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特許7044489難燃性粘着剤組成物及び難燃性粘着テープ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-22
(45)【発行日】2022-03-30
(54)【発明の名称】難燃性粘着剤組成物及び難燃性粘着テープ
(51)【国際特許分類】
   C09J 133/00 20060101AFI20220323BHJP
   C09J 11/04 20060101ALI20220323BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20220323BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20220323BHJP
【FI】
C09J133/00
C09J11/04
C09J11/06
C09J7/38
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2017123331
(22)【出願日】2017-06-23
(65)【公開番号】P2018003012
(43)【公開日】2018-01-11
【審査請求日】2020-02-07
(31)【優先権主張番号】P 2016124796
(32)【優先日】2016-06-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】戸田 智基
(72)【発明者】
【氏名】石堂 泰志
(72)【発明者】
【氏名】小栗 彩葉
【審査官】井上 明子
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-514389(JP,A)
【文献】特開2016-098360(JP,A)
【文献】特表2007-513216(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00 - 201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子量分布(Mw/Mn)1.05~2.5の極性官能基を有するアクリル系ポリマーを含む粘着成分、及び、難燃剤を含有し、
前記難燃剤が前記極性官能基を有するアクリル系ポリマー中に微分散しており、
前記粘着成分100重量部に対する前記難燃剤の含有量が10~50重量部であり、
更に、架橋剤を含有し、
前記極性官能基を有するアクリル系ポリマーは、リビングラジカル重合極性官能基含有ア クリル系ポリマーであり、前記極性官能基が水酸基、カルボキシル基、グリジシル基、イ ソシアネート基、スルホン酸基又はリン酸基である
ことを特徴とする難燃性粘着剤組成物。
【請求項4】
極性官能基を有するアクリル系ポリマーは、前記極性官能基が水酸基又はカルボキシル基 であることを特徴とする請求項1、2又は3記載の難燃性粘着剤組成物。
【請求項5】
請求項1、2、3又は4記載の難燃性粘着剤組成物からなる粘着剤層を有することを特徴とする難燃性粘着テープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い難燃性を有し、かつ、被着体に対して高い定荷重剥離性を発揮できる難燃性粘着テープを得ることができる難燃性粘着剤組成物、及び、該難燃性粘着剤組成物を用いた難燃性粘着テープに関する。
【背景技術】
【0002】
粘着剤組成物からなる粘着剤層を有する粘着テープは簡便に接合が可能なことから各種産業分野に用いられている。電気電子分野では、例えばパソコン、携帯電話、スマートフォン、タブレット等の電子デバイス中で、モジュール組み立て、モジュール類の筐体への貼り合わせ等に粘着テープが用いられている。より具体的には、例えば、画像表示装置又は入力装置を搭載した携帯電子機器(例えば、携帯電話、携帯情報端末等)において、組み立てのために両面粘着テープが用いられている。例えば、携帯電子機器の表面を保護するためのカバーパネルをタッチパネルモジュール又はディスプレイパネルモジュールに接着したり、タッチパネルモジュールとディスプレイパネルモジュールとを接着したりするために両面粘着テープが用いられている。このような両面粘着テープは、例えば、額縁状等の形状に打ち抜かれ、表示画面の周辺に配置されるようにして用いられる(例えば、特許文献1、2)。また、車輌部品(例えば、車載用パネル)を車両本体に固定する用途にも、粘着剤組成物からなる粘着剤層を有する両面粘着テープが用いられている。
【0003】
近年の大型の携帯電子機器における部品の接着固定、車輌部品の接着固定等の用途においては、部品の小型化、薄化又は軽量化、或いは、省資源化へのニーズの増大に従って、従来よりも薄い粘着テープが要望されている。一方、これらの用途に用いられる粘着テープには、機器の内部にこもった熱により発火の恐れがあるため、優れた難燃性が要求されている。粘着テープの難燃性を向上させる方法としては、難燃剤を配合する方法が一般的である(例えば、特許文献3)。しかしながら、充分な難燃性を発揮できる程度に難燃剤を配合すると、被着体に対する定荷重剥離性が低下してしまうという問題があった。とりわけ、薄い粘着テープでは、定荷重剥離性が低下して充分に部品の固定ができなくなってしまうこともあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-242541号公報
【文献】特開2009-258274号公報
【文献】特開2014-167092号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記現状に鑑み、高い難燃性を有し、かつ、被着体に対して高い定荷重剥離性を発揮できる難燃性粘着テープを得ることができる難燃性粘着剤組成物、及び、該難燃性粘着剤組成物を用いた難燃性粘着テープを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、分子量分布(Mw/Mn)1.05~2.5の極性官能基を有するアクリル系ポリマーを含む粘着成分、及び、難燃剤を含有し、前記難燃剤が前記極性官能基を有するアクリル系ポリマー中に微分散している難燃性粘着剤組成物である。
以下に本発明を詳述する。
【0007】
