(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-22
(45)【発行日】2022-03-30
(54)【発明の名称】アセトン不溶性含有量の低いエステル化セルロースエーテル
(51)【国際特許分類】
C08B 13/00 20060101AFI20220323BHJP
A61K 9/48 20060101ALI20220323BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20220323BHJP
【FI】
C08B13/00
A61K9/48
A61K47/38
(21)【出願番号】P 2017510531
(86)(22)【出願日】2015-08-18
(86)【国際出願番号】 US2015045596
(87)【国際公開番号】W WO2016032791
(87)【国際公開日】2016-03-03
【審査請求日】2018-08-17
【審判番号】
【審判請求日】2020-06-15
(32)【優先日】2014-08-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521153216
【氏名又は名称】ニュートリション アンド バイオサイエンシズ ユーエスエー 1,リミティド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100147212
【氏名又は名称】小林 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100146466
【氏名又は名称】高橋 正俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142387
【氏名又は名称】齋藤 都子
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【氏名又は名称】中村 和広
(72)【発明者】
【氏名】オリヴァー・ピーターマン
(72)【発明者】
【氏名】マティアス・クナール
(72)【発明者】
【氏名】マティアス・スプレヘ
【合議体】
【審判長】大熊 幸治
【審判官】吉岡 沙織
【審判官】冨永 保
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-532151(JP,A)
【文献】国際公開第2014/031446(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/154607(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/031422(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08B13/00
REGISTRY(STN)
CAplus(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末形態のエステル化セルロースエーテルであって、
i)12.5重量部のエステル化セルロースエーテルと87.5重量部のアセトンとの21℃の混合物において、アセトン不溶性エステル化セルロースエーテル粒子の形態で存在するエステル化セルロースエーテルの比率が前記エステル化セルロースエーテルの総重量に基づき0.85重量パーセント以下であり、
ii)前記混合物において、90マイクロメートル超の粒径を有するアセトン不溶性エステル化セルロースエーテル粒子の比率が前記アセトン不溶性エステル化セルロースエーテル粒子の総数に基づき14パーセント以下であ
り、
前記エステル化セルロースエーテルの各々はヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネートである、エステル化セルロースエーテル。
【請求項2】
前記混合物において、アセトン不溶性エステル化セルロースエーテル粒子の形態で存在するエステル化セルロースエーテルの比率が前記エステル化セルロースエーテルの総重量に基づき0.50重量パーセント以下である、請求項1に記載のエステル化セルロースエーテル。
【請求項3】
前記混合物において、90マイクロメートル超の粒径を有するアセトン不溶性エステル化セルロースエーテル粒子の比率が前記アセトン不溶性エステル化セルロースエーテル粒子の総数に基づき10パーセント以下である、請求項1または2に記載のエステル化セルロースエーテル。
【請求項4】
液体希釈剤と、請求項1~3のいずれか一項に記載の少なくとも1つのエステル化セルロースエーテルと、を含む、組成物。
【請求項5】
請求項1~3のいずれか一項に記載の少なくとも1つのエステル化セルロースエーテル中に少なくとも1つの活性成分を含む、固体分散体。
【請求項6】
請求項1~3のいずれか一項に記載のエステル化セルロースエーテルでコーティングされた、製剤。
【請求項7】
請求項1~3のいずれか一項に記載のエステル化セルロースエーテルを含む、カプセルシェル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アセトン不溶性含有量の低いエステル化セルロースエーテル、ならびにかかるエステル化セルロースエーテル中の活性成分の固体分散体、ならびにかかるエステル化セルロースエーテルを含む、液体組成物、コーティング剤形、及びカプセル、ならびにエステル化セルロースエーテルを生成するためのプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
セルロースエーテルのエステル、それらの使用、及びそれらを調製するためのプロセスは、概して当該技術分野において既知である。ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート(HPMCAS)などの、種々の既知のエステル化セルロースエーテルが、薬学的剤形用の腸溶性ポリマーとして有用である。腸溶性ポリマーは、胃の酸性環境における溶解に耐性があるものである。かかるポリマーでコーティングされる剤形は、酸性環境における不活化若しくは分解から薬物を保護するか、または薬物による胃の刺激を防止する。
【0003】
米国特許第4,365,060号明細書は、優れた腸溶性作用を有すると言われている腸溶性カプセルを開示している。腸溶性カプセルは、酸性スクシニル基及び脂肪族一価アシル基でエステル化されるセルロースエーテルのエステルで成形される。エステル化に使用されるセルロースエステルは、十分な可塑性を獲得するために約5,000~200,000の範囲の分子量を有することが推奨される。
【0004】
国際公開第2014/031422号は、80,000ダルトン~350,000ダルトンの重量平均分子量Mw、及びアセトン中1.5重量パーセント溶液として低い濁度を有するヒドロキシアルキルメチルセルロースアセテートサクシネートを開示している。低い濁度は、透明フィルムまたはコーティングにおいて望ましい。
【0005】
国際公開第2005/115330号、同第2011/159626号、同第2013/154607号、及び同第2014/031422号は、水溶性が劣る薬物の可溶性を改善するためのHPMCASの使用に関する。多数の現在既知の薬物が、低い水溶性を有し、そのため剤形を調製するのに複雑な技術が要求される。1つの方法は、かかる薬物をアセトン中でHPMCASと一緒に溶解させること、及びその溶液を噴霧乾燥することを含む。HPMCASは、薬物の結晶化度を低下させ、それにより薬物の溶解に必要な活性化エネルギーを最小限に抑え、かつ薬物分子の周囲に親水性条件を確立し、それにより薬物自体の可溶性を改善することにより、そのバイオアベイラビリティ、即ち、摂取後の個人によるインビボでの吸収を高めることを目的としている。
【0006】
しかしながら、アセトン中の薬物及びHPMCAS等のエステル化セルロースエーテルの溶液を噴霧乾燥することは、複雑な操作である。最適に動作していない噴霧システムは、噴霧乾燥操作の費用を大幅に増加させる。噴霧ノズルが部分的に閉塞されると、噴霧効率は悪化する。詰まりを引き起こし得る要因は、噴霧ノズルの口の内側及び外縁部における粒子凝集及び材料の堆積であることが概して知られている。噴霧ノズルの詰まりを減少させるために、米国特許第2,099,502号明細書に開示されているものなどの、噴霧システムの吸い込み管路または圧力管路中に漉し器を持つ噴霧システムを提供することが長年知られている。内蔵型漉し器を持つ噴霧ノズルも知られている。しかしながら、長期にわたる噴霧システムの適切な操作を可能にするためには、漉し器の定期的なクリーニングが必要とされる。
【0007】
アセトン中の薬物及びHPMCASなどの薬物及びエステル化セルロースエーテルの溶液を噴霧乾燥する複雑性を考慮すると、例えば、溶媒システムにおけるエステル化セルロースエーテル粒子の凝集または塊の低減または防止によって、例えば、アセトンを溶媒として使用するときに、噴霧乾燥用途のための溶媒システムにおける不溶性セルロースエーテル粒子を減少させる方法を見出すための長年にわたる切実な必要性が存在する。
【発明の概要】
【0008】
意外にも、非常に低い量のアセトン不溶性エステル化セルロースエーテル粒子を有する新たなエステル化セルロースエーテルが、セルロースエーテルが希釈剤としての脂肪族カルボン酸の存在下で脂肪族モノカルボン酸無水物及び/またはジカルボン酸無水物でエステル化されるときに生成され、結果として得られる反応生成物混合物が任意に希釈される場合には、任意に希釈された反応生成物混合物が濾過され、この濾過した反応生成物混合物からエステル化セルロースエーテルが沈殿することが見出された。
【0009】
したがって、本発明の一態様は、エステル化セルロースエーテルであって、
i)エステル基として、脂肪族一価アシル基、または式-C(O)-R-COOAの基、または脂肪族一価アシル基と式-C(O)-R-COOAの基との組み合わせであって、式中、Rが、二価脂肪族または芳香族炭化水素基であり、Aが、水素またはカチオンである、脂肪族一価アシル基、または式-C(O)-R-COOAの基、または脂肪族一価アシル基と式-C(O)-R-COOAの基との組み合わせと、
ii)0.85重量パーセント以下の含有量のアセトン不溶性エステル化セルロースエーテル粒子と、を有し、これが、エステル化セルロースエーテルが、12.5重量部のエステル化セルロースエーテルと87.5重量部のアセトンとの21℃の混合物中に存在する場合であり、アセトン不溶性エステル化セルロースエーテル粒子の重量パーセントが、エステル化セルロースエーテルの総重量に基づき、
