(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-22
(45)【発行日】2022-03-30
(54)【発明の名称】変速操作装置
(51)【国際特許分類】
B60K 20/02 20060101AFI20220323BHJP
【FI】
B60K20/02 A
B60K20/02 G
(21)【出願番号】P 2017224884
(22)【出願日】2017-11-22
【審査請求日】2020-11-04
(73)【特許権者】
【識別番号】391064005
【氏名又は名称】株式会社アツミテック
(74)【代理人】
【識別番号】100095614
【氏名又は名称】越川 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 貴之
(72)【発明者】
【氏名】石津 陽通
(72)【発明者】
【氏名】石上 理香子
(72)【発明者】
【氏名】村松 佑亮
【審査官】増岡 亘
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-264680(JP,A)
【文献】特開2013-18327(JP,A)
【文献】特開2000-318476(JP,A)
【文献】実開平5-54863(JP,U)
【文献】特開平7-257324(JP,A)
【文献】特開2005-199991(JP,A)
【文献】特開昭59-6161(JP,A)
【文献】特開2008-184079(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第1920966(EP,A1)
【文献】独国特許出願公開第10122164(DE,A1)
【文献】独国特許出願公開第102006025563(DE,A1)
【文献】特開平6-81930(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0204718(US,A1)
【文献】国際公開第2017/200535(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 20/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転者が把持可能な把持部が先端に形成されるとともに、運転者による操作に伴って回動軸を中心に回動可能なシフトレバーと、
前記回動軸を覆った状態で組み付けられるとともに、前記シフトレバーを挿通して回動操作可能とし得る開口部が形成されたカバー部材と、
を具備し、当該シフトレバーの回動に応じて車両の変速機を操作し得る変速操作装置において、
前記シフトレバーは、前記回動軸を中心とした円弧と略同一の曲率で湾曲して延設されるとともに、運転者による回動操作が可能な操作位置と、前記把持部を前記カバー部材の所定位置に収納させる収納位置との間で回動可能とされ、且つ、前記カバー部材の前記開口部の周囲に前記把持部を収容し得る収納凹部が形成され、前記シフトレバーが前記収納位置にあるとき、前記把持部が前記収納凹部に収納した状態とされる
構成を具備し、前記シフトレバーは、前記操作位置において前記回動軸を中心とした円弧に沿って回動し、回動位置に応じて変速機の操作が可能とされるとともに、当該操作位置及び前記収納位置が前記回動軸を中心とした同一円弧上にあることを特徴とする変速操作装置。
【請求項2】
前記シフトレバーは、車両の駆動源を始動させる操作が行われたことを条件として、前記収納位置にある前記シフトレバーを前記操作位置まで回動可能とされるとともに、車両の駆動源を停止させる操作が行われたことを条件として、前記操作位置にある前記シフトレバーを前記収納位置に回動可能とされたことを特徴とする請求項1記載の変速操作装置。
【請求項3】
前記変速機から延設された操作ワイヤが所定部位に接続され、前記シフトレバーの回動動作を当該操作ワイヤに伝達して前記変速機を操作可能な伝達手段を具備するとともに、前記伝達手段による前記操作ワイヤに対する回動動作の伝達が行われない状態で前記シフトレバーの回動が可能とされたことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の変速操作装置。
【請求項4】
前記伝達手段による前記操作ワイヤに対する回動動作の伝達が行われない状態で前記シフトレバーを回動させ得る駆動手段を具備したことを特徴とする請求項3記載の変速操作装置。
【請求項5】
前記駆動手段は、通電により作動するアクチュエータと、該アクチュエータの作動により前記シフトレバーを回動させ得るギヤ機構とを有することを特徴とする請求項4記載の変速操作装置。
【請求項6】
前記伝達手段による前記操作ワイヤに対する回動動作の伝達が行われない状態で前記シフトレバーを運転者が任意位置まで回動可能とされたことを特徴とする請求項3~5の何れか1つに記載の変速操作装置。
