(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-22
(45)【発行日】2022-03-30
(54)【発明の名称】ウイルス感染防止装置およびウイルス感染防止装置を有する歯科診療ユニット
(51)【国際特許分類】
A61C 19/00 20060101AFI20220323BHJP
【FI】
A61C19/00 E
A61C19/00 A
(21)【出願番号】P 2020135107
(22)【出願日】2020-08-07
【審査請求日】2020-08-07
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000141598
【氏名又は名称】株式会社吉田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】山中 通三
【審査官】宮部 愛子
(56)【参考文献】
【文献】実開平05-088512(JP,U)
【文献】国際公開第2019/155425(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0234645(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0082281(US,A1)
【文献】国際公開第2019/186880(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
飛沫の飛散を防止する飛沫飛散防止部と、
前記飛沫飛散防止部を患者と術者との間に支持する支持部と、
前記飛沫飛散防止部に設けられ、ウイルスの感染を防止するウイルス感染防止部と、を備え、
前記飛沫飛散防止部は、術者から透過により患者の口腔を視認可能な
板状に形成された透明部を有し、
前記ウイルス感染防止部は、ヒト細胞に害を及ぼすことの無い安全な波長である190nm乃至230nmの遠紫外線C波を発生する遠紫外線C波発生装置を有し、
前記遠紫外線C波発生装置は、
前記透明部の一側辺に設けられた開口孔から、遠紫外線C波発生LEDまたはエキシマランプが発生させた前記遠紫外線C波を前記透明部の内部に向けて到達するように配置し、
前記透明部の少なくとも一側端面に、照射された前記遠紫外線C波を再び前記透明部の内部に向けて反射させる反射面が設けられ、前記透明部の患者の口腔側の少なくとも一端面には、反射面が設けられていなく、当該一端面から前記遠紫外線C波が前記患者の少なくとも口腔に放射されることを特徴とす
るウイルス感染防止装置。
【請求項2】
前記透明部の素材は、フッ素樹脂、石英ガラス、ポリエチレン、アクリルの少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項
1に記載のウイルス感染防止装置。
【請求項3】
前記請求項
1または2に記載のウイルス感染防止装置を有する歯科診療ユニット。
【請求項4】
落下した飛沫を受ける飛沫受け部を有することを特徴とする請求項
3に記載の歯科診療ユニット。
【請求項5】
前記飛沫受け部には、落下飛沫物収納シートまたは遠紫外線C波発生装置が設けられていることを特徴とする請求項
4に記載の歯科診療ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウイルス感染防止装置およびウイルス感染防止装置を有する歯科診療ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
感染性が非常に高い新型コロナウイルスの発生により世界規模のパンデミックが起こりその感染防止対応が急務である。
集団感染の共通点は、「換気が悪く」、「人が密に集まって過ごすような空間」、「不特定多数の人が接触するおそれが高い場所」であり、特に医療現場では集団感染が起こりやすい。
新型コロナウイルスは飛沫感染、接触感染で感染することに加えて、水分が蒸発した「飛沫核」となって漂う空気感染が生じる可能性が存在する。
特に歯科の医療現場では、歯科医師や衛生士が患者の口を開けた状態で接近して治療を行うため、患者からの飛沫の影響を受けやすい。また、患者からの飛沫は患者周囲の診療器具に直接付着したり、落下して付着したり、或いは間接的に付着する。このため、病院関係者だけでなく、シートや器具に付着した飛沫物は他の患者への感染ルートとなってしまう。
【0003】
特許文献1には、治療時に患者の口腔から発する細菌や切削時に生ずる粉塵などから術者を守るプロテクタが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のプロテクタでは、歯科診療に用いるウイルス感染防止装置として改良の余地があった。
【0006】
そこで、本発明は、歯科診療に用いて好適なウイルス感染防止装置およびウイルス感染防止装置を有する歯科診療ユニットを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明は、飛沫の飛散を防止する飛沫飛散防止部と、飛沫飛散防止部を患者と術者との間に支持する支持部と、飛沫飛散防止部に設けられ、ウイルスの感染を防止するウイルス感染防止部と、を備える。飛沫飛散防止部は、術者から透過により患者の口腔を視認可能な透明部を有している。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、歯科診療ユニットに用いて好適なウイルス感染防止装置およびウイルス感染防止装置を有する歯科診療ユニットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態に係るウイルス感染防止装置を適用した歯科診療ユニットの一例を示す模式的な側面図である。
