(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-22
(45)【発行日】2022-03-30
(54)【発明の名称】高所構造物設置用アタッチメントとクレーン車
(51)【国際特許分類】
B66C 23/70 20060101AFI20220323BHJP
B66C 23/42 20060101ALI20220323BHJP
【FI】
B66C23/70 A
B66C23/42 A
(21)【出願番号】P 2018188730
(22)【出願日】2018-10-04
【審査請求日】2020-06-16
(73)【特許権者】
【識別番号】518353751
【氏名又は名称】有限会社甲新クレーン
(74)【代理人】
【識別番号】100092842
【氏名又は名称】島野 美伊智
(74)【代理人】
【識別番号】100166578
【氏名又は名称】鳥居 芳光
(72)【発明者】
【氏名】若林 一幸
(72)【発明者】
【氏名】若林 良卓
【審査官】今野 聖一
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-012275(JP,A)
【文献】実開平03-082387(JP,U)
【文献】実開昭61-108288(JP,U)
【文献】特開昭57-126393(JP,A)
【文献】特開平09-151078(JP,A)
【文献】実開昭59-156088(JP,U)
【文献】実開昭55-143290(JP,U)
【文献】特開平01-252495(JP,A)
【文献】実開昭60-043690(JP,U)
【文献】特開2020-033192(JP,A)
【文献】特開平9-323892(JP,A)
【文献】米国特許第05758785(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 23/00 - 23/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クレーンのブームの先端であって上端にその基端を介して取り付けられ
先端側が上記ブームの先端から離間した状態で前方に張り出された張出部と、
上記ブームの先端であって下端にその基端が取り付けられその先端が上記張出部
の上記基端側に寄った位置に取り付けられ上記張出部を支持する支持部と、
を具備したこと特徴とする高所構造物設置用アタッチメント。
【請求項2】
請求項1記載の高所構造物設置用アタッチメントにおいて、
上記支持部として長さが異なる複数種類が用意されていて、任意の長さの支持部を取り付けることにより上記張出部の張出角度を調整することを特徴とする高所構造物設置用アタッチメント。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の高所構造物設置用アタッチメントにおいて、
上記張出部は一対の張出部材を所定の間隔を存した状態で連結したものであり、上記支持部は上記張出部を挟むように所定の間隔を存した状態で配置された一対の支持部材を連結したものであることを特徴とする高所構造物設置用アタッチメント。
【請求項4】
請求項3記載の高所構造物設置用アタッチメントにおいて、
上記一対の張出部材間の先端にはシーブが取り付けられていて、該シーブを介して繰り出されたワイヤに吊下具が吊り下げられていることを特徴とする高所構造物設置用アタッチメント。
【請求項5】
請求項
4記載の高所構造物設置用アタッチメントにおいて、
上記一対の張出部材間の先端には
上記シーブを外して代わりに吊下具を直接取り付けることができるように構成されていることを特徴とする高所構造物設置用アタッチメント。
【請求項6】
請求項5記載の高所構造物用アタッチメントにおいて、
上記吊下具の両端には軸部が設けられていて、これら両軸部を上記一対の張出部材を貫通・配置させ、該貫通・配置部にボスを被冠して固定ボルトで固定するようにしたことを特徴とする高所構造物用アタッチメント。
【請求項7】
請求項1~請求項5の何れかに記載の高所構造物設置用アタッチメントにおいて、
上記高所構造物は天井クレーンであることを特徴とする高所構造物設置用アタッチメント。
【請求項8】
伸縮可能なブームと、
上記ブームの先端に着脱可能に取り付けられた請求項1~請求項6の何れかに記載の高所構造物設置用アタッチメントと、