iii)アセトン不溶性エステル化セルロースエーテル粒子の14パーセント以下が、90マイクロメートル超の粒径を有し、パーセンテージが、アセトン不溶性エステル化セルロースエーテル粒子の総数に基づく、エステル化セルロースエーテルである。
【0010】
本発明の別の態様は、エステル化セルロースエーテルを生成するためのプロセスであって、
I.セルロースエーテルを、脂肪族カルボン酸の存在下で、脂肪族モノカルボン酸無水物、またはジカルボン酸無水物、またはこれらの組み合わせでエステル化して、エステル化セルロースエーテルと脂肪族カルボン酸とを含む反応生成物混合物を生成するステップと、
II.ステップIにおいて得られた反応生成物混合物を任意に希釈するステップと、
III.任意に希釈した反応生成物混合物を濾過するステップと、
IV.エステル化セルロースエーテルを、濾過した反応生成物混合物から、濾過した反応生成物混合物を水と接触させることによって沈殿させるステップと、を含む、プロセスである。
【0011】
本発明の別の態様は、液体希釈剤及び少なくとも1つの上記のエステル化セルロースエーテルを含む組成物である。
【0012】
本発明の更に別の態様は、少なくとも1つの上記のエステル化セルロースエーテル中に少なくとも1つの活性成分を含む固体分散体である。
【0013】
本発明の更に別の態様は、上記のエステル化セルロースエーテルでコーティングされる剤形である。
【0014】
本発明の更に別の態様は、上記のエステル化セルロースエーテルを含むカプセルシェルである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】ヒドロキシプロピルメチルセルロースを酢酸ナトリウム及び酢酸の存在下で無水酢酸及び無水コハク酸でエステル化し、続いて酢酸で希釈することによって得られる2つの反応生成物混合物の写真描写である。
図1の1A部は、濾過前の希釈された反応生成物混合物を表す。
図1の1B部は、濾過後の希釈された反応生成物混合物の写真を表す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
エステル化セルロースエーテルは、本発明の文脈において無水グルコース単位と表される、β-1,4グリコシド結合D-グルコピラノース反復単位を有する、セルロース主鎖を有する。エステル化セルロースエーテルは、好ましくは、エステル化アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、またはヒドロキシアルキルアルキルセルロースである。これは、本発明のエステル化セルロースエーテルにおいて、無水グルコース単位のヒドロキシル基の少なくとも一部が、アルコキシル基若しくはヒドロキシアルコキシル基、またはアルコキシル及びヒドロキシアルコキシル基の組み合わせによって置換されることを意味する。ヒドロキシアルコキシル基は、典型的にはヒドロキシメトキシル、ヒドロキシエトキシル、及び/またはヒドロキシプロポキシル基である。ヒドロキシエトキシル及び/またはヒドロキシプロポキシル基が好ましい。典型的には、1または2種類のヒドロキシアルコキシル基が、エステル化セルロースエーテル中に存在する。好ましくは、単一の種類のヒドロキシアルコキシル基、より好ましくはヒドロキシプロポキシルが存在する。アルコキシル基は、典型的にはメトキシル、エトキシル、及び/またはプロポキシル基である。メトキシル基が好ましい。上に定義のエステル化セルロースエーテルの実例となるものは、エステル化メチルセルロース、エチルセルロース、及びプロピルセルロースなどのエステル化アルキルセルロース;エステル化ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、及びヒドロキシブチルセルロースなどのエステル化ヒドロキシアルキルセルロース;ならびにエステル化ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシメチルエチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルエチルセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロース、及びヒドロキシブチルエチルセルロースなどのエステル化ヒドロキシアルキルアルキルセルロース;ならびにエステル化ヒドロキシエチルヒドロキシプロピルメチルセルロースなどの、2つ以上のヒドロキシアルキル基を有するものである。最も好ましくは、エステル化セルロースエーテルは、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのエステル化ヒドロキシアルキルメチルセルロースである。
【0017】
無水グルコース単位のヒドロキシル基のヒドロキシアルコキシル基による置換度は、ヒドロキシアルコキシル基のモル置換、MS(ヒドロキシアルコキシル)によって表現される。MS(ヒドロキシアルコキシル)は、エステル化セルロースエーテル中の無水グルコース単位当たりのヒドロキシアルコキシル基の平均モル数である。ヒドロキシアルキル化反応中、セルロース主鎖に結合したヒドロキシアルコキシル基のヒドロキシル基は、アルキル化剤、例えば、メチル化剤及び/またはヒドロキシアルキル化剤によって更にエーテル化され得ることを理解されたい。無水グルコース単位の同一の炭素原子位置に対する複数の後続のヒドロキシアルキル化エーテル化反応は、側鎖をもたらし、複数のヒドロキシアルコキシル基は、エーテル結合によって互いと共有結合し、各側鎖は、全体として、セルロース主鎖に対するヒドロキシアルコキシル置換基を形成する。
【0018】
故に、用語「ヒドロキシアルコキシル基」は、ヒドロキシアルコキシル置換基の構成単位としてのヒドロキシアルコキシル基を指すものとして、MS(ヒドロキシアルコキシル)の文脈において解釈されるべきであり、いずれも上に概説されるように、単一のヒドロキシアルコキシル基または側鎖を含み、2つ以上のヒドロキシアルコキシ単位は、エーテル結合によって互いに共有結合している。この定義内で、ヒドロキシアルコキシル置換基の末端ヒドロキシル基が更にアルキル化、例えばメチル化されるかどうかは重要ではなく、アルキル化及び非アルキル化両方のヒドロキシアルコキシル置換基が、MS(ヒドロキシアルコキシル)の決定に対して含まれる。本発明のエステル化セルロースエーテルは、概して、0.05~1.00、好ましくは0.08~0.90、より好ましくは0.12~0.70、最も好ましくは0.15~0.60、及び具体的には0.20~0.50の範囲のヒドロキシアルコキシル基のモル置換を有する。
【0019】
無水グルコース単位当たりの、メトキシル基などのアルコキシル基によって置換されるヒドロキシル基の平均数は、アルコキシル基の置換度、DS(アルコキシル)として表される。上記のDSの定義において、用語「アルコキシル基によって置換されるヒドロキシル基」は、セルロース主鎖の炭素原子に直接結合したアルキル化ヒドロキシル基だけではなく、セルロース主鎖に結合したヒドロキシアルコキシル置換基のアルキル化ヒドロキシル基も含むと、本発明内で解釈される。本発明に従ったエステル化セルロースエーテルは、好ましくは、1.0~2.5、より好ましくは1.1~2.4、最も好ましくは1.2~2.2、及び具体的には1.6~2.05の範囲のDS(アルコキシル)を有する。
【0020】
最も好ましくは、エステル化セルロースエーテルは、DS(アルコキシル)に関して上に示される範囲内のDS(メトキシル)、及びMS(ヒドロキシアルコキシル)に関して上に示される範囲内のMS(ヒドロキシプロポキシル)を有する、エステル化ヒドロキシプロピルメチルセルロースである。
【0021】
本発明のエステル化セルロースエーテルは、エステル基として、脂肪族一価アシル基、または式-C(O)-R-COOAの基、または脂肪族一価アシル基及び式-C(O)-R-COOAの基の組み合わせを有し、式中、Rは二価脂肪族または芳香族炭化水素基であり、Aは水素またはカチオンである。カチオンは、好ましくは、NH4
+などのアンモニウムカチオン、またはナトリウム若しくはカリウムイオンなどのアルカリ金属イオン、より好ましくはナトリウムイオンである。最も好ましくは、Aは、水素である。
【0022】
脂肪族一価アシル基は、好ましくは、n-ブチリルまたはi-ブチリルなど、アセチル、プロピオニル、及びブチリルからなる群から選択される。
【0023】
式-C(O)-R-COOAの好ましい基は、
-C(O)-CH2-CH2-COOA、例えば、-C(O)-CH2-CH2-COOH若しくは-C(O)-CH2-CH2-COO-Na+、
-C(O)-CH=CH-COOA、例えば、-C(O)-CH=CH-COOH若しくは-C(O)-CH=CH-COO-Na+、または
-C(O)-C6H4-COOA、例えば、-C(O)-C6H4-COOH若しくは-C(O)-C6H4-COO-Na+である。
【0024】
式-C(O)-C6H4-COOAの基において、カルボニル基及びカルボン酸基は、好ましくはオルト位で配列される。
【0025】
好ましいエステル化セルロースエーテルは、
i)HPMCXY及びHPMCXであって、HPMCがヒドロキシプロピルメチルセルロースであり、XがA(アセテート)であるか、またはXがB(ブチラート)であるか、またはXがPr(プロピオネート)であり、YがS(サクシネート)であるか、またはYがP(フタレート)であるか、またはYがM(マレアート)であり、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートフタレート(HPMCAP)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートマレアート(HPMCAM)、若しくはヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート(HPMCAS)である、HPMCXY及びHPMCX、あるいは
ii)ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HPMCP);ヒドロキシプロピルセルロースアセテートサクシネート(HPCAS)、ヒドロキシブチルメチルセルロースプロピオネートサクシネート(HBMCPrS)、ヒドロキシエチルヒドロキシプロピルセルロースプロピオネートサクシネート(HEHPCPrS);及びメチルセルロースアセテートサクシネート(MCAS)である。
