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特許7044549少なくとも2つのクラッチディスクを備えた金属薄板構造のクラッチ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-22
(45)【発行日】2022-03-30
(54)【発明の名称】少なくとも2つのクラッチディスクを備えた金属薄板構造のクラッチ
(51)【国際特許分類】
   F16D 13/70 20060101AFI20220323BHJP
   F16D 13/40 20060101ALI20220323BHJP
   F16D 13/46 20060101ALI20220323BHJP
   F16D 25/10 20060101ALI20220323BHJP
【FI】
F16D13/70 A
F16D13/40
F16D13/46 C
F16D25/10 A
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2017501464
(86)(22)【出願日】2015-03-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2017-04-06
(86)【国際出願番号】 DE2015200153
(87)【国際公開番号】W WO2015144162
(87)【国際公開日】2015-10-01
【審査請求日】2018-03-09
【審判番号】
【審判請求日】2020-12-04
(31)【優先権主張番号】102014205773.6
(32)【優先日】2014-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】515009952
【氏名又は名称】シェフラー テクノロジーズ アー・ゲー ウント コー. カー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】Schaeffler Technologies AG & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Industriestr. 1-3, 91074 Herzogenaurach, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル バウマン
【合議体】
【審判長】間中 耕治
【審判官】中村 大輔
【審判官】尾崎 和寛
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/012542(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/135468(WO,A1)
【文献】特開2000-213556(JP,A)
【文献】特開平9-79286(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102009048277(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 13/70
F16D 21/06
F16D 25/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車用のクラッチ(1)であって、クラッチディスク(18)をプレッシャプレート(20)とカウンタプレッシャプレート(17)との間で緊締するために、前記プレッシャプレート(20)に作用するプレッシャポット(53)と、クラッチ操作のために前記プレッシャポット(53)に作用可能なクラッチ操作機構(45)と、を備える自動車用のクラッチ(1)において、
前記プレッシャプレート(20)と前記カウンタプレッシャプレート(17)との間に2つのクラッチディスク(18)と、該2つのクラッチディスク(18)の間で緊締可能な中間プレッシャプレート(19)とが配置されており、前記構成部材、すなわちプレッシャプレート(20)、中間プレッシャプレート(19)およびカウンタプレッシャプレート(17)のうちの少なくとも1つが、金属薄板から形成されており、
前記クラッチディスク(18)は、軸方向の両側に摩擦フェーシング(33)を有しており、該摩擦フェーシング(33)はフェーシング基板(34)に取り付けられており、
前記2つのクラッチディスク(18)のうちの一方のクラッチディスク(18)に、他方のクラッチディスク(18)に作用結合され、かつ被駆動シャフトにトルク伝達するために構成された支持体(37)が取り付けられており、
前記2つのクラッチディスク(18)のうちの1つのクラッチディスク(18)において、対向する前記フェーシング基板(34)の間にばね(35)が配置されており、該ばね(35)には、軸方向で予荷重が加えられていることを特徴とする、自動車用のクラッチ(1)。
【請求項2】
1つのクラッチディスク(18)にだけ、前記ばね(35)が存在している、請求項1記載のクラッチ(1)。
【請求項3】
前記クラッチ(1)は、デュアルクラッチの部分クラッチ(2)として2つの変速機入力シャフト(8)を備えて構成されている、請求項1または2記載のクラッチ(1)。
【請求項4】
前記クラッチ(1)は、シングルクラッチとして唯一の変速機入力シャフト(8)を備えて構成されている、請求項1または2記載のクラッチ(1)。
【請求項5】
前記クラッチ操作機構(45)は、変速機入力シャフト(8)に軸方向および/または半径方向で支承されている、請求項1から4までのいずれか1項記載のクラッチ(1)。
【請求項6】
前記カウンタプレッシャプレート(17)は、前記クラッチ操作機構(45)と同じ変速機入力シャフト(8)上に軸方向および/または半径方向で支持されている、請求項5記載のクラッチ(1)。
【請求項7】
前記一方のクラッチディスク(18)の前記支持体(37)は、周方向で、前記他方のクラッチディスク(18)を、それぞれのクラッチトルクを受け取るために支承している、請求項1から6までのいずれか1項記載のクラッチ(1)。
【請求項8】
前記他方のクラッチディスク(18)が、係合輪郭(42)を有していて、該係合輪郭(42)に、トルクを伝達するために、前記支持体(37)が係合する、請求項7記載のクラッチ(1)。
【請求項9】
請求項1-3のいずれか1項記載のクラッチ(1)により形成されている2つの部分クラッチを備えたデュアルクラッチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用のクラッチであって、クラッチ操作のために、プレッシャポットと作用関係にもたらされ得るクラッチ操作機構を備え、プレッシャポットは、少なくとも1つのクラッチディスクを、プレッシャプレートとカウンタプレッシャプレートとの間に緊締するために、プレッシャプレートに作用する、自動車用のクラッチに関する。つまり本発明は、クラッチ操作のためにたとえば剛性のプレッシャポットと作用関係にある、「Concentric Slave Cylinder」またはCSCとも呼ばれるコンセントリックスレーブシリンダを備えた自動車クラッチにも関する。この場合、プレッシャポットは、プレッシャプレートに作用して、少なくとも1つのクラッチディスクを緊締するためにカウンタプレッシャプレートに向かってプレッシャプレートを軸方向に移動させるようになっている。
【0002】
欧州特許出願公開第1524446号明細書(EP1524446A1)からは、少なくとも2つの摩擦クラッチを備えたクラッチ装置が公知である。少なくとも2つの摩擦クラッチは、それぞれ少なくとも1つのクラッチディスクを有している。この場合、両方のクラッチディスクは、駆動すべき固有のシャフトに結合可能であり、両クラッチは、互いから独立して、それぞれ1つの操作機構を介して締結(エンゲージ)可能かつ解放(レリーズ)可能である。この場合、さらに、クラッチの締結力は、操作機構から直接的に加えられる。