本発明者らは、鋭意検討の結果、分子量分布(Mw/Mn)1.05~2.5の極性官能基を有するアクリル系ポリマーに対して難燃剤を配合し、極性官能基を有するアクリル系ポリマー中に難燃剤を微分散させることにより、高い難燃性が発揮されることを見出した。これにより、より少ない難燃剤で充分な難燃性を発揮できることから、高い難燃性と、被着体に対する高い定荷重剥離性とを両立した難燃性粘着テープが得られることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
本発明の難燃性粘着剤組成物は、粘着成分として分子量分布(Mw/Mn)1.05~2.5の極性官能基を有するアクリル系ポリマー(以下、「極性官能基含有アクリル系ポリマー」ともいう)を含有する。また、本発明の難燃性粘着剤組成物は、難燃剤を含有し、該難燃剤は、上記極性官能基を有するアクリル系ポリマー中に微分散している。
上記極性官能基含有アクリル系ポリマーを含む粘着成分、及び、難燃剤を配合し、上記極性官能基含有アクリル系ポリマー中に上記難燃剤を微分散させることにより、より少ない難燃剤で充分な難燃性を発揮できることから、高い難燃性と、被着体に対する高い定荷重剥離性とを両立した難燃性粘着テープを得ることができる。
【0009】
なお、本明細書において微分散とは、難燃剤が極性官能基含有アクリル系ポリマー中で実質的に凝集することなく分散している状態をいう。難燃剤の分散状態は、難燃性粘着剤組成物又は難燃性粘着剤組成物からなる粘着剤層を顕微鏡観察することにより確認できる。具体的には、難燃性粘着剤組成物又は難燃性粘着剤組成物からなる粘着剤層を顕微鏡観察した際、難燃剤が極性官能基を有するアクリル系ポリマー中で凝集して形成された凝集塊の最大径が10μm以下であることが好ましい。
【0010】
上記極性官能基含有アクリル系ポリマーは、(メタ)アクリル酸エステルや(メタ)アクリル酸等のアクリル系モノマーを原料として、リビングラジカル重合、好ましくは有機テルル重合開始剤を用いたリビングラジカル重合により得られたアクリル系ポリマーであることが好ましい。以下、このようなアクリル系ポリマーを「リビングラジカル重合極性官能基含有アクリル系ポリマー」ともいう。
リビングラジカル重合は、重合反応が停止反応又は連鎖移動反応等の副反応で妨げられることなく分子鎖が生長していく重合である。リビングラジカル重合によれば、例えばフリーラジカル重合等と比較してより均一な分子量及び組成を有するポリマーが得られ、低分子量成分等の生成を抑えることができるため、粘着テープが剥がれにくくなり、被着体に対する定荷重剥離性が向上する。
【0011】
図1にリビングラジカル重合を説明する模式図を示した。リビングラジカル重合は、重合反応が停止反応又は連鎖移動反応等の副反応で妨げられることなく分子鎖が生長していく重合である。リビングラジカル重合では、生長末端ラジカルが失活することなく、また反応中に新しくラジカル種が発生することもなく、反応が進行する。その反応途中では、全てのポリマー鎖が均一にモノマーと反応しながら重合し、全てのポリマーの組成は均一に近づく。そのため、極性官能基含有モノマー12は、リビングラジカル重合極性官能基含有アクリル系ポリマー1の全てのポリマー鎖中に含まれる。
このようなリビングラジカル重合極性官能基含有アクリル系ポリマー1に難燃剤を配合すると、難燃剤はリビングラジカル重合極性官能基含有アクリル系ポリマー1に含まれる極性官能基に対して高い親和性を示し、その相互作用によってポリマー中に分散される。ここで、リビングラジカル重合極性官能基含有アクリル系ポリマー1の全てのポリマー鎖中に極性官能基含有モノマー12が含まれていることから、ほとんど全てのポリマー鎖が難燃剤の分散に関与することができる。
図2に、リビングラジカル重合極性官能基含有アクリル系ポリマーに難燃剤を配合した場合を説明する模式図を示した。リビングラジカル重合極性官能基含有アクリル系ポリマーでは、全てのポリマーの組成は均一であり、極性官能基含有モノマーを含むことから、すべてのポリマー鎖21が難燃剤22の分散に関与することができる。なお、図2では極性官能基の例として水酸基を記載した。このように、ほとんど全てのポリマー鎖21が難燃剤22の分散に関与することにより、難燃剤22がリビングラジカル重合極性官能基含有アクリル系ポリマー中に微分散することができ、より少ない難燃剤で充分な難燃性を発揮できる。これにより、高い難燃性と、被着体に対する高い定荷重剥離性とを両立した難燃性粘着テープを得ることができる。また、本発明の難燃性粘着剤組成物を製造する際に、リビングラジカル重合極性官能基含有アクリル系ポリマー中に容易に難燃剤を分散させることができることから、製造性も向上する。
【0012】
上記極性官能基含有アクリル系ポリマーは、従来のフリーラジカル重合により得られたアクリル系ポリマーであってもよい。ただし、本発明の効果は、従来のフリーラジカル重合により得られたアクリル系ポリマー(以下、「フリーラジカル重合極性官能基含有アクリル系ポリマー」ともいう。)を用いた場合には、充分には得られないことがある。
図3にフリーラジカル重合を説明する模式図を示した。フリーラジカル重合では、反応中に連続的にラジカル種が発生してモノマーに付加し、重合が進行する。そのためフリーラジカル重合では、反応の途中で生長末端ラジカルが失活したポリマー33や、反応中に新しく発生したラジカル種により生長したポリマー34が生成する。そのため、極性官能基を含有するアクリル系ポリマーをフリーラジカル重合で製造すると、比較的低分子量の極性官能基含有モノマーを含まないポリマーが生成してしまう。このようなフリーラジカル重合極性官能基含有アクリル系ポリマー3に難燃剤を配合しても、極性官能基含有モノマーを含まないポリマー鎖は、難燃剤に対する親和性が低く、難燃剤の分散に関与することができない。
図4に、フリーラジカル重合極性官能基含有アクリル系ポリマーに難燃剤を配合した場合を説明する模式図を示した。フリーラジカル重合極性官能基含有アクリル系ポリマーでは、ポリマーの組成が不均一であり、極性官能基含有モノマーを含むポリマー鎖411以外に、比較的低分子量の極性官能基含有モノマーを含まないポリマー鎖412を含む。このような極性官能基含有モノマーを含まないポリマー鎖412は、難燃剤42の分散に関与できないことから、全体としては難燃剤42が充分に分散できないことがあり、高い難燃性を発揮させるためには大量の難燃剤を配合しなければならないことがある。大量の難燃剤を配合すると、被着体に対する定荷重剥離性が低下してしまうことから、高い難燃性と、被着体に対する高い定荷重剥離性とを両立させることはできない。なお、図4では極性官能基の例として水酸基を記載した。
【0013】
