(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-22
(45)【発行日】2022-03-30
(54)【発明の名称】塔状構造物の解体方法および塔状構造物の解体装置
(51)【国際特許分類】
E04G 23/08 20060101AFI20220323BHJP
【FI】
E04G23/08 J
E04G23/08 D
(21)【出願番号】P 2019210400
(22)【出願日】2019-11-21
【審査請求日】2021-04-27
(73)【特許権者】
【識別番号】595023910
【氏名又は名称】松島工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】松嶋 節郎
【審査官】家田 政明
(56)【参考文献】
【文献】特開昭55-101671(JP,A)
【文献】特開2012-225006(JP,A)
【文献】特開平9-142774(JP,A)
【文献】米国特許第5653508(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 23/08
E04G 21/16
B66C 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄筋コンクリート製の塔状構造物の解体方法であって、
(i)メインウィンチのメインウィンチワイヤと接続された第1の結合手段およびサブウィンチのサブウィンチワイヤと接続された第2の結合手段に連結された、切断ピースを得るステップであって、前記切断ピースは、第1の高さレベルにおいて、塔状構造物の上部の一部を切断することにより得られる、ステップと、
(ii)前記切断ピースを前記サブウィンチワイヤで吊り上げるとともに、前記切断ピースに接続された前記第1の結合手段の緩みを低減するステップと、
(iii)前記サブウィンチワイヤを延伸させるステップであって、これにより、前記切断ピースは、前記第1の結合手段により、鉛直方向に吊り下げられる、ステップと、
(iv)前記メインウィンチワイヤを延伸させることにより、前記切断ピースを地上まで降ろすステップと、
を有する、解体方法。
【請求項2】
前記(i)のステップは、
(a)前記第1の結合手段および前記第2の結合手段を前記塔状構造物の被分離領域に接続してから、前記塔状構造物から前記被分離領域を切断し、前記切断ピースを分離するステップ、または
(b)前記塔状構造物の上部の一部を切断し、前記切断ピースを分離してから、前記第1の結合手段および前記第2の結合手段を、前記切断ピースに接続するステップ、または
(c)前記第2の結合手段を前記塔状構造物の被分離領域に接続してから、前記塔状構造物から前記被分離領域を切断して前記切断ピースを分離し、その後、前記第1の結合手段を前記切断ピースに接続するステップ、または
(d)前記第1の結合手段を前記塔状構造物の被分離領域に接続してから、前記塔状構造物から前記被分離領域を切断して前記切断ピースを分離し、その後、前記第2の結合手段を前記切断ピースに接続するステップ、
を有する、請求項1に記載の解体方法。
【請求項3】
さらに、
(v)前記(i)~(iv)のステップを繰り返し、同一高さレベルにある複数の切断ピースを地上まで降ろすステップ
を有する、請求項1または2に記載の解体方法。
【請求項4】
さらに、
(vi)前記第1の高さレベルよりも低い第2の高さレベルで、前記(i)~(v)のステップを繰り返すステップ
を有する、請求項3に記載の解体方法。
【請求項5】
さらに、前記(iii)のステップの後であって、前記(iv)のステップの前に、
(iii')前記切断ピースから前記第2の結合手段を取り外すステップ、
を有する、請求項1乃至4のいずれか一つに記載の解体方法。
【請求項6】
前記塔状構造物の前記第1の高さレベルよりも高い位置には、天井梁が設けられ、
前記メインウィンチワイヤは、前記天井梁を経由して、前記第1の結合手段と接続され、
前記サブウィンチワイヤは、前記天井梁を経由して、前記第2の結合手段に接続される、請求項1乃至5のいずれか一つに記載の解体方法。
【請求項7】
前記天井梁は、上下方向に伸縮可能な支持マストの上に設置されたステージ上の支柱により支持される、請求項6に記載の解体方法。
【請求項8】
前記サブウィンチは、前記ステージ上に配置される、請求項7に記載の解体方法。
【請求項9】
前記メインウィンチは、地上に配置される、請求項1乃至8のいずれか一つに記載の解体方法。
【請求項10】
