(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-22
(45)【発行日】2022-03-30
(54)【発明の名称】自動車用ウエザーストリップ
(51)【国際特許分類】
B60J 10/33 20160101AFI20220323BHJP
B60J 10/84 20160101ALI20220323BHJP
【FI】
B60J10/33
B60J10/84
(21)【出願番号】P 2017105158
(22)【出願日】2017-05-29
【審査請求日】2020-03-09
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000158840
【氏名又は名称】鬼怒川ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【氏名又は名称】富岡 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100104938
【氏名又は名称】鵜澤 英久
(74)【代理人】
【識別番号】100205682
【氏名又は名称】高嶋 一彰
(72)【発明者】
【氏名】植田 純平
【審査官】浅野 麻木
(56)【参考文献】
【文献】実開昭52-125230(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2006/0082189(US,A1)
【文献】特開2008-265635(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 10/33
B60J 10/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
押出成形された一般部に連続して型成形部が接続形成されていて、
前記型成形部は、車体パネルのうち当該車体パネルの一般部に対して先端フランジ部が起立形成されることでL字状
をなすパネル端部に嵌合保持されるウエルト部と、相手側パネルに対するシール部として機能するシールリップと、を備えた自動車用ウエザーストリップであって、
前記ウエルト部は、底壁部とその両側の側壁部とで断面形状が略変形U字状に形成されていると共に、一方の側壁部の外側に前記シールリップが一体に形成されていて、
他方の側壁部は、前記底壁部から立ち上がりつつ、前記ウエルト部のU字状空間の深さ方向の中間部を狭めるように断面クランク状に折り曲げ形成された屈曲壁部と、前記屈曲壁部のうち前記U字状空間の開放端から外開きで傾斜して形成された傾斜壁部と、を有し、
前記屈曲壁部は、前記底壁部から立ち上がる根元壁部と、前記根元壁部から前記底壁部と平行に延びる中間壁部と、前記中間壁部から前記U字状空間の開放端側に延びる狭窄壁部と、により断面クランク状に屈曲形成されていて、
前記狭窄壁部の先端から前記傾斜壁部が延長形成され、
前記狭窄壁部が前記車体パネルの一般部に面接触するとともに、前記パネル端部の一般部と前記先端フランジ部とのなすアングル状の内隅部に前記中間壁部と前記狭窄壁部とのなすアングル状の外隅部が合致するよう形成され
、
前記屈曲壁部における前記中間壁部と前記狭窄壁部および前記傾斜壁部の三者で囲まれた領域に厚肉のブロック状のものではない隔壁状の補強リブが形成されていることを特徴とする自動車用ウエザーストリップ。
【請求項2】
前記中間壁部のうち前記狭窄壁部の根元部に近い部分から前記底壁部側に向けて、前記車体パネルの先端フランジ部に弾接する微細なリップ部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の自動車用ウエザーストリップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用ウエザーストリップ、特に押出成形された一般部に連続形成された型成形部を備え、その型成形部が、車体パネルに嵌合保持されるウエルト部と、相手側パネルに対するシール部として機能するシールリップと、を備えた自動車用ウエザーストリップに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車のリアフェンダ部のホイールアーチ部とリアドアとの間のシールを目的とした自動車用ウエザーストリップとして、特許文献1,2に記載されたものが提案されている。
