(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-22
(45)【発行日】2022-03-30
(54)【発明の名称】キャパシタ用電極材、キャパシタ用電極シート及びキャパシタ
(51)【国際特許分類】
H01G 11/38 20130101AFI20220323BHJP
H01G 11/32 20130101ALI20220323BHJP
H01G 11/36 20130101ALI20220323BHJP
【FI】
H01G11/38
H01G11/32
H01G11/36
(21)【出願番号】P 2017064947
(22)【出願日】2017-03-29
【審査請求日】2019-12-16
【審判番号】
【審判請求日】2021-03-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001232
【氏名又は名称】特許業務法人 宮▲崎▼・目次特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】笹川 直樹
(72)【発明者】
【氏名】小原 峻士
【合議体】
【審判長】酒井 朋広
【審判官】清水 稔
【審判官】畑中 博幸
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/098758(WO,A1)
【文献】特開2006-332625(JP,A)
【文献】特開2006-165522(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G11/00-11/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素材料と、
前記炭素材料に少なくとも一部が固定されている、樹脂とを含み、
前記樹脂とは異なるバインダー樹脂を実質的に含ま
ず、
前記炭素材料が、グラフェン積層構造を有している、キャパシタ用電極材。
【請求項2】
前記キャパシタ用電極材中において、前記樹脂の含有量が、3重量%以上、50重量%以下である、請求項1に記載のキャパシタ用電極材。
【請求項3】
前記樹脂中において、前記炭素材料に固定されている樹脂の含有量が、80重量%以上、100重量%以下である、請求項1又は2に記載のキャパシタ用電極材。
【請求項4】
前記炭素材料が、部分的にグラファイトが剥離されている構造を有する、部分剥離型薄片化黒鉛である、請求項1~
3のいずれか1項に記載のキャパシタ用電極材。
【請求項5】
微粒子をさらに含む、請求項1~
4のいずれか1項に記載のキャパシタ用電極材。
【請求項6】
前記キャパシタ用電極材中において、前記微粒子の含有量が、1重量%以上、90重量%以下である、請求項
5に記載のキャパシタ用電極材。
【請求項7】
請求項1~
6のいずれか1項に記載のキャパシタ用電極材のみからなる、キャパシタ用電極シート。
【請求項8】
請求項
7に記載のキャパシタ用電極シートを備える、キャパシタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャパシタ用電極材、該キャパシタ用電極材を用いたキャパシタ用電極シート及びキャパシタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、キャパシタ用電極材として、黒鉛、活性炭、カーボンナノファイバー、又はカーボンナノチューブ等の炭素材料が、環境的側面から広く用いられている。
【0003】
下記の特許文献1には、樹脂残存部分剥離型薄片化黒鉛と、バインダー樹脂とを含む、キャパシタ用電極材が開示されている。特許文献1では、樹脂残存部分剥離型薄片化黒鉛が、部分的にグラファイトが剥離されている構造を有しており、かつ熱分解された樹脂が一部残存しているものであることが記載されている。また、特許文献1では、バインダー樹脂の含有量が、樹脂残存部分剥離型薄片化黒鉛100重量部に対し、0.3重量部~40重量部であることが好ましい旨が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のように、樹脂残存部分剥離型薄片化黒鉛とバインダー樹脂とを含むキャパシタ用電極材を用いた場合においても、キャパシタの静電容量をなお十分に高められない場合があった。また、特許文献1のキャパシタ用電極材を用いて電極を作製する際には、電極設計が煩雑となる場合があった。
【0006】
本発明の目的は、キャパシタの静電容量を高めることができ、かつ電極設計を簡素化することができる、キャパシタ用電極材、並びに該キャパシタ用電極材を用いたキャパシタ用電極シート及びキャパシタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るキャパシタ用電極材は、炭素材料と、前記炭素材料に少なくとも一部が固定されている、樹脂とを含み、前記樹脂とは異なるバインダー樹脂を実質的に含まないことを特徴としている。
【0008】
本発明に係るキャパシタ用電極材のある特定の局面では、前記キャパシタ用電極材中において、前記樹脂の含有量が、3重量%以上、50重量%以下である。
【0009】
本発明に係るキャパシタ用電極材の他の特定の局面では、前記樹脂中において、前記炭素材料に固定されている樹脂の含有量が、80重量%以上、100重量%以下である。
