(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-22
(45)【発行日】2022-03-30
(54)【発明の名称】アルコール飲料及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C12G 3/04 20190101AFI20220323BHJP
C12G 3/06 20060101ALI20220323BHJP
【FI】
C12G3/04
C12G3/06
(21)【出願番号】P 2018004832
(22)【出願日】2018-01-16
【審査請求日】2021-01-08
(73)【特許権者】
【識別番号】311007202
【氏名又は名称】アサヒビール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109841
【氏名又は名称】堅田 健史
(74)【代理人】
【識別番号】230112025
【氏名又は名称】小林 英了
(74)【代理人】
【識別番号】230117802
【氏名又は名称】大野 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100173185
【氏名又は名称】森田 裕
(74)【代理人】
【識別番号】100174137
【氏名又は名称】酒谷 誠一
(74)【代理人】
【識別番号】100184181
【氏名又は名称】野本 裕史
(72)【発明者】
【氏名】井上 明大
【審査官】村松 宏紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-084751(JP,A)
【文献】橋永文男,キンカンとポンカン果実の成熟及び貯蔵中の揮発性成分とエセホン処理の影響,鹿兒島大學農學部學術報告,1990年3月, [検索日2021年12月13日],pp.43-48,retrieved from the Internet <URL:https://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/2010461432.pdf>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12G
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジンであって、
緑茶及び/又は緑茶成分
を浸漬した浸漬酒の蒸留酒と、
オクタナールと、を含んでなり、
前記オクタナールの含有量が純アルコール換算で0.005ppm以上0.050ppm以下であることを特徴とする、
ジン。
【請求項2】
前記緑茶及び/又は緑茶成分が、緑茶抽出物又は緑茶成分抽出物である、請求項1に記載の
ジン。
【請求項3】
前記オクタナールが、柑橘類抽出物又は和柑橘類抽出物である、請求項1
又は2に記載の
ジン。
【請求項4】
前記オクタナールとして、柑橘類又は和柑橘類を浸漬した浸漬酒又は前記浸漬酒の蒸留酒を含んでなる、請求項1~3の何れか一項に記載の
ジン。
【請求項5】
前記和柑橘類が、温州ミカン、伊予柑、夏ミカン、八朔、柚子、臭橙(カボス)、シークワサー、すだち、ダイダイ、日向夏、伊予柑、ぽんかん、デコポン(不知火)、清見、たんかん、夏みかん、甘夏、マイヤーレモン、げんこう、せとか、はるみ、たんかん(桶柑)、マーコット、アンコール、セミノール、晩白柚(ばんぺいゆ)、文旦(ブンタン)、カラ(カラマンダリン)、天草、スイートスプリング、はるか、南津海 (なつみ)、はれひめ、まりひめ、黄金柑、河内晩柑(美生柑)、紅まどんな、ひめのつき、甘平、麗紅、クレメンタイン、カクテルフルーツ、及びミネオラからなる群から選択される一種又は二種以上の混合物である、請求項
3又は
4に記載の
ジン。
【請求項6】
前記和柑橘類が甘夏及び/又は臭橙(カボス)である、請求項
3又は4に記載の
ジン。
【請求項7】
アルコール度が10度以上である、請求項1~
6の何れか一項に記載の
ジン。
【請求項8】
請求項1~
7の何れか一項に記載の
ジンを製造する方法であって、
食用エタノールと、緑茶及び/又は緑茶成分
を浸漬した浸漬酒の蒸留酒と、オクタナールと、を用意し、
前記食用エタノールに、前記緑茶及び/又は緑茶成分
を浸漬した浸漬酒の蒸留酒と、前記オクタナールとを混合し、
前記オクタナールの含有量を純アルコール換算で0.005ppm以上0.050ppm以下としてなることを含んでなる、
ジンの製造方法。
【請求項9】
前記緑茶及び/又は緑茶成分が、緑茶抽出物又は緑茶成分抽出物である、請求項8に記載の
ジンの製造方法。
【請求項10】
前記オクタナールが、柑橘類抽出物又は和柑橘類抽出物である、請求項
8又は9に記載の
ジンの製造方法。
【請求項11】
前記オクタナールとして、柑橘類又は和柑橘類を浸漬した浸漬酒又は前記浸漬酒の蒸留酒を含んでなる、請求項
8~10の何れか一項に記載の