【0003】
特許文献1に記載された自動車用ウエザーストリップとしてのシール部材は、長手方向で均一断面形状のものとして形成されているが、特許文献2の
図2~5に記載されているように、必ずしも長手方向で均一断面形状のものではなく、押出成形された一般部に連続して金型成形法によって成形された型成形部を備えたものがある。
【0004】
そして、一般部では、取付基部となるウエルト部の内周側に車体パネルの端部を嵌合保持する保持リップが設定されている一方、型成形部では、製法上の制約から保持リップを設定することができないために、保持リップに代わってウエルト部の内周側に厚肉のブロック部を形成するようにしている(特許文献2の
図4参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2009-29273号公報
【文献】特開2008-213748号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2の
図4に記載されているように、型成形部におけるウエルト部の内周に厚肉のブロック部を形成した場合、金型成形時に「ひけ」が発生しやすく、外観品質の低下を招きやすいほか、車体パネルの端部形状によっては車体パネル側への組付性(挿入性)が悪いという問題がある。
【0007】
例えば、車体造形上の要請から、ウエルト部で嵌合保持する車体パネルの端部に先端フランジ部が起立形成されていてパネル端部がL字状に形成されることがある(このパネル端部形状については、例えば特開2011-20649号公報を参照のこと。)。このような場合に、ウエルト部の内周に厚肉のブロック部が形成されていると、ウエルト部を無理に口開きさせてパネル端部に組み付けることになるので、パネル端部に対する組付性が極端に悪くなるほか、挿入後の保持性も悪化し、結果としてシール部によるシール性の低下を招くおそれがある。この傾向は、パネル端部の先端フランジ部の起立寸法が大きくなるほど顕著となりやすい。
【0008】
本発明は、このような課題に着目してなされたものであり、特許文献1,2に代表されるような従来技術の持つ不具合を解消し、特に車体パネルの端部に先端フランジ部が起立形成されていることでL字状をなすパネル端部の場合であっても、組付性、保持性およびシール性に優れた自動車用ウエザーストリップを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、押出成形された一般部に連続して型成形部が接続形成されていて、前記型成形部は、車体パネルのうち先端フランジ部が起立形成されることでL字状をなすパネル端部に嵌合保持されるウエルト部と、相手側パネルに対するシール部として機能するシールリップと、を備えた自動車用ウエザーストリップである。
【0010】
その上で、前記ウエルト部は、底壁部とその両側の側壁部とで断面形状が略変形U字状に形成されていると共に、一方の側壁部の外側に前記シールリップが一体に形成されていて、他方の側壁部は、前記底壁部から立ち上がりつつ、前記ウエルト部のU字状空間の深さ方向の中間部を狭めるように屈曲形成されていると共に、前記U字状空間の開放端側に外開きで傾斜した傾斜壁部が形成されていることを特徴とするものである。
【0011】
そして、前記他方の側壁部は、前記底壁部から立ち上がりつつ、前記ウエルト部のU字状空間の深さ方向の中間部を狭めるように断面クランク状に折り曲げ形成された屈曲壁部と、前記屈曲壁部のうち前記U字状空間の開放端から外開きで傾斜して形成された傾斜壁部と、を有しているものとする。
【0012】
また、前記屈曲壁部は、前記底壁部から立ち上がる根元壁部と、前記根元壁部から前記底壁部と平行に延びる中間壁部と、前記中間壁部から前記U字状空間の開放端側に延びる狭窄壁部と、により断面クランク状に屈曲形成されていて、前記狭窄壁部の先端から前記傾斜壁部が延長形成されているものとする。
【0013】
この場合において、前記中間壁部のうち前記狭窄壁部の根元部に近い部分から前記底壁部側に向けて、前記車体パネルの先端フランジ部に弾接する微細なリップ部が形成されていることがより好ましい。
【0014】
