(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-22
(45)【発行日】2022-03-30
(54)【発明の名称】草刈り機
(51)【国際特許分類】
A01D 34/66 20060101AFI20220323BHJP
A01B 73/06 20060101ALI20220323BHJP
【FI】
A01D34/66 A
A01B73/06
(21)【出願番号】P 2017161264
(22)【出願日】2017-08-24
【審査請求日】2020-07-03
(73)【特許権者】
【識別番号】390010836
【氏名又は名称】小橋工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】特許業務法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】宝蔵 伸行
(72)【発明者】
【氏名】垣見 明彦
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 忠治
(72)【発明者】
【氏名】有村 洋三
【審査官】宮本 昭彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-102608(JP,A)
【文献】特開2010-187689(JP,A)
【文献】特開2010-011796(JP,A)
【文献】米国特許第08713904(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01D 34/00
A01D 34/412 - 24/90
A01B 73/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体から動力を受けて草刈り作業を行う作業部と、
前記作業部を、前記走行機体の進行方向に対して側方にオフセットした位置に移動可能なオフセット機構部と、
前記走行機体からの動力を前記作業部に伝達する動力伝達部と、
前記作業部と前記オフセット機構部との間の旋回機構部と、
を備え、
前記作業部は、前記旋回機構部を中心に
旋回することで、前記作業部の前進作業状態と後進作業状態とを切り替え可能であり、
前記前進作業状態及び前記後進作業状態の各々において、前記作業部は、前記走行機体の進行方向に対して側方にオフセットした位置に移動可能である草刈り機。
【請求項2】
前記作業部は、前記走行機体の進行方向に交差する第1方向に長手を有し、
前記旋回機構部は、前記第1方向の端部に設けられている、請求項
1に記載の草刈り機。
【請求項3】
前記動力伝達部は、一対のスプロケットの間に巻き掛けられたローラーチェーンを含み、
前記作業部は、前記一対のスプロケットのうち前記作業部側の前記スプロケットから動力を受けて草刈り作業を行う、請求項
2に記載の草刈り機。
【請求項4】
前記作業部は、前記走行機体の進行方向を軸としたとき、前記軸を中心として回動可能である、請求項1乃至
3のいずれか一項に記載の草刈り機。
【請求項5】
前記オフセット機構部のオフセット量および前記作業部の前記旋回機構部に対する旋回角度を自動調整し、作業場の隅部の草刈り作業を行うことを前記草刈り機に実行させるプログラムを有する、請求項1乃至
4のいずれか一項に記載の草刈り機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は草刈り機に関する。特に、走行機体の後部に装着され、走行機体の側方において草刈り作業を行うオフセットタイプの草刈り機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、農道や荒れ地の雑草を除去するため草刈り作業を行う農作業機として草刈り機が知られている。一般的に、草刈り機は、トラクタ等の走行機体によって作業部を牽引することにより草刈り作業を進める。近年は、草刈り作業を行う作業部が走行機体の側方に移動可能となっていて、走行機体の側方において草刈り作業を行うオフセットタイプの草刈り機が知られている(特許文献1~3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-44884号公報
【文献】特開2012-39941号公報
【文献】特開2010-11796号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1及び2に記載された草刈り機は、いずれも走行機体と作業部とをユニバーサルジョイントを用いて連結することにより走行機体の動力を作業部に伝達している。作業部に伝達された動力は、作業ロータの爪軸を回転させるための動力等に利用される。
【0005】
しかしながら、ユニバーサルジョイントの折れ角には制限があるため、これに伴い、作業部の設計にも様々な制限が生じる。例えば、ユニバーサルジョイントに関し、一般的に、トルクを一定とした場合、ユニバーサルジョイントの折れ角が大きくなるにつれて寿命が短くなることが知られている。さらに、このような制限を超えた折れ角で駆動すると、ジョイントが破損する場合がある。特に、特許文献1及び2では、ユニバーサルジョイントの駆動力が作業部に直入されているため、作業機体に対して作業部を水平に回動させることは困難である。
【0006】
また、ユニバーサルジョイントの代わりに油圧ポンプ及び油圧モータを駆動力とした草刈り機が特許文献3に記載されている。特許文献3の草刈り機は、走行機体を前進又は後進させながら作業部をオフセットさせる位置はそれぞれ1カ所のみであるので、走行機体に対する作業部のオフセット位置を自由に調整することができない。さらに、油圧ポンプ、油圧モータを採用すると、部品点数が増加し、構造が複雑になるため、作動油の管理(漏れ対策や汚染対策)にかかる負担が大きくなる。
