(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-22
(45)【発行日】2022-03-30
(54)【発明の名称】安定化アミノシラン基含有シリカ粒子の水性組成物
(51)【国際特許分類】
C09K 3/14 20060101AFI20220323BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20220323BHJP
B24B 37/00 20120101ALI20220323BHJP
C09G 1/02 20060101ALI20220323BHJP
【FI】
C09K3/14 550Z
H01L21/304 622D
B24B37/00 H
C09K3/14 550D
C09G1/02
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2017198635
(22)【出願日】2017-10-12
【審査請求日】2020-09-28
(32)【優先日】2016-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504089426
【氏名又は名称】ローム アンド ハース エレクトロニック マテリアルズ シーエムピー ホウルディングス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】特許業務法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】イ・グォ
(72)【発明者】
【氏名】デビッド・モズリー
(72)【発明者】
【氏名】デビッド・エル・トーセン
【審査官】厚田 一拓
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0376462(US,A1)
【文献】特開2013-042131(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0045598(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0259573(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0259574(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0259572(US,A1)
【文献】特表2012-524020(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 3/14
H01L 21/304
H01L 21/463
B24B 37/00
C09G 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二つの第四級アンモニウム基を含有する化合物と、組成物の全重量に基づいて固形分として1~30重量%の量の、一つ以上のカチオン性窒素原子を含有するアミノシラン基含有シリカ粒子との混合物を含む、3~5の範囲のpHを有する水性ケミカルメカニカルプラナリゼーション
研磨組成物であって、前記シリカ粒子上のアミノシラン及び
、前記シリカ粒子上の前記二つの第四級アンモニウム基を含有する化合物からのカチオン性窒素原子の全量が、水性
ケミカルメカニカルプラナリゼーション研磨組成物中のシリカ粒子
表面1m
2あたり170~500nM/
m
2
シリカ粒子の範囲であ
る、水性ケミカルメカニカルプラナリゼーション
研磨組成物。
【請求項2】
前記二つの第四級アンモニウム基を含有する化合物が、ヘキサブチルC
1~C
8アルカンジアンモニウム二水酸化物又はその塩から選択される、請求項1記載の水性ケミカルメカニカルプラナリゼーション
研磨組成物。
【請求項3】
前記二つの第四級アンモニウム基を含有する化合物がN,N,N,N′,N′,N′-ヘキサブチル-1,4-ブタンジアンモニウム二水酸化
物である、請求項2記載の水性ケミカルメカニカルプラナリゼーション
研磨組成物。
【請求項4】
前記アミノシラン基含有シリカ粒子が、一つ以上の第三級アミン基又は一つ以上の第二級アミン基を含有するアミノシラン類を含む、請求項1記載の水性ケミカルメカニカルプラナリゼーション
研磨組成物。
【請求項5】
前記アミノシラン基含有シリカ粒子が、N,N-(ジエチルアミノメチル)トリエトキシシラ
ンである、一つ以上の第三級アミノ基を含有するアミノシラン類を含む、請求項4記載の水性ケミカルメカニカルプラナリゼーション
研磨組成物。
【請求項6】
シリカ粒子表面積1平方メートルあたりの前記シリカ粒子上のカチオン性窒素原子のナノモル数(nM/m
2シリカ)単位のアミノシランの量が、水性
ケミカルメカニカルプラナリゼーション研磨組成物中、70~500nM/m
2シリカの範囲である、請求項1記載の水性ケミカルメカニカルプラナリゼーション
研磨組成物。
【請求項7】
アミノシランの量が100~300nM/m
2シリカの範囲である、請求項6記載の水性ケミカルメカニカルプラナリゼーション
研磨組成物。
【請求項8】
前記二つの第四級アンモニウム基を含有する化合物の量が、水性
ケミカルメカニカルプラナリゼーション研磨組成物中、シリカ粒子1m
2あたり、二つの第四級アンモニウム基を含有する化合物18~100nM(nM/m
2シリカ)の範囲である、請求項1記載の水性ケミカルメカニカルプラナリゼーション
研磨組成物。
【請求項9】
3~7の(ジ)カルボン酸pKaのカルボン酸塩である緩衝液を全組成物1kgあたり0~50ミリモルの量でさらに含む、請求項1記載の水性ケミカルメカニカルプラナリゼーション
研磨組成物。
【請求項10】
前記組成物が、アミノシラン基含有シリカ粒子を、組成物の全重量に基づいて固形分として15~22重量%の量で含む、請求項1記載の水性ケミカルメカニカルプラナリゼーション
研磨組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二つの第四級アンモニウム基を含有する化合物、たとえばN,N,N,N′,N′,N′-ヘキサブチル-1,4-ブタンジアンモニウム二水酸化物(HBBAH)と、アミノシラン基含有シリカ粒子との混合物を含む水性ケミカルメカニカルプラナリゼーション(CMP)研磨組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
