(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-22
(45)【発行日】2022-03-30
(54)【発明の名称】分配装置、盛付システム及び学習データ生成装置
(51)【国際特許分類】
B25J 13/00 20060101AFI20220323BHJP
B25J 13/08 20060101ALI20220323BHJP
B65G 61/00 20060101ALI20220323BHJP
B65G 47/90 20060101ALI20220323BHJP
【FI】
B25J13/00 Z
B25J13/08 Z
B65G61/00
B65G47/90 Z
(21)【出願番号】P 2018138990
(22)【出願日】2018-07-25
【審査請求日】2021-01-15
(31)【優先権主張番号】P 2017143485
(32)【優先日】2017-07-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】507183066
【氏名又は名称】株式会社ケー・デー・イー
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100129702
【氏名又は名称】上村 喜永
(72)【発明者】
【氏名】平岡 邦廣
【審査官】岩▲崎▼ 優
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-032284(JP,A)
【文献】特開平03-111193(JP,A)
【文献】特開平06-298352(JP,A)
【文献】実開平07-007888(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2011/0166696(US,A1)
【文献】特開2018-027581(JP,A)
【文献】特開2019-025565(JP,A)
【文献】三菱商事がコンビニ弁当製造工程にロボット導入 鮭やコロッケなど不定形具材の盛り付けを自動化,NIKKEI Robotics,日本,日経BP社,2017年04月10日,第22号,第20-23ページ
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00-21/02
B65G 47/80
B65G 47/84-47/86
B65G 47/90-47/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
麺状・粒状・薄板状、マカロニ状等の食品を盛った状態からその一部を掴み取って分配する分配装置であって、
前記盛った食品から複数の指の開閉によって一部の食品を掴み取る多指ハンドと、
前記複数の指で掴み取った前記一部の食品を計量する計量器と、
前記多指ハンドを任意の制御条件で制御し、前記盛った食品から一部の食品を掴み取って質量を計量する一連の計量動作を、前記制御条件を変更しながら繰り返す学習作業を実施するように制御する学習作業制御部と、
前記計量動作毎に、前記制御条件をその制御条件で掴み取った一部の食品の質量に関連付けた学習データを生成し、前記学習作業における各計量動作で生成した複数の学習データを学習データ集合として記憶する学習データ記憶部と、
前記学習データ集合に基づき、前記盛った食品から一部の食品を掴み取って分配する分配作業を実施するように制御する分配作業制御部と、を具備していることを特徴とする分配装置。
【請求項2】
前記制御条件が、前記多指ハンドによって前記盛った食品から一部の食品を掴み取る場合における、前記各指の開き幅、前記各指の閉じ幅、前記各指の閉じ速度、前記各指の把持力、及び、前記盛った食品に対する前記各指の差し込み深さ、から選択される掴み条件である請求項1記載の分配装置。
【請求項3】
前記盛った食品の基準平面に対する各座標の盛高さを検出する盛高さ検出部をさらに具備し、
前記制御条件における前記盛った食品に対する前記各指の差し込み深さを、前記盛高さ検出部で検出された盛高さを基準として設定する請求項2記載の分配装置。
【請求項4】
前記学習作業制御部の計量動作前に、その計量動作の制御条件に含まれる各指の開き幅X及び各指の差し込み深さYと、前記盛高さ検出部で検出された各座標の盛高さとを参照し、前記盛った食品の最も高い盛高さの座標である最高座標を中心とする直径X・深さYの盛範囲に盛られた食品の盛形状を示す盛形状データを生成する盛形状データ生成部をさらに具備し、
前記学習作業制御部が、前記多指ハンドを前記制御条件で制御し、前記盛った食品の最高座標から食品を掴み取って質量を計量する計量動作を実行するものであり、
前記学習データ記憶部が、前記制御条件を前記質量と前記盛形状データとに関連付けて学習データを生成するものである請求項3記載の分配装置。
【請求項5】
前記盛形状データが、前記最高座標の盛高さと前記盛範囲に盛られた食品の体積又は断面積との比によって表される値である請求項4記載の分配装置。
【請求項6】
前記学習データ記憶部が、前記学習データ集合の中から予め定められた目標質量範囲内の質量を含む学習データを選定し、その選定した複数の学習データを目標学習データ集合として記憶するものであり、
前記分配作業制御部が、前記目標学習データ集合に基づき、前記盛った食品から一部の食品を掴み取って分配する分配作業を実施するように制御するものである請求項1乃至5のいずれかに記載の分配装置。
【請求項7】
前記学習作業制御部が、前記多指ハンドの制御条件に含まれる複数の掴み条件の中から、変動させない非変動掴み条件と変動させる変動掴み条件とを選定し、前記一連の計量動作を、当該変動掴み条件を変動させながら規定回数繰り返す単位学習作業を複数回実施し、かつ、前記単位学習作業を繰り返す毎に前記非変動掴み条件を追加するものであり、
前記学習データ記憶部が、前記単位学習作業毎に前記目標学習データ集合を生成するものであり、
前記学習作業制御部における任意の単位学習作業において生成された前記目標学習データ集合に含まれる各学習データの変動掴み条件を参照し、当該変動掴み条件の上限値及び下限値を特定する上下限値特定部をさらに具備し、
前記上下限値特定部で特定した変動掴み条件の上限値及び下限値を、前記学習作業制御部における次回の単位学習作業において選定される当該変動掴み条件の上限値及び下限値として設定するように構成されている請求項6記載の分配装置。
【請求項8】
前記分配作業制御部が、分配対象となる盛った食品から予め定められた設定質量の食品を掴み取って分配する場合に、前記学習データ記憶部に記憶された各学習データから前記設定質量に最も近い質量を含む学習データの制御条件を分配用制御条件として設定し、その分配用制御条件によって、前記分配対象となる盛った食品から一部の食品を掴み取って分配するように制御するものである請求項1乃至7のいずれかに記載の分配装置。