前記塔状構造物は、高さが100m以上である、請求項1乃至9のいずれか一つに記載の解体方法。
【請求項11】
鉄筋コンクリート製の塔状構造物の解体装置であって、
塔状構造物の周囲に、鉛直方向に延在するように設置された複数の支持マストと、
該支持マストに支持されたステージと、
該ステージ上に設置された支柱により支持された天井梁と、
メインウィンチから、前記天井梁を経由して延在するメインウィンチワイヤと、
サブウィンチから、前記天井梁を経由して延在するサブウィンチワイヤと、
を備え、
前記メインウィンチワイヤおよび前記サブウィンチワイヤは、それぞれ、第1の結合手段および第2の結合手段と接続され、
前記第1の結合手段および前記第2の結合手段を、前記塔状構造物から分離された切断ピースと連結し、前記切断ピースを前記サブウィンチワイヤで吊り上げ、前記切断ピースに接続された前記第1の結合手段の緩みを低減させた後、前記サブウィンチワイヤを延伸させることにより、前記第1の結合手段により、前記切断ピースを鉛直方向に吊り下げることが可能となる、解体装置。
【請求項12】
前記サブウィンチは、前記ステージ上に載置される、請求項11に記載の解体装置。
【請求項13】
前記メインウィンチは、地上に配置される、請求項11または12に記載の解体装置。
【請求項14】
前記支持マストは、マストブロックの連結およびマストブロックの取り外しにより、高さの上昇および下降が可能となるように構成される、請求項11乃至13のいずれか一つに記載の解体装置。
【請求項15】
前記サブウィンチは、複数存在し、
各サブウィンチは、上面視、前記塔状構造物の中心軸に対して回転対称な位置に設置される、請求項11乃至14のいずれか一つに記載の解体装置。
【請求項16】
前記塔状構造物は、高さが100m以上である、請求項11乃至15のいずれか一つに記載の解体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄筋コンクリート製の塔状構造物の解体方法および鉄筋コンクリート製の塔状構造物の解体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
煙突のような塔状構造物の解体方法の一つに、ワイヤーソーを用いて塔状構造物の上部から一部分を切断し、分離された切断ピースをクレーンを用いて地上まで吊り降ろす工程を繰り返す方法がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
鉄筋コンクリート製の塔状構造物の中には、高さが100mを超えるような大型のものが存在する。
【0004】
そのような大型の塔状構造物を解体する場合、地上に設置された1000トンクラスの大型クローラクレーンが使用される。大型クローラクレーンは、高重量物にも対応することができるため、切断ピースが比較的高重量であっても、切断ピースを吊り上げることができる。
【0005】
しかしながら、このような大型クローラクレーンは、使用場所が限られる上、地盤改良などの追加工事が必要となる場合がある。その結果、塔状構造物の解体に、莫大なコストが発生する。
【0006】
また、大型クローラクレーンの設置が不可能な場合には、180トン級のクライミングクレーンが用いられる。クライミングクレーンは、塔状構造物に沿うように設置できる。従って、クライミングクレーンは、あまり設置場所の制約を受けずに適用することができる。
【0007】
しかしながら、180トン級のクライミングクレーンは、切断ピースの吊り上げ能力があまり高くはなく、切断ピースの重量は、10トンが限界であり、通常の場合、せいぜい5~6トンに制限される。従って、この方法では、切断ピースを小さくするため、塔状構造物を切断する回数を増やす必要があり、切断コストが上昇してしまう。また、工期が長くなり、効率的な解体を行うことが難しくなってしまう。
【0008】
このように、従来の方法を用いて大型の塔状構造物を解体しようとすると、効率およびコストの面で問題が生じ得る。
【0009】
本発明は、このような背景に鑑みなされたものであり、本発明では、鉄筋コンクリート製の大型の塔状構造物に対して、より効率的かつ低コストで適用することが可能な、塔状構造物の解体方法を提供することを目的とする。また、本発明では、そのような塔状構造物の解体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明では、鉄筋コンクリート製の塔状構造物の解体方法であって、