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、走行機体を前進又は後進させながら作業部が草刈り作業を行うことができる草刈り機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態における草刈り機は、走行機体から動力を受けて草刈り作業を行う作業部と、前記作業部を、前記走行機体の進行方向に対して側方にオフセットした位置に移動可能なオフセット機構部と、前記走行機体からの動力を前記作業部に伝達する動力伝達部と、前記作業部と前記オフセット機構部との間の旋回機構部と、を備え、前記作業部は、前記旋回機構部を中心に180度以上旋回可能である。
【0009】
前記作業部が旋回することで、前記作業部の前進作業状態と後進作業状態とを切り替え可能であり、前記前進作業状態及び前記後進作業状態の各々において、前記作業部は、前記走行機体の進行方向に対して側方にオフセットした位置に移動可能であってもよい。
【0010】
前記作業部は、前記走行機体の進行方向に交差する第1方向に長手を有し、前記旋回機構部は、前記第1方向の端部に設けられていてもよい。
【0011】
前記動力伝達部は、一対のスプロケットの間に巻き掛けられたローラーチェーンを含み、前記作業部は、前記一対のスプロケットのうち前記作業部側の前記スプロケットから動力を受けて草刈り作業を行ってもよい。
【0012】
前記作業部は、前記走行機体の進行方向を軸としたとき、前記軸を中心として回動可能であってもよい。
【0013】
前記オフセット機構部のオフセット量および前記作業部の前記旋回機構部に対する旋回角度を自動調整し、作業場の隅部の草刈り作業を行うことを前記草刈り機に実行させるプログラムを有してもよい。
【発明の効果】
【0014】
上述した本発明の一実施形態における草刈り機は、走行機体を前進又は後進させながら作業部が草刈り作業を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態に係る草刈り機の構成を示す平面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る草刈り機の構成を示す側面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る草刈り機の構成を示す背面図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る草刈り機の動力伝達部の構成を示す平面図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る草刈り機の旋回機構部の構成を示す拡大平面図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係る草刈り機の旋回機構部の構成を示す拡大側面図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係る草刈り機において、作業部を旋回させたときの旋回機構部の状態を示す拡大平面図である。
【
図8】本発明の一実施形態に係る草刈り機において、作業部の前進作業状態及び後進作業状態を示す拡大側面図である。
【
図9】本発明の一実施形態に係る草刈り機において、収納状態で作業部の前進作業状態及び後進作業状態を示す平面図である。
【
図10】本発明の一実施形態に係る草刈り機において、オフセット状態における作業部の前進作業状態及び後進作業状態を示す平面図である。
【
図11】本発明の一実施形態に係る草刈り機の作業部が下方(時計回り)に回動した状態を示す背面図である。
【
図12】本発明の一実施形態に係る草刈り機の作業部が上方(反時計回り)に回動した状態を示す背面図である。
【
図13】本発明の一実施形態に係る草刈り機の構成を示す平面図である。
【
図14】本発明の一実施形態に係る草刈り機において、左側にオフセットした状態における作業部の前進作業状態及び後進作業状態を示す平面図である。
【
図15】本発明の一実施形態に係る草刈り機を用いた作業場の隅部における草刈り作業の隅部自動制御モードを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の草刈り機の実施形態について説明する。但し、本発明の草刈り機は多くの異なる態様で実施することが可能であり、以下に示す例の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、本実施の形態で参照する図面において、同一部分または同様な機能を有する部分には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0017】
また、説明の便宜上、上方、下方、前方、後方、右方、左方といった方向を示す語句を用いるが、重力の働く方向が下方であり、その逆が上方である。また、走行機体の進行する方向が前方であり、その逆が後方である。さらに、前方に向かって、右側が右方であり、左側が左方である。
【0018】
〈第1実施形態〉
[草刈り機の構成]
以下、第1実施形態における草刈り機100の概略の構成について、
図1~3を用いて説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る草刈り機の構成を示す平面図である。
図2は、本発明の一実施形態に係る草刈り機の構成を示す側面図である。
図3は、本発明の一実施形態に係る草刈り機の構成を示す背面図である。
【0019】
