(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-22
(45)【発行日】2022-03-30
(54)【発明の名称】医療用台車
(51)【国際特許分類】
A61G 12/00 20060101AFI20220323BHJP
G01K 1/022 20210101ALI20220323BHJP
G01K 1/024 20210101ALI20220323BHJP
B62B 3/00 20060101ALI20220323BHJP
【FI】
A61G12/00 F
G01K1/022
G01K1/024
B62B3/00 D
(21)【出願番号】P 2017167647
(22)【出願日】2017-08-31
【審査請求日】2020-06-29
(73)【特許権者】
【識別番号】396023328
【氏名又は名称】株式会社タケトモ
(74)【代理人】
【識別番号】110000707
【氏名又は名称】特許業務法人竹内・市澤国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 浩明
【審査官】野口 絢子
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-040373(JP,A)
【文献】特開2013-130991(JP,A)
【文献】特開平09-330492(JP,A)
【文献】特開2007-094942(JP,A)
【文献】特開2017-065836(JP,A)
【文献】特開2015-110481(JP,A)
【文献】特開2011-235997(JP,A)
【文献】特開平10-134899(JP,A)
【文献】特開2009-050076(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0105119(US,A1)
【文献】中国実用新案第212756320(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61G 12/00
G01K 1/022
G01K 1/024
B62B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
医薬品を載せ置く棚を備えた医療用台車であって、
該医薬品
のそれぞれに備えた温度センサー付きRFタグと、
該棚付近に備えたアンテナ部を介して該RFタグと適宜時間間隔で交信し、該RFタグのID情報及び該RFタグの温度センサーで感知した温度情報を記憶する記憶部を有する制御部と、
該記憶部の該ID情報及び該温度情報を表示する表示部と、
を備えた医療用台車。
【請求項2】
前記制御部は、位置センサーを備え、前記ID情報及び前記温度情報とともに該位置センサーで感知した位置情報も前記記憶部に記憶させる、請求項1に記載の医療用台車。
【請求項3】
前記制御部は、少なくとも前記ID情報及び前記温度情報を外部に備えた管理端末又はクラウドサーバに送信できる通信部を備えた、請求項1又は2に記載の医療用台車。
【請求項4】
前記制御部は、上限温度及び制限時間が設定され、前記温度情報が該上限温度以上であることを検知し、その時間が該制限時間を超えたときに前記管理端末に異常情報及び医療用台車毎に割り振られた台車ID情報を送信して報知する、請求項3に記載の医療用台車。
【請求項5】
複数段の前記棚と、各棚付近に設けた複数の前記アンテナ部と、各棚に対応する発光部と、を備え、
前記制御部は、上限温度及び制限時間が設定され、前記温度情報が該上限温度以上であることを検知し、その時間が該制限時間を超えたときに、該上限温度以上である温度情報を受信したアンテナ部を設けた棚に対応する発光部を発光させる、請求項1~3のいずれかに記載の医療用台車。
【請求項6】
前記RFタグは、処理部と、電池部と、該電池部の電力により発光するタグ発光部と、を備え、
該処理部は、設定された上限温度を超える温度情報を検知したときに該タグ発光部を発光させる、請求項1~5のいずれかに記載の医療用台車。
【請求項7】
前記RFタグは、異なる発光色の少なくとも2つのタグ発光部を備える、請求項1~5のいずれかに記載の医療用台車。
【請求項8】
