(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-22
(45)【発行日】2022-03-30
(54)【発明の名称】3軸加圧凍結製氷方法
(51)【国際特許分類】
G01N 3/10 20060101AFI20220323BHJP
G01N 25/04 20060101ALN20220323BHJP
【FI】
G01N3/10
G01N25/04 B
(21)【出願番号】P 2020564403
(86)(22)【出願日】2020-06-04
(86)【国際出願番号】 CN2020094367
(87)【国際公開番号】W WO2021017639
(87)【国際公開日】2021-02-04
【審査請求日】2020-11-11
(31)【優先権主張番号】201910693624.9
(32)【優先日】2019-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520442807
【氏名又は名称】中国鉱業大学
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】王 宝生
(72)【発明者】
【氏名】楊 維好
(72)【発明者】
【氏名】孫 培▲シン▼
(72)【発明者】
【氏名】黄 家会
(72)【発明者】
【氏名】楊 志江
(72)【発明者】
【氏名】韓 涛
(72)【発明者】
【氏名】張 弛
(72)【発明者】
【氏名】張 涛
(72)【発明者】
【氏名】王 衍森
(72)【発明者】
【氏名】任 彦龍
(72)【発明者】
【氏名】駱 汀汀
(72)【発明者】
【氏名】李 海鵬
(72)【発明者】
【氏名】宋 雷
【審査官】外川 敬之
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-186858(JP,A)
【文献】特開2005-091229(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109827856(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 3/10
G01N 25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下のステップ、
S1、装置の組立:
本装置は、荷重システム、温度制御システム及び温度測定システムを含み、荷重システムは、荷重フレーム、圧力体積制御器、3軸圧力室及び注油ポンプを含み、3軸圧力室は、ピストン、受圧円筒、フランジ、底板、および上下対称に設けられた2つのプラグを含み、ピストンは、受圧円筒の頂部に予め設定された中心孔を貫通し、中心孔がピストンと密封嵌合し、受圧円筒の底部は、凸型フランジと密封係合してボルト接続され、フランジは、底板上に載置され、上下2つのプラグは、ピストンの下端、フランジの上端とそれぞれボルト接続され、上下2つのプラグの間に試料が設けられ、試料と両プラグの外側は、可撓性膜で覆われ、荷重フレームの内部上下端面は、ピストンの上端面、底板の下端面にそれぞれ接触し、圧力体積制御器、注油ポンプは、フランジ内に予め設定された液体入口管を介して3軸圧力室内に連通され、温度制御システムは、受圧円筒の側面に設けられた第1循環路、受圧円筒の上面に設けられた第2循環路、及びフランジの上面に設けられた第3循環路にそれぞれ連通する第1冷却機、第2冷却機、及び第3冷却機を含み、温度制御システムは、受圧円筒及びフランジの外側に覆われる保温層をさらに含み、温度測定システムは、電気的に接続された温度計と復調器とを含み、温度計の一端は、受圧円筒を貫通して3軸圧力室内に突出している、
S2、温度制御パラメータの取得:
この温度制御パラメータは、第1冷却機、第2冷却機及び第3冷却機の温度制御パラメータであり、製氷の加圧凍結前に、有限要素数値計算を用いて3軸圧力室内の温度場の時間変化をシミュレートし、多段階計算により、温度変化が要求を満たす温度制御パラメータを見出し、凍結製氷時に装置の温度制御システムを調節するために使用する、
