用できる多次元のデータタイプである。多次元信号についての特徴分析、高次の特異値分解及びテンソル分解などの方法は、テンソルへの信号処理に豊富な数学的なツールを提供している。近年、テンソルモデルは、アレイ信号処理、画像信号処理、統計学などの複数の分野に幅広く適用されている。従って、テンソルを使用して互いに素なエリアアレイ受信信号及びその仮想ドメインの等価信号を構築すると、信号における多次元の構造情報を効果的に保持でき、到来方向推定の性能を向上させるための重要な理論的ツールを提供することができる。それに伴い、高次の特異値分解及びテンソル分解などの方法を仮想ドメインに拡張することにより、到来方向推定の、分解能、推定精度及び自由度などの総合的な性能上の突破を実現することが期待される。しかしながら、従来の方法には、互いに素なエリアアレイの仮想ドメインのテンソル空間についての検討がまだされておらず、しかも、互いに素なエリアアレイの二次元仮想ドメインの特性が利用されていない。したがって、劣決定の条件下での正確な到来方向推定を実現するために、互いに素なエリアアレイのテンソル信号モデルに基づいて自由度が向上した二次元到来方向の推定方法を設計することは、現在、早急に解決すべき重要な課題である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、従来方法に存在する自由度の損失という課題について、互いに素なエリアアレイの二次元仮想ドメインとテンソル空間とを関連付け、二次元仮想ドメインの構造情報を十分に発掘すると共に、仮想ドメインテンソルの構造化構成及び仮想ドメインテンソル分解などの手段により、劣決定条件での二次元到来方向推定を実現するための実施可能なアイデア及び効果的な解決策を提供する、構造化仮想ドメインのテンソル信号の処理に基づく互いに素な平面におけるアレイ二次元到来方向の推定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
【0006】
【0007】
【0008】
【0009】
【0010】
【0011】
上記のステップでは、CANDECOMP/PARAFAC分解は、以下の一意性条件に準拠し、
【数25】
【0012】
【発明の効果】
【0013】
本発明は、従来技術に比べると、以下の利点を有している。
(1)本発明は、テンソルにより互いに素なエリアアレイの実際の受信信号を表示する。これは、二次元空間情報をベクトルで示すと共に、スナップショット情報を平均して相互相関統計量を取得して信号を処理するという従来の行列法と異なる。本発明では、スナップショット情報を第三次元で重ね合わせると共に、テンソル信号の相互相関統計に基づいて四次元空間情報の相互相関テンソルを含み、当初多次元の信号を記憶する空間構造情報を分析して取得する。
(2)本発明は、四次元相互相関テンソルに基づいて、仮想ドメインの統計量を導出すると共に、相互相関テンソルにおける同じ方向仮想ドメイン情報を示す次元を結合することにより、仮想ドメインの等価受信信号を導出して取得し、従来の行列法により導出された仮想ドメインの等価信号に存在している空間構造情報が損失されてしまい、又は、線型性の大きさが大き過ぎるなどの問題を克服することができる。
(3)本発明は、仮想ドメインの等価受信信号を構築する上で、仮想ドメインに、三次元テンソル信号をさらに構築することにより、二次元仮想ドメインとテンソル空間との接続を確立して、テンソル分解により、二次元到来方向推定の閉じた形の解を取得することに理論的前提を提供すると共に、構造化仮想ドメインテンソルの構造及び自由度の向上に、基礎を築くことができる。
(4)本発明は、仮想ドメインテンソル信号の次元拡張及び構造化仮想ドメインテンソル構造により、テンソル信号処理方法の自由度の性能を効果的に改善し、劣決定条件下での二次元到来方向推定を実現される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図2】本発明に係る互いに素なエリアアレイの構造模式図である。
【
図3】本発明に係る導出された拡張された仮想ドメインのエリアアレイの構造模式図である。
【
図4】本発明に係る互いに素なエリアアレイの仮想ドメインのテンソル信号を次元拡張する過程の模式図である。
【
図5】本発明に係る方法のマルチソースの到来方向推定の効果図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、図面を参照しながら、本発明の技術的手段をより詳しく説明していく。
【0016】
【0017】
以下に、シミュレーション実例を参照しつつ、本発明の效果をさらに説明する。
【0018】
【0019】
本発明により提案された構造化仮想ドメインのテンソル信号の処理に基づく互いに素なエリアアレイ二次元到来方向の推定方法により推定された結果は、
図5に示し、x軸及びy軸は、それぞれ入射信号源の仰俯角及び方位角を示す。それからわかるように、本発明により提案された方法は、効果的にこの50個の入射信号源を区別することができる。従来の均一なエリアアレイを用いた到来方向の推定方法では、35個の物理アンテナアレイエレメントにより、最大でも34個の入射信号しか識別できない。上記の結果により、本発明により提案された方法が自由度を増加することが分かる。
【0020】
以上より、本発明は、互いに素なエリアアレイの二次元仮想ドメインとテンソル信号との間の関係を十分に考慮して、テンソル信号の二次統計量を分析し導出して仮想ドメインの等価信号を取得し、当初受信信号及び仮想ドメインの空間構造情報を保留する。また、仮想ドメインテンソル次元拡張及び構造化仮想ドメインテンソルの構造メカニズムを確立し、識別可能な信号源の個数を最大化するための理論的基盤を築きました。最後、本発明は、構造化仮想ドメインテンソルについて、多次元特徴抽出を行うことにより、二次元到来方向推定の閉じた形の解を形成して、それが自由度性能におけるブレークスルーを実現する。
【0021】
以上に説明したのは、本発明の好ましい実施形態に過ぎず、本発明において、好ましい実施例について以上のように開示したが、本発明を限定するものではない。如何なる当業者にとって、本発明の技術的手段の範囲を逸脱しない限り、上記に開示した方法及び技術的内容により、本発明の技術的手段について可及的に数多くの変形や修飾をしてもよいし、同等変化による均等実施例に補正してもよい。故に、本発明技術的手段の内容を逸脱しない限り、本発明の技術的本質に基づいて、以上の実施例に対するすべての簡単な補正、同等変化及び修飾は、いずれも、本発明の技術的手段により保護される範囲に含まれる。