(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-22
(45)【発行日】2022-03-30
(54)【発明の名称】ブラシレス電気モータを制御するための方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
H02P 21/05 20060101AFI20220323BHJP
【FI】
H02P21/05
(21)【出願番号】P 2019530452
(86)(22)【出願日】2017-12-14
(86)【国際出願番号】 IB2017057925
(87)【国際公開番号】W WO2018109698
(87)【国際公開日】2018-06-21
【審査請求日】2020-03-09
(31)【優先権主張番号】102016000127693
(32)【優先日】2016-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】510121547
【氏名又は名称】フォンダツィオーネ・イスティトゥート・イタリアーノ・ディ・テクノロジャ
【氏名又は名称原語表記】FONDAZIONE ISTITUTO ITALIANO DI TECNOLOGIA
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】スカルツォ、アレッサンドロ
(72)【発明者】
【氏名】ナターレ、ロレンツォ
【審査官】安池 一貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-244193(JP,A)
【文献】特開2015-224759(JP,A)
【文献】特開2010-130751(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101271348(CN,A)
【文献】特開平08-322279(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02053736(EP,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 21/05
H02P 21/06
H02P 6/17
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転機械部材にトルクを供給するブラシレスDCモータの速度をクローズドループ制御するための方法であって、前記方法は、
FOC(フィールドオリエンテッドコントロール)タイプの制御を実行する段階を備え、前記FOCタイプの前記制御を実行する段階は、
前記モータのステータ三相電流から、前記モータの回転基準システムにおける一対の電流を取得する段階と、
前記モータの回転基準システムにおける対応する一対の電圧から、前記モータの三相電圧を取得する段階と、を備え、
前記対応する一対の電圧のうちの直交電圧が、ロータの配向を測定する段階を含むクローズドループ制御手順で取得され、
前記方法は、前記モータの基準角速度を取得し、FOCタイプの前記制御に供給する段階を備え
前記クローズドループ制御手順は、前記基準角速度と同じ角速度で回転するステータ磁場の方向に対して90度の角度を形成する基準配向に従うように前記ロータの前記配向を調節する段階を含
み、
前記ロータの配向が基準配向に従うように調節する段階を含む前記クローズドループ制御手順は、
前記基準配向を取得するために、前記基準角速度の積分を行う段階と、
前記基準配向と測定した前記ロータの前記配向との間の差異として配向誤差を計算する段階と、
前記配向誤差を、少なくとも1つの比例作用および1つの積分作用を適用し、前記回転基準システムにおいて表される前記モータに印加されるべき、前記直交電圧を出力に供給する、伝達関数の入力変数として使用する段階と
を備える、
方法。
【請求項2】
比例積分微分形式の伝達関数の入力変数として配向誤差を使用する段階を想定している、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記モータのステータ三相電流から、前記モータの回転基準システムにおける一対の電流を取得する前記段階の動作は、前記基準配向の関数としてのクラーク・パーク変換を前記ステータ三相電流に適用する段階を含み、
前記モータの回転基準システムにおける対応する一対の電圧から、前記モータの三相電圧を取得する前記動作は、逆クラーク・パーク変換を前記基準配向の関数として前記一対の電圧に適用する段階を含む、
請求項
2に記載の方法。
【請求項4】
前記一対の電圧の直接電圧を出力に供給する比例積分伝達関数を実装するモジュールを介して、前記一対の電流の直流電流をゼロ値に調節する段階を備える
請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記モータの基準角速度を取得する前記段階の動作は、
前記モータが動作する装置の制御システムから前記基準角速度を取得する段階を含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項6】
基準配向を取得するために前記基準角速度の積分を行う前記段階は、
前記基準角速度の数値積分を実行し、瞬間的に瞬間基準角度位置に従うために、モータシャフトが前記基準角速度で回転するように前記瞬間基準角度位置を取得する段階を含む、
請求項
1に記載の方法。
【請求項7】
前記ロータの配向を測定する前記段階の動作は、