【請求項9】
前記分配作業制御部が、分配対象となる盛った食品から予め定められた設定質量の食品を掴み取って分配する場合に、前記学習データ記憶部に記憶された各学習データのうちで前記設定質量を中心として所定誤差範囲に含まれる質量を含む各学習データを参照し、当該各学習データに含まれる制御条件を最大値と最小値との間で複数クラスに分類し、全クラスの中で最も多くの値が分類されたクラスにその制御条件を有する各学習データから前記設定質量に最も近い質量を含む学習データを選定し、その学習データの制御条件を分配用制御条件として設定し、その分配用制御条件によって、前記分配対象となる盛った食品から一部の食品を掴み取って分配するように制御するものである請求項1乃至7のいずれかに記載の分配装置。
【請求項10】
前記分配作業制御部が、分配対象となる盛った食品から予め定められた設定質量の食品を掴み取って分配する場合に、前記学習データ記憶部に記憶された各学習データのうちで前記設定質量を中心として所定誤差範囲に含まれる質量を含む各学習データを参照し、当該各学習データに含まれる制御条件及び盛形状データを最大値と最小値との間で複数クラスに分類し、全クラスの中で最も多くの値が分類されたクラスにその制御条件又は盛形状データを有する各学習データから前記設定質量に最も近い質量を含む学習データを選定し、その学習データの制御条件を分配用制御条件として設定し、その分配用制御条件によって、前記分配対象となる盛った食品から一部の食品を掴み取って分配するように制御するものである請求項4記載の分配装置。
【請求項11】
前記分配作業制御部が、前記分配用制御条件によって、前記盛った食品から一部の食品を掴み取って計量される質量が、前記設定質量を含む設定質量範囲外である場合に、再度、当該分配用制御条件によって、当該該盛った食品から一部の食品を掴み取るように制御するものである請求項8乃至10のいずれかに記載の分配装置。
【請求項12】
前記請求項1乃至11記載のいずれかの前記多指ハンドが、
支持ブロックに対し、環状に配置して接続された一端側を支点として内方及び外方へ開閉できるように構成されている複数の指と、
前記各指に接続され、その各指を外方へ向かって引っ張る外側弾性体と、
前記各指に接続され、その各指を内方へ向かって引っ張る内側弾性体と、
前記外側弾性体又は前記内側弾性体の少なくとも一方の張力を調節する張力調節機構と、を備えたものである分配装置。
【請求項13】
前記請求項1乃至11記載のいずれかの前記多指ハンドが、
対向状又は環状に配置され、上端側を支点として開閉する複数の指と、
前記各指の上端に接続された弾性体と、
前記各指の上方に配置され、前記弾性体を昇降させる昇降機構とを備え、
前記昇降機構によって前記弾性体を下降させることにより、前記各指の上端が前記弾性体に押されて開くように動作し、前記昇降機構によって前記弾性体を上昇させることにより、前記各指の上端が前記弾性体に引っ張られて閉じるように動作し、前記昇降機構によって前記弾性体を所定距離以上上昇させることにより、当該弾性体が伸長状態となって前記各指の把持力を調節できるように構成されている分配装置。
【請求項14】
前記請求項1乃至13記載のいずれかの分配装置と、
前記分配装置の近傍に、前記盛った食品を供給する第1供給手段と、
前記分配装置の近傍に、前記盛った食品から掴み取った一部の食品を盛り付ける容器を供給する第2供給手段と、を具備する盛付システム。
【請求項15】
麺状・粒状・薄板状、マカロニ状等の食品から複数の指の開閉によって一部の食品を掴み取る多指ハンドと、
前記複数の指で掴み取った一部の食品を計量する計量器と、
前記多指ハンドを任意の制御条件で制御し、前記盛った食品から一部の食品を掴み取って質量を計量する一連の計量動作を、前記制御条件を変更しながら繰り返す学習作業を実施するように制御する学習作業制御部と、
前記計量動作毎に、前記制御条件をその制御条件で掴み取った一部の食品の質量に関連付けた学習データを生成し、その生成した複数の学習データを学習データ集合として記憶する学習データ記憶部と、を具備する学習データ生成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分配装置、盛付システム及び学習データ生成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
調理済みの盛った食品を分配して弁当箱等の容器に盛り付ける盛付装置として、特許文献1には、ホッパーに対して食品を投入し、そのホッパーの下端側に設けられたゲートから、そのゲートの下方を通過する容器に対して食品を投下して盛り付ける構成のものが開示されている。
【0003】
しかし、前記特許文献1に開示された盛付装置においては、例えば、スパゲティーや炊立ての米などの粘性が高い食品をホッパーに投入すると、食品を通過させるゲートの内面に徐々に食品が付着し、正確に分量できなくなるため、頻繁にゲートを清掃しなければならないという問題があった。
【0004】
一方、前記ホッパーを用いた盛付装置の問題を解決したものとして、特許文献2には、複数のフィンガーによって食品を把持して分配する盛付装置が開示されている。
【0005】
ところが、前記特許文献2に開示された盛付装置においては、コロッケやハンバーグなどの塊状の食品を盛った状態から個別に取り分けることができるものの、麺状、粒状、薄板状、マカロニ状等の食品を所定量まとめて掴んで取り分ける場合には、正確な分量で取り分けることができないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2004-196382
【文献】特開平9-65838
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、麺状、粒状、薄板状、マカロニ状等の計量が必要な食品を盛った状態からある程度正確な分量で取り分けることができ、かつ、メンテナンスも容易な分配装置を提供することを主な課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明に係る分配装置は、麺状・粒状・薄板状・マカロニ状等の食品を盛った状態からその一部を掴み取って分配する分配装置であって、前記盛った食品から複数の指の開閉によって一部の食品を掴み取る多指ハンドと、前記複数の指で掴み取った前記一部の食品を計量する計量器と、前記多指ハンドを任意の制御条件で制御し、前記盛った食品から一部の食品を掴み取って質量を計量する一連の計量動作を、前記制御条件を変更しながら繰り返す学習作業を実施するように制御する学習作業制御部と、前記計量動作毎に、前記制御条件をその制御条件で掴み取った一部の食品の質量と関連付けた学習データを生成し、前記学習作業における各計量動作で生成した複数の学習データを学習データ集合として記憶する学習データ記憶部と、前記学習データ集合に基づき、前記盛った食品から一部の食品を掴み取って分配する分配作業を実施するように制御する分配作業制御部と、を具備していることを特徴とするものである。