リビングラジカル重合のなかでも、有機テルル重合開始剤を用いたリビングラジカル重合は、他のリビングラジカル重合とは異なり、極性官能基を有するラジカル重合性モノマーをいずれも保護することなく、同一の開始剤で重合して均一な分子量及び組成を有するポリマーを得ることができる。このため、極性官能基を有するラジカル重合性モノマーを容易に共重合することができる。上記極性官能基としては、例えば、水酸基、カルボキシル基、グリジシル基、イソシアネート基、スルホン酸基、リン酸基等が挙げられる。
【0014】
上記有機テルル重合開始剤は、リビングラジカル重合に一般的に用いられるものであれば特に限定されず、例えば、有機テルル化合物、有機テルリド化合物等が挙げられる。
上記有機テルル化合物として、例えば、(メチルテラニル-メチル)ベンゼン、(1-メチルテラニル-エチル)ベンゼン、(2-メチルテラニル-プロピル)ベンゼン、1-クロロ-4-(メチルテラニル-メチル)ベンゼン、1-ヒドロキシ-4-(メチルテラニル-メチル)ベンゼン、1-メトキシ-4-(メチルテラニル-メチル)ベンゼン、1-アミノ-4-(メチルテラニル-メチル)ベンゼン、1-ニトロ-4-(メチルテラニル-メチル)ベンゼン、1-シアノ-4-(メチルテラニル-メチル)ベンゼン、1-メチルカルボニル-4-(メチルテラニル-メチル)ベンゼン、1-フェニルカルボニル-4-(メチルテラニル-メチル)ベンゼン、1-メトキシカルボニル-4-(メチルテラニル-メチル)ベンゼン、1-フェノキシカルボニル-4-(メチルテラニル-メチル)ベンゼン、1-スルホニル-4-(メチルテラニル-メチル)ベンゼン、1-トリフルオロメチル-4-(メチルテラニル-メチル)ベンゼン、1-クロロ-4-(1-メチルテラニル-エチル)ベンゼン、1-ヒドロキシ-4-(1-メチルテラニル-エチル)ベンゼン、1-メトキシ-4-(1-メチルテラニル-エチル)ベンゼン、1-アミノ-4-(1-メチルテラニル-エチル)ベンゼン、1-ニトロ-4-(1-メチルテラニル-エチル)ベンゼン、1-シアノ-4-(1-メチルテラニル-エチル)ベンゼン、1-メチルカルボニル-4-(1-メチルテラニル-エチル)ベンゼン、1-フェニルカルボニル-4-(1-メチルテラニル-エチル)ベンゼン、1-メトキシカルボニル-4-(1-メチルテラニル-エチル)ベンゼン、1-フェノキシカルボニル-4-(1-メチルテラニル-エチル)ベンゼン、1-スルホニル-4-(1-メチルテラニル-エチル)ベンゼン、1-トリフルオロメチル-4-(1-メチルテラニル-エチル)ベンゼン、1-クロロ-4-(2-メチルテラニル-プロピル)ベンゼン、1-ヒドロキシ-4-(2-メチルテラニル-プロピル)ベンゼン、1-メトキシ-4-(2-メチルテラニル-プロピル)ベンゼン、1-アミノ-4-(2-メチルテラニル-プロピル)ベンゼン、1-ニトロ-4-(2-メチルテラニル-プロピル)ベンゼン、1-シアノ-4-(2-メチルテラニル-プロピル)ベンゼン、1-メチルカルボニル-4-(2-メチルテラニル-プロピル)ベンゼン、1-フェニルカルボニル-4-(2-メチルテラニル-プロピル)ベンゼン、1-メトキシカルボニル-4-(2-メチルテラニル-プロピル)ベンゼン、1-フェノキシカルボニル-4-(2-メチルテラニル-プロピル)ベンゼン、1-スルホニル-4-(2-メチルテラニル-プロピル)ベンゼン、1-トリフルオロメチル-4-(2-メチルテラニル-プロピル)ベンゼン、2-(メチルテラニル-メチル)ピリジン、2-(1-メチルテラニル-エチル)ピリジン、2-(2-メチルテラニル-プロピル)ピリジン、2-メチルテラニル-エタン酸メチル、2-メチルテラニル-プロピオン酸メチル、2-メチルテラニル-2-メチルプロピオン酸メチル、2-メチルテラニル-エタン酸エチル、2-メチルテラニル-プロピオン酸エチル、2-メチルテラニル-2-メチルプロピオン酸エチル、2-メチルテラニルアセトニトリル、2-メチルテラニルプロピオニトリル、2-メチル-2-メチルテラニルプロピオニトリル等が挙げられる。これらの有機テルル化合物中のメチルテラニル基は、エチルテラニル基、n-プロピルテラニル基、イソプロピルテラニル基、n-ブチルテラニル基、イソブチルテラニル基、t-ブチルテラニル基、フェニルテラニル基等であってもよく、また、これらの有機テルル化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0015】
上記有機テルリド化合物として、例えば、ジメチルジテルリド、ジエチルジテルリド、ジ-n-プロピルジテルリド、ジイソプロピルジテルリド、ジシクロプロピルジテルリド、ジ-n-ブチルジテルリド、ジ-sec-ブチルジテルリド、ジ-tert-ブチルジテルリド、ジシクロブチルジテルリド、ジフェニルジテルリド、ビス-(p-メトキシフェニル)ジテルリド、ビス-(p-アミノフェニル)ジテルリド、ビス-(p-ニトロフェニル)ジテルリド、ビス-(p-シアノフェニル)ジテルリド、ビス-(p-スルホニルフェニル)ジテルリド、ジナフチルジテルリド、ジピリジルジテルリド等が挙げられる。これらの有機テルリド化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、ジメチルジテルリド、ジエチルジテルリド、ジ-n-プロピルジテルリド、ジ-n-ブチルジテルリド、ジフェニルジテルリドが好ましい。
【0016】
なお、本発明の効果を損なわない範囲内で、上記有機テルル重合開始剤に加えて、重合速度の促進を目的として重合開始剤としてアゾ化合物を用いてもよい。
上記アゾ化合物は、ラジカル重合に一般的に用いられるものであれば特に限定されず、例えば、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、1,1-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、1-[(1-シアノ-1-メチルエチル)アゾ]ホルムアミド、4,4’-アゾビス(4-シアノバレリアン酸)、ジメチル-2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、ジメチル-1,1’-アゾビス(1-シクロヘキサンカルボキシレート)、2,2’-アゾビス{2-メチル-N-[1,1’-ビス(ヒドロキシメチル)-2-ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2’-アゾビス[N-(2-プロペニル)-2-メチルプロピオンアミド]、2,2’-アゾビス(N-ブチル-2-メチルプロピオンアミド)、2,2’-アゾビス(N-シクロヘキシル-2-メチルプロピオンアミド)、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二塩酸塩、2,2’-アゾビス{2-[1-(2-ヒドロキシエチル)-2-イミダゾリン-2-イル]プロパン}二塩酸塩、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]、2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2’-アゾビス[N-(2-カルボキシエチル)-2-メチルプロピオンアミジン]四水和物、2,2’-アゾビス(1-イミノ-1-ピロリジノ-2-メチルプロパン)二塩酸塩、2,2’-アゾビス(2,4,4-トリメチルペンタン)等が挙げられる。これらのアゾ化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0017】