【
図2】ウイルス感染防止装置を適用した歯科診療ユニットで無影灯を用いる場合を示す模式的な側面図である。
【
図3】ウイルス感染防止装置で、要部の構成を説明する
図4中III-III線に沿った位置での断面図である。
【
図4】ウイルス感染防止装置で、要部を一部切欠いた平面図である。
【
図5】ウイルス感染防止装置を有する歯科診療ユニットで、アーム先端にウイルス感染防止装置を設けた様子を説明する模式的な側面図である。
【
図6】ウイルス感染防止装置を有する歯科診療ユニットで箱型の透明カバー部材を設けた様子を説明する模式的な側面図である。
【
図7】透明カバー部材の構成を説明する斜視図である。
【
図8】実施形態の第一変形例の飛沫飛散防止部で半球形に構成された透明の遮蔽カプセルを説明する斜視図である。
【
図9】透明カバー部材の第二変形例でアーム先端に設けた構成を説明する斜視図である。
【
図10】透明カバー部材の第三変形例でキャスタが設けられた遮蔽部と診療椅子の位置関係を説明する模式的な側面図である。
【
図11】透明カバー部材の第四変形例を説明する模式的な側面図である。
【
図12】透明カバー部材の第五変形例を説明する模式的な側面図である。
【
図13】透明カバー部材の第六変形例を説明する模式的な側面図である。
【
図14】透明カバー部材の第七変形例で、無影灯から透明カバー部材を取外した様子を説明する模式的な側面図である。
【
図15】透明カバー部材の第七変形例で、無影灯に透明カバー部材を装着した様子を説明する模式的な側面図である。
【
図16】透明カバー部材の第八変形例で、畳んだ様子を説明する模式的な側面図である。
【
図17】透明カバー部材の第八変形例で、展開した様子を説明する模式的な側面図である。
【
図18】透明カバー部材の第九変形例で、水平に展開した様子を説明する模式的な上面図である。
【
図19】実施形態のウイルス感染防止装置を有する歯科診療ユニットで、診療椅子の上面に落下飛沫収納シートを敷設した様子を説明する模式的な側面図である。
【
図20】実施形態のウイルス感染防止装置を有する歯科診療ユニットで、透明カバー部材の支持台の上面と、診療椅子との間に落下飛沫収納シートを敷設した様子を説明する模式的な側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、本発明の実施形態のウイルス感染防止部10を有する歯科診療ユニット1を示すものである。
[歯科診療ユニット1]
まず、歯科診療ユニット1の構成について説明する。
歯科診療ユニット1は、患者Kを着座または仰臥させる診療椅子2と、術者Dが着座するキャスタ付きのドクタチェア3と、口腔外バキューム装置4と、図示しないドクタテーブル、アシスタント用インスツルメントハンガ、無影灯および、うがい用のコップ受けを有するボール台等を備えている。
【0011】
口腔外バキューム装置4は、略直方体状の筐体5を備え、筐体5の上面には、ドクタテーブルが一体に設けられていてもよい。ドクタテーブルは、術者が器具(以下、インスツルメントともいう)を係止させるインスツルメントハンガを有する。
本実施形態ではドクタテーブルが口腔外バキューム装置4に一体に設けられているが特にこれに限らず、別体で構成されていてもよい。また、筐体5の下部にキャスタを設けて、床面上を移動可能としてもよい。
【0012】
また、筐体5からは、支持部としてのアーム6が延設されている。アーム6は、救数の関節を有して回動および屈曲可能に形成されている。
アーム6の内部には、吸入管6cが配設されている。吸入管6cは、アーム6の先端6aに吸引口を開口形成している。吸引口は、吸入管6cを介して口腔外バキューム装置4に連通されている。
そして、吸入管6cは、アーム6の屈曲に伴って屈曲して、吸引口から吸引した飛沫を口腔外バキューム装置4に集塵するように構成されている。
【0013】
アーム6の先端6aにて開口する吸引口の周囲には、バキュームノズル装着部6bが設けられている。
バキュームノズル装着部6bは、必要に応じてバキュームノズル(図示せず)を装脱着可能としている。
さらに、アーム6の先端には、飛沫の飛散を防止する飛沫飛散防止部としての遮蔽板7が支持されている。
遮蔽板7は、略矩形の平板形状で患者Kと術者Dとの間に配置可能にアーム6によって支持されている。なお、遮蔽板7は、略矩形に限定されるものではなく、丸形、楕円形、三角形以上の多角形であってもよい。
【0014】
また、遮蔽板7には、ウイルスの感染を防止するウイルス感染防止部10が設けられている。
ウイルス感染防止部10は、遮蔽板7の略全面に設けられて、術者Dから透過により患者Kの口腔Mを視認可能な平板状の透明部11を有している。透明部11の素材は、フッ素樹脂、石英ガラス、ポリエチレン、アクリルの少なくとも一つを含む。
そして、透明部11は、術者Dから透過により患者Kの口腔Mを視認可能としている。
なお、本実施形態では、透明部11の少なくとも一部または全部が遠紫外線C波を透過可能とするように構成されていてもよい。
【0015】
[遠紫外線C波発生装置12]
本実施形態のウイルス感染防止部10は、遠紫外線C波発生装置12を有している。遠紫外線C波発生装置12は、遮蔽板7の下側(患者K側)で、かつ術者D側の側縁に配置されている。