【0003】
独国特許出願公開第102011017380号明細書(DE102011017380A1)は、エンジン側の入力シャフトを、変速機側の第1の出力シャフトおよび/または変速機側の第2の出力シャフトに断接するためのデュアルクラッチを開示している。デュアルクラッチは、第1の出力シャフトに結合された第1のクラッチディスクを断接するための、第1のカウンタプレートに対して相対的に軸方向に移動可能な第1のプレッシャプレートを有している第1のクラッチと、第2の出力シャフトに結合された第2のクラッチディスクを断接するための、第2のカウンタプレートに対して相対的に軸方向に移動可能な第2のプレッシャプレートを有している第2のクラッチと、第1のプレッシャプレートおよび/または第2のプレッシャプレートを運動させるための操作装置と、第1の出力シャフト上または第2の出力シャフト上に支持するための、第2のカウンタプレートに結合された入力軸受と、を備え、第2のカウンタプレートは、入力軸受の位置決めのために、軸方向で第1のクラッチディスクと第2のクラッチディスクとの間に構成されている。
【0004】
さらに独国特許出願公開第102009048277号明細書(DE102009048277A1)は、中空シャフトとして形成された第1の変速機入力シャフトと、該第1の変速機入力シャフト内に同心的にガイドされた第2の変速機入力シャフトとを備えたデュアルクラッチ型変速機のためのデュアルクラッチを示している。押し付けられる第1の摩擦クラッチと、引っ張られる第2の摩擦クラッチとから成るデュアルクラッチは、中空シャフト上に第1のシャフト軸受により回転可能に支承された第1のカウンタプレッシャプレートと、カウンタプレッシャプレートのそれぞれ1つの側に対して、それぞれ1つの変速機入力シャフトに相対回動不能に結合されたそれぞれ1つのクラッチディスクの摩擦フェーシングを介在しながら軸方向で緊締可能な、カウンタプレッシャプレートに相対回動不能に結合された2つのプレッシャプレートと、ハイドロスタティックなエンゲージシステムであって、中空シャフトを取り囲んで配置された円筒ケーシングと、該円筒ケーシング内で、カウンタプレッシャプレートに対してプレッシャプレートを緊締するための、軸方向で互いに反対方向に移動可能な2つのリングピストンとを有するハイドロスタティックなエンゲージシステムとを備え、さらに第1のシャフト軸受は、軸方向で固く中空シャフト上に位置固定されており、円筒ケーシングは、第2のシャフト軸受により軸方向で固く、かつ中空シャフトに対して回転可能に該中空シャフト上に被せられている。
【0005】
本発明は有利には、内燃機関と、少なくとも1つの変速機入力シャフトとの間で、切換可能にかつ摩擦接続式にトルクおよび/または回転数を連結する、自動車クラッチの分野に関し、特に自動車のシングルディスククラッチ、自動車のデュアルクラッチまたは自動車の多板クラッチに関する。
【0006】
レバースプリングもしくは皿ばねによる操作部を備えた乾式もしくは乾燥動作するデュアルクラッチを使用する場合、このことは、皿ばねの高い傾動剛性、つまりピボット剛性に基づいて、ディスク、プレッシャプレート等の幾何学的なエラーの補償機能が僅かにしか得られないか、不可能である、という欠点を有している。このことは、トルク伝達時の高いトルク変動もしくはジャダー(Rupfen)とも呼ばれる振動をもたらす。ジャダーは望ましくない。
【0007】
プレッシャポットの剛性は、操作方向での剛性に関していることに注意すべきである。この操作方向の剛性は、一方では半径方向に関する傾動に対する抵抗に関するレバースプリングの傾動剛性と混同されるべきではなく、操作方向の剛性は、他方では操作方向へのレバースプリングの弾性的な屈曲性に対して機能的な差異を成している。
【0008】
直接的な操作部を備えた、つまり皿ばねの介在を伴わない乾式のシングルディスク式デュアルクラッチを使用することもできる。たとえば、この場合に使用された軸受の負荷限界および/または単に制限されて利用可能な、クラッチ操作部もしくはアクチュエータにより加えられ得るエネルギに基づいて、トルク容量とも呼ばれる伝達可能なトルクは、制限されている。しかし、伝達可能なトルクの制限は望ましくない。
【0009】
さらに、自己補正クラッチまたは専門用語で「self-adjusting clutch」または略してSACとも呼ばれる、自己補正式の摩耗補償を備えた単純な2枚ディスク式クラッチが使用され得る。このようなクラッチは、特に手動切換可能な変速機もしくはマニュアルトランスミッションまたは手動シフトおよびオートメーテッドマニュアルトランスミッションの分野において普及している。このようなクラッチは通常は皿ばねを使用しているので、このようなクラッチは上述のような、ジャダーの傾向を有しているか、または高いコストを負っている。
【0010】
湿式動作するクラッチも付加的に使用され得る。この湿式クラッチは、一方では撹拌損失および/または他方ではクラッチ冷却に関連するポンプ損失を生ぜしめるので、湿式動作するクラッチは同様に望ましくない。
【0011】
通常、プレッシャプレート、カウンタプレートもしくはカウンタプレッシャプレートおよび存在する場合には中間プレッシャプレートといった構成部材のためには、鋳造構成部分が使用される。鋳造材料から成っているこれらの構成部分は、確実にかつ経済的には、幾らかの最少厚を伴ってのみ製造可能である。実際には、大量生産の鋳造構成部分のためのこの限界値は、約8mmの厚さである。この限界値よりも下では、種々のファクタ、つまり砂型内への垂直方向流込みの代わりの水平方向流込みまたは金型鋳造のようなたとえば高価な製造法、または高い細断手間が、経済的な生産もしくは製造を妨げる。鋳造部分は、後からより小さな寸法もしくは軸方向の寸法へと細断される。しかし、一方では、自動車製造のためには、部品の大量生産時のコストは小さく維持されるか、または減じられなければならず、かつ他方では構造空間の削減および/または重量の削減につとめられる。
【0012】
自動車製造において摩擦接続式にトルクを伝達する切換可能なクラッチは、たとえば専門的に「ストップ・アンド・ゴー」と呼ばれる、急速に連続する始動過程において、概して高い熱負荷にさらされる。したがって、高いまたは少なくとも減じられていない熱的な頑丈さを有するクラッチが所望される。
【0013】
したがって、本発明の課題は、先行技術から公知の欠点を克服することにある。特に、デュアルクラッチとして使用するための適性、ジャダーに対する鈍感性またはジャダーの小さな傾向、トルク伝達の高い容量、小さな質量慣性、小さな軸方向の構造空間および/または高い熱耐性を備えたクラッチが提供されることが望ましい。少なくとも250Nmの伝達に適した、最適化されたジャダー挙動およびトルク変動挙動を有するデュアルクラッチシステムが特に所望される。
【0014】
本発明の課題は、上述の形態のクラッチにおいて本発明により以下の構成により解決される。すなわち、プレッシャプレートとカウンタプレッシャプレートとの間に、少なくとも2つのクラッチディスクと、該クラッチディスクの間に緊締可能な中間プレッシャプレートとが配置されており、構成部分、すなわちプレッシャプレート、中間プレッシャプレートおよびカウンタプレッシャプレートのうちの少なくとも1つが、金属薄板プレートとして形成されている。
【0015】
金属薄板プレートは、金属薄板打抜きプレート、金属薄板打抜きプレスプレートまたは金属薄板構成部分とも呼ばれ得る。金属薄板プレートは、切削なしの方法において製造され得る。金属薄板プレートは、切削加工なしに、プレス変形加工、曲げ加工、切断加工および/または圧延加工されて製造され、特に鋳造材料とは異なって得られる。
【0016】