【請求項7】
前記伝達手段による前記操作ワイヤに対する回動動作の伝達が行われない状態とし得るロック手段を具備したことを特徴とする請求項3~6の何れか1つに記載の変速操作装置。
【請求項8】
前記伝達手段は、前記シフトレバーの回動と連動して当該シフトレバーの回動力を前記操作ワイヤに伝達可能な中間ギア部材を有するとともに、前記ロック手段は、当該中間ギア部材を係止してロック可能とされたことを特徴とする請求項7記載の変速操作装置。
【請求項9】
前記ロック手段は、通電により作動ピンを進退させ得る電磁ソレノイドと、前記中間ギア部材に形成され、前記電磁ソレノイドの作動ピンと係合し得る被係合部とを有して構成されたことを特徴とする請求項8記載の変速操作装置。
【請求項10】
請求項1~9の何れか1つに記載の変速操作装置を備えることを特徴とする自動車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シフトレバーの回動に応じて車両の変速機を操作し得る変速操作装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両における変速機(トランスミッション)の操作を行う変速操作装置は、通常、把持部が先端に形成されたシフトレバーを有しており、運転者が把持部を把持しつつシフトレバーを所望位置まで回動させることにより、変速機の変速段を所望に操作可能とされている。また、従来の変速操作装置は、例えば特許文献1にて開示されているように、ブラケットに回動軸が取り付けられており、直線状に延設されたシフトレバーが当該回動軸を中心として回動し得るようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術においては、直線状に延設されたシフトレバーが回動軸を中心として回動する構成とされているので、シフトレバーを挿通する開口部が形成されたエスカッション等のカバー部材において、シフトレバーの回動範囲に亘って当該開口部を大きく形成する必要があった。このように、車室空間に臨んだカバー部材に開口部が大きく形成されると、その部分がデッドスペースとなってしまい、車室内における収納スペース等として有効利用を図る上で支障になる場合がある。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、シフトレバーの回動を安定且つ円滑に行わせることができるとともに、カバー部材の開口部を小さくして車室空間の有効利用を図り易くすることができる変速操作装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明は、運転者が把持可能な把持部が先端に形成されるとともに、運転者による操作に伴って回動軸を中心に回動可能なシフトレバーと、前記回動軸を覆った状態で組み付けられるとともに、前記シフトレバーを挿通して回動操作可能とし得る開口部が形成されたカバー部材とを具備し、当該シフトレバーの回動に応じて車両の変速機を操作し得る変速操作装置において、前記シフトレバーは、前記回動軸を中心とした円弧と略同一の曲率で湾曲して延設されるとともに、運転者による回動操作が可能な操作位置と、前記把持部を前記カバー部材の所定位置に収納させる収納位置との間で回動可能とされ、且つ、前記カバー部材の前記開口部の周囲に前記把持部を収容し得る収納凹部が形成され、前記シフトレバーが前記収納位置にあるとき、前記把持部が前記収納凹部に収納した状態とされる構成を具備し、前記シフトレバーは、前記操作位置において前記回動軸を中心とした円弧に沿って回動し、回動位置に応じて変速機の操作が可能とされるとともに、当該操作位置及び前記収納位置が前記回動軸を中心とした同一円弧上にあることを特徴とする。
【0008】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の変速操作装置において、前記シフトレバーは、車両の駆動源を始動させる操作が行われたことを条件として、前記収納位置にある前記シフトレバーを前記操作位置まで回動可能とされるとともに、車両の駆動源を停止させる操作が行われたことを条件として、前記操作位置にある前記シフトレバーを前記収納位置に回動可能とされたことを特徴とする。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項1又は請求項2記載の変速操作装置において、前記変速機から延設された操作ワイヤが所定部位に接続され、前記シフトレバーの回動動作を当該操作ワイヤに伝達して前記変速機を操作可能な伝達手段を具備するとともに、前記伝達手段による前記操作ワイヤに対する回動動作の伝達が行われない状態で前記シフトレバーの回動が可能とされたことを特徴とする。