(i)メインウィンチのメインウィンチワイヤと接続された第1の結合手段およびサブウィンチのサブウィンチワイヤと接続された第2の結合手段に連結された、切断ピースを得るステップであって、前記切断ピースは、第1の高さレベルにおいて、塔状構造物の上部の一部を切断することにより得られる、ステップと、
(ii)前記切断ピースを前記サブウィンチワイヤで吊り上げるとともに、前記切断ピースに接続された前記第1の結合手段の緩みを低減するステップと、
(iii)前記サブウィンチワイヤを延伸させるステップであって、これにより、前記切断ピースは、前記第1の結合手段により、鉛直方向に吊り下げられる、ステップと、
(iv)前記メインウィンチワイヤを延伸させることにより、前記切断ピースを地上まで降ろすステップと、
を有する、解体方法が提供される。
【0011】
また、本発明では、鉄筋コンクリート製の塔状構造物の解体装置であって、
塔状構造物の周囲に、鉛直方向に延在するように設置された複数の支持マストと、
該支持マストに支持されたステージと、
該ステージ上に設置された支柱により支持された天井梁と、
メインウィンチから、前記天井梁を経由して延在するメインウィンチワイヤと、
サブウィンチから、前記天井梁を経由して延在するサブウィンチワイヤと、
を備え、
前記メインウィンチワイヤおよび前記サブウィンチワイヤは、それぞれ、第1の結合手段および第2の結合手段と接続され、
前記第1の結合手段および前記第2の結合手段を、前記塔状構造物から分離された切断ピースと連結し、前記切断ピースを前記サブウィンチワイヤで吊り上げ、前記切断ピースに接続された前記第1の結合手段の緩みを低減させた後、前記サブウィンチワイヤを延伸させることにより、前記第1の結合手段により、前記切断ピースを鉛直方向に吊り下げることが可能となる、解体装置が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明では、大型の塔状構造物に対して、より効率的かつ低コストで適用することが可能な、塔状構造物の解体方法を提供することができる。また、本発明では、そのような塔状構造物の解体装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態による塔状構造物の解体方法のフローを模式的に示した図である。
【
図2】塔状構造物の解体装置の構成例を概略的に示した図である。
【
図3】塔状構造物の周囲における支持マストの配置例を模式的に示した図である。
【
図4】本発明の一実施形態による解体方法により、塔状構造物が解体される様子を模式的に示した図である。
【
図5】本発明の一実施形態による解体方法により、塔状構造物が解体される様子を模式的に示した図である。
【
図6】本発明の一実施形態による解体方法により、塔状構造物が解体される様子を模式的に示した図である。
【
図7】本発明の一実施形態による解体方法により、塔状構造物が解体される様子を模式的に示した図である。
【
図8】支持マストの基本単位となるマストブロックの一例を模式的に示した図である。
【
図9】支持マスト高さ調節装置により、支持マストが延伸される様子を模式的に示した図である。
【
図10】支持マスト高さ調節装置を利用して、支持マストの全長を延伸する方法の一例を模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態について説明する。
【0015】
本発明の一実施形態では、鉄筋コンクリート製の塔状構造物の解体方法であって、
(i)メインウィンチのメインウィンチワイヤと接続された第1の結合手段およびサブウィンチのサブウィンチワイヤと接続された第2の結合手段に連結された、切断ピースを得るステップであって、前記切断ピースは、第1の高さレベルにおいて、塔状構造物の上部の一部を切断することにより得られる、ステップと、
(ii)前記切断ピースを前記サブウィンチワイヤで吊り上げるとともに、前記切断ピースに接続された前記第1の結合手段の緩みを低減するステップと、
(iii)前記サブウィンチワイヤを延伸させるステップであって、これにより、前記切断ピースは、前記第1の結合手段により、鉛直方向に吊り下げられる、ステップと、
(iv)前記メインウィンチワイヤを延伸させることにより、前記切断ピースを地上まで降ろすステップと、
を有する、解体方法が提供される。
【0016】
また、本発明の一実施形態では、鉄筋コンクリート製の塔状構造物の解体装置であって、
塔状構造物の周囲に、鉛直方向に延在するように設置された複数の支持マストと、
前記支持マストにより支持された、または前記支持マストの上に設置された支柱により支持された天井梁と、