上記極性官能基含有アクリル系ポリマーは、極性官能基を含有する。
上記極性官能基としては、例えば、水酸基、カルボキシル基、グリジシル基、イソシアネート基、スルホン酸基、リン酸基等が挙げられる。なかでも、難燃剤の分散性に特に優れることから、水酸基又はカルボキシル基が好ましく、水酸基がより好ましい。
【0018】
上記極性官能基含有アクリル系ポリマーの重合においては、重合するラジカル重合性モノマーとして、極性官能基を有するモノマーを配合する。
上記水酸基を有するモノマーとしては、例えば、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。
上記カルボキシル基を有するモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸が挙げられる。なかでもアクリル酸が好適である。
上記グリシジル基を有するモノマーとしては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレートが挙げられる。
上記イソシアネート基を有するモノマーとしては、例えば、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート等が挙げられる。
上記スルホン酸基を有するモノマーとしては、例えば、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、4-ビニルベンゼンスルホン酸等が挙げられる。
上記リン酸基を有するモノマーとしては、例えば、リン酸2-(メタクリロイルオキシ)エチル等が挙げられる。
【0019】
上記水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステルを用いた場合、その含有量は特に限定されないが、重合するラジカル重合性モノマー中の好ましい上限は30重量%である。上記含有量が30重量%を超えると、得られる難燃性粘着テープの粘着剤層のゲル分率が高くなりすぎて剥がれやすくなり、被着体に対する定荷重剥離性が低下することがある。
【0020】
上記カルボキシル基を有するアクリル系モノマーを用いる場合、その含有量は特に限定されないが、重合するラジカル重合性モノマー中の好ましい下限は0.1重量%、好ましい上限は10重量%である。上記含有量が0.1重量%未満であると、得られる難燃性粘着テープの粘着剤層が柔らかくなりすぎて、耐熱性が低下することがある。上記含有量が10重量%を超えると、得られる難燃性粘着テープの粘着剤層が硬くなりすぎて剥がれやすくなり、被着体に対する定荷重剥離性が低下することがある。
【0021】
上記極性官能基含有アクリル系ポリマーの重合においては、上記極性官能基を有するモノマー以外の他のラジカル重合性モノマーを用いてもよい。上記他のラジカル重合性モノマーとしては、例えば、他の(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。また、上記アクリル系モノマーに加えて、ビニル化合物をモノマーとして用いてもよい。
【0022】
上記他の(メタ)アクリル酸エステルは特に限定されず、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アルキルエステルや、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2-ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの(メタ)アクリル酸エステルは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0023】
上記ビニル化合物は特に限定されず、例えば、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタム、N-アクリロイルモルフォリン、スチレン、酢酸ビニル等が挙げられる。これらのビニル化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0024】
上記極性官能基含有アクリル系ポリマーの重合においては、分散安定剤を用いてもよい。上記分散安定剤として、例えば、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、エチルセルロース、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、ポリエチレングリコール等が挙げられる。
上記極性官能基含有アクリル系ポリマーの重合の方法として、従来公知の方法が用いられ、例えば、溶液重合(沸点重合又は定温重合)、乳化重合、懸濁重合、塊状重合等が挙げられる。
上記極性官能基含有アクリル系ポリマーの重合において重合溶媒を用いる場合、該重合溶媒は特に限定されず、例えば、ヘキサン、シクロヘキサン、オクタン、トルエン、キシレン等の非極性溶媒や、水、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、N,N-ジメチルホルムアミド等の高極性溶媒を用いることができる。これらの重合溶媒は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、重合温度は、重合速度の観点から0~110℃が好ましい。
【0025】
上記極性官能基含有アクリル系ポリマーは、分子量分布(Mw/Mn)が1.05~2.5である。上記分子量分布が2.5を超えると、極性官能基を有しないポリマー鎖が増えるため、難燃剤の分散性が低下する。上記分子量分布の好ましい上限は2.0であり、より好ましい上限は1.8であり、更に好ましい上限は1.7である。
【0026】