以前より、水性シリカCMP研磨組成物中にアミノシラン類を使用するものは常に輸送安定性の問題を抱えていた。そのような水性CMP研磨組成物は、4.5~5のpHで使用されるとき、もっとも良く働く。しかし、シリカ粒子は、特にシリカ粒子固形分が20重量%を超える場合、4~7.5のpH範囲でゲル化又は凝集しがちである。研磨を支援するためにシランをCMP研磨組成物に加えると、正電荷を増すことができ、したがって、必要なシリカは少なくなる。しかし、アミノシラン類をシリカCMP研磨組成物に加えると、4~7のpHで安定性の問題が生じる。アミノシランの添加は、シリカ含有CMP研磨組成物中のシリカ表面の静電反発力を減らし、それにより、そのコロイド安定性を低下させるおそれがある。
【0003】
以前から公知の、アミノシラン処理された、又は誘導体化されたシリカ粒子と第四級アンモニウム化合物との混合物は、促進熱老化試験に暴露されると、安定性を失う。促進熱老化試験は、たとえば、混合物の室温での長期貯蔵の影響をシミュレートするために、又は夏期の不十分な温度制御の影響をシミュレートするために、オーブン中、室温よりも高い温度(たとえば50℃)で実施することができる。安定性は希釈度とともに高まるが、約10重量%未満の希釈度の水性シリカスラリー研磨組成物を輸送することはあいかわらず法外な費用を要する。
【0004】
Grumbineらへの米国特許公開公報第US20150267082号は、第一及び第二の2種類のシリカ粒子の混合物であって、第一の粒子が、10~130nmの平均粒子径を有するコロイダルシリカであり、少なくとも10mVの永久正電荷を有し、第二の粒子が、中性又は非永久正電荷及び80~200nmの平均粒子径を有する混合物を開示している。第一のシリカ粒子はアミノシラン類で処理され、第二のシリカ粒子は第四級アミン化合物で処理されていてもよい。Grumbineは、第一のシリカ粒子をアミノシラン類で処理するための詳細な方法を開示できていない。GrumbineのCMP研磨組成物は、望ましい貯蔵安定性を提供できていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、アミノシラン類を含有し、貯蔵安定なCMP研磨組成物濃縮物を提供する水性シリカCMP研磨組成物を提供する課題を解決しようと尽力した。
【課題を解決するための手段】
【0006】
1.本発明にしたがって、二つの第四級アンモニウム基を含有する化合物、たとえばヘキサブチルC1~C8アルカンジアンモニウム二水酸化物又はその塩、たとえば二ハロゲン化物、好ましくはN,N,N,N′,N′,N′-ヘキサブチル-1,4-ブタンジアンモニウム二水酸化物(HBBAH)と、組成物の全重量に基づいて固形分として1~30重量%又は好ましくは15~22重量%の量の、一つ以上のカチオン性窒素原子を含有するアミノシラン基含有シリカ粒子との混合物を含む、3~5又は好ましくは3.5~4.5又はより好ましくは3.5~4.25の範囲のpHを有する水性ケミカルメカニカルプラナリゼーション(CMP)研磨組成物であって、シリカ粒子上のアミノシラン及び二つの第四級アンモニウム基を含有する化合物からのカチオン性窒素原子の全量が、水性CMP研磨組成物中のシリカ粒子1m2あたり170~500又は好ましくは200~400nMの範囲であり、さらに、45℃の温度で少なくとも6日間の熱老化ののち、固形分15重量%で目に見える沈殿又は沈降に対して安定である、水性ケミカルメカニカルプラナリゼーション(CMP)研磨組成物。
【0007】
2.アミノシラン基含有シリカ粒子が、一つ以上の第三級アミン基を含有するアミノシラン類、たとえばN,N-(ジエチルアミノメチル)トリエトキシシラン(DEAMS)又は一つ以上の第二級アミン基を含有するアミノシラン類、たとえばN-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン(AEAPS)もしくはN-アミノエチルアミノエチルアミノプロピルトリメトキシシラン(DEAPS、DETAPSとも呼ばれる)を含む、項目1記載の水性ケミカルメカニカルプラナリゼーション(CMP)研磨組成物。
【0008】
3.シリカ粒子表面積1平方メートルあたりのシリカ粒子上のカチオン性窒素原子のナノモル数(nM/m2シリカ)単位のアミノシランの量が、70~500又は好ましくは100~300nM/m2シリカ又はより好ましくは140~250nM/m2シリカの範囲である、項目2記載の水性ケミカルメカニカルプラナリゼーション(CMP)研磨組成物。
【0009】
4.二つの第四級アンモニウム基を含有する化合物が、ヘキサブチルC1~C8アルカンジアンモニウム二水酸化物又はその塩、たとえば二ハロゲン化物、たとえばN,N,N,N′,N′,N′-ヘキサブチル-1,6-ヘキサンジアンモニウム二水酸化物、好ましくはN,N,N,N′,N′,N′-ヘキサブチル-1,4-ブタンジアンモニウム二水酸化物(HBBAH)から選択される、上記項目1、2又は3のいずれか一つ記載の水性ケミカルメカニカルプラナリゼーション(CMP)研磨組成物。
【0010】
5.二つの第四級アンモニウム基を含有する化合物の量が、水性CMP研磨組成物中、シリカ1m2あたり、二つの第四級アンモニウム基を含有する化合物18~100又は好ましくは25~100nM(nM/m2シリカ)の範囲である、項目1、2、3又は4のいずれか一つ記載の水性ケミカルメカニカルプラナリゼーション(CMP)研磨組成物。
【0011】
6.シリカのZ平均粒子径(DLS)が10nm~250nm又は好ましくは12nm~150nmの範囲である、上記項目1、2、3、4又は5のいずれか一つ記載の水性ケミカルメカニカルプラナリゼーション(CMP)研磨組成物。
【0012】
7.組成物が、酸化鉄のような酸化剤化合物を含まない、絶縁体又は酸化物含有基材を研磨するのに使用するための、上記項目1~6のいずれか一つ記載の水性ケミカルメカニカルプラナリゼーション(CMP)研磨組成物。
【0013】
8.3~7の(ジ)カルボン酸pKa又は好ましくは3~6のpKaのカルボン酸塩である緩衝液を全(湿)組成物1kgあたり0~50ミリモル(mm/kg)又は好ましくは0.1~10mm/kgの量でさらに含む、上記項目1~7のいずれか一つ記載の水性ケミカルメカニカルプラナリゼーション(CMP)研磨組成物。
【0014】
9.アミノシラン基含有シリカ粒子から本質的になり、アミノシラン基を含有しないシリカ粒子を、全シリカ固形分に基づいて7重量%以下又は好ましくは4重量%以下しか有しない、上記項目1~8のいずれか一つ記載の水性ケミカルメカニカルプラナリゼーション(CMP)研磨組成物。
【0015】