【0026】
ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート(HPMCAS)が、最も好ましいエステル化セルロースエーテルである。
【0027】
エステル化セルロースエーテルは、概して、0.05~1.75、好ましくは0.10~1.50、より好ましくは0.15~1.25、及び最も好ましくは0.20~1.00の、アセチル、プロピオニル、またはブチリル基などの脂肪族一価アシル基の置換度を有する。エステル化セルロースエーテルは、概して、0~1.6、好ましくは0.05~1.30、より好ましくは0.05~1.00、及び最も好ましくは0.10~0.70、または更には0.10~0.60の、サクシノイルなどの式-C(O)-R-COOAの基の置換度を有する。
【0028】
i)脂肪族一価アシル基の置換度、及びii)式-C(O)-R-COOAの基の置換度の合計は、概して、0.05~2.0、好ましくは0.10~1.4、より好ましくは0.20~1.15、最も好ましくは0.30~1.10、及び具体的には0.40~1.00である。
【0029】
アセテート及びサクシネートエステル基の含有量は、「Hypromellose Acetate Succinate,United States Pharmacopia and National Formulary,NF 29,pp.1548-1550」に従って決定される。報告された値は、揮発物に対して補正される(上記のHPMCAS研究論文中の「乾燥減量」の節に記載されるように決定される)。その方法は、プロピオニル、ブチリル、フタリル、及び他のエステル基の含有量を決定するために、類似した方法で使用されてもよい。
【0030】
エステル化セルロースエーテル中のエーテル基の含有量は、「Hypromellose」,United States Pharmacopeia and National Formulary,USP 35,pp 3467-3469に関して記載されるものと同じ様式で決定する。
【0031】
上記の分析によって得られるエーテル及びエステル基の含有量は、以下の式に従って個々の置換基のDS及びMS値に変換される。式は、他のセルロースエーテルエステルの置換基のDS及びMSを決定するために、類似した方法で使用されてもよい。
【0032】
【0033】
慣習により、重量パーセントは、全ての置換基を含む、セルロース反復単位の総重量に基づく平均重量百分率である。メトキシル基の含有量は、メトキシル基(即ち、-OCH3)の質量に基づき報告される。ヒドロキシアルコキシル基の含有量は、ヒドロキシプロポキシル(即ち、-O-CH2CH(CH3)-OH)など、ヒドロキシアルコキシル基(即ち、-O-アルキレン-OH)の質量に基づき報告される。脂肪族一価アシル基の含有量は、-C(O)-R1の質量に基づき報告され、式中、R1は、アセチル(-C(O)-CH3)など、一価脂肪族基である。式-C(O)-R-COOHの基の含有量は、サクシノイル基(即ち、-C(O)-CH2-CH2-COOH)の質量など、この基の質量に基づき報告される。
【0034】
本発明のエステル化セルロースエーテルは、概して、10,000ダルトン以上、好ましくは30,000ダルトン以上、より好ましくは50,000ダルトン以上、最も好ましくは80,000ダルトン以上、及び具体的には100,000ダルトン以上の重量平均分子量Mwを有する。本発明のエステル化セルロースエーテルは、概して、最大500,000、好ましくは最大450,000ダルトン、より好ましくは最大350,000ダルトン、更により好ましくは最大250,000ダルトン、及び具体的には最大200,000ダルトンまたは最大180,000ダルトンの重量平均分子量Mwを有する。
【0035】
本発明のエステル化セルロースエーテルは、典型的には、少なくとも1.3、より典型的には少なくとも1.5、及び最も典型的には少なくとも1.8または少なくとも2.0の多分散性Mw/Mnを有する。更に、本発明のエステル化セルロースエーテルは、典型的には、最大4.0、好ましくは最大3.5、より好ましくは最大3.0、更により好ましくは最大2.8、及び最も好ましくは最大2.6の多分散性を有する。多分散性Mw/Mnは、重量平均分子量Mw及び数平均分子量Mnの決定に基づき計算される。
【0036】
本発明のエステル化セルロースエーテルは、概して、5,000以上、好ましくは10,000ダルトン以上、より好ましくは30,000ダルトン以上、及び最も好ましくは40,000ダルトン以上の数平均分子量Mnを有する。本発明のエステル化セルロースエーテルは、概して、最大150,000ダルトン、好ましくは最大110,000ダルトン、より好ましくは最大90,000ダルトン、及び最も好ましくは最大70,000ダルトンの数平均分子量Mnを有する。
【0037】
Mw及びMnは、40容量部のアセトニトリルと、50mMのNaH2PO4及び0.1MのNaNO3を含有する60容量部の水性緩衝液とを混合することで生成された混合物を移動相として使用して、SEC-MALLSによって測定される。移動相は、8.0のpHに調整される。SEC-MALLSは、質量好感度の多角度レーザ光散乱検出器と連結したサイズ排除クロマトグラフィーを意味する。手順は、Journal of Pharmaceutical and Biomedical Analysis 56(2011)743-748に記載されている。Mw及びMnの測定は、実施例にてより詳細に説明する。
【0038】
本発明のエステル化セルロースエーテルは、概して、20℃の0.43重量%の水性NaOH中のエステル化セルロースエーテルの2.0重量%溶液として測定して、最大200mPa・s、好ましくは最大100mPa・s、より好ましくは最大50mPa・s、更により好ましくは最大30mPa・s、最も好ましくは最大10mPa・s、及び具体的には最大5mPa・sの粘度を有する。概して、粘度は、20℃の0.43重量%の水性NaOH中のエステル化セルロースエーテルの2.0重量%溶液として測定して、少なくとも1.2mPa・s、典型的には少なくとも1.8mPa・s、及びより典型的には少なくとも2.4mPa・sである。エステル化セルロースエーテルの2.0重量%溶液を、「Hypromellose Acetate Succinate,United States Pharmacopia and National Formulary,NF 29,pp.1548-1550」に記載の通りに調製した後、DIN 51562-1:1999-01(1999年1月)に従ってウベローデ粘度測定を行う。
【0039】
本発明のエステル化セルロースエーテルの1つの重要な特徴は、そのアセトン不溶性粒子の非常に低い含有量である。より具体的には、本発明のエステル化セルロースエーテルは、0.85重量パーセント以下、好ましくは0.50重量パーセント以下、及びより好ましくは0.35重量パーセント以下の含有量のアセトン不溶性エステル化セルロースエーテル粒子を有し、アセトン不溶性エステル化セルロースエーテル粒子の重量パーセントは、エステル化セルロースエーテルの総重量に基づく。典型的には、エステル化セルロースエーテルは、エステル化セルロースエーテルの総重量に基づいて、0.05重量パーセント以上、より典型的には0.1重量パーセント以上のアセトン不溶性エステル化セルロースエーテル粒子を含有する。アセトン不溶性エステル化セルロースエーテル粒子の重量パーセントは、12.5重量部のエステル化セルロースエーテルと87.5重量部のアセトンとの21℃の混合物を生成することによって決定される。アセトン不溶性エステル化セルロースエーテル粒子の重量パーセントを決定するための方法は、実施例においてより詳細に説明する。言い換えると、アセトン不溶性エステル化セルロースエーテル粒子の重量パーセントは、21℃のアセトン中のエステル化セルロースエーテルの12.5重量%溶液に基づいて決定され、ここでは、用語「エステル化セルロースエーテルの12.5重量%溶液」は、溶解したまたは溶解していないエステル化セルロースエーテル粒子の総重量を指す。10~20重量部、典型的には12~15重量部のエステル化セルロースエーテルと、80~90重量部、典型的には85~88重量部のアセトンとの混合物中の非常に低い濃度のアセトン不溶性エステル化セルロースエーテル粒子は、効率的な噴霧乾燥のための重要な特徴である。高いパーセンテージのHPMCASを、例えば、薬剤、特に水溶性が劣る薬剤などの活性成分のための担体または可溶化剤として含む溶液を調製し噴霧乾燥することが非常に望ましい。
【0040】
更に、上述の少ない含有量のアセトン不溶性エステル化セルロースエーテル粒子の14パーセント以下、好ましくは12パーセント以下、より好ましくは10パーセント以下、及び最も好ましくは8パーセント以下が、90マイクロメートル超の粒径を有し、パーセンテージは、アセトン不溶性エステル化セルロースエーテル粒子の総数に基づく。
【0041】
上記の少ない濃度のアセトン不溶性エステル化セルロースエーテル粒子の好ましくは10パーセント以下、より好ましくは8パーセント以下、及び最も好ましくは4パーセント以下が、130マイクロメートル超の粒径を有し、パーセンテージは、アセトン不溶性エステル化セルロースエーテル粒子の総数に基づく。
【0042】
意外にも、低い重量パーセンテージのアセトン不溶性エステル化セルロースエーテル粒子、及び小さい粒径のこれらのアセトン不溶性エステル化セルロースエーテル粒子は、I.セルロースエーテルを、脂肪族カルボン酸の存在下で、脂肪族モノカルボン酸無水物またはジカルボン酸無水物、またはこれらの組み合わせでエステル化して、エステル化セルロースエーテル及び脂肪族カルボン酸を含む反応生成物混合物を生成するステップ、II.ステップIで得た反応生成物混合物を任意に希釈するステップ、III.任意に希釈した反応生成物混合物を濾過するステップ、及びIV.エステル化セルロースエーテルを、濾過した反応生成物混合物から、濾過した反応生成物混合物を水と接触させることによって沈殿させるステップを含む、エステル化セルロースエーテルを生成するためのプロセスにおいて達成され得る。
【0043】
酢酸などの脂肪族カルボン酸を反応希釈剤として含む任意に希釈した反応生成物混合物を濾過し、続いて濾過した反応生成物混合物を水と接触させることによってエステル化セルロースエーテルを濾過した反応生成物混合物から沈殿させることが、アセトン不溶性エステル化セルロースエーテル粒子の量及びサイズを低下させることは、極めて驚くべきことである。