上記極性官能基含有アクリル系ポリマーは、重量平均分子量(Mw)の好ましい下限が30万、好ましい上限が200万である。上記重量平均分子量が30万未満であると、上記粘着剤層が柔らかくなりすぎて、耐熱性が低下する。上記重量平均分子量が200万を超えると、塗工時の粘度が高すぎて塗工し難くなり、上記粘着剤層の厚みムラを発生させてしまうことがある。上記極性官能基含有アクリル系ポリマーの重量平均分子量(Mw)の好ましい下限は40万、好ましい上限は150万である。
【0027】
なお、分子量分布(Mw/Mn)は、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比である。
重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、ゲルパミエーションクロマトグラフィ(GPC)法によりポリスチレン換算分子量として測定される。具体的には、重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、極性官能基含有アクリル系ポリマーをテトラヒドロフラン(THF)によって50倍希釈して得られた希釈液をフィルターで濾過し、得られた濾液を用いてGPC法によりポリスチレン換算分子量として測定される。GPC法では、例えば、2690 Separations Model(Waters社製)等を使用できる。
【0028】
本発明の難燃性粘着剤組成物は、粘着成分として上記リビングラジカル重合極性官能基含有アクリル系ポリマーと、上記リビングラジカル重合極性官能基含有アクリル系ポリマー以外のポリマー、例えば、フリーラジカル重合により得られたポリマー等を含有してもよい。
ただし、上記ポリマー成分中における上記リビングラジカル重合極性官能基含有アクリル系ポリマーの含有量の好ましい下限は60重量%であり、ポリマー成分の全量(100重量%)が上記リビングラジカル重合極性官能基含有アクリル系ポリマーであることがより好ましい。ポリマー成分中の上記リビングラジカル重合極性官能基含有アクリル系ポリマーの含有量を60重量%以上とすることにより、難燃剤の分散性を向上させ、高い難燃性と、被着体に対する高い定荷重剥離性とを両立した難燃性粘着テープを得ることができる。
なお、後述する粘着付与樹脂は、粘着成分には含まない。
【0029】
上記難燃剤としては特に限定されず、有機系難燃剤や、無機系難燃剤を用いることができる。
上記有機系難燃剤としては、例えば、ペンタブロモジフェニルエーテル等の臭素化合物や、赤リン、非ハロゲンリン酸エステル等のリン化合物や、塩素化パラフィン等の塩素化合物等が挙げられる。上記非ハロゲンリン酸エステルとしては、例えば、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリプロピルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリペンチルホスフェート、トリヘキシルホスフェート、トリシクロヘキシルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、ジメチルエチルホスフェート、メチルジブチルホスフェート、エチルジプロピルホスフェート、ヒドロキシフェニルジフェニルホスフェート、レゾルシノールビスジフェニルホスフェート、ビスフェノールAビスジフェニルホスフェート、レゾルシノールビスジ-2,6-キシレニルホスフェート及びこれらを各種置換基で置換した化合物等が挙げられる。なかでも、ヒドロキシフェニルジフェニルホスフェート、レゾルシノールビスジフェニルホスフェート、ビスフェノールAビスジフェニルホスフェート及びレゾルシノールビスジ-2,6-キシレニルホスフェートからなる群より選ばれる1種以上が好ましく、レゾルシノールビスジフェニルホスフェート及びビスフェノールAビスジフェニルホスフェートからなる群より選ばれる1種以上がより好ましい。これらの難燃剤は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0030】
上記無機系難燃剤としては、例えば、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン等のアンチモン化合物や、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の金属水酸化物や、酸化ジルコニウム水和物、酸化スズ水和物等の水和金属化合物や、メラミンシアヌレート等の窒素化合物や、ベストボロン、ソウファ等のホウ素化合物等が挙げられる。これらの難燃剤は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、高い難燃性が得られ、かつ、電子部品等の固定に用いた場合にでも電子部品に影響を与えにくいことから、金属水酸化物及び/又は水和金属化合物が好適である。
【0031】
本発明の難燃性粘着剤組成物において、上記粘着成分100重量部に対する上記難燃剤の含有量の好ましい下限は10重量部、好ましい上限は50重量部である。本発明の難燃性粘着剤組成物においては、上記極性官能基含有アクリル系ポリマー中に上記難燃剤が微分散することから、難燃剤がこの範囲内でも充分に高い難燃性を発揮することができる。難燃剤の含有量が50重量部以下であると、被着体に対して高い定荷重剥離性を発揮することができる。上記難燃剤の含有量のより好ましい下限は15重量部、より好ましい上限は45重量部であり、更に好ましい下限は20重量部、更に好ましい上限は40重量部である。
【0032】
本発明の難燃性粘着剤組成物は、架橋剤を含有することが好ましい。上記架橋剤の種類又は量を適宜調整することによって、得られる難燃性粘着テープの粘着剤層のゲル分率を調整することができる。
上記架橋剤は特に限定されず、上記極性官能基含有アクリル系ポリマーの極性官能基の種類に応じて、例えば、イソシアネート系架橋剤、アジリジン系架橋剤、エポキシ系架橋剤、金属キレート型架橋剤等を選択して用いる。
例えば、上記極性官能基含有アクリル系ポリマーが極性官能基として水酸基を有する場合、架橋剤として例えばイソシアネート系架橋剤を用いることにより、上記極性官能基含有アクリル系ポリマーを架橋させることができる。また、上記極性官能基含有アクリル系ポリマーが極性官能基としてカルボキシル基を有する場合、架橋剤として例えばエポキシ系架橋剤又はアジリジン系架橋剤を用いることにより、上記極性官能基含有アクリル系ポリマーを架橋させることができる。なかでも、リビングラジカル重合極性官能基含有アクリル系ポリマーは、含有する全てのポリマーの組成が均一で、極性官能基を有することから、全てのポリマーがポリマー鎖間の架橋に関与することができる。このため、薄い粘着テープであっても剥がれにくく、被着体に対して高い定荷重剥離性と粘着剤凝集力を発揮できる難燃性粘着テープを得ることができる。