図1に示すように、本実施形態における草刈り機100は、装着部10、オフセット機構部20、動力伝達部30、作業部40、回動機構部50及び旋回機構部90を備えている。具体的には、草刈り機100は、トラクタ等の走行機体200に対して装着部10により連結される。装着部10と作業部40とは、オフセット機構部20及び動力伝達部30を介して連結される。これにより、走行機体200の走行に従って草刈り機100が牽引され、作業部40による草刈り作業が行われる。本実施形態の草刈り機100の作業部40は、旋回機構部90を中心に180度以上旋回可能であり、作業部40が前方を向いた前進作業状態(
図1及び
図10の(A)に示す状態)と、作業部40が後方を向いた後進作業状態(
図9の(B)及び
図10の(B)に示す状態)とを実現可能である。なお、作業部40とオフセット機構部20とは旋回機構部90で接続される。
【0020】
装着部10は、トラクタ等の走行機体200の2つの後方タイヤ210の間に設けられた三点リンク機構220(ただし、ここではロワーリンクのみ示す)に対して連結される。三点リンク機構220は、通常、トップリンク、リフトロッド及びロワーリンクで構成される。三点リンク機構220は、公知の機構であるため、ここでの説明は省略する。
【0021】
装着部10は、走行機体200の幅方向である左右方向に延びるヒッチフレーム11を備える。ヒッチフレーム11は、走行機体200の後部に設けられた三点リンク機構220に連結可能に構成されている。ヒッチフレーム11の中央下部にはギアボックス(図示せず)が設けられ、このギアボックスに走行機体200から動力を受ける入力軸(図示せず)が設けられている。入力軸には、走行機体200に設けられたPTO軸230からユニバーサルジョイント(図示せず)を介して動力が伝達される。
【0022】
オフセット機構部20は、作業部40のオフセット移動を行うための機構である。具体的には、オフセット機構部20は、作業部40を、走行機体200の進行方向に対して側方にオフセットした位置に移動させることができる。本実施形態のオフセット機構部20は、オフセットフレーム21(
図2参照)、リンクロッド22、支持フレーム23及び伸縮部材24を有する。なお、
図1では、オフセット機構部20は、走行機体200の前進方向に対して左側に傾いている。この状態を収納状態という。
【0023】
ここで、
図2に示すように、オフセットフレーム21は、中空状部材で構成される長尺のフレームであり、動力伝達部30の下方に配置される。オフセットフレーム21の一端は、ヒッチフレーム11に対して水平面上で回動可能に連結され、他端は、支持フレーム23に連結される。なお、オフセットフレーム21は、動力伝達部30に接続されており、動力伝達部30と共に移動する。
【0024】
図1に示すように、リンクロッド22は、筒状部材で構成される長尺の部材であり、オフセットフレーム21と同程度の長さを有する。リンクロッド22の一端は、ヒッチフレーム11に対して水平面上で回動可能に連結され、他端は、支持フレーム23に連結される。なお、ヒッチフレーム11上におけるオフセットフレーム21とリンクロッド22の連結位置は、異なる位置である。
【0025】
支持フレーム23は、筒状部材で構成され、オフセットフレーム21及びリンクロッド22に比べて短尺の部材であり、オフセットフレーム21とリンクロッド22とを相互に連結する部材である。支持フレーム23に対し、オフセットフレーム21及びリンクロッド22は、共に回動可能に連結される。
【0026】
ヒッチフレーム11に対するオフセットフレーム21及びリンクロッド22の回動中心、並びに支持フレーム23に対するオフセットフレーム21及びリンクロッド22の回動中心の4点を結ぶ形状は略平行四辺形である。
【0027】
以上の構成により、ヒッチフレーム11、オフセットフレーム21、リンクロッド22及び支持フレーム23は、それぞれの回動中心を頂点とする平行四辺形のリンク機構を構成する。このリンク機構により、オフセット機構部20は、走行機体200の進行方向に対する作業部40の角度を保持したまま、作業部40をオフセット移動させることができる。
【0028】
伸縮部材24は、オフセット機構部20の動力源(アクチュエータ)であり、例えばガスシリンダ、油圧シリンダ等で構成される。伸縮部材24の一端は、ヒッチフレーム11に連結され、他端は、オフセットフレーム21の後方側に連結される。伸縮部材24の伸縮により、オフセット機構部20が駆動され、作業部40のオフセット量(オフセット方向への移動量)を制御することができる。
【0029】
動力伝達部30は、装着部10の入力軸(図示せず)で受けた走行機体200からの動力を、作業部40側に伝達するための機構である。本実施形態の草刈り機100は、動力伝達部30として、従来のユニバーサルジョイントではなく、チェーン駆動機構としている。具体的には、動力伝達部30は、少なくとも駆動スプロケット31、従動スプロケット32及びローラーチェーン33を有する。ローラーチェーン33は、駆動スプロケット31及び従動スプロケット32に巻き掛けられた構成である。作業部40は、従動スプロケット32から動力を受けて草刈り作業を行う。
【0030】
駆動スプロケット31は、入力軸から受けた動力によって能動的に回転する歯車である。従動スプロケット32は、駆動スプロケット31からローラーチェーン33を介して伝達された回転動力によって受動的に回転する歯車である。ローラーチェーン33は、動力などを張力として伝達する機械要素である。動力伝達部30の構成についての詳細は、後述する。
【0031】
作業部40は、実際に草刈り作業を行う部位であり、作業ロータ41、ロータカバー42、2枚の側板43及び刈刃駆動部44を有する。作業部40は、刈刃駆動部44が、動力伝達部30より伝達された動力を受けて作業ロータ41を駆動することにより草刈り作業を行う。
【0032】
作業部40は旋回機構部90を介してオフセット機構部20に接続されている。