【0011】
請求項4記載の発明は、請求項3記載の変速操作装置において、前記伝達手段による前記操作ワイヤに対する回動動作の伝達が行われない状態で前記シフトレバーを回動させ得る駆動手段を具備したことを特徴とする。
【0012】
請求項5記載の発明は、請求項4記載の変速操作装置において、前記駆動手段は、通電により作動するアクチュエータと、該アクチュエータの作動により前記シフトレバーを回動させ得るギヤ機構とを有することを特徴とする。
【0013】
請求項6記載の発明は、請求項3~5の何れか1つに記載の変速操作装置において、前記伝達手段による前記操作ワイヤに対する回動動作の伝達が行われない状態で前記シフトレバーを運転者が任意位置まで回動可能とされたことを特徴とする。
【0014】
請求項7記載の発明は、請求項3~6の何れか1つに記載の変速操作装置において、前記伝達手段による前記操作ワイヤに対する回動動作の伝達が行われない状態とし得るロック手段を具備したことを特徴とする。
【0015】
請求項8記載の発明は、請求項7記載の変速操作装置において、前記伝達手段は、前記シフトレバーの回動と連動して当該シフトレバーの回動力を前記操作ワイヤに伝達可能な中間ギア部材を有するとともに、前記ロック手段は、当該中間ギア部材を係止してロック可能とされたことを特徴とする。
【0016】
請求項9記載の発明は、請求項8記載の変速操作装置において、前記ロック手段は、通電により作動ピンを進退させ得る電磁ソレノイドと、前記中間ギア部材に形成され、前記電磁ソレノイドの作動ピンと係合し得る被係合部とを有して構成されたことを特徴とする。
【0017】
請求項10記載の発明は、請求項1~9の何れか1つに記載の変速操作装置を備える自動車であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
請求項1の発明によれば、シフトレバーは、回動軸を中心とした円弧と略同一の曲率で湾曲して延設されたので、シフトレバーの回動を安定且つ円滑に行わせることができるとともに、カバー部材の開口部を小さくして車室空間の有効利用を図り易くすることができる。
【0019】
また、シフトレバーは、運転者による回動操作が可能な操作位置と、把持部をカバー部材の所定位置に収納させる収納位置との間で回動可能とされたので、シフトレバーの操作が必要とされないときにシフトレバーを収納位置とし、シフトレバーの操作が必要とされるときにシフトレバーを操作位置とすることができ、車室空間の有効利用を図りつつシフトレバーの操作性を維持することができる。
さらに、カバー部材は、把持部を収納し得る収納凹部が形成されるとともに、シフトレバーが収納位置にあるとき、把持部が収納凹部に収納した状態とされるので、収納位置にある把持部が車室空間側に大きく突出してしまうのを回避して、車室空間の有効利用をより図り易くすることができるとともに、シフトレバーの把持部が収納凹部内に位置するため、第三者による不正な操作を抑制することができる。
【0020】
請求項2の発明によれば、シフトレバーは、車両の駆動源を始動させる操作が行われたことを条件として、収納位置にあるシフトレバーを操作位置まで回動可能とされるとともに、車両の駆動源を停止させる操作が行われたことを条件として、操作位置にあるシフトレバーを収納位置に回動可能とされたので、車両の非走行時にシフトレバーを収納位置とし、車両の走行時にシフトレバーを操作位置とすることができ、車両の走行時における車室空間の有効利用を図り易くしつつ走行時のシフトレバーの操作性を維持することができる。
【0022】
請求項3の発明によれば、変速機から延設された操作ワイヤが所定部位に接続され、シフトレバーの回動動作を当該操作ワイヤに伝達して変速機を操作可能な伝達手段を具備するとともに、伝達手段による操作ワイヤに対する回動動作の伝達が行われない状態でシフトレバーの回動が可能とされたので、操作ワイヤによる変速機の操作を伴わずにシフトレバーの位置を任意に変更することができる。
【0023】
請求項4の発明によれば、伝達手段による操作ワイヤに対する回動動作の伝達が行われない状態でシフトレバーを回動させ得る駆動手段を具備したので、操作ワイヤによる変速機の操作を伴わずにシフトレバーの位置を自動的に変更することができる。
【0024】
請求項5の発明によれば、駆動手段は、通電により作動するアクチュエータと、該アクチュエータの作動によりシフトレバーを回動させ得るギヤ機構とを有するので、操作ワイヤによる変速機の操作を伴わずにシフトレバーの位置を自動的且つ円滑に変更することができる。
【0025】
請求項6の発明によれば、伝達手段による操作ワイヤに対する回動動作の伝達が行われない状態でシフトレバーを運転者が任意位置まで回動可能とされたので、運転者の体格や運転時の姿勢に応じてシフトレバーの位置を任意に変更することができる。