図1の1A部によって例示されるように、セルロースエーテルを脂肪族カルボン酸の存在下で脂肪族モノカルボン酸無水物またはジカルボン酸無水物、またはこれらの組み合わせでエステル化し、続いて任意に希釈することによって得られる反応生成物混合物は、透明な溶液であり、溶解していない粒子は目視されない。
図1の1A部は、典型的な研究室環境におけるガラス容器中の溶液を示す。溶解していない粒子は、研究室のテーブルのように背景が暗い場合にも、研究室の白壁のように背景が明るい場合にも、目視されない。よって、溶液を濾過する見掛けの必要性はない。更に、
図1に例示される濾過した溶液と濾過していない溶液との間の目に見える大きな差異はない。
図1の1B部は、
図1の1A部に示される溶液の濾過から生じる溶液を示す。
【0044】
また、酢酸などの脂肪族カルボン酸中に溶解される反応生成物混合物を濾過することが、アセトン不溶性粒子の量及びサイズを低下させることは、驚くべきことである。酢酸などの脂肪族カルボン酸は、アセトンとは大きく異なる溶媒である。更に、アセトン不溶性粒子の量及びサイズが、エステル化セルロースエーテルが濾過した反応生成物混合物から沈殿される場合であっても低下し得ることは、驚くべきことである。アセトン中10~20重量%、典型的には12~15重量%などの高濃度溶液において粒子凝集が発生し、これが、薬物及びエステル化セルロースエーテルの溶液の噴霧乾燥時に詰まりを引き起こすことが、概して知られている。よって、エステル化セルロースエーテルの生成における単純なステップは、アセトン中のエステル化セルロースエーテルの溶解特性、及びエステル化セルロースエーテル中の薬物などの活性成分の固体分散体の生成者のためのその有用性を大幅に改善する。
【0045】
セルロースエーテルを脂肪族カルボン酸の存在下で脂肪族モノカルボン酸無水物またはジカルボン酸無水物、またはこれらの組み合わせでエステル化するための手順は、概して、当該技術分野で既知であり、例えば、米国特許第3,435,027号明細書、同第4,226,981号明細書、国際公開第2005/115330号及び同第2013/148154号、または欧州特許出願公開第0219426号明細書に記載されている。
【0046】
好ましくは、セルロースエーテルは、上に更に記載するようなエーテル基の種類及びエーテル基の置換度(複数可)を有する本発明のプロセスのステップIにおいて出発物質として使用される。使用されるセルロースエーテルは、概して、ASTM D2363-79(2006年再認証)に従って20℃の2重量%の水溶液として測定して、少なくとも1.2mPa・s、典型的には少なくとも1.8mPa・s、及びより典型的には少なくとも2.4mPa・sの粘度を有する。使用されるセルロースエーテルは、概して、ASTM D2363-79(2006年再認証)に従って、20℃の2重量%の水溶液として測定して、最大200mPa・s、好ましくは最大100mPa・s、より好ましくは最大50mPa・s、更により好ましくは最大30mPa・s、最も好ましくは最大10mPa・s、及び具体的には最大5mPa・sの粘度を有する。かかる粘度のセルロースエーテルは、より高い粘度のセルロースエーテルを部分的脱重合プロセスに供することによって得ることができる。部分的脱重合プロセスは、当該技術分野で周知であり、例えば、欧州特許出願公開第1141029号明細書、同第210917号明細書、同第1423433号明細書、及び米国特許第4,316,982号明細書に記載されている。あるいは、部分的脱重合は、セルロースエーテルの生成中に、例えば、酸素または酸化剤の存在によって、達成され得る。
【0047】
好ましい脂肪族モノカルボン酸無水物は、酢酸無水物、酪酸無水物、及びプロピオン酸無水物からなる群から選択される。好ましいジカルボン酸無水物は、コハク酸無水物、マレイン酸無水物、及びフタル酸無水物からなる群から選択される。脂肪族モノカルボン酸無水物及びジカルボン酸無水物を組み合わせて使用する場合、これら2つの無水物は、同時に、または順に別々に、反応容器中に導入してもよい。反応容器中に導入される各無水物の量は、通常、エステル化による無水グルコース単位の所望のモル置換度の化学量論量の1~10倍である、最終生成物中で得られる所望のエステル化度に応じて決定される。脂肪族モノカルボン酸の無水物を使用する場合、脂肪族モノカルボン酸の無水物とセルロースエーテルの無水グルコース単位との間のモル比は、概して、0.9以上、及び好ましくは1以上である。脂肪族モノカルボン酸の無水物とセルロースエーテルの無水グルコース単位との間のモル比は、概して、8以下、好ましくは6以下、及びより好ましくは4以下である。ジカルボン酸の無水物を使用する場合、ジカルボン酸の無水物とセルロースエーテルの無水グルコース単位との間のモル比は、概して、0.1以上、及び好ましくは0.13以上である。ジカルボン酸の無水物とセルロースエーテルの無水グルコース単位との間のモル比は、1.5以下、及び好ましくは1以下である。本発明のプロセスで利用されるセルロースエーテルの無水グルコース単位のモル数は、DS(アルコキシル)及びMS(ヒドロキシアルコキシル)から置換無水グルコース単位の平均分子量を計算することによって、出発物質として使用されるセルロースエーテルの重量から決定され得る。
【0048】
エステル化ステップIは、酢酸、プロピオン酸、または酪酸などの脂肪族カルボン酸中で実施される。反応希釈剤は、ベンゼン、トルエン、1,4-ジオキサン、若しくはテトラヒドロフランなどの芳香族若しくは脂肪族溶媒;またはジクロロメタン若しくはジクロロメチルエーテルなどのハロゲン化C1-C3誘導体など、室温で液体でありセルロースエーテルと反応しない、少量の他の溶媒または希釈剤を含むことができるが、脂肪族カルボン酸の量は、反応希釈剤の総重量に基づき、50パーセント超、より好ましくは少なくとも75パーセント、及び更により好ましくは少なくとも90パーセントである。最も好ましくは、反応希釈剤は、脂肪族カルボン酸からなる。モル比[脂肪族カルボン酸/セルロースエーテルの無水グルコース単位]は、概して、[4.9/1.0]~[11.5/1.0]、好ましくは[5.5/1.0]~[11.0/1.0]、より好ましくは[5.7/1.0]~[10.0/1.0]である。
【0049】
エステル化反応は、概して、エステル化触媒の存在下、好ましくは、酢酸ナトリウムまたは酢酸カリウムなどのカルボン酸アルカリ金属の存在下で実施される。カルボン酸アルカリ金属の量は、好ましくは、100重量部のセルロースエーテル当たり20~200重量部のカルボン酸アルカリ金属である。混合物は、概して、60℃~110℃、好ましくは70~100℃で、反応を完了するのに十分な期間、つまり、典型的には、2~25時間、より典型的には2~8時間かけて加熱される。
【0050】
本発明の好ましい実施形態では、エステル化ステップIは、(IA)セルロースエーテル及び第1の量のカルボン酸アルカリ金属を、脂肪族カルボン酸中に溶解または分散させるステップと、(IB)得られた混合物を、脂肪族モノカルボン酸無水物またはジカルボン酸無水物、またはこれらの組み合わせを、ステップ(IA)で得られた混合物に添加する前、最中、または後に、60℃~110℃、好ましくは70~100℃の温度に加熱し、エステル化反応を進行させるステップと、(IC)ステップ(IB)でのエステル化反応が完了する前に、第2の量のカルボン酸アルカリ金属を添加し、エステル化反応を更に進行させるステップと、を含む。このエステル化プロセスの好ましい実施形態のための好ましいセルロースエーテル、カルボン酸アルカリ金属、脂肪族カルボン酸、脂肪族モノカルボン酸無水物、及びジカルボン酸無水物は、上に更に記載するものである。ステップ(IA)において、まずセルロースエーテル、またはまずカルボン酸アルカリ金属、または両方を同時に脂肪族カルボン酸中に溶解または分散させてもよい。カルボン酸アルカリ金属の総添加量の好ましくは15~35パーセントのみ、より好ましくは20~30パーセントのみを、ステップ(IA)において添加する。ステップ(IB)において、エステル化反応は、反応を部分的に完了するのに十分な期間、典型的には、最大60分、より典型的には15~45分かけて進行させる。ステップ(IC)において、第2の量のカルボン酸アルカリ金属を反応混合物に添加し、エステル化反応を更に進行させる。カルボン酸アルカリ金属の総添加量の好ましくは65~85パーセント、より好ましくは70~80パーセントを、ステップ(IC)において添加する。反応混合物を、典型的には、反応を完了するのに十分な追加の期間、つまり、典型的には2~8時間、より典型的には2~5時間にわたって、60℃~110℃、好ましくは70~100℃に保つ。ステップ(IA)、(IB)、及び(IC)を含む本発明の好ましい実施形態では、ステップ(IA)及び(IC)において添加したカルボン酸アルカリ金属の総量は、好ましくは、モル比[カルボン酸アルカリ金属/セルロースエーテルの無水グルコース単位]が、[1.0/1.0]~[3.5/1.0]、より好ましくは[1.1/1.0]~[3.0/1.0]、及び最も好ましくは[1.9/1.0]~[2.5/1.0]であるようなものである。
【0051】
ステップIでのエステル化官能の完了後、結果として得られる反応生成物混合物は、エステル化セルロースエーテル、反応媒体として使用される脂肪族カルボン酸、典型的には、反応触媒、例えば、カルボン酸アルカリ金属、典型的には、残りの量の1つ以上のエステル化剤、ならびに副生物、例えば、脂肪族モノカルボン酸及び/またはジカルボン酸を含む。結果として得られる反応生成物混合物は、概して、3~60重量パーセントのエステル化セルロースエーテル、20~90重量パーセントの脂肪族カルボン酸、5~50重量パーセントの反応触媒、例えば、カルボン酸アルカリ金属、及び0.1~30重量パーセントの微量成分、例えば、脂肪族モノカルボン酸及び/またはジカルボン酸の未反応無水物を含む。
【0052】
ステップIで得られた反応生成物混合物は、任意にステップIIで希釈される。例えば、反応生成物混合物のいくらかの希釈及び低下は、反応生成物混合物を第1の量の水でクエンチすることによって達成される。しかしながら、かかるクエンチは、エステル化セルロースエーテルを反応生成物混合物から沈殿させることなく実施されるべきである。あるいは、反応生成物混合物の粘度は、酢酸などの反応希釈剤として使用される脂肪族カルボン酸といった有機溶媒で希釈することによって低下させてもよい。任意に希釈した反応生成物を濾過に供する前に、これを、他の手段によって任意に冷却するかまたは冷却させてもよい。