【0033】
本発明の難燃性粘着剤組成物において、上記粘着成分100重量部に対する上記架橋剤の含有量の好ましい下限は0.01重量部、好ましい上限は5重量部であり、より好ましい下限は0.1重量部、より好ましい上限は3重量部である。
【0034】
本発明の難燃性粘着剤組成物は、更に、粘着付与樹脂を含有することが好ましい。粘着付与樹脂を含有することにより、粘着テープの被着体に対する定荷重剥離性が向上する。なかでも、極性官能基を有する粘着付与剤を用いる場合には、架橋剤を介して上記極性官能基含有アクリル系ポリマーと架橋させることができる。
【0035】
上記粘着付与樹脂は特に限定されず、ロジンエステル系樹脂等のロジン系樹脂、テルペンフェノール樹脂等のテルペン系樹脂、石油系樹脂等が挙げられる。なかでも、ロジンエステル系樹脂、テルペンフェノール樹脂が好ましい。
上記ロジンエステル系樹脂とは、アビエチン酸を主成分とするロジン樹脂、不均化ロジン樹脂及び水添ロジン樹脂、アビエチン酸等の樹脂酸の二量体(重合ロジン樹脂)等を、アルコールによってエステル化させて得られた樹脂である。エステル化に用いたアルコールの水酸基の一部がエステル化に使用されずに樹脂内に含有されることで、水酸基価が上記範囲に調整される。アルコールとしては、エチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール等の多価アルコールが挙げられる。
なお、ロジン樹脂をエステル化した樹脂がロジンエステル樹脂、不均化ロジン樹脂をエステル化した樹脂が不均化ロジンエステル樹脂、水添ロジン樹脂をエステル化した樹脂が水添ロジンエステル樹脂、重合ロジン樹脂をエステル化した樹脂が重合ロジンエステル樹脂である。
上記テルペンフェノール樹脂とは、フェノールの存在下においてテルペンを重合させて得られた樹脂である。
【0036】
上記不均化ロジンエステル樹脂としては、例えば、荒川化学工業社製スーパーエステルA75(水酸基価23、軟化温度75℃)、同社製スーパーエステルA100(水酸基価16、軟化温度100℃)、同社製スーパーエステルA115(水酸基価19、軟化温度115℃)、同社製スーパーエステルA125(水酸基価15、軟化温度125℃)等が挙げられる。上記水添ロジンエステル樹脂としては、例えば、荒川化学工業社製パインクリスタルKE-359(水酸基価42、軟化温度100℃)、同社製エステルガムH(水酸基価29、軟化温度70℃)等が挙げられる。上記重合ロジンエステル樹脂としては、例えば、荒川化学工業社製ペンセルD135(水酸基価45、軟化温度135℃)、同社製ペンセルD125(水酸基価34、軟化温度125℃)、同社製ペンセルD160(水酸基価42、軟化温度160℃)等が挙げられる。
上記テルペン系樹脂としては、例えば、ヤスハラケミカル社製YSポリスターG150(軟化点150℃)、同社製YSポリスターT100(軟化点100℃)、同社製YSポリスターG125(軟化点125℃)、同社製YSポリスターT115(軟化点115℃)、同社製YSポリスターT130(軟化点130℃)等が挙げられる。
これらの粘着付与樹脂は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0037】
本発明の難燃性粘着剤組成物において、上記粘着成分100重量部に対する上記粘着付与樹脂の含有量の好ましい下限は5重量部、好ましい上限は40重量部である。上記粘着付与樹脂の含有量がこの範囲内であると、被着体に対する高い定荷重剥離性を発揮することができる。
【0038】
本発明の難燃性粘着剤組成物は、必要に応じて、可塑剤、乳化剤、軟化剤、充填剤、顔料、染料、シランカップリング剤、酸化防止剤等の添加剤等のその他の樹脂等を含有していてもよい。
【0039】
本発明の難燃性粘着剤組成物を用いれば、高い難燃性を有し、かつ、被着体に対して高い定荷重剥離性を発揮できる難燃性粘着テープを得ることができる。
本発明の難燃性粘着剤組成物からなる粘着剤層を有する難燃性粘着テープもまた、本発明の1つである。
【0040】
本発明の難燃性粘着テープは、基材を有するサポートタイプであってもよいし、基材を有さないノンサポートタイプであってもよい。サポートタイプの場合には、基材の片面に粘着剤層が形成された片面粘着テープであってもよく、基材の両面に粘着剤層が形成された両面粘着テープであってもよい。
なお、本発明の難燃性粘着テープが基材の両面に粘着剤層が形成された両面粘着テープである場合、一方の面のみの粘着剤層が本発明の難燃性粘着剤組成物からなる粘着剤層であってもよく、両面の粘着剤層が本発明の難燃性粘着剤組成物からなる粘着剤層であってもよい。なかでも、より高い難燃性が得られることから、両面の粘着剤層が本発明の難燃性粘着剤組成物からなる粘着剤層であることが好ましい。
【0041】
上記粘着剤層は、ゲル分率が50重量%以下であることが好ましい。上記ゲル分率が50重量%を超えると、上記粘着剤層の架橋密度が高くなりすぎて、粘着テープが剥がれやすくなり、耐反発性が低下することがある。
上記粘着剤層のゲル分率の下限は特に限定されないが、耐熱性等の点からは1重量%以上であることが好ましく、5重量%以上であることがより好ましく、20重量%以上であることが更に好ましい。
なお、ゲル分率は、次のようにして測定される。まず、両面粘着テープを50mm×100mmの平面長方形状に裁断して試験片を作製し、試験片を酢酸エチル中に23℃にて24時間浸漬した後、酢酸エチルから取り出して、110℃の条件下で1時間乾燥させる。乾燥後の試験片の重量を測定し、下記式を用いてゲル分率を算出する。なお、試験片には、粘着剤層を保護するための離型フィルムは積層されていないものとする。
ゲル分率(重量%)=100×(W2-W0)/(W1-W0)
(W0:基材の重量、W1:浸漬前の試験片の重量、W2:浸漬、乾燥後の試験片の重量)
【0042】
上記粘着剤層の厚みは用途によって設定されるので特に限定されないが、好ましい下限は5μmである。上記厚みが5μm未満であると、難燃性粘着テープが剥がれやすくなり、高い定荷重剥離性を発揮できないことがある。上記厚みのより好ましい下限は10μmである。
【0043】
上記基材は特に限定されないが、樹脂フィルム、樹脂発泡体、紙、不織布、ヤーンクロス布等が挙げられる。