同様にして、より好ましくは、前記屈曲壁部における前記中間壁部と前記狭窄壁部および前記傾斜壁部の三者で囲まれた領域に厚肉のブロック状のものではない隔壁状の補強リブが形成されているものとする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、従来の厚肉部とは異なり、ウエルト部の他方の側壁部がウエルト部自体のU字状空間の深さ方向の中間部を狭めるように屈曲形成されているので、L字状のパネル端部を有する車体パネルに挿入して嵌合保持させる際の組付性が良好なものとなると共に、組付後の保持性およびシール性も良好なものとなる。また、他方の側壁部のうちU字状空間の開放端側に外開きで傾斜した傾斜壁部が形成されているので、車体パネルへの組付時に傾斜壁部による案内効果が発揮されることとなり、特に車体パネルのパネル端部がL字状のものであっても無理なく組み付けるすることが可能で、組付性が一段と良好なもものとなる。
【0016】
そして、ウエルト部の他方の側壁部が断面クランク状の屈曲壁部として形成されているので、車体パネル側のパネル端部のL字形状と屈曲壁部のクランク形状とが合致することとなり、パネル端部への組付後の保持性がさらに良好なものとなる。
【0017】
特に、屈曲壁部が根元壁部と中間壁部および狭窄壁部とにより断面クランク状に屈曲形成されているので、車体パネル側のパネル端部に嵌合保持された際に、先端フランジ部が起立形成されているパネル端部の一般部と先端フランジ部とのなすアングル状の内隅部に、中間壁部と狭窄壁部とのなす同じくアングル状の外隅部が合致することとなる。その上、狭窄壁部がパネル端部の一般部に、中間壁部が先端フランジ部に、それぞれ面接触するかたちとなる。そのため、パネル端部への組付後の保持性が一段と向上することになる。
【0018】
そして、中間壁部のうち狭窄壁部の根元部に近い部分から底壁部側に向けて、前記車体パネルの先端フランジ部に弾接する微細なリップ部を形成すれば、このリップ部を介して中間壁部が確実に先端フランジ部に弾接するようになり、組付後の保持性およびシール性がさらに向上する。しかも、リップ部は中間壁部のうち狭窄壁部の根元部に近い部分に形成されているため、車体パネルへの組付時に先端フランジ部と干渉することがなく、組付性を阻害することはない。
【0019】
また、屈曲壁部における中間壁部と狭窄壁部および傾斜壁部の三者で囲まれた領域に厚肉のブロック状のものではない隔壁状の補強リブを形成すれば、屈曲壁部を含むウエルト部が補強されて剛性の高いものとなり、組付後の保持性およびシール性がさらに向上することになる。加えて、補強リブは屈曲壁部と共に厚肉のブロック状のものではないため、成形時の「ひけ」の発生を防止する上でも有利となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明に係る自動車用ウエザーストリップが適用される自動車の後部斜視図。
【
図2】本発明に係る自動車用ウエザーストリップの第1の実施の形態を示す図で、
図1に示した自動車用ウエザーストリップのみを抜き出した正面図。
【
図6】本発明に係る自動車用ウエザーストリップの第2の実施の形態を示す図で、
図5と同等部位の拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1~5は本発明に係る自動車用ウエザーストリップを実施するためのより具体的な第1の形態を示していて、
図1は自動車の後部側面図を示し、
図2は
図1から自動車用ウエザーストリップ(以下、単にウエザーストリップと称する。)4のみを抜き出した正面図を示している。さらに、
図3は
図1,2のA-A線に沿った拡大断面図を示している。
【0022】
ここでは、
図1に示すように、自動車の車体1について、リアフェンダ部2におけるホイールアーチ部2aの曲率に倣って配設されて、相手側パネルとしてのリアドア3を閉止した際に、そのリアドア3の後端縁におけるアーチ部の内側面が重合しつつ弾接または圧接することになるウエザーストリップ4の例を示している。
【0023】
図1のほか
図2,3に示すように、ウエザーストリップ4は、ホイールアーチ部2aの曲率に沿って配設される略長尺バー状のものであり、押出成形により長手方向で均一断面形状のものとして成形された一般部5と、この一般部5の上端部において、当該一般部5と接続位置5aにて連続するように、金型成形にて接続成形された端末部としての型成形部6と、で形成される。