図2に示すように、旋回機構部90は、第1旋回軸91、第2旋回軸92及びロック機構93を有する。第1旋回軸91はオフセット機構部20に固定されている。具体的には、支持フレーム23は第1旋回軸91に固定されている。つまり、伸縮部材24の伸縮によって第1旋回軸91はオフセット機構部20の動作と共に移動する。第2旋回軸92は回動機構部50を介して作業部40に固定されている。ここで、「固定されている」とは、固定された2つの部材が接続部を中心に回動しないことを意味する。
【0033】
ロック機構93がロック解除状態の場合、第2旋回軸92が第1旋回軸91に対して旋回可能な状態になるため、作業部40がオフセット機構部20及び動力伝達部30に対して第1旋回軸91及び第2旋回軸92を中心に水平方向に旋回する。一方、ロック機構93がロック状態の場合、作業部40の旋回が規制されるため、走行機体200の進行方向に対する作業部40の角度が固定される。作業部40は動力伝達部30に対して180度以上旋回可能である。つまり、作業部40が旋回することで、作業部40の前進作業状態と後進作業状態とを切り替え可能である。なお、上記の作業部40の旋回動作については、後で詳しく説明する。
【0034】
なお、
図1に示すように、作業部40は、走行機体200の進行方向に交差する方向に長手を有する。本実施形態では、作業部40は、走行機体200の進行方向に直交する方向に長手を有している。旋回機構部90は、作業部40の長手方向において、作業部40の左端部に設けられている。換言すると、作業部40は、作業部40の長手方向の端部において動力伝達部30に接続されている。詳細は後述するが、このような構成を有していることで、後進作業状態にするために旋回機構部90を中心に作業部40を旋回すると、作業部40は走行機体200の進行方向に対して側方にオフセットした位置に移動する。
【0035】
上記のように、草刈り機100は、作業部40が動力伝達部30に対して180以上旋回可能な構成を備えることで、走行機体200の前進時及び後進時の両方で草刈り作業を行うことが可能である。
【0036】
作業ロータ41は、両端の側板43の間に配置された回転軸41a及び回転軸41aに放射状に複数設けられた刈刃41bを含む。回転軸41aは、走行機体200の進行方向に対して直交する水平方向に設けられる。作業ロータ41は、回転軸41aを回転させて刈刃41bにより雑草等を刈り取る。
【0037】
ロータカバー42は、作業ロータ41を覆って配置されるカバー部材である。ロータカバー42は、刈刃41bによって刈り取られた雑草、雑草に付着する土、作業面(地表面)に落ちている小石などの飛散を防止すると共に、刈り取られた雑草を再び刈刃41bに戻し、細かく破砕する効果を有する。
【0038】
側板43は、ボールベアリング等を介して回転軸41aを回転可能に支持すると共に、ロータカバー42を支持する。本実施形態では、左端の側板43に対して刈刃駆動部44が設けられている。
【0039】
刈刃駆動部44は、走行機体200から動力伝達部30を介して伝達された回転動力を、作業ロータ41の回転軸41aに伝達する。
図2に示すように、本実施形態の刈刃駆動部44は、駆動プーリー44a、従動プーリー44b、ベルト44c及びテンショナー44dを含む。ベルト44cは、駆動プーリー44aと従動プーリー44bとの間に巻き掛けられている。テンショナー44dは、駆動プーリー44a及び従動プーリー44bに巻き掛けられたベルト44cの内側に配置され、ベルト44cの内側から外側に向かってベルト44cへ張力を与えている。
【0040】
上述した構造の刈刃駆動部44では、駆動プーリー44aが動力伝達部30から伝達された回転動力により回転し、ベルト44cを介して従動プーリー44bへ回転動力を伝達する。従動プーリー44bは、駆動プーリー44aから与えられた回転動力を回転軸41aに伝達し、作業ロータ41を駆動する。
【0041】
回動機構部50は、走行機体200の進行方向を軸としたとき、その軸を中心として作業部40を回動させるための機構である。動力伝達部30から出力された動力は、第1旋回軸91及び第2旋回軸92の内側に設けられた第1伝達部51、回動機構部50及び第2伝達部52(
図3参照)を介して刈刃駆動部44へと伝達される。作業部40の回動については後述する。
【0042】
(動力伝達部の構成)
本実施形態の草刈り機100に用いる動力伝達部30の構成について
図4を用いて説明する。
図4は、本発明の一実施形態に係る草刈り機の動力伝達部の構成を示す平面図である。
【0043】
図4に示すように、駆動スプロケット31と従動スプロケット32との間には、ローラーチェーン33が巻き掛けられている。なお、ローラーチェーン33の一部は、点線で省略されている。ここで、ローラーチェーン33のうち、駆動スプロケット31から従動スプロケット32に向けて移動する部分は、ローラーチェーン33が駆動スプロケット31によって押されている部分である。説明の便宜上、本明細書では、この部分を弛み側33aと呼ぶ。また、ローラーチェーン33のうち、従動スプロケット32から駆動スプロケット31に向けて移動する部分は、駆動スプロケット31によって引っ張られている部分である。本明細書では、この部分を張り側33bと呼ぶ。
【0044】
本実施形態の動力伝達部30は、さらに、ローラーチェーン33の弛み側33aの外側に配置されたテンショナー34aと、ローラーチェーン33の弛み側33aの内側に配置されたテンショナー34bを有する。なお、ここでいう外側とは、環状をなすローラーチェーン33の外側(ローラーチェーン33で囲まれていない領域)であり、内側とはローラーチェーン33の内側(ローラーチェーン33で囲まれた領域)である。
【0045】
