(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-22
(45)【発行日】2022-03-30
(54)【発明の名称】アスファルトフィニッシャ
(51)【国際特許分類】
E01C 19/48 20060101AFI20220323BHJP
【FI】
E01C19/48 A
(21)【出願番号】P 2017235317
(22)【出願日】2017-12-07
【審査請求日】2020-11-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000194516
【氏名又は名称】世紀東急工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【氏名又は名称】宮坂 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【氏名又は名称】森 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】110000866
【氏名又は名称】特許業務法人三澤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 暁美
(72)【発明者】
【氏名】草刈 憲嗣
(72)【発明者】
【氏名】曽根田 正義
【審査官】石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-052335(JP,A)
【文献】特開平03-287904(JP,A)
【文献】特開平10-046521(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0362851(US,A1)
【文献】特開2008-063778(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01C 19/00-19/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
進行可能な車体と、
前記車体に設けられ、被施工面を加熱する電気式の加熱装置と、
前記車体に設けられ、前記加熱装置により加熱された前記被施工面にアスファルト混合物を供給するスプレッダと、
前記車体に設けられ、前記スプレッダにより前記被施工面に供給された前記アスファルト混合物を敷均すスクリードと、
前記加熱装置より前記車体の前側に位置付けられて前記車体に設けられ、前記被施工面の温度を測定する第1の温度測定装置と、
前記加熱装置と前記スクリードとの間に位置付けられて前記車体に設けられ、前記加熱装置により加熱された前記被施工面の温度を測定する第2の温度測定装置と、
前記第1の温度測定装置、前記第2の温度測定装置の一方、或いは、両方により測定された前記被施工面の温度に基づき、前記加熱装置に供給する電力を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記第2の温度測定装置によって測定された前記被施工面の温度が目標とする温度よりも高くなる異常加熱温度となった場合に、前記加熱装置による前記被施工面への加熱を停止するよう制御することを特徴とするアスファルトフィニッシャ。
【請求項2】
前記加熱装置は、前記加熱装置における前記車体の進行方向に水平に直交する方向の長さを変えることが可能に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のアスファルトフィニッシャ。
【請求項3】
前記スクリードは、前記スクリードにおける前記車体の進行方向に水平に直交する方向の長さを変えることが可能に形成されており、
前記加熱装置は、前記スクリードにおける前記長さに応じて、前記加熱装置における前記長さを変更することを特徴とする請求項2に記載のアスファルトフィニッシャ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アスファルトフィニッシャに関する。
【背景技術】
【0002】
冬期など気温が低い時期において、基盤の温度が低くなると、基盤上の被施工面に対するアスファルト混合物(アスファルト合材)の接着性(付着性)が低下する。これは、施工不良の原因となる場合がある。例えば、橋梁の舗装では、防水層とアスファルト混合物との接着性が重要視されており、施工不良を防ぐため、施工時の防水層の上面温度(被施工面の温度)を80℃以上に管理することが求められることがある。
【0003】
通常、橋梁の舗装においては、水の浸透を防止する防水層が施工され、その防水層上にレベリング層(基層)が施工される。レベリング層の施工時、アスファルトフィニッシャは、ダンプなどの運搬車から供給されたアスファルト混合物をホッパにより受け、そのアスファルト混合物をスクリュースプレッダにより基盤上の被施工面となる防水工面(防水層の上面)に撒き広げ、スクリードによって敷均す。