【0009】
このようなものであれば、複数の指を開閉して食品を掴み取る多指ハンドを使用するため、複数の指を開いた際に各指から離れるように食品が落下し、各指に対して食品が付着して残存することが比較的少なく、メンテナンスが容易となる。また、多指ハンドでは、麺状・粒状・薄板状・マカロニ状等の食品を指定した量で掴み取ることが困難であるが、予め分配対象となる盛った食品を、その分配作業に用いる多指ハンドによって制御条件を変更しながら掴み取って計量して生成した学習データに基づき、分配作業を実行することができるようになり、麺状・粒状・薄板状・マカロニ状等食品であっても、ある程度正確な分量を掴み取ることができるようになる。
【0010】
なお、前記制御条件は、前記多指ハンドによって前記盛った食品から一部の食品を掴み取る場合における、前記各指の開き幅、前記各指の閉じ幅、前記各指の閉じ速度、前記各指の把持力、及び、前記盛った食品に対する前記各指の差し込み深さ、から選択される掴み条件である。
【0011】
また、前記分配装置が、前記盛った食品の基準平面に対する各座標の盛高さを検出する盛高さ検出部をさらに具備し、前記盛った食品に対する前記各指の差し込み深さを、前記盛高さ検出部で検出された盛高さを基準として設定するものであってもよい。
【0012】
また、前記学習作業制御部の計量動作前に、その計量動作の制御条件に含まれる各指の開き幅X及び各指の差し込み深さYと、前記盛高さ検出部で検出された各座標の盛高さとを参照し、前記盛った食品の最も高い盛高さの座標である最高座標を中心とする直径X・深さYの盛範囲に盛られた食品の盛形状を示す盛形状データを生成する盛形状データ生成部をさらに具備し、前記学習作業制御部が、前記多指ハンドを前記制御条件で制御し、前記盛った食品の最高座標から食品を掴み取って質量を計量する計量動作を実行するものであり、前記学習データ記憶部が、前記制御条件を前記質量と前記盛形状データとに関連付けて学習データを生成するものであってもよい。この場合、前記盛形状データが、前記最高座標の盛高さと前記盛範囲に盛られた食品の体積又は断面積との比によって表される値である。
【0013】
このようなものであれば、学習データに盛形状データが追加されるため、麺状・粒状・薄板状・マカロニ状等食品を、より正確な分量で掴み取ることができるようになる。
【0014】
また、前記いずれかの分配装置において、前記学習データ記憶部が、前記学習データ集合の中から予め定められた目標質量範囲内の質量を含む学習データを選定し、その選定した複数の学習データを目標学習データ集合として記憶するものであり、前記分配作業制御部が、前記目標学習データ集合に基づき、前記盛った食品から一部の食品を掴み取って分配する分配作業を実施するように制御するものであってもよい。
【0015】
このようなものであれば、分配作業制御部において参照される学習データの数を事前に減らすことができ、これにより、分配作業制御部における分配作業の処理速度が向上する。
【0016】
また、前記目標学習データ集合を生成する分配装置において、前記学習作業制御部が、前記多指ハンドの制御条件に含まれる複数の掴み条件の中から、変動させない非変動掴み条件と変動させる変動掴み条件とを選定し、前記一連の計量動作を当該変動掴み条件を変動させながら規定回数繰り返す単位学習作業を複数回実施し、かつ、前記単位学習作業を繰り返す毎に前記非変動掴み条件を追加するものであり、前記学習データ記憶部が、前記単位学習作業毎に前記目標学習データ集合を生成するものであり、前記学習作業制御部における任意の単位学習作業において生成された前記目標学習データ集合に含まれる各学習データの変動掴み条件を参照し、当該変動掴み条件の上限値及び下限値を特定する上下限値特定部をさらに具備し、前記上下限値特定部で特定した変動掴み条件の上限値及び下限値を、前記学習作業制御部における次回の単位学習作業において選定される当該変動掴み条件の上限値及び下限値として設定するように構成されているものであってもよい。
【0017】
このようなものであれば、多指ハンドの制御条件とその制御条件によって掴み取ることができる一部の食品の質量との関係を把握するために必要な計量動作の回数を減らすことができ、学習作業に必要となる時間を短縮することができる。
【0018】
また、前記いずれかの分配作業制御部が、前記盛った食品から予め定められた設定質量の食品を掴み取って分配する場合に、前記学習データ記憶部に記憶された各学習データから前記設定質量に最も近い質量を含む学習データの制御条件を分配用制御条件として設定し、その分配用制御条件によって、前記盛った食品から一部の食品を掴み取って分配するように制御するものであってもよい。さらに、前記分配作業制御部が、分配対象となる盛った食品から予め定められた設定質量の食品を掴み取って分配する場合に、前記学習データ記憶部に記憶された各学習データのうちで前記設定質量を中心として所定誤差範囲に含まれる質量を含む各学習データを参照し、当該各学習データに含まれる制御条件を最大値と最小値との間で複数クラスに分類し、全クラスの中で最も多くの値が分類されたクラスにその制御条件を有する各学習データから前記設定質量に最も近い質量を含む学習データを選定し、その学習データの制御条件を分配用制御条件として設定し、その分配用制御条件によって、前記分配対象となる盛った食品から一部の食品を掴み取って分配するように制御するものであく、また、前記分配作業制御部が、分配対象となる盛った食品から予め定められた設定質量の食品を掴み取って分配する場合に、前記学習データ記憶部に記憶された各学習データのうちで前記設定質量を中心として所定誤差範囲に含まれる質量を含む各学習データを参照し、当該各学習データに含まれる制御条件及び盛形状データを最大値と最小値との間で複数クラスに分類し、全クラスの中で最も多くの値が分類されたクラスにその制御条件又は盛形状データを有する各学習データから前記設定質量に最も近い質量を含む学習データを選定し、その学習データの制御条件を分配用制御条件として設定し、その分配用制御条件によって、前記分配対象となる盛った食品から一部の食品を掴み取って分配するように制御するものであってもよい。