【0010】
本発明に係るキャパシタ用電極材のさらに他の特定の局面では、前記炭素材料が、グラフェン積層構造を有している。
【0011】
本発明に係るキャパシタ用電極材のさらに他の特定の局面では、前記炭素材料が、部分的にグラファイトが剥離されている構造を有する、部分剥離型薄片化黒鉛である。
【0012】
本発明に係るキャパシタ用電極材のさらに他の特定の局面では、微粒子をさらに含む。
【0013】
本発明に係るキャパシタ用電極材のさらに他の特定の局面では、前記キャパシタ用電極材中において、前記微粒子の含有量が、1重量%以上、90重量%以下である。
【0014】
本発明に係るキャパシタ用電極シートは、本発明に従って構成されるキャパシタ用電極材を含む。
【0015】
本発明に係るキャパシタは、本発明に従って構成されるキャパシタ用電極シートを備える。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、キャパシタの静電容量を高めることができ、かつ電極設計を簡素化することができる、キャパシタ用電極材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施例1におけるキャパシタ用電極材の示差熱分析結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の詳細を説明する。
【0019】
[キャパシタ用電極材]
本発明のキャパシタ用電極材は、炭素材料と、樹脂とを含む。上記樹脂は、上記炭素材料に少なくとも一部が固定されている。また、本発明のキャパシタ用電極材は、上記樹脂とは異なるバインダー樹脂を実質的に含まない。
【0020】
なお、本発明においては、少なくとも一部の樹脂が炭素材料に固定されていればよいことから、炭素材料に固定されていない樹脂が含まれていてもよい。この場合、炭素材料に固定されていない樹脂も、上記のように実質的に含まないとするバインダー樹脂とは異なる樹脂である。
【0021】
また、本発明において、「実質的に含まない」とは、キャパシタ用電極材100重量部に対するバインダー樹脂の含有量が、0.2重量部以下であることをいう。本発明においては、少なくとも一部が炭素材料に固定されている樹脂とは異なるバインダー樹脂を含んでいないことが望ましいが、上記のようにキャパシタ用電極材100重量部に対して0.2重量部以下であればバインダー樹脂を含んでいてもよい。
【0022】
本発明のキャパシタ用電極材は、炭素材料と、該炭素材料に少なくとも一部が固定されている樹脂とを含んでおり、しかも該樹脂とは異なるバインダー樹脂を実質的に含んでいないので、キャパシタの静電容量を高めることができる。また、キャパシタの電極設計を簡素化することもできる。この点については、以下のように説明することができる。
【0023】
従来、キャパシタ用電極材を用いて電極シートを作製する際には、炭素材料にバインダー樹脂や溶媒を含めて賦型されている。この際、キャパシタ用電極材の賦型方法としては、例えば、炭素材料が添加されたバインダー樹脂に溶媒を含めてなるスラリーを、圧延シートでシート化する方法や、集電体上に塗工する方法がある。しかしながら、例えばバインダー樹脂と炭素材料との相溶性が悪いと、炭素材料が凝集し、すなわちスラリー中における炭素材料の分散性が低下し、均一な構造を有する電極シートを作製できない場合がある。そのため、従来の方法で作製した電極シートを用いた場合、キャパシタの静電容量を十分に高められない場合がある。また、均一な構造を有する電極シートを得るためには、スラリー中における炭素材料の分散性を考慮する必要があるが、この場合電極設計が煩雑となるという問題がある。
【0024】
これに対して、本発明のキャパシタ用電極材では、樹脂が固定されている炭素材料を用いており、しかも炭素材料に固定されている樹脂とは異なるバインダー樹脂を実質的に含まない。そのため、たとえ樹脂と炭素材料との相溶性が悪くとも、炭素材料が凝集し難く、スラリー中における炭素材料の分散性を高めることができる。従って、本発明のキャパシタ用電極材を用いた場合、均一な電極シートを作製することができ、キャパシタの静電容量を高めることができる。
【0025】
また、本発明のキャパシタ用電極材では、樹脂が固定されている炭素材料を用いているので、炭素材料に固定されている樹脂とは異なるバインダー樹脂を実質的に含まなくとも、均一な電極シートを作製することができる。従って、炭素材料とバインダー樹脂との相溶性や、スラリー中における炭素材料の分散性を考慮せずとも、均一な電極シートを作製することができる。そのため、本発明のキャパシタ用電極材を用いた場合、電極設計を簡素化することもできる。
【0026】
本発明のキャパシタ用電極材中において、炭素材料に少なくとも一部が固定されている樹脂の含有量は、好ましくは3重量%以上、より好ましくは5重量%以上、好ましくは50重量%以下、より好ましくは20重量%以下である。上記樹脂の含有量が上記下限以上である場合、より一層均一な構造を有する電極シートを得ることができる。上記樹脂の含有量が上記上限以下である場合、キャパシタ用電極材中において炭素材料の比表面積をより一層高めることができる。なお、上記樹脂の含有量は、キャパシタ用電極材全体を100重量%としたときの上記樹脂の割合である。なお、上記樹脂の含有量は、熱分析により定量することができる。
