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特許7044363鉄塔支持型煙突の解体方法および鉄塔支持型煙突の解体装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-22
(45)【発行日】2022-03-30
(54)【発明の名称】鉄塔支持型煙突の解体方法および鉄塔支持型煙突の解体装置
(51)【国際特許分類】
   E04G 23/08 20060101AFI20220323BHJP
   E04G 1/22 20060101ALI20220323BHJP
   E04G 1/36 20060101ALI20220323BHJP
【FI】
E04G23/08 J
E04G23/08 D
E04G1/22 C
E04G1/36 302E
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2018101711
(22)【出願日】2018-05-28
(65)【公開番号】P2019206817
(43)【公開日】2019-12-05
【審査請求日】2021-04-22
(73)【特許権者】
【識別番号】595023910
【氏名又は名称】松島工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】松嶋 節郎
【審査官】家田 政明
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-76256(JP,A)
【文献】特開2015-55090(JP,A)
【文献】特開昭48-55534(JP,A)
【文献】特開平10-299290(JP,A)
【文献】特開2000-145126(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0152653(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 23/08
E04G 1/22
E04G 1/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
煙突が鉄塔で包囲された鉄塔支持型煙突の解体方法であって、
(1)煙突の内部に、上部台を有する昇降装置を設置する工程と、
(2)前記昇降装置を所定の位置まで昇降させた後、前記煙突を第1の煙突位置で切断し、切断された第1の煙突部分を除去する工程と、
(3)前記昇降装置の上部台の上に、3つ以上の拡張部材を有する第1のユニットを設置する工程であって、各拡張部材は、鉄塔から略水平に突出するように拡張可能である、工程と、
(4)前記第1のユニットの各拡張部材を拡張して、各拡張部材を前記鉄塔から略水平に突出させる工程と、
(5)各拡張部材の上に、該拡張部材に支持された状態で前記鉄塔を取り囲むようにして、第1の足場を設置する工程と、
(6)前記鉄塔を第1の鉄塔切断位置で切断し、切断された第1の鉄塔部分を除去する工程と、
(7)前記第1の足場および前記第1のユニットを取り外す工程と、
を有する解体方法。
【請求項2】
前記第1のユニットは、4つ以上の拡張部材を有する、請求項1に記載の解体方法。
【請求項3】
各拡張部材は、上面視、前記鉄塔の中心から略回転対称な位置で、前記鉄塔から突出される、請求項1または2に記載の解体方法。
【請求項4】
各拡張部材は、回転式またはスライド式に拡張される、請求項1乃至3のいずれか一つに記載の解体方法。
【請求項5】
前記第1の足場は、上面視、略矩形枠状である、請求項1乃至4のいずれか一つに記載の解体方法。
【請求項6】
前記鉄塔支持型煙突は、複数の煙突を取り囲み、
前記(1)の工程では、前記昇降装置は、各煙突の内部に設置され、
前記(3)の工程では、前記第1のユニットは、各昇降装置が備えるそれぞれの上部台に支持されるように設置される、請求項1乃至5のいずれか一つに記載の解体方法。
【請求項7】
さらに、
(8)前記(2)~(7)までの工程を、所定の回数だけ繰り返す工程
を有する、請求項1乃至6のいずれか一つに記載の解体方法。
【請求項8】
煙突が鉄塔で包囲された鉄塔支持型煙突の解体装置であって、
上部台を有し、煙突内に配置される昇降装置と、
前記昇降装置の上部台の上に設置されるユニットであって、前記鉄塔から略水平に突出するように拡張可能である、3つ以上の拡張部材を備える、ユニットと、
各拡張部材が拡張された際に、該拡張部材で支持された状態で前記鉄塔を取り囲むようにして設置される足場と、
を有する、解体装置。
【請求項9】
前記ユニットは、4つ以上の拡張部材を有する、請求項8に記載の解体装置。
