(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-22
(45)【発行日】2022-03-30
(54)【発明の名称】スクリーン
(51)【国際特許分類】
G03B 21/60 20140101AFI20220323BHJP
G02B 5/02 20060101ALI20220323BHJP
【FI】
G03B21/60
G02B5/02 C
(21)【出願番号】P 2017121661
(22)【出願日】2017-06-21
【審査請求日】2020-04-03
(73)【特許権者】
【識別番号】393024821
【氏名又は名称】内田 龍男
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】内田 龍男
(72)【発明者】
【氏名】若生 一広
(72)【発明者】
【氏名】カランタル カリル
(72)【発明者】
【氏名】大寺 亮介
【審査官】新井 重雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-009669(JP,A)
【文献】特開2011-180491(JP,A)
【文献】特開2005-199934(JP,A)
【文献】特開平05-150368(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0027771(US,A1)
【文献】特開2012-212036(JP,A)
【文献】特開2010-262264(JP,A)
【文献】特開平08-054684(JP,A)
【文献】特開2012-042518(JP,A)
【文献】特開2010-191036(JP,A)
【文献】特開2015-146011(JP,A)
【文献】特開2005-331631(JP,A)
【文献】特開2016-071300(JP,A)
【文献】特許第4280648(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 21/60
G02B 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロジェクタから自身の表面に入射される光を反射させて出射するスクリーンであって、
複数の微小光学系ユニットを備え、
前記微小光学系ユニットは、
前記スクリーンにより反射された光の強度分布が所望の強度分布となるよう形状が定められた第1の面、第2の面および第3の面を有し、
前記微小光学系ユニットの開口に、前記微小光学系ユニットの中心を通過する光を透過させ円形のアパーチャーパターンが設けられることを特徴とするスクリーン。
【請求項2】
第1の面、第2の面および第3の面は、それぞれが第1の立体、第2の立体および第3の立体の表面であることを特徴とする請求項1に記載のスクリーン。
【請求項3】
第1の面、第2の面および第3の面のうち少なくとも1つは、曲面であることを特徴とする請求項1または2に記載のスクリーン。
【請求項4】
第1の面、第2の面および第3の面は、第1の面、第2の面および第3の面のうち少なくとも1つの面には、光を拡散させる表面構造を有することを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載のスクリーン。
【請求項5】
前記スクリーンは、前記微小光学系ユニットの表面を覆う樹脂を備えることを特徴とする請求項1から4のいずれか1つに記載のスクリーン。
【請求項6】
所望の強度分布は、ローレンツ関数、ガウス関数およびランバート関数のうちの1つで表されることを特徴とする請求項1から5のいずれか1つに記載のスクリーン。
【請求項7】
車両内のピラーに設けられることを特徴とする請求項1から6のいずれか1つに記載のスクリーン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロジェクタにより映像または画像が投影されるスクリーンに関する。
【背景技術】
【0002】
プロジェクタにより映像をスクリーンに投影するシステムにおいて、スクリーンに再帰性反射材を用いる場合がある。例えば、特許文献1には、車両を運転する運転者の視界を妨げるピラーによる死角をなくすために、ピラーの外方をカメラで撮影し、撮影した画像をリアルタイムでプロジェクタから車室内のピラーの再帰性反射面に投影する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、スクリーンに再帰性反射材を用いた場合、出射方向が投影機に向いて映像が明るく見えるが、観察できる範囲すなわち視野角は極めて狭い。このため、用途によっては、再帰性反射材を用いたスクリーンより反射光の中心方向や視野角を自由に設計できるようにすることが望まれる場合がある。