【0026】
請求項7の発明によれば、伝達手段による操作ワイヤに対する回動動作の伝達が行われない状態とし得るロック手段を具備したので、シフトレバーを回動させる際に操作ワイヤによる変速機に対する操作が行われてしまうのを確実に回避することができる。
【0027】
請求項8の発明によれば、伝達手段は、シフトレバーの回動と連動して当該シフトレバーの回動力を操作ワイヤに伝達可能な中間ギア部材を有するとともに、ロック手段は、当該中間ギア部材を係止してロック可能とされたので、シフトレバーを回動させる際に操作ワイヤによる変速機に対する操作が行われてしまうのをより確実且つ容易に回避することができる。
【0028】
請求項9の発明によれば、ロック手段は、通電により作動ピンを進退させ得る電磁ソレノイドと、中間ギア部材に形成され、電磁ソレノイドの作動ピンと係合し得る被係合部とを有して構成されたので、シフトレバーが意図せず不用意に回動してしまうのを防止するための安全機構としてのシフトロック機構と兼用させることができる。
【0029】
請求項10の発明によれば、請求項1~9の発明の効果を奏し得る自動車を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明の実施形態に係る変速操作装置を示す左側面図、正面図及び右側面図
【
図4】同変速操作装置(ケースCを取り外した状態)におけるシフトレバーが操作位置にある状態を示す左側面図
【
図5】同変速操作装置(ケースCを取り外した状態)におけるシフトレバーが操作位置から回動操作された状態を示す左側面図
【
図6】同変速操作装置(ケースCを取り外した状態)におけるシフトレバーが収納位置にある状態を示す左側面図
【
図8】同変速操作装置のシフトレバーを示す(a)側面図及び正面図、(b)斜視図
【
図9】同変速操作装置の伝達手段を構成する従動部材を示す側面図及び正面図
【
図10】同変速操作装置の伝達手段を構成する中間ギア部材を示す側面図及び正面図
【
図11】同中間ギア部材の(a)ロック状態及び(b)アンロック状態を示す模式図
【
図12】同変速操作装置の伝達手段を構成する摺動部材を示す側面図及び正面図
【
図13】同変速操作装置の伝達手段の組み付け状態を示す斜視図
【
図14】本発明の他の変速操作装置(SBW)における摺動部材及び検出センサを示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら具体的に説明する。
本実施形態に係る変速操作装置は、自動車等の車両の運転席近傍に取り付けられるもので、
図1~7に示すように、シフトレバー1と、カバー部材2と、伝達手段3と、ブラケットBと、ケースCとを有して構成され、シフトレバー1の回動操作に伴って操作ワイヤWを動作させることにより車両が搭載する変速機(トランスミッション)を任意に操作し得るものである。また、本実施形態に係る変速操作装置は、自動車に取り付けられている。自動車とは、乗用車の他、バス、トラック又は重機等の大型車両も含む。
【0032】
シフトレバー1は、運転者が把持可能な把持部Nが先端に形成されるとともに、運転者による操作に伴って回動軸Lを中心に回動可能なもので、本実施形態においては、
図8に示すように、把持部Nが取り付けられる先端部1aと、回動軸Lにて回動自在に支持された基端部1bとを連結して構成されている。そして、運転者が把持部Nを把持しつつ回動軸Lを中心にシフトレバー1を回動操作すると、例えばPレンジ、Dレンジ及びRレンジ等の位置に至り、その回動位置に応じた変速機の操作が可能とされている。
【0033】
ブラケットBは、車両の所定位置に固定可能な金属製部品から成るもので、
図2に示すように、本変速操作装置を構成する各種部品を覆うためのケースCが取り付けられている。かかるケースCには、シフトレバー1の回動軸L、中間ギア部材5の回転軸R等が配設されるとともに、シフトレバー1の回動と連動して操作ワイヤWを動作させ得る伝達手段3が取り付けられている。
【0034】
伝達手段3は、変速機から延設された操作ワイヤWが所定部位(摺動部材6の接続部6b)に接続され、シフトレバー1の回動動作を当該操作ワイヤWに伝達して変速機を操作可能なもので、ブラケットBにおけるケースC内に組み付けられたギア群から成る。本実施形態に係る伝達手段3は、従動部材4と、中間ギア部材5と、摺動部材6とを有して構成されている。
【0035】
従動部材4は、
図9に示すように、略扇形の成形部品から成り、回転軸Lを挿通し得る挿通孔4aと、周方向に対して所定範囲に亘って形成されたギア部4bと、ウォームホイール7を嵌入可能な嵌入部4cとを有している。また、ウォームホイール7は、全周方向に亘ってギアが形成されるとともに、
図13に示すように、嵌入部4cに嵌入された状態において従動部材4と一体化されるよう構成されている。