ジンの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルコール飲料、とりわけ、緑茶(成分)と、オクタナールを有意量含んでなる、(緑茶)アルコール飲料及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アルコール飲料、とりわけ、蒸留酒(スピリッツ)は、醸造酒を蒸留することにより得られるものであり、その中でも、香草(ジュニパーベリー、コリアンダーシード、オレンジ果皮)等と一種に二次蒸留された蒸留酒としては、ジンが知られている。また、香草及び果実の成分を含有したフレーバー蒸留酒としては、フレーバーウォッカ、焼酎等が知られている。
【0003】
また、近年、茶葉成分を含有した蒸留酒が提案されている。例えば、特許文献1(特開昭61(1986)-52271号公報)では、ウーロン茶又はウーロン茶抽出液を添加した焼酎の製造方法が提案されている。また、市販品として、緑茶焼酎「天の美緑 玉露」(株式会社 喜多屋製)が販売されている。
【0004】
ところで、緑茶を添加し、或いは、緑茶を浸漬して得たアルコール飲料(蒸留酒)は、一般に、青臭い又は茶葉特有の生臭い香味及び風味があり、特に、飲酒した際の後味において顕著にこれら特有の好ましくない香味及び風味を呈することがある。この緑茶特有の生臭い香味及び風味並びに後味の悪さを有することから、一般消費者は、緑茶又は緑茶成分を含有したアルコール飲料を敬遠する者も多い。
【0005】
他方、緑茶又は緑茶成分を含有した(緑茶)アルコール飲料において、緑茶特有の青臭い又は生臭い香味及び風味を低減し又は抑制したとする先行技術文献は未だ開示されていない。ところで、アルコール飲料とは技術分野等が全く異なるものであるが、特許文献2(特開2014-50382号公報)では、コリアンダー茎葉部の水蒸気蒸留物中に含有されるデカナール及びデセナールが、飲食品の「こく」風味等の呈味を増強強化する作用を有することに着目し、飲食品自体が呈する味を増強する方法を見出したことが開示されている。また、特許文献2にあっては、オクタナール等の4成分を添加すると、前記2成分(デカナール及びデセナール)の増強作用を補助・補強する作用を有することも見出した、コリアンダー香味成分の新規用途発明が提案されている。
【0006】
しかしながら、本発明者によれば、緑茶特有の青臭い又は生臭い香味及び風味を抑制し、緑茶本来の風味及び香味を発揮させ、かつ、後味(例えば、清涼感、スッキリ感、さっぱり感)に優れたとする(緑茶)アルコール飲料は未だ開発されていない。
【0007】
よって、本発明者は、緑茶特有の青臭い又は生臭い香味及び後味を有意に抑制し、又はマスキングすることにより、緑茶本来の香気又は風味を維持し発揮させた、緑茶又は緑茶成分を含有した緑茶(緑茶)アルコール飲料を開発すべきものと認識に至った。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開昭61(1986)-52271号公報
【文献】特開2014-50382号公報
【発明の概要】
【0009】
本発明者等は、今般、緑茶特有の青臭い又は生臭い香味及び風味を抑制し、又はマスキングすることにより、かつ、緑茶本来の風味及び香味を発揮及び促進させる物質として、オクタナールに着目し、緑茶及び/又は緑茶成分に、オクタナールを有意量で含有することにより、従来技術における上記課題を高い次元において解決した(緑茶)アルコール飲料及びマスキング方法を提供できることを見出した。従って、本発明は、係る知見に基づいてなされたものである。
【0010】
〔本発明の一態様〕
本発明は、以下に例示する一態様により、本願発明における課題を解決することができる。
〔1〕 アルコール飲料であって、
緑茶及び/又は緑茶成分と、
オクタナールとを含んでなり、
前記オクタナールの含有量が純アルコール換算で0.005ppm以上0.050ppm以下であることを特徴とする、アルコール飲料。
〔2〕 前記緑茶及び/又は緑茶成分が、緑茶抽出物又は緑茶成分抽出物である、〔1〕に記載のアルコール飲料。
〔3〕 前記緑茶及び/又は緑茶成分として、前記緑茶及び/又は緑茶成分を浸漬した浸漬酒又は前記浸漬酒の蒸留酒を含んでなる、〔1〕に記載のアルコール飲料。
〔4〕 前記オクタナールが、柑橘類抽出物又は和柑橘類抽出物である、請求項〔1〕~〔3〕の何れか一項に記載のアルコール飲料。
〔5〕 前記オクタナールとして、柑橘類又は和柑橘類を浸漬した浸漬酒又は前記浸漬酒の蒸留酒を含んでなる、〔1〕~〔3〕の何れか一項に記載のアルコール飲料。
〔6〕 前記和柑橘類が、温州ミカン、伊予柑、夏ミカン、八朔、柚子、臭橙(カボス)、シークワサー、すだち、ダイダイ、日向夏、伊予柑、ぽんかん、デコポン(不知火)、清見、たんかん、夏みかん、甘夏、マイヤーレモン、げんこう、せとか、はるみ、たんかん(桶柑)、マーコット、アンコール、セミノール、晩白柚(ばんぺいゆ)、文旦(ブンタン)、カラ(カラマンダリン)、天草、スイートスプリング、はるか、南津海 (なつみ)、はれひめ、まりひめ、黄金柑、河内晩柑(美生柑)、紅まどんな、ひめのつき、甘平、麗紅、クレメンタイン、カクテルフルーツ、及びミネオラからなる群から選択される一種又は二種以上の混合物である、〔4〕又は〔5〕に記載のアルコール飲料。