【請求項10】
各拡張部材は、上面視、前記鉄塔の中心から略回転対称な位置で、前記鉄塔から突出される、請求項8または9に記載の解体装置。
【請求項11】
各拡張部材は、回転式またはスライド式に拡張される、請求項8乃至10のいずれか一つに記載の解体装置。
【請求項12】
前記足場は、上面視、略矩形枠状である、請求項8乃至11のいずれか一つに記載の解体装置。
【請求項13】
前記鉄塔支持型煙突は、複数の煙突を取り囲み、
前記昇降装置は、各煙突の内部に設置され、
前記ユニットは、各昇降装置が備えるそれぞれの上部台に支持されるように設置される、請求項8乃至12のいずれか一つに記載の解体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、煙突の解体方法および解体装置に関し、特に鉄塔支持型煙突の解体方法および解体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
発電所などに設置される各種煙突の中には、該煙突を鉄塔で取り囲み支持するタイプのものがある。以下、そのような煙突を、特に「鉄塔支持型煙突」と称する。
【0003】
通常、そのような鉄塔支持型煙突を解体する際には、まず、煙突が、頂上部から所定の位置で切断される。その後、切り離された煙突の頂上部分は、クレーンにより吊り上げられ、地上に降ろされる。次に、鉄塔が、頂上部から所定の位置で切断される。その後、切り離された鉄塔の頂上部分は、クレーンにより吊り上げられ、地上に降ろされる。このような作業を順次繰り返すことにより、鉄塔支持型煙突全体を解体することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述のように、鉄塔支持型煙突を解体する際には、煙突の上部の切断、除去、および鉄塔の上部の切断、除去…の工程が繰り返される。
【0005】
ここで、煙突および鉄塔の切断作業は、作業員によって実施される。このうち、煙突の切断作業は、例えば、作業員が煙突内に設置した昇降機に設けられた作業台に立った状態で、安全に行うことができる。
【0006】
しかしながら、鉄塔を切断する際には、作業員は、しばしば、鉄塔に備え付けられたモンキータラップを使用して、鉄塔の必要な高さ位置まで移動する必要がある。また、その後、作業員は、モンキータラップに乗っただけの不安定な状態で、切断作業を実施する必要が生じ得る。この場合、鉄塔の切断工程には、モンキータラップを用いた移動、およびモンキータラップ上での作業という、不安定な作業が存在し得る。
【0007】
また、鉄塔支持型煙突の鉄塔には、モンキータラップそのものが設置されていない箇所も存在し得る。そのような場合、作業員が鉄塔の被切断箇所にアプローチすることさえ、難しくなり、作業員には、より不安定な状態での移動および作業が要求され得る。
【0008】
本発明は、このような問題に鑑みなされたものであり、本発明では、より安全な鉄塔支持型煙突の解体方法を提供することを目的とする。また、本発明では、そのような解体方法に使用され得る解体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明では、煙突が鉄塔で包囲された鉄塔支持型煙突の解体方法であって、
(1)煙突の内部に、上部台を有する昇降装置を設置する工程と、
(2)前記昇降装置を所定の位置まで昇降させた後、前記煙突を第1の煙突位置で切断し、切断された第1の煙突部分を除去する工程と、
(3)前記昇降装置の上部台の上に、3つ以上の拡張部材を有する第1のユニットを設置する工程であって、各拡張部材は、鉄塔から略水平に突出するように拡張可能である、工程と、
(4)前記第1のユニットの各拡張部材を拡張して、各拡張部材を前記鉄塔から略水平に突出させる工程と、
(5)各拡張部材の上に、該拡張部材に支持された状態で前記鉄塔を取り囲むようにして、第1の足場を設置する工程と、
(6)前記鉄塔を第1の鉄塔切断位置で切断し、切断された第1の鉄塔部分を除去する工程と、
(7)前記第1の足場および前記第1のユニットを取り外す工程と、
を有する解体方法が提供される。
【0010】
また、本発明では、
煙突が鉄塔で包囲された鉄塔支持型煙突の解体装置であって、
上部台を有し、煙突内に配置される昇降装置と、
前記昇降装置の上部台の上に設置されるユニットであって、前記鉄塔から略水平に突出するように拡張可能である、3つ以上の拡張部材を備える、ユニットと、
各拡張部材が拡張された際に、該拡張部材で支持された状態で前記鉄塔を取り囲むようにして設置される足場と、