上記樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等のポリオレフィン系樹脂フィルム、PETフィルム等のポリエステル系樹脂フィルム、エチレン-酢酸ビニル共重合体やエチレン-アクリル酸エステル共重合体等の変性オレフィン系樹脂フィルム、ポリ塩化ビニル系樹脂フィルム、ポリウレタン系樹脂フィルム、シクロオレフィンポリマー樹脂フィルム等が挙げられる。
上記樹脂発泡体としては、例えば、ポリエチレンフォーム、ポリプロピレンフォーム、アクリルフォーム、ウレタンフォーム、エチレンプロピレンゴムフォーム等が挙げられる。
上記ヤーンクロス布としては、例えば、ポリエチレンフラットヤーンを織ったものや、その表面に樹脂フィルムをラミネートしたもの等が挙げられる。
【0044】
上記基材の厚みは用途によって設定されるので特に限定されないが、例えばフィルム基材の場合には1~100μmが好ましく、5~75μmがより好ましい。上記基材の厚みが1μm未満であると、粘着テープの機械的強度が低下することがある。上記基材の厚みが100μmを超えると、粘着テープの腰が強くなりすぎて、被着体の形状に沿って密着させて貼り合わせることが困難になることがある。
【0045】
本発明の難燃性粘着テープの製造方法は特に限定されず、例えば、本発明の難燃性粘着剤組成物を調製し、続いて、この難燃性粘着剤組成物を離型処理したPETフィルムに塗工乾燥させて粘着剤層を形成し、得られた粘着剤層を基材の片面又は両面に転着させる方法、基材に直接塗工乾燥させる方法等が挙げられる。粘着剤溶液を離型処理したPETフィルムに塗工乾燥させて形成した粘着剤層を、基材なしでそのままノンサポートタイプの両面粘着テープとしてもよい。
本発明の難燃性粘着剤組成物を調製する方法としては、例えば、上記極性官能基含有アクリル系ポリマー、難燃剤、粘着付与樹脂及び架橋剤と、必要に応じて配合するその他の成分とを混合し、攪拌する方法等が挙げられる。
【0046】
本発明の難燃性粘着テープの用途は特に限定されないが、例えば、電子機器部品の固定や車載部品の固定に特に好適に用いることができる。具体的には、大型の携帯電子機器における電子機器部品の接着固定、車載部品(例えば、車載用パネル)の接着固定等に、本発明の難燃性粘着テープを用いることができる。
本発明の難燃性粘着テープからなる電子機器部品固定用両面粘着テープもまた、本発明の1つである。本発明の難燃性粘着テープからなる車載部品固定用両面粘着テープもまた、本発明の1つである。
本発明の電子機器部品固定用両面粘着テープ及び車載部品固定用両面粘着テープの形状は特に限定されないが、長方形、額縁状、円形、楕円形、ドーナツ型等が挙げられる。
本発明の両面粘着テープは、高い耐熱接着性を有することから、1mm以下の狭い線幅であっても、電子機器部品の固定や車載部品の固定に特に好適に用いることができる。
【発明の効果】
【0047】
本発明によれば、高い難燃性を有し、かつ、被着体に対して高い定荷重剥離性を発揮できる難燃性粘着テープを得ることができる難燃性粘着剤組成物、及び、該難燃性粘着剤組成物を用いた難燃性粘着テープを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
図1】リビングラジカル重合を説明する模式図である。
図2】リビングラジカル重合極性官能基含有アクリル系ポリマーに難燃剤を配合した場合を説明する模式図である。
図3】フリーラジカル重合を説明する模式図である。
図4】フリーラジカル重合極性官能基含有アクリル系ポリマーに難燃剤を配合した場合を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
以下に実施例を挙げて本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されるものではない。
【0050】
(実施例1)
(1)リビングラジカル重合極性官能基含有アクリル系ポリマーの調製
Tellurium(40メッシュ、金属テルル、アルドリッチ社製)6.38g(50mmol)をテトラヒドロフラン(THF)50mLに懸濁させ、これに1.6mol/Lのn-ブチルリチウム/ヘキサン溶液(アルドリッチ社製)34.4mL(55mmol)を、室温でゆっくり滴下した。この反応溶液を金属テルルが完全に消失するまで攪拌した。この反応溶液に、エチル-2-ブロモーイソブチレート10.7g(55mmol)を室温で加え、2時間攪拌した。反応終了後、減圧下で溶媒を濃縮し、続いて減圧蒸留して、黄色油状物の2-メチル-2-n-ブチルテラニル-プロピオン酸エチルを得た。
【0051】
アルゴン置換したグローブボックス内で、反応容器中に、得られた2-メチル-2-n-ブチルテラニル-プロピオン酸エチル19μL、V-60(2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、和光純薬工業社製)34mg、酢酸エチル1mLを投入した後、反応容器を密閉し、反応容器をグローブボックスから取り出した。続いて、反応容器にアルゴンガスを流入しながら、反応容器内に、混合モノマー(アクリル酸ブチル96.7重量%、アクリル酸3重量%、アクリル酸2-ヒドロキシエチル0.3重量%)の合計100g、重合溶媒として酢酸エチル66.5gを投入した。60℃で20時間重合反応を行い、リビングラジカル重合されたアクリル系ポリマー含有溶液を得た。
得られたアクリル系ポリマー含有溶液をテトラヒドロフラン(THF)によって50倍希釈して得られた希釈液をフィルター(材質:ポリテトラフルオロエチレン、ポア径:0.2μm)で濾過した。得られた濾液をゲルパミエーションクロマトグラフ(Waters社製、2690 Separations Model)に供給して、サンプル流量1ミリリットル/min、カラム温度40℃の条件でGPC測定を行い、ポリマーのポリスチレン換算分子量を測定した。重量平均分子量(Mw)は60万、分子量分布(Mw/Mn)は1.5であった。なお、カラムとしてはGPC KF-806L(昭和電工社製)を用い、検出器としては示差屈折計を用いた。
【0052】
(2)両面粘着テープの製造
得られたアクリル系ポリマー含有溶液に、その不揮発分100重量部に対して酢酸エチルを加えて攪拌し、難燃剤として水酸化アルミニウム(昭和電工社製、ハイジライトH-43M)10重量部と、架橋剤としてイソシアネート系架橋剤(コロネートL、日本ポリウレタン社製)2.5重量部を添加して攪拌し、不揮発分30重量%の粘着剤溶液を得た。