【0019】
このようなものであれば、例えば、コンビニ弁当のように分配先である各容器に対して指定された量の食品を盛り付ける必要がある場合に、各容器に対してある程度正確に指定された量(設定質量)の食品を盛り付けることができる。
【0020】
また、前記分配作業制御部が、前記分配用制御条件によって、前記盛った食品から一部の食品を掴み取って計量される質量が、前記設定質量を含む設定質量範囲外である場合に、再度、前記分配用制御条件によって、該盛った食品から一部の食品を掴み取るように制御するものであってもよい。
【0021】
このようなものであれば、多指ハンドによって掴み取った食品の質量が設定質量から大幅にずれた場合や、多指ハンドによって掴み取った食品が分配先へ分配する前に落下した場合に、そのまま分配作業が続行されることを防止できる。
【0022】
また、前記いずれかの分配装置の多指ハンドが、支持ブロックに対し、環状に配置して接続された一端側を支点として内方及び外方へ開閉できるように構成されている複数の指と、前記各指に接続され、その各指を外方へ向かって引っ張る外側弾性体と、前記各指に接続され、その各指を内方へ向かって引っ張る内側弾性体と、前記外側弾性体又は前記内側弾性体の少なくとも一方の張力を変動させる張力変動機構と、を備えたものであってもよい。
【0023】
このようなものであれば、各指を弾性体によって外側及び内側へ引っ張って把持力を調整しているため、例えば、ポテトチップのように割れ易い食品であっても、無理な力を加えることなく掴み取ることができる。なお、弾性体が指に接続される態様としては、弾性体が指に対して直接的に接続されている態様だけでなく、弾性体の張力が指に伝わるように間接的に接続されている態様も含まれる。
【0024】
また、本発明に係る盛付システムは、前記いずれかの分配装置と、前記分配装置の近傍に、前記盛った食品を供給する第1供給手段と、前記分配装置の近傍に、前記盛った食品から掴み取った一部の食品を盛り付ける容器を供給する第2供給手段と、を具備するものである。
【0025】
また、本発明に係る学習データ生成装置は、麺状、粒状、薄板状、マカロニ状等の食品を盛った状態から複数の指の開閉によってその一部を掴み取る多指ハンドと、前記複数の指で掴み取った前記一部の食品を計量する計量器と、前記多指ハンドを任意の制御条件で制御し、前記盛った食品から一部の食品を掴み取って質量を計量する一連の計量動作を、前記制御条件を変更しながら繰り返す学習作業を実施するように制御する学習作業制御部と、前記計量動作毎に、前記制御条件をその制御条件で掴み取った一部の食品の質量に関連付けた学習データを生成し、その生成した複数の学習データを学習データ集合として記憶する学習データ記憶部と、を具備することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0026】
このように構成すれば、麺状、粒状、薄板状、マカロニ状等の計量が必要な食品を盛った状態からある程度正確な分量で取り分けることができ、かつ、メンテナンスも容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】実施形態1に係る盛付システムを示す模式図である。
【
図3】実施形態1に係る盛付システムの学習作業を説明するフローチャートである。
【
図4】実施形態1に係る盛付システムの搬送動作を説明するフローチャートである。
【
図5】実施形態2に係る盛付システムの多指ハンドの外観を示す模式図である。
【
図6】実施形態2に係る盛付システムの多指ハンドの内部構造を示す模式図である。
【
図7】その他の実施形態に係る盛付システムの多指ハンドを示す模式図である。
【
図8】その他の実施形態に係る盛付システムの多指ハンドを示す模式図である。
【
図9】その他の実施形態に係る盛範囲を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に、本発明に係る分配装置及び該搬送装置を用いた盛付システムを図面に基づいて説明する。
【0029】
本発明に係る分配装置は、麺状、粒状、薄板状、マカロニ状等の計量が必要な食品を盛った状態から所定量だけ掴み取って分配するために使用するものである。なお、本発明に係る分配装置は、前記盛った食品を所定量だけ掴み取って容器に盛り付ける盛付システムとしても使用することができる。なお、麺状・粒状・薄板状・マカロニ状等の食品とは、一つの食材の塊ではなく、多数の食材の塊として掴み取るような態様のものであり、例えば、麺状の食品としては、スパゲティー、うどん、そば等があり、粒状の食品としては、米等があり、薄板状の食品としては、ポテトチップ等がある。
【0030】
<実施形態> 本実施形態に係る盛付システム100は、
図1に示すように、盛った食品を分配する分配装置DDと、分配装置DDの近傍に、盛った食品Fを収容したトレイTを供給するトレイ供給装置SD1と、分配装置DDの近傍に、盛った食品Fの一部を盛り付ける容器Bを供給する容器供給装置SD2と、を具備している。なお、分配装置DD、トレイ供給装置SD1及び容器供給装置SD2は、いずれも図示しない情報処理装置に接続されており、その情報処理装置によって制御されている。なお、本実施形態に係るトレイ供給装置SD1が、請求項における第1供給手段に該当し、本実施形態に係る容器供給装置SD2が、請求項における第2供給手段に該当する。
【0031】
前記分配装置DDは、ハンド支持機構10と、ハンド支持機構10の先端に接続される計量器20と、計量器20に接続される多指ハンド30と、トレイ供給装置SD1によって分配装置DDの近傍に搬送されたトレイTを上方から撮影する四台のカメラC1と、容器供給装置SD2によって分配装置DDの近傍に搬送された容器Bを上方から撮影する1台のカメラC2と、を備えている。
【0032】
前記ハンド支持機構10は、6軸ロボットアームである。具体的には、基台11に対して旋回可能に取り付ける支持体12と、支持体12に取り付けられる3関節アーム13(第1アーム13a、第2アーム13b、第3アーム13c)と、図示しない6軸を駆動させるためのアクチュエータ(モータ)と、図示しない6軸の旋回角度や関節角度などをセンシングする各種センサと、を具備している。そして、第2アーム13bは、二つのパーツを互いに旋回可能に連結した構造になっており、3関節アーム13の最も先端に位置する第3アーム13cに多指ハンド30が計量器20を介して旋回可能に接続されている。これにより、ハンド支持機構10は、三つの旋回箇所及び三つの関節の合計6軸によって可動できるようになっている。
【0033】