10.本発明の別個の局面にしたがって、水性CMP研磨組成物を製造する方法は、水性アミノシラン類のpHを強酸、好ましくは硝酸によって3.5~8、好ましくは3.5~4.5に調節し、それを5~600分、たとえば120分まで放置して、アミノシラン類中のシリケート結合を加水分解させ、アミノシラン分子1個あたり一つ以上のカチオン性窒素原子を含有する加水分解水性アミノシランを形成し、水性アミノシラン類のpHを強酸によって3~5、好ましくは3.5~4.5又はより好ましくは3.5~4.25に調節する工程;別個に、水性シリカ組成物の全重量に基づく固形分として15~30重量%又は好ましくは15~22重量%の量のシリカ(10nm~250nm又は好ましくは12~150nmのZ平均粒子径(DLS)を有する)を含有する水性シリカ組成物のpHを強酸、好ましくは硝酸によって3~5又は好ましくは3.5~4.5に調節して、水性シリカスラリーを形成する工程;水性シリカスラリーと、シリカ粒子表面積1平方メートルあたりシリカ粒子上のアミノシランのカチオン性窒素原子のナノモル数(nM/m2シリカ)で表して70~500又は好ましくは100~300又はより好ましくは140~250nM/m2シリカの量の加水分解水性アミノシランとを剪断を加えながら合わせて、アミノシラン基含有シリカ粒子組成物を形成する工程;及びアミノシラン基含有シリカ粒子組成物を、二つの第四級アンモニウム基を含有する化合物と合わせて、水性CMP研磨組成物を製造する工程を含み、シリカ粒子上のアミノシラン類及び二つの第四級アンモニウム基を含有する化合物からのカチオン性窒素原子の全量が、水性CMP研磨組成物中、170~500又は好ましくは200~400nM/m2シリカである、方法。
【0016】
11.水性アミノシラン類が、一つ以上の第三級アミン基を含有するアミノシラン類、たとえばN,N-(ジエチルアミノメチル)トリエトキシシラン(DEAMS)又は一つ以上の第二級アミン基を含有するアミノシラン類、たとえばN-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン(AEAPS)もしくはN-アミノエチルアミノエチルアミノプロピルトリメトキシシラン(DEAPS、DETAPSとも呼ばれる)を含む、項目10記載の水性CMP研磨組成物を製造する方法。
【0017】
12.二つの第四級アンモニウム基を含有する化合物が、ヘキサブチルC1~C8アルカンジアンモニウム二水酸化物又はその塩、たとえば二ハロゲン化物、好ましくはN,N,N,N′,N′,N′-ヘキサブチル-1,4-ブタンジアンモニウム二水酸化物(HBBAH)から選択される、項目10又は11のいずれか一つ記載の水性CMP研磨組成物を製造する方法。
【0018】
13.二つの第四級アンモニウム基を含有する化合物の量が、水性CMP研磨組成物中、シリカ1平方メートルあたり、二つの第四級アンモニウム基を含有する化合物18~100又は好ましくは25~100nM(nM/m2シリカ)の範囲である、項目12記載の水性CMP研磨組成物を製造する方法。
【0019】
14.水性CMP研磨組成物を、組成物の全重量に基づいて1~10重量%の全シリカ含有率まで希釈する工程をさらに含む、項目10~13のいずれか一つ記載の水性CMP研磨組成物を製造する方法。
【0020】
別段指示されない限り、温度及び圧力の条件は周囲温度及び標準圧力である。記載されるすべての範囲は包括的かつ組み合わせ可能である。
【0021】
別段指示されない限り、括弧を含む語は、選択的に、括弧が存在しない場合の完全な語及び括弧を有しないその語ならびに各選択の組み合わせを指す。したがって、語「(ポリ)アミン」は、アミン、ポリアミン又はそれらの混合物を指す。
【0022】
すべての範囲は包括的かつ組み合わせ可能である。たとえば、語「50~3000cPの範囲又は100cP以上」は、50~100cP、50~3000cP及び100~3000cPそれぞれを含む。
【0023】
本明細書の中で使用される語「ASTM」とは、ASTM International(West Conshohocken, PA)の刊行物をいう。
【0024】
本明細書の中で使用される語「カチオン性窒素原子」とは、溶液のpHがアミンのプロトン化形態のpKa未満である水性組成物中の第四級アンモニウム窒素又はアミン窒素をいう。「カチオン性窒素原子の数」は、以下のように、各正電荷含有窒素原子の寄与を加算する式にしたがって決定される。
全カチオン性窒素原子=1×アミノシラン+2×ビス又はジアミノシラン+1×二つの第四級アンモニウム基を含有する化合物
式中、単位は、シリカ表面積1m2あたりカチオン性窒素原子のナノモル数である。
【0025】
本明細書の中で使用される語「コロイド安定性」とは、所与の組成物が、45℃で6日間の熱老化ののち、目に見える沈殿物又は沈降物を残さず、MalvernのDLS計器によって計測して、Z平均粒子径の100%未満の変化しか示さないことをいう。
【0026】
本明細書の中で使用される語「硬い塩基」とは、NaOH、KOH又はCa(OH)2のようなアルカリ(土類)金属水酸化物を含む金属水酸化物をいう。
【0027】
本明細書の中で使用される語「熱老化」とは、対流オーブン中、密封プラスチック又はガラスボトルの中で実施される、指示された温度及び指示された時間での貯蔵ののち、目視で観測される老化をいう。「熱老化安定性」とは、45℃で6日間の老化が、明澄度又はコロイド安定性を損失させず、Z平均粒子径を200%より多く増大させない、好ましくはZ平均粒子径を100%より多く増大させないことをいう。
【0028】
本明細書の中で使用される語「ISO」とは、International Organization for Standardization(Geneva, CH)の刊行物をいう。
【0029】
本明細書の中で使用される語「シリカ粒子固形分」又は「シリカ固形分」とは、所与の組成物に関し、正帯電シリカ粒子の全量+負帯電シリカ粒子の全量+他のシリカ粒子の全量(それらの粒子いずれかが処理されるときの粒子を含む)をいう。
【0030】
本明細書の中で使用される語「固形分」とは、その物理的状態にかかわらず使用条件下で揮発しない、水又はアンモニア以外の物質をいう。したがって、使用条件下で揮発しない液体シラン類又は添加物は「固形分」とみなされる。
【0031】
本明細書の中で使用される語「強酸」とは、2以下のpKaを有するプロトン酸、たとえば硫酸又は硝酸のような無機酸をいう。
【0032】
本明細書の中で使用される語「使用条件」とは、所与の組成物が使用されるときの温度及び圧力(使用中の温度及び圧力の上昇を含む)をいう。
【0033】
本明細書の中で使用される「重量%」は重量百分率の略である。
【0034】
