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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-22
(45)【発行日】2022-03-30
(54)【発明の名称】光音響画像化装置及び光音響画像化方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/13 20060101AFI20220323BHJP
   G01N 29/06 20060101ALI20220323BHJP
   G01N 29/24 20060101ALI20220323BHJP
   G01N 29/32 20060101ALI20220323BHJP
【FI】
A61B8/13 ZDM
G01N29/06
G01N29/24
G01N29/32
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018140528
(22)【出願日】2018-07-26
(65)【公開番号】P2020014728
(43)【公開日】2020-01-30
【審査請求日】2021-05-19
(73)【特許権者】
【識別番号】506310865
【氏名又は名称】CYBERDYNE株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504171134
【氏名又は名称】国立大学法人 筑波大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002365
【氏名又は名称】特許業務法人サンネクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山海 嘉之
【審査官】宮川 哲伸
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-100032(JP,A)
【文献】特開2016-73509(JP,A)
【文献】特開2005-83774(JP,A)
【文献】特開2012-135462(JP,A)
【文献】特開2013-255585(JP,A)
【文献】特表2016-537136(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/13
G01N 29/06
G01N 29/24
G01N 29/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体内の光吸収体から発生する光音響波を検出し、当該光音響波に基づいて前記光吸収体を画像化する光音響画像化装置であって、
前記被検体の内部で吸収される波長のパルス光を照射する光照射部と、
前記被検体の皮膚表面に貼着又は塗布され、全体として可撓性を有し、前記パルス光を透過させると同時に外表面が光反射する薄膜と、
前記薄膜の外表面に対して多方向から複数の可視光を同時に照射する多方向光照射部と、
前記薄膜の外表面から得られる複数の反射光の回折及び/又は干渉に基づいて、前記光吸収体から発生する光音響波が前記薄膜の裏内面に衝突して当該薄膜を微小振動させる状態を検出する微小振動検出部と、
前記微小振動検出部による前記薄膜の振動状態に基づいて、前記光吸収体の形状を画像化する形状画像変換部と
を備えることを特徴とする光音響画像化装置。
【請求項2】
前記微小振動検出部は、前記光吸収体からの光音響波の発生時点と当該光音響波の前記薄膜の内裏面への到達時間との時間差タイミングに基づいて、前記光音響波が前記薄膜の内裏面に多重反射して発生する音じょう乱を除去する
ことを特徴とする請求項1に記載の光音響画像化装置。
【請求項3】
前記薄膜は、内裏面に皮膚表面との間の空気層をなくすための膜コーティングが施されるとともに、外表面に規則的又は非規則的な凹凸模様が施されている
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の光音響画像化装置。
【請求項4】
前記形状画像変換部は、前記多方向光照射部から照射される複数の可視光が前記反射性薄膜の外表面にて反射する反射光群をテストパターンとして予め記憶しておき、当該テストパターンに基づいて、前記薄膜の凹凸模様に応じた画質変動を補正するようにキャリブレーションする
ことを特徴とする請求項3に記載の光音響画像化装置。
【請求項5】
被検体内の光吸収体から発生する光音響波を検出し、当該光音響波に基づいて前記光吸収体を画像化する光音響画像化方法であって、
前記被検体の内部で吸収される波長のパルス光を照射する第1ステップと、