構成部分、すなわちプレッシャプレート、中間プレッシャプレートおよびカウンタプレッシャプレートのうちの少なくとも1つが金属薄板(打抜きプレス)プレートとして形成されていることによって、軸方向の構造空間が削減され、これにより付加的な構造空間を要求することなしに第2のクラッチディスクを軸方向で配置可能であるので、唯1つのクラッチディスクを備えたクラッチに対して、同じ圧着力で伝達可能なトルクがほぼ倍増される。このことは、唯1つのクラッチディスクを備えたクラッチに比べて、構造空間および/または重量が削減され得ることにつながる。
【0017】
有利な実施の形態は、従属請求項に記載され、以下に説明する。以下で挙げられた態様は、個別に、互いに独立して、かつ主態様から独立しても実施され得る。
【0018】
複数のクラッチディスクのうちの1つのクラッチディスクに、別のクラッチディスクに作用結合されかつ被駆動シャフトへのトルク伝達のために構成された支持体が取り付けられていると有利である。なぜならば、トルクが効果的に伝達され得るからである。
【0019】
良好な当て付けを達成するためには、クラッチディスクが摩擦フェーシングを有していると有利であり、この場合摩擦フェーシングと支持体との間には、軸方向に予荷重を加えられたばねが配置されている。
【0020】
プレッシャプレートとカウンタプレッシャプレートの間の1つのクラッチディスクにのみ、軸方向で予荷重を加えられた唯1つのばねが設けられていると、構造空間は特に小さくなる。
【0021】
できるだけ多方面での使用を可能にするために、クラッチが、デュアルクラッチの部分クラッチとして、2つの変速機入力シャフトを有して構成されるか、シングルクラッチとして、単に1つの変速機入力シャフトを有して構成されると望ましい。
【0022】
有利な実施の形態は、クラッチ操作機構が軸方向および/または半径方向で変速機入力シャフトにおいて(転がり軸受により)支承されていることによっても特徴付けられる。
【0023】
カウンタプレッシャプレートが、クラッチ操作機構と同一の変速機入力シャフト上に軸方向および/または半径方向で支持されていると有利である。
【0024】
少なくとも2つのクラッチディスクのうちの1つのクラッチディスクの支持体が周方向で、別のクラッチディスクを、それぞれのクラッチトルクを受け取るために支承していると有利である。
【0025】
良好なトルク伝達および個別の構成要素の良好なガイドが可能であるように、クラッチディスクのうちの1つのクラッチディスクが係合輪郭を有しており、該係合輪郭内に、トルクを伝達するために少なくとも1つの別のクラッチディスクが軸方向で移動可能に係合すると有利である。
【0026】
さらに、クラッチディスクのうちの1つのクラッチディスクに、被駆動シャフトへのトルク伝達のために、かつ/または少なくとも1つの中間プレッシャプレートをガイドするために調整された支持体が位置固定されていることが規定されていてよい。これにより、有利なエネルギフローが達成され得る。
【0027】
有利には、支持体に取り付けられているクラッチディスク/フェーシング基板の、一方の側または両方の側に、摩擦フェーシングが結合されている。摩擦フェーシングを設けることにより、クラッチにおける摩耗および/またはクラッチ締結時の熱的なエネルギ導入が減じられ得る。単に1つの摩擦フェーシングを設けることにより、軸方向の構造空間が削減され得る。
【0028】
摩擦フェーシングのうちの唯1つの摩擦フェーシングと支持体との間に、軸方向で予荷重を加えられたばねが配置されていると、軸方向の構造空間は削減され得る。特に、クラッチを操作するために剛性のプレッシャポットを使用している場合、皿ばねが省略され得るので、これにより剛性のプレッシャポットの使用時に、軸方向で予荷重を加えられた唯1つのばねは、幾何学的なエラーを十分に補償することができる。このことはさらに軸方向の構造空間を削減する。つまり相乗的に構造空間の削減と改善されたジャダー特性とが補い合う。
【0029】
両摩擦フェーシングと支持体との間に軸方向で予荷重を加えられたそれぞれ1つのばねが配置されている場合、それぞれのばね行程は、たとえば明らかに減じられ得るので、これにより構造空間の削減、および/または迅速に切り替わる、もしくは迅速に締結および/または解放可能なクラッチが達成される。
【0030】
唯1つの摩擦フェーシングと支持体との間に軸方向で予荷重を加えられたばねが配置されているか、または両摩擦フェーシングと支持体との間にそれぞれ1つの軸方向で予荷重を加えられたばねが配置されている場合、上述の利点が利用され得る。
【0031】
プレッシャプレートとカウンタプレッシャプレートとの間で、唯1つのクラッチディスクに、軸方向で予荷重を加えられたばねが使用されていると特に有利である。なぜならば、このことにより、構成部分の減じられた数によって、たとえば支承保持コストおよび組付けコストが減じられるからである。さらに、これによりクラッチの切換時の操作距離が減じられてよく、これにより軸方向の構造空間が削減され得るだけではなく、滑り、ひいては摩擦接続までの時間が、熱的なエネルギ導入を減じるように短縮可能である。
【0032】
クラッチが、デュアルクラッチとして2つの変速機入力シャフトを備えて形成されているか、またはシングルクラッチとして、(つまり)唯1つの変速機入力シャフトを備えて形成されていると有利である。さらに本発明に係るクラッチは、特にデュアルクラッチの部分クラッチであってよい。シングルクラッチは特に廉価である。デュアルクラッチは、いわゆるトルク切れなしに切換可能であるので、概して走行ダイナミクスが改善され得る。
【0033】
有利な実施の形態は、クラッチ操作機構が軸方向および/または半径方向で変速機入力シャフトに有利には転がり軸受または滑り軸受を介して、または直接的に変速機底部に支承されていることにより特徴付けられる。
【0034】
クラッチ操作機構が、変速機入力シャフトにおいて軸方向および/または半径方向に支持されるように用意されている場合、クラッチの操作時に生じる軸方向の力は、構造的に狭い空間で受け止められもしくは支承され得るので、このために必要な強度のための小さなシステム重量を伴う、単に少ない材料が使用され得る。
【0035】
クラッチ操作機構が、変速機底部のようなクラッチベル壁において軸方向および/または半径方向で支持されるために用意されている場合、組付けは、クラッチディスク交換時にも特に簡略化され有利である。
【0036】
クラッチ操作部を支持するために、特に転がり軸受または滑り軸受、特に有利にはアンギュラ玉軸受が配置されかつ構成されることが望ましい。転がり軸受は、特に良好に潤滑剤を供給され、自動車のパワートレーンにおいて発生する温度に対して特に耐性がある。滑り軸受は特に小さくかつ軽量である。アンギュラ玉軸受は、個数ひいてはコストを削減するために特に良好に適している。
【0037】
カウンタプレッシャプレートが、クランクシャフトまたは変速機入力シャフトのようなシャフトにおいて軸方向および/または半径方向で支持されるために用意されている場合、クラッチを操作するための力は特に良好に導出され得る。このことはさらに、その特に高い同心性に基づいて、ジャダーの小さな傾向を支援する。
【0038】
カウンタプレッシャプレートを支持するためには、転がり軸受または滑り軸受、特にアンギュラ玉軸受が配置されかつ構成されていると特に有利であり、この場合に上述の利点が参照される。
【0039】
少なくとも2つのクラッチディスクのうちの1つのクラッチディスクの支持体が、周方向で別の1つのクラッチディスクまたは別の複数のクラッチディスクを、それぞれのクラッチトルクを受け取るために支承している場合、有利には唯1つの支持体が、変速機入力シャフトまたはクランクシャフトのような対応配置されたシャフトにクラッチトルクを伝達するために用意されていてよい。このことは、コストおよび重量を削減する。特に、支持体が、対応配置されたシャフトにクラッチトルクを伝達するために、対応配置されたシャフトに相対回動不能にかつ軸方向で可動に支承されていてよく、これにより、クラッチを締結および/または解放するためのクラッチディスクの移動可能性は、対応配置されたシャフトにおける支持体の支承によって阻止されていないので、比較的小型かつ軽量のクラッチ操作部が使用され得る。このことは、このクラッチディスクの比較的小さな全体質量慣性に基づいて、変速機入力シャフトの質量慣性モーメントを減じ、これによって、たとえば変速機の同期機構がより小さく、ひいては軽量かつ廉価に寸法設計され得る。