を有する、解体装置が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明では、より安全な鉄塔支持型煙突の解体方法を提供することができる。また、本発明では、そのような解体方法に使用され得る解体装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態による鉄塔支持型煙突の解体方法のフローを模式的に示した図である。
図2】鉄塔支持型煙突の一例を模式的に示した図である。
図3】鉄塔支持型煙突において、煙突の内部に昇降装置が設置された状態を模式的に示した図である。
図4】煙突内において、昇降装置が所定の高さまで上昇された状態を模式的に示した図である。
図5】第1のユニットの模式的な横断を示した図である。
図6】第1のユニットが昇降装置の上に設置された状態を模式的に示した側面図である。
図7】第1のユニットの各拡張部材が倒された状態を、模式的に示した側面図である。
図8図7に示した第1のユニットを模式的に示した上面図である。
図9】鉄塔の周囲に第1の足場が設置された状態を模式的に示した上面図である。
図10】鉄塔が所定の位置で切断される様子を模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明について説明する。
【0014】
(本発明の一実施例による鉄塔支持型煙突の解体方法)
まず、図1を参照して、本発明の一実施形態による鉄塔支持型煙突の解体方法について説明する。
【0015】
図1には、鉄塔支持型煙突を解体する方法の一例(以下、「第1の解体方法」と称する)のフローを概略的に示す。
【0016】
図1に示すように、第1の解体方法は、
(1)煙突の内部に、上部台を有する昇降装置を設置する工程(工程S110)と、
(2)前記昇降装置を所定の位置まで昇降させた後、前記煙突を第1の煙突位置で切断し、切断された第1の煙突部分を除去する工程(工程S120)と、
(3)前記昇降装置の上部台の上に、3つ以上の拡張部材を有する第1のユニットを設置する工程であって、各拡張部材は、前記鉄塔から略水平に突出するように拡張可能である、工程(工程S130)と、
(4)前記第1のユニットの各拡張部材を拡張して、各拡張部材を前記鉄塔から略水平に突出させる工程(工程S140)と、
(5)各拡張部材の上に、該拡張部材に支持された状態で前記鉄塔を取り囲むようにして、第1の足場を設置する工程(工程S150)と、
(6)前記鉄塔を第1の鉄塔切断位置で切断し、切断された第1の鉄塔部分を除去する工程(工程S160)と、
(7)前記第1の足場および前記第1のユニットを取り外す工程(工程S170)と、
(8)前記(2)~(7)までの工程を、所定の回数だけ繰り返す工程(工程S180)と、
を有する。
【0017】
以下、図2図10も参照して、各工程について説明する。
【0018】
(工程S110)
まず、図2を参照して、被解体対象となる鉄塔支持型煙突の一例について説明する。
【0019】
図2には、鉄塔支持型煙突1の構成の一例を概略的に示す。
【0020】
図2に示すように、解体の対象となる鉄塔支持型煙突1は、煙突10と、該煙突を取り囲むように設置された鉄塔20とを有する。鉄塔20は、複数の組立部材(鉄骨)22をトラス構造で3次元的に連結することにより構成される。
【0021】
なお、図2に示した例では、鉄塔支持型煙突1は、一本の煙突10のみを有する。
【0022】
しかしながら、煙突の数は特に限られない。例えば、鉄塔支持型煙突1は、2本、3本、または4本以上の煙突を備えても良い。ただし、以下の説明では、簡単のため、鉄塔支持型煙突1が1本の煙突10を有するものと仮定する。
【0023】
このような鉄塔支持型煙突1を解体する際には、まず、煙突10の内部に昇降装置が設置される。
【0024】
図3には、煙突10の内部に、昇降装置110が設置された状態を模式的に示す。
【0025】
図3に示すように、昇降装置110は、昇降部材112と、該昇降部材112の最上部に取り付けられた上部台114とを有する。さらに、昇降装置110は、作業ステージ116を有しても良い。作業ステージ116は、この上で作業員が作業できる「足場」して機能する。
【0026】
昇降部材112は、例えば、油圧機構等により、自身が煙突10内で昇降することができる。従って、このような昇降部材112の昇降により、上部台114および作業ステージ116も、煙突10内で昇降できる。
【0027】
(工程S120)
次に、昇降装置110の作業ステージ116が所定の高さ位置になるように、昇降部材112が昇降される。
【0028】
図4には、煙突10の内部で、昇降装置110の昇降部材112が所定の位置まで上昇された状態が示されている。
【0029】