S3、加圧凍結:
凍結製氷工程における荷重システム及び温度制御システムの調整は、まず、注油ポンプを起動して、雰囲気圧荷重媒体を3軸圧力室内に満たし、次いで、同じ負荷速度で、荷重フレームの軸方向及び圧力体積制御器を調整して、試料を静水圧下で加圧し、目標圧力値に達した後、圧力体積制御器の動作を停止すると同時に、軸方向の荷重フレームを調整して、目標圧力値でサーボを安定させ、荷重システムの調整を完了し、凍結製氷中に、ステップS2で取得した温度制御パラメータに従って、温度制御システムにおける第1冷却機、第2冷却機及び第3冷却機の温度設定値をリアルタイムで調整する、
S4、力学試験:
凍結試料作製が完了した後、凍結後の氷試料力状態及び温度場が力学的実験要求に達するように、実験設計に基づいて荷重システム及び温度制御系を調整し続け
、氷力学的実験を行うことができる
状態とする、
を含むことを特徴とする3軸加圧凍結製氷方法。
【請求項2】
ステップS1において、可撓性膜の材質にポリテトラフルオロエチレンフィルムを用い、ステップS3において、雰囲気圧荷重媒体に航空油圧作動油を用いることを特徴とする請求項1に記載の3軸加圧凍結製氷方法。
【請求項3】
ステップS2の有限要素数値算出方法は、以下のステップ、
1)有限要素モデル化:
有限要素ソフトウェアに、オリジナルサイズと同一の3軸圧力室有限要素幾何学的モデルを確立し、それからモデル材料パラメータを入力し、全てのパラメータが実際値と同じであり、最後にグリッドを区分して有限要素モデルを生成して計算の用意をする、
2)数値計算:
具体的なステップは、
a、有限要素ソフトウェアにモデル初期温度を入力し、雰囲気圧荷重媒体初期温度が-16~-5℃であり、凍結速度に応じて必要に応じて選択し、温度が低いほど凍結速度が速く、他の部分の温度が室温16℃である、
b、初期温度制御パラメータ、即ち、初期状態において3軸圧力室内の第1循環路、第2循環路、第3循環路の3本の冷媒循環路における冷媒の温度を選択し、実際の運転時には、それぞれ第1冷却機、第2冷却機及び第3冷却機による冷媒の温度制御を実現する、
c、解を求める設定をして計算を開始する、
d、試算判定、
e、数値計算を完了する、数値計算で試料が完全に氷結するまで、上記の試算過程dを繰り返し、計算を完了する、
を含む、
3)温度制御パラメータ抽出:
数値計算完了後、温度制御システムの第1冷却機、第2冷却機及び第3冷却機を実稼働で調整するために、計算過程における温度制御パラメータの経時変化を抽出する、
を含むことを特徴とする請求項1に記載の3軸加圧凍結製氷方法。
【請求項4】
前記ステップcの解を求める設定をして計算を開始する具体的な方法として、計算前に解を求める設定をし、1回の解を求めるステップの長さを30秒とし、iで計算ステップ数を示し、即ちi=40の時に、1200秒のシミュレーションでの圧力室内の温度分布を数値計算し、第1段階の計算を開始することを特徴とする請求項3に記載の3軸凍結製氷方法。
【請求項5】
ステップdの試算判定方法として、現ステップであるステップiの計算が完了した後、そのステップの計算結果が、雰囲気圧荷重媒体平均温度が初期温度から<1℃変化していることと、試料が一次元的に凍結していることの2つの条件を満たしているか否かを判定し、満たしていれば、引き続き次の計算を行い、満たしていなければ、温度制御パラメータを調整してから、再度、本ステップの計算を行うことを特徴とする請求項3に記載の3軸加圧凍結製氷方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、氷力学的特性の研究技術分野に関し、具体的には3軸加圧凍結製氷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