【0024】
一般部5では、
図3に示すように、取付基部として機能することになる断面略U字状のウエルト部7と、ウエルト部7の外側面に後述する車外側の一方の側壁部11を共有するかたちで一体に形成されたシール部としての中空状のシールリップ8と、を主要素として形成されている。
【0025】
ウエルト部7は、底壁部9と、その底壁部9をはさんだ両側で互いに対向している車内側および車外側の側壁部10,11と、をもって断面略U字状に形成されていて、このウエルト部7には金属製あるいは樹脂製の芯材12が埋設されている。また、ウエルト部7のうち車外側の側壁部11の内面には、長手方向に沿って複数の突条13が形成されていると共に、車内側の側壁部10の内面には、保持リップ14が斜めに突出形成されている。
【0026】
さらに、ウエルト部7における底壁部9の外面には、ガードリップ15が一体に突出形成されている。なお、
図3の例では、シールリップ8の根元側およびガードリップ15を含むウエルト部7が例えばソリッドのゴム系弾性体で形成され、シールリップ8の残された部分がウエルト部7よりも軟質のスポンジ状のゴム系弾性体で形成される。また、ガードリップ15は泥水等の飛散を抑制する役目をする。
【0027】
その一方、一般部5に対し
図2の接続位置5aにて接続される型成形部6では、一般部5とほぼ同じ断面形状のものとして形成される。ただし、型成形部6では、接続位置5aから遠ざかるに従って断面形状が漸次小さくなるように徐変していて、末端のクリップ穴16に挿入される図示外のクリップにてホイールアーチ部2aに固定される。同時に、型成形部6では
図3に示した芯材12が埋設されていない。なお、この型成形部6の詳細については後述する。
【0028】
また、
図3に示すように、ウエザーストリップ4が装着されることになるホイールアーチ部2aは、リアフェンダ部2を形成している車体パネルの一部であるサイドアウタパネル17の端縁のアウタフランジ部17aと、同じく車体パネルの一部であるホイールアーチインナパネル18の端縁のインナフランジ部18aとを重ね合わせた上で、スポット溶接等の溶接接合により一体化した重合フランジ部19により形成されている。
【0029】
重合フランジ部19を形成しているホイールアーチインナパネル18側のインナフランジ部18aでは、その先端を車内側に向けてほぼ直角に折り曲げることで先端フランジ部18bが起立形成されていて、これにより先端フランジ部18bを含むインナフランジ部18aの先端部はL字状に屈曲したものとして形成されている。
【0030】
これに対して、重合フランジ部19を形成しているサイドアウタパネル17側のアウタフランジ部17aでは、インナフランジ部18aのような先端フランジ部18bは起立形成されておらず、ウエルト部7の底壁部9側に向かってのフランジ突出長はインナフランジ部18aよりも大きく設定されている。
【0031】
そして、ホイールアーチ部2aの重合フランジ部19に対してウエルト部7をそのU字状空間の開放側から挿入して、アウタフランジ部17aをウエルト部7における底壁部9の内底面に底突きさせる。そして、複数の突条13をアウタフランジ部17aに、保持リップ14をインナフランジ部18aに、それぞれ圧接させつつ、ウエルト部7を形成している双方の側壁部10,11にて重合フランジ部19を挟持することで、ウエザーストリップ4が堅固に嵌合保持されてホイールアーチ部2aに組み付けられることになる。
【0032】
図4は
図2に示した型成形部6のB-B線に沿った拡大断面図を示していて、
図5は同じく
図2に示した型成形部6のC-C線に沿った拡大断面図を示している。
【0033】
図2に示した一般部5に対し接続位置5aにて接続される型成形部6では、一般部5と同様に、
図4に示すように、ウエルト部7A、シールリップ8Aおよびガードリップ15Aを含むかたちで、一般部5とほぼ同じ断面形状のものとして形成されている。ただし、型成形部6では、接続位置5aから遠ざかるに従って断面形状が漸次小さくなるように徐変していることは先に述べた通りである。また、型成形部6では、一般部5と異なり、シールリップ8Aを含む型成形部6全体がソリッドのゴム系弾性体で形成される。そのため、型成形部6のシールリップ8Aは、スポンジ状のゴム系弾性体で形成される一般部5側のシールリップ8に比べ薄肉に形成されている。