を具備したことを特徴とするクレーン車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、工場の天井直下に天井クレーン等の各種高所構造物を設置する際に使用する高所構造物設置用アタッチメントとクレーン車に係り、特に、天井或いは屋根が設置されたままの状態で、天井クレーン等の各種高所構造物を設置することができるように工夫したものに関する。
【背景技術】
【0002】
高所構造物の一つである天井クレーンは概略次のような構成になっている。まず、天井直下の左右に一対のレール支持梁が設置されていて、これら一対のレール支持梁にはサドル走行レールがそれぞれ設置されている。上記一対のサドル走行レールにはそれぞれサドルが移動可能に設置されている。又、上記一対のサドル間にはガーダが架け渡されていて、このガーダにトロリが設置されている。
【0003】
上記構成をなす天井クレーンは次のような工程を経て設置される。
まず、工場が新設の場合であれば、工場の天井を構築する前に、天井クレーンの設置が行われる。これは、天井が構築されるとクレーン車と天井が干渉してしまうからである。
天井クレーンの設置は、一対のレール支持梁の設置、一対のサドル走行レールの設置、一対のサドルの設置、ガーダの掛け渡し、トロリの設置、の順で行われる。
尚、上記一対のサドル、ガーダ、トロリについては、ガーダの両端に上記一対のサドルを固着し、且つ、ガーダにトロリを取り付けた状態で吊り上げる。
天井クレーンが設置された後に天井を構築する。
【0004】
一方、既設の工場に天井クレーンを設置する場合には、まず、天井を撤去する。それによって、クレーン車の作業空間を確保する。次に、一対のレール支持梁の設置、一対のサドル走行レールの設置、一対のサドルの設置、ガーダの架け渡し、トロリの設置、等の作業を順次行う。そして、天井クレーンが設置された後に天井を再構築する。
【0005】
尚、各種施設において天井クレーンを設置する工法を開示するものとして、例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3、等がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開昭63-40034号公報
【文献】特開平8-12262号公報
【文献】特開2011-162298号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記従来の構成によると次のような問題があった。
まず、天井クレーンの設置工事に多くの労力と長い作業時間を要してしまうという問題があった。これは天井クレーンの設置作業が天井と干渉してしまうことに起因する。例えば、新設の場合であれば、天井付近に作業空間を確保するために、天井が構築される前に天井クレーンを設置しなければならない。又、既設の場合には、天井を一旦撤去して作業空間を確保してから天井クレーンの設置作業を行う必要があり、且つ、その後天井を再度構築しなければならないからである。
因みに、特許文献2に記載された発明による装置を使用して下から持ち上げていく工法もあるが、それでは工事が大掛かりになってしまう。
尚、この種の問題は天井クレーンの設置に限定される問題ではなく、各種高所構造物の設置において共通する課題である。
【0008】
本発明はこのような点に基づいてなされたものでその目的とするところは、天井或いは屋根が設置されたままの状態で、天井クレーン等の各種高所構造物を設置することができる高所構造物設置用アタッチメントとクレーン車を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するべく本願発明の請求項1による高所構造物設置用アタッチメントは、クレーンのブームの先端であって上端にその基端を介して取り付けられ先端側が上記ブームの先端から離間した状態で前方に張り出された張出部と、
上記ブームの先端であって下端にその基端が取り付けられその先端が上記張出部の上記基端側に寄った位置に取り付けられ上記張出部を支持する支持部と、
を具備したこと特徴とするものである。
又、請求項2による高所構造物設置用アタッチメントは、請求項1記載の高所構造物設置用アタッチメントにおいて、上記支持部として長さが異なる複数種類が用意されていて、任意の長さの支持部を取り付けることにより上記張出部の張出角度を調整することを特徴とするものである。
又、請求項3による高所構造物設置用アタッチメントは、請求項1又は請求項2記載の高所構造物設置用アタッチメントにおいて、上記張出部は一対の張出部材を所定の間隔を存した状態で連結したものであり、上記支持部は上記張出部を挟むように所定の間隔を存した状態で配置された一対の支持部材を連結したものであることを特徴とするものである。