対応するセンサ、特に前記モータの前記ロータ上で動作するエンコーダを介して測定を行う段階を含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記回転基準システムにおいて表される前記モータに印加されるべき前記直交電圧を出力に供給する少なくとも1つの比例作用および1つの積分作用を適用する伝達関数の入力変数として配向誤差を使用する段階は、
前記配向誤差を、基準直交電流を出力に供給する少なくとも1つの比例作用および1つの積分作用を適用する伝達関数の入力変数として使用する段階と、
電流誤差を、前記基準直交電流と前記一対の電流の直交電流の間の差異として計算する段階と、
前記電流誤差を、前記回転基準システムにおいて表される前記モータに印加されるべき前記直交電圧を出力に供給する少なくとも1つの比例作用および1つの積分作用を適用する伝達関数の入力変数として使用する段階と
を備える、
請求項
1から7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記回転機械部材は、回転減速機である、請求項1から
8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記回転減速機は、ウォームギアである、請求項
9に記載の方法。
【請求項11】
回転機械部材にトルクを供給するブラシレスDCモータの速度のクローズドループ制御のためのシステムであって、
前記システムは、FOCタイプの制御モジュールを実行することを備え、前記FOCタイプの制御モジュールは、
前記モータのステータ三相電流から、前記モータの回転基準システムにおける一対の電流を取得するように構成されているモジュールと、
前記モータの回転基準システムにおける対応する一対の電圧から、前記モータの三相電圧を取得するように構成されているモジュールと、
前記対応する一対の電圧の直交電圧を取得し、ロータの配向を測定する手段を含むように構成されているクローズドループ制御チェーンと、を含み、
前記システムは、前記FOCタイプの制御に供給されるべき前記モータの基準角速度を取得するように構成され、
前記クローズドループ制御チェーンは、前記基準角速度と同じ角速度で回転するステータ磁場の方向に対して90度の角度を形成する基準配向に従うために前記ロータの前記配向を調節するように構成されて
おり、
基準配向を取得するために前記基準角速度の積分を実行するように構成されているモジュールを備え、
前記クローズドループ制御チェーンは、
前記基準配向と前記測定した配向との間の差異として配向誤差を計算するように構成されているモジュールと、
少なくとも1つの比例作用および1つの積分作用を適用する伝達関数を実装するために、また入力変数として前記配向誤差を受信するために、また前記回転基準システムにおいて表される前記モータに印加されるべき前記直交電圧を出力に供給するように構成されているモジュールと、
を含む、
システム。
【請求項12】
少なくとも1つの比例作用および1つの積分作用を適用する伝達関数を実装するように構成されている前記モジュールは、基準直交電流を出力に供給する少なくとも1つの比例作用および1つの積分作用とを適用する伝達関数の入力変数として配向誤差を使用するように構成され、
前記基準直交電流と前記一対の電流の直交電流との間の差異として電流誤差を計算するように構成されているモジュールと、
少なくとも1つの比例作用および1つの積分作用を実装するように、入力変数として前記電流誤差を受信するように、また前記回転基準システムにおいて表される前記モータに印加されるべき前記直交電圧を出力に供給するように構成されているモジュールと
を備える、請求項
11に記載のクローズドループ制御のためのシステム。
【請求項13】
比例積分微分形式の伝達関数を実装するモジュールを備える、請求項
11に記載のクローズドループ制御のためのシステム。
【請求項14】
前記回転機械部材は、回転減速機である、請求項
11から13のいずれか1項に記載のクローズドループ制御のためのシステム。
【請求項15】
前記モータおよび回転減速機はロボット内に含まれ、前記回転減速機はウォームギアである、請求項
11から14のいずれか1項に記載のクローズドループ制御のためのシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、FOC(フィールドオリエンテッドコントロール)タイプの制御を実行することを含む、回転機械部材にトルクを供給するブラシレスDCモータの速度をクローズドループ制御するための方法およびシステムに関する。当該制御は、モータの回転基準システムにおいて一対の電流をモータのステータ三相電流から取得する段階と、モータの回転基準システムにおける対応する一対の電圧からモータの三相電圧を取得する段階を含み、対応する一対の電圧の直交電圧がロータの配向を測定することを含むクローズドループ制御手順を介して取得され、制御方法はFOCに供給されるべきモータの基準角速度を取得する段階を含む。
【背景技術】
【0002】
ロボットシステムの分野において、ロボットの全体のコストにより大きな影響を与える構成要素の1つは、高調波駆動タイプのモータ減速機が通常通りに採用されている場合に限って、良好な効率と機械的バックラッシュが存在しないことを保証する電気機械式アクチュエータである。しかし、コストが高いというデメリットがある。
【0003】
ロボットの減速機のための低コスト手段は、ウォームギアタイプの減速機の使用を想定するものである。これらの減速機は頑丈で安価であり、またかなりの構造上の単純さと相まって、非常に少数の構成要素で高い減速比を提供することから、産業で広く使用されている。さらに、ウォームギア減速機は可逆的ではないため、モータをオフにした状態で部品が動かないようにしなければならない(例えば、安全上の理由で)多くの用途において良好な選択肢を与える。