なお、図3および図4には示されていないが、昇降装置110は、さらに、水平方向の揺れを抑止するための抑制手段を有しても良い。そのような抑制手段は、例えば、作業ステージ116から煙突10の内壁に向かって水平方向に伸縮可能な、複数のジャッキ部材であっても良い。この場合、作業ステージ116からジャッキ部材を張り出して、煙突10の内壁と当接させることにより、昇降装置110の水平方向の揺れを抑制することができる。あるいは、抑制手段は、その他の構成を有し、例えば、昇降装置110の所定の高さ毎に設けられても良い。
【0030】
次に、作業ステージ116に立った作業員(図示されていない)により、煙突10が所定の位置11(以下、「第1の煙突位置11」と称する)で、全周にわたって切断される。これにより、煙突10の本体から、頂上部~第1の煙突位置11までの部分(以下、「第1の煙突部分12」と称する)が分離される。
【0031】
なお、切断を実施する前に、第1の煙突部分12は、クレーン等に接続された吊り上げ部材と予め連結されている。従って、煙突10から第1の煙突部分12を切り離しても、第1の煙突部分12が落下することはない。
【0032】
その後、切り離された第1の煙突部分12は、クレーン等を用いて地上に吊り降ろされる。
【0033】
(工程S130)
次に、昇降装置110が昇降され、上部台114が所定の高さ位置に配置される。また、クレーン等を用いて、上部台114の上に、第1のユニットが設置される。
【0034】
図5には、第1のユニット130の模式的な側断面図を示す。
【0035】
図5に示すように、第1のユニット130は、底部床132と、該底部床132から鉛直方向上向きに延在する柱部材134と、を有する。また、第1のユニット130は、4つの拡張部材136を有する。なお、図5では、明確化のため、4つの拡張部材136のうちの2つのみが、柱部材134の左右に示されている。
【0036】
さらに、第1のユニット130は、底部床132に設けられた、それぞれの拡張部材136に対応するウィンチ138、および柱部材134の上部に設けられた、それぞれの拡張部材136に対応する滑車139を有する。各滑車139には、ロープ部材140が通される。該ロープ部材140の一端は、ウィンチ138に連結され、他端は、拡張部材136に連結される。
【0037】
図5に示すように、各拡張部材136は、底部床132に「立てた状態で」固定されている。すなわち、各拡張部材136は、対応するロープ部材140により、「引き上げ」られた状態で、支持されている。
【0038】
なお、各拡張部材136は、ウィンチ138によりロープ部材140の長さを調整することにより、外向きに倒すことができ、従って、各拡張部材136を、第1のユニット130の底部床132から、外方に向かって略水平に突出させることができる。
【0039】
また、図4からは明確ではないが、この例では、4つの拡張部材136は、倒した際に、
上面視、鉄塔20の中心から、約90°ずつ回転した状態で、略水平方向に突出させることができる。
【0040】
なお、上記記載では、拡張部材136は、立てた状態から倒した状態とすることで、すなわち、図5の矢印に示す方向に回転させることにより、第1のユニット130から外方に向かって突出させることができる。しかしながら、拡張部材136は、外方に向かって突出可能である限り、いかなる構造を有しても良い。例えば、拡張部材136は、底部床132に収容された状態から、水平方向にスライドさせることにより、外方に向かって突出させても良い。
【0041】
図6には、第1のユニット130が昇降装置110の上に設置された状態を、模式的に示す。
【0042】
図6に示すように、第1のユニット130は、該第1のユニット130の底部床132が昇降装置110の上部台114と接するようにして、昇降装置110上に設置される。
【0043】
(工程S140)
次に、第1のユニット130の各拡張部材136が水平に倒され、第1のユニット130から、各拡張部材136が突出される。これにより、各拡張部材136が、鉄塔20から水平方向に突出される。
【0044】
図7には、第1のユニット130の各拡張部材136が倒された状態を、模式的に示す。また、図8には、図7に示した第1のユニット130の上面図を模式的に示す。
【0045】
なお、図8には、明確化のため、鉄塔20、底部床132、および拡張部材136以外の部材は、示されていないことに留意する必要がある。また、図8において、破線は、煙突10および昇降装置110の上部台114の輪郭線を表している。また、鉄塔20は、おおよそ、第1のユニット130の拡張部材136の高さ位置における形状の一例として記載されている。具体的には、この高さ位置における鉄塔20は、鉄骨として、水平部材29および補強部材30を有する。