〔7〕 前記和柑橘類が甘夏及び/又は臭橙(カボス)である、〔4〕又は〔5〕に記載のアルコール飲料。
〔8〕 アルコール度数が10度以上である、〔1〕~〔7〕の何れか一項に記載のアルコール飲料。
〔9〕 前記アルコール飲料が蒸留酒である、〔1〕~〔6〕の何れか一項に記載のアルコール飲料。
〔10〕 前記アルコール飲料がスピリッツ又は焼酎である、〔1〕~〔9〕の何れか一項に記載のアルコール飲料。
〔11〕 前記スピリッツがジンである、〔10〕に記載のアルコール飲料。
〔12〕 〔1〕~〔11〕の何れか一項に記載のアルコール飲料を製造する方法であって、
食用エタノールと、緑茶及び/又は緑茶成分と、オクタナールとを用意し、
前記食用エタノールに、前記緑茶及び/又は緑茶成分と、前記オクタナールとを混合し、
前記オクタナールの含有量を純アルコール換算で0.005ppm以上0.050ppm以下としてなることを含んでなる、アルコール飲料の製造方法。
〔13〕 前記緑茶及び/又は緑茶成分が、緑茶抽出物又は緑茶成分抽出物である、〔12〕に記載のアルコール飲料の製造方法。
〔14〕 前記緑茶及び/又は緑茶成分として、前記緑茶及び/又は緑茶成分を浸漬した浸漬酒又は前記浸漬酒の蒸留酒を含んでなる、〔12〕又は〔13〕に記載のアルコール飲料の製造方法。
〔15〕 前記オクタナールが、柑橘類抽出物又は和柑橘類抽出物である、〔12〕~〔14〕の何れか一項に記載のアルコール飲料の製造方法。
〔16〕 前記オクタナールとして、柑橘類又は和柑橘類を浸漬した浸漬酒又は前記浸漬酒の蒸留酒を含んでなる、〔12〕~〔15〕の何れか一項に記載のアルコール飲料の製造方法。
〔17〕 緑茶又は緑茶成分由来の青臭さ又は生臭さを低減し又は消滅させる方法であって、
アルコール飲料に、
緑茶及び/又は緑茶成分と、
オクタナールとを含有させ、
前記オクタナールの含有量を、純アルコール換算で0.005ppm以上0.050ppm以下としてなることを特徴とする、青臭さ又は生臭さを低減し又は消滅させる方法。
〔18〕 前記アルコール飲料が〔2〕~〔11〕の何れか一項に記載されたものである、〔17〕に記載の青臭さ又は生臭さを低減し又は消滅させる方法。
【0011】
本発明によれば、特定量のオクタナールを含有させることにより、(緑茶)アルコール飲料、特に、蒸留酒又はスピリッツ(ジン、ウォッカ、焼酎等)において、緑茶又は緑茶成分由来の特有の青臭い又は生臭い香味及び風味を高い次元において抑制することができ、かつ、緑茶又は緑茶成分由来の特有の青臭い又は生臭い香味及び風味を呈する悪い後味を有意に防止し、又はマスキングすることができる。また、アルコール由来の苦味及び刺激味を低減させ、甘さ及び厚みを付与することが可能となる。その結果、緑茶又は緑茶成分本来の風味、香味及び旨味を十分に発揮及び促進させ、かつ、後味(例えば、清涼感、スッキリ感、さっぱり感等)を特に優れたものとし、かつ、アルコール由来の風味、香味を有意に発揮させた、(緑茶)アルコール飲料及びその製造方法並びにマスキング方法を提供することができる。
【0012】
その結果、本発明による(緑茶)アルコール飲料及びその製造方法並びにマスキング方法は、オクタナールを特定量で含有させることにより、緑茶又は緑茶成分由来の特有の青臭い又は生臭い香味及び風味並びに後味の悪さを高い次元において抑制し、かつ、アルコール由来の苦味及び刺激性を抑制することが可能となる。また、オクタナールは、緑茶又は緑茶成分由来の特有の青臭い又は生臭い香味及び風味をマスキング的(又は消臭的)な効果を有意に発揮させ、後味性を好ましいものとし、かつ、アルコール飲料を飲み易くすることが可能となる。このことから、本発明によるアルコール飲料によれば、新たなアルコール飲料嗜好者の発掘を可能とする。
【発明を実施するための形態】
【0013】
〔定 義〕
(オクタナール)
「オクタナール(Octanal:C
8H
16O)」は、下記化学式(1)で表される鎖状有機化合物であり、アルデヒドの一種である。無色又は淡黄色の可燃性の液体であり、柑橘類の果実香を有する。1-ヘプテンのヒドロホルミル化、または1-オクタノールの酸化により得られる。オクタナールは、柑橘類、特に、和柑橘類の精油等に多く存在し、これらの精油を減圧分留し、精製工程等を経て得ることができる。
【化1】
【0014】
(緑茶及び緑茶成分)
「緑茶」は、茶樹(Camellia sinensis (L.) Kuntze)の葉(主)、茎(茶葉茎等)を加工したものであり、採取した茶葉茎等を加熱処理して発酵を停止させたものである。本発明にあっては、緑茶には、弱、半又は後等の発酵の名称に拘わらず、発酵させた茶(例えば、紅茶、ウーロン茶等)は含まれない。また、緑茶は、加熱処理(蒸す又は加熱)によって、蒸製緑茶と、釜炒製緑茶に大別されるものであるが、例えば、煎茶、深蒸し茶、玉露、かぶせ茶、玉緑茶、抹茶、茎茶、粉茶、ぐり茶、番茶、ほうじ茶、龍井茶、黄山毛峰茶等が含まれる。