【0036】
一方、シフトレバー1の基端部1bには、
図8に示すように、モータMが取り付けられており、そのモータMの出力軸がウォームギア8と連結されている。かかるウォームギア8は、外周面にギアが形成されるとともに、回動軸Lにシフトレバー1が組み付けられた状態において、
図13に示すように、ウォームギア8のギアがウォームホイール7のギアと噛み合うように設定されている。
【0037】
しかして、シフトレバー1側に取り付けられたウォームギア8と伝達手段3側に取り付けられたウォームホイール7とが噛み合っているため、運転者が把持部Nを把持しつつ回動軸Lを中心としてシフトレバー1を回動操作すると、その回動と連動して従動部材4も回動軸Lを中心として回転し得るようになっている。
【0038】
中間ギア部材5は、シフトレバー1の回動と連動して当該シフトレバー1の回動力を摺動部材6を介して操作ワイヤWに伝達可能な略円板状部材から成り、
図10に示すように、その一方の面には、大径の第1ギア部5aと、小径の第2ギア部5bとが段状に一体形成されている。また、中間ギア部材5は、その中心位置に回転軸Rを挿通し得る挿通孔5cが形成されており、当該回転軸Rを中心に回転可能とされている。そして、回転軸Rにて支持された状態で中間ギア部材5がブラケットBに対して組み付けられると、
図13に示すように、第1ギア部5aのギアが従動部材4のギア部4bと噛み合うように設定されている。
【0039】
摺動部材6は、
図12に示すように、ブラケットBに取り付けられ、長手方向に摺動可能な矩形状部材から成り、その上面において直線状にギア部6aが形成されるとともに、他の部位に操作ワイヤWの先端部Wa(
図4~6、13参照)を接続可能な接続部6bが形成されている。そして、摺動部材6がブラケットBに取り付けられると、
図13に示すように、ギア部6aが中間ギア部材5の第2ギア部5bと噛み合うように設定されている。
【0040】
しかして、運転者が把持部Nを把持しつつ回動軸Lを中心としてシフトレバー1を回動操作すると、既述のように、ウォームホイール7と共に従動部材4が回転するとともに、その回転力が伝達手段3を構成する他の部材のギアの噛み合いによって伝達され、中間ギア部材5を回転させつつ摺動部材6を摺動させるようになっている。かかる摺動部材6の摺動動作によって、操作ワイヤWが押し引きされ、当該操作ワイヤWを介して変速機の操作が行われることとなる。
【0041】
カバー部材2は、回動軸Lを覆った状態で車両に組み付けられるとともに、
図4~6及び
図7に示すように、シフトレバー1を挿通して回動操作可能とし得る開口部Hが形成されたパネル状部材から成る。すなわち、カバー部材2は、ブラケットB及びケースCに組み付けられた構成部品を覆うとともに、開口部Hを介してシフトレバー1の先端側を車室側に突出させた状態とするパネル(例えば、変速操作装置の上部を覆うエスカッションや変速操作装置を覆うインパネ等)から成る。
【0042】
ここで、本実施形態に係るシフトレバー1は、
図1に示すように、回動軸Lを中心とした円弧Dと略同一の曲率で湾曲して延設されており、
図4~6に示すように、カバー部材2の開口部Hに挿通された状態にて組み付けられている。より具体的には、本実施形態においては、シフトレバー1が回動する際、開口部Hを通過する範囲(
図4~6で示す範囲)にシフトレバー1の先端部1aが取り付けられており、少なくとも当該先端部1aが回動軸Lを中心とした円弧Dと略同一の曲率で湾曲して形成されているのである。
【0043】
また、本実施形態に係るシフトレバー1は、運転者による回動操作が可能な操作位置(
図4、5参照)と、把持部Nをカバー部材2の所定位置に収納させる収納位置(
図6参照)との間で回動可能とされている。具体的には、シフトレバー1は、車両の駆動源を始動させる操作(例えば、イグニッションスイッチやスタートボタンの操作により駆動源を始動させる操作)が行われたことを条件として、収納位置(
図6参照)にあるシフトレバー1を操作位置(
図4参照)まで回動可能とされるとともに、車両の駆動源を停止させる操作(例えば、イグニッションスイッチやスタートボタンの操作により駆動源を停止させる操作)が行われたことを条件として、操作位置(
図4参照)にあるシフトレバー1を収納位置(
図6参照)に回動可能とされている。
【0044】
さらに、本実施形態に係るカバー部材2は、
図7に示すように、開口部Hの周囲において把持部Nを収納し得る収納凹部2aが形成されるとともに、
図6に示すように、シフトレバー1が収納位置にあるとき、把持部Nが収納凹部2aに収納した状態とされるよう構成されている。すなわち、車両の駆動源を停止させる操作が行われると、シフトレバー1が操作位置から収納位置まで回動し、把持部Nが収納凹部2aに収納されるよう設定されているのである。これにより、シフトレバー1が収納位置にあるとき、把持部Nが収納凹部2aに収納されて車室側への突出量が小さくなるとともに、第三者が不正に把持部Nを把持してシフトレバー1を操作してしまうのを抑制することができる。