【0005】
例えば、上記特許文献1に記載されているように、ピラーの部分に対応する映像を撮影し、撮影した映像を車両内に設置されたプロジェクタによりピラーの部分に投影する技術において、ピラー部分に再帰性反射材を用いると、運転者の座席の高さの違いや運転者の運動により運転者の眼の位置が想定された位置とずれると、運転者が映像を正しく視認できない場合がある。したがって、このような用途では、スクリーンに投影された映像を観察できる範囲すなわち視野角を、再帰性反射材を用いた場合より広げることが望ましい。
【0006】
再帰性を有するスクリーンのなかでもビーズスクリーンと呼ばれるスクリーンは、入射された光を拡散することができるため、視野角を広げることができる。しかしながら、ビーズスクリーンでは、視野角を所望の範囲に制御することは困難である。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、観察者により観察される映像の明るさを確保しつつ、視野角を広げ、入射された光を所望の範囲に所望の強度分布で出力することが可能なスクリーンを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、プロジェクタから自身の表面に入射される光を反射させて出射するスクリーンであって、複数の微小光学系ユニットを備え、前記微小光学系ユニットは、前記スクリーンにより反射された光の中心方向および強度分布が所望の強度分布(拡散特性)となるよう形状が定められた第1の面、第2の面および第3の面を有し、前記微小光学系ユニットの開口に、前記微小光学系ユニットの中心を通過する光を透過させ円形のアパーチャーパターンが設けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、観察者により観察される映像の明るさを確保しつつ、視野角を広げ、入射された光を所望の範囲に所望の強度分布で出力することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、プロジェクションシステムの構成例を示す図である。
【
図2】
図2は、第1の立体、第2の立体および第3の立体を球とした場合の各立体の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、
図2に示した立体に基づく微小光学系ユニットの一例を示す正面図および側面図である。
【
図4】
図4は、第1の立体および第2の立体を半径無限大の球とし、第3の立体を球または楕円体としたときの微小光学系ユニットの一例を示す正面図および側面図を示す図である。
【
図5】
図5は、
図4に示した微小光学系ユニットを複数配列して構成されるスクリーンの一例を示す正面図である。
【
図6】
図6は、映像視認可能範囲内でのスクリーンにより反射される光の所望の強度分布の一例を示す図である。
【
図7】
図7は、映像視認可能範囲内でのスクリーンにより反射される光の所望の強度分布の別の一例を示す図である。
【
図8】
図8は、映像視認可能範囲内でのスクリーンにより反射される光の所望の強度分布のさらに別の一例をそれぞれ示す図である。
【
図9】
図9は、映像視認可能範囲内でのスクリーンにより反射される光の所望の強度分布のさらに別の一例をそれぞれ示す図である。
【
図10】
図10は、
図9に示した強度分布を所望の強度分布を仮定して設計された微小光学系ユニットにより実現される反射光分布を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の実施の形態にかかるスクリーンを図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0012】
図1は、本発明にかかる実施の形態のプロジェクションシステムの構成例を示す図である。
図1は、本発明にかかるプロジェクションシステムを横方向すなわち水平方向からみた図を示している。
図1において、上下方向は、垂直方向を示している。
図1に示すように、プロジェクタ2は、スクリーン1の前方に配置される。
図1に示すように、水平方向とプロジェクタ2から出射される光の進行方向に対してスクリーン1の垂線がなす角をθ
camとする。すなわち、θ
camは、
図1に示した面内におけるスクリーン1への入射角である。
【0013】