【0040】
少なくとも2つのクラッチディスクのうちの1つのクラッチディスクが、係合輪郭を有していて、該係合輪郭内に、少なくとも2つのクラッチディスクの別の、または別の1つの、または別の複数のクラッチディスクが、トルク伝達のために軸方向で移動可能に係合する場合、クラッチの締結および/または解放は、特に単純に実現され得る。このことはコストを削減する。
【0041】
有利な態様は、カウンタプレッシャプレートに位置固定されたガイドが、トルクを伝達するために、プレッシャプレートおよび中間プレッシャプレートを周方向および軸方向で移動可能に支承し、かつ/またはガイドと中間プレッシャプレートとの間に1つのばねエレメントが配置されていることにより特徴付けられている。
【0042】
カウンタプレッシャプレートに位置固定されたガイドが、トルクを伝達するために、プレッシャプレートを周方向および軸方向で移動可能に支承する場合、別のプレートは特に安定的にこのカウンタプレッシャプレートに結合され得るので、比較的に高いトルクが伝達可能である。
【0043】
この場合、クラッチが有利には、軸方向でクラッチディスクの間に配置された、ガイドにおいて周方向および軸方向で移動可能に支承された中間プレッシャプレートを有していると特に有利である。カウンタプレッシャプレートにおいてプレッシャプレートを支承することに対する上述の利点の他に、コスト削減的な同一部分の効果が発揮される。
【0044】
言い換えれば、金属薄板から打ち抜かれたプレッシャプレートの使用が提案され、これにより、直接操作式のクラッチまたはデュアルクラッチの単純な構造を可能にすることができ、かつ同時的にクラッチの質量慣性モーメントを減じることができる。この場合有利には、改善された走行ダイナミクスまたは経済的な燃料消費、有利には両方が達成される。さらにクラッチまたは部分クラッチ毎に複数のクラッチディスクが提案されるので、熱が改善されて分配される。これにより、シナジー効果として、高められたトルク容量およびクラッチの比較的小さな軸方向の構造もしくは構造空間需要が生じる。さらに、少なくとも1つのまたは唯1つの部分クラッチが2つのクラッチディスクを有し得ることも考えられる。
【0045】
本発明は、本発明に係るクラッチによる2つの部分クラッチを備えたデュアルクラッチにも関する。この場合、有利には、2つのプレッシャプレート、2つのカウンタプレッシャプレートおよび2つの中間プレッシャプレートが存在していて、さらに有利にはこれら全てのプレートが金属薄板から製造されている。
【0046】
上記および/または下記の説明により詳細に述べられる以下の態様は、互いに独立して使用可能であることが望ましい。したがって、たとえばコンセントリックスレーブシリンダのようなクラッチ操作部が、変速機底部のような変速機ハウジング、変速機入力シャフト、クラッチベルのようなクラッチハウジングおよび/または内燃機関を変速機に結合しているハウジングに取付け可能、支持可能かつ/または支承可能であってよい。カウンタプレートもしくはカウンタプレッシャプレートは、緊締力および/または操作力を受け取るように構成され、配置され、つまり支持されかつ/または支承されていてよい。特に、カウンタプレッシャプレートは、クラッチ入力シャフトに、軸方向でかつ/または半径方向で支承されていてよい。中間プレッシャプレートは、特にクラッチまたは同一の部分クラッチの2つのクラッチディスク間に配置されて設けられていてよい。プレッシャプレートおよび中間プレッシャプレートは、弾性的な構成要素、たとえば、特に板ばねエレメントのようなばねエレメントを介して、軸方向で移動可能にもしくは摺動可能に結合されていてよい。摩擦ディスクおよび/またはクラッチディスクは、ハブに結合されていてよい。特に、クラッチまたは部分クラッチの摩擦ディスクもしくはクラッチディスクのうちの唯1つの摩擦ディスクもしくはクラッチディスクが、変速機入力シャフトのような所属するシャフトに結合可能であり、たとえば相対回動不能に結合可能であるか、または軸方向で移動可能に、かつ相対回動不能に結合可能に配置されかつ構成されていてよいことが規定され得る。特に、クラッチまたは部分クラッチの少なくとも2つのクラッチディスクが、互いに相対回動不能に、または相対回動不能にかつ軸方向で移動可能に結合されていることが規定されていてよく、この結合部は、相対回動不能に、または相対回動不能にかつ軸方向で移動可能に、変速機入力シャフトのような所属するシャフトに結合可能に設けられている。クラッチまたは部分クラッチにおいて、1つのフェーシングばね装置、少なくとも1つのフェーシングばね装置および/またはそれぞれ1つのフェーシングばね装置が設けられていてよい。特に、部分クラッチ毎に唯1つの摩擦ディスクがフェーシングばね装置を有していて、複数の別のまたは1つの別の摩擦ディスクがまさにフェーシングばね装置を有していないことが提案され、これにより構造空間上の利点と、下げられたコストが達成され得る。フェーシングばね装置として、別個の構成部分および支持体またはフェーシング支持体の区分的な構成が設けられかつ/または用意されていてよい。択一的または付加的には、ばねエレメントは、2つのプレッシャプレートの間に、またはプレッシャプレートと中間プレッシャプレートとの間に構成されかつ配置されていてよい。択一的または付加的には、ばねエレメントは、2つのプレッシャプレートの間に、またはプレッシャプレートと中間プレッシャプレートとの間に、間隔を空けて作用するように構成されかつ配置されていてよい。中間プレッシャプレートは、プレッシャプレートとも呼ばれ得る。さらに、ハブまたはプレッシャプレート支持区分とも呼ばれ得るプレッシャプレート支持体は、一体的にまたは複数の部分からカウンタプレッシャプレートにおいて、特にトルクを伝達するための複数の歯列を備えて、配置されかつ構成されていることが規定されていてよい。プレッシャプレート支持体またはプレッシャプレート支持区分の歯列は、プレッシャプレートおよび/または中間プレッシャプレートが、相対回動不能にかつ/または軸方向に移動可能に、または軸方向で制限されて移動可能に支承されているように、配置されかつ構成されていてよい。
【0047】
さらに、以下に紹介される6枚プレート設計および/または以下に紹介される8枚プレート設計も独立して請求され得る。6枚プレート設計では、デュアルクラッチのクラッチまたは部分クラッチが以下のように構成されている。すなわち、カウンタプレッシャプレート、プレッシャプレートおよび1つの中間プレッシャプレートが打抜き構成部分として、変形加工構成部分として、打抜きおよび変形加工構成部分として、かつ/または金属薄板構成部分として形成されているようにされる。8枚プレート設計では、デュアルクラッチのクラッチおよび/または部分クラッチが以下のように構成されている。すなわち、カウンタプレッシャプレート、2つの中間プレッシャプレートおよびプレッシャプレートが、打抜き構成部分として、変形加工構成部分として、または打抜きおよび変形加工構成部分として、かつ/または金属薄板構成部分として形成されているようにされる。
【0048】
本発明を以下にその実施の形態および変化形につき詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0049】
図1】本発明の第1の実施の形態による、デュアルクラッチとして実施されたクラッチの、長手方向軸線に沿った断面図である。
図2図1に示したクラッチの、長手方向軸線に沿った断面図であり、デュアルクラッチの第1の部分クラッチの操作が明示されている。