本明細書の中で使用される語「Z平均粒子径(DLS)」とは、製造者の推奨にしたがって校正されたMalvern Zetasizer装置(Malvern Instruments, Malvern, UK)を使用する動的光散乱法(DLS)によって計測される、指示された組成物のZ平均粒子径をいう。Z平均粒子径は、ISO法(ISO13321:1996又はそのより新しい付録ISO22412:2008)によって計算される直径である、強さ重み付き調和平均径である。語「数平均直径」又は「D#」は、Malvern非負拘束付き最小二乗分布解析を「汎用」70サイズクラスの設定及び0.01の正則化値とともに使用して計算される。非負拘束付き最小二乗解析は、Provencher(S. W. Provencher, Comput. Phys. Commun. 27 (1982), 229)によって記載されている。粒子径計測は、実施例に記載されるように、濃縮スラリー又は希釈スラリーに対して実施したものである。別段指示されない限り、すべての粒子径計測は、1%w/wシリカ粒子固形分まで希釈された、3.5~4.5の範囲のpHを有するスラリー組成物に対して実施したものである。計測される希釈スラリーのpHは、濃縮物のpHにできるだけ近く維持した。
【0035】
本明細書の中で使用される語「比表面積(SSA)」とは、グラム単位の単位質量あたりm2単位の粒子の全表面積である。ザウター平均粒子径D[3,2]のための式を使用して計算される。ザウター平均粒子径は、6×全粒子体積÷全粒子表面積に等しい。これは以下のように再整理される。
【0036】
【0037】
数平均直径は、小さめの粒子を強調する重み付け係数を使用して、Z平均粒子径からサイズがシフトダウンされる。単位質量あたりの表面積は粒子径に反比例するため、これは、表面積のより良い表現を提供し;加えて、所与のサンプル中の小数の凝集物は、全表面積に有意に寄与することなく、計算されたZ平均粒子径に大きな影響を及ぼすことができるため、これは、凝集物をより良く考慮に入れる。粒子1グラムを仮定すると、全表面積のための上記式は、以下の式を使用して、比表面積に変換される。シリカ粒子の場合、2.2g/cm3の密度を使用し、ナノメートル単位のDLS数平均直径値(D#)を使用する。したがって、g/m2の単位の比表面積は以下の式によって求められる。
【0038】
【0039】
本明細書の中で使用される、二粒子混合物の「重量平均シリカ比表面積」とは、以下によって決定される結果をいう。
【0040】
【0041】
式中、Wta及びWtbは、混合物中の粒子a及びbの重量又は重量分率を指し、SSAa及びSSAbは、上記のように計算されたこれらの粒子の比表面積を指す。三種以上の粒子の混合物の場合、上記式は、粒子の種ごとに、n種までの粒子の各粒子を加算する合計として表すことができる(Wtn×SSAn/Wttotal)。
【0042】
本明細書の中で使用される語「ゼータ電位」とは、Malvern Zetasizer計器によって計測される所与の組成物の電荷をいう。すべてのゼータ電位計測は、実施例に記載されるように(希釈)スラリー組成物に対して実施したものである。報告される値は、各指示された組成物に関して計器によって読み取られた>20の獲得値を使用してゼータ値の平均化計測値から得たものである。
【発明を実施するための形態】
【0043】
本発明者らは、驚くことに、二つの第四級アンモニウム基を含有する化合物、たとえばN,N,N,N′,N′,N′-ヘキサブチル-1,4-ブタンジアンモニウム二水酸化物(HBBAH)と、一つ以上のアミノシラン基含有シリカ粒子組成物とを含む、アミノシランがシリカ粒子の表面にある水性組成物が、高い除去速度を維持しながらも、貯蔵、輸送及び熱老化に対してスラリーを安定化させる独特の能力を提供するということを見いだした。シリカ粒子の混合物を含有する水性組成物は、室温で>1ヶ月、コロイド安定性のままである。本発明は、さらなる粒子成長工程を要することなく、水性シリカ粒子貯蔵安定性を達成する。
【0044】
本発明にしたがって、二つの第四級アンモニウム基を含有する適当な化合物はN,N,N,N′,N′,N′-ヘキサブチル-1,4-ブタンジアンモニウム二水酸化物(HBBAH)を含んでいてもよい。
【0045】
本発明にしたがって、二つの第四級アンモニウム基を含有する化合物の適量は、1~30重量%又は好ましくは15~24重量%のシリカ固形分を有するスラリーの25~2000ppm又は好ましくは200~2000ppmの範囲である。量は、安定化効果を保証するのに十分な量であるべきである。より高いシリカ濃度及び/又はより低いアミノシラン濃度を有する濃縮物及び組成物を安定化するためには、二つの第四級アンモニウム基を含有する化合物がより多く必要になる。また、より小さい平均径の粒子を安定化させる場合にも、オリゴマー化又はゲル化のための表面積及び電位の増大のせいで、より多く必要になる。
【0046】
試験された公知の第四級アンモニウム塩又は水酸化物は、市販のCMP研磨組成物に望まれる除去速度と組み合わされた熱老化安定性の程度を提供しない。一つの公知の第四級アンモニウム化合物、塩化1-ブチル-3-メチルイミダゾリウム(BMIC)は、CMP研磨組成物の全体除去速度を低下させるような高さの濃度レベルでしか十分な安定性を提供することができない。
【0047】
本発明の水性CMP研磨組成物のコロイド安定性を保証するために、組成物は、3~5又は好ましくは3.5~4.5の範囲のpHを有する。組成物は、所望のpH範囲よりも上ではその安定性を失う傾向を示す。
【0048】
本発明の組成物にしたがって、アミノシラン基含有シリカ粒子は、より多くのアミノシランがより小さなシリカ粒子(より大きな表面積を有する)とで使用され、より少ないアミノシランがより大きなシリカ粒子とで使用されるような量で使用される。コロイド安定性を制御するために、5未満のpH範囲におけるシリカ粒子の単位表面積あたりアミノシラン中のカチオン性窒素原子の数は、低いままであり、かつ、シリカ粒子が正のゼータ電位を有するようにするべきである。しかし、シリカ粒子の単位表面積あたり多すぎるカチオン性窒素原子は、TEOSウェーハの除去速度によって計測されるスラリーの研磨能力の損失を招くことができる。シリカ単位表面積あたりカチオン性窒素原子の数はまた、シリカ粒子表面の気孔率、密度及びシラノール濃度の関数であり;より多孔性又はより低密度のシリカ粒子及びより多くのシラノール基を表面に有するシリカの場合、より多くのアミノシランが必要になる。
【0049】
本発明の組成物のコロイド安定性は、シリカ表面積1平方メートルあたりのカチオン性窒素原子のナノモル数として表される、シリカ粒子表面と会合した正電荷の数に関連する。一つのアミン基を有する第三級及び第二級アミノシラン類は、アミノ基がプロトン化されているため、本発明のpH(3~5)でアミノシラン分子1個あたり一つの正電荷又はカチオン性窒素原子を寄与する。ビス(アミノ)シラン類及び二つのアミン基を含有するアミノシラン類、たとえばN-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルシラン類は、本発明の組成物のpHでアミノシラン分子1個あたり約二つの正電荷又はカチオン性窒素原子を寄与する。理論によって拘束されることを望まないが、本発明のジ第四級化合物を含有する組成物においては、一方の正電荷が脱プロトン化シラノール基に対する対イオンとして働き、他方の正電荷が溶液中にフェイスアウトとして、正帯電カチオン性窒素原子を提供する。他の第四級化合物、たとえば一つの第四級アンモニウム基を有するものは、この機構によって作用することはできず、したがって、研磨性能とコロイド安定化との本発明の組み合わせを可能にしない。