【0004】
ところが、前述の施工後、防水層とレベリング層が剥離することがある。これは、防水層の舗装接着層が未溶融で原形を留め、防水層とレベリング層が付着しないために発生する。この原因の一つとしては、アスファルト混合物の温度が運搬中などに低下し、レベリング層の施工時に所望温度より低くなっていることが挙げられる。また、アスファルト混合物の温度が前述の所望温度以上であっても、防水工面の温度が低温であると、キャビティ(空洞)によって点接着が生じ、防水層とレベリング層との接着性が低下することがある。特に、冬期においては、防水工面の温度に留意する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、被施工面に対するアスファルト混合物の接着性の低下に起因する施工不良の発生を抑えることができるアスファルトフィニッシャを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載のアスファルトフィニッシャは、進行可能な車体と、前記車体に設けられ、被施工面を加熱する電気式の加熱装置と、前記車体に設けられ、前記加熱装置により加熱された前記被施工面にアスファルト混合物を供給するスプレッダと、前記車体に設けられ、前記スプレッダにより前記被施工面に供給された前記アスファルト混合物を敷均すスクリードと、前記加熱装置より前記車体の前側に位置付けられて前記車体に設けられ、前記被施工面の温度を測定する第1の温度測定装置と、前記加熱装置と前記スクリードとの間に位置付けられて前記車体に設けられ、前記加熱装置により加熱された前記被施工面の温度を測定する第2の温度測定装置と、前記第1の温度測定装置、前記第2の温度測定装置の一方、或いは、両方により測定された前記被施工面の温度に基づき、前記加熱装置に供給する電力を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記第2の温度測定装置によって測定された前記被施工面の温度が目標とする温度よりも高くなる異常加熱温度となった場合に、前記加熱装置による前記被施工面への加熱を停止するよう制御することを特徴とする。
【0008】
また、請求項2に記載のアスファルトフィニッシャは、請求項1に記載のアスファルトフィニッシャにおいて、前記加熱装置が、前記加熱装置における前記車体の進行方向に水平に直交する方向の長さを変えることが可能に形成されていることを特徴とする。
【0009】
また、請求項3に記載のアスファルトフィニッシャは、請求項2に記載のアスファルトフィニッシャにおいて、前記スクリードが、前記スクリードにおける前記車体の進行方向に水平に直交する方向の長さを変えることが可能に形成されており、前記加熱装置が、前記スクリードにおける前記長さに応じて、前記加熱装置における前記長さを変更することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るアスファルトフィニッシャによれば、被施工面に対するアスファルト混合物の接着性の低下に起因する施工不良の発生を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施の一形態に係るアスファルトフィニッシャの概略構成を示す側面図である。
【
図2】実施の一形態に係るアスファルトフィニッシャの概略構成を示す正面図である。
【
図3】実施の一形態に係る加熱装置の概略構成を示す底面図である。
【
図4】実施の一形態に係る加熱装置における被施工面に対するヒータ通過時間と被施工面の温度との関係を示すグラフである。
【
図5】実施の一形態に係る制御装置の電気的接続を示すブロック図である。
【
図6】実施の一形態に係るヒーティングの有無と引張強度との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
実施の一形態について図面を参照して説明する。
【0016】
(基本構成)
図1及び
図2に示すように、実施の一形態に係るアスファルトフィニッシャ10は、車体20と、ホッパ30と、コンベア装置40と、スプレッダ50と、スクリード(敷均し機)60と、スクリード昇降装置70と、加熱装置80と、複数の温度測定装置90と、制御装置100とを備えている。
【0017】
車体20は、二対の前輪21及び一対の後輪22を有しており、前進及び後退が可能(前後に進行可能)に形成されている。二対の前輪21は操舵輪であり、車体20の前側の下部に設けられている。また、一対の後輪22は駆動輪であり、車体20の後側の下部に設けられている。なお、車体20の進行方向は