又、請求項4による高所構造物設置用アタッチメントは、請求項3記載の高所構造物設置用アタッチメントにおいて、上記一対の張出部材間の先端にはシーブが取り付けられていて、該シーブを介して繰り出されたワイヤに吊下具が吊り下げられていることを特徴とするものである。
又、請求項5による高所構造物設置用アタッチメントは、請求項4記載の高所構造物設置用アタッチメントにおいて、上記一対の張出部材間の先端には上記シーブを外して代わりに吊下具を直接取り付けることができるように構成されていることを特徴とするものである。
又、請求項6による高所構造物設置用アタッチメントは、請求項5記載の高所構造物用アタッチメントにおいて、上記吊下具の両端には軸部が設けられていて、これら両軸部を上記一対の張出部材を貫通・配置させ、該貫通・配置部にボスを被冠して固定ボルトで固定するようにしたことを特徴とするものである。
又、請求項7による高所構造物設置用アタッチメントは、請求項1~請求項5の何れかに記載の高所構造物設置用アタッチメントにおいて、上記高所構造物は天井クレーンであることを特徴とするものである。
請求項8によるクレーン車は、伸縮可能なブームと、上記ブームの先端に着脱可能に取り付けられた請求項1~請求項6の何れかに記載の高所構造物設置用アタッチメントと、を具備したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
以上述べたように本願発明の請求項1による高所構造物設置用アタッチメントによると、クレーンのブームの先端に取り付けられ前方に張り出された張出部と、上記ブームの先端にその一端が取り付けられその他端が上記張出部に取り付けられ上記張出部を支持する支持部と、を具備した構成になっているので、天井或いは屋根が設置されたままの状態で、天井クレーン等の各種高所構造物を設置することができる。
又、請求項2による高所構造物設置用アタッチメントによると、請求項1記載の高所構造物設置用アタッチメントにおいて、上記支持部として長さが異なる複数種類が用意されていて、任意の長さの支持部を取り付けることにより上記張出部の張出角度を調整するように構成したので、現場に応じて最適な状態を構成して提供することができる。
又、請求項3による高所構造物設置用アタッチメントによると、請求項1又は請求項2記載の高所構造物設置用アタッチメントにおいて、上記張出部は一対の張出部材を所定の間隔を存した状態で連結したものであり、上記支持部は上記張出部を挟むように所定の間隔を存した状態で配置された一対の支持部材を連結したものであるので、比較的簡単な構成で所望の機能を得ることができる。
又、請求項4による高所構造物設置用アタッチメントによるとは、請求項3記載の高所構造物設置用アタッチメントにおいて、上記一対の張出部材間の先端にはシーブが取り付けられていて、該シーブを介して繰り出されたワイヤに吊下具が吊り下げられているので、上記効果をより確実なものとすることができる。
又、請求項5による高所構造物設置用アタッチメントによると、請求項3記載の高所構造物設置用アタッチメントにおいて、上記一対の張出部材間の先端には吊下具が直接取り付けられているので、上記効果をより高めることができる。
又、請求項6による高所構造物設置用アタッチメントによると、請求項5記載の高所構造物用アタッチメントにおいて、上記吊下具の両端には軸部が設けられていて、これら両軸部を上記一対の張出部材を貫通・配置させ、該貫通・配置部にボスを被冠して固定ボルトで固定するようにしたので、吊下具の着脱が容易になる。
又、請求項7による高所構造物設置用アタッチメントによると、請求項1~請求項5の何れかに記載の高所構造物設置用アタッチメントにおいて、上記高所構造物は天井クレーンであるので、天井クレーンの設置作業に要する労力の軽減と時間の短縮を図ることができる。
又、請求項8によるクレーン車によると、伸縮可能なブームと、上記ブームの先端に着脱可能に取り付けられた請求項1~請求項6の何れかに記載の高所構造物設置用アタッチメントと、を具備しているので、高所構造物の設置に最適なクレーン車を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の第1の実施の形態を示す図で、クレーン車により天井クレーンを設置している様子を示す斜視図である。
【
図2】本発明の第1の実施の形態を示す図で、クレーン車の待機時の側面図である。
【