本実施形態の遠紫外線C波発生装置12は、光軸の方向を調整可能に設けられている。そして、遠紫外線C波発生装置12は、患者Kの少なくとも口腔Mに向けて斜めに遠紫外線C波を照射可能としている。
なお、遠紫外線C波発生装置12による照射範囲は、患者Kの口腔Mを含むものであればよく、鼻孔を含む口腔周辺に向けて斜めに遠紫外線C波を照射してもよい。
【0016】
遠紫外線C波発生装置12は、主に波長が190nm乃至230nmの遠紫外線C波を発生する装置である。この領域の波長はヒト細胞に害を及ぼすことの無い安全な波長である。なお、発生させる遠紫外線の波長は特にこれに限らず、他の様々な波長であってもよく、人体に安全でありウイルスを不活化させることができる波長が少なくとも一部に含まれる紫外線であればよい。
本実施形態の遠紫外線C波発生装置12は、遮蔽板7に一体的に設けられている。このため、遠紫外線C波発生装置12は、治療中の感染した患者Kからの飛散あるいは治療前後の診療器具に付着した飛散物に対して、遠紫外線C波を使って殺菌することが可能になる。遠紫外線C波発生装置12は、その波長域を発光する発光源として、後述するエキシマランプまたは、紫外線LEDとの何れか一方もしくは両方が使用される。
【0017】
遠紫外線C波を照射しながら診療を行う際において、遠紫外線C波発生装置12は、少なくとも飛散物の発生源である患者Kの口腔M及び鼻孔に遠紫外線C波を有効に照射させる。この際、本実施形態では、独立して、無影灯を術者Dが見やすいように所定の患者Kの口腔M領域(鼻孔周縁も含む)に向けることができる。したがって、診療効率を良好なものとすることができる。
【0018】
[クラスタイオン発生装置13]
さらに、本実施形態のウイルス感染防止部10は、クラスタイオン発生装置13を有している。
クラスタイオン発生装置13は、バキュームノズル装着部6bの吸引口近傍、例えばバキュームノズル装着部6bの上部で、遮蔽板7のアーム6側の側縁に配置されている。なお、クラスタイオン発生装置13は、吸引口の手前等、近傍であればいずれの箇所に配置されていてもよい。
クラスタイオン発生装置13は、平板状電極の表面に電極を形成する。そして、平板状電極と電極との間に交流高電圧を印可する。これにより、表面にプラズマ放電状態が形成される。プラズマ放電は、大気中の分子にエネルギを付与して分子を電離または乖離させる。
特に、新型コロナウイルスのようなウイルスの表面に正イオンと負イオンとが付着、凝集するとOH(水酸化ラジカル)に変化する。OHは、ウイルスのスパイクタンパク(表面タンパク)を分子レベルで破壊する。これによりウイルスが体内に侵入しても感染しないようになる。
【0019】
本実施形態のクラスタイオン発生装置13は、プラズマ放電により生じたクラスタイオンを口腔外バキューム装置4による吸引方向とほぼ直交する方向で、透明部11の下面側から患者Kの方向に離間するように発生させる。プラズマ放電により生じたクラスタイオンは患者Kの少なくとも口腔Mに放出される。
なお、クラスタイオン発生装置13によるクラスタイオンの放出射範囲は、患者Kの口腔Mを含むものであればよく、鼻孔を含む口腔周辺に向けて放出してもよい。クラスタイオン発生装置13によるオゾン発生量は0.01ppm以下で産業基準値・家電製品基準値0.05ppmを大きく下回ることが好ましい。
【0020】
次に、
図1に示す本実施形態の歯科診療ユニット1の作用効果について説明する。
このように構成された本実施形態の歯科診療ユニット1は、術者Dの顔と、患者Kの口腔Mとの間に、平板状の遮蔽板7が設けられている。
遮蔽板7は、口腔外バキューム装置4から延設されたアーム6によって支持されている。また、アーム6は屈曲するため、術者Dと患者Kの口腔Mとの間に遮蔽板7を容易に配置できる。
さらに、遮蔽板7には、術者Dから透過により患者Kの口腔Mを視認可能とする透明な透明部11が設けられている。
このため、透明部11を介して術者Dは、患者Kの口腔M内を見ながら診療できる。また、診療中に生じる飛沫は、遮蔽板7によって遮られて、術者Dに到達しない。
【0021】
そして、本実施形態の遠紫外線C波発生装置12は、遮蔽板7の下側(患者K側)で、かつ術者D側に配置されている。遠紫外線C波発生装置12は、術者Dから患者Kの口腔Mに向けられる斜めの目線と同じ方向に、遠紫外線C波を直接照射することができる。
このため、遠紫外線C波は、飛沫が生じる口腔M内を中心として、口腔Mに近い遮蔽板7の下側(患者K側)から照射される。したがって、遠紫外線C波の照射効率を向上させることができる。
【0022】
また、口腔外バキューム装置4のアーム6の先端6aに設けられた吸引口は、患者Kの口腔Mを挟んで術者Dの反対側に配置される。
アーム6の先端6aには、ウイルス感染防止部10のクラスタイオン発生装置13が設けられている。クラスタイオン発生装置13は、プラズマ放電により生じたクラスタイオンを口腔外バキューム装置4による吸引方向とほぼ直交する方向に患者Kへ向けて発生させる。
このため、患者Kの飛沫のウイルスは、遠紫外線C波の照射を受け、かつ、吸引口から口腔外バキューム装置4によって吸引される際にクラスタイオンに晒される。本実施形態では、アーム6の先端6aに設けられたクラスタイオン発生装置13がクラスタイオン発生方向を変更することにより、患者Kの口腔Mまたは鼻孔から放出された飛沫ウイルスに対して直接、クラスタイオンを晒すことを可能にしている。
ウイルスは、飛沫とともにまたは、飛沫核およびエアロゾル(以下、飛沫等ともいう)として、口腔外バキューム装置4によって集められて、所定の感染防止策を施されて処分される。