図3図1に示したクラッチの、長手方向軸線に沿った断面図であり、デュアルクラッチの第2の部分クラッチの操作が明示されている。
図4】第1の実施の形態の第1の変化形によるクラッチの、長手方向軸線に沿った断面図である。
図5】第1の実施の形態の第2の変化形の斜視図である。
図6】本発明の第2の実施の形態による、デュアルクラッチとして実施されたクラッチの、長手方向軸線に沿った断面図である。
【0050】
図面は単に概略的な性質のものであり、本発明の理解にのみ役立つ。同一のもしくは類似する構成要素は、同一の参照符号を備えており、改めて説明されない。1つの実施の形態の構成要素は、別の実施の形態においても使用可能であり、つまりこれらの構成要素は交換可能である。
【0051】
図1は、クラッチ1の、長手方向軸線もしくは回転軸線Xに沿った断面図を示している。クラッチ1は、デュアルクラッチとして、通常は解放された、もしくは自動的に解放する2つの部分クラッチ2、すなわち第1の部分クラッチ3と第2の部分クラッチ4とを備えて構成されている。第1の部分クラッチ3の締結もしくは操作によって、内燃機関(図示せず)のクランクシャフト5は、出力を伝達するために、もしくは出力伝達のために、第1の、または内側の変速機入力シャフト6に連結されてよく、かつ第2の部分クラッチ4の締結もしくは操作によって、クランクシャフト5は、出力を伝達するために、第2の、または外側の変速機入力シャフト7に連結されてよい。第1の変速機入力シャフト6および第2の変速機入力シャフト7は、概して変速機入力シャフト8と呼ばれ得る。第2の変速機入力シャフト7は、中空シャフトであり、第1の変速機入力シャフト6を取り囲んでいる。第1の変速機入力シャフト6は、重力削減のために、同じように中空シャフトとして構成されていてよい。
【0052】
クランクシャフト5は、フライホイール構成群9に結合されている。フライホイール構成群9は、デュアルマスフライホイール10として、2つのフライホイール11、すなわち一次フライホイール12と、二次フライホイール13とを備えて形成されている。これらのフライホイール11は、周方向で、長手方向軸線Xを中心として互いに対して相対的に旋回可能に、コイルばね14を介して連結されている。コイルばね14は、トーションダンパとも呼ばれる。二次フライホイール13は、クランクシャフト5と変速機入力シャフト8との間のずれエラーを補償し、もしくは調整するためのずれ補償エレメント15を備えている。ずれ補償エレメント15の出力側には、フライホイール構成群9と部分クラッチ2との間でトルクを伝達するための差込み歯列(Steckverzahnung)16が設けられている。この差込み歯列16には、有利には軸方向、半径方向および/または周方向で予荷重が加えられている。
【0053】
両部分クラッチ2は、それぞれ1つのカウンタプレッシャプレート17と、それぞれ2つのクラッチディスク18と、それぞれ1つの中間プレッシャプレート19と、それぞれ1つのプレッシャプレート20とを有している。両カウンタプレッシャプレート17、つまり第1の部分クラッチ3の第1のカウンタプレッシャプレート21と、第2の部分クラッチ4の第2のカウンタプレッシャプレート22とは、複数のピン23を介して互いに堅固に結合されている。これらのピン23は、有利には段付きピンとして実施されているが、しかし択一的にはリベット、ねじ、ピン、溶接箇所、かしめ部、または緊締するか位置固定する折り曲げ部が使用され得る。両カウンタプレッシャプレート21,22は、第1の実施の形態では、該カウンタプレッシャプレート21,22の堅固な結合に基づき、1つの共通のカウンタプレッシャプレート24として形成されている。この共通のカウンタプレッシャプレート24と二次フライホイール13とは、一緒にデュアルマスフライホイール10の二次マスを形成する。
【0054】
第1の部分クラッチ3の両クラッチディスク18は、第1のクラッチディスク25および第2のクラッチディスク26である。第1のクラッチディスク25と第2のクラッチディスク26との間には、軸方向で、第1の部分クラッチ3の第1の中間プレッシャプレート27が配置されており、この第1の中間プレッシャプレート27は、軸方向で、第1の部分クラッチ3の第1のカウンタプレッシャプレート21と第1のプレッシャプレート28との間で、緊締されるように、軸方向で移動可能に形成されかつ配置されている。第2の部分クラッチ4は、類似する形式で第3のクラッチディスク29と、第4のクラッチディスク30と、第2の中間プレッシャプレート31と、第2のプレッシャプレート32とを備えている。クラッチ1は、直接操作式の多板クラッチとも呼ばれ得る。
【0055】
第1の実施の形態では、各クラッチディスク18の軸方向の両側が摩擦フェーシング33を備えている。これらの摩擦フェーシング33は、1つのフェーシング基板34またはそれぞれ1つのフェーシング基板34に取り付けられている。フェーシング基板34は、フェーシング支持体等とも呼ばれ得る。両部分クラッチ2に設けられたクラッチディスク18のうちのそれぞれ1つのクラッチディスク18、すなわちたとえば第2のクラッチディスク26および第4のクラッチディスク30は、この場合フェーシングばね装置としてのフェーシングばね35を備えている。さらに、クラッチディスク18のうちのそれぞれ1つのクラッチディスク18は、1つまたは複数のリベット36を用いてクラッチ支持体37に取り付けられている。すなわち第1のクラッチディスク25は、第1のクラッチ支持体38に取り付けられていて、第3のクラッチディスク29は、第2のクラッチ支持体39に取り付けられている。クラッチ支持体37は、それぞれの部分クラッチ2とそれぞれの変速機入力シャフト8との間でクラッチトルクを伝達するために、たとえばスプライン歯列40を用いて、それぞれの変速機入力シャフト8において相対回動不能にかつ軸方向で移動可能に支承されている。クラッチ支持体37は、支持体、ハブ部分または連行ディスクとも呼ばれ、そのように構成されていることもある。
【0056】
別のクラッチディスク18、すなわち第2のクラッチディスク26および第4のクラッチディスク30に設けられたフェーシング基板34は、それぞれ1つの保持構成部分41に、1つまたは複数のリベット36を用いて取り付けられている。第1の実施の形態では、それぞれの保持構成部分41に、係合輪郭42が設けられている。係合輪郭42は、それぞれのクラッチ支持体37に形成された係合輪郭43がトルクを伝達するために係合するように、形成されている。係合輪郭42および係合輪郭43は、それぞれのクラッチ支持体37に対するそれぞれの保持構成部分41の、軸方向で少なくとも制限された移動を可能にするように構成されかつ配置されている。係合輪郭42を雌型輪郭、係合輪郭43を雄型輪郭と呼ぶことができる。たとえば、係合輪郭42および係合輪郭43は、たとえば差込み歯列のような歯列44の形式で形成されている。係合輪郭42は、1つの貫通穴として、または複数の貫通穴として形成されていてもよく、係合輪郭43は該貫通穴に対して反対向きの同じ形に形成された突出部または複数の突出部として形成されていてよい。係合輪郭43はたとえばクラッチ支持体37に一体的に変形加工されて形成されていて、クラッチ支持体37から軸方向でL字形に突出している。保持構成部分41は、歯列付き金属薄板とも呼ばれ得る。係合輪郭42は、歯列輪郭とも呼ばれ得る。係合輪郭43は、対向歯列とも呼ばれ得る。クラッチトルクは、両部分クラッチ2のうちの少なくとも1つの部分クラッチにおいて、摩擦ディスクとも呼ばれ得る少なくとも2つのクラッチディスク18を介して、各変速機入力シャフト8に導入され得る。
【0057】