図1中の矢印A1の方向であり、この車体20の進行方向A1に基づいて(進行方向A1を向いた状態で)車体20の前後左右が規定される。
【0018】
ホッパ30は、車体20の前側に設けられており、車体20の幅方向(車体20の進行方向A1に水平に直交する方向)に開閉可能に構成されている。このホッパ30は、全開状態(
図1及び
図2に示す状態)で、ダンプなどの運搬車(図示せず)から投入されるアスファルト混合物(アスファルト合材)を受け入れる。その後、ホッパ30は、投入されたアスファルト混合物が減少すると閉まり、ホッパ30の内壁付近に存在するアスファルト混合物をホッパ30の中央に集める。
【0019】
コンベア装置40は、二本のスクリューコンベア41を備えている。このコンベア装置40は、前方のホッパ30に投入されたアスファルト混合物を各スクリューコンベア41により搬送し、後方のスプレッダ50に供給する。
【0020】
二本のスクリューコンベア41は、それらの延伸方向が車体20の進行方向A1に平行に車体20を前から後に貫通するよう、車体20の内部に設けられている。これらのスクリューコンベア41は、ホッパ30に投入されたアスファルト混合物を車体20の前側から後側に搬送する搬送機構として機能する。なお、コンベア装置40としては、スクリューコンベア装置以外にも、バーフィーダ方式などの他の構成のコンベア装置を用いることが可能である。
【0021】
スプレッダ50は、その延伸方向が車体20の幅方向に平行になるよう、車体20の後端に設けられている。このスプレッダ50は、スプレッダ50における車体20の幅方向と同じ方向の長さ(スプレッダ50の幅)が車体20の幅方向の長さ(車体20の幅)とほぼ同じになるように形成されており、コンベア装置40により供給されたアスファルト混合物を被施工面に所定幅(車体20の幅以上の幅)で撒き広げる。スプレッダ50としては、例えば、スクリュースプレッダを用いることが可能であり、また、そのスクリュースプレッダ以外のスプレッダを用いることも可能である。
【0022】
スクリード60は、スプレッダ50より後方に位置付けられ、その延伸方向が車体20の幅方向に平行になるよう、スクリード昇降装置70により支持されている。このスクリード60は、スクリード60における車体20の幅方向と同じ方向の長さ(スクリード60の幅)を変えることが可能に形成されている。スクリード60は、通常、車体20の幅とほぼ同じ長さになっており、施工を行う場合、車体20の幅よりも長くなり、スプレッダ50により撒き広げられたアスファルト混合物を敷均す。
【0023】
スクリード昇降装置70は、一対のレベリングアーム71、一対のレベリングシリンダ72、一対のスクリードリフトシリンダ73を備えている。このスクリード昇降装置70は、一対のレベリングシリンダ72及び一対のスクリードリフトシリンダ73を用い、スクリード60を支持する一対のレベリングアーム71を昇降させる。
【0024】
レベリングアーム71、レベリングシリンダ72及びスクリードリフトシリンダ73は、それぞれ車体20の左右に設けられている。一対のレベリングアーム71の前端部は、それぞれレベリングシリンダ72を介して車体20に取り付けられている。また、一対のレベリングアーム71の後端部は、それぞれスクリードリフトシリンダ73を介して車体20に取り付けられている。このような一対のレベリングアーム71の後端にスクリード60が連結されている。
【0025】
加熱装置80は、電気エネルギーにより駆動する電気式の加熱装置であり、少なくともスクリード60より車体20の前側に位置付けられて車体20の下面に設けられている。この加熱装置80は、
図1及び
図3に示すように、複数の加熱部81及び移動機構82を有している。
図3に示すように、各加熱部81のうち、二つの加熱部(車体20の幅よりも短い幅の加熱部)81が車体20の幅方向に並べられ、それらの加熱部81より後方に一つの加熱部(車体20の幅とほぼ同じ幅の加熱部)81が配置されている。移動機構82は、車体20の幅方向に並ぶ二つの加熱部81を車体20の幅方向にスライド移動させる機構である。これにより、二つの加熱部81は互いに近づく方向又は遠ざかる方向に移動することが可能になっている。
【0026】
このような加熱装置80は、車体20の幅方向に並ぶ二つの加熱部81を移動機構82により車体20の幅方向に移動させることで、加熱装置80における車体20の幅方向と同じ方向の長さ(加熱装置80の幅)を変えることが可能に形成されている。例えば、加熱装置80は、可変するスクリード60の幅に応じて(合せて)、スクリード60の幅が広くなれば加熱装置80の幅を広げ、スクリード60の幅が狭くなれば加熱装置80の幅を狭くするように、加熱装置80の幅を変更する。
【0027】