前記多指ハンド30は、計量器20に接続される支持ブロック31と、支持ブロック31に接続される三つの指32と、図示しない三つの指32を駆動させるためのアクチュエータと、図示しない三つの指の開き幅、閉じ幅、閉じ速度、把持力等をセンシングする各種センサと、を備えている。そして、三つの指32は、支持ブロック31に対し、環状に配置して接続された一端側を支点として開閉できるように構成されている。
【0034】
前記計量器20は、多指ハンド30で掴み取った食品fのみの質量を、多指ハンド30によって食品fを掴んだ状態で計量することができるような構成になっている。
【0035】
前記カメラC1は、トレイ供給装置SD1によって供給されるトレイTに盛られた食品Fの盛高さを検知するための画像を撮影するためのものである。なお、盛高さは、画像に写り込んだ基準となる面から盛った食品T全体の外表面までの高さhであり、例えば、
図2に示すように、画像に写り込んだトレイTの底面から盛った食品T全体の外表面までの高さhを採用してもよい。なお、前記画像は、静止画であってもく、動画でもよい。
【0036】
前記カメラC2は、容器供給装置SD2によって供給される容器Bにおける盛付け位置を検出するためのものである。
【0037】
前記トレイ供給装置SD1及び前記容器供給装置SD2は、所謂ベルトコンベアである。なお、トレイ供給装置SD1は、例えば、上流側の調理場から下流側の空トレイ回収所まで伸びている。この場合、トレイ供給装置SD1は、調理場で調理された食品FをトレイTに盛った状態で分配装置DDの近傍にまで搬送し、トレイTに盛られた食品Fの全てが分配装置DDによって複数の容器Bに分配された後に、空トレイTをトレイ回収所まで搬送するようになる。また、容器供給装置SD2は、例えば、上流側の容器供給所から下流側の容器回収所まで伸びている。この場合、容器供給装置SD2は、容器供給所で供給された容器Bを分配装置DDまで搬送し、トレイTに盛られた食品Fの一部の食品fが分配装置DDによって容器Bに盛り付けられた後に、食品fを盛り付けた容器Bを容器回収所まで搬送するようになる。
【0038】
前記情報処理装置は、CPU、内部メモリ、I/Oバッファ回路、ADコンバータ等を有した所謂コンピュータである。そして、内部メモリの所定領域に格納した制御プログラムに従って動作することで、CPU及び周辺機器が協働動作し、盛高さ検出部、学習作業制御部、学習データ記憶部、上下限値特定部、分配作業制御部、トレイ供給制御部及び容器供給制御部としての機能を発揮する。
【0039】
前記盛高さ検出部は、トレイTに盛られた食品Fを四台のカメラC1によって撮影した得られた画像から、トレイTに盛られた食品Fの画像平面上の各座標における盛高さ(高度)を検出するものである。
【0040】
前記学習作業制御部は、トレイ供給装置SD1によって分配装置DDの近傍に供給されたトレイTに盛られた食品Fの一部を、多指ハンド30を任意の制御条件で制御して掴み取り、その掴み取った一部の食品fを計量する一連の計量動作を、制御条件を変更しながら規定回数繰り返す単位学習作業を複数回実施するように制御するものである。より具体的に説明すると、前記学習作業制御部は、前記多指ハンドの制御条件に含まれる複数の掴み条件の中から、変動させない非変動掴み条件と変動させる変動掴み条件とを選定し、前記一連の計量動作を変動掴み条件を変動させながら規定回数繰り返す単位学習作業を複数回実施するように制御するものである。なお、学習作業制御部は、単位学習作業を繰り返す毎に非変動掴み条件を追加して計量動作を実施する。すなわち、学習作業制御部は、単位学習作業を繰り返す毎に非変動掴み条件を増やして計量動作を実施する。
【0041】
前記掴み条件としては、トレイTに盛られた食品Fから一部の食品fを掴み取る場合における、各指32の開き幅、各指32の閉じ幅、各指32の閉じ速度、各指32の把持力、及び、盛った食品Fに対する各指32の差し込み深さ、を挙げることができる。なお、盛った食品Fに対する各指32の差し込み深さは、盛高さ検出部で検出された盛高さを基準とし、そこから差し込んだ各指の長さによって特定することができる。
【0042】
学習データ記憶部は、学習作業制御部における計量動作毎に、その計量動作における制御条件と、その制御条件で掴み取った一部の食品の質量と、を関連付けた学習データを生成し、単位学習作業毎に、その生成した複数の学習データを学習データ集合として記憶するものである。さらに、学習データ記憶部は、単位学習作業毎に、学習データ集合の中から予め定められた目標質量範囲内の質量を含む学習データを選定し、その選定した複数の学習データを目標学習データ集合として記憶する。
【0043】
上下限値特定部は、学習作業制御部における任意の単位学習作業において生成された目標学習データ集合に含まれる各学習データ中の変動掴み条件の中から上限値及び下限値を特定する。そして、その特定した変動掴み条件の上限値及び下限値を、学習作業制御部における次回の単位学習作業において選定される変動掴み条件の上限値及び下限値として設定するものである。なお、この制御は、前回の単位学習作業と次回の単位学習作業とで、同じ掴み条件が変動掴み条件として選定された場合に実施される。
【0044】
前記分配作業制御部は、トレイTに盛られた食品Fから予め定められた設定質量の食品fを掴み取って容器Bへ分配する場合に、学習データ記憶部に記憶された目標学習データ集合に含まれる複数の学習データの中から設定質量に最も近い質量を含む学習データを選定し、その選定した学習データに含まれる制御条件に基づき、トレイTに盛られた食品Fから一部の食品fを掴み取って分配する分配作業を実施するものである。
【0045】
前記トレイ供給制御部は、上流側からトレイTに盛られた食品Fを分配装置DDの近傍まで搬送し、トレイTに盛られた食品F全ての分配が完了した後、空になったトレイTを下流側へ搬送する制御を実行するものである。従って、トレイ供給制御部は、トレイTを間欠的に搬送するようになっている。
【0046】
前記容器供給制御部は、上流側から容器Bを分配装置DDの近傍まで搬送し、トレイTに盛られた食品Fのその容器Bへの分配が完了した後、食品fが盛り付けられた状態の容器Bを下流側へ搬送する制御を実行するものである。
【0047】
次に、本実施形態に係る盛付システム100の学習作業を実行した場合の動作を
図3に基づいて説明する。
【0048】
情報処理装置に対して学習作業の実行信号が入力されると、トレイ供給制御部において、トレイ供給装置SD1によってトレイTに盛られた食品Fを分配装置DDの近傍にまで搬送する動作を実行した後、学習作業を実行する。
【0049】