テンショナー34aは、弾性部材35の弾性力により引っ張られ、ローラーチェーン33に対して外側から内側に向けて張力を与える。本実施形態では、弾性部材35として引っ張りコイルバネを用いるが、他のバネ部材を用いてもよい。
【0046】
テンショナー34bは、テンショナー34aよりも上流側(すなわち、駆動スプロケット31に近い側)に配置される。テンショナー34bの位置は固定であり、ローラーチェーン33の軌道を固定するガイド部材として機能する。したがって、テンショナー34aがローラーチェーン33に対して外側から内側に向けて張力を与えることにより、相対的にテンショナー34bは、ローラーチェーン33に対して内側から外側に向けて張力を与えることになる。
【0047】
このように、本実施形態では、テンショナー34a及びテンショナー34bを用いてローラーチェーン33に対して張力を与えることにより、動力伝達時のローラーチェーン33の弛みを防止し、回転動力を効率的に伝達することができる。なお、テンショナー34a及び34bは必須の構成ではなく、省略することも可能であるし、テンショナー34aのみ設けた構成としてもよい。
【0048】
以上説明した駆動スプロケット31、従動スプロケット32、ローラーチェーン33、テンショナー34a、テンショナー34b及び弾性部材35は、チェーンケース36の内部に収納され、その外側はチェーンカバー37に覆われる。動力伝達部30は、オフセットフレーム21の上部に装着された支持部材(図示せず)の上に配置され、オフセットフレーム21と共に移動する。つまり、本実施形態では、動力伝達部30が、オフセット機構部20の一部を構成しているとも言える。
【0049】
図4に示したように、本実施形態の草刈り機100は、走行機体200から入力された動力をチェーン駆動方式で作動する動力伝達部30を用いて作業部40へと伝達する。つまり、従来の草刈り機とは異なり、装着部10と作業部40とをユニバーサルジョイントで連結する必要がない。そのため、作業部40のオフセット量をユニバーサルジョイントの折れ角に制限されることなく自由に制御することが可能である。
【0050】
また、動力伝達部としてユニバーサルジョイントを使用しない利点として、作業部のオフセット量に依存して動力伝達部の寿命が短くなるといった弊害がないため、耐久性の高い草刈り機を実現することが可能である。
【0051】
さらに、本実施形態の動力伝達部30は、駆動スプロケット31と従動スプロケット32との間の距離を自由に設定できるため、ジョイントの長さが邪魔になるなどの弊害もない。そのため、走行機体200から近い場所を作業する場合に作業の接近性が悪化するという弊害がなく、オフセットした位置での作業終了後、作業部40を走行機体200の後方に移動させて走行機体200を進行させると、全体のバランスが悪くなり、走行安定性が損なわれるといった弊害もない。
【0052】
なお、本実施形態のように動力伝達部30としてチェーン駆動方式を採用した場合、スプロケットの径の変更により容易に作業ロータ41の回転速度を変更することができるというメリットもある。つまり、スプロケットの交換という簡単な作業のみで作業ロータ41の回転速度を向上させたりトルクを向上させたりすることができる。
【0053】
以上のように、本実施形態における草刈り機100は、走行機体200から入力された動力をコンパクトな構造で作業部40に伝達することが可能である。
【0054】
(旋回機構部の構成)
作業部40が旋回するための旋回機構部90の詳細な構成について、
図5及び
図6を用いて説明する。
図5は、本発明の一実施形態に係る草刈り機の旋回機構部の構成を示す拡大平面図である。
図6は、本発明の一実施形態に係る草刈り機の旋回機構部の構成を示す拡大側面図である。
図5では、説明の便宜上、オフセット機構部20及び動力伝達部30は省略されている。
【0055】
図5及び
図6に示すように、旋回機構部90のロック機構93は第1位置決め部931、第2位置決め部933及び旋回固定部935を有する。第1位置決め部931及び第2位置決め部933は、第1旋回軸91に対してそれぞれ反対側に固定されている。第1位置決め部931及び第2位置決め部933は第1旋回軸91の外周から外側に向かって突出しており、ピン937が貫通可能な貫通孔が設けられている。旋回固定部935は、第2旋回軸92に対して固定されている。旋回固定部935は第2旋回軸92の外周から外側に向かって突出しており、ピン937が貫通可能な貫通孔が設けられている。ピン937によって旋回固定部935が第1位置決め部931又は第2位置決め部933に固定されていない状態において、旋回固定部935は第2旋回軸92と共に第1旋回軸91に対して旋回する。この旋回に伴い作業部40も旋回する。
【0056】
図5及び
図6は、旋回固定部935の貫通孔と第1位置決め部931の貫通孔とが重なる位置で、これらの貫通孔にピン937が挿入された状態を示す。この状態では、作業部40が前方を向いている。つまり、
図5及び
図6は作業部40の前進作業状態である。
【0057】
(旋回機構部の動作)
旋回機構部90の動作について、
図7~
図9を用いて説明する。
図7は、本発明の一実施形態に係る草刈り機において、作業部を旋回させたときの旋回機構部の状態を示す拡大平面図である。
図8は、本発明の一実施形態に係る草刈り機において、作業部の前進作業状態及び後進作業状態を示す拡大側面図である。
図9は、本発明の一実施形態に係る草刈り機において、収納状態で作業部の前進作業状態及び後進作業状態を示す平面図である。
【0058】
図7の(A)は、
図5と同様に作業部40が前方を向いた状態を示す図である。
図7の(C)は、作業部40が後方を向いた状態を示す図である。
図7の(B)は、作業部40が旋回中の状態を示す図である。