加熱部81は、複数の発熱体81a及び支持体81bを有している。各発熱体81aは長方形状に形成されており、支持体81bは枠形状に形成されている。各発熱体81aは支持体81bに取り付けられており、支持体81bは、各発熱体81aの延伸方向が車体20の幅方向に平行になるよう、車体20の下面に取り付けられている。この加熱部81は、各発熱体81aによる発熱によって、加熱部81の下方に位置する被施工面を加熱する。なお、発熱体81aとしては、例えば、遠赤外線ヒータを用いることが可能である。遠赤外線ヒータとしては、セラミックヒータやセラミックパネルヒータ、ハロゲンランプヒータ、石英管ヒータなど、各種のヒータを用いることが可能である。遠赤外線ヒータの容量は1kW以上であることが望ましい。
【0028】
ここで、
図4に示すように、被施工面の温度は、被施工面に対するヒータ通過時間の増加に応じて徐々に上昇し、そのヒータ通過時間が約25秒であるとき50℃となる。このとき、加熱装置80における進行方向A1の全体長さは825cmであり、アスファルトフィニッシャ10の移動速度は2m/min程度、すなわち約33.3cm/sに設定されている。このため、ヒータ通過時間は825/33.3=約25sである。これにより、加熱装置80は、車体20の移動に応じて移動しながら被施工面を加熱し、被施工面の温度を50℃程度まで上昇させることができる。なお、加熱装置80に供給する電力は所定値に設定されている。
【0029】
図1に戻り、温度測定装置90は、車体20の下面に二つ取り付けられており、被施工面の温度を測定する。一方の温度測定装置(第1の温度測定装置)90は、車体20の進行方向A1において加熱装置80より前側に設けられており、加熱装置80による加熱前の被施工面の温度を測定する。他方の温度測定装置(第2の温度測定装置)90は、車体20の進行方向A1において加熱装置80より後側、すなわち、加熱装置80とスクリード60との間に設けられており、加熱装置80による加熱後の被施工面の温度を測定する。なお、温度測定装置90としては、例えば、非接触式や接触式の温度計を用いることが可能であるが、車体20が移動するため、非接触式の温度計を用いることが望ましい。非接触式の温度計としては、例えば、放射温度計を用いることが可能である。
【0030】
制御装置100は、
図5に示すように、本体制御部101及び加熱制御部102を備えている。この制御装置100には、入力部110及び表示部120が電気的に接続されている。また、加熱制御部102には、加熱装置80や各温度測定装置(第1の温度測定装置や第2の温度測定装置)90が電気的に接続されている。なお、
図5には図示していないが、本体制御部101には、ホッパ30やコンベア装置40、スプレッダ50、スクリード60、スクリード昇降装置70などが電気的に接続されている。
【0031】
本体制御部101や加熱制御部102は、各部を集中的に制御するマイクロコンピュータと、処理情報や各種プログラムなどを記憶する記憶部(いずれも図示せず)をそれぞれ有している。本体制御部101は、各種情報や各種プログラムに基づいてホッパ30やコンベア装置40、スプレッダ50、スクリード60、スクリード昇降装置70などを制御する。加熱制御部102は、各種情報(例えば、第1の温度測定装置90や第2の温度測定装置90から送信された測定温度)や各種プログラムに基づいて加熱装置80を制御し、また、第1の温度測定装置90や第2の温度測定装置90から送信された測定温度を受信し、測定温度情報として記憶部に保存する。
【0032】
入力部110は、運転手など作業者からの入力操作を受け付ける操作部である。表示部120は、第1の温度測定装置90や第2の温度測定装置90により測定された測定温度(測定温度情報)を表示する表示器である。作業者は、入力部110を操作して加熱装置80の加熱温度を設定したり、表示部120により表示された各測定温度、すなわち加熱前の被施工面の温度と加熱後の被施工面の温度を確認したりすることが可能である。
【0033】
ここで、例えば、加熱制御部102は、第1の温度測定装置90や第2の温度測定装置90から送信された測定温度(加熱装置80による加熱前後の被施工面の測定温度)に基づいて、被施工面の温度を目標値とするように加熱装置80に供給する電力(加熱装置80への電力供給量)を制御する。これにより、加熱装置80への電力供給量が自動的に適切に調整されるので、被施工面の温度を確実に目標値にすることができる。
【0034】
また、加熱制御部102は、第2の温度測定装置90から送信された測定温度が、前述の目標値よりも高い所定温度である異常加熱温度に到達すると、加熱装置80に加熱を停止させ、異常加熱温度を下回ると、加熱装置80に加熱を再開させる。これにより、被施工面を過剰に加熱することを回避し、被施工面を傷めることを抑制することができる。なお、加熱制御部102は、加熱装置80による加熱の停止後、第2の温度測定装置90から送信された測定温度が異常加熱温度を下回ることに加え、作業者による入力部110のリセットボタンの押下に応じて、加熱装置80に加熱を再開させるようにしても良い。