「緑茶成分」は、緑茶の主要成分を意味し、食品の安全性が確保された、緑茶抽出物、緑茶成分抽出物、化学合成されたものであってよい。抽出は、食品衛生法によって許容される方法で行われたものを使用する。緑茶抽出物は、例えば、緑茶を水、飲用アルコール等で抽出されたものが主として用いられる。
「緑茶成分」としては、カテキン類〔渋味成分:(エピカテキン、カテキン)、(エピガロカテキン、ガロカテキン)、(エピカテキンガレート、カテキンガレート)、(エピガロカテキンガレート、ガロカテキンガレート)〕、カフェイン(苦味成分)、テアニン(アミノ酸:甘味・旨味成分)、その他のアミノ酸(グルタミン酸、アスパラギン酸、アルギニン、セリン、γ-アミノ酪酸(GABA))、ビタミン類(ビタミンC、ビタミンB2、葉酸、Β-カロテン、ビタミンE)、サポニン、フッ素、ミネラル(カリウム、カルシウム、リン、マンガンなど)、クロロフィル、有機酸、ポリフェノール、その他緑茶由来の香気成分が挙げられ、緑茶に含まれるものである。本発明にあっては、「緑茶成分」には、上記に例示した一種又は二種以上の混合物、或いは、これらの成分を有意量包含した植物又は当該植物の抽出物、化学合成物或いは化学的抽出物等が包含される。抽出は、食品衛生法によって許容される方法で行われたものを使用する。緑茶成分抽出物は、緑茶成分を水、飲用アルコール等で抽出されたものが主として用いられる。
【0015】
(アルコール飲料)
「アルコール飲料」は、酒税法で「アルコール分一度以上の飲料」と定義されており、食品衛生法でも食品として扱われ、当該法律の適用を受けるものである。「アルコール飲料」としては、醸造酒、蒸留酒、その他の酒類、又はこれらの一種又は二種以上の混合酒が含まれる。なお、酒税法に定義されている通り、「アルコール分」とは、温度十五度の時において原容量百分中に含有するエチルアルコールの容量をいう。「アルコール度数」とは、アルコール飲料に対するエタノールの体積濃度を百分率(%)で表した割合である。また、「エキス分」とは、温度十五度の時において原容量百立方センチメートル中に含有する不揮発性成分のグラム数をいう。
【0016】
〈蒸留酒〉
蒸留酒は、醸造酒を蒸留して作った酒であり、基本的に、アルコール度数が高いアルコール飲料である。酒税法では、蒸留酒類として、次に掲げる酒類(その他の発泡性酒類を除く。):イ)連続式蒸留しようちゆう、ロ)単式蒸留しようちゆう、ハ)ウイスキー、ニ)ブランデー、ホ)原料用アルコール、ヘ)スピリッツと定義されている。蒸留酒には、蒸留したアルコールに加水をしたもの、或いは、木製の樽等で熟成したもの等も含まれる。
【0017】
蒸留酒には、ジン(原料:大麦、ライ麦、ジャガイモ、香草等)、ウォッカ(原料:ライ麦、グレーン、甜菜、フルーツ、ジャガイモ等)、スピリタス(原料:穀物、ジャガイモ、香草等)、泡盛(原料:インディカ米、穀物等)、焼酎(原料:米、麦、サツマイモ、黒糖、そば、栗、酒粕、糖蜜等)、ソジュ「韓国焼酎」(原料:米、ジャガイモ、コムギ、オオムギ、サツマイモ、タピオカ等)、白酒〔穀物を原料としたパイチュ、及び高粱を原料とした茅台酒等〕、メスカル又はテキーラ(原料:竜舌蘭)、ウイスキー(原料:大麦、ライ麦、トウモロコシ等)、ブランデー〔果実酒が原料のブランデー、白ブドウが原料のアルマニャック、リンゴが原料のカルヴァドス、ブドウの搾りかすが原料のグラッパ、ブドウが原料のコニャック、ブドウが原料のシンガニ、ブドウ果汁が原料のピスコ等〕、カシャッサ又はピンガ(原料:サトウキビ)、ラム酒(原料:サトウキビ、糖蜜等)、アラック〔ジャガイモが原料のアクアビット、家畜乳又は穀物が原料のアルヒ、ブドウが原料のラク等〕、コルン(原料:小麦、ライ麦等)、キルシュヴァッサー(原料:サクランボ)等が挙げられる。
【0018】
「スピリッツ」は、酒税法上、イ)連続式蒸留しようちゆう、ロ)単式蒸留しようちゆう、ハ)ウイスキー、ニ)ブランデー、又はホ)原料用アルコール以外の酒類でエキス分が二度未満のものである。
「ジン」は、穀類(大麦、ライ麦、ジャガイモ等)を原料とし、麦芽及び酵素剤を利用して、糖化、発酵、蒸溜して得られたスピリッツに、ジュニパーベリー(杜松の実)などの草根木皮を浸すなどして、香りをつけ、再度蒸溜した無色透明の酒をいい、草根木皮の香気成分固有の香味及び風味を有する酒(スピリッツ)である。
「ウォッカ」は、穀類(ライ麦、グレーン、甜菜、フルーツ、ジャガイモ、トウモロコシ、小麦、大麦等)を原料として、糖化、発酵、蒸溜し、得られたスピリッツを白樺炭で濾過した酒(スピリッツ)をいい、スピリッツの中でも最もクセのない香味及び風味を有し、まろやかな爽快感を特徴とするものである。