長年にわたり、各国の学者は、3軸試験を用いて、広範な氷力学的特性の研究を行い、固体氷の異なる荷重条件下での変形及び破壊規則を開示した。しかしながら、凍結圧力、凍結速度などの固体氷の形成前の、すなわち、凍結期間(相変化段階)の物理的環境が氷力学的特性に及ぼす影響については全く議論されていない。凍結圧力および凍結速度が氷力学的特性に及ぼす影響を調べるために、実験技術上、未凍結水加圧、凍結および三軸実験の全過程応力状態および温度場を制御可能にすることが必要である。
【0003】
特許文献1は、凍結中の試料の幾何学的精度を保証するために可溶性ハウジングを3軸圧力室内に取り付けることによって、氷試料が形成されてある期間が経った後に可溶性ハウジングが完全に溶解され、その後に3軸力学的実験が行われる純水加圧凍結製氷3軸試験装置を開示している。この提案は、1.可溶性ハウジングの存在により、凍結中の雰囲気圧が試料に直接作用しないため、試料の応力状態が厳密に制御できない、2.可溶性ハウジングの存在により、試料が完全に凍結せずにハウジングが溶解してしまい、試料の幾何学的精度不良が発生する、3.凍結試料の幾何学的精度を保証するために、試料が完全に凍結してから長時間を経てハウジングが溶解することにより、時間の無駄が発生して実験効率が低下する、4.溶媒材料が有毒または引火性の有機溶媒が多く、安全上の懸念がある、等の問題点を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】中国特許出願公開第108088757号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記の技術的な欠点に鑑みてなされたものであり、異なる凍結圧力、凍結速度での幾何学的精度が3軸試験仕様を満たす標準的な円柱形の氷試料を作製するのに適した3軸加圧凍結製氷方法を提供することを目的とし、液体水の加圧、凍結から3軸力学試験までの全プロセス応力状態および温度場の制御を可能にし、得られる氷試料の幾何学的精度が様々な実験的仕様を満たす。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は以下の技術的手段を採用する。
本発明は、以下のステップを含む3軸加圧凍結製氷方法を提供する。
S1、装置組立:
本装置は、荷重システム、温度制御システム及び温度測定システムを含む。荷重システムは、荷重フレーム、圧力体積制御器、3軸圧力室及び注油ポンプを含む。3軸圧力室は、ピストン、受圧円筒、フランジ、底板、および上下対称に設けられた2つのプラグを含む。ピストンは、受圧円筒の頂部に予め設定された中心孔を貫通し、中心孔がピストンと密封嵌合する。受圧円筒の底部は、凸型フランジと密封係合してボルト接続される。フランジは、底板上に載置される。上下2つのプラグは、ピストンの下端、フランジの上端とそれぞれボルト接続される。上下2つのプラグの間に試料が設けられる。試料と両プラグの外側は、可撓性膜で覆われる。荷重フレームの内部上下端面は、ピストンの上端面、底板の下端面にそれぞれ接触する。圧力体積制御器、注油ポンプは、フランジ内に予め設定された液体入口管を介して3軸圧力室内に連通される。温度制御システムは、受圧円筒の側面に設けられた第1循環路、受圧円筒の上面に設けられた第2循環路、及びフランジの上面に設けられた第3循環路にそれぞれ連通する第1冷却機、第2冷却機、及び第3冷却機を含む。温度制御システムは、受圧円筒及びフランジの外側に覆われる保温層をさらに含む。温度測定システムは、電気的に接続された温度計と復調器とを含み、温度計の一端は、受圧円筒を貫通して3軸圧力室内に突出している。
S2、温度制御パラメータ取得:
この温度制御パラメータは、第1冷却機、第2冷却機及び第3冷却機の温度制御パラメータであり、製氷の加圧凍結前に、有限要素数値計算を用いて3軸圧力室内の温度場の時間変化をシミュレートし、多段階計算により、温度変化が要求を満たす温度制御パラメータを見出し、凍結製氷時に装置の温度制御システムを調節するために使用する。
S3、加圧凍結:
凍結製氷工程における荷重システム及び温度制御システムの調整は、まず、注入ポンプを起動して、雰囲気圧荷重媒体を3軸圧力室内に満たし、次いで、同じ負荷速度で、荷重フレームの軸方向及び圧力体積制御器を調整して、試料を静水圧下で加圧し、目標圧力値に達した後、圧力体積制御器の動作を停止すると同時に、軸方向の荷重フレームを調整して、目標圧力値でサーボを安定させ、荷重システムの調整を完了する。凍結製氷中に、ステップS2で取得した温度制御パラメータに従って、温度制御システムにおける第1冷却機、第2冷却機及び第3冷却機の温度設定値をリアルタイムで調整する。
S4、力学試験:
凍結試料作製が完了した後、凍結後の氷試料力状態及び温度場が力学的実験要求に達するように、実験設計に基づいて荷重システム及び温度制御系を調整し続け、その後、氷力学的実験を行うことができる。
【0007】
好ましくは、可撓性膜の材質にポリテトラフルオロエチレンフィルムを用い、雰囲気圧荷重媒体に航空油圧作動油を用いる。
【0008】
好ましくは、ステップS2の有限要素数値算出方法が、以下のステップを含む。
1)有限要素モデル化:
有限要素ソフトウェアに、オリジナルサイズと同一の3軸圧力室有限要素幾何学的モデルを確立し、それからモデル材料パラメータを入力し、全てのパラメータが実際値と同じであり、最後にグリッドを区分して有限要素モデルを生成して計算の用意をする。
2)数値計算:具体的なステップは、以下を含む。
a、有限要素ソフトウェアにモデル初期温度を入力し、雰囲気圧荷重媒体の初期温度が-16~-5℃であり、凍結速度に応じて必要に応じて選択し、温度が低いほど凍結速度が速く、他の部分の温度が室温16℃である。
b、初期温度制御パラメータ、即ち、初期状態において3軸圧力室内の第1循環路、第2循環路、第3循環路の3本の冷媒循環路における冷媒の温度を選択し、実際の運転時には、それぞれ第1冷却機、第2冷却機及び第3冷却機による冷媒の温度制御を実現する。
c、解を求める設定をして計算を開始する。
d、試算判定。
e、数値計算が完了する。数値計算で試料が完全に氷結するまで、上記の試算過程dを繰り返し、計算が完了する。
3)温度制御パラメータ抽出:数値計算完了後、温度制御システムの第1冷却機、第2冷却機及び第3冷却機を実稼働で調整するために、計算過程における温度制御パラメータの経時変化を抽出する。
【0009】
好ましくは、ステップcの解を求める設定をして計算を開始する具体的な方法として、計算前に解を求める設定をし、1回の解を求めるステップの長さを30秒とし、iで計算ステップ数を示し、即ちi=40の時に、1200秒のシミュレーションでの圧力室内の温度分布を数値計算し、第1段階の計算を開始する。
【0010】
好ましくは、ステップdの試算判定方法として、現ステップであるステップiの計算が完了した後、そのステップの計算結果が、雰囲気圧荷重媒体平均温度が初期温度から<1℃変化していることと、試料が一次元的に凍結していることの2つの条件を満たしているか否かを判定し、満たしていれば、引き続き次の計算を行い、満たしていなければ、温度制御パラメータを調整してから、再度、本ステップの計算を行う。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、加圧、凍結、実験の全プロセス応力場、温度場で制御可能に組み合わせて、異なる凍結圧力及び凍結速度条件下で3軸試験の規格を満たす試料を作製でき、凍結圧力及び凍結速度が氷力学的特性に及ぼす影響を検討するのに適している。実験効率が高く、毒性または引火性の材料を含まず、安全性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0012】
本発明の実施例又は従来技術における解決手段をより明確に説明するために、以下の実施例又は従来技術の説明に必要な図面を簡単に説明するが、以下の説明における図面は、本発明の実施例に過ぎず、当業者であれば、創造的な労力を要することなく、これらの図面に基づいて他の図面を得ることができることは明らかである。