メインウィンチから、前記天井梁を経由して延在するメインウィンチワイヤと、
サブウィンチから、前記天井梁を経由して延在するサブウィンチワイヤと、
を備え、
前記メインウィンチワイヤおよび前記サブウィンチワイヤは、それぞれ、第1の結合手段および第2の結合手段と接続され、
前記第1の結合手段および前記第2の結合手段を、前記塔状構造物から分離された切断ピースと連結し、前記切断ピースを前記サブウィンチワイヤで吊り上げ、前記切断ピースに接続された前記第1の結合手段の緩みを低減させた後、前記サブウィンチワイヤを延伸させることにより、前記第1の結合手段により、前記切断ピースを鉛直方向に吊り下げることが可能となる、解体装置が提供される。
【0017】
ここで、本願において、「メインウィンチワイヤと接続された第1の結合手段」および「サブウィンチワイヤと接続された第2の結合手段」などの表現における「接続」と言う用語は、2つの物、例えばメインウィンチワイヤ(またはサブウィンチワイヤ)と結合手段が、直接接続される態様に限定されるものではない。例えば、メインウィンチワイヤ(またはサブウィンチワイヤ)と結合手段の間に、別の物、例えば後述のフック付き動滑車が存在する場合であっても、メインウィンチワイヤ(またはサブウィンチワイヤ)と結合手段は、「接続」されていると表現される。
【0018】
すなわち、第1の結合手段がメインウィンチワイヤの動きに連動する挙動を示す場合、メインウィンチワイヤと第1の結合手段は、接続されていると言える。同様に、第2の結合手段がサブウィンチワイヤの動きに連動する挙動を示す場合、サブウィンチワイヤと第2の結合手段は、接続されていると言える。
【0019】
本発明の一実施形態による解体方法および解体装置では、メインウィンチおよびサブウィンチを用いて、鉄筋コンクリート製の塔状構造物が解体される。
【0020】
このような解体方法および解体装置では、従来のような大型クローラクレーンまたは180トン級のクライミングクレーン等を使用しなくても、切断ピースを吊り降ろすことが可能となる。従って、本発明の一実施形態では、効率的かつ低コストで塔状構造物を解体することができる。
【0021】
また、従来のクレーンを用いる解体方法では、切断ピースを吊り下げた状態で、吊り荷重のかかる支点が横方向に動かされるため、クレーンが安定しない場合がある。
【0022】
これに対して、本発明の一実施形態による解体方法および解体装置では、切断ピースを吊り下げた状態では、吊り荷重のかかる支点が固定されている。従って、本発明の一実施形態による解体方法および解体装置では、より安全に塔状構造物を解体を実施することができる。
【0023】
(本発明の一実施形態による解体方法および解体方法)
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態による解体方法および解体装置について説明する。
【0024】
図1には、本発明の一実施形態による塔状構造物の解体方法のフローを模式的に示す。
【0025】
図1に示すように、本発明の一実施形態による塔状構造物の解体方法は、
(1)塔状構造物の頂上部分において、メインウィンチのメインウィンチワイヤと接続された第1の結合手段およびサブウィンチのサブウィンチワイヤと接続された第2の結合手段に連結された、切断ピースを得るステップ(ステップS110)と、
(2)前記切断ピースを前記サブウィンチで吊り上げるとともに、前記切断ピースに接続された前記第1の結合手段の緩みを低減するステップ(ステップS120)と、
(3)前記サブウィンチワイヤを延伸させるステップであって、これにより、前記切断ピースは、前記第1の結合手段により、鉛直方向に吊り下げられる、ステップ(ステップS130)と、
(4)前記メインウィンチワイヤを延伸させることにより、前記切断ピースを地上まで降ろすステップ(ステップS140)と、
(5)前記(1)~(4)のステップを繰り返し、前記頂上部分にある複数の切断ピースを地上まで降ろすステップ(ステップS150)と、
(6)前記頂上部分よりも高さレベルが低下した、前記塔状構造物の新たな頂上部分において、前記(1)~(5)のステップを繰り返すステップ(ステップS160)と、
を有する。
【0026】
以下、
図2~
図7を参照して、各ステップについて詳しく説明する。なお、
図2は、塔状構造物の解体装置の一構成例を概略的に示した図である。
【0027】
(ステップS110)
まず、被解体対象となる鉄筋コンクリート製の塔状構造物の周囲に、解体装置が構成される。
【0028】