「ラム」はサトウキビの搾り汁を煮つめて、砂糖を結晶させたあとの糖蜜を原料とし、発酵、蒸溜、熟成の工程を経てつくられる酒(スピリッツ)である。
【0019】
〈醸造酒〉
醸造酒は、原料を酵母によりアルコール発酵のみで作られ、蒸留等を行わず製造される酒類の総称である。酒税法では、醸造酒類として、イ)清酒、ロ)果実酒、ハ)その他の醸造酒と定義されている。そのほかに、酒税法では発泡性酒類として分類されているが、ビール及び発泡酒等もまた醸造によって作られる醸造酒である。醸造酒には、糖類をそのまま発酵させて酒類を得る単発酵酒〔例えば、ワイン(ブドウ酒)、シードル(リンゴ酒)、馬乳酒等〕と、でんぷんを糖化し、その糖類を発酵させて酒類を得る複発酵酒〔例えば、ビール(単行複発酵酒)、日本酒(並行複発酵酒)〕とがある。醸造酒は、酵母によるアルコール発酵のみによるものであることから、アルコール度数は高くとも約22%程度である。
【0020】
(純アルコール換算)
「純アルコール換算」とは、アルコール飲料(1L)に含まれる特定成分(mg)の濃度(mg/L=ppm)を、このアルコール飲料のアルコール度数割合(v/v)で割って、アルコール度数100(v/v%)当たりの数値に換算したものをいう。
例えば、特定のアルコール飲料〔アルコール度数(v/v%)が50度(%)〕に、特定の香気成分が50ppmで含まれていた場合、特定の香気成分の含有量は、純アルコール換算で、〔50ppm÷(50度÷100)〕=100ppmとなる。
【0021】
(オクタナールの含有量)
本発明にあっては、オクタナールの含有量は、本明細書において特にことわりがない限り、基本的に、純アルコール換算のppm、即ち、mg/L(質量/体積)にて表す。
【0022】
〔アルコール飲料〕
(オクタナール)
アルコール飲料は、オクタナールを含んでなる。オクタナールを特定量で含有することにより、緑茶又は緑茶成分由来の特有の青臭い又は生臭い香味及び風味をマスキングし、或いは消臭するといった効果を発揮させることが可能となる。また、オクタナールの添加により、緑茶又は緑茶成分由来の後味の悪さを高い次元において抑制し、かつ、清涼感、さっぱり感、スッキリ感等いった、新たな後味性を有意に達成させることが可能となる。さらに、オクタナールを含有することにより、アルコール由来の苦味及び刺激味を低減させ、濃厚さ、甘さ及び厚みを付与することができる。その結果、緑茶本来の風味、香味、旨味、後味を味わえる緑茶(成分)含有アルコール飲料を提供することができ、かつ、アルコール由来の苦味及び刺激味を抑制することにより、アルコール飲料を飲み易くすることが可能となる。
【0023】
(含有量)
アルコール飲料中、オクタナールの含有量の下限値は、純アルコール換算で0.005ppm以上であり、好ましくは、0.01ppm以上であり、より好ましくは、0.013ppm以上である。また、本発明にあっては、アルコール飲料中、オクタナールの含有量の上限値は、純アルコール換算で、アルコール飲料に含有可能な最大値であり、0.50ppm以下であり、より好ましくは0.25ppm以下であり、より好ましくは0.05ppm以下である。
【0024】
オクタナールの含有量が上記範囲内にあることにより、緑茶(緑茶成分)由来の特有の青臭い又は生臭い香味及び風味をマスキングし、或いは消臭するといった効果を有意に発揮させることができる。また、緑茶(緑茶成分)由来の後味の悪さを高い次元において抑制し、又はマスキングし、かつ、清涼感、さっぱり感、スッキリ感等いった優れた後味性を有意に達成させることが可能となる。
【0025】
オクタナールは、これを有意量含有した植物又は当該植物からの抽出物、化学合成物、化学的抽出物、又は精油(液体、固体、粉体であってよい)が好ましくは利用される。また、オクタナールは、食品化学的に許容される手法によって化学合成されたものであってよい。抽出又は化学合成は、食品衛生法によって許容される方法で行なう。オクタナールは、これを有意量含有した果実又は植物を水、食用アルコール等で抽出されたものが主として用いられる。好ましくは、オクタナールは、柑橘類、特に、和柑橘類、好ましくは日本在来種の和柑橘類からの抽出物、即ち、柑橘類抽出物又は和柑橘類抽出物であってよい。本発明にあっては、好ましくは、前記オクタナールとして、オクタナールを有意量含有した果実又は植物を浸漬した浸漬酒又は前記浸漬酒の蒸留酒を使用してもよく、より好ましくは柑橘類又は和柑橘類を浸漬した浸漬酒又は前記浸漬酒の蒸留酒を使用する。
【0026】
(和柑橘類)
和柑橘類は、様々なものが使用できるが、日本原産種又は在来種である、温州ミカン、伊予柑、夏ミカン、八朔、柚子、臭橙(カボス)、シークワサー、すだち、ダイダイ、日向夏、伊予柑、ぽんかん、デコポン(不知火)、清見、たんかん、夏みかん、甘夏、マイヤーレモン、げんこう、せとか、はるみ、たんかん(桶柑)、マーコット、アンコール、セミノール、晩白柚(ばんぺいゆ)、文旦(ブンタン)、カラ(カラマンダリン)、天草、スイートスプリング、はるか、南津海 (なつみ)、はれひめ、まりひめ、黄金柑、河内晩柑(美生柑)、紅まどんな、ひめのつき、甘平、麗紅、クレメンタイン、カクテルフルーツ、及びミネオラからなる群から選択される一種又は二種以上の混合物を使用することができる。これらの中でも、好ましくは、甘夏及び/又はカボスを使用する。