図3】本発明の第1の実施の形態を示す図で、クレーン車のブームの構成を示す側面図である。
【
図4】本発明の第1の実施の形態を示す図で、
図3のIV部を拡大して示す一部側面図である。
【
図5】本発明の第1の実施の形態を示す図で、高所構造物設置用アタッチメントをクレーン車のブームの先端に取り付けた状態を示す側面図である。
【
図6】本発明の第1の実施の形態を示す図で、
図5のVI-VI矢視図である。
【
図7】本発明の第1の実施の形態を示す図で、
図5のVII部の取付構造を示す分解図である。
【
図8】本発明の第1の実施の形態を示す図で、
図6のVIII部の拡大図である。
【
図9】本発明の第1の実施の形態を示す図で、
図8を取付構造を分解して示す分解図である。
【
図10】本発明の第1の実施の形態を示す図で、
図5のX部の取付構造を示す分解図である。
【
図11】本発明の第1の実施の形態を示す図で、
図5のXI部の取付構造を示す分解図である。
【
図12】本発明の第1の実施の形態を示す図で、作業の様子を示す斜視図である。
【
図13】本発明の第1の実施の形態を示す図で、作業の様子を示す斜視図である。
【
図14】本発明の第2の実施の形態を示す図で、高所構造物設置用アタッチメントの正面図である。
【
図15】本発明の第3の実施の形態を示す図で、高所構造物設置用アタッチメントの張出部の先端部の構成を示す分解正面図である。
【
図16】本発明の第3の実施の形態を示す図で、高所構造物設置用アタッチメントの側面図である。
【
図17】本発明の第4の実施の形態を示す図で、高所構造物設置用アタッチメントの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、
図1乃至
図13を参照して本発明の第1の実施の形態を説明する。
図1は本実施の形態によるクレーン車1の機能時における全体の構成を示す斜視図であり、
図2は待機時のクレーン車の側面図である。まず、車両本体3があり、この車両本体3は、ボディ5と、このボディ5内に内装された図示しないエンジンと、上記エンジンに回転伝達機構を介して連結された4個の車輪7、7、7、7と、等から構成されている。
【0013】
上記車両本体3の上には旋回台9が旋回可能に設置されている。この旋回台9には操縦室11が設置されているとともに、ブーム13が設置されている。又、上記車両本体3にはアウトリガー装置15が設置されていて、
図1に示すように、機能時にクレーン車1全体を支える構成になっている。
【0014】
上記ブーム13は、図示しない油圧シリンダによって伸縮されるテレスコピック構造をなしていて、第1ブーム要素17、第2ブーム要素19、第3ブーム要素21、第4ブーム要素23、第5ブーム要素25、第6ブーム要素27から構成されている。又、上記ブーム13にはジブ29が取り付けられている。
【0015】
上記第6ブーム要素27の先端には主巻ワイヤ用トップシーブ31が回転可能に取り付けられている。一方、
図2に示すように、上記旋回台9側には主巻ウィンチ33が設置されていて、この主巻ウィンチ33から繰り出された主巻ワイヤ35は、上記ブーム13の第1ブーム要素17に取り付けられたガイドローラ37、上記第6ブーム要素27に回転自在に取り付けられた主巻ワイヤ用ガイドシーブ39を介して、上記主巻ワイヤ用トップシーブ31に巻回されている。そして、上記主巻ワイヤ35によって主フックユニット41が垂下されている。上記主フックユニット41にはシーブ43が取り付けられていて、上記主巻ワイヤ35は上記シーブ43に巻回されガイドローラ45、固定部46を介して上記第6ブーム要素27に固定されている。上記主フックユニット41には主フック47が取り付けられている。
【0016】
又、上記第6ブーム要素27には補助ワイヤ用トップシーブ49と補助ワイヤ用ガイドシーブ51が回転可能に取り付けられている。これら補助ワイヤ用トップシーブ49と補助ワイヤ用ガイドシーブ51には補助巻ワイヤ53が巻回されている。
図1に示すように、上記旋回台9には補助巻ウィンチ55が設置されていて、上記補助巻ワイヤ53はこの補助巻ウィンチ55から繰り出されている。
【0017】
上記ジブ29は既に説明した主巻ワイヤ用トップシーブ31と同軸であって揺動可能に取り付けられている。上記ジブ29の先端には上記補助巻ワイヤ53を巻回するためのシーブ57が回転可能に取り付けられている。
【0018】