【0045】
またさらに、本実施形態においては、伝達手段3による操作ワイヤWに対する回動動作の伝達が行われない状態とし得るロック手段を具備している。かかるロック手段は、
図11に示すように、通電により作動ピン9aを進退させ得る電磁ソレノイド9と、中間ギア部材5に形成され、電磁ソレノイド9の作動ピン9aと係合し得る被係合部(凹部h1)とを有して構成されている。
【0046】
すなわち、本実施形態に係る中間ギア部材5は、
図10に示すように、その一方の面において凹部(h1~h3)が周方向に並んで形成されるとともに、これら凹部(h1~h3)のうち本発明の被係合部を構成する凹部h1には、
図11に示すように、ケースCに組み付けられた電磁ソレノイド9の作動ピン9aが嵌入可能とされている。そして、作動ピン9aが突出状態にあると、
図11(a)に示すように、当該作動ピン9aが凹部h1に嵌入して中間ギア部材5を係止するとともに、当該作動ピン9aが後退すると、同図(b)に示すように、作動ピン9aが凹部h1から離脱して中間ギア部材5の係止が解除されるようになっている。
【0047】
しかして、シフトレバー1がPレンジの位置(例えば
図4で示す操作位置)にあるとき、電磁ソレノイド9の作動ピン9aが凹部h1に嵌入して中間ギア部材5を係止することにより、当該中間ギア部材5をロックすることができ、シフトレバー1を回動操作しようとしても伝達手段3による操作ワイヤWに対する回動動作の伝達が行われない状態とすることができる。
【0048】
また、本実施形態に係る電磁ソレノイド9は、シフトレバー1の把持部Nに形成された操作手段T(
図1、2参照)を操作することにより作動して、突出状態にある作動ピン9aを後退させ得るよう構成されている。例えばシフトレバー1がPレンジの位置(
図4で示す操作位置)にあるとき、
図11(a)で示すように、作動ピン9aが凹部h1に嵌入して中間ギア部材5が係止された状態とされるとともに、操作手段Tを操作すると、同図(b)で示すように、作動ピン9aが凹部h1から離脱して中間ギア部材5に対する係止が解かれるので、例えばシフトレバー1をPレンジからRレンジまで回動操作可能とされている。
【0049】
なお、シフトレバー1がRレンジまで回動すると、中間ギア部材5が回転し、凹部h2、h3が順次、電磁ソレノイド9の作動ピン9aと対向する位置となるよう設定されているので、これら凹部h2、h3に作動ピン9aを嵌入させることにより中間ギア部材5の回転を規制することができ、シフトレバー1の位置(Pレンジ、Rレンジ又はDレンジ等)に応じて回動操作を制限することができる。
【0050】
さらに、本実施形態においては、電磁ソレノイド9及び被係合部(凹部h1)にて構成されるロック手段によって、伝達手段3による操作ワイヤWに対する回動動作の伝達が行われない状態とされるとともに、そのロック状態において、シフトレバー1を回動させ得る駆動手段を具備している。かかる駆動手段は、通電により作動するアクチュエータ(本実施形態においては、シフトレバー1の基端部1bに配設されたモータM)と、該アクチュエータ(モータM)の作動によりシフトレバー1を回動させ得るギヤ機構(本実施形態においては、モータMの出力軸に形成されたウォームギア8)とを有している。
【0051】
すなわち、電磁ソレノイド9等を有するロック手段により、中間ギア部材5を係止して伝達手段3をロックした状態において、モータMを駆動してウォームギア8を回転させると、従動部材4の回転が規制されていることから、シフトレバー1が回動軸Lを中心として回動することとなる。これにより、伝達手段3による操作ワイヤWに対する回動動作の伝達が行われない状態において、モータMを駆動させることによりシフトレバー1を回動させることができるのである。
【0052】
特に、本実施形態においては、シフトレバー1が収納位置にあるとき、電磁ソレノイド9及び被係合部(凹部h1)にて構成されるロック手段にてロックが行われることにより、伝達手段3による操作ワイヤWに対する回動動作の伝達が行われない状態とされ、その状態においてモータMを駆動(正転駆動)させることにより、シフトレバー1を操作位置(
図4の位置)まで回動させ得るようになっている。これにより、車両の駆動源を始動させる操作(例えば、イグニッションスイッチやスタートボタンの操作により駆動源を始動させる操作)が行われたことを条件として、収納位置(
図6参照)にあるシフトレバー1を操作位置(