【0053】
濾過ステップIIIでは、反応生成物混合物は、概して、20℃以上、好ましくは30℃以上、より好ましくは40℃以上、及び最も好ましくは60℃以上の温度を有するべきである。反応生成物混合物が上記のように希釈されていない場合、反応生成物混合物は、概して、濾過ステップIIIにおいて30℃以上の温度を有する。反応生成物混合物の温度は、概して、濾過中、最大110℃、好ましくは最大100℃、及びより好ましくは最大90℃である。
【0054】
濾過ステップIIIを実施するための好ましい濾過デバイスは、濾過用バスケットストレーナー、標準的な布などの、フィルター要素、フィルターバッグ、またはカートリッジを備え付けたフィルターカートリッジまたはハウジング、フェルトフィルターを含むデプスまたはプリーツ型フィルター、ポリプロピレン、ポリエステル、ナイロン、綿などから作製されるマイクロファイバー及びモノフィラメントフィルター、あるいは穿孔された、溝を付けられた、若しくは化学的にエッチングされたプレート、ワイヤスクリーン、焼結プレート、鋼製フリースなど、または砂、不活性鉱物、合成固体などのような、適当な分離特性を持つバルク材料から作製された金属またはステンレス鋼製フィルターである。かかる濾過デバイスの供給を行っている典型的な企業は、LENZING Technik GmbH,Germany、(例えば、ViscoFil(登録商標))、MAHLE Industry GmbH,Gemany,(例えば、バスケットストレインフィルター、自動フィルター)、FUHR GmbH,Gemany、(例えば、フィルターユニット、自浄式フィルター)、またはRusselFinex RUSSEL FINEX Inc.,USA,(例えば、自浄式フィルター、Russell Eco Filter(登録商標))である。最も好ましいものは、穿孔されたまたは化学的にエッチングされたプレートまたはワイヤスクリーンから作製されるステンレス鋼製フィルターを備え付けたフィルターハウジングである。濾過ステップは、周囲圧力で実施され得るが、真空濾過または加圧濾過が好ましい。濾過デバイスは、好ましくは5マイクロメートル以上、及びより好ましくは10μm以上の開口を有するスクリーンを有する。概して、スクリーンは、最大1000マイクロメートル、好ましくは最大500μm、より好ましくは最大300μmまたは200μmまたは150μm、最も好ましくは最大100μmまたは90μm、及び一部の用途には最大60μmまたは40μmまたは20μmの開口を有する。90マイクロメートルの開口を有するスクリーンが、非常に低い含有量のアセトン不溶性エステル化セルロースエーテル粒子と高い濾過効率との最適化された組み合わせを提供することが見出されている。濾過媒体は、使用後または連続生成中に、溶媒または洗剤での濯ぎ、濾過流体自体による逆洗、またはワイパー、スクリュー、ピストンなどによる機械的クリーニングなど、異なる方法でクリーニングすることができる。
【0055】
後続のステップIVでは、エステル化セルロースエーテルを、濾過した反応生成物混合物から、濾過した反応生成物混合物を水と接触させることによって沈殿させる。沈殿ステップIVは、米国特許第4,226,981号明細書、国際公開第2005/115330号、または欧州特許出願公開第0219426号明細書に記載されるように、例えば、反応生成物混合物を大量の水と接触させることによって、既知の様式で実施され得る。本発明の好ましい実施形態では、反応生成物は、国際公開第2013/148154号として公開された国際特許出願第PCT/US13/030394号に記載されているように、反応混合物から沈殿されて、粉末形態のエステル化セルロースエーテルを生成し得る。
【0056】
本発明の別の態様は、液体希釈剤、及び上記のエステル化セルロースエーテルのうちの1つ以上を含む組成物である。本明細書で使用される場合、用語「液体希釈剤」は、25℃及び大気圧で液体である希釈剤を意味する。希釈剤は、好ましくは、水若しくは有機液体希釈剤、または水と有機液体希釈剤との混合物であってもよい。本明細書で使用される場合、用語「有機液体希釈剤」は、1つの有機溶媒、または2つ以上の有機溶媒の混合物を意味する。好ましい有機液体希釈剤は、酸素、窒素、または塩素などのハロゲンなど、1つ以上のヘテロ原子を有する、極性有機溶媒である。より好ましい有機液体希釈剤は、アルコール、例えば、グリセロールなどの多官能アルコール、または好ましくはメタノール、エタノール、イソプロパノール、若しくはn-プロパノールなどの単官能アルコール;テトラヒドロフランなどのエーテル、アセトン、メチルエチルケトン、若しくはメチルイソブチルケトンなどのケトン;エチルアセテートなどのアセテート;塩化メチレンなどのハロゲン化炭化水素;またはアセトニトリルなどのニトリルである。より好ましくは、液体希釈剤は、アセトンなどのケトン、またはケトンと別の極性有機溶媒との混合物である。
【0057】
液体希釈剤、及び上記のエステル化セルロースエーテルのうちの1つ以上を含む、本発明の組成物は、活性成分に対する賦形剤系として有用であり、肥料、除草剤、または殺虫剤などの活性成分、またはビタミン、ハーブ、ならびにミネラルサプリメント及び薬などの生物活性成分に対する賦形剤系を調製するための中間体として特に有用である。したがって、本発明の組成物は、好ましくは、1つ以上の活性成分、最も好ましくは1つ以上の薬物を含む。用語「薬物」は従来のものであり、動物、特にヒトに投与されたとき、有益な予防的及び/または治療的特性を有する、化合物を示す。好ましくは、薬物は、「低可溶性薬物」であり、薬物が約0.5mg/mL以下の生理学的に適切なpH(例えば、pH1~8)の水溶性を有することを意味する。本発明は、薬物の水溶性が減少するにつれて、より大きな有用性を見出す。故に、本発明の組成物は、0.1mg/mL未満、または0.05mg/mL未満、または0.02mg/mL未満、または更には0.01mg/mL未満の水溶性を有する低可溶性薬物に対して好ましく、水溶性(mg/mL)は、USP疑似胃腸緩衝液を含む、任意の生理学的に適切な水溶液(例えば、1~8のpH値を有するもの)において観察される最小値である。活性成分は、本発明から利益を得るために、低可溶性活性成分である必要はないが、低可溶性活性成分は、本発明で使用するための好ましいクラスを表す。所望の使用環境においてかなりの水溶性を呈する活性成分は、最大で1~2mg/mLの、または更には20~40mg/mLほど高い水溶性を有し得る。有用な低可溶性薬物は、国際公開第2005/115330号、17~22頁に列挙されている。
【0058】
本発明の組成物は、組成物の総重量に基づき、好ましくは1~40重量パーセント、より好ましくは2.5~30重量パーセント、最も好ましくは5~25重量パーセント、及び具体的には7~20パーセントの少なくとも1つの上記のエステル化セルロースエーテル、40~99重量パーセント、より好ましくは54.9~97.4重量パーセント、最も好ましくは65~94.5重量パーセント、及び具体的には70~92パーセントの更に上に記載の液体希釈剤、ならびに0~40パーセント、好ましくは0.1~40パーセント、最も好ましくは0.5~25パーセント、及び具体的には1~15パーセントの活性成分を含む。
【0059】
本発明の一態様では、少なくとも1つの上記のエステル化セルロースエーテル、1つ以上の活性成分、及び任意に1つ以上のアジュバントを含む組成物は、液体形態、例えば、懸濁液、スラリー、噴霧可能な組成物、またはシロップの形態で使用され得る。液体組成物は、例えば、経口、眼、局所、直腸、または鼻腔適用に有用である。液体希釈剤は、概して、上記のように、任意に水と混合した、エタノールまたはグリセロールなど、薬学的に許容可能であるべきである。
【0060】
本発明の別の態様では、本発明の液体組成物は、更に上に記載の薬物などの少なくとも1つの活性成分、少なくとも1つの上記のエステル化セルロースエーテル、及び任意に1つ以上のアジュバントを含む、固体分散体を生成するために使用される。固体分散体は、組成物から液体希釈剤を除去することによって生成される。
【0061】
液体組成物から液体希釈剤を除去する1つの方法は、液体組成物をフィルム若しくはカプセルに流し込むことによるか、または結果として活性成分を含み得る固体担体上に液体組成物を適用することによる。固体分散体を生成する好ましい方法は、噴霧乾燥による。用語「噴霧乾燥」は、液体混合物を小さい液滴に細分化し(噴霧化)、液滴からの液体希釈剤の蒸発のための強い駆動力がある噴霧乾燥装置中で、混合物から液体希釈剤を急速に除去することを伴うプロセスを指す。噴霧乾燥プロセス及び噴霧乾燥機器は、概して、Perry’s Chemical Engineers’ Handbook,pages 20-54~20-57(Sixth Edition 1984)に記載されている。噴霧乾燥プロセス及び噴霧乾燥機器に関する更なる詳細は、Marshall,「Atomization and Spray-Drying」,50 Chem.Eng.Prog.Monogr.Series 2(1954)、及びMasters,Spray Drying Handbook(Fourth Edition 1985)によって論評されている。有用な噴霧乾燥プロセスは、国際公開第2005/115330号、34ページ、7行目~35ページ、25行目に記載されている。好ましい液体希釈剤、特に、アセトンなどのケトン、またはケトンと別の極性有機溶媒との混合物は、上で更に列挙されている。本発明のエステル化セルロースエーテルの非常に低い含有量のアセトン不溶性粒子、及び小さい粒径のアセトン不溶性エステル化セルロースエーテル粒子の残りの量は、これらを、少なくとも1つのエステル化セルロースエーテル、液体希釈剤、及び少なくとも1つの活性成分を含む上述の組成物を噴霧乾燥することによるエステル化セルロースエーテル中の活性成分の固体分散体の調製に非常に好適とする。噴霧乾燥デバイスの詰まりは、既知のエステル化セルロースエーテルを含む同等の組成物の噴霧乾燥と比較して著しく減少し得る。
【0062】