【0035】
(敷均し工程)
次に、前述のアスファルトフィニッシャ10の敷均し工程の流れについて説明する。
【0036】
まず、施工準備として、アスファルトフィニッシャ10は、スクリード60を所定の施工幅となる長さまで延伸させ、同時に、加熱装置80もスクリード60の幅に合せて、所定の施工幅となる長さまで延伸させる。また、アスファルトフィニッシャ10は、コンベア装置40の各スクリューコンベア41の駆動により、ホッパ30に投入されるアスファルト混合物を搬送可能な状態になっている。この状態で、アスファルト混合物が、アスファルトフィニッシャ10の前方に位置する運搬車の荷台からホッパ30に投入される。投入されたアスファルト混合物は、車体20内のスクリューコンベア41により車体20の前から後に搬送され、車体20の後に位置するスプレッダ50に供給される。そして、そのアスファルト混合物は、スプレッダ50によって被施工面に撒き広げられる。
【0037】
このとき、アスファルトフィニッシャ10はゆっくりと前進しており、スクリード60の前方の被施工面、すなわちアスファルト混合物が供給される被施工面は、車体20の下面に位置する加熱装置80により加熱されている。この加熱された被施工面にアスファルト混合物がスプレッダ50により撒き広げられ、撒き広げられたアスファルト混合物はスクリード60によって敷均される。なお、アスファルト混合物は、加熱装置80により加熱された被施工面上に順次供給され、アスファルトフィニッシャ10の前進に応じて、スクリード60により敷均され、転圧されていく。
【0038】
このような敷均し工程中、アスファルト混合物が供給される被施工面は、車体20の下面に位置する加熱装置80によって加熱される。これにより、被施工面の温度は所望温度(例えば、50℃程度)まで上昇し、その所望温度になった被施工面上にアスファルト混合物が敷均される。これにより、アスファルト混合物の温度が被施工面の温度低下に起因して所定温度より低下することが抑えられるので、アスファルト混合物と被施工面との接着強度が低くなることを抑えることが可能となる。したがって、被施工面に対するアスファルト混合物の接着性の低下に起因する施工不良の発生を抑えることができる。
【0039】
なお、ガスや灯油などを用いて火力により被施工面を加熱することも可能であるが、火力による加熱は、加熱温度を制御することが困難であるため、被施工面を過剰に加熱することがあり、この過加熱により被施工面(基盤)を傷める原因となる。一方、前述のように電気式の加熱装置80によって加熱を行うことで、加熱温度を容易に制御することが可能になるので、被施工面が過剰に加熱されることを回避し、被施工面が傷むことを抑えることができる。その結果、被施工面が傷むことに起因し、被施工面に対するアスファルト混合物の接着性が低下することも抑えることができる。
【0040】
以上説明したように、実施の一形態によれば、被施工面が加熱装置80により加熱され、その加熱された被施工面にアスファルト混合物がスプレッダ50により供給され、さらに、被施工面に供給されたアスファルト混合物がスクリード60により敷均される。このとき、加熱装置80による加熱によって、被施工面の温度は所望温度(例えば、50℃程度)まで上昇し、その所望温度になった被施工面上にアスファルト混合物が敷均される。このように施工時には、被施工面が加熱され、被施工面の温度が上昇するので、アスファルト混合物と被施工面との接着強度が被施工面の温度に応じて低くなることを抑制することが可能となり、その結果、被施工面に対するアスファルト混合物の接着性の低下に起因する施工不良の発生を抑えることができる。また、電気式の加熱装置80によって加熱を行うことで、加熱温度を容易に制御することが可能になるので、加熱により被施工面を適切な温度にすることができ、その結果、被施工面に対するアスファルト混合物の接着性の低下に起因する施工不良の発生を確実に抑えることができる。
【0041】
ここで、例えば、被施工面が防水工面である場合において、
図6に示すように、引張強度(アスファルト混合物と防水工面との引張強度)はヒーティング(加熱)の有無により異なっている。この引張強度を求める試験条件は、水浸ホイールトラッキング試験9時間、低温施工120℃、防水工0℃、締固め度97%、ヒーティング時間25s(ヒーティング温度50℃程度)である。引張強度の規格値は0.6N/mm
2以上である。ヒーティング有無の両方とも、引張強度は規格値を超えているが、ヒーティング有りの引張強度の方は1.0N/mm