【0027】
例えば、熱分析による樹脂の含有量(樹脂量)の確認は、例えば、示差熱熱重量同時測定装置(日立ハイテクサイエンス社製、商品名「STA7300」)を用いて以下の要領で行うことができる。
【0028】
キャパシタ用電極材を2mg、白金パン中において秤量する。そのサンプルを例えば昇温速度を10℃/分で、30℃から1000℃までの測定を実施する。測定により得られた示差熱分析結果から、樹脂と炭素材料の燃焼温度を分離し、それに伴う熱重量変化からキャパシタ用電極材全体に対する樹脂量(重量%)を算出することができる。
【0029】
キャパシタ用電極材に含まれる樹脂量を上記範囲とすることにより、より一層高い結着性とより一層大きな比表面積を併せもったキャパシタ用電極材が得られ、より一層高容量なキャパシタを作製することができる。また、これは後述するように微粒子が挿入されている場合においても、同様に適用される。
【0030】
また、上記樹脂中において、炭素材料に固定されている樹脂の含有量は、好ましくは80重量%以上、より好ましくは90重量%以上である。炭素材料に固定されている樹脂の含有量が上記範囲内にある場合、より一層均一な構造を有する電極シートを得ることができる。なお、炭素材料に固定されている樹脂の含有量は、炭素材料に少なくとも一部が固定されている樹脂全体を100重量%としたときの炭素材料に固定されている樹脂の割合である。
【0031】
なお、炭素材料に固定されている樹脂とは、樹脂を溶解し得る溶媒でキャパシタ用電極材を洗浄した場合に、当該溶媒に溶出しない成分のことをいう。そして、樹脂を溶解し得る溶媒で洗浄した前後の上記示差熱分析の熱重量変化から、炭素材料に樹脂が固定されているか否かを区別することができる。
【0032】
また、炭素材料に固定されている樹脂と固定されていない樹脂とでは、示差熱分析の樹脂の燃焼温度が異なることから、上記示差熱分析の熱重量変化から、樹脂中において、炭素材料に固定されている樹脂の含有量(重量%)を算出することができる。
【0033】
本発明において、キャパシタ用電極材の形状は特に限定されず、フィルム状、シート状、粒状などの適宜の形状のものを用いることができる。
【0034】
以下、本発明のキャパシタ用電極材を構成する各材料の詳細について説明する。
【0035】
(炭素材料及び樹脂)
本発明で用いられる炭素材料には、少なくとも一部の樹脂が固定されている。炭素材料への樹脂の固定方法としては、特に限定されないが、例えば炭素材料に樹脂を化学結合又は物理吸着させることにより固定することができる。なかでも、炭素材料に樹脂を化学結合させることにより固定することが好ましく、グラフトにより固定することがより好ましい。
【0036】
炭素材料に少なくとも一部が固定されている樹脂としては、特に限定されず、例えば、ポリプロピレングリコール、ポリグリシジルメタクリレート、ポリ酢酸ビニル、ポリブチラール、ポリアクリル酸、ポリエチレングリコール、スチレンブタジエンゴム、ポリイミド樹脂、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデンなどのフッ素系ポリマーなどが挙げられる。
【0037】
なお、上述したように、本発明においては、少なくとも一部が炭素材料に固定されている樹脂とは異なるバインダー樹脂を含んでいないことが望ましいが、キャパシタ用電極材100重量部に対して0.2重量部以下であればバインダー樹脂を含んでいてもよい。
【0038】
このようなバインダー樹脂としては、例えば、ポリブチラール、ポリテトラフルオロエチレン、スチレンブタジエンゴム、ポリイミド樹脂、又はポリフッ化ビニリデンなどのフッ素系ポリマーや水溶性のカルボキシメチルセルロースなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、複数を併用してもよい。
【0039】
炭素材料としては、特に限定されず、例えば、黒鉛、薄片化黒鉛、グラフェン、ケッチェンブラック、カーボンブラック、多孔質炭素材料などを用いることができる。なかでも、黒鉛や薄片化黒鉛のようなグラフェン積層構造を有する炭素材料であることが望ましい。この場合、キャパシタ用電極材の導電性をより一層高めることができる。なお、グラフェン積層構造を有する炭素材料においても、例えばグラフト又は吸着させることにより樹脂を固定化させることができる。
【0040】
黒鉛とは、複数のグラフェンシートの積層体である。黒鉛のグラフェンシートの積層数は、通常、10万層~100万層程度である。黒鉛としては、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛又は膨張黒鉛などを用いることができる。膨張黒鉛は、通常の黒鉛よりもグラフェン層同士の層間が大きい。従って、黒鉛としては、膨張黒鉛を用いることが好ましい。
【0041】
薄片化黒鉛とは、元の黒鉛を剥離処理して得られるものであり、元の黒鉛よりも薄いグラフェンシート積層体をいう。薄片化黒鉛におけるグラフェンシートの積層数は、元の黒鉛より少なければよい。また、剥離処理によってグラフェンシート表面を酸化させることにより、比表面積をさらに一層大きくすることもできる。
【0042】
薄片化黒鉛において、グラフェンシートの積層数は、好ましくは1000層以下であり、より好ましくは500層以下である。グラフェンシートの積層数が上記上限以下である場合、薄片化黒鉛の比表面積をより一層大きくすることができる。