【0050】
本発明の組成物は、シリカ表面積1平方メートルあたりのナノモル数(nM/m2シリカ)の単位の量で「シリカ単位表面積あたりのカチオン性窒素原子」を含有する。
【0051】
本発明のアミノシラン基含有シリカ粒子を製造するための使用に適したアミノシラン類は、第三級アミン基及び第二級アミン基を含有するアミノシラン類である。本発明の組成物中のアミノシラン類は、初期混合中には加水分解水性アミノシラン類として存在するが、すぐにシリカ粒子の表面に吸着されることができる。
【0052】
本発明の加水分解水性アミノシランにしたがって、水性アミノシラン組成物は、貯蔵中に形成したシリケート結合を加水分解するために放置される。一つ以上の第二級アミン基を含有するアミノシラン類の場合、そのような水性アミノシラン類のpHは、7~8で5~600分間、たとえば5~12分間維持されたのち、強酸によって3.5~5に調節される。第三級アミン基を含有するアミノシラン類は、本発明の水性シリカCMP研磨組成物の所望のpH範囲(pH3~5)では、第一級アミン基を含有するアミノシラン類よりも容易に加水分解される。加水分解工程ののち、小さな割合のアミノシラン類が短鎖オリゴマーとして存在してもよい。
【0053】
一つ以上の第二級アミン基を有するアミノシラン類はあまり好ましくないため、加水分解水性アミノシランを製造する好ましい方法は、一つ以上の第三級アミノ基を有する本発明の水性アミノシランのpHを3.5~4.5に調節する工程及びそれを5~600又は5~120分間放置する工程を含む。
【0054】
本発明の組成物は、層間絶縁体(ILD)のような絶縁体研磨のためのものである。
【0055】
実施例
以下の実施例が本発明の様々な特徴を説明する。
【0056】
以下の実施例においては、別段指示されない限り、温度及び圧力の条件は周囲温度及び標準圧力である。
【0057】
以下の実施例においては以下の材料を使用した。
【0058】
HBBAH=N,N,N,N′,N′,N′-ヘキサブチル-1,4-ブタンジアンモニウム二水酸化物(Sachem, Austin, TX)。
AEAPS=N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、98%(Gelest Inc., Morrisville, PA);
DEAMS=(N,N-ジエチルアミノメチル)トリエトキシシラン、98%(Gelest Inc.);
BMIC=塩化1-ブチル-3-メチルイミダゾリウム、98%(Sigma-Aldrich, Milwaukee, WI);
BTMAC=塩化ベンジルトリメチルアンモニウム、98%(Sigma-Aldrich)。
【0059】
実施例において使用した様々なシリカ粒子を以下の表Aに掲載する。
【0060】
【0061】
以下の実施例においては以下の略号を使用した。
【0062】
POU:ポイントオブユース;RR:除去速度;SA:表面積;SSA:比表面積。
【0063】
以下の実施例においては以下の試験法を使用した。
【0064】
初期pH及び老化pH:試験される組成物の「初期pH」とは、以下に開示される指示された濃縮組成物が製造されたときそれらから一度だけ計測されたpHであり;老化pHとは、実施例の中で指定された時間ののち一度だけ計測されたpHである。
【0065】
POUのpH:ポイントオブユースのpH(POUのpH)とは、指示された濃縮組成物を指示された固形分まで水で希釈したのち除去速度試験中に計測されたpHである。
【0066】
除去速度:指示された研磨機、たとえばStrasbaugh 6EC 200mmウェーハ研磨機もしくは「6EC RR」(San Luis Obispo, CA)又はApplied Materials Mirra(商標)20mm研磨機もしくは「Mirra RR」(Applied Materials, Santa Clara, CA)を、指示どおり、指示されたダウンフォースならびにテーブル及びキャリヤ回転速度(rpm)で、指示されたCMP研磨パッド及び砥粒スラリー(流量200mL/min)とともに使用する、指示された基材に対する研磨から除去速度試験を実施した。Diagrid(商標)AD3BG-150855ダイアモンドパッドコンディショナ(Kinik Company, Taiwan)を使用して研磨パッドをコンディショニングした。CMP研磨パッドを、パッドコンディショナにより、6.35kg(14.0lb)のダウンフォースを使用して20分間ならし運用し、さらに、研磨の前に、4.1kg(9lb)のダウンフォースを使用して10分間コンディショニングした。CMP研磨パッドをさらに、研磨中、4.1kg(9lb)のダウンフォースを用いて、研磨パッドの中心から4.3~23.5cmまでを10スイープ/分でインサイチューでコンディショニングした。研磨の前後に、49点スパイラルスキャンを使用するKLA-Tencor FX200計測ツール(KLA Tencor, Milpitas, CA)を使用して、エッジ除外領域3mmで膜厚さを計測することにより、除去速度を測定した。
【0067】
Z平均粒子径:製造者の推奨にしたがって校正されたMalvern Zetasizer装置(Malvern Instruments, Malvern, UK)を使用する動的光散乱法(DLS)により、指示された組成物のZ平均粒子径を計測した。Z平均粒子径は、ISO法(ISO13321:1996又はそのより新しい付録ISO22412:2008)によって計算される直径である、強さ重み付き調和平均径である。粒子径の計測は、各実施例に記載されるpHで希釈粒子サンプルに対して実施した。
【0068】
ゼータ電位:Malvern Zetasizer計器により、上記やり方で、指示された組成物のゼータ電位を計測した。ゼータ電位の計測は、pH3.5の溶液によって1%w/wシリカに希釈された、pH3.5又はその近くの組成物に対して実施した。
【0069】
調合例:一般に、硝酸を使用して、水に希釈された指示されたシリカスラリー粒子をpH4.25に調節した。pH4.25の前加水分解アミノシランの2~4%w/w水溶液を粒子に加えて、得られたスラリー組成物を、指示されたシリカ固形分1kgあたりシランのミリモル数(mM/kgシリカ固形分)にした。スラリーのpHを3.5~4.25で3時間維持すると、この時点におけるシリカ固形分の含有率は全湿組成物の約18~24重量%であった。組成物を、二つの第四級アンモニウム基を含有する化合物の指示された量と合わせ、別段指示されない限り、室温で老化させた。以下の表における第四級又は酸化合物の添加量は、スラリーの全湿重量を使用して重量ミリモル濃度(mm)の単位で与えられる。たとえば、溶液1kg中3ミリモルの化合物は化合物中3重量ミリモルである。具体的な調合法は以下に詳述する。