【0046】
また、図8に示した例では、第1のユニット130の底部床132は、8つの頂点を有する略八角形状の形状を有する。しかしながら、これは単なる一例であって、底部床132の形状は、特に限られない。
【0047】
さらに、図8に示した例では、4つの拡張部材136は、鉄塔20の中心から、約90°ずつ回転した状態で、略水平方向に突出されている。
【0048】
しかしながら、これは単なる一例であって、拡張部材136は、以降の工程S150において、拡張部材136上に足場を適正に設置することができる限り、いかなる態様で、略水平方向に突出されても良い。
【0049】
例えば、拡張部材136の数が3つの場合、それぞれの拡張部材136は、鉄塔20の中心から、約120°ずつ回転した状態で、略水平方向に突出されても良い。
【0050】
(工程S150)
次に、鉄塔20の周囲に、第1の足場が設置される。
【0051】
図9は、鉄塔20の周囲に第1の足場が設置された状態を模式的に示した上面図である。
【0052】
図9に示すように、第1の足場145は、第1のユニット130の各拡張部材136によって支持されるようにして、鉄塔20の周囲に設置される。
【0053】
なお、図9に示した例では、第1の足場145は、略矩形枠状の形態を有する。しかしながら、これは単なる一例であって、第1の足場145の形状は、特に限られない。
【0054】
例えば、第1の足場145は、略リング状の形態、または五角形以上の多角形の枠状であっても良い。また、例えば、第1のユニット130から、3つの拡張部材136が突出されている場合には、第1の足場145は、略三角形枠状の形態を有しても良い。
【0055】
このような第1の足場145は、例えば、クレーン等により地上から吊り上げ、第1のユニット130の拡張部材136上に吊り降ろすことにより、拡張部材136上に載置されても良い。その後、第1の足場145は、締結部材などを用いて、拡張部材136などと締結され、より頑丈に固定されても良い。
【0056】
(工程S160)
次に、作業員により、鉄塔20を構成する鉄骨22が、所定の位置で、切断される。
【0057】
図10には、鉄塔20が所定の位置(以下、「第1の鉄塔切断位置」と称する)で切断される様子を模式的に示す。
【0058】
図10に示すように、作業員90は、第1の足場145上に立ち、鉄塔20の切断作業を実施する。これにより、鉄塔20の第1の鉄塔切断位置24で、各鉄骨22が切断される。また、これにより、鉄塔20の本体から、頂上部~第1の鉄塔切断位置24までの部分(以下、「第1の鉄塔部分26」と称する)が分離される。
【0059】
なお、切断作業を実施する前に、第1の鉄塔部分26は、クレーン等に接続された吊り上げ部材と予め連結されている。従って、鉄塔20から第1の鉄塔部分26を切り離しても、第1の鉄塔部分26が落下することはない。
【0060】
切り離された第1の鉄塔部分26は、クレーン等により、地上に吊り降ろされる。
【0061】
(工程S170)
次に、クレーン等を使用して、第1の足場145および第1のユニット130のそれぞれが、取り外される。
【0062】
(工程S180)
その後、工程S120~工程S170が、必要な回数だけ繰り返される。
【0063】
例えば、工程S170の後、
(8)前記昇降装置を所定の位置まで昇降させた後、前記煙突を第2の煙突位置で切断し、切断された第2の煙突部分を除去する工程(工程S180)と、
(9)前記昇降装置の上部台の上に、3つ以上の拡張部材を有する第2のユニットを設置する工程であって、各拡張部材は、前記鉄塔から略水平に突出するように拡張可能である、工程(工程S190)と、
(10)前記第2のユニットの各拡張部材を拡張して、各拡張部材を前記鉄塔から略水平に突出させる工程(工程S200)と、
(11)各拡張部材の上に、該拡張部材に支持された状態で前記鉄塔を取り囲むようにして、第2の足場を設置する工程(工程S210)と、
(12)前記鉄塔を第2の鉄塔切断位置で切断し、切断された第2の鉄塔部分を除去する工程(工程S220)と、
(13)前記第2の足場および前記第2のユニットを取り外す工程(工程S230)と、
が実施されても良い。
【0064】
なお、工程180~工程230において使用される第2のユニットおよび第2の足場は、それぞれ、工程120~工程170において使用される第1のユニットおよび第1の足場とは、異なっていても良い。
【0065】