図4参照)まで自動的に回動させることができるとともに、その回動時においては、操作ワイヤWに対する回動動作の伝達が行われないようになっている。なお、シフトレバー1が収納位置から操作位置まで回動すると、操作手段Tの操作によるロック手段の解除が可能とされるとともにモータMが停止するよう制御されており、シフトレバー1の回動操作に応じて操作ワイヤWが動作して変速機の操作が可能とされている。
【0053】
また、本実施形態においては、シフトレバー1が操作位置(
図4)にあるとき、電磁ソレノイド9及び被係合部(凹部h1)にて構成されるロック手段にてロックが行われることにより、伝達手段3による操作ワイヤWに対する回動動作の伝達が行われない状態とされ、その状態においてモータMを駆動(正転駆動)させることにより、シフトレバー1を操作位置(
図4の位置)まで回動させ得るようになっている。これにより、車両の駆動源を停止させる操作(例えば、イグニッションスイッチやスタートボタンの操作により駆動源を停止させる操作)が行われたことを条件として、操作位置(
図4参照)にあるシフトレバー1を収納位置(
図6参照)に自動的に回動させることができるとともに、その回動時においては、操作ワイヤWに対する回動動作の伝達が行われないようになっている。
【0054】
加えて、本実施形態においては、伝達手段3による操作ワイヤWに対する回動動作の伝達が行われない状態でシフトレバー1を運転者が任意位置まで回動可能とされている。具体的には、電磁ソレノイド9及び被係合部(凹部h1)にて構成されるロック手段にてロックが行われることにより、伝達手段3による操作ワイヤWに対する回動動作の伝達が行われない状態とされ、その状態においてモータMを運転者が任意に駆動(正転駆動又は逆転駆動)させることにより、運転者の体格や姿勢に応じてシフトレバー1を任意位置に回動させることができるようになっている。
【0055】
本実施形態によれば、シフトレバー1は、回動軸Lを中心とした円弧Dと略同一の曲率で湾曲して延設されたので、シフトレバー1の回動を安定且つ円滑に行わせることができるとともに、カバー部材2の開口部Hを小さくして車室空間の有効利用を図り易くすることができる。また、シフトレバー1が回動軸Lを中心とした円弧Dと略同一の曲率で湾曲して延設されることにより、シフトレバー1の車室空間側への突出量を抑制しつつ円滑な回動操作を可能にすることができる。
【0056】
さらに、本実施形態に係るシフトレバー1は、運転者による回動操作が可能な操作位置と、把持部Nをカバー部材2の所定位置に収納させる収納位置との間で回動可能とされたので、シフトレバー1の操作が必要とされないときにシフトレバー1を収納位置とし、シフトレバー1の操作が必要とされるときにシフトレバー1を操作位置とすることができ、車室空間の有効利用を図りつつシフトレバー1の操作性を維持することができる。
【0057】
またさらに、本実施形態に係るシフトレバー1は、車両の駆動源を始動させる操作が行われたことを条件として、収納位置にあるシフトレバー1を操作位置まで回動可能とされるとともに、車両の駆動源を停止させる操作が行われたことを条件として、操作位置にあるシフトレバー1を収納位置に回動可能とされたので、車両の非走行時にシフトレバー1を収納位置とし、車両の走行時にシフトレバー1を操作位置とすることができ、車両の走行時における車室空間の有効利用を図り易くしつつ走行時のシフトレバー1の操作性を維持することができる。
【0058】
加えて、本実施形態に係るカバー部材2は、把持部Nを収納し得る収納凹部2aが形成されるとともに、シフトレバー1が収納位置にあるとき、把持部Nが収納凹部2aに収納した状態とされるので、収納位置にある把持部Nが車室空間側に大きく突出してしまうのを回避して、車室空間の有効利用をより図り易くすることができるとともに、シフトレバー1が収納位置にある状態における第三者による不正な操作を抑制することができる。
【0059】
また、本実施形態によれば、変速機から延設された操作ワイヤWが所定部位に接続され、シフトレバー1の回動動作を当該操作ワイヤWに伝達して変速機を操作可能な伝達手段3を具備するとともに、伝達手段3による操作ワイヤWに対する回動動作の伝達が行われない状態でシフトレバー1の回動が可能とされたので、操作ワイヤWによる変速機の操作を伴わずにシフトレバー1の位置を任意に変更することができる。
【0060】
さらに、本実施形態によれば、伝達手段3による操作ワイヤWに対する回動動作の伝達が行われない状態でシフトレバー1を回動させ得る駆動手段(モータM等)を具備したので、操作ワイヤWによる変速機の操作を伴わずにシフトレバー1の位置を自動的に変更することができる。特に、本実施形態に係る駆動手段は、通電により作動するアクチュエータ(モータM)と、該アクチュエータ(モータM)の作動によりシフトレバー1を回動させ得るギヤ機構(ウォームギア8)とを有するので、操作ワイヤWによる変速機の操作を伴わずにシフトレバー1の位置を自動的且つ円滑に変更することができる。また、伝達手段3による操作ワイヤWに対する回動動作の伝達が行われない状態でシフトレバー1を運転者が任意位置まで回動可能とされたので、運転者の体格や運転時の姿勢に応じてシフトレバー1の位置を任意に変更することができる。