【0070】
除去速度試験:除去速度試験のためにスラリー濃縮物を水中4%w/wに希釈し、その後、pH調節はしなかった。Strasbaugh 6EC 200mmウェーハ研磨機を、20.7kPa(3psi)で、93rpmのテーブル速度及び87rpmの基材キャリヤ速度で作動させた。性能を試験するために、テトラエトキシシラン(TEOS)ウェーハを200mL/minの流量で研磨した。別段指示されない限り、Dow Electronic MaterialsのIC1010(商標)パッドを使用した。1010(商標)パッドは、厚さ80mil、ショアD硬さ57のウレタンパッドである(The Dow Chemical Company, Midland, MI, (Dow))。
【0071】
実施例1:熱老化安定性に対するアミノシランレベルの効果
指示された組成物を13暦日間放置したのち、熱老化試験を開始した。結果を以下の表1に示す。
【0072】
【0073】
【0074】
実施例1Aにおいて、加水分解水性アミノシランを形成するために、硝酸を使用してDEAMSの3.7%w/wの溶液をpH4.25に調節して、加水分解DEAMS溶液4.2グラムを得た。別個に、脱イオン水29.42グラムをスラリーA144.3グラムと混合した。硝酸を使用してシリカスラリーのpHを4.25に低下させた。次いで、加水分解DEAMS溶液を混合しながらシリカ溶液に加えた。DEAMSとシリカとの30分間の反応ののち、pH3.5でHBBAH(硝酸塩形態)の2%w/w溶液2.07gを加えた。得られたスラリーを、熱老化のために、必要ならば硝酸/KOHを使用して3.5にpH調節した。実施例1Bにおいては、加えられる加水分解DEAMSの量を5.04gに増し、相応に水を減らした。29日間の老化ののち、スラリーをpH3.5溶液中1%固形分に希釈することにより、熱老化させたサンプルをゼータ電位及び粒子径に関してDLSによって計測した。サンプル1AのDLS計測を得るために、まず、余分なpH3.5硝酸溶液を加え、水槽中で音波処理することにより、それを再懸濁させた(ただし、ゲルは破壊しなかった)。
【0075】
上記表1に示すように、十分なレベルのDEAMS及びHBBAHが、pH3.5で、50℃で4週間の貯蔵にわたりゲル化を防ぐことができる。実施例1A及び1Bは、HBBAHの存在におけるDEAMSレベルの上昇が安定性を高めることを例示する。
【0076】
実施例2:熱老化安定性に対する第四級アンモニウムの効果
DEAMS(124nM/m2シリカ)スラリーを製造するために、脱イオン水16.8グラムをスラリーA392グラムと混合した。硝酸を使用して溶液のpHを4.25に低下させた。この混合物に、硝酸を使用してpH4.25に調節したDEAMSモノマー3.7%w/wである加水分解DEAMS溶液11.2グラムを加えた。DEAMSとシリカとの30分間の反応ののち、KOH及び/又は硝酸を使用してpHを4.0に調節した。次いで、28%w/wシリカであるDEAMS(124nM/m2シリカ)溶液のアリコットを使用して、以下の表2に示すように、加えられた重量ミリモル量の第四級アンモニウム及び/又はカルボン酸により、シリカ24%のDEAMSの溶液(124nM/m2シリカ)を調製した。得られたスラリーを、熱老化のために、必要ならば硝酸/KOHを使用して約4.1にpH調節した。
【0077】
以下の表2に示すように、HBBAHは、pH4.1で貯蔵されたとき、DEAMS(124nM/m2シリカ)アミノシラン基含有シリカ粒子のための最良の安定化能力を有する。以下の表2に示すように、シリカ1平方メートルあたりのカチオン性窒素原子の量は、6日間の老化ののち組成物を安定化するのには不十分である。比較例2G及び2Mにおいて、一つのイミダゾリウム基を含有するBMICは、二つの第四級アンモニウム基を含有する比較例2B、2K及び2Lにおける本発明HBBAH化合物とほぼ同じ性能を発揮する組成物を与えるが、2倍の添加量を要し、pH4.1でサルコシンを緩衝液として使用するとき、6日後にゲル化する。二つのコハク酸の例は、pH4.4で熱安定性を維持することが、pH4.1で熱安定性を維持するよりも困難であることを示すと考えられる。
【0078】
【0079】
【0080】
実施例3:熱老化に対するHBBAHレベルの効果
3A~3FのDEAMS(156nM/m2シリカ)スラリーを製造するために、脱イオン水4.66グラムをスラリーA130.66グラムと混合した。硝酸を使用して溶液のpHを4.25に低下させた。この混合物に、硝酸を使用してpH4.25に調節したDEAMSモノマー3.7%w/wである加水分解DEAMS溶液4.67グラムを加えた。DEAMSとシリカとの60分間の反応ののち、KOH及び/又は硝酸を使用してpHを4.0に調節した。比較例3Aにおいて、熱老化を受けず(室温で6日間貯蔵)、余分な添加物を有しないDEAMS(156nM/m2シリカ)溶液の粒子径は、固形分1%及びpH3.5で計測して36.91nm(Z平均)であった。
【0081】
3G~3LのDEAMS(154nM/m2シリカ)スラリーの場合:脱イオン水4.20グラムをスラリーA104.53グラム及びスラリーB26.13gと混合した。これは、127m2/gの重量平均シリカSSAを有する重量比80/20の混合物を与えた。硝酸を使用して溶液のpHを4.25に低下させた。この混合物に、硝酸を使用してpH3.5に調節したDEAMSモノマー3.7%w/wである加水分解DEAMS溶液5.13グラムを加えた。20分間の反応ののち、pHを4.2に調節した。DEAMSとシリカとの60分間の反応ののち、KOH及び/又は硝酸を使用してpHを4.0に調節した。
【0082】
次いで、28%w/wシリカを有するDEAMS(156nM/m2シリカ)又は(154nM/m2シリカ)組成物のアリコットを使用して、以下の表3に示すような、指示された重量ミリモル添加量の第四級アンモニウム及び/又はカルボン酸により、シリカ固形分24重量%のスラリーを調製した。得られたスラリーを、熱老化のために、必要ならば硝酸/KOHを使用して4.1にpH調節し、50℃で6日間老化させた。目視観測を実施し、有意に増粘していない溶液を、pH3.5硝酸溶液を使用して固形分1%に希釈し、pH3.5で計測することにより、粒子径に関して計測した。ゲル化した例のpH(^で印す)の計測は、いくらかの水を加え、音波処理してゲルを分散させることによって得たものである。ゲルは再分散しなかったが、pH計測に十分なほど液化した。
【0083】
【0084】
【0085】