図2には、塔状構造物の周囲に、そのような解体装置が配置された様子を模式的に示す。
【0029】
図2に示すように、解体装置100は、煙突のような塔状構造物10の周囲に配置される。塔状構造物10は、例えば、高さが100m以上の大型の構造物であってもよい。
【0030】
解体装置100は、塔状構造物10の周囲に設置された複数の支持マスト110を有する。
【0031】
支持マスト110の本数は、3本以上である限り、特に限られない。支持マスト110は、例えば、
図3に示すように、上面視、塔状構造物10の周囲に沿って、等間隔の4箇所に配置されてもよい。この場合、各支持マスト110は、塔状構造物10の中心となす角度が、90°180°、270°および360°となるように配置される。
【0032】
支持マスト110は、後述するように、高さを上昇/下降できる構造を有する。そのような支持マスト110は、例えば、特開2014-224439号公報に記載されている。
【0033】
再度
図2を参照すると、解体装置100は、頂上部に天井梁120を備える。また、天井梁120よりも低い高さレベルには、ステージ135が配置される。
【0034】
ステージ135は、複数の支持マスト110により支持される。また、天井梁120は、ステージ135上に設置された支柱111により支持される。なお、
図2等に示すように、支柱111は、支持マスト110の延長部であってもよいが、これに限られるものではない。例えば、支柱111は、ステージ135上に設けられた、支持マスト110とは別の部材であってもよい。この場合、支柱111の数は、支持マスト110の数と異なってもよい。
【0035】
天井梁120には、第1の固定滑車122、第2の固定滑車124、および第3の固定滑車126が取り付けられている。第1の固定滑車122は、上面視、天井梁120の半径方向の外周近傍に取り付けられる。一方、第2の固定滑車124および第3の固定滑車126は、天井梁120の中心近傍に取り付けられる。
【0036】
さらに、天井梁120には、第1のサブ固定滑車128および第2のサブ固定滑車130が取り付けられている。
【0037】
解体装置100は、さらに、メインウィンチ140およびサブウィンチ160を有する。
【0038】
メインウィンチ140は、地上に配置される。一方、サブウィンチ160は、ステージ135上に配置される。
【0039】
なお、
図2に示した例では、メインウィンチ140およびサブウィンチ160の数は、いずれも1台である。ただし、これは単なる一例であって、メインウィンチ140およびサブウィンチ160の数は、特に限られない。
【0040】
例えば、直径が大きな塔状構造物10の場合、メインウィンチ140の数は、2台以上であることが好ましい。
【0041】
同様に、サブウィンチ160の数は、1台以上である限り、特に限られない。特に、効率的な解体の観点から、サブウィンチ160の数は、2台またはそれ以上であることが好ましい。
【0042】
サブウィンチ160の数は、例えば、3、4、6、または8台であってもよい。サブウィンチ160が複数の場合、各サブウィンチ160は、上面視、塔状構造物10の中心軸に対して対称な位置に配置されることが好ましい。
【0043】
また、サブウィンチ160の数は、支柱111の数と同じであってもよい。
【0044】
なお、以降の説明では、説明の簡略化のため、
図2に示すように、メインウィンチ140およびサブウィンチ160の数は、いずれも1台と仮定する。
【0045】
メインウィンチ140は、メインウィンチワイヤ142を備える。このメインウィンチワイヤ142は、メインウィンチ140から、第1の固定滑車122、第2の固定滑車124、第1のフック付き動滑車148、および第3の固定滑車126を経由して、固定位置144まで延在している。
【0046】
第1のフック付き動滑車148は、後述するロープなどの第1の結合手段と接続することができる。第1のフック付き動滑車148は、メインウィンチ140からのメインウィンチワイヤ142の伸縮により上下方向に移動可能な動滑車と、フックとを備える。
【0047】
一方、サブウィンチ160は、サブウィンチワイヤ162を備える。このサブウィンチワイヤ162は、サブウィンチ160から、天井梁120に設けられた第1のサブ固定滑車128および第2のサブ固定滑車130を経由して、固定位置164まで延在している。
【0048】