【0043】
上記薄片化黒鉛は、部分的にグラファイトが剥離されている構造を有する部分剥離型薄片化黒鉛であることが好ましい。
【0044】
より具体的に、「部分的にグラファイトが剥離されている」とは、グラフェンの積層体において、端縁からある程度内側までグラフェン層間が開いており、すなわち端縁にてグラファイトの一部が剥離しており、中央側の部分ではグラファイト層が元の黒鉛又は一次薄片化黒鉛と同様に積層していることをいうものとする。従って、端縁にてグラファイトの一部が剥離している部分は、中央側の部分に連なっている。
【0045】
部分剥離型薄片化黒鉛は、エッジ部においてグラファイトが薄片化している部分を多数有している。上記グラファイトが薄片化している部分とは、黒鉛又は一次薄片化黒鉛のうち、エッジ部においてグラフェン積層体又はグラフェンが部分的に剥離されている部分のことをいう。
【0046】
部分剥離型薄片化黒鉛において、グラファイトが部分的に剥離されているエッジ部と、未剥離の中央部との存在比率は、1:30~1:60であることが好ましい。なお、この場合において、エッジ部は、左右不定形であってもよい。エッジ部と中央部の存在比率が上記範囲内にあることにより、より一層大きな比表面積とより一層大きな導電性とを両立させることができる。
【0047】
エッジ部においては、部分的にグラファイトが剥離され薄片化している部分のグラフェンの積層数が少ない。部分的にグラファイトが薄片化している部分のグラフェンの各積層数は、好ましくは100層以下であり、より好ましくは50層以下であり、さらに好ましくは30層以下である。薄片化している部分のグラフェン積層数が上記上限以下である場合、後述するバインダー樹脂との相溶性をより一層高めることができる。
【0048】
なお、部分剥離型薄片化黒鉛は、中央部において、元の黒鉛または一次薄片化黒鉛と同様にグラフェンが積層している構造を有している。もっとも、中央部においても、樹脂が熱分解することによって、元の黒鉛又は一次薄片化黒鉛よりグラフェン層間の拡げられている部分が存在していてもよい。
【0049】
このように、部分剥離型薄片化黒鉛においては、グラフェン層間の層間距離が拡げられており、しかも端縁において薄片化している部分のグラフェン積層数が少ないため、比表面積が大きいという特徴を有している。そのため、キャパシタ用電極材の導電性をより一層高めることができ、キャパシタの静電容量をより一層高めることができる。
【0050】
また、部分剥離型薄片化黒鉛を製造する際には、グラフト又は吸着により部分剥離型薄片化黒鉛に固定化された樹脂を同時に得ることができるので、樹脂の固定化工程を省略することができる。
【0051】
部分剥離型薄片化黒鉛は、黒鉛もしくは一次薄片化黒鉛と、樹脂とを含み、樹脂が黒鉛または一次薄片化黒鉛にグラフトまたは吸着により固定されている組成物を用意し、該組成物中に含まれている樹脂を、熱分解したものである。なお、樹脂を熱分解させる際には、樹脂の一部を残存させながら熱分解する。より具体的に、部分剥離型薄片化黒鉛は、例えば、国際公開第2014/034156号に記載の薄片化黒鉛・樹脂複合材料の製造方法と同様の方法で製造することができる。なお、上記黒鉛としては、より一層容易にグラファイトを剥離することが可能であるため膨張黒鉛を使用することが好ましい。
【0052】
なお、一次薄片化黒鉛とは、各種方法により黒鉛を剥離することにより得られた薄片化黒鉛を広く含むものとする。一次薄片化黒鉛は、部分剥離型薄片化黒鉛であってもよい。なお、一次薄片化黒鉛は、黒鉛を剥離することにより得られるものであるため、その比表面積は、黒鉛よりも大きいものであればよい。
【0053】
部分剥離型薄片化黒鉛中に残存する樹脂としては、特に限定されないが、ラジカル重合性モノマーの重合体であることが好ましい。樹脂は、複数種類のラジカル重合性モノマーの共重合体であってもよいし、1種類のラジカル重合性モノマーの単独重合体であってもよい。
【0054】
用いられる樹脂の例としては、ポリプロピレングリコール、ポリグリシジルメタクリレート、ポリ酢酸ビニル、ポリブチラール、ポリアクリル酸、ポリエチレングリコール、スチレンブタジエンゴム、ポリイミド樹脂、又はポリテトラフルオロエチレンポリフッ化ビニリデンなどのフッ素系ポリマーなどが挙げられる。好ましくは、ポリエチレングリコール又はポリ酢酸ビニルが挙げられる。ポリエチレングリコール又はポリ酢酸ビニルを用いた場合、これらの樹脂同士や樹脂と集電体との結着性をより一層向上させることができ、しかも部分剥離型薄片化黒鉛の比表面積をより一層大きくすることができる。
【0055】
なお、後述するように、キャパシタ用電極材の賦形を行う際には、溶媒(分散媒)として有機系の溶媒や水が用いられる。この際、それぞれの分散媒中への炭素材料の分散性の観点から、樹脂としては、有機系の溶媒を用いる場合には、ポリプロピレングリコールや、ポリ酢酸ビニルが好ましく、水を用いる場合には、ポリエチレングリコールや、スチレンブタジエンゴムが好ましい。
【0056】
部分剥離型薄片化黒鉛中に残存している樹脂の量は、部分剥離型薄片化黒鉛100重量部に対し、好ましくは3重量部~350重量部であり、より好ましくは3重量部~250重量部であり、さらに好ましくは3重量部~80重量部である。残存樹脂の量を上記範囲内とすることで、樹脂同士や樹脂と集電体との結着性と、部分剥離型薄片化黒鉛の比表面積とをより一層高いレベルで両立することができる。