【0023】
このように、本実施形態のウイルス感染防止装置を有する歯科診療ユニット1は、患者Kの飛沫が術者Dの方向に飛散する虞が減少してウイルス感染の確率を減少させることができる。
また、透明部11を有する遮蔽板7によって患者Kの飛沫が直接、術者Dにかかることがない。したがって、透明部11越しに口腔M内を近距離で見ながら診療でき、診療効率を向上させることができる。
よって、本実施形態では、歯科診療ユニット1に用いて好適なウイルス感染防止装置およびウイルス感染防止装置を有する歯科診療ユニット1が提供される。
【0024】
[無影灯14の利用]
図2は、無影灯14をウイルス感染防止装置として用いる歯科診療ユニット101の構成を説明する模式図である。なお、
図1に示す歯科診療ユニット1と同一乃至均等な部分については、同一符号を付して説明を省略する。
無影灯14は、円筒状の筐体14aの内周縁に沿って、所定の間隔をおいて複数設けられる通常照明灯14bと、筐体14aの中央部に設けられる遠紫外線C波発生装置14cと有している。
【0025】
一方、遮蔽板7は、口腔外バキューム装置4から延設される支持部としてのアーム6の先端に支持されている。
遠紫外線C波発生装置14cは、透明部11を有する遮蔽板7の上方から患者Kの口腔に向けて遠紫外線C波を照射する。
透明部11は、遮蔽板7の一部または全部に設けられている。そして、透明部11は、術者Dから透過により患者Kの口腔Mを視認可能であり、かつ、遠紫外線C波発生装置14cにより照射された遠紫外線C波を通過させることが可能である。
【0026】
したがって、本実施形態では、無影灯14に設けられた遠紫外線C波発生装置14cを用いて、遮蔽板7の上方から患者Kの口腔Mに向けて遠紫外線C波が照射される。
無影灯14は、通常照明灯14bの照明光と同じ方向に遠紫外線C波を発生装置14cが照射する。このため、口腔M内または鼻孔を照明するだけで、ウイルスを含む飛沫を減少させながら、飛散を防止することができる。
他の構成、および作用効果は、前記
図1に示す歯科診療ユニット1と同一乃至均等であるので説明を省略する。
【0027】
[遠紫外線C波発生装置]
図3および
図4は、飛沫の飛散を防止する飛沫飛散防止部としての遮蔽板17の構成を説明する模式図である。なお、
図1に示す歯科診療ユニット1と同一乃至均等な部分については、同一符号を付して説明を省略する。
遮蔽板17には、透明部としての透明ボード18が設けられている。透明ボード18の素材は、フッ素樹脂、石英ガラス、ポリエチレン、アクリルの少なくとも一つを含む。透明ボード18の周囲には、反射板19が透明ボード18の外側端面を覆うように設けられている。
これらの反射板19のうち、少なくとも透明ボード18側の側面には、光を反射させる銀色の薄膜状の反射面19aが平坦に形成されている。なお、反射面は、反射板19の透明ボード側側面を鏡面仕上げすることにより構成されていてもよい。この場合、反射板19は、アルミ素材等の金属等によって構成されることが好ましい。
【0028】
図4に示すように、反射面19aは、透明ボード18の平面視で四辺の端面すべてに設けられている。そして、各反射面19aは、透明ボード18内に向けて照射された遠紫外線C波を再び透明ボード18の内部に向けて反射させるように構成されている。
また、
図3に示すように、遮蔽板17の患者Kの口腔M側の少なくとも一端面18a(
図3中下側端面)には、反射面19aが設けられていない。
【0029】
さらに、透明ボード18の一側辺には、接続面に位置する反射面19aを介在させて開口孔19bが設けられており、その開口孔19bの内部にそれぞれ照明装置としての遠紫外線C波発生LED22が装着されている。
これらの遠紫外線C波発生LED22は、各開口孔19bのそれぞれに対して一定の角度α(例えばα=1度~45度、好ましくは、5度~15度さらには約10度等)で光軸方向が傾くように挿入されている。また遠紫外線C波発生LED22の周囲には略ボックス形状のカバー部材21が設けられている。
また、反射面19aの膜厚を接続面のみ他の反射面19aよりも薄く設定して、各開口孔19bの前面に設け遠紫外線C波発生LED22の照射光が透明ボード18内に到達するようにしてもよい。また、透明ボード18との接続面側の反射面19aを一方向の照射光のみを通過させるような材質で構成してもよく、透明ボード18側の他方向の照射光を反射するような材質で構成してもよい。
【0030】
[エキシマランプ20]
遠紫外線C波発生装置としてウイルスに有効な波長域を照射可能なエキシマランプ、あるいは、紫外線LEDが用いられる。
このうち、エキシマランプ20は、例えば、波長が193nMの場合はArF(アルゴン・フッ素)エキシマランプ、波長が207nMの場合はKrBr(クリプトン・臭素)エキシマランプ、波長が222nMの場合はKrCl(クリプトン・塩素)エキシマランプ等がある。これらの中で、新型コロナウイルス(正式名称は「SARS-Cov-2」)を最も短時間で死滅させるには、波長222nMのKrCl(クリプトン・塩素)エキシマランプが最も好ましい。また使用するエキシマランプ20としては、ダブル誘電体方式(矩形型)のエキシマランプと、シングル誘電体方式(円筒型)のエキシマランプとのうちいずれか一方であればよい。
また、紫外線C波発生LEDの場合は必要とする特定波長のLEDを用いればよい。
【0031】
本実施形態の遮蔽板17は、複数の紫外線LEDを遠紫外線C波発生装置として用いた場合について説明したが複数の紫外線LEDに替えてエキシマランプ20を用いてもよい(