前記被検体の皮膚表面に貼着又は塗布され、全体として弾性力を有し、前記パルス光を透過させると同時に外表面が光反射する薄膜の外表面に対して、多方向から複数の可視光を同時に照射する第2ステップと、
前記薄膜の外表面から得られる複数の反射光の回折及び/又は干渉に基づいて、前記光吸収体から発生する光音響波が前記薄膜の裏内面に衝突して当該薄膜を微小振動させる状態を検出する第3ステップと、
検出された前記薄膜の振動状態に基づいて、前記光吸収体の形状を画像化する第4ステップと
を備えることを特徴とする光音響画像化方法。
【請求項6】
前記第3ステップは、前記光吸収体からの光音響波の発生時点と当該光音響波の前記薄膜の内裏面への到達時間との時間差タイミングに基づいて、前記光音響波が前記薄膜の内裏面に多重反射して発生する音じょう乱を除去する
ことを特徴とする請求項5に記載の光音響画像化方法。
【請求項7】
前記薄膜は、内裏面に皮膚表面との間の空気層をなくすための膜コーティングが施されるとともに、外表面に規則的又は非規則的な凹凸模様が施されている
ことを特徴とする請求項5又は6に記載の光音響画像化方法。
【請求項8】
前記第4ステップは、前記第2ステップにおいて照射される複数の可視光が前記反射性薄膜の外表面にて反射する反射光群をテストパターンとして予め記憶しておき、当該テストパターンに基づいて、前記薄膜の凹凸模様に応じた画質変動を補正するようにキャリブレーションする
ことを特徴とする請求項7に記載の光音響画像化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体に光照射することによって当該被検体内の光吸収体から発生する光音響波を検出して画像化する光音響イメージング技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光音響イメージング技術や光音響トモグラフィ技術として、被検体にパルス光を照射するLED光源部と被検体内の対象物により発生する超音波としての音響波を検出する超音波検出器とを備えた光音響画像化装置が提案されている(引用文献1参照)。
【0003】
また、レーザー源を体の表面に沿って音速でスキャンして複数の音響じょう乱を伝達して伝搬光音響波を生じさせ、当該伝搬光音響波のコヒーレント加算による合成波の後方散乱により生成された振動が、患者の表面において検出されて、患者内の構造の超音波画像を生成する超音波画像生成システムも提案されている(引用文献2参照)。
【0004】
さらに、電磁波の骨格振動を光学干渉法、光コヒーレンストモグラフィ又はレーザードップラー振動計等の光検出方法を用いて検出する手法も提案されている(引用文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015‐29550号公報
【文献】特開2016‐537136号公報
【文献】国際公開第2013/064740号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、引用文献1においては、光音響イメージング技術に関してLED光を被検体に非接触で照射するが、光散乱による画像化を超音波プローブにより計測するため、皮膚に直接プローブを接触させる必要がある。
【0007】
また引用文献2では、皮膚の振動を直接レーザー振動計により計測する手法であるため、皮膚表面には産毛や黒子、吹き出物、傷など存在する場合には微細レベルでの計測は非常に困難になる。
【0008】
さらに引用文献3では、人体組織から超音波を発生させる光音響効果のために、レーザー又はパルスレーザー光源による光照射を行っている点で異なり、骨格振動の検出も、少なくとも光干渉計、光干渉断層撮影装置及びレーザードップラー振動計のいずれかであるため、上述の引用文献2と同様の問題点が存在したままである。
【0009】
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、被検体内部についての高解像度の画像を非接触かつリアルタイムで取得することができる光音響画像化装置及び光音響画像化方法を提案しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かかる課題を解決するため本発明においては、被検体内の光吸収体から発生する光音響波を検出し、当該光音響波に基づいて光吸収体を画像化する光音響画像化装置であって、被検体の内部で吸収される波長のパルス光を照射する光照射部と、被検体の皮膚表面に貼着又は塗布され、全体として可撓性を有し、パルス光を透過させると同時に外表面が光反射する薄膜と、薄膜の外表面に対して多方向から複数の可視光を同時に照射する多方向光照射部と、薄膜の外表面から得られる複数の反射光の回折及び/又は干渉に基づいて、光吸収体から発生する光音響波が薄膜の裏内面に衝突して当該薄膜を微小振動させる状態を検出する微小振動検出部と、微小振動検出部による薄膜の振動状態に基づいて、光吸収体の形状を画像化する形状画像変換部とを備えるようにした。