図7の(A)では、旋回固定部935の貫通孔と第1位置決め部931の貫通孔とが重なる位置で、これらの貫通孔にピン937が挿入されている。
図7の(C)では、旋回固定部935の貫通孔と第2位置決め部933の貫通孔とが重なる位置で、これらの貫通孔にピン937が挿入されている。
図7の(B)では、ピン937が上記のいずれの貫通孔にも挿入されていない。
【0059】
図8の(A)は、
図6と同様に作業部40が前方を向いた状態を示す図である。
図8の(A)に示す状態は、
図7の(A)に示す状態に対応する。
図8の(A)に示すように、ピン937が第1位置決め部931の貫通孔と旋回固定部935の貫通孔とを貫通し、両者の位置を固定している。
図8の(B)に示す状態は、
図7の(C)に示す状態に対応し、作業部40が後方を向いた状態を示す図である。
図8の(B)に示すように、ピン937が第2位置決め部933の貫通孔と旋回固定部935の貫通孔とを貫通し、両者の位置を固定している。
【0060】
図9の(A)は、
図1と同様に作業部40が前方を向いた状態を示す図である。
図9の(A)に示す状態は、
図7の(A)及び
図8の(A)に示す状態に対応する。旋回機構部90が
図7の(A)及び
図8の(A)の状態から
図7の(C)及び
図8の(B)の状態に変化することで、作業部40が旋回機構部90を中心に旋回し、
図9の(B)の状態になる。
図9の(B)は、作業部40が走行機体200の前進方向に対して左側にオフセットした位置において後方を向いた状態を示す。つまり、
図9の(A)の状態では、走行機体200を前進させながら、
図9の(B)の状態では、走行機体200を後進させながら作業部40が草刈り作業を行うことができる。
図9の(B)の状態を後進オフセット作業状態という。
【0061】
本実施形態では、旋回固定部935が固定される位置決め部は、第1位置決め部931及び第2位置決め部933の2つであるため、作業部40は前方又は後方のいずれかを向いた状態で固定される。ただし、旋回固定部935が固定される位置決め部を増やすことで、作業部40の向きを多段階で調整することができる。
【0062】
(オフセット機構部の動作)
作業部40のオフセット移動動作、つまりオフセット機構部20の動作について、
図10を用いて説明する。
図10は、本発明の一実施形態に係る草刈り機において、オフセット状態における作業部の前進作業状態及び後進作業状態を示す平面図である。なお、
図10では、オフセット機構部20は、走行機体200の前進方向に対して右側に傾いている。この状態をオフセット状態という。
図10の(A)は、オフセット状態において作業部40が前方を向いた状態を示す図である。
図10の(B)は、オフセット状態において作業部40が後方を向いた状態を示す図である。
【0063】
図10の(A)に示す状態は、
図7の(A)及び
図8の(A)に示す状態に対応する。旋回機構部90が
図7の(A)及び
図8の(A)の状態から
図7の(C)及び
図8の(B)の状態に変化することで、作業部40が旋回機構部90を中心に旋回し、
図10の(B)の状態になる。
図10の(A)の状態では、走行機体200を前進させながら、
図10の(B)の状態では、走行機体200を後進させながら作業部40が草刈り作業を行うことができる。
図10の(A)では、作業部40は走行機体200の進行方向に対して側方にオフセットした位置にある。
図10の(A)の状態を前進オフセット作業状態という。なお、
図10の(B)では、作業部40が後方を向いているため、この状態で走行機体200を後進させることで、走行機体200の後方に位置する領域の草刈り作業を行うことができる。
【0064】
図10に示すオフセット状態において、草刈り機100は動力伝達部30と作業部40とがほぼ直線上に程度まで作業部40をオフセット移動させることができる。つまり、
図10に示されるように、走行機体200の後方タイヤ210よりも大きく右方にオフセットした状態で草刈り作業を行うことが可能である。これは、前述のとおり、動力伝達部30としてチェーン駆動方式の機構を採用したため、従来のようなユニバーサルジョイントの折れ角による制限を受けないからである。
【0065】
さらに、本実施形態の草刈り機100は、作業部40がオフセット移動した状態で、走行機体200の進行方向を軸に回動する。
図11に示される草刈り機100は、作業部40が、オフセットした状態において、回動機構部50により下方(ここでは時計回り)に回動している。前述のとおり、回動機構部50は、走行機体200の進行方向を軸としたとき、作業部40をその軸を中心として回動させるための機構である。
図11に示される状態は、作業部40が走行機体200よりも下方に位置する傾斜面(法面)の草刈り作業を行う状態である。
【0066】
本実施形態の草刈り機100は、動力伝達部30にチェーン駆動方式を採用することにより耐久性を維持したままオフセット量を大きくすることができるため、下方に位置する法面に対して効率よく作業をすることが可能である。
【0067】
図12に示される草刈り機100は、作業部40が、オフセットした状態において、上方(ここでは反時計回り)に回動している。
図12に示される状態は、作業部40が走行機体200よりも上方に位置する傾斜面(法面)の草刈り作業を行う状態である。この場合においても、本実施形態の草刈り機100は、上方に位置する傾斜面(法面)に対して効率よく作業をすることが可能である。
【0068】
〈第2実施形態〉
第2実施形態に係る草刈り機100Aについて、
図13及び
図14を用いて説明する。
図13は、本発明の一実施形態に係る草刈り機の構成を示す平面図である。