前記棚に載せることができる保冷箱を備え、
該保冷箱は、前記医薬品を収容できる収容部と、該収容部を保冷できる保冷装置と、該保冷装置を作動させる箱電池部と、前記棚に載せたときに、前記医療用台車に備えた送電部から無線で送電された電力を受電し、該箱電池部を充電させる受電部と、を有する、請求項1~7のいずれかに記載の医療用台車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、病院などの医療機関において、医薬品や医療器具等を載せて運搬できる医療用台車に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬品や飲食品などは適切に温度管理しておかなければ品質劣化を起こしてしまい廃棄処分しなければならないこともある。
そこで、監視対象食品の経時的な温度変化の履歴を検出して前記履歴に関する検出データを無線で送信可能な履歴計と、前記履歴計から送信された検出データを受信し、その検出データに基づいて前記監視対象食品の状態を監視するデータ処理装置とを備えたことを特徴とし、冷凍食品等の温度変化の履歴をリアルタイムで監視することができ、かつ監視データを正確に送信することが可能な食品監視装置が開発されている(下記特許文献1参照)。
【0003】
また、配送する複数の荷物の温度を個別に管理する荷物温度管理装置であって、前記荷物毎の温度を検出する温度検出手段と、前記荷物毎の保存温度範囲を示す保存情報を記憶する保存情報記憶手段と、前記保存情報記憶手段が記憶している前記保存情報が示す前記保存温度範囲を、前記温度検出手段が検出した前記温度が逸脱しているか否かを判定する判定手段と、前記判定手段が逸脱していると判定すると、該判定に対応する前記荷物の異常温度を警報するための警報情報を生成する警報情報生成手段と、前記警報情報生成手段が生成した警報情報に基づいて前記警報を行う警報手段と、を備えることを特徴とし、配送する荷物毎の温度を個別に管理することができる荷物温度管理装置が開発されている(下記特許文献2参照)。
【0004】
さらに、物品IDを記録する識別媒体を付した状態で場所IDがそれぞれ付された複数の場所を経由して搬送される物品の温度を管理する物品温度管理装置であって、前記物品IDごとの搬送履歴を前記場所IDと対応づけた搬送履歴情報を記憶する搬送履歴情報記憶部、および、前記複数の場所の各々における場所温度の時間的な変化を各場所の場所IDと対応づけた場所温度履歴情報を記憶する場所温度履歴情報記憶部とそれぞれ通信可能に接続される通信処理部と、管理対象物品の物品IDである管理対象物品IDの前記搬送履歴情報を、前記通信処理部を介して前記搬送履歴情報記憶部から取得する搬送履歴取得部と、前記搬送履歴取得部が取得した前記搬送履歴情報に含まれる場所IDの場所温度履歴情報を、前記通信処理部を介して前記場所温度履歴情報記憶部から取得する場所温度履歴取得部と、前記場所温度履歴取得部が取得した場所温度履歴情報に基づいて前記管理対象物品の搬送時の温度履歴を与える物品温度履歴情報を作成する物品温度履歴作成部と、を備えたことを特徴とし、簡易な構成で物品の温度履歴情報を取得可能とした物品温度管理装置が開発されている(下記特許文献3参照)。
【0005】
さらには、温度管理の対象となる物品を収納する収納箱に設けられた温度管理装置であって、前記物品を識別する物品IDを記憶する物品ID記憶部と、前記収納箱の内部における前記物品の周囲温度を一定周期で温度センサにより検出し、前記周囲温度、前記物品IDおよび計測時間を含む温度データを生成する温度管理部と、前記周囲温度の上限値および下限値を設定温度条件として記憶する設定温度条件記憶部と、前記温度データに含まれる前記周囲温度と前記設定温度条件を比較し、温度異常の有無を判定する温度異常判定部と、前記収納箱の扉開閉動作または前記物品IDに付されたタグの検出結果に基づいて前記物品が前記収納箱から取り出されてからの経過時間を計測する経過時間計測部と、前記経過時間の上限値を設定時間条件として記憶する設定時間条件記憶部と、前記経過時間と前記設定時間条件を比較して時間異常の有無を判定する時間異常判定部と、前記温度異常判定部および前記時間異常判定部における判定結果に応じて前記物品に係る異常発生の有無を示すステータス情報と前記温度データをリアルタイムで表示する表示部と、を備えることを特徴とし、物品の周囲温度および積み替え作業時間を物品単位で管理し、温度変化による物品の品質劣化を防止する温度管理装置が開発されている(下記特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平9-330492号公報