【0057】
なお、部分剥離型薄片化黒鉛中に残存している樹脂の一部を除去することで、適正な樹脂量に調整することもできる。このとき、加熱や化学処理などによる除去方法が可能であり、一部構造を改質することもできる。
【0058】
このように、本製造方法においては、原料組成物として、樹脂が黒鉛または一次薄片化黒鉛にグラフト又は吸着により固定されている組成物を用いるので、得られた部分剥離型薄片化黒鉛中に残存している樹脂が部分剥離型薄片化黒鉛にグラフト又は吸着により固定されている。そのため、固定化する工程を省略することができる。
【0059】
もっとも、本発明においては、部分剥離型薄片化黒鉛中における残存樹脂を熱分解により完全に除去してもよい。その場合、得られた部分剥離型薄片化黒鉛に樹脂を別途固定させる工程が必要となる。
【0060】
本発明において、炭素材料のメチレンブルー吸着法により測定した比表面積は、500m2/g以上であることが好ましく、3000m2/g以下であることが好ましい。
【0061】
炭素材料のメチレンブルー吸着法により測定した比表面積が小さすぎると、十分にキャパシタの静電容量を高められない場合がある。また、炭素材料のメチレンブルー吸着法により測定した比表面積が大きすぎると、再スタックやスクロールが起きることにより、キャパシタ用電極シートとした場合に最適な構造が維持できない場合がある。
【0062】
なお、メチレンブルー吸着法による比表面積は、以下の方法により測定することができる。
【0063】
まず、測定試料のメチレンブルー吸着量を求める。メチレンブルー吸着量は、10mg/Lの濃度のメチレンブルーのメタノール溶液の吸光度と、該メチレンブルーのメタノール溶液に測定試料を投入し、攪拌した後、遠心分離により得られた上澄み液の吸光度との差に基づき測定される。
【0064】
より詳細には、メチレンブルー吸着量は、以下の方法で求められる。10mg/Lの濃度のメチレンブルーのメタノール溶液に、測定試料を投入し、攪拌する。次に遠心分離し、得られた上澄み液の極大吸収波長における吸光度変化を観察する。メチレンブルーは、測定試料に対し、π共役により吸着する。他方、メチレンブルーは光の照射により蛍光を発する。測定試料にメチレンブルーが吸着されると蛍光を発しなくなる。すなわち、蛍光強度が低下することになる。よって、元のメチレンブルーの蛍光強度に対する上記上澄み液から求められた蛍光強度の低下量により、メチレンブルー吸着量を求めることができる。
【0065】
本発明において、炭素材料のメジアン径は、1μm以上、100μm以下であることが好ましい。炭素材料のメジアン径が小さすぎると、細孔径も小さくなってイオンの拡散が遅くなり、出力特性を十分に高められない場合がある。また、炭素材料のメジアン径が大きすぎると、十分に比表面積を高められないことがある。
【0066】
炭素材料に後述する微粒子を複合化する場合には、比表面積をより一層高め、キャパシタの静電容量をより一層高める観点から、炭素材料のメジアン径は、より好ましくは2μm以上、さらに好ましくは5μm以上、より好ましくは60μm以下、さらに好ましくは40μm以下である。
【0067】
なお、上記メジアン径は、粉体の粒径分布における分布の中央値に対応する径である。例えば、レーザー回折・散乱法を原理として用いた粒度分布測定装置(堀場製作所製、品番「LA-950」)を用い、粉体をエタノール中に分散した試料を測定することにより、粒度分布を求めることにより算出できる。
【0068】
(微粒子)
本発明のキャパシタ用電極材は、さらに微粒子を含んでいてもよい。
【0069】
微粒子としては、特に限定されないが、イオンの物理的な吸脱着が可能である微粒子及び/又は、導電性を有している微粒子、すなわち導電性微粒子であることが好ましい。具体的には、活性炭、カーボンブラック、酸化グラフェン、黒鉛、酸化黒鉛、酸化チタン等の金属酸化物、酸化ゼオライト、又はタングストリン酸等のポリ酸等を用いることができる。これらの微粒子は、単独で用いてもよく、複数を併用してもよい。
【0070】
上記微粒子は、炭素材料の表面に存在していることが好ましい。また、炭素材料がグラフェン積層構造を有する炭素材料である場合、微粒子はグラフェン積層構造を有する炭素材料の層間に存在していることが好ましい。すなわち、微粒子は、グラフェン積層構造を有する炭素材料の層間に挿入されていることが好ましい。微粒子が、グラフェン積層構造を有する炭素材料の層間に存在している場合、電解液中での細孔径をより一層拡げることで、より一層出力特性を向上させることができる。また、微粒子が導電性を有している場合は、微粒子を炭素材料の層間に存在させることで、炭素材料の導電性をより一層高めることができる。
【0071】
また、炭素材料が部分剥離型薄片化黒鉛である場合、微粒子が、剥離されたグラフェン同士又はグラフェン積層体同士の層間に存在していることが好ましい。もっとも、炭素材料が部分剥離型薄片化黒鉛である場合、微粒子は、剥離されたグラフェン同士又はグラフェン積層体同士の層間、及び上記炭素材料表面の双方に存在されていることが好ましい。なお、微粒子が、部分剥離型薄片化黒鉛の剥離されたグラフェン同士又はグラフェン積層体同士の層間に存在している場合、電解液中での細孔径をより一層拡げることができ、比表面積をより一層大きくすることができる。