【0004】
しかし、ウォームギア減速機は機械的バックラッシュ、高摩擦、および、厄介な振動、典型的には低周波数とかなりのびびり音を伴う振動などのいくつかの欠点の影響を受け、これはロボットにおける使用にとって決して魅力的ではない。
【0005】
びびり音は不可逆的機械的伝動装置における典型的な問題であって、ギアのバックラッシュと部品の静的摩擦と動的摩擦との間の相互作用により生成される。オイルバス伝動装置を閉じることのようなびびり音問題の部分的手段が存在するが、常に適用可能ではない。オイルバス伝動装置を閉じるためには、コンテナの液密性を必要とするが、可動部が接触することでグリースがすぐに排出されるのでグリースの使用が効果的ではない。他のアプローチは、バックラッシュの影響を減衰させるために伝動装置の出力に摩擦を加えることであるが、これはモータ減速機の、性質上元々低い効率を更に低下させることを伴う。このような従来のアプローチは、残念ながら、すべての用途では機能しない。
【0006】
ウォームギア減速機などのモータ減速機はモータで駆動されるため、こうしたモータを制御するための方法も、制御のための基準値設定、例えばモータの位置または速度の基準を維持すべく、びびり音などの現象に反応しがちである。
【0007】
本明細書では特に、モータ減速機がブラシレスDCモータにより駆動される場合について言及する。
【0008】
ブラシレスモータを制御する最も高度な技術の1つは、FOC技術である。この技術の基礎となる考えは、所与の速度基準に従うために必要なトルクを生成するようなステータの3つの巻線に電流を生成するように設計された制御ループにおいて、三相量から二相量への変換(逆変換を介した逆も同様)を可能にする、いわゆるクラーク・パーク変換を使用することである。ロータに対して固定された回転基準システムからすると、ブラシレスモータの電気方程式はDCモータの電気方程式と同一になる。
【0009】
FOC方法に基づく速度制御システムの一般的なスキームは
図1に概略的に表されており、
図1では15で示されるブラシレスモータの速度を制御するためのシステムを参照番号10が概して示す。制御システム10は、入力に加算器11を含む。加算器11はクローズドループ制御の比較ノードを表し、そのように、正入力におけるモータの角速度の基準値ω*とモータの角速度の測定値ωとを受信する。以下でより十分に論じられるように、基準値ω*および測定値ωは、ロータの配向θ、すなわちロータの磁気双極子モーメントベクトルmの配向の角度を、負入力に供給するモータ15上に設置された位置センサを介してフィードバックされる。
【0010】
従って、加算器11は、実質的にクローズドループ制御の比較ノードを表し、比較ノードは、基準設定点として、モータの基準角速度ω*を受信し、数値微分ブロック17を用いて時間に関してロータの配向θを微分することで測定されたモータの回転の速度ωを調整量として出力に供給する。
【0011】
上記のループにおいて、正入力でのロータの基準角速度ω*とモータの角速度の測定値との間における差異、すなわち速度誤差Evは、直交電機子電圧Vqを生成する比例積分制御装置12に送信される。直交電機子電圧Vqは、モータ15のステータ巻線の3つの電圧Va、Vb、Vcを出力で取得するために、上記の入力に逆クラーク・パーク変換を実行するように構成されているブロック13の2つの入力のうちの1つを直接電機子電圧Vdと共に形成する。基準に従うために必要なトルクを生成するための3つのステータ巻線Ia、Ib、Ic内の対応する電流の測定は、モータ15から取得され、直流電流Idと直交電流Iqを取得するために直接的なクラーク・パーク変換を実行するように構成されているブロック16に供給される。直流電流Idは、第2比例積分制御装置19に電流Idの逆の値を供給するために直流電流Idに-1を乗算する乗算ブロック18にフィードバックされ、第2比例積分制御装置19は、直流電圧Vdの機能および直交電圧Vqの機能として逆クラーク・パーク変換を実行するように構成されているブロック13に供給される直流電圧Vdを生成する。
【0012】
上記の位置制御システム10において、例えばロータ上に設置されたエンコーダ(
図1には示されていない)を介して、逆クラーク・パーク変換ブロック13および直接クラーク・パーク変換ブロック16に供給される、モータ15のロータの位置または配向θを、どのように測定することが想定されているかを指摘すべきである。さらに、閉じられた制御ループのフィードバックの分岐におけるロータのこの配向θは微分モジュール17に供給され、微分モジュール17は位置θの時間微分を計算して、加算器11にフィードバックされたモータの角速度ωの測定値を取得するように、従って角速度のクローズドループ制御を実装するように構成される。
【0013】
古典的なFOC手順を用いて実装される速度制御は、ウォームギアのような機械的減速機におけるびびり音または振動の現象の間に生じるようなトルク値における振動を効果的に補償することができない。実際、抵抗トルクが急に減少した場合、びびり音を防止すべく電流を減少させることで介入することは全体的に制御システムの仕事である。従って、この反応の有効性は制御ループのパスバンドにより限定される。制御ループのパスバンドは、一般的には標準的な制御システムでは適時の介入を可能にして、びびり音現象が生じたときに抑制するには不十分である。