【0011】
この光音響画像化装置では、被検体内の光吸収体から発生する光音響波により微小振動される薄膜を、外部から光照射してその反射光の回折や干渉を測定することにより、高解像度の画像を非接触かつリアルタイムで取得することができる。
【0012】
また本発明においては、微小振動検出部は、光吸収体からの光音響波の発生時点と当該光音響波の薄膜の内裏面への到達時間との時間差タイミングに基づいて、光音響波が薄膜の内裏面に多重反射して発生する音じょう乱を除去するようにした。この結果、光音響画像化装置では、音じょう乱を除去した分だけ被検体内の光吸収体の形状をより正確に画像化することができる。
【0013】
さらに本発明においては、薄膜は、内裏面に皮膚表面との間の空気層をなくすための膜コーティングが施されるとともに、外表面に規則的又は非規則的な凹凸模様が施されているようにした。この結果、光音響画像化装置では、光音響波が被検体の皮膚と薄膜との間の空気層にて減衰することなく直接薄膜に到達するため、当該光音響波を正確に薄膜の微小振動に変換することができる。そして薄膜の微小振動を規則的又は非規則的な凹凸模様に反映させることにより、外部からの光照射の反射光の回折や干渉をより測定し易くなる利点がある。
【0014】
さらに本発明においては、形状画像変換部は、多方向光照射部から照射される複数の可視光が反射性薄膜の外表面にて反射する反射光群をテストパターンとして予め記憶しておき、当該テストパターンに基づいて、薄膜の凹凸模様に応じた画質変動を補正するようにキャリブレーションするようにした。この結果、光音響画像化装置では、薄膜の凹凸模様が規則的又は非規則的に関わらずどのように形成されていても、当該薄膜の微小振動に基づく高解像度の画像を得ることができる。
【0015】
さらに本発明においては、被検体内の光吸収体から発生する光音響波を検出し、当該光音響波に基づいて光吸収体を画像化する光音響画像化方法であって、被検体の内部で吸収される波長のパルス光を照射する第1ステップと、被検体の皮膚表面に貼着又は塗布され、全体として弾性力を有し、パルス光を透過させると同時に外表面が光反射する薄膜の外表面に対して、多方向から複数の可視光を同時に照射する第2ステップと、薄膜の外表面から得られる複数の反射光の回折及び/又は干渉に基づいて、光吸収体から発生する光音響波が薄膜の裏内面に衝突して当該薄膜を微小振動させる状態を検出する第3ステップと、検出された薄膜の振動状態に基づいて、光吸収体の形状を画像化する第4ステップとを備えるようにした。
【0016】
この光音響画像化方法では、被検体内の光吸収体から発生する光音響波により微小振動される薄膜を、外部から光照射してその反射光の回折や干渉を測定することにより、高解像度の画像を非接触かつリアルタイムで取得することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、被検体内部についての高解像度の画像を非接触かつリアルタイムで取得することが可能な光音響画像化装置及び光音響画像化方法を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本実施の形態による光音響画像化装置の構成を示す外観斜視図である。
図2】本実施の形態による光音響画像化装置の内部構成を示すブロック図である。
図3】被検体の対象物へ光学特定薄膜を介してLED光を照射する状態を表す略線図である。
図4】被検体内から発生する光音響波による光学特性薄膜の微小振動状態を表す略線図である。
図5】(A)及び(B)は、被検体が人間の指の場合における光音響画像化結果を表すイメージ図及び実測図である。
図6】(A)及び(B)は、被検体が人間の手首の場合における光音響画像化結果を表すイメージ図及び実測図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下図面について、本発明の一実施の形態を詳述する。
(1)本実施の形態による光音響画像化装置の構成
図1は、本実施の形態による光音響画像化装置1の略線的外観図である。この光音響画像化装置1は、被検体P内の対象物(光吸収体)に相当する皮膚表面に所定の光学特性薄膜2を貼り付けておき、当該光学特性薄膜2を介して光照射した対象物から光音響波を発生させるとともに当該光音響波により微小振動させた光学特性薄膜2の振動状態を光検知するプローブ部(光音響波検出部)3と、プローブ部3により検知された信号を処理して画像化する装置本体部4とがケーブル5を介して接続された構成を有する。