【0072】
このように、本発明のキャパシタ用電極材は、微粒子を安定に吸着又は内包することで、より一層高い比表面積を維持しながら、キャパシタの静電容量をより一層高めることができる。
【0073】
上記微粒子のメジアン径は、好ましくは0.01μm以上、好ましくは20μm以下である。
【0074】
微粒子のメジアン径が小さすぎると、炭素材料に部分剥離型薄片化黒鉛を用いた場合、薄片化部位へ挿入される際に、十分に細孔径を拡げられない場合や、微粒子同士の凝集が促進される場合がある。また、微粒子のメジアン径が大きすぎると、薄片化部位に挿入されない場合がある。
【0075】
キャパシタの出力特性をより一層高める観点から、微粒子のメジアン径は、より好ましくは0.02μm以上、さらに好ましくは0.03μm以上、より好ましくは10μm以下、さらに好ましくは5μm以下である。
【0076】
なお、微粒子の粒度分布の上限は、50μm以下であることが望ましい。
【0077】
微粒子の形状は、球状に限らず、破砕状、楕円状、鱗片状等様々な形状であってもよい。
【0078】
炭素材料に対する微粒子の重量比は、1/20以上、4以下であることが好ましい。炭素材料の重量が小さすぎると、炭素材料の層間に挿入される必要量を満たさない場合がある。他方、微粒子の重量が大きすぎると、炭素材料との複合体として寄与していない微粒子の割合が増加することによって、複合体としての効果が発現されない場合がある。
【0079】
キャパシタ用電極材中において、微粒子の含有量は、好ましくは1重量%以上、より好ましくは5重量%以上、好ましくは90重量%以下、より好ましくは60重量%以下である。微粒子の含有量が上記下限以上である場合、キャパシタ用電極材の導電性をより一層高めることができる。また、微粒子の含有量が上記上限以下である場合、スラリー中での微粒子を含んだ炭素材料の分散性を一層安定化させることができる。
【0080】
[キャパシタ用電極シート]
本発明のキャパシタ用電極シートは、上記本発明に従って構成されるキャパシタ用電極材を含む。
【0081】
本発明のキャパシタ用電極シートは、例えば、炭素材料と、該炭素材料に少なくとも一部が固定されている樹脂とを含む、キャパシタ用電極材に、必要に応じて溶媒を含めた組成物を賦型することにより製造することができる。
【0082】
上記組成物の賦形は、例えば、圧延ローラーでシート化した後、乾燥することにより行うことができる。また、キャパシタ用電極材と溶媒とからなるスラリーを集電体に塗工し、その後乾燥することによっても行うことができる。上記溶媒としては、有機系の溶媒や水などを使用することができる。有機系の溶媒としては、エタノールや、N-メチルピロリドン(NMP)が挙げられる。また、本発明のキャパシタ用電極シートは、上記組成物の賦型後にロールプレス機によりプレスすることにより得てもよい。
【0083】
本発明のキャパシタ用電極シートは、上記本発明に従って構成されるキャパシタ用電極材を含んでいるので、キャパシタの静電容量を高めることができ、しかもキャパシタの電極設計を簡素化することもできる。
【0084】
[キャパシタ]
本発明のキャパシタは、本発明に従って構成されるキャパシタ用電極シートを備える。そのため、本発明のキャパシタは、静電容量を高められており、しかも電極設計も簡素化されている。なお、本発明のキャパシタ用電極材は、上記キャパシタ用電極シートに賦形して、キャパシタに用いることができる。本発明のキャパシタは、例えば、電気二重層キャパシタである。
【0085】
キャパシタの電解液としては、水系を用いてもよいし、非水系(有機系)を用いてもよい。
【0086】
水系の電解液としては、例えば、溶媒に水を用い、電解質に硫酸や水酸化カリウムなどを用いた電解液が挙げられる。
【0087】
他方、非水系の電解液としては、例えば、以下の溶媒や電解質、イオン性液体を用いた電解液を用いることができる。具体的に、溶媒としては、アセトニトリル、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)又はジエチルカーボネート(DEC)などが挙げられる。また、電解質としては、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF4)、四フッ化ホウ酸テトラエチルアンモニウム(TEABF4)又は四フッ化ホウ酸トリエチルメチルアンモニウム(TEMABF4)などが挙げられる。さらに、イオン性液体としては、例えば、以下のカチオンとアニオンを有するイオン性液体を用いることができる。カチオンとしては、イミダゾリウムイオン、ピリジニウムイオン、アンモニウムイオン、ホスホニウムイオンなどが挙げられる。アニオンとしては、4フッ化ホウ素イオン(BF4
-)、6フッ化ホウ素イオン(BF6
-)、4塩化アルミニウムイオン(AlCl4
-)、6フッ化タンタルイオン(TaF6
-)、トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メタンイオン(C(CF3SO2)3
-)などが挙げられる。イオン性液体を用いた場合には、耐電圧がより一層向上するため、バインダーを実質的に含まない、本発明のキャパシタにおいて、駆動電圧をより一層向上させることができる。すなわち、本発明のキャパシタにおいて、エネルギー密度をより一層向上させることができる。