【0014】
[目的および概要]
【0015】
1または複数の実施形態の目的は、先行技術により実現され得る手段に内在する限界を克服することである。
【0016】
1または複数の実施形態によると、この目的は請求項1に規定される特性を提示する制御方法によって達成される。1または複数の実施形態は、対応する制御システムを指してよい。
【0017】
特許請求の範囲は、様々な実施形態に関して本明細書で提供される技術的教示の不可欠な部分を形成する。
【0018】
本明細書に記載される手段によると、方法は、高い静摩擦と機械的バックラッシュの影響を受けるモータ減速機システムのびびり音現象を抑制することが可能な、ブラシレスモータに対するクローズドループ制御の動作を含む。
【0019】
記載された方法は、回転機械部材、特に回転減速機にトルクを供給するブラシレスDCモータのロータの速度のクローズドループ制御を含み、方法は、FOCタイプの制御を実行する段階を含み、当該FOCタイプの制御を実行する段階は、
モータのステータ三相電流から、モータの回転基準システムにおける一対の電流を取得する段階と、
モータの回転基準システムにおける対応する一対の電圧から、モータの三相電圧を取得する段階とを含み、
対応する一対の電圧のうちの直交電圧が、ロータの配向を測定することを含むクローズドループ制御手順で取得され、
制御方法は、FOCに供給されるべきモータの基準角速度を取得する段階を含み、
クローズドループ制御手順は、基準角速度と同じ角速度で回転するステータ磁場の方向に対して90度の角度を形成する基準配向に従うようにロータの配向を調節することを含む。
【0020】
様々な実施形態において、ロータの配向が基準配向に従うように調節する段階を含む上記のクローズドループ制御手順は、
基準配向を取得するために、基準角速度の積分を行う段階と、
基準配向と測定したロータの配向との間の差異として配向誤差を計算する段階と、
配向誤差を、少なくとも1つの比例作用および1つの積分作用を適用し、回転基準システムにおいて表されるモータに印加されるべき直交電圧を出力にもたらす、伝達関数の入力変数として使用する段階とを含む。
【0021】
様々な実施形態において、上記の配向誤差を比例積分微分伝達関数の入力変数として使用することを想定している。
【0022】
様々な実施形態において、記載された方法は、モータのステータ三相電流から、モータの回転基準システムにおける一対の電流を取得する上記の動作は、基準配向の関数としてのクラーク・パーク変換を一対の電流に適用する段階を含み、モータの回転基準システムにおける対応する一対の電圧から、モータの三相電圧を取得する動作は、逆クラーク・パーク変換を基準配向の関数として一対の電圧に適用する段階を含むことを想定している。
【0023】
様々な実施形態において、記載された方法は、一対の電圧の直接電圧を出力に供給する比例積分制御伝達関数を実装するモジュールを介して一対の電流の直流電流をゼロ値まで調節する段階を含む。
【0024】
様々な実施形態において、記載された方法は、モータの基準角速度を取得する段階の動作が、モータが動作する装置の制御システムから基準角速度を取得する段階を含むことを想定している。
【0025】
様々な実施形態において、記載された方法は、基準配向を取得するために前記基準角速度の積分を行う段階は、基準角速度の数値積分を実行し、瞬間的に瞬間基準角度位置に従うために、モータシャフトが基準速度で回転するように瞬間基準角度位置を取得する段階を含むことを想定している。
【0026】
様々な実施形態において、記載された方法は、ロータの配向を測定する動作は、対応するセンサ、特にモータのロータ上で動作するエンコーダを使用して測定を行う段階を含むことを想定している。
【0027】
様々な実施形態において、記載された方法は、回転基準システムにおいて表されるモータに印加されるべき直交電圧を出力にもたらす少なくとも1つの比例作用および1つの積分作用を適用する伝達関数の入力変数として配向誤差を使用する段階は、
上記の配向誤差を、少なくとも1つの比例作用および1つの積分作用を適用し、また基準直交電流を出力に供給する伝達関数の入力変数として使用する段階と、
電流誤差を、一対の電流の直交電流と基準直交電流との間の差異として計算する段階と、
上記電流誤差を、少なくとも1つの比例作用および1つの積分作用を適用する伝達関数の入力変数として使用して、回転基準システムにおいて表されるモータに印加されるべき直交電圧を出力にもたらす段階を含むことを想定している。
【0028】
様々な実施形態において、記載された方法は、回転機械部材は回転減速機であることを想定し、また更に変形した実施形態では、回転減速機はウォームギアであることを想定している。
【0029】
本明細書に記載された手段はさらに、回転機械部材、特に回転減速機にトルクを供給するブラシレスDCモータの速度をクローズドループ制御するためのシステムであって、FOCタイプの制御モジュールを実行することを含み、FOCタイプの制御モジュールは、
モータのステータ三相電流から、モータの回転基準システムにおける一対の電流を取得するように構成されているモジュールと、
モータの回転基準システムにおける対応する一対の電圧から、モータの三相電圧を取得するように構成されているモジュールと、
対応する一対の電圧の直交電圧を取得し、ロータの配向を測定する手段を含むように構成されているクローズドループ制御チェーンとを含み、
システムは、FOCに供給されるべきモータの基準角速度を取得するように構成され、