クラッチ1は、クラッチ操作部45を有している。クラッチ操作部45は、長手方向軸線Xを取り囲んで形成された円筒状の2つのシリンダ室47を備えたコンセントリックスレーブシリンダ46を含んでいる。中空円筒状のシリンダ室47のそれぞれの内部では、中空円筒状またはリング状に長手方向軸線Xを取り囲んで形成されたピストン49が運動し、これらのピストン49のうち、第1のピストン50が第1の部分クラッチ3に、第2のピストン51が第2の部分クラッチ4に対応配置されている。この場合、コンセントリックスレーブシリンダ46としてのクラッチ操作部45の構成は、単に1つの有利な態様である。クラッチ操作部45は、クラッチ操作部軸受48、有利にはアンギュラ玉軸受を介して、第2の変速機入力シャフト7に支承されている。クラッチ操作部45は、択一的または付加的には、変速機底部壁52のような定置のハウジング部分に、トルクサポート(Drehmomentstuetze)の形態で取り付けられていてもよい。
【0058】
各部分クラッチ2は、さらにプレッシャポット53を有している。このプレッシャポット53は、操作力を伝達するために、各プレッシャプレート20と各ピストン49との間に用意され、配置され、かつ構成されている。プレッシャポット53は、実質的に剛性の構成部分である。プレッシャポット53の剛性と、レバースプリングまたは皿ばねの省略とに基づいて、クラッチ1は直接操作式のクラッチと呼ばれることがある。
【0059】
詳細に云えば、第1の部分クラッチ3は、第1のプレッシャポット54を有している。第1のプレッシャポット54は、第1のプレッシャプレート28に、操作力を加えるために作用する。第1のプレッシャポット54は、第1のピストン50によって操作されるために、アンギュラ玉軸受57のようなプレッシャポット軸受56を備えて構成され、用意されている。同様に、第2の部分クラッチ4は、第2のプレッシャポット55を有している。第2のプレッシャポット55は、第2のプレッシャプレート32に、操作力を加えるために作用する。第2のプレッシャポット55は、第2のピストン51によって操作されるために、アンギュラ玉軸受58のようなプレッシャポット軸受56を備えて用意され、かつ構成されている。アンギュラ玉軸受57は第1のプレッシャポット軸受とも呼ばれ、アンギュラ玉軸受58は第2のプレッシャポット軸受とも呼ばれ得る。
【0060】
共通のカウンタプレッシャプレート24は、有利にはアンギュラ玉軸受60として形成されているプレッシャプレート軸受59を介して、第2の変速機入力シャフト7に支承されている。詳細に云えば、プレッシャプレート軸受59は、第2のカウンタプレッシャプレート22のハブ区分61に支持されている。プレッシャプレート軸受59は、中心の転がり軸受とも呼ばれる。
【0061】
図2および図3につき、以下にクラッチ1の操作を詳細に説明する。
【0062】
この場合、図2は、実質的に図1に示した図を示しているが、エネルギフローが太い破線により図示されている。クラッチ操作部45は、第2の変速機入力シャフト7においても、プレッシャポット53においても、転がり軸受、つまりアンギュラ玉軸受48,57および58を介して支承されているので、クラッチ操作部45は、マスタシリンダ等のようなエネルギ源(図示せず)に、ロータリフィードスルー等を設けることなしに、操作エネルギ若しくは操作力を伝達するために接続され得る。
【0063】
シリンダ室47のうちの、第1の部分クラッチ3に対応配置されたシリンダ室47に液圧が加えられると、第1のピストン50は軸方向でクラッチ締結方向に移動させられる。アンギュラ玉軸受57を介して、第1のピストン50は、第1の部分クラッチ3を締結するための押圧力を第1のプレッシャポット54に加える。第1のプレッシャポット54は、第2のプレッシャプレート32と第2のカウンタプレッシャプレート22を、第1の部分クラッチ3の操作のために適した形式で貫通して、第1のプレッシャプレート28を第1のカウンタプレッシャプレート21に向かって押圧し、この場合に、第2のクラッチディスク26、第1の中間プレッシャプレート27および第1のクラッチディスク25を、トルクを摩擦接続式に伝達するために緊締するようにされる。第1のカウンタプレッシャプレート21に伝達された押圧力は、ピン23を介して第2のカウンタプレッシャプレート22に伝達される。この押圧力は、第2のカウンタプレッシャプレート22からハブ区分61を介して、プレッシャプレート軸受59に伝達される。プレッシャプレート軸受59は、軸方向で固く第2の変速機入力シャフト7に結合されているので、押圧力は、プレッシャプレート軸受59から第2の変速機入力シャフト7およびアンギュラ玉軸受48を介して、再びクラッチ操作部45に伝達される。エネルギフロー、即ち操作力の伝達経路は、したがって閉じられている。特に、第1の部分クラッチ3を締結するためのエネルギフローは、有利な形式でクラッチ1ならびに第2の変速機入力シャフト7の1つの区分内でのみ案内されている。
【0064】
図3は、実質的に図1および図2に示した図を示しているが、エネルギフローが、太い破線により図示されている。シリンダ室47のうちの、第2の部分クラッチ4に対応配置されたシリンダ室47に液圧が加えられると、第2のピストン51が軸方向でクラッチ締結方向に移動される。アンギュラ玉軸受58を介して、第2のピストン51は、第2の部分クラッチ4を締結するための押圧力を第2のプレッシャポット55に加える。第2のプレッシャポット55は、第2のプレッシャプレート32を第2のカウンタプレッシャプレート22に向かって押圧し、この場合に、第4のクラッチディスク30、第2の中間プレッシャプレート31および第3のクラッチディスク29を、トルクを摩擦接続式に伝達するために緊締するようにされる。第2のカウンタプレッシャプレート22に伝達された押圧力は、この第2のカウンタプレッシャプレート22からハブ区分61を介してプレッシャプレート軸受59に伝達される。その他の部分は、図2のための説明が適用される。
【0065】
図2および図3の図面から判るように、アンギュラ玉軸受60,48が有利にはいわゆるO字形の配置(背面組合わせ)で、短い閉じられたエネルギフローを実現するために配置されている。X字形の配置(正面組合わせ)も同様に有利であり得る。言い換えると、プレッシャプレート軸受59がクラッチ操作部軸受48と同一のシャフト上に配置されていることにより特別な利点が生じる。
【0066】
第1の部分クラッチ3を操作するための図2につき説明されたエネルギフローと、第2の部分クラッチ4を操作するための図3につき説明されたエネルギフローとにより、操作力は、たとえば変速機またはクラッチベルに導入されない。エネルギフローは、つまり内部で閉じられている。内部で閉じられたエネルギフローは、特にクラッチ操作部軸受48により可能にされる。
【0067】
独国特許出願公開第102009048277号明細書(DE102009048277A1)から公知の先行技術に対して、クラッチ1はとりわけ以下の点で異なっている。すなわち、第1の部分クラッチ3および第2の部分クラッチ4がそれぞれ同一の操作方向で締結されかつ解放され、これにより、たとえばコスト節約的であって製造を簡略化する同一部品の使用が促進されている。
【0068】
クラッチ1は、以下に説明されるように6枚プレート設計として実施されている。つまり、カウンタプレッシャプレート17、中間プレッシャプレート19およびプレッシャプレート20が金属薄板から打抜きステップおよび変形加工ステップにより形成されている。金属薄板のためには、有利には鉄ベース材料が使用される。これにより、プレートの厚さが、優先的に鋳造のような製造プロセスに基づいて設定されるのではなく、優先的に強度要求に基づいて設定されることが達成される。この構成は、軸方向で特に短い構造空間を可能にする。
【0069】
クラッチ1では、部分クラッチ2毎に、唯1つのクラッチディスクもしくは部分ディスク18が、フェーシングばね35のようなフェーシングばね装置を備えているので、軸方向の構造空間はさらに減じられ得る。
【0070】