また、和柑橘類は、その果皮、果実(果汁)、新芽、葉、茎又は棘を使用することができ、好ましくは、果皮、果実(果汁)を用いることができる。
和柑橘類は、日本国内の様々な生産者、農業協同組合等から入手可能である。
【0027】
(緑茶及び/又は緑茶成分)
本発明にあっては、必須成分として「緑茶及び/又は緑茶成分」を包含するものである。「緑茶及び/又は緑茶成分」はそれ自体であってよいが、好ましくは「緑茶又は緑茶成分」からの抽出物(液体、固体、粉体であってよい)、即ち、緑茶抽出物又は緑茶成分抽出物を使用する。本発明にあっては、抽出物は、水又は食用アルコール等によって抽出したものであってよい。好ましくは、緑茶及び/又は緑茶成分を有意量含有した植物を浸漬した浸漬酒又は前記浸漬酒の蒸留酒を使用する。抽出物、浸漬酒、又は蒸留酒を使用することにより、緑茶自体の風味、香味及び旨味等を有意に発揮させることができ、また、製造容易性と、消費者の飲みやすさに合致させることが可能となる。
【0028】
(アルコール含有量)
本発明によるアルコール飲料は、好ましくは、アルコール度数が10度(%)以上、より好ましくは下限値が30度(%)以上であり、上限値が約100度(%)以下であり、より好ましくは60℃度(%)以下である。アルコール度数が上記範囲内にあることにより、特定含有量のオクタナールを添加することによる効果をより発揮させることが可能となる。
【0029】
(任意成分)
アルコール飲料は、任意成分として、色素、香料、甘味料、酸味料、pH調整剤、酸化防止剤、保存料、ビタミン類、旨み成分、食物繊維、安定化剤、乳化剤を含有することが可能である。これらは、厚生労働省、消費者庁等において定められたガイドライン及び関連法規(食品衛生法等)に規定されたものを用いる。
【0030】
(アルコール飲料)
アルコール飲料は、食用エタノールに、緑茶及び/又は緑茶成分と、特定含有量のオクタナールを必須成分として包含するものである。アルコール飲料は、好ましくは、醸造酒、蒸留酒及びこれらの混合酒の一種、或いはこれらの二種以上の混合酒としてもよい。より好ましくは、一種又は二種以上の醸造酒と、一種又は二種以上の蒸留酒との混合酒であり、最も好ましいものは、一種又は二種以上の蒸留酒である。本発明にあっては、アルコール飲料は、蒸留酒、特に好ましくはスピリッツまたは焼酎である。
【0031】
〈蒸留酒〉
「蒸留酒」は、酒税法上、連続式蒸留しようちゆう、単式蒸留しようちゆう、ウイスキー、ブランデー、原料用アルコール、スピリッツに含まれるものが挙げられ、好ましくは、連続式蒸留しようちゆう、単式蒸留しようちゆう、ブランデー、又はスピリッツである。「蒸留酒」としては、一般に、ジン、ウォッカ、スピリタス、焼酎、ソジュ、白酒、メスカル、テキーラ、ウイスキー、ブランデー(アルマニャック、カルヴァドス、グラッパ、コニャック、シンガニ、ピスコ等)、カシャッサ、ピンガ、ラム酒、アラック、コルン、キルシュヴァッサー等が挙げられ、好ましくは、ジン、ウォッカ、スピリタス、焼酎、ソジュ、白酒、メスカル、テキーラ、ブランデー、アラックが挙げられ、より好ましくは、ジン、ウォッカ、スピリタス、焼酎であり、最も好ましくはジン又は焼酎が挙げられる。
【0032】
〈浸漬酒〉
「浸漬酒」は、飲用アルコール(例えば、蒸留酒、醸造酒)に、果実(例えば、柑橘類)、植物(例えば、茶葉)、動物等を浸漬し、果実等の香味、風味、旨味等の成分を抽出した酒である。そして、この浸漬酒を蒸留することにより、よりこれらの成分を残存させ維持させた蒸留酒を得ることができる。
【0033】
〈醸造酒〉
「醸造酒」は、清酒、果実酒、又はその他の醸造酒であり、例えば、ワイン(ブドウ酒)、シードル(リンゴ酒)、馬乳酒、ビール、日本酒が挙げられ、好ましくは、高濃度のワイン、シードル、日本酒が使用される。
【0034】
〔アルコール飲料の製造方法〕
本発明の一の態様は、アルコール飲料を製造する方法であって、
食用エタノールと、緑茶及び/又は緑茶成分と、オクタナールとを用意し、
前記食用エタノールに、緑茶及び/又は緑茶成分と、前記オクタナールを混合し(好ましくは、常温、大気圧下)、
前記オクタナールの含有量を純アルコール換算で0.005ppm以上0.0050ppm以下としてなることを含んでなる、アルコール飲料の製造方法を提案する。
【0035】
具体的には、本発明によるアルコール飲料の製造方法は、飲用アルコール(エタノール)に、緑茶及び/又は緑茶成分と、特定含有量のオクタナールを必須成分として含有させることによって製造するものである。
【0036】