上記表3及び3Bは、二つの第四級アンモニウム基を含有する化合物のレベルの増大が、アミノシラン基含有シリカ粒子の24重量%添加率で、スラリーA混合物及びスラリーA/B混合物の両方のために、熱老化中のゲル化に対するより大きな保護を提供することを示す。表3A及び3Bはまた、二つの第四級アンモニウム基及びアミノシランを含有する化合物の好ましいレベル又はもっとも効果的なレベルが、より大きな表面積を有するシリカ粒子、たとえばスラリーB中のシリカ粒子の場合に上昇するということを示す。最後に、実施例3Jにおいて、実施例は、二つの第四級アンモニウム基を含有する化合物の増大する量の添加が熱老化安定性を改善することができることを示す。比較例3H、3I及び3Lにおいては、実施例3Jにおけるように二つの第四級アンモニウム基を含有する化合物が25nM/m2シリカよりも多く存在しない限り、又は実施例3Kにおけるように効果的な緩衝液が好ましいpHで使用されない限り、24%の粒子固形分は安定化を困難にする。
【0086】
実施例4:酢酸緩衝液を有する場合及び有しない場合の二つの第四級アンモニウム基を含有する化合物の効果
28%w/wシリカでDEAMS(140nM/m2シリカ)スラリーを製造するために、脱イオン水12.83グラムをスラリーA326.66グラムと混合した。硝酸を使用して溶液のpHを4.25に低下させた。この混合物に、硝酸を使用してpH4.25に調節したDEAMSモノマー3.7%w/wである加水分解DEAMS溶液10.50グラムを加えた。DEAMSとシリカとの30分間の反応ののち、KOH及び/又は硝酸を使用してpHを4.3に調節した。実施例4A~4Sにおけるアミノシラン基含有シリカ粒子(140nM/m2シリカ)の粒子径は、室温で30分後、余分な添加物なしで、36.51nm(Z平均、固形分1重量%及びpH3.5で実施)であった。次いで、DEAMS(140nM/m2シリカ)溶液のアリコットを使用して、以下の表4A及び4Bに示すように、加えられた重量ミリモル量の第四級アンモニウム及び/又は酢酸により、アミノシラン基含有シリカ粒子固形分24重量%の溶液を調製した。得られたスラリーを、熱老化のために、必要ならば硝酸/KOHを使用して4.2~4.3にpH調節し、50℃で6日間老化させた。
【0087】
【0088】
【0089】
【0090】
上記表4A及び4Bに示すように、実施例4B、4C、4J及び4KにおけるHBBAHは、他の第四級アンモニウムと比べて最小の粒子成長を提供することを含め、50℃での熱老化の場合に最良の結果を提供する。比較例4G、4N、4O及び4Pにおいて、BMICは、使用されるHBBAHの量の2倍超の量で緩衝液なしの組成物に使用されたとき、組成物を安定化することができ;緩衝液を含む組成物においては、HBBAHの4倍の量で使用されたときのみ(実施例4Jを参照)、6日後、BMICは、スラリー組成物を安定化することができ、カルニチンは、スラリー組成物をほぼ安定化することができる。これらの実施例はまた、カルボン酸緩衝液としての少量の酢酸が、より低いZ平均粒子径を維持することにより、熱老化結果をいくぶん改善することができることを実証する。
【0091】
実施例5:老化に対するDEAMSの効果
実施例5AのDEAMS(181nM/m2シリカ)スラリーを製造するために、脱イオン水1166.63グラムをスラリーA5599.94グラムと混合した。硝酸を使用して溶液のpHを4.25に低下させた。この混合物に、硝酸を使用してpH4.25に調節したDEAMSモノマー3.7%w/wである加水分解DEAMS溶液233.43グラムを加えた。DEAMSとシリカとの180分間の反応ののち、KOH及び/又は硝酸を使用してpHを4.1に調節した。実施例5BのDEAMS(181nM/m2シリカ)の場合、同じ手順を使用したが、180分後、HBBAH(硝酸塩形態)を加えてHBBAH中0.7mmのスラリーを製造した。実施例5CのDEAMS(181nM/m2シリカ)の場合、同じ手順を使用したが、180分後、モノアセテート/モノニトレート形態のHBBAHを加えてHBBAH中0.7mmのスラリー及びアセテート中0.7mmのスラリーを製造した。45℃での熱老化の結果を以下の表5Aに示す。粒子径計測は、スラリー濃縮物を水で固形分1%の溶液に希釈することによって実施した。
【0092】
【0093】
【0094】
【0095】
上記表5Aに示すように、粒子スラリーが老化するとともにpHドリフトがある。この実施例において少量の酢酸緩衝液の存在はpHドリフトに有意には影響しない。しかし、実施例5B及び5Cにおいては、DEAMSシリカ粒子へのHBBAHの添加は、粒子径成長(Z平均)及びpHドリフトの両方を劇的に示す。上記表5Bに示すように、実施例5Cにおける少量の緩衝液を有する本発明の組成物は3週間の熱老化ののちその除去速度を維持する。実施例5Bの組成物は、3週間の熱老化ののち、その除去速度の6~7%を失っただけである。比較例5Aの組成物は3週間の熱老化ののちゲル化したため、この組成物の除去速度データは利用できない。
【0096】
実施例6:二つのシリカ粒子の混合物に対するHBBAHの安定化効果
実施例6A~6JにおけるDEAMS(199nM/m2シリカ)スラリーの場合:脱イオン水32.66グラムをスラリーA160グラムと混合した。硝酸を使用して溶液のpHを4.25に低下させた。この混合物に、硝酸を使用してpH4.25に調節したDEAMS3.7%w/wである加水分解DEAMS溶液7.34グラムを加えた。DEAMSとスラリーAのシリカとの10分間及び60分間の反応それぞれののち、KOH及び/又は硝酸を使用してpHを4.2に調節した。18時間後、硝酸を使用して粒子をpH3.5に調節し、7日間貯蔵した。
【0097】
以下の表6中のスラリーは、7日間貯蔵した後のDEAMS-スラリーA(199nM/m2シリカ)スラリーを脱イオン水及びスラリーB粒子(氷酢酸でpH4.3に調節)と混合することによって調製した。表6中のスラリーは、スラリーA-DEAMS(199nM/m2シリカ)粒子18.6%w/w、pH調節スラリーB粒子1.4%w/w及び余分なHBBAHビス酢酸塩及び酢酸の量を有するように作られたものである。スラリーA+B組成物の重量平均表面積は119m2/gであり、混合物をシリカ1m2あたり合計192nM DEAMSまで減らした。熱老化実験に備え、最終pH調節を実施するために、酢酸又はKOHを使用して濃縮粒子スラリーの最終pHを約4.4にセットした。50℃オーブン中で27日間熱老化を実施した。熱老化の前の、他の添加物なしの混合粒子系(スラリーA+B)の出発粒子径は、pH4.4及び固形分1%で33.29nm(Z平均)と計測された。表6中の粒子径は、DLSにより、pH4.4で固形分1%の濃度で計測したものである。カチオン性窒素原子の全量を以下の表6Bに示す。
【0098】