そして、情報処理装置は、盛高さ検出部において、分配装置SDの近傍まで搬送されたトレイTに盛られた食品Fを四台のカメラC1によって撮影して得られた画像に基づき、トレイTに盛られた食品Fの画像平面上の各座標における盛高さ(以下、「学習用盛高さ情報」ともいう)を検出する(ステップS1)。
【0050】
次に、情報処理装置は、学習作業制御部において、前記学習用盛高さ情報の中から任意の盛高さを選定し、その選定した盛高さに対応する座標を特定する(ステップS2)。また、情報処理装置は、学習作業制御部において、制御条件に含まれる複数の掴み条件から、変動させない一つの非変動掴み条件と、変動させる複数の変動掴み条件と、を選定する(ステップ3)。そして、情報処理装置は、学習作業制御部において、制御条件、即ち、各掴み条件を設定する(ステップ4)。
【0051】
次に、情報処理装置は、学習作業制御部において、前記設定した制御条件によって多指ハンド30を制御し、トレイTに盛られた食品Fにおける前記特定した座標部分から一部の食品を掴み上げて計量器20で計量した後、その一部の食品fを再度トレイTへ戻す一連の計量動作を実施する(ステップS5)。その後、情報処置装置は、学習データ記憶部において、制御条件をその制御条件によって掴み取った食品の質量と関連付けた学習データを生成して記憶する(ステップS6)。
【0052】
そして、情報処理装置は、ステップS1~ステップS6の一連の計量動作を、変動掴み条件に含まれる各掴み条件を変更しながら繰り返し、計量動作を規定回数実施したか否か判断する(ステップS7)。そして、規定回数実施していない場合には、再度、ステップS1~ステップS6の一連の計量動作を実施する。
【0053】
一方、規定回数実施した場合には、単位学習作業を終了する(ステップS8)。そして、情報処理装置は、学習データ記憶部において、前記単位学習作業の各計量動作において生成された複数の学習データを学習データ集合として記憶する(ステップS9)。さらに、情報処理装置は、学習データ記憶部において、学習データ集合の中から予め定められた目標質量範囲内の質量を含む学習データを選定し、その選定した複数の学習データを目標学習データ集合として記憶する(ステップS10)。
【0054】
次に、情報処置装置は、単位学習作業を規定回数実施したか否かを判断する(ステップ12)。そして、規定回数実施した場合には、学習作業を終了する。
【0055】
一方、規定回数実施していない場合には、情報処置装置は、上下限値特定部において、学習データ記憶部に記憶された目標学習データ集合に含まれる複数の学習データを参照し、各学習データに含まれる変動掴み条件の中から最も大きい上限値と最も小さい下限値とを特定する(ステップS12)。
【0056】
次に、情報処置装置は、学習作業制御部において、次回の単位学習作業における変動掴み条件及び非変動掴み条件を選定する(ステップS14)。なお、この場合、前回の単位学習作業における変動掴み条件から少なくとも一つを選択し、その選択した変動掴み条件を非変動掴み条件へ追加する。従って、変動掴み条件の数が減り、非変動掴み条件の数が増える。
【0057】
次に、情報処置装置は、上下限値特定部で特定した変動掴み条件の上限値及び下限値を、次回の単位学習作業において同じ掴み条件が変動掴み条件として選定された場合、その変動掴み条件の数値範囲の上限値及び下限値として設定する(ステップS15)。
【0058】
そして、情報処置装置は、再度、ステップS1~ステップS10の一連の単位学習作業を実施し、これを繰り返す動作を実施する。
【0059】
次に、本実施形態に係る盛付システム100の分配作業を実行した場合の動作を
図4に基づいて説明する。
【0060】
前記学習作業が終了すると、分配作業が開始される。そして、先ず、情報処理装置は、盛高さ検出部において、分配対象となるトレイTに盛られた食品Fを四台のカメラC1によって撮影して得られた画像に基づき、トレイTに盛られた食品Fの画像平面上の各座標における盛高さ(以下、「分配用盛高さ情報」ともいう)を検出する(ステップS15)。
【0061】
次に、情報処理装置は、分配作業制御部において、最後の単位学習作業において生成された目標学習データ集合から予め設定された設定質量に最も近い質量を含む学習データを選定する(ステップS16)。
【0062】
次に、情報処理装置は、分配作業制御部において、選定した学習データに含まれる各指の差し込み深さが、分配用盛高さ情報に含まれるいずれかの盛高さよりも長いか否か判断する(ステップS17)。
【0063】
長いと判断した場合には、情報処理装置は、続いて、その判断が連続して規定回数続いたか否かを判断する(ステップS18)。そして、連続して規定回数続いたと判断した場合には、トレイTが空になったと判断して分配作業を終了する。一方、連続して規定回数続いていないと判断した場合には、分配装置DD(多指ハンド30)を制御し、トレイTに盛られた食品F全体の嵩(盛高さ)が増すように、トレイTに盛られた食品Fを盛り直し、再度ステップS15から実行し直す(ステップS19)。なお、この盛直し動作としては、例えば、多指ハンド30で盛られた食品Fの一部を持ち上げて再度戻すような動作や、盛られた食品Fをかき混ぜるような動作が考えられる。
【0064】
一方、短いと判断した場合には、情報処理装置は、分配作業制御部において、前記選定した学習データに含まれる制御条件によって多指ハンド30を制御し、トレイTに盛られた食品Fから一部の食品fを掴み上げて計量器20で質量を計量する(ステップ20)。
【0065】
次に、情報処理装置は、分配作業制御部において、前記計量した食品fの質量が予め定められた設定質量範囲内か否かを判断する(ステップS21)。なお、この設定質量範囲とは、設定質量から許容することができる誤差範囲であり、例えば、弁当に食品fを盛り付ける場合に、設定質量以上盛り付ければよいのであれば、設定質量範囲は、設定質量以上となる。
【0066】
そして、情報処理装置は、設定質量範囲内であると判断した場合には、分配作業制御部において、容器Bを撮影するカメラC2の画像に基づいて盛付位置を特定し、その盛付位置へ食品fを盛り付ける(ステップS23)。その後、再度ステップ15から実行する。
【0067】
一方、情報処理装置は、設定質量範囲内でないと判断した場合には、分配作業制御部において、多指ハンドで掴んだ一部の食品fを一度トレイTに戻し、再度ステップ16から実行する。
【0068】
情報処理装置は、一つのトレイTに対して前記分配作業が完了した後、次のトレイTを分配装置DDの近傍まで搬送し、再び前記分配作業を開始する。
【0069】
なお、学習作業は、例えば、トレイ供給装置SD1によって供給されるトレイTに盛られた食品の種別が変更された場合に再度実行すればよい。