【0088】
本発明においては、キャパシタの充放電測定を行ったときに、静電容量が10F/g以上であることが好ましく、12F/g以上であることがより好ましい。メチレンブルー吸着量測定から得られる比表面積の観点から、静電容量の上限は、例えば40F/g程度とすることができる。
【0089】
次に、本発明の具体的な実施例及び比較例を挙げることにより本発明を明らかにする。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0090】
(実施例1)
部分剥離型薄片化黒鉛の調製;
膨張化黒鉛(東洋炭素社製、商品名「PFパウダー8」、BET表面積=22m2/g)1gと、ポリエチレングリコール(PEG、和光純薬工業社製)20gと、溶媒としての水30gとを混合し、原料組成物を用意した。用意した原料組成物に、超音波処理装置(本多電子社製)を用い、100W、発振周波数:28kHzで2時間、超音波を照射した。超音波照射により、ポリエチレングリコールを膨張化黒鉛に吸着させた。このようにして、ポリエチレングリコールが膨張化黒鉛に吸着されている組成物を用意した。
【0091】
上記超音波照射後に、温度150℃で6時間維持した。それによって、上記ポリエチレングリコールが膨張化黒鉛に吸着されている組成物中において、水を乾燥させた。次に、乾燥させた組成物を400℃の温度で、3時間維持する加熱工程を実施した。それによって、上記ポリエチレングリコールを熱分解させ、ポリエチレングリコール(樹脂)が吸着により固定された部分剥離型薄片化黒鉛(EEXG)を得た。なお、ポリエチレングリコール(樹脂)が吸着により固定された部分剥離型薄片化黒鉛(EEXG)をそのままキャパシタ用電極材として用いた。
【0092】
キャパシタ用電極材中における樹脂の含有量(樹脂量)の確認は、示差熱熱重量同時測定装置(日立ハイテクサイエンス社製、商品名「STA7300」)を用いて以下の要領で行った。
【0093】
キャパシタ用電極材を2mg、白金パン中において秤量した。そのサンプルを大気下において昇温速度10℃/分で、30℃から1000℃までの測定を実施した。測定により得られた示差熱分析結果から、樹脂(ポリエチレングリコール)と炭素材料(部分剥離型薄片化黒鉛)の燃焼温度を分離し、それに伴う熱重量変化から、
図1に示すようにキャパシタ用電極材全体に対する樹脂量(重量%)を算出した。
【0094】
また、樹脂中における炭素材料に固定された樹脂の含有量についても、示差熱熱重量同時測定装置(日立ハイテクサイエンス社製、商品名「STA7300」)による測定から算出した。測定条件として、大気下において昇温速度10℃/分で30℃から1000℃までの範囲で昇温させて測定を行った。なお、樹脂が固定されているか否かは、THFで洗浄を行う前後で、そのチャートが変化しないことで確認した。
【0095】
電極シートの作製;
上記のようにして得られた、ポリエチレングリコール(樹脂)が吸着により固定された部分剥離型薄片化黒鉛を、超音波破砕機(MISONIX社製、商品名「XL2020」)を用いて、N-メチルピロリドン中に分散させた。得られた塗液を、集電体であるアルミニウム箔上に塗工し、乾燥させることで電極シートを得た。
【0096】
(実施例2)
実施例1におけるポリエチレングリコールを熱分解する工程(加熱工程)において、加熱時間を4時間にしたこと以外は、実施例1と同様の方法により部分剥離型薄片化黒鉛(EEXG)を得た。加熱時間を長くすることで、部分剥離型薄片化黒鉛に固定されている樹脂の割合を調整した。なお、ポリエチレングリコール(樹脂)が吸着により固定された部分剥離型薄片化黒鉛(EEXG)をそのままキャパシタ用電極材として用いた。得られたキャパシタ用電極材について、実施例1と同様にして樹脂量及び炭素材料に固定された樹脂量を算出した。また、ポリエチレングリコール(樹脂)が吸着により固定された部分剥離型薄片化黒鉛を用いて、実施例1と同様にして電極シートを得た。
【0097】
(実施例3)
膨張化黒鉛(東洋炭素社製、商品名「PFパウダー8」、BET表面積=22m2/g)1gと、酢酸ビニルポリマー(デンカ社製、商品名「SN-04T」)10gと、溶媒としてのテトラヒドロフラン20gとを混合し、原料組成物を用意した。原料組成物に、超音波処理装置(本多電子社製)を用い、100W、発振周波数:28kHzで2時間超音波を照射した。超音波処理により、酢酸ビニルポリマーを膨張化黒鉛に吸着させた。このようにして、酢酸ビニルポリマーが膨張黒鉛に吸着されている組成物を用意した。
【0098】
上記超音波照射後に、温度80℃で2時間維持し、次に、温度110℃で1時間維持した。それによって、酢酸ビニルポリマーが膨張黒鉛に吸着されている組成物中において、THFを完全に乾燥させた。
【0099】
次に、乾燥させた組成物を500℃の温度で、6時間維持する加熱工程を実施した。それによって、上記酢酸ビニルポリマーを熱分解させ、酢酸ビニルポリマー(樹脂)が固定された部分剥離型薄片化黒鉛(EEXG)を得た。なお、酢酸ビニルポリマー(樹脂)が固定された部分剥離型薄片化黒鉛(EEXG)をそのままキャパシタ用電極材として用いた。得られたキャパシタ用電極材について、実施例1と同様にして樹脂量及び炭素材料に固定された樹脂量を算出した。また、酢酸ビニルポリマー(樹脂)が固定された部分剥離型薄片化黒鉛を用いて、実施例1と同様にして電極シートを得た。