上記のクローズドループ制御チェーンは、基準角速度と同じ角速度で回転するステータ磁場の方向に対して90度の角度を形成する基準配向に従うためにロータの配向を調節するように構成されているシステムに関する。
【0030】
様々な実施形態において、制御システムは、基準角速度の積分を実行して基準配向を取得するように構成されているモジュールを含み、
クローズドループ制御チェーンは、
基準配向と測定した配向の間の差異として配向誤差を計算するモジュールと、
比例積分伝達関数を実装し、入力変数として配向誤差を受信し、回転基準システムにおいて表されるモータに印加されるべき直交電圧を出力に供給するモジュールとを含む。
【0031】
様々な実施形態において、少なくとも1つの比例作用および1つの積分作用を適用する伝達関数を実装するモジュールは、少なくとも1つの比例作用および1つの積分作用を適用する伝達関数の入力変数として配向誤差を使用して、基準直交電流を出力にもたらすように構成され、
基準直交電流と一対の電流の直交電流との間の差異として電流誤差を計算するモジュールと、
少なくとも1つの比例作用および1つの積分作用を実装するモジュールであって、入力変数として上記電流誤差を受信し、回転基準システムにおいて表されるモータに印加されるべき直交電圧を出力に供給するモジュールとを含む。
【0032】
様々な実施形態において、制御システムは、比例積分微分形式の伝達関数を実装するモジュールを含む。
【0033】
様々な実施形態において、上記回転機械部材は回転減速機であって、更なる変形形態において、上記モータおよび回転減速機はロボットに含まれ、回転減速機はウォームギアである。
【図面の簡単な説明】
【0034】
次に、添付の図面を参照しながら、単に非限定的な例として実施形態を記載する。
【
図1】周知の形式のFOCシステムの概略図である。
【
図2】ブラシレスモータのロータおよびステータに関する量を示す図である。
【
図4】本発明に係る制御方法を表わすフローチャートの概略図である。
【
図5】本発明に係る方法で制御されるブラシレスモータの挙動を表す量のタイムチャートである。
【
図6】本発明に係る方法で制御されるブラシレスモータの挙動を表す量のタイムチャートである。
【
図7】
図3の制御システムの変形した実施形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
次の説明は、実施形態の深い理解を提供すべく、様々な具体的な詳細を例示する。実施形態は、これらの具体的な詳細のうちの1または複数なしに、または他の方法、構成要素、材料などを用いて実装されてよい。他の場合では、実施形態の様々な側面が不明瞭にならないように、既知の動作、材料または構造は詳細に例示または記載されていない。
【0036】
本説明のフレームワークにおける"実施形態"または"一実施形態"の言及は、実施形態を参照して記載される、特定の構成、構造または特性が、少なくとも一実施形態に含まれていると示すことを意図する。同様に、本説明の様々な箇所で提示され得る"ある実施形態において"または"一実施形態において"のような文言が、必ずしも正確に1つ、且つ同一の実施形態を指すとは限らない。さらに、特定の配置、構造または特性は、1または複数の実施形態において任意の適切な態様で組み合わせてよい。
【0037】
本明細書で使用される参照は単に便宜のために提供されており、従って保護の範囲または実施形態の範囲を定義するものではない。
【0038】
前置きに、本明細書では最初に、ブラシレスモータの制御法則において本質的な安定性を取り入れることのできる磁場間の相互作用の物理的特性を例示する。以下に記載される手段は、上記の物理的特性を利用する。
図2のダイアグラムを参照すると、ロータの磁気双極子モーメントベクトルmとステータの磁場ベクトルBの間の角度φのサイン、すなわちB・m・sin(φ)に比例して、モータ15のトルクτを表す物理的法則から導かれるものは、本質的な安定性であって、Bおよびmは、ロータの磁気双極子モーメントベクトルmおよびモータ15のステータの磁場ベクトルBの強度である。このように、モータのロータが加速し、ステータ磁場Bの角度φが減少すると、トルクτは、コントローラの介入を必要とすることなくすぐに減少する。
【0039】
図2に示されるのは、ロータのN極Nを向いているロータに対して固定された基準システムの直軸dであって、直交軸qは直軸dに対して+90度回転する。直軸dおよび直交軸qは、モータの回転基準システムを表す。
【0040】
さらに本出願人は、びびり音を発生させる物理的現象において、本出願人が知る限りでは、現象は部品間の機械的バックラッシュにより負荷が自由に前方に移動する間に、ほんの一瞬の短い時間間隔の、静止摩擦の状態から動的摩擦の状態への急速な遷移から生じるように見えることを留意している。ほんの一瞬の機械的バックラッシュによる自由落下の状態に対するこの時間は、様々なパラメータによって決まるが、例として、トルクは10~20Hzの範囲の周波数を有する振動を示してよい。つまり、周期性を考慮すると、関与する各過度現象は0.05秒未満の時間で生じる。
【0041】
従って、ギアが伝動装置の第1のウォームギアに落下すると、バックラッシュによるスペースは回復し、接触後に静止摩擦が再び発生する。この解釈はまた、負荷とトルクが同一の方向を有する場合にのみびびり音が発生し、反対の場合には発生しないという事実を説明する。従って、静止摩擦と動的摩擦の間の遷移中におけるロータの加速は、コントローラがステータの磁場Bをロータの磁気双極子モーメントmと同期して移動させ、従ってロータと一緒に加速させる、先行技術による、制御システムにおけるびびり音現象の背景にする原因であると思われる。