なお、第2のサブ固定滑車130と固定位置164の間には、第2のフック付き動滑車168が設けられる。第2のサブ固定滑車130および第2のフック付き動滑車168は、いずれも2車以上の滑車を備える。従って、サブウィンチワイヤ162の一端は、第2のサブ固定滑車130と第2のフック付き動滑車168の間を所定の回数だけ往復してから、固定位置164で固定される。
【0049】
サブウィンチワイヤ162の第2のサブ固定滑車130と第2のフック付き動滑車168の間の繰り返し回数を増やすほど、サブウィンチワイヤ162による吊り下げ可能荷重を高めることができる。
【0050】
第2のフック付き動滑車168は、サブウィンチ160からのサブウィンチワイヤ162の伸縮により上下方向に移動可能な滑車に加えて、フックを備える。第2のフック付き動滑車168は、フック部分を介して、後述するロープなどの第2の結合手段と接続することができる。
【0051】
このような解体装置100を組み立てた後、塔状構造物10の解体が開始される。
【0052】
なお、解体の前に、第1のフック付き動滑車148に、第1の結合手段を接続し、第2のフック付き動滑車168に、第2の結合手段を接続しておいてもよい。第1の結合手段および第2の結合手段は、例えば、ロープまたはワイヤのような細長い部材であってもよい。
【0053】
解体の際には、まず、ステージ135上の作業員により、ワイヤーソーのような切断機を用いて、塔状構造物10の頂上部分が切断され、頂上部分の一部が切断ピースとして分離される。
【0054】
なお、塔状構造物10の切断の前に、第1のフック付き動滑車148に接続された第1の結合手段、および第2のフック付き動滑車168に接続された第2の結合手段を、塔状構造物10の被分離領域に予め連結しておいてもよい。
【0055】
あるいは、塔状構造物10の頂上部分を切断し、切断ピースを分離してから、第1の結合手段および第2の結合手段を、切断ピースに連結してもよい。
【0056】
あるいは、第1の結合手段を塔状構造物10の被分離領域に接続してから、塔状構造物10から被分離領域を切断して切断ピースを分離し、その後、第2の結合手段を切断ピースに連結してもよい。
【0057】
あるいは、第2の結合手段を塔状構造物10の被分離領域に接続してから、塔状構造物から被分離領域を切断して切断ピースを分離し、その後、第1の結合手段を切断ピースに連結してもよい。
【0058】
いずれの方法においても、第1の結合手段および第2の結合手段と連結された切断ピースを得ることができる。
【0059】
あるいは、その他の順番で、第1の結合手段および第2の結合手段と連結された切断ピースを得てもよい。
【0060】
図4には、第1のフック付き動滑車148に接続された第1の結合手段149および第2の連結部材168に接続された第2の結合手段169と連結された切断ピース170が模式的に示されている。
【0061】
なお、塔状構造物10の頂上部分から分離される切断ピース170の数は、特に限られない。切断ピース170の数は、メインウィンチ140およびサブウィンチ160の吊り上げ能力、ならびに支持マスト110の許容荷重によって定められる。なお、支持マスト110による総許容荷重は、支持マスト110の本数を増やすことにより、増加することができる。
【0062】
また、例えば、頂上部分を4つの切断ピース170に分離する場合、最初に、上面視、塔状構造物10の中心とのなす角が0°、90°、180°および270°となる各位置において、塔状構造物10が鉛直方向に切断される。次に、頂上部分を水平方向に切断することにより、頂上部分から、4つの切断ピース170を得ることができる。
【0063】
(ステップS120)
次に、
図5に示すように、サブウィンチ160によりサブウィンチワイヤ162を巻き取ることにより、第2の結合手段169を介して切断ピース170が吊り上げられる。これに伴い、第1の結合手段149は、切断ピース170までの部分が幾分弛んだ状態となる。
【0064】
そこで次に、メインウィンチ140により、メインウィンチワイヤ142が巻き取られる。これにより、
図6に示すように、第1の結合手段149の切断ピース170までの部分の弛みが低減される。
【0065】
(ステップS130)
次に、サブウィンチ160により、サブウィンチワイヤ162が延伸される。これにより、サブウィンチ160による切断ピース170の吊り下げ効果がなくなり、切断ピース170は、
図7の矢印に示す方向に移動する。その結果、切断ピース170は、第1の結合手段149により、鉛直方向に吊り下げられた状態となる。
【0066】
なお、この段階で、第2の結合手段169と切断ピース170との連結を解除してもよい。
【0067】