【0099】
【0100】
上記表6及び6B中の結果は、実施例6Iにおけるように、また、上記実施例6Jにおけるように、HBBAHの増大するレベルが粒子安定性を1.63mm又は751ppm HBBAHまで増大させることを示す。実施例6B~6Jのすべてにおいて、本発明HBBAH及びアミノシランは熱老化安定性を増大させた。実施例6Eにおいて、多すぎる酢酸(中和されているとき、酢酸HBBAH又は酢酸カリウムとして存在する)を6.6mm(添加した5mm+HBBAH塩上の0.8×2mm)又は400ppmで添加し、溶液の全イオン強度を高めることは、あまり好ましくないレベルの粒子安定性につながる。上記表3からの比較例3G~3Jを実施例6B~6Dに比較すると、熱老化結果はまた、粒子上のDEAMSレベルを増大させ、シリカ粒子の量を24重量%から好ましい20重量%に減らすことが、粒子固形分に基づいてアミノシランを含有しない約7重量%のシリカ粒子の割合の存在においてさえ、安定性を劇的に増大させることができることを示す。アミノシラン基含有シリカ粒子なしの水性シリカ粒子を含めることは、特に組成物中の全固形分4重量%以上では好ましくなく、熱老化安定性を損なうおそれがある。
【0101】
実施例7:第二級アミン基含有シランを用いる例
AEAPS(43.5nM/m2シリカ)スラリーの場合:脱イオン水18.81グラムをスラリーA80グラムと混合した。硝酸を使用して溶液のpHを4.25に低下させた。この混合物に、硝酸を使用してpH4.25に調節したAEAPSモノマー2.22%w/wである加水分解AEAPS溶液1.19グラムを加えた。AEAPSとシリカとの10分間の反応ののち、KOH及び/又は硝酸を使用してpHを4.2に調節し、室温で貯蔵した。翌日、粒子を使用して老化調合物を製造した。
【0102】
AEAPS(58nM/m2シリカ)スラリーの場合:上記手順を使用して脱イオン水18.41グラムをスラリーA80グラム及び加水分解AEAPS溶液1.59グラムと混合した。
【0103】
以下の表7に掲載するスラリーは、AEAPS(43.5nM/m2シリカ)又は(58nM/m2シリカ)溶液を脱イオン水及び任意選択でスラリーB粒子(30重量%、硝酸でpH4.0に調節)と混合することによって調製したものである。スラリーAだけがアミノシラン基含有シリカ粒子を含有するものであった。表7AにおけるようにスラリーAとスラリーBとを混合したとき、得られる重量平均比表面積は118m2/gであった。熱老化実験に備え、最終pH調節を実施するために、硝酸又はKOHを使用して濃縮粒子スラリーの最終pHを約4.0にセットした。50℃オーブン中で12日間熱老化を実施した。pH4硝酸溶液を使用して固形分1%に希釈したサンプルを使用してpH4で粒子径を計測した。
【0104】
【0105】
【0106】
上記表7Aに示すように、実施例7C、7H及び7Iは、二つの第四級アンモニウム基を含有する化合物HBBAHを含めた場合の改善された安定化効果を示す(比較例7A、7B、7F及び7Gを比較すること)。第二級アミン基含有シランであるAEAPSを使用して調合物のアミノシランのレベルを増大させることは熱老化安定性を支援することができる(比較例7D及び7Eを本発明実施例7H及び7Iと比較すること)。緩衝液又は塩と組み合わさって、第二級アミン基を含有し、二つのカチオン性窒素原子を有する試験されるアミノシランの好ましい量は、シリカ1m2あたり100nMよりも多いカチオン性窒素原子を提供する量である。比較例7D及び7Eにおけるようにアミノシラン基含有シリカ粒子なしの水性シリカスラリーBを全固形分の4重量%以上の量で含めることは好ましくなく、熱老化安定性を損なう場合がある。
【0107】
実施例8:シリカ混合物の組成物を用いる熱老化
試薬の量が表8Aに掲載されている。脱イオン水をスラリーAと混合した。硝酸を使用して溶液のpHを4.25に低下させた。この混合物に、硝酸を使用してpH4.25に調節したDEAMSモノマー3.7%w/wである加水分解DEAMS溶液を加えた。DEAMSとシリカとの30分間の反応ののち、KOH及び/又は硝酸を使用してpHを4.2に再調節した。次いで、4.25にpH調節したスラリーB又はそのままのスラリーCの10%w/w溶液を任意選択で加えた。任意選択で、DEAMS溶液の二回目の添加を実施した。さらに30分後、ビス酢酸HBBAH(pH4.4の原液から)を加え、pHを4.4に再調節した。最終溶液を対流オーブン中50℃で28日間熱老化させた。
【0108】
硝酸を使用して、8D-1、8E-1及び8F-1の調合物をpH3.5に調節した。pH3.5硝酸によって固形分1%に希釈することにより、調合物8D-1、8E-1及び8F-1を粒子径に関して計測した。pH4.4硝酸溶液によって固形分1%に希釈することにより、実施例8中の他すべての調合物を粒子径に関して計測した。
【0109】
【0110】
【0111】
【0112】
上記表8Bに示すように、実施例8A、8B、8Cの熱老化結果において、アミノシランDEAMSとHBBAHとの組み合わせが、4.4~4.6のpHで、50℃で28日間の熱老化ののち粒子成長をほとんど示さないスラリーを提供する。比較例8D、8E及び8Fに示すように、好ましい140nM/m2よりも少ないアミノシランを有する組成物は、全カチオン性窒素/m2が180以上であるが、あまり好ましくない4.5のpHでは安定性試験に合格しない。しかし、実施例8D-1、8E-1及び8F-1において、3.5のpHで、アミノシランのシリカ1m2あたり100nM未満のカチオン性窒素原子しか有しない組成物においてさえ、1000ppmを超えるHBBAHの添加は、スラリーBの小ささ(25nm)及びスラリーCの大きさ(75nm)の粒子を有する水性シリカスラリー組成物のための熱老化安定性を可能にする。
【0113】
実施例9:安定性に対するpHの効果
混合した後の水性シリカスラリー調合物が以下の表9Aに掲載されている。脱イオン水をスラリーAと混合した。硝酸を使用して溶液のpHを4.25に低下させた。この混合物に、硝酸を使用してpH4.25に調節したDEAMSモノマー3.7%w/wである加水分解DEAMS溶液を加えた。DEAMSとシリカとの30分間の反応ののち、KOH及び/又は硝酸を使用してpHを4.2に再調節した。次いで、以下の表9Aに示すように、4.25にpH調節したスラリーB又はそのままのスラリーCの24%w/w溶液を加えた。任意選択で、二回目のDEAMS溶液の添加を実施した。さらに30分後、ビス酢酸HBBAH(pH4.4の原液から)を加え、pHを硝酸によって以下の表9Aに掲載されるように調節した。最終溶液を対流オーブン中45℃で28日間熱老化させた。
【0114】
【0115】
【0116】
【0117】
上記表9Bに示すように、本発明組成物は3~5のpH範囲で安定なままである。