【0034】
型成形部6のうち
図2の接続位置5aに近い部分では、
図4に示すように、その断面形状は
図3に示した一般部5の断面形状に近いものとなっているものの、
図3に示した保持リップ14は形成されていない。
【0035】
その一方、型成形部6のうち
図2の接続位置5aから比較的遠い末端部分では、
図5に示すように、特にウエルト部7Aの形状が
図3,4に示したものと大きく相違している。
図5に示す型成形部6のウエルト部7Aは、
図3に示した一般部5側のウエルト部7と連続しつつも、車内側の側壁部10Aが幾重にも屈曲した変形U字状のものとして形成されている。
【0036】
より詳しくは、
図5に示すように、型成形部6におけるウエルト部7Aは、
図3のような芯材12が埋設されていないだけでなく、車外側の側壁部11Aの高さに比べ車内側の側壁部10Aの高さが小さく形成されている。この車内側の側壁部10Aは、底壁部9Aから車外側の側壁部11Aと平行に立ち上がる根元壁部21と、この根元壁部21の先端から底壁部9Aとほぼ平行に延びる中間壁部22と、この中間壁部22の先端から車外側の側壁部11Aと平行に立ち上がる狭窄壁部23と、この狭窄壁部23の先端から外開き方向に傾斜して延びる傾斜壁部24と、から形成されている。
【0037】
そして、根元壁部21と中間壁部22および狭窄壁部23の三者によりいわゆるクランク状に屈曲した屈曲壁部20が形成されていて、この屈曲壁部20の先端から外開き方向に傾斜した傾斜壁部24が延長形成されていることになる。この屈曲壁部20のうち、特に狭窄壁部23は、ウエルト部7A自体のU字状空間の深さ方向の中間部を局部的に狭める機能を有し、これによりU字状空間の深さ方向の中間部では双方の側壁部10A,11A同士のなす離間が距離が著しく狭められている。
【0038】
その結果として、ウエルト部7AのU字状空間のうち屈曲壁部20に相当する部分では、先端フランジ部18bを含むインナフランジ部18aの先端L字形状部を受容しやすいようにそのL字形状に合致する形状となっている。なお、
図5に示した屈曲壁部20および傾斜壁部24の肉厚は、
図3に示した一般部5における車内側の側壁部10の肉厚とほぼ同じ大きさに設定されている。
【0039】
また、屈曲壁部20のうちの中間壁部22と狭窄壁部23および傾斜壁部24の三者で囲まれた背面側の凹状空間には、それらの三者にまたがるかたちで隔壁状の補強リブ25が長手方向に所定のピッチで複数形成されている。この複数の補強リブ25による補強効果のために、車内側の側壁部10Aの剛性の向上が図られている。
【0040】
なお、
図4,5に示した型成形部6における車外側の側壁部11Aの内面には、
図3に示した一般部5側の車外側の側壁部11における突条13に連続する複数のビード部13Aが形成される。また、
図5に示すように、型成形部6の末端側における車外側の側壁部11Aには、金型成形時に中空状のシールリップ8Aの成形を司る中子を抜き出すための中子抜き穴26が不可避的に形成される。
【0041】
したがって、このように構成されたウエザーストリップ4の構造によれば、
図4,5に示した型成形部6においても、
図3に示した一般部5と同様に、ウエルト部7Aを口開きさせつつ、先端フランジ部18bを含むホイールアーチ部2aの重合フランジ部19をそのウエルト部7Aでくわえ込み、重合フランジ部19に対してそのウエルト部7AをそのU字状空間の開放側から挿入する。そして、アウタフランジ部17aをウエルト部7Aにおける底壁部9Aの内底面に底突きさせつつ、ウエルト部7Aを形成している双方の側壁部10A,11Aにて重合フランジ部19を挟持することで、型成形部6が堅固に嵌合保持される。
【0042】
この場合において、
図5に示すように、型成形部6におけるウエルト部7Aの車内側の側壁部10Aがウエルト部7A自体のU字状空間の深さ方向の中間部を狭めるようにクランク状に屈曲形成されていることは先に述べた通りである。そのため、ウエルト部7Aを口開きさせるように弾性変形させるだけで先端フランジ部18bを含む重合フランジ部19を容易にくわえ込むことができて、ホイールアーチ部2aへ挿入して嵌合保持させる際の組付性に優れたものとなる。
【0043】