(ステップS140)
次に、メインウィンチ140によりメインウィンチワイヤ142を延伸させることにより、第1の結合手段149に連結された切断ピース170が地上まで降ろされる。
【0068】
(ステップS150)
次に、前述のステップS110~S140までのステップを繰り返し、塔状構造物10の頂上から採取された全ての切断ピース170が地上まで降ろされる。
【0069】
以上の工程により、塔状構造物10の頂上部分が解体される。
【0070】
(ステップS160)
以降は、塔状構造物10の新たに生じた頂上部分において、前述のステップS110~S150までのステップが繰り返される。なお、必要に応じて、支持マスト110を下降させ、天井梁120およびステージ135の高さレベルを低下させてもよい。
【0071】
このような工程を繰り返すことにより、塔状構造物10を解体することができる。
【0072】
このような解体方法および解体装置では、180トン級のクライミングクレーンや大型クローラクレーンを使用する必要がないため、効率的かつ低コストで塔状構造物を解体することができる。
【0073】
(支持マストの構成および昇降方法)
以下、本発明の一実施形態による解体装置100に使用される支持マスト110の構成、およびその昇降方法について説明する。
【0074】
(支持マストの構成)
支持マスト110は、多数のマストブロックを組み合わせることにより構成される。
【0075】
図8には、そのような支持マスト110の構成単位となるマストブロック232の側面図の一例を示す。
【0076】
図8に示すように、マストブロック232は、4つの側面を有する略直方体状の形状を有する。各側面は、複数の鉄骨233で構成される。マストブロック232の全長は、特に限られないが、例えば、0.9m~4mの範囲である。
【0077】
マストブロック232は、長手方向の一方の端部234aに第1の連結部分235aを有し、長手方向の他方の端部234bに第2の連結部分235bを有する。第1の連結部分235aおよび第2の連結部分235bは、それぞれ、端部234aおよび234bのコーナー部4箇所に設置されている。
【0078】
マストブロック232は、第1の連結部分235aを、別のマストブロックの第2の連結部分235bと結合することにより、相互に連結することができる。従って、延伸軸方向に沿って、複数のマストブロック232を相互に連結させることにより、支持マスト110の全長を伸ばすことができ、例えば、全長が100mを超えるような支持マスト110を組み立てることができる。
【0079】
(支持マストの昇降方法)
次に、支持マスト110の昇降方法について説明する。
【0080】
支持マスト110を昇降させる際には、支持マスト高さ調節装置が使用される。
【0081】
図9には、支持マスト高さ調節装置を利用して、支持マスト110を上方に延伸させていく際の様子の一例を模式的に示す。
【0082】
図9に示すように、支持マスト高さ調節装置240を利用して、支持マスト高さ調節装置240の上方に、支持マスト110が組み立てられる。また、支持マスト高さ調節装置240を利用して、支持マスト110が高さ方向に延伸される。
【0083】
支持マスト高さ調節装置240は、上下方向に延伸可能なシリンダロッドを有する2つのシリンダと、シリンダロッドに結合された昇降フレームとを備える。
【0084】
ここで、
図10を参照して、支持マスト高さ調節装置240を利用して、支持マスト110の全長を延伸する方法の一例について説明する。
【0085】
図10には、支持マスト高さ調節装置240を利用して、支持マスト110の全長を延伸する際の様子を概略的に示す。
【0086】
図10(a)に示すように、この例では、支持マスト高さ調節装置240は、支持部材(図示されていない)と、2つの油圧式シリンダ242と、昇降フレーム245とを備える。
【0087】
各油圧式シリンダ242は、図示しない支持部材に支持されている。また、各油圧式シリンダ242は、上下に伸縮可能なシリンダロッド243を有し、該シリンダロッド243の先端は、昇降フレーム245に連結されている。
【0088】
昇降フレーム245は、略額縁状の形状を有し、上面から見た際に、支持マスト110を取り囲むように配置される。
【0089】
このような構成の支持マスト高さ調節装置240を使用して、支持マスト110を上方に延伸させる場合、まず、
図10(a)に示すように、油圧式シリンダ242のシリンダロッド243が下方に延伸され、昇降フレーム245が最低部に配置される。
【0090】