本実施の形態では、第1の面、第2の面および第3の面の3つの表面を含む微小光学系を1つの単位とし、この表面には薄い金属膜などの高反射材を付着させるなどして光を反射する機能をもたせ、これを微小光学系ユニットと呼ぶことにする。これを複数配列することによりスクリーン1を構成する。本実施の形態では、プロジェクタ2から投影されたスクリーン1により反射される光の分布が所望の分布となるように、微小光学系ユニットを設計する。
【0014】
具体的には、プロジェクタ2の位置と所望の映像視認可能範囲すなわち視野角とを定める。そして、映像視認可能範囲内でのプロジェクタ2から投影されたスクリーン1により反射される光の強度分布すなわち所望の強度分布を定める。
図1には、映像視認可能範囲3の一例を示している。
図1に示した映像視認可能範囲3およびプロジェクタ2の配置位置は一例であり、映像視認可能範囲3およびプロジェクタ2の配置位置は
図1に示した例に限定されない。
【0015】
映像視認可能範囲3内の所望の強度分布およびプロジェクタの配置位置を定めた後、プロジェクタ2の配置位置すなわちスクリーン1に対するプロジェクタ2から出射される光の入射角と映像視認可能範囲3内の所望の強度分布とに基づいて、微小光学系ユニットの形状が設計される。映像視認可能範囲3は、ある程度の広がりを持っている。再帰性反射材のスクリーンを用いた場合には、プロジェクタから出射される光は、プロジェクタの方向にしか戻らないが、本実施の形態では映像視認可能範囲3をある程度の広がりを持った範囲に定める。これにより、観察者により観察される映像の明るさを確保しつつ、視野角を広げることができるとともに、所望の強度分布を実現できる。また、プロジェクタ2を任意の位置に配置可能となる。
【0016】
次に、本実施の形態のスクリーン1を構成する微小光学系ユニットの例について説明する。本実施の形態の微小光学系ユニットは、第1の面、第2の面および第3の面を有する。第1の面、第2の面および第3の面は、たとえば、それぞれ第1の立体、第2の立体、第3の立体の表面である。このとき、微小光学系ユニットは、第1の立体、第2の立体、第3の立体のそれぞれの表面が交差する交点を含む。第1の立体、第2の立体および第3の立体は、任意の立体であり、たとえば、球、円柱、円筒、楕円体、n次多項式関数の回転体である。第1の立体、第2の立体および第3の立体のうちの一部が、直方体などのように曲面を含まない立体であってもよい。第1の立体、第2の立体および第3の立体は、それぞれが異なる形状の立体であってもよいし、第1の立体、第2の立体および第3の立体のうち2つ以上が同一の形状であってもよい。また、第1の立体、第2の立体および第3の立体は、半径の異なる球といったように同一形状の大きさの異なるものであってもよい。また、第1の立体、第2の立体および第3の立体を構成する曲面の曲率半径は無限大であってもよい。
【0017】
図2、
図3は、第1の立体、第2の立体および第3の立体を球とした場合の各立体と微小光学系ユニットの一例を示す図である。
図2に示した例では、第1の立体14、第2の立体15および第3の立体16は、それぞれが球である。これら3つの球の中心を結ぶ線が三角形となるように、第1の立体14、第2の立体15および第3の立体16を近づけて交差させると、
図3に示す微小光学系ユニットが得られる。
図3の左側は、微小光学系ユニットの正面図(プロジェクタ2側からみた図)であり、
図3の右側は、微小光学系ユニットの側面図(横方向からみた図)である。
図3に示した第1の面(面ABD)24は第1の立体14の表面の一部であり、第2の面(面ABE)25は第2の立体15の表面の一部であり、第3の面(面BDE)26は第3の立体16の表面の一部である。
図3において、点Bは、第1の立体の表面、第2の立体の表面および第3の立体の表面が交差する交点である。点Cは、DEの中点である。
【0018】
図4は、第1の立体および第2の立体を半径無限大の球(または直方体などのように平面を含む立体)とし、第3の立体を球または楕円体としたときの微小光学系ユニットの一例を示す図である。
図4の左側は、微小光学系ユニットの正面図を示し、
図4の右側は微小光学系ユニットの側面図を示している。第1の面(面ABD)27、第2の面(面ABE)28および第3の面(面BDE)29は、それぞれ第1の立体の表面、第2の立体の表面および第3の立体の表面である。
図4において、点Bは、第1の立体の表面、第2の立体の表面および第3の立体の表面が交差する交点である。
【0019】
以上、
図2から
図4を用いて説明した微小光学系ユニットの形状は例であり、本実施の形態の微小光学系ユニットを構成する第1の面、第2の面および第3の面は上述した例に限定されない。上述のように、3つの立体を交差させて第1の面、第2の面および第3の面を形成し、典型的には、3つの面のうちの少なくとも1つが曲面となる。