【文献】特開2002-267313号公報
【文献】特開2015-202918号公報
【文献】特開2016-204094号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このように医薬品や飲食品等の品質の安全性を確保するため、温度を適切に管理し、品質劣化が起こる環境下にないかを確認できるような装置等が開発されてきた。
しかし、医薬品のなかでも希少疾病用医薬品(オーファン・ドラッグ)等は、需要が少なく高価でありながら、病院などの医療機関などに卸してしまうと、適切に温度管理がなされて保管されていることが担保できなければ返品することは不可になる。特に病院などにおいて、医薬品を冷蔵庫又は冷凍庫などから病室に運搬する際、医薬品がどのような環境に晒されていたのか確認することはできず、そのため、希少疾病用医薬品(オーファン・ドラッグ)等を利用促進させることの障壁になっていた。
希少疾病用医薬品(オーファン・ドラッグ)等は治療の困難な難病に有効な医薬品として社会的な役割は大きく、患者の数にかかわらず利用を促進させるように努めなければならないものである。
【0008】
そこで、本発明の目的は、個々の医薬品が適切な温度で管理されていたことを確認することができる医療用台車を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施形態の医療用台車は、医薬品を載せ置く棚を備えた医療用台車であって、該医薬品のそれぞれに備えた温度センサー付きRFタグと、該棚付近に備えたアンテナ部を介して該RFタグと適宜時間間隔で交信し、該RFタグのID情報及び該RFタグの温度センサーで感知した温度情報を記憶する記憶部を有する制御部と、該記憶部の該ID情報及び該温度情報を表示する表示部とを備えたことを特徴とする。
【0010】
このようにすることにより、台車の棚に載せた個々の医薬品の温度を適宜時間間隔で記録させておくことができ、個々の医薬品が晒された温度履歴を確認することができる。そのため、医療機関などにおいて個々の医薬品が適切な範囲内で温度管理なされていたことを担保することができる。
【0011】
上記形態の医療用台車は、前記制御部に、位置センサーを備え、前記ID情報及び前記温度情報とともに該位置センサーで感知した位置情報も前記記憶部に記憶させることができる。このようにすることにより、個々の医薬品の晒された温度履歴だけでなく、位置履歴も確認することができ、どの場所に運搬されたか追認することができる。
【0012】
上記形態の医療用台車は、前記制御部に、少なくとも前記ID情報及び前記温度情報を外部に備えた管理端末又はクラウドサーバに送信できる送信部を備えることができる。このようにすることにより、台車で運搬された医薬品の温度履歴を外部の管理端末又はクラウドサーバから簡単に確認することができる。また、管理端末又はクラウドサーバに温度履歴を保存しておくこともできる。
【0013】
上記形態の医療用台車は、前記制御部に上限温度及び制限時間を設定し、前記制御部を、前記温度情報が該上限温度以上であることを検知し、その時間が該制限時間を超えたときに前記管理端末に異常情報及び医療用台車毎に割り振られた台車ID情報を送信して報知する構成にすることができる。このようにすることにより、管理端末において運搬中の医薬品が異常な状態にあることをできるだけ速やかに認知することができ、個々の医薬品の品質劣化をできるだけ防ぐことができる。
【0014】
上記形態の医療用台車は、複数段の前記棚と、各棚付近に設けた複数の前記アンテナ部と、各棚に対応する発光部と、を備え、前記制御部は、上限温度及び制限時間が設定され、前記温度情報が該上限温度以上であることを検知し、その時間が該制限時間を超えたときに、該上限温度以上である温度情報を受信したアンテナ部を設けた棚に対応する発光部を発光させる構成にすることもできる。このようにすることにより、棚に載せた医薬品が異常な状態にあることを認知することができ、どの棚の医薬品に異常が発生しているのかをすぐに見つけ出すことができる。