あるいは、本発明の固体分散体は、i)a)少なくとも1つの上に定義のエステル化セルロースエーテル、b)1つ以上の活性成分、ならびにc)構成要素a)及びb)とは異なる1つ以上の任意の添加剤をブレンドすることと、ならびにii)ブレンドを押出に供することとによって調製してもよい。本明細書で使用される場合、用語「押出」は、射出成形、溶融鋳造、及び圧縮成形として既知のプロセスを含む。薬物などの活性成分を含む組成物を押出する、好ましくは溶融押出するための技法は既知であり、Joerg Breitenbach,Melt extrusion:from process to drug delivery technology,European Journal of Pharmaceutics and Biopharmaceutics 54(2002)107-117、または欧州特許出願公開第0872233号明細書に記載されている。上述の構成要素a)、b)、及び任意にc)は、好ましくは粒子形態、より好ましくは粉末形態で混合される。構成要素a)、b)、及び任意にc)は、ブレンドを押出に利用するデバイスに供給する前に予混合し得る。有用な押出用デバイス、特に有用な押出機は、当該技術分野で既知である。あるいは、構成要素a)、b)、及び任意にc)は、加熱ステップの前または最中に、押出機に別々に供給され、デバイス中でブレンドしてもよい。押出後、押出物は、容易に、成形、型成形、チョップ、ビーズへと球状化、ストランドへと切断、タブレット化、さもなければ所望の物理形状に加工し得る。押出物は、任意に、冷却して硬化させ、粉末形態に粉砕し得る。
【0063】
本発明の固体分散体は、エステル化セルロースエーテルa)及び活性成分b)の総重量に基づき、好ましくは20~99.9パーセント、より好ましくは30~98パーセント、及び最も好ましくは60~95パーセントの上記のエステル化セルロースエーテルa)、ならびに好ましくは0.1~80パーセント、より好ましくは2~70パーセント、及び最も好ましくは5~40パーセントの活性成分b)を含む。エステル化セルロースエーテルa)及び活性成分b)の組み合わせた量は、固体分散体の総重量に基づき、好ましくは少なくとも70パーセント、より好ましくは少なくとも80パーセント、及び最も好ましくは少なくとも90パーセントである。残りの量は、ある場合は、アジュバントc)のうちの1つ以上であり、これらは、構成要素a)及びb)とは異なり、以下でより詳細に説明する。固体分散体は、エステル化セルロースエーテルa)のうちの1つ以上、活性成分b)のうちの1つ以上、及び任意にアジュバントc)のうちの1つ以上を含むことができるが、それらの総量は、概して上述の範囲内である。
【0064】
少なくとも1つのエステル化セルロースエーテル中に少なくとも1つの活性成分を含む固体分散体が形成されると、剤形への分散体の取り込みを促進するために、いくつかの加工操作が使用され得る。これらの加工操作は、乾燥、造粒、及び製粉を含む。固体分散体中の任意のアジュバントの包含は、組成物を剤形に製剤化するために有用であり得る。本発明の固体分散体は、例えば、ストランド、ペレット、顆粒、ピル、タブレット、カプレット、微粒子、カプセル充填物、若しくは射出成形カプセルの形態、または粉末、フィルム、ペースト、クリーム、懸濁液、若しくはスラリーの形態など、種々の形態であってもよい。
【0065】
剤形中の活性成分の量は、概して、剤形の総重量に基づき、少なくとも0.1パーセント、好ましくは少なくとも1パーセント、より好ましくは少なくとも3パーセント、最も好ましくは少なくとも5パーセント、及び概して、最大70パーセント、好ましくは最大50パーセント、より好ましくは最大30パーセント、最も好ましくは最大25パーセントである。
【0066】
本発明の別の態様では、液体希釈剤、及び上記のエステル化セルロースエーテルのうちの1つ以上を含む、本発明の組成物は、コーティング組成物を形成するために、タブレット、顆粒、ペレット、カプレット、トローチ剤、坐薬、ペッサリー、または埋め込み型剤形などの剤形をコーティングするために使用され得る。本発明の組成物が薬物などの活性成分を含む場合、薬物の層化が達成され得、これは即ち、剤形及びコーティングが、異なる最終用途のための、及び/または異なる放出動態を有する、異なる活性成分を含んでもよいということである。
【0067】
本発明の更に別の態様では、液体希釈剤、及び上記のエステル化セルロースエーテルのうちの1つ以上を含む、本発明の組成物は、液体組成物を浸漬ピンと接触させるステップを含むプロセスにおいて、カプセルの製造のために使用されてもよい。
【0068】
本発明の液体組成物及び固体分散体は、着色剤、色素、乳白剤、香味料及び呈味改良剤、酸化防止剤、ならびにこれらの任意の組み合わせなどの、任意の添加剤を更に含んでもよい。任意の添加剤は、好ましくは薬学的に許容可能である。1つ以上の任意のアジュバントの有用な量及び種類は、当該技術分野において概して既知であり、本発明の液体組成物及び固体分散体の目的とする最終用途に応じて決まる。
【0069】
以下の実施例は、例示のみを目的とし、本発明の範囲を限定することは意図していない。
【実施例】
【0070】
特に断りがない限り、全ての部及び百分率は、重量による。実施例では、以下の試験手順を使用する。
【0071】
エーテル及びエステル基の含有量
エステル化セルロースエーテル中のエーテル基の含有量は、「Hypromellose」,United States Pharmacopeia and National Formulary,USP 35,pp 3467-3469に関して記載されるものと同じ様式で決定する。
【0072】
アセチル基(-CO-CH3)によるエステル置換及びサクシノイル基(-CO-CH2-CH2-COOH)によるエステル置換を、Hypromellose Acetate Succinate,United States Pharmacopia and National Formulary,NF 29,pp.1548-1550」に従って決定する。エステル置換に関する報告された値を、揮発物に対して補正した(上記のHPMCAS研究論文中の「乾燥減量」の節に記載されるように決定する)。
【0073】
ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)試料の粘度
HPMC試料の粘度を、20℃±0.1℃の水中の2.0重量%溶液として測定する。水中の2.0重量%HPMC溶液を、United States Pharmacopeia(USP 35,「Hypromellose」,pages 3467-3469)に従って調製した後、DIN 51562-1:1999-01(1999年1月)に従ってウベローデ粘度測定を行う。
【0074】
ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート(HPMCAS)の粘度
0.43重量%の水性NaOH中のHPMCASの2.0重量%溶液を、「Hypromellose Acetate Succinate,United States Pharmacopia and National Formulary,NF 29,pp.1548-1550」に記載の通りに調製した後、DIN 51562-1:1999-01(1999年1月)に従って、20℃でウベローデ粘度測定を行う。
【0075】
アセトン不溶性HPMCAS粒子の含有量の決定
アセトン中のHPMCASの12.5重量%溶液を、12.5gの乾燥HPMCASを87.5gのアセトンに添加し、続いて混合物を12時間21℃でローラー上で転がすことによって調製する。21.75gのこの溶液を、加重したバイアル(容積58mL)中に移し、9124rpm(9400xg)のBiofuge Stratosを用いて、遠心分離による加熱を回避するために冷却しながら30分間遠心分離する。遠心分離後、透明の液相及び固体部分を得る。その後、注射器によって液相を慎重に除去する。
【0076】
残りの量のアセトン及びその中に溶解したHPMCASを完全に除去するために、20mLのアセトンをバイアルに添加し、固体と慎重に混合する。スパチュラを更に15mLのアセトンでパージして、不溶性粒子が依然としてスパチュラに付着していないことを確実にする。その後、混合物を、9124rpm(9400xg)で30分間、冷却しながら再度遠心分離する。次に、液相を注射器によって慎重に除去する。アセトンを、開口したバイアルを乾燥チャンバ中で12時間50℃に保つことによって残りの固相から蒸発させる。その後、バイアルを45分間21℃で乾燥器中に保つ。グラム表記のアセトン不溶性粒子の量は、アセトン不溶性粒子を含むバイアルの重量と空のバイアルの重量との間の差異である。
【0077】
本発明の実施例では、アセトン不溶性エステル化セルロースエーテル粒子の重量パーセントは、12.5重量部のエステル化セルロースエーテル及び87.5重量部のアセトン中で測定される。本質的には、同じ結果が、アセトン中のエステル化セルロースエーテルの10重量%溶液中、即ち、10重量部のエステル化セルロースエーテルと90重量部のアセトンとの混合物におけるアセトン不溶性エステル化セルロースエーテル粒子の重量パーセントを測定するときに得られる。異なる濃度の2つの溶液中のアセトン不溶性含有量の間の差異は5%未満である。例えば、本発明の第1のHPMCASは、a)12.5重量部のHPMCASと87.5重量部のアセトンとの混合物中、0.35%のアセトン不溶性含有量、及びb)10.0重量部のHPMCASと90.0重量部のアセトンとの混合物中、0.34%アセトン不溶性含有量を有する。本発明の第2のHPMCASは、a)12.5重量部のHPMCASと87.5重量部のアセトンとの混合物中、0.37%のアセトン不溶性含有量、及びb)10.0重量部のHPMCASと90.0重量部のアセトンとの混合物中、0.36%アセトン不溶性含有量を有する。
【0078】
アセトン不溶性エステル化セルロースエーテル粒子の粒径の決定
アセトン不溶性粒子の粒子を、15重量%のアセトン溶液中で、汎用液体モジュール(ULM2)及び偏光強度回折散乱(PIDS)モジュールを備え付けたレーザ回折粒径分析器Beckman Coulter LS13320MWによって決定する。エステル化セルロースエーテルアセトンの15重量%の溶液を、2日間21℃で撹拌することによって得る。
【0079】
濁度の決定