【0042】
従って、本明細書に記載された方法は、ステータ磁場Bの回転をロータの配向、すなわち磁気双極子モーメントmから独立させることによって、ブラシレスモータのロータの加速を防止するように動作する。
【0043】
従って、記載された手段は一般的に、回転減速機にトルクを供給するブラシレスDCモータの速度のクローズドループ制御のための方法に関する。ブラシレスDCモータは、高静摩擦と機械的バックラッシュの影響を受けるモータ減速機システムのびびり音現象を抑制すべく、ロータの速度から独立して制御手順の入力を構成する基準角速度ω*における回転するステータ磁場Bに適用する。
【0044】
モータの15のステータにおける磁場の方向は、エンコーダによって測定されたロータの位置に基づいて設定される、
図1におけるブラシレスモータのフィールドオリエンテッドコントロールの既知の方法とは異なり、記載された手段では、代わりに、ステータの磁場がロータの位置から独立して回転する。ロータの配向とステータ回転磁場の配向間の同期性は、代わりに、PID(比例積分微分)コントローラによって取得されたフィードバック制御ループを介して保証される。PIDコントローラは、ロータの配向とステータ磁場の角度位置との間の差異を入力として有し、ロータに対して固定された回転基準システムの直交軸に関係付けられた電機子電圧の値を出力として有する。PIDコントローラは従って、ロータの角度位置を基準角度位置にロックしたままにすることが可能なトルクを生成するように構成され、基準角度位置は、フィードバックから独立して角速度で回転し、外側から適用されるステータ磁場の方向に対して90度の角度を形成する。
【0045】
このように、静摩擦と機械的バックラッシュの間の相互作用によって抵抗トルクが急に減少する場合、ステータ磁場の方向をロータに追従して加速させるフィードバック法則が存在しないため、ロータが制御されない方法で加速することは不可能である。方法はさらに、トルクがステータの磁気ベクトルとロータの磁気双極子モーメントとの間における角度に関わる、磁気モーメントの法則の自然特性を、ステータの磁気ベクトルとロータの磁気双極子モーメントの間に形成された角度のサインに比例する方法で利用する。
【0046】
従って、ステータ回転磁場に対してロータが加速を開始すると、ステータ磁場Bのベクトルと磁気双極子モーメントmのベクトルとの間に含まれる角度φが90度から変化し、
図2を参照して記載された物理的法則の直接的な結果としてトルクはすぐに減少し、従って制御システムの介入を必要とすることなくロータを減速させる反作用を適用する。
【0047】
図3は、本発明に係るブラシレスモータ15の速度を制御するシステム20を示す。
【0048】
制御システム20は第1に、積分ブロック21を含む。積分ブロック21は、入力においてモータの角速度の基準値ω*を受信して時間Σω*Δtにおける数値積分を実行し、角度位置の基準値、すなわちロータに対する基準配向θ*を出力において供給し、それから角度位置の基準値は正入力で加算器11に供給される。それから加算器11は、以下により十分に論じられているように、モータ15上に設置された位置センサを介してロータの位置の測定値、すなわち配向θを負入力で直接受信する。
【0049】
正入力における基準配向θ*と負入力におけるロータの配向の測定値θとの間の差異、すなわち位置誤差Eoは、直交電機子電圧Vqを生成する比例積分微分制御22に送信される。直交電機子電圧Vqは、モータの15のステータ巻線の三相電圧Va、Vb、Vcを出力にて取得するために上記入力に逆クラーク・パーク変換を実行するように構成されているブロック13の2つの入力のうちの1つを、直接電機子電圧Vdと共に形成する。モータの15のトルク、特に基準配向θ*に追従するために必要なトルクを生成するためにステータIa、Ib、Icの3つの巻線で測定された対応する電流は、モータ15から取得され、直流電流Idと直交電流Iqを取得するために直接的なクラーク・パーク変換を実行するように構成されているブロック16に供給される。直流電流Idは、乗算ブロック18にフィードバックされ、乗算ブロック18は直流電流Idに-1を乗算し、直流電流の負の値-Idを第2比例積分制御装置19に供給し、第2比例積分制御装置19は、直流電圧Vdを生成し、逆クラーク・パーク変換を実行するように構成されたブロック13に供給する。
【0050】
記載された手段の主な態様によると、上記の位置制御システム10において、逆クラーク・パーク変換ブロック13および直接クラーク・パーク変換ブロック16に基準配向θ*を供給することが想定される。これは、これら2つのブロックが測定位置値θを受信した
図1のダイアグラムに表されたものとは異なる。
【0051】
逆クラーク・パーク変換ブロック13および直接クラーク・パーク変換ブロック16の組が相電圧Va、Vb、Vcを決定し、相電圧Va、Vb、Vcがステータの速度を順番に決定するため、これらの相電圧は、ロータθの配向からは独立した態様でブロック13、16により算出される。
【0052】
フィールドオリエンテッドコントロールの場合のように、ロータの配向θは、対応するセンサ、例えば磁気双極子ベクトル(絶対的キャリブレーション基準を有する)に対して既知の位置にリセット基準マークが提供された光学エンコーダを介して測定するべきである。
図1の標準的なFOC方法と比較して、本明細書で記載されたFOC方法の実装のために必要な、追加または異なるハードウェアの種類はない。すなわち、FOCの実装が可能ないかなるハードウェアシステムも、本明細書で記載された方法の実装に等しく適している。
