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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-22
(45)【発行日】2022-03-30
(54)【発明の名称】複合材料の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 3/12 20060101AFI20220323BHJP
   C08L 23/26 20060101ALI20220323BHJP
   C08L 1/02 20060101ALI20220323BHJP
【FI】
C08J3/12 CES
C08L23/26 ZNM
C08L1/02
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2018108251
(22)【出願日】2018-06-06
(65)【公開番号】P2019210388
(43)【公開日】2019-12-12
【審査請求日】2021-04-28
(73)【特許権者】
【識別番号】504145364
【氏名又は名称】国立大学法人群馬大学
(73)【特許権者】
【識別番号】303062233
【氏名又は名称】東邦工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】黒田 真一
(72)【発明者】
【氏名】大橋 弘之
【審査官】大村 博一
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-128717(JP,A)
【文献】特開2017-122177(JP,A)
【文献】国際公開第2017/004415(WO,A1)
【文献】特開2017-199976(JP,A)
【文献】特開2017-019889(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 3/00-3/28;99/00
C08K 3/00-13/08
C08L 1/00-101/14
C08G 81/00-85/00
C08B 1/00-37/18
D06M 13/00-15/715
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マレイン酸変性ポリプロピレン粒子と、セルロースナノクリスタルとを、ジェットミルで処理して、該マレイン酸変性ポリプロピレン粒子の表面にセルロースナノクリスタルを付着させる工程と、
表面にセルロースナノクリスタルが付着しているマレイン酸変性ポリプロピレン粒子を空気中で加熱することにより、該セルロースナノクリスタルと該マレイン酸変性ポリプロピレン粒子との間に化学結合を形成させ、該セルロースナノクリスタルと該マレイン酸変性ポリプロピレン粒子とからなる複合材料を形成する工程とを含むことを特徴とする複合材料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合材料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、セルロースナノクリスタル等のナノファイバーと高分子との複合材料を製造する方法として、溶融した高分子にフィラーとなるナノファイバーを添加して混練する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6256644号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、溶融した高分子にセルロースナノクリスタル等のナノファイバーを添加して混練しても該ナノファイバー同士が凝集してしまい、該ナノファイバーを溶融した高分子中に均一に分散させることができないという不都合がある。
【0005】
本発明は、かかる不都合を解消して、セルロースナノクリスタルを含み、溶融した高分子中に均一に分散させることができる複合材料の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を達成するために、本発明の複合材料の製造方法は、マレイン酸変性ポリプロピレン粒子と、セルロースナノクリスタルとを、ジェットミルで処理して、該マレイン酸変性ポリプロピレン粒子の表面にセルロースナノクリスタルを付着させる工程と、表面にセルロースナノクリスタルが付着しているマレイン酸変性ポリプロピレン粒子を空気中で加熱することにより、該セルロースナノクリスタルと該マレイン酸変性ポリプロピレン粒子との間に化学結合を形成させ、該セルロースナノクリスタルと該マレイン酸変性ポリプロピレン粒子とからなる複合材料を形成する工程とを含むことを特徴とする。
【0007】
本発明の製造方法では、まず、マレイン酸変性ポリプロピレン粒子と、セルロースナノクリスタルとを、ジェットミルで処理する。前記マレイン酸変性ポリプロピレン粒子は例えば平均粒子径1μm未満のものを用いることができる。このようにすると、ジェットミルの気流によりセルロースナノクリスタルを凝集させることなく分散させることができ、前記マレイン酸変性ポリプロピレン粒子の表面にセルロースナノクリスタルを均一に付着させることができる。
【0008】
本発明の製造方法では、次に、表面にセルロースナノクリスタルが付着しているマレイン酸変性ポリプロピレン粒子を空気中で加熱する。このようにすると、前記マレイン酸変性ポリプロピレン粒子の無水マレイン酸基が空気中の水分により加水分解してカルボキシル基を生成し、前記セルロースナノクリスタル表面に存在する水酸基との間でエステル化反応を起こし、両者の間に化学結合が形成されることにより、セルロースナノクリスタルにポリプロピレンがグラフト修飾される。
【0009】
この結果、前記セルロースナノクリスタルが化学結合により前記マレイン酸変性ポリプロピレン粒子に結合している複合材料を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。
【0011】
本実施形態の複合材料の製造方法では、まず、原料としての平均粒子径1μm未満のマレイン酸変性ポリプロピレン粒子と、セルロースナノクリスタルとを準備する。前記セルロースナノクリスタルは、例えば、木材セルロースを硫酸で処理することにより得ることができる結晶性のナノセルロースであり、5~50nmの範囲の幅と、100~200nmの範囲の長さとを備える針状物質である。
【0012】
次に、前記マレイン酸変性ポリプロピレン粒子と、セルロースナノクリスタルとを、例えば、1:1の質量比でジェットミル中に投入する。このようにすると、ジェットミルの気流による衝撃力が前記セルロースナノクリスタルに作用し、該セルロースナノクリスタルが凝集することなく、前記マレイン酸変性ポリプロピレン粒子の表面に均一に付着する。前記ジェットミルとしては、例えば、株式会社Isaac製の装置を用いることが好ましい。
【0013】
次に、表面にセルロースナノクリスタルが付着しているマレイン酸変性ポリプロピレン粒子を、例えば50~100%の範囲の相対湿度の空気中、60~100℃の範囲の温度で、30~50分間加熱する。このようにすると、前記マレイン酸変性ポリプロピレン粒子の無水マレイン酸基が空気中の水分により加水分解してカルボキシル基を生成し、前記セルロースナノクリスタル表面に存在する水酸基との間でエステル化反応を起こし、両者の間に化学結合が形成されることにより、セルロースナノクリスタルにポリプロピレンがグラフト修飾される。
【0014】
この結果、前記セルロースナノクリスタルが化学結合により前記マレイン酸変性ポリプロピレン粒子に結合している複合材料を得ることができる。
【0015】
前記複合材料によれば、前記セルロースナノクリスタルが化学結合により前記マレイン酸変性ポリプロピレン粒子に結合しているので、ポリプロピレン等の溶融樹脂中に添加しても、該セルロースナノクリスタル同士が凝集することを防止することができる。