本発明のヒドロキシアルキルメチルセルロースアセテートサクシネートのアセトン中1.5重量%溶液を、ヒドロキシアルキルメチルセルロースアセテートサクシネートをアセトンと混合し、混合物を室温で24時間撹拌することによって調製する。濁度を、Turbidimeter 2100AN(タングステンランプ、ドイツカタログ番号47089-00)(Hach Company,Loveland,Colorado,USA)を用いて分析する。濁度は、試料セル(直径24mm)を通した散乱光の分析であり、USEPA法180.1に従って、NTU(比濁分析濁度単位)で付与する。分析は、<0.1NTU~7500NTUの範囲のホルマジン基準(StablCal(商標)、カタログ番号2659505)に対して行う。USEPA法180.1フィルターモジュール(カタログ番号3031200)を使用する。実施例において付与する結果は、10回の測定の平均である。
【0080】
Mw及びMnの決定
特に指定のない限り、Mw及びMnを、Journal of Pharmaceutical and Biomedical Analysis 56(2011)743-747に従って測定する。移動相は、40容量部のアセトニトリルと、50mMのNaH2PO4及び0.1MのNaNO3を含有する60容量部の水性緩衝液との混合物を混合することによって調製した。移動相を8.0のpHに調整した。セルロースエーテルエステルの溶液を細孔径0.45μmのシリンジフィルターを通して、HPLCバイアル中に濾過した。
【0081】
より具体的には、利用した化学物質及び溶媒は、以下の通りである。
ポリエチレンオキシド基準物質(PEOX 20 K及びPEOX 30 Kと省略される)を、Agilent Technologies,Inc.Palo Alto,CA、カタログ番号PL2083-1005及びPL2083-2005から購入した。
【0082】
アセトニトリル(HPLCグレード≧99.9%、CHROMASOL plus)、カタログ番号34998、水酸化ナトリウム(半導体グレード、99.99%、微量金属塩基)、カタログ番号306576、水(HPLCグレード、CHROMASOLV Plus)カタログ番号34877、及び硝酸ナトリウム(99,995%、微量金属塩基)カタログ番号229938を、Sigma-Aldrich,Switzerlandから購入した。
【0083】
リン酸二水素ナトリウム(≧99.999%、TraceSelect)カタログ番号71492を、FLUKA,Switzerlandから購入した。
【0084】
5mg/mLのPEOX20 Kの標準化溶液、2mg/mLのPEOX30 Kの基準溶液、及び2mg/mLのHPMCASの試料溶液を、計量した量のポリマーをバイアル中に添加し、測定した体積の移動相でそれを溶解させることによって、調製した。全ての溶液を、PTFEコーティング磁気撹拌子を使用して撹拌しながら、24時間、蓋の付いたバイアル中で、室温で溶解させた。
【0085】
標準化溶液(PEOX 20K、単一調製、N)及び基準溶液(PEOX30 K、二重調製、S1及びS2)を、細孔径0.02μm及び直径25mmのシリンジフィルター(Whatman Anatop 25、カタログ番号6809-2002)、Whatmanを通して、HPLCバイアル中に濾過した。
【0086】
試験試料溶液(HPMCAS、二重で調製、T1、T2)及び実験室基準(HPMCAS、単一調製、LS)を、細孔径0.45μmのシリンジフィルター(Nylon、例えば、Acrodisc 13mm VWR カタログ番号514-4010)を通して、HPLCバイアル中に濾過した。
【0087】
クロマトグラフ条件及び実行シーケンスを、Chen,R.et al.;Journal of Pharmaceutical and Biomedical Analysis 56(2011)743-748)によって記載される通りに実施した。SEC-MALLS器具一式は、Agilent Technologies,Inc.Palo Alto,CAからのHP1100 HPLCシステム、DAWN Heleos II 18角度レーザ光散乱検出器及びOPTILAB rex屈折率検出器(両方ともWyatt Technologies,Inc.Santa Barbara,CAから)を含んだ。分析サイズ排除カラム(TSK-GEL(登録商標)GMPWXL、300×7.8mm)をTosoh Bioscienceから購入した。OPTILAB及びDAWNの両方を35℃で作動させた。分析SECカラムを、室温(24±5℃)で作動させた。移動相は、以下の通り調製した、40容量部のアセトニトリルと、50mMのNaH2PO4及び0.1MのNaNO3を含有する60容量部の水性緩衝液との混合物であった。
【0088】
水性緩衝液:7.20gのリン酸二水素ナトリウム及び10.2gの硝酸ナトリウムを、溶解するまで撹拌下で清潔な2Lのガラスボトル中の1.2Lの精製水に添加した。
【0089】
移動相:800mLのアセトニトリルを、上で調製した1.2Lの水性緩衝液に添加し、良好な混合物が得られ、温度が周囲温度と平衡になるまで撹拌した。
移動相を、10MのNaOHで8.0のpHに調整し、0.2mナイロン膜フィルターを通して濾過した。流量は、インライン脱ガスを用いて0.5mL/分であった。注入容量は、100μLであり、分析時間は、35分であった。
【0090】
HPMCASに対して、0.120mL/gのdn/dc値(屈折率増分)を使用して、Wyatt ASTRAソフトウェア(バージョン5.3.4.20)によって、MALLSデータを収集及び処理した。検出器の光散乱信号(番号1~4、17、及び18)は、分子量計算で使用しなかった。代表的なクロマトグラフ実行シーケンスは、以下:B、N、LS、S1(5×)、S2、T1(2×)、T2(2×)、T3(2×)、T4(2×)、S2、T5(2×)など、S2、LS、Wの通りであり、ここで、Bは、移動相のブランク注入を表し、N1は、標準化溶液を表し、LSは、実験室基準HPMCASを表し、S1及びS2は、それぞれ基準溶液1及び2を表し、T1、T2、T3、T4、及びT5は、試験試料溶液を表し、Wは、水注入を表す。(2×)及び(5×)は、同一溶液の注入数を示す。
【0091】
OPTILAB及びDAWNの両方を、製造業者の推奨手順及び頻度で、定期的に較正した。5mg/mLのポリエチレンオキシド基準(PEOX20 K)の100μL注入を、各実行シーケンスに対して、90°検出器に対して全ての角度光散乱検出器を標準化するために採用した。
【0092】
この単分散ポリマー基準の使用はまた、OPTILABとDAWNとの間の容量遅延の決定を可能にし、屈折率信号に対する光散乱信号の適当な整合を可能にした。これは、各データスライスに対する重量平均分子量(Mw)の計算のために必要である。
【0093】
比較例Aに従うHPMCASの生成
氷酢酸、酢酸無水物、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、コハク酸無水物、及び酢酸ナトリウム(無水)を以下の表1に列挙する量で利用して、HPMCASを生成した。HPMCは、以下の表2に列挙するようなメトキシル及びヒドロキシプロポキシル置換、ならびにASTM D2363-79(2006年再認証)に従って20℃の水中の2%溶液として測定して、約3mPa・sの粘度を有した。HPMCは、Methocel E3 LVプレミアムセルロースエーテルとして、The Dow Chemical Companyから市販されている。
【0094】
HPMC(無水)を、反応器に添加した総量の25%の酢酸ナトリウム(無水)と共に反応器において酢酸中で85℃で事前に溶解させた。その後、コハク酸無水物及び酢酸無水物を撹拌下で反応器に添加した。30分の反応時間の後、総量の残りの75%の酢酸ナトリウム(無水)を反応器に添加した。反応混合物を更に180分間反応させた。反応混合物は85℃の温度を有した。
【0095】
エステル化後、HPMCASを沈殿させずに、23℃の温度を有する0.28Lの水を撹拌下で反応器に添加した。実施例1に従うHPMCAS生成のために621gの反応生成物混合物を反応器から除去した。その後、1.2Lの水を撹拌下で反応器に添加して、HPMCASを沈殿させた。5200rpmで動作するUltra-Turrax撹拌器S50-G45を使用して、高剪断混合を適用することによって、沈殿生成物を反応器から除去し、8.5Lの水で洗浄した。生成物を濾過によって単離し、一晩55℃で乾燥させた。
【0096】
実施例1に従うHPMCASの生成
621gの比較例Aの移した反応生成物混合物を、除去直後に2Lの氷酢酸で希釈し、23℃で冷却させた。
図1Aは、濾過前の希釈された反応生成物混合物の写真を表す。希釈された反応生成物混合物を、それを10~16マイクロメートルの開口を有するG4ガラスフィルタースクリーンに通すことによって濾過した。
図1Bは、濾過後の希釈された反応生成物混合物の写真を表す。
【0097】
濾過後、23℃の温度を有する8Lの水を撹拌下で反応器に添加して、HPMCASを沈殿させた。5200rpmで動作するUltra-Turrax撹拌器S50-G45を使用して、高剪断混合を適用することによって、12Lの水で沈殿生成物を洗浄した。生成物を濾過によって単離し、一晩55℃で乾燥させた。
【0098】
比較例Bに従うHPMCASの生成
氷酢酸、酢酸無水物、及びコハク酸無水物を、以下の表1に列挙する量で、徹底的な撹拌下で反応容器中に導入した。その後、混合物を、無水コハク酸が溶解するまで撹拌しながら55℃で加熱した。その後、酢酸ナトリウム(無水)及び比較例Aと同じHPMCを、表1に列挙する量で導入した。反応混合物を180分間85℃で反応させた。
【0099】
エステル化後、HPMCASを沈殿させずに、23℃の温度を有する0.28Lの水を撹拌下で反応器に添加した。実施例2に従うHPMCAS生成のために607gの反応生成物混合物を反応器から除去した。その後、1.2Lの水を撹拌下で反応器に添加して、HPMCASを沈殿させた。5200rpmで動作するUltra-Turrax撹拌器S50-G45を使用して、高剪断混合を適用することによって、沈殿生成物を反応器から除去し、10.5Lの水で洗浄した。生成物を濾過によって単離し、一晩55℃で乾燥させた。
【0100】
実施例2に従うHPMCASの生成
607gの比較例Bの移した反応生成物混合物を、除去直後に2Lの氷酢酸で希釈し、23℃で冷却させた。反応生成物混合物を、それを10~16マイクロメートルの開口を有するG4ガラスフィルターに通すことによって濾過した。
【0101】
濾過後、23℃の温度を有する8Lの水を撹拌下で反応器に添加して、HPMCASを沈殿させた。5200rpmで動作するUltra-Turrax撹拌器S50-G45を使用して、高剪断混合を適用することによって、8Lの水で沈殿生成物を洗浄した。生成物を濾過によって単離し、一晩55℃で乾燥させた。