図2から
図4では、スクリーン1の正面からみると交点が凹んだ形状の微小光学系ユニットを例示したが、微小光学系ユニットは交点が凸となるような形状であってもよい。微小光学系ユニットを構成する各面の具体的な形状は、前述した通り、プロジェクタ2から投影されたスクリーン1により反射される光の分布が所望の分布となるように設計される。
【0020】
反射の中心方向や拡散角の異なる微小光学ユニットを組み合わせてスクリーン1を構成することによって、反射光学特性の多様な組み合わせが可能となる。もちろん、同一ユニットの組み合わせでも良い。
図5は、
図4に示した微小光学系ユニットを複数配列して構成されるスクリーン1の一例を示す正面図である。
図5に示した例では、スクリーン1を構成する複数の微小光学系ユニトの形状は全て同一としている。
図5は、微小光学系ユニットの配置の一例であり、微小光学系ユニットの配置方法は
図5に示した例に限定されない。
【0021】
次に、本実施の形態の微小光学系ユニットを構成する各面の設計方法について説明する。上述した通り、本実施の形態では、プロジェクタから投影されたスクリーン1により反射される光の分布が所望の分布となるように、微小光学系ユニットを構成する第1の面、第2の面および第3の面の形状を設計する。
【0022】
図6は、映像視認可能範囲3内でのスクリーンにより反射される光の所望の強度分布の一例を示す図である。横軸には、
図1に示した面内において水平方向をθ=0としたときの水平方向からの角度θを示している。縦軸には、規格化された反射光の強度Iを示している。
図6では、強度分布をθに関するガウス型関数として規定した例を示している。
【0023】
図7は、映像視認可能範囲3内でのスクリーンにより反射される光の所望の強度分布の別の一例を示す図である。
図7では、強度分布をローレンツ関数(Lorentzian):I(θ)=I
0/[1+(θ/θ
0)
p]とした例を示している。θ
0は、半値半幅である。I
0は、任意の定数であり、pは1以上の整数である。
【0024】
図8、
図9は、同様にキャプ形、ランバート形の分布を示したものである。これら以外に映像視認可能範囲3内でのスクリーンにより反射される光の所望の強度分布を示す関数は、任意に設定することができる。強度分布は、関数により定義されてもよいし、θとIのそれぞれの値を1組とするデータがテーブル形式などにより定義され、これらのデータを補間して使用してもよい。
【0025】
図1では、一方向、具体的には上下方向の映像視認可能範囲3を図示したが、本発明では、上下方向および水平方向のうちの少なくとも1方向において所望の強度分布を定め、所望の強度分布となるように、スクリーンを構成する微小光学系ユニットの形状を設計する。
【0026】
具体的には、スクリーン1に対するプロジェクタ2からの光の入射角度とスクリーン1からの出射光の方向とが定まれば、微小光学系ユニットを構成する各面の法線を定めることができ、これによって、スクリーンを構成する微小光学系ユニットの形状を設計することができる。
【0027】
また、スクリーン1の材質としては、アクリル、ポリカーボネート、ポリエステル、シクロオレフィンポリマー等のプラスチック材料や、ガラス、金属、セラミックス等を用いることができる。スクリーン1の材質は、上記に限定されず、微小光学系ユニットを形成可能な材料ならばどのようなものを用いてもよい。
【0028】
また、微小光学系ユニットのサイズは、例えば、ピラー用のスクリーンとして用いる場合には、観察者が微小光学ユニットを認識できない程度のサイズが好ましい。例えば、数百μm程度である。また、高精度の道路標識や、サイネージなどを想定した反射集光光学デバイス等では、上記のサイズに限定されることなく、用途に応じて適宜サイズを設定すれば良い。第1の面、第2の面および第3の面のうちの少なくとも1つの面の表面を、さらに、ミクロンオーダーから微小光学ユニットのサイズまでの間の大きさで凸面、凹面、プリズム形状となるように加工することにより、さらに光を拡散させることができる。すなわち、第1の面、第2の面および第3の面のうちの少なくとも1つの面の表面は、第1の面、第2の面および第3の面のサイズより小さいサイズの凹凸の形状を有する。上記の所望の強度分布となるように設計された形状を第1の拡散制御と呼び、ミクロンオーダーの表面の加工による拡散の制御を第2の拡散制御と呼ぶこととすると、第2の拡散制御により、拡散の度合いを制御することができる。
【0029】