厚み50μmの離型処理したポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに、得られた粘着剤溶液を、乾燥後に糊厚みが50μmとなるように塗工した後、100℃で10分間乾燥させ、粘着剤層を得た。得られた粘着剤層を25μmのコロナ処理した難燃PET基材(東レ社製、ルミラーZV)に転写した後、同様の操作で基材の反対側の面にも粘着剤層を準備し、基材両面に片面当たりの厚みが50μmの粘着剤層が積層一体化された両面粘着テープを作製した。作製した両面粘着テープを40℃2日間養生した。この積層体をゴムローラによって厚み方向に加圧することによって、粘着剤層の表面に離型フィルムが剥離可能に積層一体化された両面粘着テープを製造した。得られた両面粘着テープの粘着剤層を光学顕微鏡で観察したところ、難燃剤がアクリル系ポリマー中で微分散していることが確認された。
【0053】
(実施例2~10、比較例1)
難燃剤の添加量を表1に記載したようにした以外は実施例1と同様にして、実施例2~5、比較例1の両面粘着テープを得た。
また、難燃剤の添加量を表1に記載したようにし、粘着付与樹脂としてペンセルD135(荒川化学工業社製)を表1に記載した添加量で添加した以外は実施例1と同様にして、実施例6~8の両面粘着テープを得た。
また、難燃剤の添加量を表1に記載したようにし、難燃剤としてそれぞれ赤リン(燐化学工業社製、ノーバクエルFST100)、ポリ化リン酸メラミン(三和ケミカル社製、MPP-A)を添加した以外は実施例1と同様にして、実施例9、10の両面粘着テープを得た。
得られた両面粘着テープの粘着剤層を光学顕微鏡で観察したところ、難燃剤を添加しなかった比較例1以外では、難燃剤がアクリル系ポリマー中で微分散していることが確認された。
【0054】
(比較例2)
(1)フリーラジカル重合極性官能基含有アクリル系ポリマーの調製
反応容器内に、重合溶媒として酢酸エチル50gを加え、窒素でバブリングした後、窒素を流入しながら反応容器を加熱して還流を開始した。続いて、重合開始剤としてV-60(2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、和光純薬工業社製)0.15gを酢酸エチルで10倍希釈した重合開始剤溶液を反応容器内に投入し、混合モノマー(アクリル酸ブチル96.7重量%、アクリル酸3重量%、アクリル酸2-ヒドロキシエチル0.3重量%)の合計100gを2時間かけて滴下添加した。滴下終了後、重合開始剤としてV-60(2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、和光純薬工業社製)0.15gを酢酸エチルで10倍希釈した重合開始剤溶液を反応容器内に再度投入し、4時間重合反応を行い、フリーラジカル重合されたアクリル系ポリマー含有溶液を得た。
実施例1と同様にして測定したところ、重量平均分子量(Mw)は60万、分子量分布(Mw/Mn)は6.2であった。
【0055】
(2)両面粘着テープの製造
得られたアクリル系ポリマー含有溶液に、その不揮発分100重量部に対して酢酸エチルを加えて攪拌し、難燃剤として水酸化アルミニウム(昭和電工社製、ハイジライトH-43M)10重量部と、架橋剤としてイソシアネート系架橋剤(コロネートL、日本ポリウレタン社製)2.5重量部を添加して攪拌し、不揮発分30重量%の粘着剤溶液を得た。
厚み50μmの離型処理したポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに、得られた粘着剤溶液を、乾燥後に糊厚みが50μmとなるように塗工した後、100℃で10分間乾燥させ、粘着剤層を得た。得られた粘着剤層を25μmのコロナ処理した難燃PET基材(東レ社製、ルミラーZV)に転写した後、同様の操作で基材の反対側の面にも粘着剤層を準備し、基材両面に片面当たりの厚みが50μmの粘着剤層が積層一体化された両面粘着テープを作製した。作製した両面粘着テープを40℃2日間養生した。この積層体をゴムローラによって厚み方向に加圧することによって、粘着剤層の表面に離型フィルムが剥離可能に積層一体化された両面粘着テープを製造した。得られた両面粘着テープの粘着剤層を光学顕微鏡で観察したところ、難燃剤がアクリル系ポリマー中で凝集している箇所があることが確認された。
【0056】
(比較例3~5)
難燃剤の添加量を表1に記載したようにした以外は比較例2と同様にして、比較例3~5の両面粘着テープを得た。得られた両面粘着テープの粘着剤層を光学顕微鏡で観察したところ、難燃剤がアクリル系ポリマー中で凝集している箇所があることが確認された。
【0057】
(評価)
実施例、比較例で得られた両面粘着テープについて、下記の評価を行った。結果を表1に示した。
【0058】
(1)難燃性の評価
得られた両面粘着テープを長さ200mm、幅50mmに切り出し、両面の離型フィルムを剥がした試験片を準備し、この試験片の一方の端を保持して垂直に吊るした。試験片の下端に、バーナーで3秒間の炎をあてて、炎を離してから後の有炎燃焼時間を測定した。試験は5回行い、有炎燃焼時間の平均値を算出して、以下の基準で評価した。
◎:有炎燃焼時間が10秒未満
○:有炎燃焼時間が10秒以上、20秒未満
△:有炎燃焼時間が20秒以上、30秒未満
×:有炎燃焼時間が30秒以上
【0059】
(2)定荷重剥離性の評価
幅20mm×50mmの裏打ちした両面粘着テープをステンレス(SUS)板に貼り、23℃50%湿度で一晩養生した後、80℃で90°の方向に50gの荷重を掛け、剥離時間を測定した。得られた剥離時間をもとに、下記の基準にて定荷重剥離性を評価した。同様の評価をポリカーボネート(PC)板に対しても行った。
◎:剥離時間が1時間以上
○:剥離時間が30分以上、1時間未満
△:剥離時間が15分以上、30分未満
×:剥離時間が15分未満
【0060】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明によれば、高い難燃性を有し、かつ、被着体に対して高い定荷重剥離性を発揮できる難燃性粘着テープを得ることができる難燃性粘着剤組成物、及び、該難燃性粘着剤組成物を用いた難燃性粘着テープを提供できる。
【符号の説明】
【0062】
1 リビングラジカル重合極性官能基含有アクリル系ポリマー
11 極性官能基を含まないモノマー
12 極性官能基含有モノマー
21 ポリマー鎖
22 難燃剤
3 フリーラジカル重合極性官能基含有アクリル系ポリマー
31 架橋性官能基を含まないモノマー
32 架橋性官能基含有モノマー
33 反応の途中で生長末端ラジカルが失活したポリマー
34 反応中に新しく発生したラジカル種により生長したポリマー
411 極性官能基含有モノマーを含むポリマー鎖
412 極性官能基含有モノマーを含まないポリマー鎖
42 難燃剤
図1
図2
図3
図4