図4中仮想線参照)。エキシマランプ20を用いた場合は、遠紫外線C波発生LED22を用いた場合と同様に、透明ボード18との間に位置する反射板19には、複数の開口孔19bが所定の間隔を置いて開口形成されている。
その開口孔19bから透明ボード18に向けて、エキシマランプ20の光源が到達するように配置すればよい。エキシマランプ20はダブル誘電体方式(矩形型)のエキシマランプを用いてもシングル誘電体方式(円筒型)のエキシマランプを用いてもよい。また反射面19aを一方向の照射光のみを通過させるような材質で構成して、複数の開口孔19bを設けずに直接透明ボード18接続面にエキシマランプ20の光源を照射してもよい。
【0032】
次に、
図3および
図4に示す遮蔽板17の作用効果について説明する。
このように構成された遮蔽板17は、
図1,2に示す歯科診療ユニット1,101の作用効果に加えてさらに、次のような作用効果を発揮する。
すなわち、エキシマランプ20による照明光や遠紫外線C波発生LED22の発光による遠紫外線C波が透明ボード18の周囲の反射面19aによって複数回反射される(
図4中矢印等参照)ことにより、透明ボード18自体がウイルスを殺菌する作用があるため、透明ボードの患者側に付着したウイルスを殺菌して術者の安全を更に確保することができる。
【0033】
そして、
図3に示すように、遮蔽板17のうち、反射面19aが設けられていない一端面18a(
図3中下側端面)から遠紫外線C波が患者Kの口腔Mに向けて放射される。
他の構成、および作用効果は、前記
図1,2に示す歯科診療ユニット1,101と同一乃至均等であるので、説明を省略する。
【0034】
図5は、飛沫の飛散を防止する飛沫飛散防止部としての遮蔽板27の構成を説明する模式図である。なお、
図1に示す歯科診療ユニット1と同一乃至均等な部分については、同一符号を付して説明を省略する。
図5に示すように、アーム6の先端には、透明素材で構成された遮蔽板27が装着されている。
遮蔽板27の下面側には、先端6a近傍に遠紫外線C波発生装置12が設けられている。また、遮蔽板27を挟んで遠紫外線C波発生装置12を設けた側縁とは、反対側の側縁にはクラスタイオン発生装置13が設けられている。
【0035】
そして、遮蔽板27の下面側には、アーム6の先端6a近傍に送風装置28が設けられている。送風装置28は、空気流発生部として、遠紫外線C波発生装置12が設けられている一側縁側から、クラスタイオン発生装置13が設けられている他側縁側に向けて、空気を送風して遮蔽板27の下面側にエアカーテン29を形成する。
エアカーテン29を形成する空気流は、その後飛沫集塵部33に設けられた飛沫キャッチャ33aを通過し、クラスタイオン発生装置13から発生するクラスタイオン領域を通過した後に、診療室に排気する。或いは図示しないダクトやフィルタ構造を通過した後に診療室外に排気してもよい。
なお、飛沫集塵部33の飛沫キャッチャ33aは図の上方から下方へ空気が流れる構造として、飛沫キャッチャ33aに患者Kごとに使い捨て可能な不織布や、飛沫を集塵可能な素材のフィルタを設けて、使用後に回収するようにしてもよい。
また、飛沫集塵部33の飛沫キャッチャ33aにバキューム装置を接続してもよい。この場合、飛沫キャッチャ33aに溜まった飛沫物や飛沫液体をバキューム装置が吸引して飛散を防止する。
【0036】
さらに、遮蔽板27の下面側には、フィルム収納部30が設けられている。フィルム収納部30は、アーム6の先端6a近傍に断面略L字状の収容部32内が配置されている。
収容部32内には、巻取ローラ31が回転自在となるように収容されている。巻取ローラ31には、遮蔽板27の幅方向寸法と略同じ幅方向寸法を有する透明使い捨てフィルム34が巻取られている。
そして、たとえば、一人の患者Kの診療が終わると、巻取ローラ31から透明使い捨てフィルム34が引き出される。これにより、透明使い捨てフィルム34の新しい部分によって遮蔽板27の下面側が覆われる。
【0037】
フィルム収納部30は、遮蔽板27の下面側の他側縁側に飛沫集塵部33を有している。飛沫集塵部33には、引き出された透明使い捨てフィルム34を切断するカッタ部35が設けられている。
使用済みとなった透明使い捨てフィルム34は、付着している飛沫等と共に飛沫集塵部33に設けた筒35aに巻き付けて、或いはフィルム34を直接カッタ部35で切った後に、回収されて適切な処理が行われる。
なお、飛沫集塵部33は、
図1,2の歯科診療ユニット1の構成物と組み合わせて使用することも可能である。その際には、
図5のフィルム収納部30と
図1のバキューム吸引口が干渉しない配置とする必要がある。
他の構成、および作用効果は、前記
図1,2に示す歯科診療ユニット1,101と同一乃至均等であるので、説明を省略する。
【0038】
図6および
図7は、実施形態の歯科診療ユニット201で、飛沫の飛散を防止する飛沫飛散防止部としての遮蔽箱37を有する構成を説明する模式図である。なお、
図1に示す歯科診療ユニット1と同一乃至均等な部分については、同一符号を付して説明を省略する。
図6に示すように、アーム6の先端6aには、透明素材で構成されたボックス状の遮蔽箱37が装着されている。
【0039】
遮蔽箱37は、下面側から移動台38によって支持されるように構成されていてもよい。移動台38には、キャスタ36aが複数設けられている。そして、床面上でキャスタ36aを転動させることにより、患者Kの頭部KHを覆う位置まで、遮蔽箱37を少ない力で移動させることができる。