図14は、本発明の一実施形態に係る草刈り機において、左側にオフセットした状態における作業部の前進作業状態及び後進作業状態を示す平面図である。第1実施形態の草刈り機100は、作業部40を手動で旋回させる旋回機構部90を有していた。一方で、第2実施形態の草刈り機100Aは、作業部40Aの旋回機構部90Aは旋回駆動部80Aの自動制御によって旋回する。
【0069】
(旋回機構部及び旋回駆動部の構成)
作業部40Aが旋回するための旋回機構部90A及び旋回駆動部80Aの詳細な構成について、
図13及び
図14を用いて説明する。第2実施形態に係る草刈り機100Aは、第1実施形態に係る草刈り機100の構成に加えて、さらに旋回駆動部80Aを有する。なお、
図13及び
図14において、旋回駆動部80Aは他の部材に比べて太線で示されている。
【0070】
旋回駆動部80Aは、旋回機構部リンクロッド81A、作業部リンクロッド82A、オフセットフレームリンクロッド83A及び伸縮部材84Aを有する。旋回機構部リンクロッド81Aは、接続部811Aにおいて伸縮部材84Aに対して回動可能に接続されている。さらに、旋回機構部リンクロッド81Aは、接続部813Aにおいて旋回機構部90Aに対して回動可能に接続されている。具体的には、旋回機構部リンクロッド81Aは、回動機構部50A(
図2参照)を介して旋回機構部90Aに接続されており、作業部40A及び回動機構部50Aとともに第1旋回軸91A及び第2旋回軸92A(いずれも
図2参照)を中心に水平方向に旋回する。
【0071】
作業部リンクロッド82Aは、接続部821Aにおいて作業部40Aに対して回動可能に接続されている。具体的には、作業部リンクロッド82Aは、作業部40Aのロータカバー42Aに接続されている。オフセットフレームリンクロッド83Aは、接続部831Aにおいてオフセットフレーム21A(
図2参照)に対して回動可能に接続されている。伸縮部材84Aは、接続部841Aにおいて作業部リンクロッド82A及びオフセットフレームリンクロッド83Aの両方に対して回動可能に接続されている。なお、作業部リンクロッド82A及びオフセットフレームリンクロッド83Aは、接続部841Aにおいて互いに回動可能に接続されている。
【0072】
伸縮部材84Aは、旋回駆動部80Aの動力源(アクチュエータ)であり、例えばガスシリンダ、油圧シリンダ等で構成される。なお、旋回機構部90Aには、実施形態1に係る旋回機構部90に備えられていた旋回固定部935に相当する部材は設けられていない。詳細は後述するが、旋回機構部90Aの旋回は伸縮部材84Aの伸縮によって制御される。つまり、作業部40Aの旋回角度は伸縮部材84Aの伸縮度合いによって決まる。したがって、作業部40Aの旋回角度は伸縮部材84Aによって自由に制御することができる。
【0073】
(旋回機構部及び旋回駆動部の動作)
旋回機構部90A及び旋回駆動部80Aの動作について、
図13及び
図14を用いて説明する。
図13に示す状態(前進作業状態)において伸縮部材84Aが縮むと、旋回機構部リンクロッド81A及び作業部40Aが旋回機構部90Aを中心に時計回りに回動する。作業部40Aの回動に伴い、作業部40Aに接続された作業部リンクロッド82Aも作業部40Aと同じ方向に回動する。作業部リンクロッド82Aの回動に伴い、接続部841Aも作業部40Aと同じ方向に回動する。このように回動する接続部841Aに引かれて伸縮部材84Aも作業部40Aと同じ方向に回動する。このようにして旋回駆動部80A全体が回動しながら作業部40Aが回動し、
図14の状態(後進作業状態)になる。
【0074】
なお、本実施形態の草刈り機100Aにおいて、旋回機構部90Aが実施形態1に係る旋回機構部90に備えられていた旋回固定部935に相当する部材を有していてもよい。
【0075】
以上のように、第2実施形態に係る草刈り機100Aが旋回駆動部80Aを備えることで、草刈り機100Aは自動制御によって前進作業状態と後進作業状態とを切り替えることができる。さらに、草刈り機100Aは、伸縮部材84Aによって作業部40Aの旋回角度を調整することができる。したがって、草刈り機100Aの作業状態に合わせて作業部40Aの旋回角度を自由に調整することができる。
【0076】
〈第3実施形態〉
第3実施形態に係る草刈り機100Bについて、
図15を用いて説明する。第3実施形態は、第2実施形態で説明した作業部40Aの旋回角度の自動制御を利用し、作業場300Bの隅部310Bにおける草刈り作業の隅部自動制御モードについて説明する。
図15は、本発明の一実施形態に係る草刈り機を用いた作業場の隅部における草刈り作業の隅部自動制御モードを示す平面図である。以下の説明において、オフセット機構20B及び動力伝達部30Bによって作業部40Bの走行機体200Bの進行方向に対する左右のオフセット量が制御される。また、旋回機構部90B及び旋回駆動部80Bによって作業部40Bの旋回角度が制御される。これらの制御は全て草刈り機100Bに備えられた制御部に記録されたプログラムによって実行される。
【0077】
なお、草刈り機100Bの制御部は、当該プログラムを記録するメモリ、及び当該プログラムを実行して草刈り機100Bの動作を制御するCPUを有する。なお、上記のメモリ及びCPUは走行機体200Bに設けられていてもよい。また、
図15に示す草刈り機100Bは、
図1に示した草刈り機100と比較すると、オフセット機構20B及び動力伝達部30Bの位置関係が逆だが、作業機40Bのオフセット動作及び旋回動作は第1実施形態及び第2実施形態で説明した動作とほぼ同じである。
【0078】
草刈り機100B及び走行機体200Bは、作業場300Bの隅部310B付近まで、