「緑茶及び/又は緑茶成分」は緑茶抽出物又は緑茶成分抽出物を好ましくは使用することができる。本発明のより好ましい態様としては、「緑茶及び/又は緑茶成分」は、飲用アルコール(エタノール)に、緑茶の茶葉、茎等を浸漬した浸漬酒であってよく、より好ましくは、この浸漬酒を蒸留した蒸留酒であってよい。そして、これら浸漬酒又は蒸留酒に、オクタナールを必須成分として添加し、さらには、飲用アルコール(エタノール)を含有させることによって製造することができる。蒸留は常圧で行ってもよいし減圧で行ってもよいが、好ましくは減圧である。
【0037】
また、「オクタナール」は、当該成分をそのまま有意量含有させたものであってよく、好ましくは、有意量の和柑橘類を浸漬した浸漬酒であってよく、より好ましくは、この浸漬酒を蒸留した蒸留酒であってよい。得られた和柑橘類の浸漬酒又は蒸留酒を添加して、オクタナールを特定含有量となるように調整したものであってよい。
【0038】
「緑茶及び/又は緑茶成分」と、特定含有量の「オクタナール」を含有させることにより、上記した本願発明の効果を有意に発揮させることができ、かつ、これら浸漬酒、蒸留酒、又は醸造酒本来の香味及び風味を向上させることが可能となる。
【0039】
アルコール飲料を製造する方法において、原料〔例えば、緑茶、緑茶成分、オクタナール、飲用アルコール(エタノール)、和柑橘類〕、含有量、調整等は、上記〔アルコール飲料〕の項で説明したのと同様であってよい。
【0040】
〔緑茶又は緑茶成分由来の青臭さ又は生臭さの低減方法又は消滅方法〕
本発明にあっては、アルコール飲料において、緑茶又は緑茶成分由来の青臭さ又は生臭さを低減し又は消滅させる方法であって、
アルコール飲料に、
緑茶及び/又は緑茶成分と、
オクタナールとを含有させ、
前記オクタナールの含有量を、純アルコール換算で0.005ppm以上0.050ppm以下としてなることを特徴とする、青臭さ又は生臭さを低減し又は消滅させる方法が提案される。
【0041】
本発明による方法あっては、アルコール飲料は、本発明によるものであってよい。本発明による方法によって、緑茶又は緑茶成分によって発生する青臭さ又は生臭さを有意に低減し又は消滅(マスキング)させることができる。
【0042】
緑茶又は緑茶成分由来の青臭さ又は生臭さを低減し又は消滅させる方法にあっては、原料〔例えば、緑茶、緑茶成分、オクタナール、飲用アルコール(エタノール)、和柑橘類〕、含有量、調整等は、上記〔アルコール飲料〕の項で説明したのと同様であってよい。特に、『低減し又は消滅させる方法』は、〔アルコール飲料の製造方法〕の製造工程及びそれらの表現をそのまま用いてもよい。
【0043】
〔容器詰めアルコール飲料〕
別の好ましい態様によれば、アルコール飲料を容器に詰めた容器詰アルコール飲料を提案することができる。容器詰アルコール飲料とすることにより、緑茶(緑茶成分)由来の特有の青臭い又は生臭い香味及び風味をマスキングし、或いは消臭するといった効果を発揮させることが可能となる。また、オクタナールの添加により、緑茶(緑茶成分)由来の後味の悪さを高い次元において抑制し、かつ、清涼感、さっぱり、スッキリ等いった新たな後味性を有意に達成させることが可能となり、並びに、アルコール飲料の提供利便性、流通利便性、保存性、品質劣化防止を図ることが可能となる。
【0044】
容器は、内容物が漏洩しない材料であれば、ビニール、プラスチック、ガラス、金属、紙、木又は皮等で、様々な形状で形成された容器に詰めることができる。より好ましい態様によれば、容器の内外に、光、熱、酸素、紫外線等を遮断するための素材(たとえば、着色又は機能性フィルム、金属箔)を備えたものであってよい。
【実施例】
【0045】
以下の実施例により、本発明の内容を更に具体的に説明するが、本発明の範囲は下記実施例に限定して解釈されるものではない。また、以下の実施例は、本発明の実施態様の一例を示すものであるが、これら実施例により当業者は本発明の全ての範囲について容易に実施することができること当然に理解するものである。
【0046】
〔オクタナールの分析法〕
アルコール5%となるように純水で希釈したものを試料とした。試料を吸着させたSPMEファイバー(SPELCO社製 PDMS/DVB 65μm 1cm 57327-U 24gauge StableFlex Pink)をGC-MS(Agilent社製)にかけ、内部標準法により定量を行った。
〔GC条件〕
GC条件は以下のとおりであった。
カラム:DB-5(30m*0.25mmI.D.*0.50μmF.T:J&W社)
オーブン温度:40℃(2min)→10℃/min→140℃(0min)→7℃/min→250℃(3min)→12℃/min→300℃(5min)
注入口温度:250℃
注入モード:スプリットレス
カラム流量:1.1ml/min
注入時間:1min
パージ時間:1min
トランスファーライン温度:250℃
【0047】
〔官能評価試験〕
(評価)
下記の通り、アルコール飲料を調製し、お茶らしさ及び後味性について、下記評価基準によって評価した。「お茶らしさ」とは、緑茶本来の風味、香味、を有していることをいい、「後味性」とは、後口に青臭さ、生臭さを有しておらず飲みやすいことをいう。