このため、遮蔽箱37として複数の枠材に透明フィルムを添着するタイプや、各透明の面状部材を組合わせて箱型の遮蔽箱37(
図6参照)を形成するタイプおよびこれらの混合タイプの何れであっても移動台38が下方から支持することができる。
【0040】
図7に示すように、遮蔽箱37の左,右側面には、一対の腕挿入口37a,37aが開口形成されている。腕挿入口37aは、術者D(
図6参照)の腕を遮蔽箱37の内部に挿入可能な大きさの略円形に形成されている。
腕挿入口37aは、透明フィルムが可撓性を有する材質で構成される。これにより、術者Dの腕廻りに腕挿入口37a周縁の透明フィルムが密着して、遮蔽箱37の外に飛沫等が拡散することを抑制できる。
なお、腕挿入口37a,37aの形状は略円形に限られない。たとえば、切込みや所定幅で開口する切り欠きあるいは、略方形もしくは半円形等の挿通口によって構成されていてもよい。また、腕挿入口37aの位置は必ずしも側面とは限らず、正面に切り欠きがあってもよいし、側面の場合でも腕が挿入しやすいように37を上面から見た際に台形となるよう側面の面に角度がついていてもよい。
さらに、腕挿入口37aは、術者Dの腕が挿入された状態で隙間を塞ぐ伸縮性の材料で少なくとも周縁部を構成してもよい。また、短冊状の遮蔽膜を重ねて設けてもよい。さらに、腕挿入口37aの周縁部がのれん状に形成されていてもよい。また、腕挿入口37aに、あらかじめ取り付けられた手袋形状の材料に腕を挿入してもよい。
【0041】
そして、遮蔽箱37のうち、術者Dの位置とは反対側の側面には、患者Kの胸部の形状に沿うように切欠かれた切欠部37b(
図7参照)が形成されている。
切欠部37bの上方には、アーム6の先端6aが挿入されて、口腔外バキューム装置4の吸引口を接続する接続口37cが形成されている。口腔外バキューム装置4には、気液分離装置が接続されていればさらによい。
【0042】
さらに、遮蔽箱37の内部には、遠紫外線C波発生装置12、補助テーブル38aおよびインスツルメントスタンド38bが配置されている。
なお、遮蔽箱37の内部にさらに補助照明光を照光する補助LED38cが設けられていてもよい。補助LED38cによる照明光によって患者Kの口腔M周縁の影となって見えにくい部分が直接照明される。このため、さらに術者Dは、治療効率を向上させることができる。
【0043】
そして、遮蔽箱37の内部に患者癒し装置としてスピーカ38d,マイク38e,アロマディフューザ38f,スモーク発生装置38g等を配置してもよい。
ここで、患者癒し装置とは、治療中の患者K、特に遮蔽箱37の中に頭部KHが収容されている患者Kの視覚、聴覚、または嗅覚に働きかけて、癒し(リラックス)効果を与えることができる光学効果、音、匂いを発生させる装置のことである。
【0044】
たとえば、光学効果として補助LED38c点灯の際は、メインの無影灯や照明の光量を減少させて患者Kの周辺光量を落ち着ける明るさとすることが出来る。
また、スピーカ38dから患者Kがリラックスできる癒し音楽を流すことができる。さらに、患者Kがタオル等により顔を覆われると、歯の治療の切削音が気になる場合がある。このような場合、口腔Mよりも耳に近いスピーカ38dから癒し音楽を流すことで、切削音が聞こえにくくなる。
【0045】
さらに、アロマディフューザ38fとしてネプライザ式のディフューザを用いることにより、エッセンシャルオイルを空気微粒子に変換して、遮蔽箱37内に程よく拡散させることができる。患者Kの嗜好に合わせた香りを拡散させると、遮蔽箱37による圧迫感を抑制して不安を取り除くリラックス効果を発揮させることができる。
【0046】
また、補助LED38cと、スモーク発生装置38gとを用いて飛沫物可視化装置を構成することができる。飛沫物可視化装置は、遮蔽箱37の内部に生じた飛沫物を可視化できる。
この際、口腔観察用カメラ39aとして微粒子可視化カメラを用いることにより、モニタ装置39bに可視化された飛沫物を映し出すようにしてもよい。
【0047】
また、遮蔽箱37の外部には、口腔観察用カメラ39aおよびモニタ装置39bが設けられている。そして、口腔観察用カメラ39aで撮像された口腔周囲の映像は、モニタ装置39bに映し出される。このため、術者Dは異なる角度から口腔内を視認することができる。
他の構成、および作用効果は、
図1,2に示す歯科診療ユニット1,101と同一乃至均等であるので、説明を省略する。
【0048】
図8は、実施形態の歯科診療ユニット201の第一変形例で、飛沫の飛散を防止する飛沫飛散防止部として半球形に構成された透明の遮蔽カプセル40の模式図である。
なお、
図5,6に示す歯科診療ユニット201と同一乃至均等な部分については、同一符号を付して説明を省略する。
半球形の透明の遮蔽カプセル40は、患者Kに与える心理的な圧迫感が少なく、飛沫等の遮蔽性も良好である。
他の構成、および作用効果は、前記
図5,6に示す歯科診療ユニット201の遮蔽箱37と同一乃至均等であるので説明を省略する。
【0049】
図9は、実施形態の歯科診療ユニット201の第二変形例で、飛沫の飛散を防止する飛沫飛散防止部として方形形状の枠体50に、カーテン状の透明遮蔽部材51を釣下げた構成を説明する模式的な斜視図である。
なお、
図5,6に示す歯科診療ユニット201と同一乃至均等な部分については、同一符号を付して説明を省略する。上面となる枠体50の内側は、透明遮蔽部材51と略同じ材質の透明天膜52によって覆われている。
【0050】