【0013】
【
図1】本発明の実施例に係る3軸加圧凍結製氷方法における各構成の接続図である。
【
図2】本発明の実施例に係る3軸圧力室の構造の模式図である。
【
図3】本発明の実施例に係る受圧円筒の構造の模式図である。
【
図4】本発明の実施例に係る第3循環路の構造の模式図である。
【
図5】本発明の実施例に係る第1循環路の構造の模式図である。
【
図6】本発明の実施例に係るフランジの構造の模式図である。
【
図7】本発明の実施例に係る有限要素数値計算方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本願の実施例の図面を参照して本発明の実施例の技術手段を明確且つ完全に記載する。明らかに、記載する実施例は、本発明の実施例の一部であり、全てではない。本発明の実施例に基づき、当業者が創造性のある作業をしなくても為しえる全ての他の実施例は、いずれも本発明の保護範囲に属するものである。
【0015】
図1~
図6に示すように、3軸加圧凍結製氷方法は、具体的には以下のステップを含む。
S1、装置の組立:
本装置は、荷重システム、温度制御システム及び温度測定システムを含む。荷重システムは、荷重フレーム1、圧力体積制御器19、3軸圧力室及び注油ポンプ16を含む。3軸圧力室は、ピストン2、受圧円筒12、フランジ9、底板17、および上下対称に設けられた2つのプラグ11を含む。ピストン2は、受圧円筒12の頂部に予め設定された中心孔を貫通し、中心孔がピストン2と密封嵌合する。受圧円筒12の底部は、凸型フランジ9と密封係合してボルト接続される。フランジ9は、底板17上に載置される。上下2つのプラグ11は、ピストン2の下端、フランジ9の上端とそれぞれボルト接続される。上下2つのプラグ11の間に試料7が設けられる。試料7と両プラグ11の外側は、可撓性膜5で覆われる。荷重フレーム1の内部上下端面は、ピストン2の上端面、底板17の下端面にそれぞれ接触する。圧力体積制御器19、油ポンプ16は、フランジ9内に予め設定された液体入口管8を介して3軸圧力室内に連通される。温度制御システムは、受圧円筒12の側面に設けられた第1循環路10、受圧円筒12の上面に設けられた第2循環路13、及びフランジ9の上面に設けられた第3循環路14にそれぞれ連通する第1冷却機15、第2冷却機152、及び第3冷却機153を含む。温度制御システムは、受圧円筒12及びフランジ9の外側に覆われる保温層3をさらに含む。温度測定システムは、電気的に接続された温度計6と復調器18とを含み、温度計6の一端は、受圧円筒12を貫通して3軸圧力室内に突出している。
S2、温度制御パラメータの取得:
この温度制御パラメータは、第1冷却機15、第2冷却機152及び第3冷却機153の温度制御パラメータであり、製氷の加圧凍結前に、有限要素数値計算を用いて3軸圧力室内の温度場の時間変化をシミュレートし、多段階計算により、温度変化が要求を満たす温度制御パラメータを見出し、凍結製氷時に装置の温度制御システムを調節するために使用する。
S3、加圧凍結:
凍結製氷工程における荷重システム及び温度制御システムの調整は、まず、注油ポンプ16を起動して、雰囲気圧荷重媒体4を3軸圧力室内に満たし、次いで、同じ負荷速度で、荷重フレーム1の軸方向及び圧力体積制御器19を調整して、試料7を静水圧下で加圧し、目標圧力値に達した後、圧力体積制御器19の動作を停止すると同時に、軸方向の荷重フレーム1を調整して、目標圧力値でサーボを安定させ、荷重システムの調整を完了する。凍結製氷中に、ステップS2で取得した温度制御パラメータに従って、温度制御システムにおける第1冷却機15、第2冷却機152及び第3冷却機153の温度設定値をリアルタイムで調整する。
S4、力学試験:
凍結試料作製が完了した後、凍結後の氷試料力状態及び温度場が力学的実験要求に達するように、実験設計に基づいて荷重システム及び温度制御系を調整し続け、その後、氷力学的実験を行うことができる。