【0015】
上記形態の医療用台車は、前記RFタグを、処理部と、電池部と、該電池部の電力により発光するタグ発光部と、を備え、該処理部は、設定された上限温度を超える温度情報を検知したときに該タグ発光部を発光させる構成にすることができる。このようにすることにより、医薬品が上限温度を超えた状態に長時間晒されていることをタグ発光部の発光により認識することができるので、その医薬品を保冷箱に保管するなど医薬品が劣化しないようにすぐに対処することができる。
【0016】
上記形態の医療用台車は、前記RFタグを、処理部と、電池部と、該電池部の電力により発光する異なる発光色の少なくとも2つのタグ発光部と、を備え、該処理部は、該少なくとも2つのタグ発光部のうち1つを発光させる構成にすることができる。このようにすることにより、例えば、1つの発光部を赤色、他の発光部を青色の発光色としておき、冷凍する医薬品は赤色の発光部を発光させ、冷蔵する医薬品は青色の発光部を発行させるように設定しておけば、台車にて搬送後に、冷蔵庫、冷凍庫を間違えずに入庫して保管することができる。
【0017】
上記形態の医療用台車は、前記棚に載せることができる保冷箱を備え、該保冷箱は、前記医薬品を収容できる収容部と、該収容部を保冷できる保冷装置と、該保冷装置を作動させる箱電池部と、前記棚に載せたときに、前記医療用台車に備えた送電部から無線で送電された電力を受電し、該箱電池部を充電させる受電部と、を有する構成にすることができる。このようにすることにより、医薬品を保冷箱に収容した状態で運搬することができ、保冷箱を台車に載せてあるときは電池部は充電されるので保冷状態を保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施形態の医療用台車を示した斜視図である。
【
図2】
図1の医療用台車における制御部などの構成例を示した図である。
【
図3】
図1の医療用台車における制御部の記憶部に記憶された温度情報及びID情報の一例を示した図である。
【
図4】
図1の医療用台車に載せることができる保冷箱の一例を示した斜視図である。
【
図5】
図1の医療用台車の変形例を示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態の医療用台車を説明する。但し、本発明は、この実施形態に限定されるものではない。
【0020】
本発明の一実施形態の医療用台車1は、
図1又は
図2に示すように、棚2と、制御部3と、を備える。
【0021】
医療用台車1は、本実施形態では、
図1に示すように、4つのキャスター11を備え、各キャスター11から上方に延びる円筒状の支柱12に平板状の棚2を上下方向に適宜間隔で設けてあり、棚2に、RFタグ4を備えた医薬品5などを載せて運搬できるようにしたものである。最上段の棚2の手前側には斜め上方に延びる取っ手13が設けてあり、把持して台車1を押し引きしやすいようにしてある。
なお、医薬品5は、特に限定するものではないが、保冷などの温度管理する必要があるもの、例えば、希少疾病用医薬品(オーファン・ドラッグ)、血液や血液製剤などを挙げることができる。
【0022】
棚2は、本実施形態では、
図1に示すように、長方形平板状に形成してあり、三段を上下方向にほぼ等間隔で設けてある。棚2の周囲には棒材で形成された柵部21が設けてあり、棚2に載せた医薬品5などが落ちにくいようにしてある。なお、本発明において、棚2は、少なくとも1段を設けてあればよい。
【0023】
制御部3は、本実施形態では、
図1に示すように、最上段の棚2の手前側に設け、円柱状の軸で支えられた横長長方形状に形成してあり、
図2に示すように、表示部31、処理部32、通信部33、記憶部34、アンテナ部35、発光部36、位置センサー37などを備える。制御部3は、RFタグ4のリーダライタの機能も備えるのが好ましい。
【0024】