【0070】
<実施形態2> 本実施形態は、前記実施形態1に係る多指ハンド30の変形例である。なお、
図4において、張力調節機構は省略している。多指ハンド30は、支持ボックス31と、支持ボックス31に対して大径円上に配置して接続される六本の外指32aと、支持ボックスに対して小径円上に配置して接続される四本の内指32bと、各指32a,32bの外側に接続される外側弾性体33と、各指32a、32bの内側ワイヤ34を介して接続される内側弾性体35と、内側弾性体35の張力を調節する張力調節機構36と、を具備している。
【0071】
外指32a及び内指32bは、
図4に示すように、それぞれ支持ボックス31の底面の外側に対して同心円上に配置されている。そして、外指32a及び内指32bは、支持ボックス31に対して一端側が軸止めされ、その一端側を支点として内方又は外方へ向かって揺動できる構造になっている。また、各指32a,32bは、いずれも途中に関節が設けられており、先端側の角度を調節できるようになっている。因みに、外指32aよりも内指32bの方が短くなっている。
【0072】
外側弾性体33は、一端が各指32a、32bの外側に固定され、他端が支持ボックス31の底面の外側に固定されている。これにより、各指32a,32bは、外側弾性体33によって常に外方へ向かって牽引され、開いた状態になっている。
【0073】
張力調節機構36は、
図5に示すように、支持ボックス31の内部に設置されている。具体的には、張力調節機構36は、支持ボックス31の底面の内側に対して固定される第1規制板36aと、支持ボックス31の底面の外側に対して固定される第2規制板36bと、第1規制板36a及び第2規制板36bの間に掛け渡されるチューブ36cと、支持ボックス31の天面の内側に対して固定されるサーボモータ36dと、第1規制板36aの上方に間隔を空けて配置され、サーボモータ36dに固定される可動板36eと、を備えている。なお、可動板36eは、サーボモータ36dによって第1規定板36aとの間隔を変更できるようになっている。そして、可動板36eには、第1規制板36aとの間に指32の数に対応した数の内側弾性体35が該第1規制板36aに接触しないように接続されている。
【0074】
チューブ36cは、第1規制板36aに設けられた第1規制孔36a´と、第2規制板36bに設けられた第2規制孔36b´と、を繋ぐように設置されている。なお、チューブ36cの第1規制板36aに接続される一端は、内側弾性体35に向かって開口しており、チューブ36cの第2規制板36cに接続される他端は、指32に向かって開口している。そして、ワイヤ34は、内側弾性体35から伸び、チューブ36cを通って、対応する指32の内側に接続されている。
【0075】
本実施形態に係る多指ハンド30の動作を説明すると、サーボモータ36bによって可動板36eを上方、言い換えれば、各指32から遠ざかる方向へ移動させることにより、外側弾性体33の張力に抗して各指32を内側へ引っ張る力(張力)が強くなる。そして、指32を、内側弾性体35よって内側に引っ張る力よりも、外側弾性体33によって外側に引っ張る力が上回ると、各指32が内方へ向かって閉じる。これにより、各指32によって食品を掴み取ることができる。一方、サーボモータ36bによって可動板36aを下方、言い換えれば、各指32へ近づく方向へ移動させることにより、外側弾性体33の張力に抗して各指32を内側へ引っ張る力(張力)が弱くなる。そして、指32を、内側弾性体35によって内側に引っ張る力よりも、外側弾性体33によって外側に引っ張る力が上回ると、各指32によって掴んだ食品を離すことができる。
【0076】
なお、各指32の把持力を調節する場合には、外側弾性体33及び内側弾性体35を異なる張力のものに変更すればよい。また、ワイヤ34の長さを調整したり、可動板36eの高さ位置を調整することによっても調整できる。
【0077】
このような構成にすれば、多指ハンドで食品を掴んだ場合に、各指が独立して可動するため、食品に対して偏った力が働くなり、例えば、ポテトチップのような割れ易い食品や豆腐のような潰れ易い食品の破損を防止できる。また、この場合、各指が食品の形状に合わせて可動するため、麺状・粒状・薄板状、マカロニ状等の食品のようにまとめて掴み取った場合に、その形状が随時変化するようなものであっても、その形状の変化に合わせて各指が追従して可動するため、当該食品を逃すことなく掴み取ることができる。また、割れ易い食品や潰れ易い食品を多指ハンドで掴み取る場合には、多指ハンドに設けられた指の数を増やすことで、一つの指当たりの把持力(トルク)を弱く設定することができるようになり、これにより、前記各食品の破損を防止できる。なお、指32毎に把持力を容易に変更することができる。
【0078】
また、ワイヤ34をチューブ36cによってガイドしているため、ワイヤ34がチューブ36cを摺動しても、ワイヤ34に対して負担が掛からず、ワイヤ34の断線を防止することができる。
【0079】
なお、本実施形態においては、内側弾性体35に対して張力調整機構36を設けたが、外側弾性体33に対して張力調節機構36を設けてもよく、両弾性体35,36に対して張力調節機構36を設けてもよい。
【0080】
<実施形態3> 本実施形態は、前記実施形態1に係る多指ハンド30の変形例である。なお、本実施形態に係る多指ハンド30は、支持ボックス31と、支持ボックス31に対向状に配置して接続される複数の指32と、各指32の一端に接続される弾性体37と、弾性体37を各指32に対して昇降させる昇降機構38と、を具備している。
【0081】
複数の指32は、支持ボックス31の底面に対し、対向するように並べて配置されていると共に、一端側を支点として開閉できるように軸支されている。そして、複数の指32は、支持ボックス31の底面から食品等を掴む他端側を突出させている。
【0082】
前記弾性体37は、所謂コイルバネである。そして、弾性体37は、支持ボックス31の内部に配置され、一端が各指32の一端に固定され、各指32の上方に配置された昇降機構38に接続されている。
【0083】
前記昇降機構38は、所謂サーボモータである。そして、昇降機構38は、支持ボックス31の内部天面に固定されており、各弾性体37を昇降するように動作させるものである。
【0084】
本実施形態に係る多指ハンド30の動作を説明すると、昇降機構38によって各弾性体37を下降、言い換えれば、各指32の一端を押す方向へ移動させることにより、各指32は、その上端側が各弾性体37に押されて開くように動作する。この場合、弾性体37は、縮んだ状態を維持した状態で昇降機構38の押し動作を指32に伝達する。
【0085】