例えば、通常の場合、鉄塔20は、下方に向かうほど、水平面の領域が大きくなる。従って、これに応じて、第2のユニットおよび第2の足場を、それぞれ、第1のユニット130の最大水平寸法(例えば図8に示した例では、一つの拡張部材136の先端から、対向する別の拡張部材136の先端までの長さ)、および第1の足場145の最大水平寸法(例えば図9に示した例では、第1の足場145の対向する両辺の最大幅)よりも広げても良い。
【0066】
以上の工程により、鉄塔支持型煙突1が解体される。
【0067】
このような第1の解体方法では、作業員は、鉄塔20を切断する際に、常時足場を使用して、安定な状態で作業を実施できる。このため、従来のような不安定な状態で作業を実施する必要がなくなり、より安全に解体作業を行うことが可能となる。
【0068】
(本発明の一実施形態による解体装置)
次に、本発明の一実施形態による解体装置について説明する。
【0069】
本発明の一実施形態による解体装置は、鉄塔支持型煙突の解体に利用することができる。特に、本発明の一実施形態による解体装置は、前述のような本発明の一実施形態による鉄塔支持型煙突の解体方法に利用することができる。
【0070】
本発明の一実施形態による鉄塔支持型煙突の解体装置(以下、「第1の解体装置」と称する)は、
上部台を有し、煙突内に配置される昇降装置と、
前記昇降装置の上部台の上に設置されるユニットであって、前記鉄塔から略水平に突出するように拡張可能である、3つ以上の拡張部材を備える、ユニットと、
各拡張部材が拡張された際に、該拡張部材に支持された状態で前記鉄塔を取り囲むようにして設置される足場と、
を有する。
【0071】
なお、第1の解体装置を構成する各部材の具体的な特徴および動作については、前述の図2図10に関する説明が参照できる。
【0072】
そこで、ここでは、各部材の追加の特徴について説明する。また、第1の解体装置を構成する各部材を表す際には、明確化のため、前述の図2図10において使用した参照符号を使用するものとする。
【0073】
(昇降装置110)
第1の解体装置において、昇降装置110は、煙突10内において、上部台114および作業ステージ116を所定の高さに上昇/下降できる限り、いかなる構造を有しても良い。例えば、昇降装置110は、特開2016-56655号に記載の昇降ワークステーションのような構成を有しても良い。
【0074】
なお、鉄塔支持型煙突1において、複数の煙突10が存在する場合、昇降装置110は、それぞれの煙突10内に設置されても良い。
【0075】
(ユニット130)
前述のように、ユニット130は、3つ以上の拡張部材136を有する。
【0076】
各拡張部材136は、回転式またはスライド式に、ユニット130の底部床132から拡張させた際に、上面視、鉄塔20の中心から略回転対称な位置で、鉄塔20から突出されても良い。
【0077】
例えば、ユニット130が3つの拡張部材136を備える場合、それぞれの拡張部材136は、鉄塔20の中心から、約120°ずつ回転した状態で、略水平方向に突出されても良い。また、ユニット130が4つの拡張部材136を備える場合、それぞれの拡張部材136は、鉄塔20の中心から、約90°ずつ回転した状態で、略水平方向に突出されても良い。
【0078】
なお、鉄塔支持型煙突1において、複数の煙突10が存在する場合、ユニット130は、各昇降装置110が備えるそれぞれの上部台114に支持されるように設置されても良い。また、その場合、柱部材134は、煙突10の数だけ設けられ、ユニット130が各昇降装置110の上部台114の上に設置された際に、各柱部材134が対応する上部台114の上に配置されるようにして、底部床132に設置されても良い。
【0079】
柱部材134をこのような配置とすることにより、ユニット130がより安定する。
【0080】
(足場145)
足場145は、鉄塔20の周囲に適正に配置される限り、いかなる形状を有しても良い。
【0081】
例えば、足場145は、上面視、略矩形枠状、略多角形枠状、略リング状の形態であっても良い。
【0082】
このような第1の解体装置を使用することにより、より安全に鉄塔20の解体作業を行うことができる。
【符号の説明】
【0083】
1 鉄塔支持型煙突
10 煙突
11 第1の煙突位置
12 第1の煙突部分
20 鉄塔
22 鉄骨
24 第1の鉄塔切断位置
26 第1の鉄塔部分
29 水平部材
30 補強部材
90 作業員
110 昇降装置
112 昇降部材
114 上部台
116 作業ステージ
130 第1のユニット
132 底部床
134 柱部材
136 拡張部材
138 ウィンチ
139 滑車
140 ロープ部材
145 第1の足場
図1
図2
図3
図4
図5
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図7
図8
図9
図10