【0100】
(実施例4)
実施例1と同様の方法により得られた、ポリエチレングリコール(樹脂)が吸着により固定された部分剥離型薄片化黒鉛(EEXG)に、微粒子としてのケッチェンブラック(ライオン社製、品番「EC300J」)を全体の重量に対して10%を混合させて複合体を得た。なお、得られた複合体をそのままキャパシタ用電極材として用いた。得られたキャパシタ用電極材について、実施例1と同様にして樹脂量及び炭素材料に固定された樹脂量を算出した。また、得られた複合体を用いて、実施例1と同様にして電極シートを得た。
【0101】
(実施例5)
実施例1においてポリエチレングリコールを熱分解する工程において、加熱時間を2時間にしたこと以外は、実施例1と同様の方法でポリエチレングリコール(樹脂)が吸着により固定された部分剥離型薄片化黒鉛を得た。加熱時間をさらに短くすることで、部分剥離型薄片化黒鉛に固定されている樹脂の割合を調整した。このようにして得られた部分剥離型薄片化黒鉛を用い、かつケッチェンブラックの添加量を全体の重量に対して60%としたこと以外は、実施例4と同様にして複合体を得た。なお、得られた複合体をそのままキャパシタ用電極材として用いた。得られたキャパシタ用電極材について、実施例1と同様にして樹脂量及び炭素材料に固定された樹脂量を算出した。また、得られた複合体を用いて、実施例1と同様にして電極シートを得た。
【0102】
(実施例6)
電極シートの作製に際し、酢酸ビニルポリマー(樹脂)が固定された部分剥離型薄片化黒鉛にさらにバインダー樹脂としてPVDFを全体の重量に対して0.02%加えた状態で、N-メチルピロリドン中に分散させたこと以外は、実施例3と同様にして電極シートを得た。なお、実施例6においては、酢酸ビニルポリマー(樹脂)が固定された部分剥離型薄片化黒鉛にさらにバインダー樹脂を加えたものをキャパシタ用電極材とした。
【0103】
(実施例7)
ケッチェンブラック(ライオン社製、商品名「EC300J」、BET表面積=800m2/g)1gと、ポリエチレングリコール(PEG、和光純薬工業社製)20gと、溶媒としての水30gとを混合し、原料組成物を用意した。用意した原料組成物に、超音波処理装置(本多電子社製)を用い、100W、発振周波数:28kHzで2時間、超音波を照射した。超音波照射により、ポリエチレングリコールをケッチェンブラックに吸着させた。このようにして、ポリエチレングリコールがケッチェンブラックに吸着されている組成物を用意した。
【0104】
上記超音波照射後に、温度150℃で6時間維持した。それによって、上記ポリエチレングリコールがケッチェンブラックに吸着されている組成物中において、水を乾燥させた。次に、乾燥させた組成物を400℃の温度で、3時間維持する加熱工程を実施した。それによって、上記ポリエチレングリコールを熱分解させ、ポリエチレングリコール(樹脂)が固定されたケッチェンブラックを得た。なお、ポリエチレングリコール(樹脂)が固定されたケッチェンブラックをそのままキャパシタ用電極材として用いた。得られたキャパシタ用電極材について、実施例1と同様にして樹脂量及び炭素材料に固定された樹脂量を算出した。また、ポリエチレングリコール(樹脂)が固定されたケッチェンブラックを用いて、実施例1と同様にして電極シートを得た。
【0105】
(比較例1)
部分剥離型薄片化黒鉛の代わりに、樹脂が固定されていない活性炭(和光純薬社製)を用いたこと、及び電極シートの作製に際し、活性炭にさらにバインダー樹脂としてPVDFを全体の重量に対して0.02%加えた状態で、N-メチルピロリドン中に分散させたこと以外は、実施例1と同様にして電極シートを得た。
【0106】
(比較例2)
部分剥離型薄片化黒鉛の代わりに、樹脂が固定されていないグラフェン(XGサイエンス社製、品番:C-750)を用いたこと、及び電極シートの作製に際し、グラフェンにさらにバインダー樹脂としてPVDFを全体の重量に対して0.02%加えた状態で、N-メチルピロリドン中に分散させたこと以外は、実施例1と同様にして電極シートを得た。
【0107】
(比較例3)
電極シートの作製に際し、部分剥離型薄片化黒鉛にさらにバインダー樹脂としてPVDFを全体の重量に対して10%加えた状態で、N-メチルピロリドン中に分散させたこと以外は、実施例1と同様にして電極シートを得た。
【0108】
(評価)
塗工性の評価;
実施例1~7及び比較例1~3において、電極シートを作製する際の塗工性を以下の基準で判定した。
【0109】
◎…塗工可能(クラックなし)
○…塗工可能(一部クラックあり)
×…塗工不可
【0110】
充放電測定によるキャパシタ評価(静電容量の評価);
なお、静電容量は、以下のようにして測定した。
【0111】
電極シートから打ち抜いた電極と電解液、セパレータを用いてセルを作製し、充放電測定を行った。得られた静電容量を電極シートの重量で割ることで、重量あたりの静電容量を算出した。
【0112】
なお、出力特性(静電容量C)は、下記の基準で判定した。
【0113】
[重量あたりの静電容量の判定基準]
◎:12F/g≦C
○:8F/g≦C<12F/g
×:0F/g<C<8F/g
××:製膜不良のため測定不可
【0114】
結果を、下記の表1に示す。
【0115】