【0061】
さらに、本実施形態によれば、伝達手段3による操作ワイヤWに対する回動動作の伝達が行われない状態とし得るロック手段(電磁ソレノイド9等)を具備したので、シフトレバー1を回動させる際に操作ワイヤWによる変速機に対する操作が行われてしまうのを確実に回避することができる。また、本実施形態に係る伝達手段3は、シフトレバー1の回動と連動して当該シフトレバー1の回動力を操作ワイヤWに伝達可能な中間ギア部材5を有するとともに、ロック手段は、当該中間ギア部材5を係止してロック可能とされたので、シフトレバー1を回動させる際に操作ワイヤWによる変速機に対する操作が行われてしまうのをより確実且つ容易に回避することができる。
【0062】
特に、本実施形態に係るロック手段は、通電により作動ピン9aを進退させ得る電磁ソレノイド9と、中間ギア部材5に形成され、電磁ソレノイド9の作動ピン9aと係合し得る被係合部(凹部h1)とを有して構成されたので、シフトレバー1が意図せず不用意に回動してしまうのを防止するための安全機構としてのシフトロック機構と兼用させることができる。また、本実施形態に係る変速操作装置は、自動車に取り付けられるため、上記効果を奏する自動車を提供することができる。
【0063】
以上、本実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されず、例えばシフトレバー1の収納位置がないもの(
図4の状態と
図5の状態の間のみ回動するもの)、シフトレバー1が収納位置にあるとき、把持部Nを収納する収納凹部2aを有さないカバー部材2を具備したもの、操作位置と収納位置との間を手動にて回動操作可能なシフトレバー1を具備したもの、シフトレバー1の回動動作を伝達する伝達手段3とは異なる他の構成を具備したもの等としてもよい。特に、伝達手段3による操作ワイヤWに対する回動動作の伝達が行われない状態でシフトレバー1を回動させ得る駆動手段として、本実施形態においては、モータM及びウォームギア8を用いているが、他の駆動手段或いは駆動機構等を用いるようにしてもよい。
【0064】
また、本実施形態に係る変速操作装置においては、シフトレバー1の回動操作に伴って操作ワイヤWが動作し、変速機を任意に操作し得るものとされているが、これに代えて、操作ワイヤWを具備しないもの(シフト・バイ・ワイヤ:SBW)に適用してもよい。この場合、シフトレバー1の回動軸Lを中心とした回動操作を検知する検知センサやマイクロスイッチを具備し、当該検知センサやマイクロスイッチから車両の変速機に対して電気信号が送信されることにより、シフトレバー1の回動位置に応じた車両の変速機の操作が可能とされる。
【0065】
この場合、例えば、摺動部材6に代え、
図14に示すように、センサ本体6’に対しギア部を有した摺動部材6’aをスライド(同図中矢印方向に対する摺動)させることにより複数のポジションを検知可能なスライドセンサQを設け、シフトレバー1の回動操作を検知し、その信号を配線Qaを介して変速機に送信することにより、シフトレバー1の回動位置に応じた車両の変速機の操作を行うものとするのが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0066】
回動軸を中心とした円弧と略同一の曲率で湾曲して延設されるとともに、運転者による回動操作が可能な操作位置と、把持部をカバー部材の所定位置に収納させる収納位置との間で回動可能とされ、且つ、カバー部材の開口部の周囲に把持部を収容し得る収納凹部が形成され、シフトレバーが収納位置にあるとき、把持部が収納凹部に収納した状態とされる構成を具備し、操作位置において回動軸を中心とした円弧に沿って回動し、回動位置に応じて変速機の操作が可能とされるとともに、当該操作位置及び前記収納位置が回動軸を中心とした同一円弧上にあるシフトレバーを具備した変速操作装置であれば、外観形状が異なるもの或いは他の機能が付加されたもの等にも適用することができる。
【符号の説明】
【0067】
1 シフトレバー
1a 先端部
1b 基端部
2 カバー部材
2a 収納凹部
3 伝達手段
4 従動部材
4a 挿通孔
4b ギア部
4c 嵌入部
5 中間ギア部材
5a 第1ギア部
5b 第2ギア部
5c 挿通孔
6 摺動部材
6a ギア部
6b 接続部
7 ウォームホイール
8 ウォームギア
9 電磁ソレノイド
9a 作動ピン
N 把持部
W 操作ワイヤ
D 円弧
M モータ
B ブラケット
C ケース
L 回動軸
R 回転軸
T 操作手段