また、クランク状の屈曲壁部20で規制されたU字状空間の奥部側が、先端フランジ部18bを含むインナフランジ部18aのL字形状と合致していて、型成形部6がホイールアーチ部2aの重合フランジ部19に嵌合保持された際に、先端フランジ部18bが起立形成されているインナフランジ部18aの一般部と先端フランジ部18bとのなすアングル状の内隅部に、中間壁部22と狭窄壁部23とのなす同じくアングル状の外隅部が合致することとなる。その上、狭窄壁部23がインナフランジ部18aの一般部に面接触すると共に、根元壁部21の内面に先端フランジ部18bの先端が当接するかたちとなる。そのため、組付後の型成形部6の保持性および位置安定性に優れ、結果としてシールリップ8Aによるシール性も良好なものとなる。
【0044】
しかも、型成形部6のウエルト部7AにおけるU字状空間の開放側には、屈曲壁部20から外開きで傾斜した傾斜壁部24が延長形成されているので、ホイールアーチ部2aへの挿入時に、傾斜壁部24による先端フランジ部18bを含む重合フランジ部19の案内効果が発揮されることになる。そのため、重合フランジ部19が先端フランジ部18bを含むL字形状部を有していたとしても、その重合フランジ部19に対して型成形部6を無理なく組み付けることが可能で、ホイールアーチ部2aへ挿入する際の組付性が一段と良好なもものとなる。
【0045】
さらに、車内側の側壁部10Aにおける屈曲壁部20の中間壁部22と狭窄壁部23および傾斜壁部24で囲まれた背面側の空間に隔壁状の補強リブ25が形成されているので、屈曲壁部20を含む車内側の側壁部10Aが補強されて剛性の高いものとなり、組付後の保持性およびシール性がさらに向上することになる。加えて、補強リブ25は屈曲壁部20と共に厚肉のブロック状のものではないため、成形時の「ひけ」の発生を招くこともない。
【0046】
図6は本発明に係るウエザーストリップの第2の実施の形態として
図5と同等部位の断面図を示している。なお、
図6では、
図5と共通する部分には同一符号を付して、重複する説明は省略するものとする。
【0047】
図6に示す第2の実施の形態では、
図5と比較すると明らかなように、屈曲壁部20の一部である中間壁部22のうち底壁部9Aと対向する部分であって且つ狭窄壁部23に近い部分に、底壁部9A側に向かって微細なリップ部27が突出形成されているものである。
【0048】
この第2の実施の形態によれば、基本的な構造は
図5に示したものと共通しているので、先の第1の実施の形態のものと同様の効果が得られることはもちろんである。
【0049】
また、
図6に示すような正規組付状態において、リップ部27を介して中間壁部22が確実に先端フランジ部18bに弾接するようになるので、重合フランジ部19と型成形部6との相対位置決め精度が向上し、ひいては組付後の保持性およびシール性がさらに向上する。
【0050】
さらに、リップ部27は中間壁部22のうち狭窄壁部23の根元部に近い部分に形成されているので、重合フランジ部19への組付時に先端フランジ部18bと干渉することがなく、ホイールアーチ部2aへ挿入する際の組付性を阻害することもない。
【0051】
ここで、上記の各実施の形態では、先端フランジ部18bが起立形成されたインナフランジ部18aとアウタフランジ部17aとからなる重合フランジ部19に組み付けられるウエザーストリップ4を例にとって説明したが、仮に相手側フランジ部が先端フランジ部18bを有するインナフランジ部18aのみの場合であっても本発明を適用することができる。
【0052】
また、上記実施の形態では、ホイールアーチ部2aの曲率に沿って装着されるウエザーストリップ4であって且つシールリップ8,8Aが中空状のものの例を示しているが、シールリップが中空状であるか否かにかかわらず、少なくとも型成形部6を有する同種のウエザーストリップであれば本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0053】
1…車体
2a…ホイールアーチ部
3…リアドア(相手側パネル)
4…自動車用ウエザーストリップ
5…一般部
6…型成形部
7A…ウエルト部
8A…シールリップ
9A…底壁部
10A…車内側の側壁部
11A…車外側の側壁部
17a…アウタフランジ部
18a…インナフランジ部
18b…先端フランジ部
19…重合フランジ部
20…屈曲壁部
21…根元壁部
22…中間壁部
23…狭窄壁部
24…傾斜壁部
25…補強リブ
27…リップ部