又、上記ジブ29の先端には油圧シリンダ59が取り付けられている。上記油圧シリンダ59はシリンダ61とこのシリンダ61に対して移動可能に取り付けられたピストンロッド63とから構成されている。上記ジブ29を上記ブーム13に対して立ち上げた状態で、上記ピストンロッド63の先端を上記ブーム13の先端のロッド固定用ブラケット65に図示しないテンションロッド本体を介してピン(図示せず)により連結することにより、上記ジブ29の立ち上げ状態が保持される。
【0019】
上記第6ブーム要素27の先端には、
図1、
図5に示すように、高所構造物設置用アタッチメント71が着脱可能に取り付けられている。この高所構造物設置用アタッチメント71は次のような構成をなしている。まず、張出部73があり、この張出部73は一対の張出部材75、75から構成されている。上記一対の張出部材75、75の基端部は連結部材77、77によって連結されている。又、
図6に示すように、上記一対の張出部材75、75の先端部は連結部材78によって連結されている。
【0020】
上記一対の張出部材75、75の基端にはフック79、79が固着されている。これらフック79、79の上記第6ブーム要素27に対する取付構造は
図7に示すようになっている。まず、軸部81があり、この軸部81の両端小径部83、83が上記第6ブーム要素27の貫通孔を通して外側に突出・配置されている。上記フック79、79はこれら突出・配置された小径部83、83に係合されている。上記小径部83、83の先端部は上記フック79、79の外側面に面一の状態で配置されていて、そこに円板状の端部材85、85が当接されている。2本の固定ボルト87、87を上記端部材85、85の貫通孔85a、85aを通して上記小径部83、83に螺合することにより、上記フック79,79が軸部81に固定されている。又、上記フック79、79の開口部にはボルト89、89がそれぞれ螺合されていて抜け止めがなされている。
【0021】
上記一対の張出部材75、75の先端間には、
図6に示すように、3個のシーブ95、97、99が積層された状態で挟持・固定されている。これら3個のシーブ95、97、99の取付構造は
図8、
図9に示すようになっている。まず、片側(
図9中右側)にシャフト101を配置するとともに、左右両側に固定用ボス103、103を配置する。上記シャフト101を一方(
図9中右側)の固定用ボス103、上記張出部材75、3個のシーブ95、97、99、張出部材75、他方(
図9中左側)の固定用ボス103の貫通孔を通して、その先端面を上記他方の固定用ボス103と面一の状態とする。上記固定用ボス103、103は複数本の固定ボルト109によって張出部材75、75に固定されている。上記他方の固定用ボス103の外面に平板105を設置し、上記複数本の固定ボルト109の内の1本の固定用ボルト109によって上記固定用ボス103に固定する。そして、別の固定ボルト107を上記平板105の貫通孔を通して上記シャフト101の先端に螺合することにより、上記3個のシーブ95、97、99が上記一対の張出部材75、75の先端間に固定されている。上記フランジ103は複数本の固定ボルト109によって張出部材75に固定されている。
【0022】
又、
図5、
図6に示すように、上記張出部71と上記ブーム13の第6ブーム要素27との間には支持部111が設置されている。上記支持部111は一対の支持部材113、113から構成されている。上記支持部材113、113の基端にはフック115、115が固着されている。上記フック115、115の上記第6ブーム要素27に対する取付構造は
図10に示すようになっている。まず、軸部121があり、この軸部121の両端小径部123、123が第6ブーム要素27の貫通孔を通して外側に突出・配置されている。上記フック115、115はこれら突出・配置された小径部123、123に係合されている。上記小径部123、123の先端部は上記フック115、115からさらに外側に突出・配置されていて、そこにスリーブ125、125が被冠されている。上記スリーブ125、125に円板126、126を押し当てて、2本の固定ボルト127、127を上記円板126、126の貫通孔を通して上記小径部123、123に螺合することにより、上記フック115、115が上記第6ブーム要素27に固定されている。又、上記フック115、115の開口部にはピン129、129が差し込まれていて、その先端部には抜け止めピン131、131が差し込まれている。
【0023】
又、上記一対の支持部材113、113は上記張出部71を外側から挟むように配置されている。上記支持部材113、113の張出部71への取付構造は