【0016】
可撓性膜5の材質にポリテトラフルオロエチレンフィルムを用い、雰囲気圧荷重媒体4に航空油圧作動油を用いる。
【0017】
図7に示すように、ステップS2の有限要素数値算出方法が、以下のステップを含む。
1)有限要素モデル化:
有限要素ソフトウェアに、オリジナルサイズと同一の3軸圧力室有限要素幾何学的モデルを確立し、それからモデル材料パラメータを入力し、全てのパラメータが実際値と同じであり、最後にグリッドを区分して有限要素モデルを生成して計算の用意をする。
2)数値計算:具体的なステップは、以下を含む。
a、有限要素ソフトウェアにモデル初期温度を入力し、雰囲気圧荷重媒体4の初期温度が-16~-5℃であり、凍結速度に応じて必要に応じて選択し、温度が低いほど凍結速度が速く、他の部分の温度が室温16℃である。
b、初期温度制御パラメータ、即ち、初期状態において3軸圧力室内の第1循環路10、第2循環路13、第3循環路14の3本の冷媒循環路における冷媒の温度を選択し、実際の運転時には、それぞれ第1冷却機15、第2冷却機152及び第3冷却機153による冷媒の温度制御を実現する。
c、解を求める設定をして計算を開始する。
d、試算判定。
e、数値計算が完了する。数値計算で試料7が完全に氷結するまで、上記の試算過程dを繰り返し、計算が完了する。
3)温度制御パラメータの抽出:数値計算完了後、温度制御システムの第1冷却機15、第2冷却機152及び第3冷却機153を実稼働で調整するために、計算過程における温度制御パラメータの経時変化を抽出する。
【0018】
ステップcの解を求める設定をして計算を開始する具体的な方法として、計算前に解を求める設定をし、1回の解を求めるステップの長さを30秒とし、iで計算ステップ数を示し、即ちi=40の時に、1200秒のシミュレーションでの圧力室内の温度分布を数値計算し、第1段階の計算を開始する。
【0019】
ステップdの試算判定方法として、現ステップであるステップiの計算が完了した後、そのステップの計算結果が、雰囲気圧荷重媒体平均温度が初期温度から<1℃変化していることと、試料が一次元的に凍結していることの2つの条件を満たしているか否かを判定し、満たしていれば、引き続き次の計算を行い、満たしていなければ、温度制御パラメータを調整してから、再度、本ステップの計算を行う。
【0020】
本発明は、円柱形状の水試料を3軸圧力室内に入れて加圧凍結して直接標準な円柱形状の氷試料を形成し、加圧、凍結、試験の3段階の全プロセス応力状態および温度場の制御を可能にする。本発明の技術的原理は以下の通りである。
1、凍上制御技術
水試料を氷に凍結する過程で体積が膨張することを「凍上」と称する。この技術的解決策を実現するために、まず凍上の問題を解決する。本方式は、側方変形が制限され、凍上量が軸方向に解放される凍結方式を採用し、すなわち凍結時、圧力体積制御器19の動作を停止し、3軸圧力室内の雰囲気圧荷重媒体4の体積が変化しないことを利用して試料7の径方向の寸法を一定に制限する。軸方向荷重は、定電圧サーボ状態に設定され、試料7に凍上が発生すると、未凍結水圧が増大するとともにピストン2の下端圧力が増大し、荷重フレーム1がピストン2を受圧筒12に対して相対的に上昇させるように押圧し、試料7の長さが増大し、水圧が設定値まで低下する。凍結工程を通じて、試料7中の水が完全に氷結して試料調製が完了するまで、繰り返し圧力をかける。
2、凍上制御技術の実現
凍上制御技術は、3軸圧力室内部の雰囲気圧荷重媒体4の体積が変化しないことを利用して、試料7の径方向寸法を一定に制限する。このため、凍結中は雰囲気圧荷重媒体4の平均温度を一定に保つ必要がある。そうしなければ、雰囲気圧荷重媒体4の体積が平均温度によって変化し、試料7の径方向の寸法を規制する要求を満たせず、試料作製の幾何学的精度を確保することが困難であった。
【0021】