一方、昇降機構38によって各弾性体37を上昇、言い換えれば、各指32を引く方向へ移動させることにより、各指32は、その上端側が各弾性体37に引っ張られて互いに閉じるように動作する。この場合、弾性体37は、昇降機構38によって所定距離引っ張られるまでは縮んだ状態を維持するが、昇降機構38によって所定距離以上引っ張られると徐々に伸びた状態となる。そして、弾性体37が伸びた状態になると、その伸長度合いによって指32を引っ張る力が増減し、これにより、各指32の把持力を調節することができるようになっている。なお、各弾性体37の弾性力を調節することにより、より細かく各対をなす指の把持力を調節することができる。
【0086】
このような構成であっても、前記実施形態2に係る多指ハンド39と同様の作用効果を得ることができる。
【0087】
<実施形態4> 本実施形態は、前記実施形態1の情報処理装置の変形例である。本実施形態の情報処理装置は、盛形状データ生成部をさらに備えている点で前記実施形態1の情報処理装置と相違しており、また、前記実施形態1の情報処理装置における学習作業制御部、学習データ記憶部、分配作業制御部の構成が相違している。以下において、これらの相違点を詳述する。
【0088】
前記盛形状データ生成部は、
図9に示すように、学習作業制御部の計量動作前に、その計量動作の制御条件に含まれる各指の開き幅X及び各指の差し込み深さYと、盛高さ検出部で検出された各座標の盛高さとを参照し、盛った食品Fの最も高い盛高さの座標である最高座標Pを中心とする直径X・深さYの盛範囲に盛られた食品の盛形状を示す盛形状データを生成するものである。
【0089】
前記盛形状データは、例えば、学習作業制御部の計量動作前に盛られた食品Fにおける次の二つの値の比によって表される値である。
・最高座標の盛高さ
・盛った食品Fの盛範囲に盛られた食品の断面積
なお、断面積は、盛った食品Fの最高座標を通過する断面の断面積であり、1つであってもよく、二つ以上であってもよい。二つ以上とする場合には、最高座標を通過する直交する二つの断面の断面積とすればよい。なお、断面積の代わりに、盛った食品Fの盛範囲に盛られた食品の体積を使用してもよい。
【0090】
本実施形態の学習作業制御部は、盛った食品Fの一部を掴み取る場合に、盛った食品Fの最高座標から食品の一部を掴み取る点で、実施形態1の学習作業制御部と異なっている。
【0091】
本実施形態の学習データ記憶部は、学習作業制御部の計量動作毎に、制御条件をその制御条件で掴み取った食品の質量と盛形状データとに関連付けて学習データを生成する点で、前記実施形態1の学習データ記憶部と異なっている。
【0092】
本実施形態の分配作業制御部は、分配用制御条件の選定方法が前記実施形態1の分配作業制御部と異なっている。具体的には、本実施形態の分配作業制御部は、分配対象となる盛った食品から予め定められた設定質量の食品を掴み取って分配する場合に先ず、学習データ記憶部に記憶された各学習データのうちで設定質量を中心として所定誤差範囲(許容誤差範囲)に含まれる質量を含む一次学習データ集合を参照し、当該一次学習データ集合の各学習データに含まれる制御条件及び盛形状データを最大値と最小値との間で複数クラスに分類する。
【0093】
ここで、複数クラスとは、例えば、制御条件が各指の開き幅である場合には、一次学習データ集合の各学習データに含まれる各指の開き幅値の最大値と最小値とを参照し、その最大値と最小値との間を等分割して形成した各範囲を示している。
【0094】
そして、本実施形態の分配作業制御部は、各クラスに含まれる値の数を参照し、最も多くの値が分類されたクラスにその制御条件又は盛形状データを有する各学習データから前記設定質量に最も近い質量を含む学習データを選定し、その学習データの制御条件を分配用制御条件として設定する。
【0095】
すなわち、例えば、学習データが各指の開き幅の値及び各指の差し込み深さの値を含む場合、先ず、各学習データに含まれる各指の開き幅の値を複数のクラスに分類すると共に、各指の差し込み深さの値を複数のクラスに分類する。この時、各制御条件でクラス数を同一にすることが好ましい。そして、全クラスの中から最も多くの値が含まれるクラスが、各指の開き幅の値を分類したクラスであった場合には、このクラスに分類された各指の開き幅を有する各学習データから設定質量に最も近い質量を含む学習データを選定する。
【0096】
なお、本実施形態に係る盛付システム100の学習作業を実行した場合の動作は、学習作業制御部の計量動作前に盛形状データ生成部で盛形状データを生成する点、学習作業制御部の計量動作において盛った食品Fの最高座標から一部の食品を掴み取る点、学習データ記憶部で生成される学習データが盛形状データを含む点が異なる以外は、前記実施形態1の動作と共通している。
【0097】
また、本実施形態に係る盛付システム100の分配作業を実行した場合の動作は、分配作業制御部における制御条件の選定方法が異なる以外は、前記実施形態1の動作と共通している。
【0098】
<その他の実施形態> 前記実施形態1においては、盛付システム100に対して、一つ分配装置DDを配置した態様であるが、複数の分配装置DDを配置してもよい。このようなものであれば、容器搬送装置SD2によって搬送される容器Bに対して、各分配装置DDによって異なる食品を順次盛り付けることができるようになり、作業効率が格段に向上する。
【0099】
なお、前記実施形態1に係る分配装置DDは、前記学習作業にのみ使用することにより、学習データ生成装置としても用いることができる。この場合、学習データ生成装置によって食品の種別毎に目標学習データ集合群を作成し、その、目標学習データ集合群を、学習データ生成装置と同じ構成の多指ハンドを備えたロボットアームによる食品の分配に使用することができる。
【0100】
なお、前記実施形態1においては、トレイTに盛られた状態の食品を分配しているが、必ずしもトレイTに盛る必要はなく、ベルトコンベアなどの搬送装置に直接盛った状態の食品を分配してもよい。
【0101】
また、前記実施形態1においては、盛付システム100に対して分配装置DDを使用したが、分配装置DDは、盛付システム100だけでなく、食品の袋詰め等にも使用することができる。
【0102】
その他、本発明は前記各実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0103】
100 盛付システム
DD 分配装置
SD1 トレイ供給装置(第1供給手段)
SD2 容器供給装置(第2供給手段)
C1,C2 カメラ
10 ハンド支持機構
20 計量器
30 多指ハンド
33 外側弾性体
35 内側弾性体
36 張力調節機構