クラッチ1の操作時に、特にそれぞれの部分クラッチ2の締結時に滑りにより発生する熱は、プレート、つまりカウンタプレッシャプレート17、中間プレッシャプレート19およびプレッシャプレート20に受け取られ、中間貯蔵される。これらのプレートは、金属薄板から、かつ鋳造材料から成るプレートよりも薄く製造されているので、有利な形式で、上述したようなほぼ同等の熱的質量、ほぼ同等の熱剛性および/またはほぼ同等の特殊な熱容量でありながら、金属薄板プレートを備えたクラッチ1の軸方向の構造サイズは、鋳造プレートを備えたクラッチ(図示せず)に比べて短縮され得る。軸方向の構造空間のこの短縮は、増大するプレート数、特に部分クラッチ2毎に少なくとも3つのプレートが存在している場合に、特に有利に作用する。
【0071】
プレート、つまりカウンタプレッシャプレート17、中間プレッシャプレート19およびプレッシャプレート20の厚さの減少により、同一の摩擦直径の想定下で、重量削減および慣性質量における削減、したがって反応挙動、自動車パワートレーンのダイナミクスおよび燃料消費における改善が達成される。
【0072】
プレッシャプレート20とカウンタプレッシャプレート17との間に少なくとも2つのクラッチディスク18が配置されていることによって、つまり部分クラッチ2毎に2つの摩擦ディスク18が組み込まれていることにより、摩擦接続式にトルク伝達するために必要となる緊締力が減じられる。このことは一方では、クラッチ操作部45により加えられるべき操作力の減少のために利用され得る。他方では、有利な形式で、必要となる緊締力の減少は、伝達可能なトルクの増大のために利用され得る。したがって、ほぼ同等に維持したままの操作力で、トルクを著しく高めることができる。たとえば、伝達可能な最大のトルクは、意図的にたとえばクラッチ操作部軸受48、プレッシャポット軸受56、およびプレッシャプレート軸受59のようないわゆる連結用のエンゲージ軸受(Einruecklager)の負荷耐性に合わせて、かつ/または操作システムの利用可能な操作エネルギに合わせて、構造的に設計される。操作システムのうち、図1から図3には主にクラッチ操作部45が示されている。クラッチ1では、全ての構成要素が、250Nmの伝達可能な最大のトルクに合わせて設計されている。有利には、セーフティマージンが考慮される。
【0073】
さらに、クラッチ1または部分クラッチ2の摩擦半径、つまり、平均摩擦半径、内側摩擦半径および/または外側摩擦半径が減じられることにより、必要となる緊締力の減少は、質量慣性モーメントを減じるために利用され得る。この場合、摩擦半径とは、摩擦フェーシング33と、それぞれのプレート、つまりカウンタプレッシャプレート17、中間プレッシャプレート19およびプレッシャプレート20との間のリング状の接触面に関するものであると理解される。操作力は、この場合、有利にはほぼ同等に維持したままであるが、より小さな質量慣性モーメントおよびより小さな燃料消費が達成される。
【0074】
第1の実施の形態の第1の変化形を以下に図4につき説明する。同一もしくは類似する構成要素は、同一の参照符号を備えており、改めて説明されない。
【0075】
クラッチ支持体37には、それぞれ1つの係合輪郭42が形成されている。この係合輪郭42内に、それぞれの保持構成部分41に形成されている係合輪郭43が係合する。係合輪郭42および係合輪郭43は、たとえば差込み歯列のような歯列44の形式で協働することができる。保持構成部分41は、たとえば変形加工ステップおよび/または打抜きステップにより形成された金属薄板構成部分である。保持構成部分41は、有利にはL字形の形状を有している。
【0076】
図示されていないバリエーションによれば、係合輪郭42が外側歯列として形成されていて、係合輪郭43が内側歯列として形成されていてよい。これによりフィンガ歯列(Fingerverzahnung)が実現される。図示していないさらに別のバリエーションによれば、係合輪郭42が内側歯列として、係合輪郭43が外側歯列として形成されていてもよい。
【0077】
第1の実施の形態の第1の変化形でも、上述した別のバリエーションでも、第2のクラッチディスク26は、第1のクラッチディスク25に対して相対回動不能に、かつ軸方向に移動可能に取り付けられており、第4のクラッチディスク30は、第3のクラッチディスク29に対して同様に相対回動不能にかつ軸方向に移動可能に取り付けられている。両部分クラッチ2のうちの1つの部分クラッチ2のそれぞれのクラッチディスク18と、対応配置されたそれぞれの変速機入力シャフト8との間でのトルクの伝達は、(つまり)有利には打ち抜かれ、かつ/または変形加工されて製造されたそれぞれ1つの係合輪郭42および係合輪郭43を介して行われる。この場合、係合輪郭43は、形状接続式に、かつ第1のクラッチディスク25に対して相対的な第2のクラッチディスク26のクラッチ締結運動および/または第3のクラッチディスク29に対して相対的な第4のクラッチディスク30のクラッチ締結運動を可能にするように、形成されている。しかしこのことは、たとえば第1のクラッチディスク25が第2のクラッチディスク26に対して相対回動不能にかつ軸方向に移動可能に取り付けられているように、逆であってもよい。係合輪郭42および係合輪郭43は、有利には互いに反対向きで同一に成形されている。
【0078】
第1の実施の形態の第2の変化形を以下に図5につき説明する。上述の実施の形態と同一もしくは類似する構成要素は、同一の参照符号を有しており、改めて説明されない。
【0079】
上述したように、クラッチディスク18、中間プレッシャプレート19およびプレッシャプレート20は、それぞれの部分クラッチ2を締結するように、かつそれぞれのプレッシャポット53によってそれぞれの部分クラッチ2に設けられたそれぞれのカウンタプレッシャプレート17に向かって押圧されるように、移動させられる。
【0080】
図5につき、板ばね62の位置が明示される。プレッシャプレート20および中間プレッシャプレート19は、板ばね62を介してそれぞれ支承されている。板ばね62は、それぞれカウンタプレッシャプレート17に結合されている。
【0081】
板ばね62は、クラッチ1もしくは部分クラッチ2を解放するための戻し力を提供する、もしくはクラッチ1もしくは部分クラッチ2に戻し力を加える。したがって、たとえばレバースプリングのような戻し力を加える別のばねエレメントは、ジャダーの傾向を減じるために省略され得る。クラッチ締結時の操作方向は、両部分クラッチ2において同一であるので、クラッチ1の開放時の戻し方向も、両部分クラッチ2において同一である。このことは、一方では、板ばね62に同一部品を使用することを可能にし、他方ではクラッチ1の組付けを簡単にする。
【0082】
図5に図示された任意の態様によれば、中間プレッシャプレート19は、それぞれの離間リベット63により、離間して連結されている。離間リベット63は、中間プレッシャプレート19にリベットのように結合されている。この場合、離間連結部が、中間プレッシャプレート19の操作経路および/またはレリーズ経路を、プレッシャプレート20の操作経路および/またはレリーズ経路に連結していると特に有利である。つまり、離間連結部が達成可能である。
【0083】
クラッチ1の板ばね62は、中間プレッシャプレート19に対応配置されたそれぞれ1つの板ばね64と、プレッシャプレート20に対応配置されたそれぞれ1つの板ばね65とを含んでいる。プレート、つまり中間プレッシャプレート19とプレッシャプレート20とは、それぞれ単に1つの板ばね62によって、またはそれぞれ複数の板ばね62によって戻すことができるように設けられていてよい。周方向で均等に分配され、かつ/または長手方向軸線もしくは回転軸線Xに位置する質量中心点に到達するように配置された複数の板ばね62が、各プレート、つまり各中間プレッシャプレート19および各プレッシャプレート20に、それぞれのプレートを戻すように作用しながら対応配置されていると特に有利である。
【0084】