図10の(A)に示す前進オフセット作業状態で前進する。草刈り機100B及び走行機体200Bは直進するとき、草刈り機100Bは前進オフセット作業状態に固定される。このモードを直進自動制御モードという。直進自動制御モードでは、作業部40Bが作業場300Bの第1端部320Bに沿って前進する。草刈り機100B及び走行機体200Bが隅部310B付近に到達し、直進自動制御モードから隅部自動制御モードに切り替えられると、作業者に対して走行機体200Bのハンドルを操作する指示が出される。この指示は、走行機体200Bに設けられたディスプレイに表示されてもよく、草刈り機100B又は走行機体200Bに設けられたスピーカによって音声で通知されてもよい。上記の指示を受けて、作業者は
図15の(A)に示すように走行機体200Bが左方向に曲がるようにハンドルを操作する。なお、
図15の(A)では、走行機体200Bの車軸290Bは第1端部320Bと略平行である。
【0079】
走行機体200Bが左方向に曲がりながら前進すると、
図15の(B)に示すように、車軸290Bの第1端部320Bに対する傾斜角が徐々に大きくなる。この角度の変化に対して、作業部40Bのオフセット量及び旋回角度が自動制御され、作業部40Bは第1端部320Bに沿って進む。この動作中、走行機体200Bのハンドルは固定されている。例えば、ハンドルはその可動域の限界まで移動させられていてもよい。
【0080】
さらに走行機体200Bが左方向に曲がりながら前進し、作業部40Bが隅部310Bに近づくと、作業者に対して走行機体200Bの前進を停止する指示が出される。この指示を受けて、作業者が走行機体200Bを停止させた状態が
図15の(C)である。
【0081】
図15の(C)のように走行機体200Bが停止した後、作業部40Bのオフセット量及び旋回角度が自動制御され、
図15の(D)に示すように、作業部40Bはさらに隅部310Bに近づく。
【0082】
作業部40Bが
図15の(D)の状態まで隅部310Bに近づくと、
図15の(E)に示すように、作業部40Bのオフセット量が固定されたまま作業部40Bが旋回する。この旋回によって、作業部40Bが第2端部330Bに沿う位置まで移動する。
【0083】
図15の(E)の状態まで作業部が移動すると、作業者に対して走行機体200Bの車軸290Bを第2端部330Bに平行にする指示が出される。この指示を受けて、作業者は車軸290Bが第2端部330Bと平行になるように走行機体200Bを操作する。例えば、
図15の(E)の状態から、ハンドルを固定して走行機体200Bを後進させることで、車軸290Bが第2端部330Bと平行になるように走行機体200Bを操作する。この走行機体200Bの動作に合わせて、作業部40Bのオフセット量及び旋回角度が自動制御され、作業部40Bは第2端部330Bに沿う位置に移動する。
【0084】
車軸290Bが第2端部330Bと平行な状態まで後進し、作業者がハンドルを操作することで、
図15の(F)に示すように、作業部40Bが作業場300Bの第2端部330Bに沿って前進することができる。
【0085】
上記のようにして、自動制御によって隅部310Bの草刈り作業を行うことができる。なお、上記では、走行機体200Bのハンドル操作及び前進・後進は作業者によって操作される例を示したが、走行機体200Bのこれらの動作も自動制御によって制御されてもよい。また、作業部40Bに、作業部40Bが第1端部320B又は第2端部330Bと平行に進んでいることを検知するためのセンサが設けられていてもよい。また、走行機体200Bに、その車軸290Bが第1端部320B又は第2端部330Bと平行であることを検知するためのセンサが設けられ、当該センサを用いて直進方向からのズレを検知し、そのズレを補正する制御をするように構成されてもよい。このズレの補正制御は、作業部40Bのオフセット量及び旋回角度の自動制御によって実現されてもよく、走行機体200Bのハンドル操作の自動制御によって実現されてもよい。または、これらの両方の自動制御によって、上記のズレの補正制御が実現されてもよい。
【0086】
以上のように、第3実施形態に係る草刈り機100Bが直進自動制御モード及び隅部自動制御モードで自動制御されることで、作業場300Bの隅部310Bの草刈り作業を正確かつ迅速に行うことができる。
【0087】
以上、本発明について図面を参照しながら説明したが、本発明は上記の実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0088】
2:ロータカバー、 10:装着部、 11:ヒッチフレーム、 20:オフセット機構部、 20:オフセット機構、 21:オフセットフレーム、 22:リンクロッド、 23:支持フレーム、 24:伸縮部材、 30:動力伝達部、 31:駆動スプロケット、 32:従動スプロケット、 33:ローラーチェーン、 33a:弛み側、 33b:張り側、 34a、34b:テンショナー、 35:弾性部材、 36:チェーンケース、 37:チェーンカバー、 40:作業部、 41:作業ロータ、 41a:回転軸、 41b:刈刃、 42:ロータカバー、 43:側板、 44:刈刃駆動部、 44a:駆動プーリー、 44b:従動プーリー、 44c:ベルト、 44d:テンショナー、 50:回動機構部、 51:第1伝達部、 52:第2伝達部、80A:旋回駆動部、 81A:旋回機構部リンクロッド、 82A:作業部リンクロッド、 83A:オフセットフレームリンクロッド、 84A:伸縮部材、 90:旋回機構部、 91:第1旋回軸、 92:第2旋回軸、 93:ロック機構、 100:草刈り機、 200:走行機体、 210:後方タイヤ、 220:三点リンク機構、 230:PTO軸、 300B:作業場、 310B:隅部、 320B:第1端部、 330B:第2端部、 811A、813A、821A、831A、841A:接続部、 931:第1位置決め部、 933:第2位置決め部、 935:旋回固定部、 937:ピン