【0053】
位置制御システム20は、1または複数のマイクロプロセッサを含む総合制御基板を介して実装されるのが好ましい。
【0054】
ここで、
図3の制御システム20を参照して、ブラシレスモータのための可能な位置制御方法の段階を以下に記載する。方法は、
図4に示されているフローチャートに参照番号100で概して示される。
【0055】
一般性の損失を意味するものではなく、モータ15の回転の正方向は反時計回りであると見なされる。
図2に示されるように、ロータに対して固定された基準システムの"直"軸はロータのN極を向いているが、"直交"軸は直軸に対して+90度回転されられる。
【0056】
直交軸qとステータの基準システムにおける0度の方向との間に含まれる配向角度は、ロータの角度位置θであると仮定される。基準配向は、起動時に測定されたロータの配向で初期化される。
【0057】
制御方法100は、
段階110において、50で示される高レベル制御システム、すなわちモータ15が動作する装置の制御モジュール、例えばロボットにより供給されるのが好ましい基準角速度ω*を読み取る段階であって、制御モジュールは装置の要求によって基準角速度ω*を供給する段階と、
段階120において、特にブロック21を介して数値積分を実行し、モータシャフトが瞬間的に基準速度に追従しながら基準速度で回転するように基準瞬間角度位置θ*を取得する段階と、
段階130において、上述したように、センサ60を介して、例えばエンコーダを介してロータの配向θを測定する段階と、
段階140において、特に加算器11において、基準配向θ*と測定した配向θとの間の差異として配向誤差Eoを計算する段階と、
段階150において、入力として配向誤差Eoを使用して比例積分微分伝達関数(PIDコントローラ22)を適用する段階であって、比例積分微分伝達関数の出力は、回転基準システムにおいて表されるモータ15に印加されるべき直交電圧Vqであり、クローズドループ比例積分微分制御手順を実装する制御ループ内でPIDコントローラ22を介してPID伝達関数を印加した結果は、モータの15のロータに基準配向θ*と位置合わせするように強制し、従って配向誤差Eoを0に調整するトルクを生成する段階と、
段階160において、モータ15において三相電流Ia、Ib、Icを測定する段階と、
段階170において、相電流Ia、Ib、Icにクラーク・パーク変換(モジュール16)を印加して直流電流Idを取得する段階と、
段階180において、比例積分制御19を介して直流電流Idをゼロ値に調節する段階であって、制御の入力は反対値-Idを有する直流電流であって、出力は直流電流Idを抑制するためにモータに印加されるべき直流電圧Vdの値であって、出力はトルクに寄与せず、完全に熱の形で消滅する段階と、
段階190において、このようにして取得された一対の電圧VdとVqに逆クラーク・パーク変換(モジュール13)を行い、モータ15に印加されるべき三相電圧Va、Vb、Vcを取得する段階とを含む。
【0058】
動作110~190は、クローズドループ制御における場合のように、モータの基準角速度ω*とその変化に従って周期的に反復される。
【0059】
図3のダイアグラムから分かるように、
図1を参照して記載された従来のFOCに対する主な差異点は、ロータの配向θに対したオープンループにおいてクラーク・パーク変換が算出される点である。その結果、突然の摩擦の低下や抵抗トルクが生じた場合に、ロータがステータ磁場に向かって"押しのけて前へ進む"ことができないため、ロータの位置における乱れはトルクの生成に干渉できない。これは、実際には、抵抗トルクへの干渉と伝動装置の摩擦の急激な変化が、びびり音現象を起こす可能性から守る。
【0060】
図5および
図6は、ブラシレスモータ、特に38.1の減速比を有する産業ウォームギア減速機Igusに独自のトルクを供給するMecapion APM‐SA01に適用された、本明細書で記載された方法の結果を示す。制御モジュール20はIstituto Italiano di Tecnologiaが生産した総合制御基板2FOCにおいて実装される。結果は、異なる負荷条件におけるパス追跡タスクの最中の位置と速度のグラフを表す。
【0061】
図5のダイアグラムは、秒単位で測定された時間tの関数として、最小ジャーク軌跡を有する反復上下運動に対するロータの位置θ(度)およびロータの角速度ω(度/秒)のプロットを示す。
【0062】
グラフにおいて、リフティング運動とリリース運動の両方においてびびり音現象が生じないということが留意され得る。同様に、同一テストにおける位置θおよびトルクτを時間の関数として示す
図6のダイアグラムにおいては、トルクにおける振動は静的摩擦から動的摩擦までの急激な移行現象に限定されることが見られてよく、逆も同様であるが、振動はシステムにより増幅されず、その減速機の運動への影響は記載された方法と装置により抑制されることが見られてよい。
【0063】
図7は、