2となり、ヒーティング無しの引張強度より0.2N/mm
2だけ高くなっている。したがって、防水工面を施工する直前に加熱することで、アスファルト混合物と防水工面との接着強度を向上させることが可能であることが確認された。
【0042】
<他の実施形態>
前述の実施形態においては、各温度測定装置(第1の温度測定装置や第2の温度測定装置)90から入力された測定温度に基づいて加熱装置80に供給する電力を制御装置100の加熱制御部102により制御することを例示したが、これに限るものではない。例えば、各温度測定装置90から入力された測定温度に加え、あるいは、測定温度に関係なく、所定の加熱条件や施工スピード(車体20の進行速度)などに基づいて、加熱装置80に供給する電力を制御するようにしても良い。また、加熱装置80の加熱部81ごとに、各加熱部81にそれぞれ供給する電力を制御するようにしても良い。
【0043】
ここで、例えば、制御装置100の加熱制御部102は、第1の温度測定装置90から入力された加熱前の測定温度が所定の許容値(例えば、0℃や-10℃など)より低い場合、加熱装置80に供給する電力を上げることが可能である。また、制御装置100の加熱制御部102は、第2の温度測定装置90から入力された加熱後の測定温度が所定の許容範囲以内(例えば、120℃~150℃以内)となるように、加熱装置80に供給する電力を制御することが可能である。このような電力制御としては、例えば、加熱装置80のオンオフを間欠的に切り替えたり、あるいは、電圧値を変更したりする。
【0044】
また、前述の加熱装置80の制御に加え、各温度測定装置90から入力された測定温度に基づいてスクリード60、例えば、スクリード60が有する振動部(一例として、バイブレータ)を制御装置100の本体制御部101により制御することも可能である。例えば、測定温度が所定の許容範囲より低い場合には振動数を所定の振動数より高く、逆に、測定温度が所定の許容範囲より高い場合には、所定の振動数より低くする。
【0045】
また、前述の実施形態においては、加熱装置80を車体20の下面に設けることを例示したが、これに限るものではなく、被施工面の温度を上げることが可能な位置であれば良く、例えば、車体20の側面に設けることも可能である。
【0046】
また、前述の実施形態においては、各温度測定装置90を車体20の下面に設けることを例示したが、これに限るものではなく、被施工面の温度を測定することが可能な位置であれば良く、例えば、車体20の側面に設けることも可能である。
【0047】
また、前述の実施形態においては、三つの加熱部81を設けることを例示したが、これに限るものではなく、その数は限定されるものではない。また、各加熱部81の配置関係も限定されるものではない。
【0048】
また、前述の実施形態においては、加熱部81の各発熱体81aの延伸方向が車体20の幅方向に平行になるように、すなわち車体20の進行方向A1に水平に直交するように加熱部81を設けることを例示したが、これに限るものではない。例えば、各発熱体81aの延伸方向が車体20の進行方向A1に水平に直交するのではなく、単に交わるように加熱部81を設けることも可能であり、また、各発熱体81aの延伸方向が車体20の進行方向A1に平行になるように設けることも可能である。ただし、被施工面の温度を均一に上昇させるためには、各発熱体81aの延伸方向が車体20の進行方向A1に水平に直交するように加熱部81を設けることが望ましい。
【0049】
また、前述の実施形態においては、防水工面(防水層の表面)を被施工面とすることを例示したが(
図6参照)、これに限るものではなく、例えば、防水層以外の他の層の表面や未舗装面などの各種の面を被施工面としても良い。
【0050】
なお、本発明は、前述の実施形態に限るものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能である。例えば、前述の実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除しても良い。さらに、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合わせても良い。
【符号の説明】
【0051】
10 アスファルトフィニッシャ
20 車体
21 前輪
22 後輪
30 ホッパ
40 コンベア装置
41 スクリューコンベア
50 スプレッダ
60 スクリード
70 スクリード昇降装置
71 レベリングアーム
72 レベリングシリンダ
73 スクリードリフトシリンダ
80 加熱装置
81 加熱部
81a 発熱体
81b 支持体
82 移動機構
90 温度測定装置
100 制御装置
101 本体制御部
102 加熱制御部
110 入力部
120 表示部
A1 進行方向