このように構成された第二変形例の透明遮蔽部材51は、枠体50に容易に装着できる。このため、使い捨て可能なフィルムにより透明遮蔽部材51を構成することにより、付着している飛沫等と共に適切に処理できる。
他の構成、および作用効果は、前記
図5,6に示す歯科診療ユニット201の遮蔽箱37と同一乃至均等であるので、説明を省略する。
【0051】
図10は、実施形態の歯科診療ユニット201の第三変形例で、飛沫の飛散を防止する飛沫飛散防止部として方形形状の枠体55を有するキャスタ台54を用いる。枠体55には、カーテン状の透明遮蔽部材51が周囲に釣下げられている。また、枠体55の上面側は、透明天膜52によって覆われている。
なお、
図9と同一乃至均等な部分については、同一符号を付して説明を省略する。
他の構成、および作用効果は、前記
図5,6に示す歯科診療ユニット201の遮蔽箱37と同一乃至均等であるので、説明を省略する。
【0052】
図11は、実施形態の第四変形例の歯科診療ユニットで、飛沫の飛散を防止する飛沫飛散防止部としての透明遮蔽ボックス61の構成を説明する模式的な斜視図である。
診療椅子2の枕元には、平箱状の枕箱62が備えられている。枕箱62からは、上方に向けてそれぞれ回動可能となるようにロッド状の前,後傾斜支柱63,64が揺動可能に軸支されている。
直方体形状の透明遮蔽ボックス61は、前,後傾斜支柱63,64によって張設された交換可能な透明使い捨てフィルム34によって覆われている。
なお、透明使い捨てフィルム34は、中空の枕箱62内に取出し可能に収容してもよい。
【0053】
このように構成された第四変形例の透明遮蔽ボックス61は、透明使い捨てフィルム34が患者Kの頭部上方を覆い、前,後傾斜支柱63,64に係止されている。これにより、容易に透明使い捨てフィルム34を交換することができる。
なお、透明使い捨てフィルム34は、中空の枕箱62内に取出し可能に収容することにより飛沫がかからない。そして、透明使い捨てフィルム34を枕箱62内から取出す場合は、術者D側に略水平に引出すと使用利便性が良好である。
【0054】
図12は、実施形態の歯科診療ユニット201の第五変形例で、飛沫の飛散を防止する飛沫飛散防止部としての楕円筒状の透明円筒部材71を形成するものである。診療椅子2の首元で左,右に配置された支持部73には、それぞれ環状に左,右一対のリング状枠体74,74が張設されている。
支持部73の下方には、軸方向を左,右方向へ沿わせて軸部材72が回転可能に設けられている。軸部材72には、透明使い捨てフィルム34が巻かれている。透明使い捨てフィルム34は、ヘッドレスト2a越しに上方に向けて引出し可能とされている。
このように構成された
図12に示すものでは、第四変形例の作用効果に加えてさらに、透明使い捨てフィルム34を軸部材72の周囲から引出して頭頂側から口腔側を覆うようにリング状枠体74,74に沿わせて巻きつける。そして、透明使い捨てフィルム34の端縁を支持部73側に戻して固定する。これにより、内部を視認可能な透明円筒部材71を形成することができる。透明円筒部材71の左,右側面は、開放されている。このため、術者Dは、腕を透明円筒部材71の左,右両側から挿入できる。
他の構成、および作用効果は、前記各実施形態と同一乃至均等であるので、説明を省略する。
【0055】
図13は、実施形態の歯科診療ユニット201の第六変形例で、飛沫の飛散を防止する飛沫飛散防止部として傘状に展開する透明遮蔽傘81を設けたものを説明する模式的な斜視図である。
透明遮蔽傘81は、基端部82を揺動中心としてそれぞれ先端を離間させる方向に展開される複数の傘骨部材83…と、各傘骨部材83,83間に貼設される透明フィルム84とを有して主に構成されている。
【0056】
このように構成された歯科診療ユニットの透明遮蔽傘81は、基端部82を揺動中心として傘骨部材83を開閉する。これにより、透明フィルム84の患者K
側の開口面積を口腔M周縁の大きさや照射される遠紫外線C波に応じて調整できる。
他の構成、および作用効果は、前記各実施形態と同一乃至均等であるので、説明を省略する。
【0057】
図14および
図15は、実施形態の歯科診療ユニット201の第七変形例で、着脱可能な透明遮蔽傘85を説明する模式的な斜視図である。
透明遮蔽傘85は、透明材料によって略コーン状に形成されている。透明遮蔽傘85の基端部82は、アーム6の先端に固定される無影灯14(
図2参照)に対して、磁石86,87を用いて着脱可能に構成されている。なお、ここでは、透明遮蔽傘85が略コーン状に形成されているが特にこれに限らない。たとえば、透明遮蔽傘81(
図13参照)のように傘骨部材83を開閉可能に有するものであっても、透明フィルム8等を設けることにより透明であればよい。
【0058】
無影灯14側の磁石86は、遠紫外線C波発生装置12を収容する筐体の患者K側壁面の内側に装着されている。
また、透明遮蔽傘85側の磁石87は、基端部82の外側に固定されている。
そして、無影灯14の中央部には、遠紫外線C波発生装置12が設けられている。遠紫外線C波発生装置12は、先端を基端部82の中央に開口形成された開口部82aに挿通させている。
【0059】
このように構成された第七変形例の透明遮蔽傘85は、磁石86,87間の磁着または、分離により無影灯14に対して容易に装脱着させることができる。
無影灯14の磁石86は、筐体の患者K側壁面の内側に装着されている。このため、磁石86に直接飛沫がかからない。したがって、透明遮蔽傘85を着脱してメンテナンス作業を容易に行える。
【0060】