なお、上下の各マストブロック232、232aは、前述のような第1の連結部分235aを利用して、相互に連結されている。
【0091】
次に、
図10(b)に示すように、カンヌキ246により、最下部のマストブロック232aの底部と昇降フレーム245とが固定される。カンヌキ246は、例えば、昇降フレーム245内を水平方向に延在する貫通孔に挿入される。さらに、最下部のマストブロック232aの貫通孔にカンヌキ246を挿入することにより、マストブロック232aが昇降フレーム245に固定される。
【0092】
次に、
図10(c)に示すように、シリンダロッド243が上方に収縮される。これに伴い、昇降フレーム245およびマストブロック232aが上方に引き上げられる。
【0093】
次に、
図10(d)に示すように、昇降フレーム245の下側の空間に、新たなマストブロック232bが設置される。
【0094】
次に、カンヌキ246が取り外され、昇降フレーム245とマストブロック232aとの連結が解除される。また、シリンダロッド243が下方に延伸され、昇降フレーム245が再度、最低部に配置される(
図10(a))。
【0095】
以降は、同様の作業を繰り返すことにより、支持マスト高さ調節装置240上で、支持マスト110の全長を延伸させることができる。
【0096】
一方、支持マスト110の高さを短くする場合は、上記順番とは逆の順番で、各作業が実施される。
【0097】
ここで、解体装置100を用いて100m級の塔状構造物10を解体する際の、切断ピース170の吊り下げ可能荷重について検討する。
【0098】
解体装置100が3本の支持マスト110を有する場合、各支持マスト110は、約70トンの積載能力があるため、解体装置100の積載能力は、70トン×3本=210トンとなる。
【0099】
また、解体装置100は、支持マスト110の3本合計の自重が60トン、ステージ135の重量が約20トン、ステージ135上の部材全体の重量が約15トンと推算して、合計95トンが解体装置100自身の重量となる。また、解体装置100の積載能力の210トンから自身の重量95トンを差し引いた、115トンが、解体装置100の余力荷重能力となる。
【0100】
従って、メインウィンチ140を2台使用して、1個あたり20トンの切断ピース170を2つ同時に吊り下げた状態でも、解体装置100は、十分にこれを支持することができる。
【0101】
以上、本発明の一実施形態による解体方法および解体装置の一例について説明した。
ただし、上記構成は単なる一例であって、本発明の一実施形態による解体方法および解体装置が上記構成に限定されないことは、当業者には明らかである。
【0102】
例えば、上記記載では、
図2等に示すように、使用されるサブウィンチ160は、1台と仮定した。
【0103】
しかしながら、サブウィンチ160の設置台数は、複数であってもよい。また、その場合、各サブウィンチ160は、上面視、塔状構造物10の中心軸に対して回転対称な位置に設置されてもよい。
【0104】
例えば、サブウィンチ160は、上面視、塔状構造物10の中心から、半径方向に沿って、90°ずつ回転した各位置に配置されてもよい。この場合、サブウィンチ160は、合計4台となる。あるいは、サブウィンチ160は、上面視、塔状構造物半径方向に沿って、60°ずつ回転した各位置に配置されてもよい。この場合、サブウィンチ160は、合計6台となる。あるいは、サブウィンチ160は、上面視、塔状構造物10の中心から、半径方向に沿って、45°ずつ回転した位置に配置されてもよい。この場合、サブウィンチ160は、合計8台となる。
【0105】
この他にも、各種変更が可能である。
【符号の説明】
【0106】
10 塔状構造物
100 解体装置
110 支持マスト
111 支柱
120 天井梁
122 第1の固定滑車
124 第2の固定滑車
126 第3の固定滑車
128 第1のサブ固定滑車
130 第2のサブ固定滑車
135 ステージ
140 メインウィンチ
142 メインウィンチワイヤ
144 固定位置
148 第1のフック付き動滑車
149 第1の結合手段
160 サブウィンチ
162 サブウィンチワイヤ
164 固定位置
168 第2のフック付き動滑車
169 第2の結合手段
170 切断ピース
232、232a マストブロック
233 鉄骨
234a、234b 端部
235a 第1の連結部分
235b 第2の連結部分
240 支持マスト高さ調節装置
242 油圧式シリンダ
243 シリンダロッド
245 昇降フレーム
246 カンヌキ