板ばね62は、有利にはそれぞれの中間プレッシャプレート19および/またはプレッシャプレート20の位置決めのために構成され、かつ配置されている。
【0085】
離間リベット63および板ばね64,65の協働による中間プレッシャプレート19の位置決めにより、有利にはそれぞれの部分クラッチ2の全てのクラッチディスク18が適当な大きさの/または十分な大きさの間隙を軸方向で有していることが可能にされ、これにより、ドラグトルクを減じることができる。
【0086】
上述の構成は、有利な形式で専ら板ばねによる戻しを可能にするので、皿ばねは省略され得る。このことは一方では、クラッチ1もしくはそれぞれの部分クラッチ2の上述の直接操作とのシナジー効果をもたらす。他方では、傾動剛性のレバースプリングの省略を可能にする。したがって、幾何学的なエラーに基づくトルク変動が減じられ得るという効果が達成される。このことはさらに、クラッチ1全体のジャダーに対する敏感さを減少させる。したがって、たとえばクラッチ操作部45およびその剛性のプレッシャポット53のようなクラッチ締結(エンゲージ)のための機構と、板ばね62のようなクラッチ解放(レリーズ)のための機構を備えた上述のクラッチ1のようなピボット軟性の傾動しやすいシステムは有利である。
【0087】
第2の実施の形態を以下に図6につき簡単に説明する。同一の構成要素または類似する構成要素は、同一の参照符号を有しており、改めて説明されない。図6は、8枚プレート設計のコンセプトによるクラッチ1を示している。クラッチ1の8枚のプレートは、2つのカウンタプレッシャプレート17と、4つの中間プレッシャプレート19と、2つのプレッシャプレート20である。この場合、各部分クラッチ2は、1つのカウンタプレッシャプレート17と1つのプレッシャプレート20の他に、軸方向で位置固定された1つの中間プレッシャプレート66と、軸方向で移動可能な1つの中間プレッシャプレート67とを有しており、該軸方向で移動可能な中間プレッシャプレート67は、第1の実施の形態によるプレッシャプレート28,32または中間プレッシャプレート27,31に類似する。軸方向で位置固定された中間プレッシャプレート66は、それぞれのカウンタプレッシャプレート17に、たとえばリベット68により取り付けられている。
【0088】
さらに、各カウンタプレッシャプレート17は、ガイドとも呼ばれるガイド区分69を有している。ガイド区分69は、それぞれの中間プレッシャプレート19とワンピースにまたは2つの部分から形成されていてよい。それぞれの中間プレッシャプレート19も、周方向で有利には均等に分配された複数のガイド区分69を有していてよい。
【0089】
それぞれのガイド区分69には、軸方向で移動可能なそれぞれの中間プレッシャプレート67と、それぞれのプレッシャプレート20とが、相対回動不能にかつ軸方向に移動可能にガイドされもしくは取り付けられ、支承され、または懸架されている。ガイド区分69は、軸方向に移動可能な中間プレッシャプレート67およびプレッシャプレート20をガイドするために、それぞれたとえばレールの形態で、歯列の形態で、貫通部の形態等で実施されていてよい。この場合歯列は有利な態様を成す。ガイド区分69により、板ばね62(図6には図示せず)がトルクを伝達するためには使用されないことが達成され、これにより板ばね62は相応して小さく寸法設計され得る。
【0090】
第2の実施の形態によれば、各クラッチディスク18は、フェーシングばね35のような、少なくとも1つのフェーシングばね装置を有している。
【0091】
第2の実施の形態の図示しない変化形によれば、各部分クラッチ2の唯1つのクラッチディスク18だけが、フェーシングばね35のようなフェーシングばね装置を有している。
【0092】
第2の実施の形態の図示しない別の変化形によれば、各クラッチディスク18の各摩擦フェーシング33が、たとえばフェーシングばね35のようなフェーシングばね装置を有している。
【0093】
第2の実施の形態の図示しないさらに別の変化形によれば、クラッチディスク18のいずれも、フェーシングばね装置を有していない。この場合、軸方向で位置固定された中間プレッシャプレート66の代わりに、ばね付勢されて支承されもしくは支持された、軸方向で小さく制限されて移動可能な中間プレッシャプレート(図示せず)が設けられていてよい。この中間プレッシャプレートは、それぞれのカウンタプレッシャプレート17と、軸方向で小さく制限されて移動可能なそれぞれの中間プレッシャプレートとの間で軸方向に作用するばね作用、またはそのようなばね装置の作用下で、幾何学的なエラーの補償を生ぜしめることができる。
【0094】
第2の実施の形態の図示されていないさらに別の変化形によれば、ガイド69と中間プレッシャプレート19との間にばねエレメントが配置されている。このばねエレメントは、とりわけ幾何学的なエラーを補償するために、かつ/またはそれぞれのクラッチディスク18の通気のために、軸方向での支持のために形成されている。このばねエレメントは、しかし択一的には、たとえば整合エラーを補償するための半径の方向の支持のために形成されていてもよい。付加的にまたは択一的には、ばねエレメントは、トルクショック等を緩和するための周方向の支持のために形成されていてもよい。
【0095】
本発明の第3の実施の形態は図示されていない。本発明の第3の実施の形態は、シングルクラッチとして形成されたクラッチ1である。このシングルクラッチは、たとえば、第1の実施の形態によるクラッチ1が唯1つの部分クラッチ2、たとえば第1の部分クラッチ3しか有していないことにより達成され得る。このシングルクラッチ1により、第1および第2の実施の形態ならびにその変化形と同様の利点が達成可能である。
【符号の説明】
【0096】
1 クラッチ
2 部分クラッチ
3 第1の部分クラッチ
4 第2の部分クラッチ
5 クランクシャフト
6 第1の変速機入力シャフト
7 第2の変速機入力シャフト
8 変速機入力シャフト
9 フライホイール構成群
10 デュアルマスフライホイール
11 フライホイール
12 一次フライホイール
13 二次フライホイール
14 コイルばね
15 ずれ補償エレメント
16 差込み歯列
17 カウンタプレッシャプレート
18 クラッチディスク
19 中間プレッシャプレート
20 プレッシャプレート
21 第1のカウンタプレッシャプレート
22 第2のカウンタプレッシャプレート
23 ピン
24 共通のカウンタプレッシャプレート
25 第1のクラッチディスク
26 第2のクラッチディスク
27 第1の中間プレッシャプレート
28 第1のプレッシャプレート
29 第3のクラッチディスク
30 第4のクラッチディスク
31 第2の中間プレッシャプレート
32 第2のプレッシャプレート
33 摩擦フェーシング
34 フェーシング基板
35 フェーシングばね
36 リベット
37 クラッチ支持体
38 第1のクラッチ支持体
39 第2のクラッチ支持体
40 スプライン歯列
41 保持構成部分
42 係合輪郭
43 係合輪郭
44 歯列
45 クラッチ操作部
46 コンセントリックスレーブシリンダ
47 中空円筒状のシリンダ室
48 クラッチ操作部軸受
49 中空円筒状のピストン
50 第1のピストン
51 第2のピストン
52 変速機底部
53 プレッシャポット
54 第1のプレッシャポット
55 第2のプレッシャポット
56 プレッシャポット軸受
57,58 アンギュラ玉軸受
59 プレッシャプレート軸受
60 アンギュラ玉軸受
61 第2のカウンタプレッシャプレートのハブ区分
62 板ばね
63 離間リベット
64 中間プレッシャプレートに対応配置された板ばね
65 プレッシャプレートに対応配置された板ばね
66 軸方向に位置固定された中間プレッシャプレート
67 軸方向に移動可能な中間プレッシャプレート
68 リベット
69 ガイド区分
X 長手方向軸線
図1
図2
図3
図4
図5
図6