表示部31は、本実施形態では横長長方形状の液晶ディスプレイとしてあり、各種情報内容を表示し、RFタグ4から送信されたID情報、温度情報、台車ID情報などを表示して確認することができるようにしてある。表示部31はタッチパネルとして各種操作ができる操作ボタンを兼ねるようにし、上限温度やその制限時間などを含む各種設定することができるようにするのが好ましい。
【0025】
処理部32は、演算処理するCPUなどを備え、格納したプログラムを実行して情報処理を行うことができる。
通信部33は、各棚2に設けたアンテナ部35と接続されてRFタグ4と交信することができる。また、外部に備えた管理端末33aやクラウドサーバ33bなどと通信することができる。管理端末33aとしては、例えばパーソナルコンピュータやポータブルフォン(スマートフォン)などを用いることができる。管理端末33aやクラウドサーバ33bなどに記憶部34に記憶させたID情報、温度情報、台車ID情報などを送信することなどができる。管理端末33aやクラウドサーバ33bとの通信は、ブルートゥース(登録商標)などの通信規格で行うのが好ましい。
【0026】
記憶部34は、メモリーやHD(ハードディスク)などからなり、処理部32を実行するためのプログラムや温度情報、ID情報、台車ID情報、位置情報などの情報を記憶することができる。
【0027】
アンテナ部35は、棚2に載せた医薬品5のRFタグ4と交信でき、各棚2付近に設けてあり、制御部3からの指令で各アンテナ部35を介して適宜時間間隔で電波を発信し、その電波をRFタグ4が受信し、RFタグ4がID情報及び温度情報を制御部3に返信するようにしてある。
アンテナ部35は、本実施形態では各棚2の裏面に備えてあるが、これに限定されるものではなく、各棚2付近に設け、載せた医薬品5のRFタグ4と交信できる位置にあれば、いずれの位置に配置してもよい。例えば、アンテナ部35とRFタグ4との交信可能距離は、台車1の大きさにもよるが、約30cm~100cmにするのが好ましく、医薬品5を棚2に載せた際、RFタグ4がこの範囲に入る位置にアンテナ部35を設けるのが好ましい。なお、アンテナ部35としては、アルミ箔などを用いて形成することができる。
【0028】
発光部36は、棚2に載せた医薬品5に異常を感知した際に発光させることができるようにしてあり、LEDなどから形成してある。本実施形態では、発光部22は各棚2の手前側の端面に設けてあるが、視認しやすい位置に配してあれば、いずれの位置に配置してもよい。また、発光部36を設けず、表示部31に医薬品5の異常を感知したことを表示するようにしてもよい。
なお、アンテナ部35、発光部36は、制御部3と有線又は無線で接続してある。
【0029】
位置センサー37は、病院などの施設内での台車1の位置を検知するものであり、例えば、病院内に張り巡らされた回線を介して階数や位置を検知できるようにしてある。GPSなどの機能を備えて緯度、経度などの位置を検知することができるようにしてもよく、また、高度計の機能を備えて施設の階数を検知できるようにしてもよい。
【0030】
RFタグ4は、本実施形態では、
図1に示すように、長方形シート状に形成してあり、
図2に示すように、処理部41、温度センサー42、記憶部43、アンテナ部44、電池部45、タグ発光部46などを備える。
RFタグ4としては、パッシブタグ、アクティブタグ、セミアクティブタグなどいずれを用いてもよい。
【0031】
処理部41は、RFタグ4を制御するものであり、ICなどを備えてなる。
温度センサー42は、RFタグ4の周辺温度を感知することができる。感知した温度は、温度情報として制御部3の記憶部34などに記憶される。
【0032】
記憶部43は、温度情報、ID情報(固有ID)などを記憶することができ、設定した上限温度などを記憶するようにすることができる。
【0033】
アンテナ部44は、制御部3と交信するために備える。RFタグ4は、制御部3からの電波を、アンテナ部44を介して受信して処理部41へ送り、処理部41は、制御部3へ温度情報やID情報などを、アンテナ部44を介して返信することができる。
【0034】