図3の制御システム20の変形した実施形態20'の概略図である。同じ参照番号は実質的に同じ部品または要素を示す。この場合、制御システム20'は、積分ブロック21を含む。積分ブロック21は、入力においてモータの角速度の基準値ω*を受信し、時間Σω*Δtで数値積分を実行し、角度位置の基準値、すなわちロータに対する基準配向θ*を出力に供給し、それから角度位置の基準値は加算器11に正入力で供給され、従ってモータ15上に設置された位置センサを介して、位置の測定値、すなわちロータの配向θを受信する。またこの場合、加算器11の正の基準配向θ*とロータの配向θの測定値との間の差異、すなわち位置誤差Eoは比例積分微分コントローラ22'に送信される。比例積分微分コントローラ22'の伝達関数は、この場合、直交電機子電圧Vqではなく、基準直交電流Iq*を生成するように構成されている。基準電流Iq*は、もう1つの比較ノード11'を含む内部ループの設定点を表し、もう一つの比較ノード11'は、加算器でもあって、直接クラーク・パーク変換ブロック16から取得された基準直交電流Iq*と直交電流Iqとの間の差異、すなわち電流誤差Eiを計算する。電流誤差Eiは比例積分制御装置22'に供給され、比例積分制御装置22'は
図3に表されるものと同様の方法で逆クラーク・パーク変換ブロック13に供給され、基準直交電流Iq*に等しい直交電流Iqを決定するような値を有する直交電機子電圧Vqを生成するように構成されている。
【0064】
従って、直交電流Iqがフィードバック量としてピックアップされる基準としてPIDコントローラ22'の出力を使用する内部ループ11'と19'は、少なくとも1つの比例作用および1つの積分作用、特にPID作用22'を適用する伝達関数の入力変数として配向誤差Eoを使用する上記動作150の変形に実質的に対応し、回転基準システムにおいて表されるモータ15に印加されるべき直交電圧Vqを出力に供給する。ここで、上記の配向誤差Eoを、基準直交電流を出力に供給する少なくとも1つの比例作用および1つの積分作用を適用する伝達関数の入力変数として使用し、基準直交電流と直交電流Iqとの間の差異として電流誤差Eiを計算し、電流誤差Eiを、回転基準システムにおいて表されるモータ15に印加されるべき直交電圧Vqを出力に供給する少なくとも1つの比例作用および1つの積分作用19'を適用する伝達関数の入力変数として使用することが想定される。
【0065】
本明細書で記載された様々な実施形態による手段は、以下に挙げられる利点を提供する。
【0066】
記載された方法は有利にもFOCタイプであって、従って一様な回転状態(連続的な抵抗トルクを有する)で高度な特性をすべて維持する。記載された方法は、クラーク・パーク変換のオープンループ計算を実行することによって、ステータ回転磁場の生成をロータの角度位置に依存しない状態にすることを可能にする。
【0067】
抵抗トルクの乱れと静止摩擦から動的摩擦への急速な遷移(びびり音)が生じた場合、既知のFOC方法はコントローラのパスバンドと両立して突然の加速に反応する。びびり音の場合には、一般的にこれは乱れの影響を一掃するには十分ではない。従って、ロータがステータ磁場を"前方に押して"びびり音の原因となる共鳴現象で抵抗トルクによって生成される乱れを増幅するため、ロータの位置における摂動はトルクの生成を干渉する。代わりに、記載された手段においては、ロータの磁気双極子モーメントmとステータの磁場Bとの間の角度のサインに比例する方法でトルクを表す物理的法則から導かれる本質的な安定性が利用される。従って、ロータが加速しステータ磁場との角度が減少すると、トルクはコントローラの介入を必要とすることなくすぐに減少する。
【0068】
当然のことながら、実施形態の基礎となる原理に影響することなく、構成の詳細と実施形態は、次の請求項により定義されるように、単に例として本明細書で記載され示されたものに対して広く変化してよく、それによって本実施形態の範囲から逸脱することもない。
【0069】
記載された方法は、ウォームギアタイプまたは他の回転モータ減速機システムの減速機、雄ネジ/雌ネジタイプの減速機、またはトルクが電子基板により制御されるブラシレスモータにより供給される直接駆動システムに適用されてよい。本明細書で記載された手段は、統合メカトロニクス、産業ロボット工学、自動車分野での用途がある。
【0070】
様々な実施形態において、モータと減速機はロボットに含まれ、回転減速機はウォームギア、またはロボットが必要とする実施形態と互換性のある他の何らかの回転減速機システムである。
【0071】
びびり音の抑制は、オープンループにおいて回転する基準に従うために使用されるモードに関係なく生じる。従って、記載され請求される方法と互換性のあるPID制御に代わる実施形態を使用することが可能である。
【0072】
PID制御は特に、ロータの速度と、速度として既に供給された参照の良好な測定ができるため、微分要素と共に精度を向上させる。しかし、比例積分(PI)コントローラを使用することもできる。この場合、速度の瞬間的な誤差はより広い振動を提示する。言い換えれば、配向誤差は少なくとも1つの比例作用および1つの積分作用を適用する伝達関数の入力変数、すなわちPIコントローラとして、あるいは微分作用を加えるコントローラ、すなわちPIDコントローラの入力として使用されてよい。従って、制御モジュール22と制御モジュール22'は、具体的には比例積分制御モジュールのみであり得る。
【0073】
"高レベルの静摩擦と機械的バックラッシュの影響を受けるモータ減速機システム"は一般的に不可逆的減速機を意味し、従って効率は摩擦のため50%よりもかなり低い。例として、ウォームギアの場合、一般的な効率はおよそ30%である。2次側の機械的バックラッシュに関しては、例えば2°である。
【0074】
記載された方法は一般的に、びびり音による影響を受けても受けなくてもよい回転機械部材に接続されたモータ減速なしのモータにも適用されてよい。びびり音による影響を受けない場合、パフォーマンスは周知の形式のFOC制御のパフォーマンスに相当するが、びびり音による影響を受ける回転部材の場合には、記載された方法は上述の利点を提示する。