【0020】
操作者がプローブ部3を把持したまま被検体(人体の体表など)Pの表面上に非接触に配置し、光学特性薄膜2を介して被検体Pの対象物(血管、神経組織、腫瘍等)に光照射すると、当該対象物の光吸収により生体内特定分子が励起状態となり、その励起状態から定常状態に戻る際に熱が発生する。その周辺の温度差(熱膨張)により発生する分子の光音響波が対象物から皮膚に到達した際、当該皮膚の表面に接触する光学特性薄膜2を振動させる。
【0021】
図2は光音響画像化装置1の内部構成を示す。プローブ部3は、複数の発光ダイオード素子(図示せず)が直列接続して配列された第1光源部(光照射部)10と、光学特性薄膜2に対して多方向から可視光を照射する複数の可視発光ダイード素子(図示せず)からなる第2光源部(多方向光照射部)11と、光学特性薄膜2の微小振動を検出する振動検出部(微小振動検出部)12とを有する。
【0022】
第1光源部10は、第1光源駆動部20から供給される電流に応じて複数の発光ダイオード素子から赤外域の波長(例えば約850〔nm〕の波長)をもつパルス光L1をそれぞれ放出することにより、当該各パルス光L1を被検体Pに照射する。なお、被検体Pの対象物の種類(ヘモグロビン、血管、神経組織、腫瘍等の光吸収体)に応じて、パルス光L1の波長をあらかじめ設定しておくことにより、所望の対象物のみを画像化させることができるようになされている。
【0023】
そして図3に示すように、プローブ部3の第1光源部10から被検体Pに照射されたパルス光L1は、被検体P内の対象物(光吸収体)Qにより吸収される。対象物Qが、パルス光L1の照射強度(吸収量)に応じて、膨張および収縮する(膨張した大きさから元の大きさに戻る)ことにより、対象物Qから光音響波WAが生じる。
【0024】
図4に示すように、第2光源部11は、第2光源駆動部21から供給される電流に応じて複数の可視発光ダイオード素子から光学特性薄膜2に対して多方向から可視光L2を光照射することにより、微小振動している当該光学特性薄膜2から反射光L3を生じさせる。振動検出部12は、光学特性薄膜2の外表面から得られる複数の反射光L3の回折及び/又は干渉に基づいて、対象物(光吸収体)Qから発生する光音響波WAが光学特性薄膜2の裏内面に衝突して当該光学特性薄膜2を微小振動させる状態を検出する。
【0025】
装置本体部4は、第1光源駆動部20及び第2光源駆動部21をそれぞれ制御する制御部30と画像処理部31とを有する(これらを併せて形状画像変換部という。)。画像処理部31は、制御部30から送出されるサンプリングトリガ信号S1と、プローブ部3の振動検出部12から得られる検出結果を表す検出信号S2とに基づいて、対象物に相当する解像度の画像(音響波に基づく断層画像)をリアルタイムで取得して、液晶パネル等からなる画像表示部32に画像表示させる。
【0026】
また、制御部30は、第1光源駆動部20及び第2光源駆動部21にそれぞれ異なるトリガ信号を送出して光照射を駆動制御するようになされている。第1光源駆動部20は、外部電源(図示せず)から供給される電力から直流電流を生成し、制御部30からのパルス状のトリガ信号S3に基づいて、例えばFET(Field Effect Transistor)からなるスイッチをオンまたはオフに切り替えることにより、複数の発光ダイオード素子から所定の幅及び周波数のパルス光をそれぞれ発光する。
【0027】
第2光源駆動部21は、外部電源(図示せず)から供給される電力から直流電流を生成し、制御部30からのトリガ信号S4に基づいて、複数の可視発光ダイード素子から定常的な可視光L2を多方向から発光させる。基本的に第2光源駆動部21は、第1光源駆動部20の駆動時にのみ駆動するように制御部30が制御する。
【0028】
なお、装置本体部4において制御部30は、対象物(光吸収体)からの光音響波の発生時点と当該光音響波の光学特性薄膜2の内裏面への到達時間との時間差タイミングを振動検出部12に測定させることにより、当該時間差タイミングに基づいて、光音響波が光学特性薄膜2の内裏面に多重反射して発生する音じょう乱を除去することができる。
【0029】
特にLED光は周波数帯域が20〔MHz〕のパルス光であるため、対象物(光吸収体)からの第1波の発生時点と光学特性薄膜が振動する時点との時間差タイミングを測定すれば、音じょう乱を除去することができる。
【0030】
(2)光学特性薄膜の構成
この光学特性薄膜2は、被検体Pの皮膚表面に貼着又は塗布され、全体として可撓性を有するポリマー材料から成型され、LED光を透過させると同時に外表面が光反射する光透過制御フィルムである。