(官能評価手法)
本出願人会社内の品質管理試験を通った食品官能評価能力のある10名(20歳から65歳までの男女)のパネルにより、実施例及び比較例のアルコール飲料を以下の基準で評価し、その平均値を得て、その結果を、下記表2に記載した。
(評価基準)
お茶らしさ及び後味性みの評価基準は以下の通りで行った。
「お茶らしさ」の評価基準は、それぞれ、対照例(1~3)を3点としたうえで、お茶らしさが良い(即ち、緑茶本来の風味、香味を良く有していること)を5点とし、お茶らしさが悪い(即ち、緑茶本来の風味香味が少ないこと)を1点として、5段階評価で評価した。
「後味性」の評価基準は、対照例を3点としたうえで、後味性が良い(即ち、後口の青臭さ、生臭さが残存しなかったこと)を5点とし、後味性が悪い(即ち、後口の青臭さ、生臭さが残存したこと)を1点として、5段階評価で評価した。
評価点 1:良い。
評価点 2:やや良い。
評価点 3:対照例(1~3)と同等であった。
評価点 4:やや悪い。
評価点 5:悪い。
【0048】
〔アルコール飲料の調製〕
(茶葉蒸留酒)
以下の通り、原料用アルコール(95.3%)に加水した45%アルコールに、原料茶葉1~3(40kg/kL)を1昼夜浸漬し、常圧蒸留して、茶葉原酒(アルコール度65%)を得た後に、加水して、茶葉蒸留酒(スピリッツ:アルコール度47.2%)を得た。このようにして、緑茶蒸留酒(原料緑葉1)、玉露蒸留酒(原料緑葉2)、煎茶蒸留酒(原料緑葉3)を調製した。それぞれの茶葉蒸留酒の組成は同じであった。原料、茶葉蒸留酒(スピリッツ)の組成は以下の〔表1〕の通りであった。なお、オクタナール又は和柑橘類蒸留酒を配合していない茶葉蒸留酒(スピリッツ)はそれぞれ、対照例1~3とした。また、かぶせ茶、深蒸し茶、釜炒り茶、玉露、煎茶は、それぞれ、静岡県産のものであり、三井農林株式会社から入手した。
【0049】
【0050】
〈緑茶アルコール飲料の調製及び評価〉
(調製1)
緑茶蒸留酒(原料緑葉1)に、オクタナール(香料)の添加量を可変して添加した後に、加水してアルコール度12%とした緑茶アルコール飲料を調製し、下記表2の通り、実施例及び比較例とした。
【0051】
(評価結果1)
表2の通り、本発明(実施例)による緑茶アルコール飲料は、対照例1及び比較例と比較して、お茶らしさ及び後味性において優れたものであったことが理解された。即ち、オクタナールの含有量が0.005ppm以上0.05ppm以下とされてなることにより、後味性が明らかに優位に発揮され、お茶らしさも十分に有していることが理解された。
【0052】
【0053】
〈玉露アルコール飲料の調製及び評価〉
(調製2)
緑茶蒸留酒(原料緑葉1)の代わりに玉露蒸留酒(原料緑葉2)とした以外は、(緑茶アルコール飲料の調製)と同様にして、玉露アルコール飲料(実施例)を調製し、評価した結果を、下記表3に記載した。
【0054】
(評価結果2)
下記表3の通り、本発明(実施例)による玉露アルコール飲料は、対照例2と比較して、お茶らしさ及び後味性において優れたものであったことが理解された。
【0055】
【0056】
〈煎茶アルコール飲料の調製及び評価〉
(調製3)
緑茶蒸留酒(原料緑葉1)の代わりに煎茶蒸留酒(原料緑葉3)とした以外は、(緑茶アルコール飲料の調製)と同様にして、煎茶アルコール飲料(実施例)を調製し、評価した結果を、下記表4に記載した。
【0057】
(評価結果3)
下記表4の通り、本発明(実施例)による煎茶アルコール飲料は、対照例3と比較して、お茶らしさ及び後味性において優れたものであったことが理解された。
【0058】
【0059】
〈和柑橘類蒸留酒配合煎茶アルコール飲料の調製及び評価〉
(調製4)
下記表5の組成の通り、オクタナール(香料)の代わりに、和柑橘類蒸留酒を配合した以外は、(緑茶アルコール飲料の調製)と同様にして、和柑橘類蒸留酒配合緑茶アルコール飲料を調製し、評価した結果を、下記表6に記載した。また、和柑橘類蒸留酒は、主原料としての甘夏をアルコールに浸漬し、この浸漬酒を蒸留して得た蒸留酒を用いた。
【0060】
(評価結果4)
下記表6の通り、本発明(実施例)による和柑橘類蒸留酒配合煎茶アルコール飲料は、対照例1と比較して、お茶らしさ及び後味性において優れたものであったことが理解された。
【0061】
【0062】
【0063】
〔総合評価〕
実施例は、対照例(比較例を含む)との対比において、特定量のオクタナール及び/又は特定量のデカナールを、緑茶アルコール飲料に含有させることで、緑茶アルコール飲料に、緑茶又は緑茶成分由来の特有の青臭い又は生臭い香味及び風味をマスキング的(又は消臭的)な効果を発揮させ、かつ、清涼感、さっぱり、スッキリ等いった優れた後味性を有意に達成させることが可能となる。また、アルコール由来の苦味及び刺激味を低減させ、甘さ及び厚みを付与することが可能となり、緑茶アルコール飲料を飲み易くすることが明らかに理解された。