さらに、遠紫外線C波発生装置12とともに、口腔観察用カメラ39a(
図6参照)を無影灯14の患者K側壁面に設けるように構成してもよい。
そして、磁石86,87のうち何れか一方を鉄材等の磁石によって磁着可能な金属等で構成してもよい。
また、第七変形例の透明遮蔽傘85は、第六変形例の透明遮蔽傘81と同様に複数の傘骨部材83…を有していてもよい。
他の構成、および作用効果は、前記各実施形態と同一乃至均等であるので、説明を省略する。
【0061】
図16および
図17は、実施形態の第八変形例の歯科診療ユニット201に用いられる開閉透明カバー90を説明する模式的な斜視図である。
開閉透明カバー90は、診療椅子2の首元で左,右方向へ延設される丸棒部材72に回動軸65aを介してそれぞれ回動可能に接続される複数の骨部材65…と、骨部材65,65間に貼設される透明フィルム91とを有している。
【0062】
第八変形例の開閉透明カバー90は、
図16に示すように開放されている状態で、患者Kが容易に診療椅子2に着座および仰臥することができる。そして、
図17に示すように、回動軸65aを回動中心として、骨部材65,65間を拡開方向へ展開する。
これにより容易に診療椅子2に仰臥している患者Kの頭部KHを開閉透明カバー90の透明フィルム91部分によって覆うことが出来る。
他の構成、および作用効果は、前記各実施形態と同一乃至均等であるので、説明を省略する。
【0063】
図18は、実施形態の歯科診療ユニット201の第九変形例の開閉透明カバー95を説明する模式的な上面図である。
開閉透明カバー95は、診療椅子2の上方へ水平方向に移動可能なアーム部材96と、アーム部材96の先端側にそれぞれ水平方向へ扇状に回動可能に接続される複数の骨部材65…と、骨部材65,65間に貼設される透明フィルム91とを有している。
【0064】
第九変形例の開閉透明カバー95は、
図18に示すように、仰臥状態の患者Kの胸元まで展開されたアーム部材96の先端側から白抜き矢印に示すように複数の骨部材65…を透明フィルム91とともに展開および折畳むことができる。
これにより診療椅子2に仰臥している患者Kの頭部KHを開閉透明カバー95の透明フィルム91部分によって容易に覆うことが出来る。
他の構成、および作用効果は、前記各実施形態と同一乃至均等であるので、説明を省略する。
【0065】
図19は、実施形態の歯科診療ユニット1(
図1参照)の第十変形例を説明する模式的な側面図である。
歯科診療ユニット1は、診療椅子2の枕部2aの上面2bと、患者Kの頭部CHとの間に、落下した飛沫を受ける飛沫受け部としての落下飛沫物収納シート98を有する。
落下飛沫物収納シート98の下面には、枕部2aの上面2bとの間に遠紫外線C波発生装置97が配置されている。
他の構成、および作用効果は、前記実施形態と同一乃至均等であるので、説明を省略する。
【0066】
図20は、実施形態の歯科診療ユニット201(
図6参照)の第十一変形例を説明する模式的な側面図である。
歯科診療ユニット201は、遮蔽箱37を支持する移動台36の載置面36bと、診療椅子2の枕部2aの下面2cとの間に、落下した飛沫を受ける飛沫受け部としての落下飛沫物収納シート98を有する。
落下飛沫物収納シート98の下面には、枕部2aの下面2cとの間に遠紫外線C波発生装置97が配置されている。
【0067】
このように構成された第十,十一変形例の落下飛沫物収納シート98の上に落下した飛沫は、術者Dにかかることなく、遠紫外線C波発生装置97による遠紫外線C波の照射を落下飛沫物収納シート98の上で受ける。
他の構成、および作用効果は、前記各実施形態と同一乃至均等であるので、説明を省略する。
【0068】
なお、第十,十一変形例の飛沫受け部として落下飛沫物収納シート98の下面に遠紫外線C波発生装置97が配置されている。しかしながら、特にこれに限らない。
たとえば、落下飛沫物収納シート98にクラスタイオン発生装置を組合わせたり、あるいは、遠紫外線C波発生装置97、およびクラスタイオン発生装置の両方を組み合わせてもよい。すなわち、飛沫受け部として、落下飛沫物収納シート98、遠紫外線C波発生装置97、およびクラスタイオン発生装置のうち少なくとも何れか一つが設けられていればよい。
【0069】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。上述した実施形態は本発明を理解しやすく説明するために例示したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について削除し、若しくは他の構成の追加・置換をすることが可能である。上記実施形態に対して可能な変形は、たとえば以下のようなものである。
【0070】
上述した実施の形態では、アーム6を口腔外バキューム装置4によって支持するものを例示して説明してきたが、特にこれに限らない。たとえば、無影灯を支持している支柱や、診療椅子2、あるいは単独で用いられるドクタテーブルやアシスタント台等にアーム6を軸支させてもよい。
また、飛沫飛散防止部を装着する装着手段として、
図14,15に示す第七変形例の透明遮蔽傘85は、無影灯14との間で磁石86,87を用いて着脱可能に構成されているが特にこれに限らない。
たとえば装着手段がネジ締結、クランプ締結、面圧締結、ピン締結あるいは面ファスナ等、どのような装着手段を用いてもよい。
【符号の説明】
【0071】
1 歯科診療ユニット
6 アーム(支持部)
7 遮蔽板(飛沫飛散防止部)
11 透明部
12 遠紫外線C波発生装置(ウイルス感染防止部)