凍上制御技術は、軸方向にサーボ案内凍上を発生させる軸方向安定化技術を用いており、これは、試料7が凍結中に一次元の一方向凍結を保証することを前提としている。試料7が多次元多方凍結すると、複数の凍結面が現れる。試料7が完全に凍結する前に、凍結面同士が結合し、氷嚢水が出現する。凍結が進むと軸方向に圧をかけることができず、氷試料側面が局部的に膨らむ現象が生じる。
【0022】
上記2つの場合は、温度場問題であり、すなわち、(1)凍結中に雰囲気圧荷重媒体4の平均温度が変化しないこと、(2)試料7が一次元的に一方向に凍結すること、の2つの条件を満たす3軸圧力室内の温度場の発達が要求される。本方式は、温度制御システムで3軸圧力室内の温度場の発達を制御することができるが、高圧封の3軸圧力室内の平均温度を正確に測定する手段がないため、試料7内部にセンサをレイアウトすることが困難で、試料7の凍結の進行状態を取得することから、リアルタイムでの計測フィードバックによる温度制御システムの調整ができない。このことから、本発明では、3軸圧力室内の温度場の発達を有限要素数値計算を用いて模擬的に予測し、上記2つの条件を満たす温度制御パターンを複数回試算することにより見つけ出し、実際に試料調製装置の温度制御システムを制御する。なお、凍結中に雰囲気圧荷重媒体4の平均温度が全く変化しないことを保証することは現実的ではなく、理論計算によれば、平均温度が1℃未満で試料作製の幾何学的精度が保証されるため、雰囲気圧荷重媒体4の平均温度は、変動<1℃を基準として、数値計算を行う。
【0023】
本発明の利点は、1.可溶性ハウジングがなく、雰囲気圧荷重媒体の体積変化なしを利用して試料の径方向の変形を制限し、雰囲気圧が試料側面に直接作用し、試料の応力状態を厳密に制御でき、圧力制御精度が高い点、2.可溶性ハウジングの問題がなく、試料の凍結完了後直ちに力学試験を行うことができ、試験効率が著しく向上する点、3.雰囲気圧荷重媒体として航空油圧作動油を使用し、毒性がなく、不燃性であり、通常の油圧物質に属し、安全性が高い点である。
【0024】
当業者であれば、本発明の思想及び範囲から逸脱することなく、本発明に対して様々な変更及び変形をなし得ることは明らかである。従って、本発明のこれらの修正及び変形が、本発明の特許請求の範囲及びその均等物の範囲内にある場合、本発明は、これらの修正及び変形を包含することが意図される。
【0025】
[付記]
[付記1]
以下のステップ、
S1、装置の組立:
本装置は、荷重システム、温度制御システム及び温度測定システムを含み、荷重システムは、荷重フレーム、圧力体積制御器、3軸圧力室及び注油ポンプを含み、3軸圧力室は、ピストン、受圧円筒、フランジ、底板、および上下対称に設けられた2つのプラグを含み、ピストンは、受圧円筒の頂部に予め設定された中心孔を貫通し、中心孔がピストンと密封嵌合し、受圧円筒の底部は、凸型フランジと密封係合してボルト接続され、フランジは、底板上に載置され、上下2つのプラグは、ピストンの下端、フランジの上端とそれぞれボルト接続され、上下2つのプラグの間に試料が設けられ、試料と両プラグの外側は、可撓性膜で覆われ、荷重フレームの内部上下端面は、ピストンの上端面、底板の下端面にそれぞれ接触し、圧力体積制御器、注油ポンプは、フランジ内に予め設定された液体入口管を介して3軸圧力室内に連通され、温度制御システムは、受圧円筒の側面に設けられた第1循環路、受圧円筒の上面に設けられた第2循環路、及びフランジの上面に設けられた第3循環路にそれぞれ連通する第1冷却機、第2冷却機、及び第3冷却機を含み、温度制御システムは、受圧円筒及びフランジの外側に覆われる保温層をさらに含み、温度測定システムは、電気的に接続された温度計と復調器とを含み、温度計の一端は、受圧円筒を貫通して3軸圧力室内に突出している、
S2、温度制御パラメータの取得:
この温度制御パラメータは、第1冷却機、第2冷却機及び第3冷却機の温度制御パラメータであり、製氷の加圧凍結前に、有限要素数値計算を用いて3軸圧力室内の温度場の時間変化をシミュレートし、多段階計算により、温度変化が要求を満たす温度制御パラメータを見出し、凍結製氷時に装置の温度制御システムを調節するために使用する、