また、高視野角を得るために、スクリーン1の表面を透明樹脂で充填してもよい。樹脂としては、例えば、アクリル、ポリカーボネート、ポリエステル、シクロオレフィンポリマー等のプラスチック材料や、ガラス、透明セラミックス等を用いることができる。透明樹脂で充填する代わりに、透明樹脂等の基板の一面に微小光学系ユニットを形成し、微小光学系ユニットが形成されていない側の面すなわち裏面を、スクリーン1の表面として用いてもよい。これにより、スクリーン1の表面を透明樹脂で充填した場合と同様の効果を奏することができる。また、各微小光学系ユニットの開口に丸いアパーチャーパターン(パターン部分は透過、パターン以外の部分は黒く光を透過させない)を設けることによって迷光を吸収し、光学の信号対雑音比(SNR)を高くすることが可能である。
【0030】
再帰性反射材により構成されるスクリーンでは、プロジェクタから入射された光は入射された方向(
図1のθ
cam)へのみ射出される。これに対し、本実施の形態では、第1の面、第2の面および第3の面のうちの少なくとも1つが曲面となるため、曲面の形状を上記の所望の強度分布となるように設計する。すなわち、スクリーン1は、プロジェクタ2から入射される光が、あらかじめ定めた角度範囲にあらかじめ定めた強度分布(所望の広がり)で出力されるように設計される。詳細には、本実施の形態のスクリーン1を構成する微小光学系ユニットは、スクリーン1により反射された光の出射角に応じた強度分布が所望の強度分布となるよう形状が定められた第1の面、第2の面および第3の面を有する。
【0031】
これにより、再帰性反射材で構成されるスクリーンより視野角を広くすることができるとともに、マットスクリーンに比べて大幅に明るさを向上させることができる。また、入射された光を所望の範囲に所望の強度分布で出力することが可能となり、さらには、プロジェクタの設置位置に制約が無いため、ピラーの透明化システムに適用した場合に、プロジェクタを車両内の比較的自由な位置に配置することができる。
【0032】
図10は、所望の強度分布として
図9に示したような上下方向の強度分布を仮定して設計された微小光学系ユニットにより実現される反射光分布を示す図である。具体的には、
図4に示した微小光学系ユニットの3角形ADEの1辺を230μmとし、第3の立体である円筒の曲率を830μmにすると共に、
図4の右の図のように、第3の面29を側面からみた円弧の弦CBを点線23から5度傾けている。点線23は、点Cを通り、辺ABに垂直な線である。また、θ
camは0度とした。
図10は、このような条件で計算された反射光分布を示している。
【0033】
図11は、車両のピラーを示す図である。
図11に示すように、車両には、ピラー101,102,103が設けられている。これらのピラー101,102,103は、運転者の視野の妨げとなる。
図12は、ピラー101を車両内からみた図である。前方に設けられるピラー101は、進行方向の視野の妨げとなり、影響が大きい。
【0034】
そこで、ピラー101の外側を撮影するカメラを設け、カメラにより撮影された画像を車両内に設けられたプロジェクタでピラー101に設けられたスクリーンに投影する技術が検討されている。本実施の形態のスクリーン1は、ピラー101に貼付される、またはピラー101の一部として形成されることにより、車両内に設けられたプロジェクタ2から投影された画像を車両内の所望の映像視認可能範囲に投影することができる。これにより、画像の明るさを確保しつつ、運転者の座席の高さが変更されても、運転車は画像を視認することができる。また、プロジェクタを、天井、ヘッドレストをはじめとして車両内の任意の位置に設置することができる。なお、ここでは、本実施の形態のスクリーン1が、ピラー101に設置される例を説明したが、これに限らず、本実施の形態のスクリーン1がピラー102,103に設置され、ピラー102,103のそれぞれの外部を撮影した画像の投影に使用されてもよい。または、ピラー101,102,103の外部を撮影した画像だけでなく他の画像がプロジェクタ2により投影される場合に、本実施の形態のスクリーン1が用いられてもよい。
【0035】
また、助手席側のドアの内側に本実施の形態のスクリーン1を貼付するまたは助手席側のドアとスクリーン1が一体化されて形成されてもよい。本実施の形態では、プロジェクタ2を任意の位置に配置できるため、助手席に人がいる場合でも、助手席側のドアにプロジェクタ2から投影された画像を運転者が視認することができる。
【符号の説明】
【0036】
1 スクリーン、2 プロジェクタ、3 映像視認可能範囲、14 第1の立体、15 第2の立体、16 第3の立体、24,27 第1の面、25,28 第2の面、26,29 第3の面、101~103 ピラー。