電池部45は、RFタグ4を駆動させるための電力を供給するものである。RFタグ4をパッシブタグとした場合は電池部45を備えなくてもよい。電池部45は、乾電池などを用いた交換式としてもよいが充電できるようにするのが好ましい。例えば、制御部3から電波を受信した際に、アンテナ部44から充電制御部47を介して電池部45を充電できるようにし、電池部45が常にフル充電されているのが好ましい。
タグ発光部46は、LEDなどからなり、少なくとも1つ備えることが好ましい。例えば、RFタグ4に上限温度を設定しておき、この上限温度を超えた温度情報を検知した場合に発光させて異常が生じていることを報知することができる。
また、タグ発光部46は、
図1に示すように、発光色を異ならせて2つ設けることができ、そのうち1つを発光させるように設定することができる。例えば、1つのタグ発光部を赤色、他のタグ発光部を青色の発光色としておき、冷凍する医薬品5は赤色の発光部を発光させ、冷蔵する医薬品5は青色の発光部を発行させるように設定しておけば、台車1にて搬送後に、冷蔵庫、冷凍庫を間違えずに入庫して保管することができる。
【0035】
以下、医療用載台車1の使用方法の一例を示す。
まず、各医薬品5にRFタグ4を備え付ける。この場合、RFタグ4を直接医薬品5の容器に貼り付けてもよく、また、医薬品5の容器を箱やケースに入れ、その箱やケースに貼り付けてもよい。RFタグ4は、医薬品5の容器に備えてあればよく、紐などで括りつけたり、箱やケースに同封したりしてもよい。
【0036】
本例ではRFタグ4の固有IDをID情報として用いる。ID情報は、例えば、管理端末33aなどにおいてRFタグ4を備え付けた医薬品5の商品名と予め紐付けしておくのが好ましい。なお、本実施形態ではID情報を16桁の数値からなるものとして説明する。
【0037】
制御部3は、以下のように設定しておく。
制御部3は、アンテナ部35を介して医薬品5に備えたRFタグ4と適宜時間間隔で交信し、温度センサー42にて感知した温度情報をRFタグ4から返信するように設定しておく。このときID情報も返信する。この時間間隔は、例えば、1分毎、5分毎、10分毎、20分毎などに設定することができる。
また、医療用台車1に個別の台車IDを設定しておく。台車IDは、適宜番号として制御部3から設定しておくのが好ましい。本例では台車IDを”0001”と設定しておく。
【0038】
医薬品5を棚2に載せ、台車1移動させて医薬品5を運搬することができる。本例では、3段目(最上段)に2つの医薬品5を載せ、2段目(中間段)には1つの医薬品を載せてある。
この際、制御部3は、適宜時間間隔でアンテナ部35を介して電波を発信し、棚2に載せた個々の医薬品5のRFタグ4と交信する。RFタグ4は、アンテナ部44を介して受信し、温度センサー42で感知した温度情報及びID情報を返信する。返信された情報は、アンテナ部35を介して制御部3に受信され、制御部3の記憶部34に記憶される。この際の時刻も記憶され、また、位置センサー37により取得した位置情報を必要に応じて記憶することもできる。
記憶部34には、例えば、
図3に示すように、棚2毎に温度情報及びID情報が記憶される。なお、
図3は10分毎に温度情報を検知した場合を示し、図中の「-」は温度情報が検知されないことを示す。
【0039】
制御部3の記憶部34には、ID情報毎に、温度情報とその温度を計測した時刻、また、必要に応じて位置情報が記憶されることになる。この情報を基に表示部31に温度履歴を表示させて医薬品5の台車1上での温度履歴を確認することができる。また、管理端末33aから無線などで制御部3と通信し、温度情報を制御部3の通信部33を介して送信させ、管理端末33aにおいて医薬品5の温度履歴を確認することもできる。さらに、制御部3からインターネットなどを介して温度情報などをクラウドサーバ33bに送信して記憶させるようにしておけば、パーソナルコンピュータやモバイル端末等をインターネットなどに接続し、どこからでも個別の医薬品5の温度履歴を確認及び管理することができる。
【0040】
制御部3は、上限温度及び制限時間を設定しておくこともでき、温度情報と照合し、温度情報が上限温度以上である時間が制限時間を超えた場合は、管理端末33aなどに異常情報及び台車ID情報を送信して報知することができ、どの台車に異常が発生しているかを知ることができる。この異常情報の送信はE-mailなどで行うことができる。この上限温度は、例えば-10℃、0℃、5℃などと設定することができ、この制限時間は、例えば3分、5分、10分などと設定することができる。