【0102】
比較例C及びD(2014年2月20日に出願された同時係属米国仮特許出願第61/942,371号の実施例1及び2に対応する)に従うHPMCASの生成
氷酢酸、酢酸無水物、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、コハク酸無水物、及び酢酸ナトリウム(無水)を以下の表1に列挙する量で利用して、HPMCASを生成した。HPMCは、以下の表2に列挙するようなメトキシル及びヒドロキシプロポキシル置換、ならびにASTM D2363-79(2006年再認証)に従って20℃の水中の2%溶液として測定して、約3mPa・sの粘度を有した。HPMCは、Methocel E3 LVプレミアムセルロースエーテルとして、The Dow Chemical Companyから市販されている。
【0103】
230gのHPMC(無水)を、50gの酢酸ナトリウム(無水)と共に170gの酢酸中で、85℃で事前に溶解させた。その後、38.9gのコハク酸無水物及び170gの酢酸無水物を撹拌下で反応器に添加した。30分の反応時間の後、150gの酢酸ナトリウム(無水)を反応器に添加した。比較例Cでは、反応混合物を更に120分間反応させ、比較例Dでは、反応混合物を更に180分間反応させた。
【0104】
エステル化後、比較例C及びDの各々において、2.3Lの水を撹拌下で反応器に添加して、HPMCASを沈殿させた。5200rpmで動作するUltra-Turrax撹拌器S50-G45を使用して、高剪断混合を適用することによって、沈殿生成物を反応器から除去し、14~19Lの水で洗浄した。生成物を濾過によって単離し、一晩50℃で乾燥させた。
【0105】
比較例E及びFに従うHPMCASの生成
比較例E及びFは、国際公開第2014/031422号の実施例3及び4に対応する。比較例E及びF(国際公開第2014/031422号の実施例3及び4)は、本発明の実施例1及び2のHPMCASと同等である重量平均分子量Mw、及びアセトン中1.5重量パーセント溶液と低い濁度を有する。比較例E及びFは、アセトン溶液中の低い濁度が、10重量パーセントのエステル化セルロースエーテルと90重量パーセントのアセトンとの混合物におけるアセトン不溶性HPMCASの低い含有量と相関しないことを示す。
【0106】
比較例E及びFを、氷酢酸、無水酢酸、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、無水コハク酸、及び酢酸ナトリウム(無水)を、以下の表1に列挙する量で、徹底的な撹拌下で反応容器中に導入することによって生成した。実施例1と同じHPMCを使用した。混合物を3時間撹拌しながら85℃で加熱して、エステル化をもたらした。1.8Lの水を撹拌下で反応器に添加して、HPMCASを沈殿させた。5200rpmで動作するUltra-Turrax撹拌器S50-G45を使用して、高剪断混合を適用することによって、沈殿生成物を反応器から除去し、16Lの水で洗浄した。生成物を濾過によって単離し、50℃で乾燥させた。その後、生成物を、Ultra-Turrax攪拌機S50-G45を使用して過剰な水の中で繰り返しスラリー化すること、及び生成物を濾過によって単離することで、生成物を徹底的に洗浄した。洗浄した生成物を50℃で再度乾燥させた。
【0107】
比較例G~I
国際公開第2011/159626号、1及び2頁に開示の通り、HPMCASは、Shin-Etsu Chemical Co.,Ltd.(Tokyo,Japan)から現在市販されており、商標名「AQOAT」で知られる。Shin-Etsuは、種々のpHレベルの腸溶性保護を提供するために、置換基レベルの異なる組み合わせを有する、3つのグレードのAQOATポリマー、典型的には、AS-LFまたはAS-LGなど、良好(fine)に対して記号表示「F」または「G」が後に続く、AS-L、AS-M、及びAS-Hを製造している。それらの販売明細を以下に列挙する。
【0108】
国際公開第2011/159626号に列挙されるAQOATポリマーの特性
【0109】
【0110】
市販の材料の試料を、上で更に記載した通りに分析した。
【0111】
実施例1~2及び比較例A~Iに従って生成したHPMCASの特性を以下の表2及び3に列挙する。
【0112】
以下の表2及び3中、略語は以下の意味を有する。
DSM=DS(メトキシル):メトキシル基による置換度
MSHP=MS(ヒドロキシプロポキシル):ヒドロキシプロポキシル基によるモル置換
DOSAc:アセチル基の置換度
DOSs:サクシノイル基の置換度
【0113】
以下の表3中の結果は、本発明のエステル化セルロースエーテルが、a)非常に低い含有量のアセトン不溶性エステル化セルロースエーテル粒子と、b)小さい粒径のアセトン不溶性エステル化セルロースエーテル粒子との組み合わせを有することを例示する。これは、薬物及びエステル化セルロースエーテルの溶液の噴霧乾燥など、高品質のエステル化セルロースエーテルを必要とする多くの用途に非常に望ましい。
【0114】
【0115】
【0116】
【表3】
本開示は以下の態様も包含する。
[1] エステル化セルロースエーテルであって、
ii)エステル基として、脂肪族一価アシル基、または式-C(O)-R-COOAの基、または前記脂肪族一価アシル基と前記式-C(O)-R-COOAの基との組み合わせであって、式中、Rが、二価脂肪族または芳香族炭化水素基であり、Aが、水素またはカチオンである、脂肪族一価アシル基、または式-C(O)-R-COOAの基、または前記脂肪族一価アシル基と前記式-C(O)-R-COOAの基との組み合わせと、
ii)0.85重量パーセント以下の含有量のアセトン不溶性エステル化セルロースエーテル粒子と、を有し、これが、前記エステル化セルロースエーテルが、12.5重量部のエステル化セルロースエーテルと87.5重量部のアセトンとの21℃の混合物中に存在する場合であり、前記アセトン不溶性エステル化セルロースエーテル粒子の重量パーセントが、前記エステル化セルロースエーテルの総重量に基づき、
iii)前記アセトン不溶性エステル化セルロースエーテル粒子の14パーセント以下が、90マイクロメートル超の粒径を有し、前記パーセンテージが、前記アセトン不溶性エステル化セルロースエーテル粒子の総数に基づく、エステル化セルロースエーテル。
[2] 前記エステル化セルロースエーテルの総重量に基づいて、0.50重量パーセント以下の含有量のアセトン不溶性エステル化セルロースエーテル粒子を有する、上記態様1に記載のエステル化セルロースエーテル。
[3] 前記アセトン不溶性エステル化セルロースエーテル粒子の10パーセント以下が、90マイクロメートル超の粒径を有し、前記パーセンテージが、前記アセトン不溶性エステル化セルロースエーテル粒子の総数に基づく、上記態様1または2に記載のエステル化セルロースエーテル。
[4] 前記脂肪族一価アシル基が、アセチル、プロピオニル、またはブチリル基であり、前記式-C(O)-R-COOAの基が、-C(O)-CH
2
-CH
2
-COOA、-C(O)-CH=CH-COOA、または-C(O)-C
6
H
4
-COOAである、上記態様1~3のいずれかに記載のエステル化セルロースエーテル。
[5] ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネートである、上記態様1~4のいずれかに記載のエステル化セルロースエーテル。
[6] エステル化セルロースエーテルを生成するためのプロセスであって、
I.セルロースエーテルを、脂肪族カルボン酸の存在下で、脂肪族モノカルボン酸無水物、またはジカルボン酸無水物、またはこれらの組み合わせでエステル化して、エステル化セルロースエーテルと前記脂肪族カルボン酸とを含む反応生成物混合物を生成するステップと、
II.ステップIにおいて得られた前記反応生成物混合物を任意に希釈するステップと、
III.前記任意に希釈した反応生成物混合物を濾過するステップと、
IV.前記エステル化セルロースエーテルを、前記濾過した反応生成物混合物から、前記濾過した反応生成物混合物を水と接触させることによって沈殿させるステップと、を含む、プロセス。
[7] ステップIまたはIIにおいて得られた前記反応生成物混合物が、最大1000マイクロメートルの開口を有するスクリーンを通して濾過される、上記態様6に記載のプロセス。
[8] ステップIにおいて得られた前記反応生成物混合物が、ステップIIIにおける濾過の前に、前記エステル化セルロースエーテルを前記反応生成物混合物から沈殿させずに第1の量の水と、または脂肪族カルボン酸と混合される、上記態様6または7に記載のプロセス。
[9] 前記エステル化ステップIが、
(IA)セルロースエーテル及び第1の量のカルボン酸アルカリ金属を、脂肪族カルボン酸中に溶解または分散させるステップと、
(IB)前記得られた混合物を、脂肪族モノカルボン酸無水物、またはジカルボン酸無水物、またはこれらの組み合わせをステップ(IA)において得られた前記混合物に添加する前、最中、または後に、60℃~110℃の温度に加熱し、エステル化反応を進行させるステップと、
(IC)ステップ(IB)における前記エステル化反応が完了する前に、第2の量のカルボン酸アルカリ金属を添加し、前記エステル化反応を更に進行させるステップと、を含む、上記態様6~8のいずれかに記載のプロセス。
[10] ステップ(IA)において添加した前記第1の量のカルボン酸アルカリ金属が、前記プロセスにおいて添加したカルボン酸アルカリ金属の総量に基づき、15~35パーセントであり、ステップ(IB)で添加した前記第2の量のカルボン酸アルカリ金属が、65~85パーセントである、上記態様9に記載の前記プロセス。
[11] 上記態様1~5のいずれかに記載のエステル化セルロースエーテルが生成される、上記態様6~10のいずれかに記載のプロセス。
[12] 液体希釈剤と、上記態様1~5のいずれかに記載の少なくとも1つのエステル化セルロースエーテルと、を含む、組成物。
[13] 上記態様1~5のいずれかに記載の少なくとも1つのエステル化セルロースエーテル中に少なくとも1つの活性成分を含む、固体分散体。
[14] 上記態様1~5のいずれかに記載のエステル化セルロースエーテルでコーティングされた、剤形。
[15] 上記態様1~5のいずれかに記載のエステル化セルロースエーテルを含む、カプセルシェル。