S3、加圧凍結:
凍結製氷工程における荷重システム及び温度制御システムの調整は、まず、注油ポンプを起動して、雰囲気圧荷重媒体を3軸圧力室内に満たし、次いで、同じ負荷速度で、荷重フレームの軸方向及び圧力体積制御器を調整して、試料を静水圧下で加圧し、目標圧力値に達した後、圧力体積制御器の動作を停止すると同時に、軸方向の荷重フレームを調整して、目標圧力値でサーボを安定させ、荷重システムの調整を完了し、凍結製氷中に、ステップS2で取得した温度制御パラメータに従って、温度制御システムにおける第1冷却機、第2冷却機及び第3冷却機の温度設定値をリアルタイムで調整する、
S4、力学試験:
凍結試料作製が完了した後、凍結後の氷試料力状態及び温度場が力学的実験要求に達するように、実験設計に基づいて荷重システム及び温度制御系を調整し続け、その後、氷力学的実験を行うことができる、
を含むことを特徴とする3軸加圧凍結製氷方法。
【0026】
[付記2]
ステップS1において、可撓性膜の材質にポリテトラフルオロエチレンフィルムを用い、ステップS3において、雰囲気圧荷重媒体に航空油圧作動油を用いることを特徴とする付記1に記載の3軸加圧凍結製氷方法。
【0027】
[付記3]
ステップS2の有限要素数値算出方法は、以下のステップ、
1)有限要素モデル化:
有限要素ソフトウェアに、オリジナルサイズと同一の3軸圧力室有限要素幾何学的モデルを確立し、それからモデル材料パラメータを入力し、全てのパラメータが実際値と同じであり、最後にグリッドを区分して有限要素モデルを生成して計算の用意をする、
2)数値計算:
具体的なステップは、
a、有限要素ソフトウェアにモデル初期温度を入力し、雰囲気圧荷重媒体初期温度が-16~-5℃であり、凍結速度に応じて必要に応じて選択し、温度が低いほど凍結速度が速く、他の部分の温度が室温16℃である、
b、初期温度制御パラメータ、即ち、初期状態において3軸圧力室内の第1循環路、第2循環路、第3循環路の3本の冷媒循環路における冷媒の温度を選択し、実際の運転時には、それぞれ第1冷却機、第2冷却機及び第3冷却機による冷媒の温度制御を実現する、
c、解を求める設定をして計算を開始する、
d、試算判定、
e、数値計算を完了する、数値計算で試料が完全に氷結するまで、上記の試算過程dを繰り返し、計算を完了する、
を含む、
3)温度制御パラメータ抽出:
数値計算完了後、温度制御システムの第1冷却機、第2冷却機及び第3冷却機を実稼働で調整するために、計算過程における温度制御パラメータの経時変化を抽出する、
を含むことを特徴とする付記1に記載の3軸加圧凍結製氷方法。
【0028】
[付記4]
前記ステップcの解を求める設定をして計算を開始する具体的な方法として、計算前に解を求める設定をし、1回の解を求めるステップの長さを30秒とし、iで計算ステップ数を示し、即ちi=40の時に、1200秒のシミュレーションでの圧力室内の温度分布を数値計算し、第1段階の計算を開始することを特徴とする付記3に記載の3軸凍結製氷方法。
【0029】
[付記5]
ステップdの試算判定方法として、現ステップであるステップiの計算が完了した後、そのステップの計算結果が、雰囲気圧荷重媒体平均温度が初期温度から<1℃変化していることと、試料が一次元的に凍結していることの2つの条件を満たしているか否かを判定し、満たしていれば、引き続き次の計算を行い、満たしていなければ、温度制御パラメータを調整してから、再度、本ステップの計算を行うことを特徴とする付記3に記載の3軸加圧凍結製氷方法。
【符号の説明】
【0030】
1:荷重フレーム、2:ピストン、3:保温層、4:雰囲気圧荷重媒体、5:可撓性膜、6:温度計、7:試料、8:液体入口管、9:フランジ、10:第1循環路、11:プラグ、12:受圧円筒、13:第2循環路、14:第3循環路、15:第1冷却機、152:第2冷却機、153:第3冷却機、16:注油ポンプ、17:底板、18:復調器、19:圧力体積制御器