図11に示すようになっている。まず、上記張出部71の基端部には軸141が貫通・配置されていて、この軸141の両端には小径部143、143が設けられている。上記小径部143、143は上記支持部材113、113の貫通孔113a、113aを通して面一の状態で配置されていて、そこに円板145、145が押し当てられている。2本の固定ボルト147、147を上記円板145、145の貫通孔145a、145aを通して上記小径部143、143に螺合することにより、上記一対の支持部材113、113は上記張出部71に固定されている。
【0024】
上記支持部111としてはその長さが異なるものが複数種類用意されている。そして、現場に応じた任意の長さの支持部91が選択されて使用される。それによって、張出部71の角度が変わる。
尚、
図5中短尺の支持部111を使用した場合を実線で示し、長尺の支持部111を使用した場合を仮想線で示す。
【0025】
上記張出部71の先端には、
図5、
図6に示すように、吊下具151が垂下されている。上記吊下具151は、一対の支持板153、153と、これら一対の支持板153、153の間に取り付けられた2個のシーブ155、157と、これら2個のシーブ155、157の間に配置された吊下金具159と、から構成されている。一方の支持板153の外側からシャフト161を差し込みその先端部を他方の支持板153から外側に突出・配置させる。その突出・配置されたシャフト161の先端部にフランジ163を介してボス165を被冠する。2本の固定ボルト167、167をボス165の貫通孔を通して上記シャフト161の先端部に螺合することにより、上記一対の支持板153、153、2個のシーブ155、157、吊下金具159が連結・固定されている。
【0026】
上記吊下具159は、ドラム169と、このドラム169から下方に延長された固定部171と、から構成されていて、上記固定部171は逆U字状に形成されていて、天井クレーン用の構造物173に溶着された被把持片175を挟んでボルト177、ナット179によって固定される。
尚、上記構造物173はガーダ174、左右のサドル176、176、ホイスト178、等から構成されている。
【0027】
上記張出部73の先端に設けられたシーブ95、99と上記シーブ155、157には既に説明した補助ワイヤ53が二重巻きで巻回されていて、その先端は、ガイドローラ181、固定部183を介して張出部材77に固定されている。上記張出部材77には被挟持部78が突設されていて、この被挟持部78を上記固定部183によって挟持し、ボルト184及びナット186によって締結・固定されている。
【0028】
以上の構成を基にその作用を説明する。
本実施の形態の場合には、一例として、天井クレーンを設置する場合を例に挙げて説明する。
図12は建屋201内において天井クレーンを設置する場合を示す図であり、上記建屋201には側壁203はもとより天井205も既設されている。
【0029】
上記状態において、建屋201内にクレーン車1を搬入してブーム13を延長する。上記ブーム13の第6ブーム要素27の先端には本実施の形態による高所構造物設置用アタッチメント71が取り付けられている。上記高所構造物設置用アタッチメント71の張出部73の先端から吊下具151を吊り下げ、この吊下具151を介して、天井クレーン用の構造物173を吊りあげる。
図13に示すように、この構造物173を所望の高さまで吊り上げて設置・固定する。
同様の作業を繰り返すことにより、天井クレーンに必要な各種鋼材、構造物を吊り上げて設置する。
【0030】
以上、本実施の形態によると次のような効果を奏することができる。
まず、天井205が設置されたままの状態で、天井クレーンに必要な構造物173を設置することができるようになった。これは、本実施の形態による高所構造物設置用アタッチメント71を使用したからであり、例えば、ブーム13の第6ブーム要素27から吊り下げられた主フックユニット41を使用して吊り上げる場合と比較して、天井205により近い位置まで上記構造物173等を吊り上げることができるからである。
又、高所構造物設置用アタッチメント71において、支持部91は長尺、短尺2種類用意されていて、任意の支持部91を選択・使用することにより、上記効果をさらに高めることができる。
又、吊下具151の構成も簡単であり、且つ、小型であるので、それによっても、構造物173の吊り上げ高さをより高くすることができる。
又、高所構造物設置用アタッチメント71は張出部73と支持部111とからなる簡単な構成であり、既存のクレーン車に対しても容易に適用することができる。