【0031】
この光学特性薄膜2の材料として、ポリエチレンテレフタレート(PET)や、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル等のアクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル、アクリルスチレン共重合体等の透過性をもつ合成樹脂を用いることができる。
【0032】
実際に、光学特性薄膜2は、第1光源部10及び2光源部11から出射された光のうち所定の角度で入射された光を透過するとともに、入射した光のうち当該角度以外の角度で入射された光を反射するように構成されている。本実施形態の場合、光学特性薄膜2は、第1光源部10から出射されたパルス光のみ透過させる一方、第2光源部11から出射された可視光は反射するように構成されている。
【0033】
具体的に光学特性薄膜2は、光の入射面は平坦に成形され、光の出射面側にはプリズムアレイが配列されている。光学特性薄膜2の光学的効果は、平坦な入射面により低屈折側から光屈折側へと光線を導く際の光屈折作用と、皮膚表面に当接する出射面(プリズムアレイ)での屈折及び全反射による光再帰効果が相俟って得られる。なお、プリズムアレイ構造に代えて、レンズを配したレンチキュラーレンズや断面が非球面形状のシリンドリカルレンズなどを適用しても良い。
【0034】
さらに光学特性薄膜2において、光再帰効果を得るための反射光は、多方向からの入射光に対するものであるため、光の干渉が発生し、当該受光した干渉に基づいて、当該光学特性薄膜2の裏表面に衝突して薄膜自体を微小振動させる状態が検出可能となる。
【0035】
さらに光学特性薄膜2においては、内裏面に皮膚表面との間に油膜や透明ジェル等の膜コーティングを施すことにより、対象物から皮膚に到達した光音響波が空気層で減衰されることなく、直接的に光学特性薄膜2を振動させることができ、結果的に高い精度で対象物の形状を画像化することが可能となる。
【0036】
実際に図5(A)に示すような被検体Pが人間の指で対象物が血管の場合について、光音響画像化装置1を用いた画像化結果である画像は図5(B)のように示される。同様に、図6(A)に示すような被検体Pが人間の手首で対象物が血管の場合について、光音響画像化装置1を用いた画像化結果である画像は図6(B)のように示される。
【0037】
(3)他の実施の形態
なお本実施の形態においては、光学特性薄膜2の表面を平坦に成形した場合について述べたが、本発明はこれに限らず、光学特性薄膜の外表面に規則的又は非規則的な凹凸模様やメッシュ形状を形成するようにしても良い。この場合、光学特性薄膜は、多方向からの入射光に対する反射光が回折するため、当該受光した回折光に基づいて、当該光学特性薄膜の裏表面に衝突して薄膜自体を微小振動させる状態が検出可能となる。さらに、この回折光を本実施の形態における複数の反射光による干渉光と組み合わせて、光学特性薄膜の微小振動を検知するようにしても良い。
【0038】
また本実施の形態においては、第2光源部11による複数の反射光の回折及び/又は干渉に基づいて、光学特性薄膜2の微小振動をそのまま検知するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、光学特性薄膜の検知精度を高める事前策をとるようにしてもよい。
【0039】
例えば、装置本体部4における制御部30は、プローブ部3の第2光源部11から照射される複数の可視光が光学特性薄膜2の外表面にて反射する反射光群をテストパターンとして予め記憶しておき、当該テストパターンに基づいて、光学特性薄膜2の外表面形状(凹凸模様やメッシュ形状)に応じた画質変動を補正するようにキャリブレーションする。この結果、被検体Pの皮膚表面に可撓性(弾力性)のある光学特性薄膜2を貼着又は塗布した場合に、光学特性薄膜の外表面形状がどのような状態で皮膚表面に付いていても、事前にキャリブレーションしておけば、対象物の形状を画質化する際に画質変動を補正することが可能となる。
【0040】
以上、幾つかの実施の形態を説明したが、これらは本発明の説明のための例示であって、本発明の範囲をこれらの実施の形態にのみ限定する趣旨ではない。本発明は、他の種々の形態でも実行することが可能である。
【符号の説明】
【0041】
1……光音響画像化装置、2……光学特性薄膜、3……プローブ部、4……装置本体部、5……ケーブル、10……第1光源部、11……第2光源部、12……振動検出部、20……第1光源駆動部、21……第2光源駆動部、30……制御部、31……画像処理部、32……画像表示部、P……被検体。
図1
図2
図3
図4
図5
図6