【0041】
異常情報の送信に代えて、或いは異常情報の送信とともに、医薬品5の温度が上限温度以上である時間が制限時間を超えた場合は、制御部3に設けた発光部36を発光させることができ、この際、上限温度を超えた医薬品5を載せた棚2に対応する発光部36を発光させるようにする。このようにすることにより、医薬品5に異常が発生していることを認知することができ、さらに、どの棚2に載せた医薬品5に異常が発生しているかをすぐに知ることができる。
【0042】
RFタグ4は、上限温度を設定することができ、記憶部43に記憶した温度情報が上限温度を超えた場合は、タグ発光部46を発光させることができる。このようにすることにより、そのRFタグ4を備えた医薬品5に異常が発生していることを外部から認知することができる。この上限温度は、表示部31などに操作ボタンを表示させて制御部3から設定することが好ましく、例えば-10℃、0℃、5℃などに設定することができる。
【0043】
RFタグ4は、異なる発光色の2つのタグ発光部46を備えることができ、例えば、赤色と青色のタグ発光部46を備え、冷凍品は赤色で発光させ、冷蔵品は青色で発光させるなどの分別をすることができる。これにより、医薬品5の使用後、冷蔵庫や冷凍庫に収納する際に間違いが起こりにくくなる。この設定は、表示部31などに操作ボタンを表示させて設定することが好ましい。
【0044】
医薬品5は、
図4に示すような保冷箱6に収容して棚2に載せるようにしてもよい。
保冷箱6は、医薬品5を収容できる収容部61を備え、収容部61は、保冷装置62にて適宜温度で保冷できるようにしてある。また、保冷箱6は、制御部3からRFタグ4に向けて発信された電波を透過できるように形成しておく。
保冷箱6は、保冷装置62を作動させる箱電池部63と、箱電池部63を充電できる受電部64と、を備えるのが好ましく、棚2に載せたときに、医療用台車1に備えた送電部(図示せず)から無線で送電された電力を受電部64で受電し、箱電池部63を充電できるようにしておくのが好ましい。
これにより、医薬品5を保冷箱6に収容した状態で運搬することができ、医薬品5を冷蔵又は冷凍した状態で運搬することができる。また、保冷箱6を台車1に載せてあるときは、箱電池部63は常時充電されるので保冷装置62が停止することがなく、保冷状態を保つことができる。
【0045】
図5には台車1の変形例が示されており、台車1は、棚2上に保冷庫7を備えてもよい。本例では、1段目(最下段)と2段目(中間段)に保冷庫7を設けてある。
保冷庫7は、扉を開閉して内部の収容部71に医薬品5などを収容することができ、収容部71は保冷装置により保冷状態を保てるようにしてある。また、保冷庫7の収容部71に収容した医薬品5のRFタグ4は、保冷庫7に収容した状態で交信できるようにしてある。例えば、収容部71の底付近にアンテナ部35を設置し、アンテナ部35と制御部3とを回線で接続して交信できるようにすることができる。或いは、保冷庫7を制御部3の指令を受けてアンテナ部35から発信される電波を透過できる材質で形成し、アンテナ部35を棚2の裏面などに設置しておくことにより、保冷庫7に収容した医薬品5のRFタグ4と交信できるようにすることもできる。
これにより、医薬品5を冷蔵又は冷凍した状態で運搬することができ、医薬品5の劣化を極力防ぎながら、温度履歴を管理することができる。
【0046】
このように、医療用台車1は、病院などの医療機関における運搬時に、医薬品5の温度履歴を記憶部34に保存して表示部31や管理端末33aなどにて確認することができ、医薬品5が適切な温度で管理されていたことを確認することができる。
【符号の説明】
【0047】
1医療用台車
11キャスター
12支柱
13取っ手
2棚
21柵部
3制御部
31表示部
32処理部
33通信部
34記憶部
35アンテナ部
36発光部
37位置センサー
4RFタグ
41処理部
42温度センサー
43記憶部
44アンテナ部
45電池部
46タグ発光部
47充電制御部
5医薬品
6保冷箱
61冷却装置
62収容部
63箱電池部
64受電部
7保冷庫
71収容部