又、上記高所構造物設置用アタッチメント71の第6ブーム要素27に対する着脱は、固定ボルト87、87、固定ボトル127、127を緩めることにより容易に行うことができる。
又、張出部73と支持部111との分解も、固定ボルト147、147を緩めることにより容易に行うことができ、支持部111の交換も容易である。
【0031】
次に、
図14を参照して第2の実施の形態を説明する。この第2の実施の形態の場合には、張出部71の先端部のシーブ97を使用して、前記第1の実施の形態の場合とは異なる構成の吊下具211を垂下した構成になっている。上記吊下具211は次のような構成をなしている。
まず、中空状の支持部材213があり、この支持部材213内には1個のシーブ215が回転可能に配置されている。
【0032】
上記支持部材213の下にはリング状のフック217が取り付けられている。
尚、その他の構成は前記第1の実施の形態の場合と同じであり、図中同一部分には同一符号を付して示しその説明は省略する。
【0033】
このような構成でも前記第1の実施の形態の場合と同様の効果を奏することができる。
【0034】
次に、
図15、
図16を参照して本発明の第3の実施の形態を説明する。前記第1の実施の形態の場合には、張出部71の先端部に3個のシーブ95、97、99を取り付けたが(
図6、
図8、
図9に示す)、この第3の実施の形態の場合には、
図15、
図16に示すように、吊下具241を直接取り付けるようにしている。上記吊下具241は吊下具本体242とフック244とから構成されている。上記吊下具本体242の両端には軸部243、243が設けられていて、これら両軸部243、243を張出部材75、75の貫通孔に挿し込む上記軸部張出部材75、75の両側に固定用ボス245、245を配置し、さらにその外側に別の固定用ボス247、247を配置する。そこに2本の固定ボルト249、249を差し込んで上記軸部243、243に螺合する。
尚、その他の構成は前記第1の実施と同じであり、図中同一部分には同一符号を付して示しその説明を省略する。
【0035】
このような構成でも前記第1、第2の実施の形態の場合と同様の効果を奏することができる。
又、フック241を張出部71の先端に直接取り付けるようにしたので、例えば、天井クレーンの構造物をより高い位置まで吊り上げることができる。
【0036】
次に、
図17を参照して本発明の第4の実施の形態を説明する。この第4の実施の形態の場合には、前記第2の実施の形態において、吊下具211の代わりに別の構成の吊下具261を吊り下げるようにしたものである。
その他の構成は前記第2の実施の形態の場合と同じであり、図中同一部分には同一符号を付して示しその説明は省略する。
【0037】
このような構成でも前記第2の実施の形態の場合と同様の効果を奏することができる。
【0038】
尚、本発明は前記第1乃至第4の実施の形態に限定されるものではない。
まず、前記第1乃至第4の実施の形態の場合には、高所構造物の一例として天井クレーンを例に挙げて説明したが、それに限定されるものではなく、高所に設置される様々な構造物の設置に適用可能である。
又、高所構造物設置用アタッチメントの構成についてもさまざまな構成が考えられる。
例えば、前記第1乃至第4の実施の形態の場合には、張出部を一対の張出部材から構成し、支持部を一対の支持部材から構成したが、それに限定されるものではなく、一つの張出部材、一つの支持部材から構成するようにしてもよい。
又、高所構造物設置用アタッチメントのブームに対する着脱の構成も様々な構成が考えられる。
又、吊下具の構成についてもさまざまな構成が考えられる。
又、張出部と支持部の連結構造についても様々な構成が考えられる。
その他図示した構成はあくまで一例である。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、例えば、工場の天井直下に各所高所構造物を設置する際に使用する高所構造物設置用アタッチメントとクレーン車に係り、特に、天井或いは屋根が設置されたままの狭隘な空間で、高所構造物を設置することができるように工夫したものに関し、例えば、天井クレーンの設置に好適である。
【符号の説明】
【0040】
1 クレーン車
71 高所構造物設置用アタッチメント
73 張出部
75 張出部材
95 シーブ
97 シーブ
99 シーブ
111 支持部
113 支持部材
151 吊下具
211 吊下具
241 吊下具
261 吊下具