(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-22
(45)【発行日】2022-03-30
(54)【発明の名称】土質測定装置及び土質測定方法
(51)【国際特許分類】
G01N 27/04 20060101AFI20220323BHJP
E01C 19/00 20060101ALI20220323BHJP
【FI】
G01N27/04 Z
E01C19/00
(21)【出願番号】P 2018021014
(22)【出願日】2018-02-08
【審査請求日】2020-08-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100122781
【氏名又は名称】近藤 寛
(74)【代理人】
【識別番号】100133064
【氏名又は名称】大野 新
(72)【発明者】
【氏名】富樫 昇
(72)【発明者】
【氏名】小林 一三
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 一成
(72)【発明者】
【氏名】田中 恵祐
(72)【発明者】
【氏名】米丸 佳克
(72)【発明者】
【氏名】田口 翔大
【審査官】村田 顕一郎
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-500605(JP,A)
【文献】特開2002-062362(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0069733(US,A1)
【文献】特開2009-270975(JP,A)
【文献】特表2010-502924(JP,A)
【文献】特開昭63-100803(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0286713(US,A1)
【文献】米国特許第05841282(US,A)
【文献】特開2002-202382(JP,A)
【文献】地盤比抵抗を用いた盛土施工管理手法に関する研究,建設工学研究所論文報告集,2000年,42-A号,pp.51-66
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/00-27/10
G01N 27/14-27/24
E01C 19/00-19/52
E02D 1/00-3/115
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地面と接触する複数の電極部と、
前記電極部により前記地面の土の抵抗率を測定する測定部と、
を備え、
前記電極部のそれぞれは、
前輪と、
後輪と、
前記前輪と前記後輪とをその内周面により囲繞しつつ一帯をなし、前記前輪と前記後輪との間でその外周面により前記地面と接触する履帯状電極と、
を有し、
前記履帯状電極が前記前輪及び前記後輪の周囲で回転することにより、前記履帯状電極は、前記前輪と前記後輪との間で前記履帯状電極の前記外周面により前記地面と接触しつつ前記地面を移動し、
複数の前記電極部の前記履帯状電極は、進行方向の左右方向に並列に配置され、
前記測定部は、複数の前記電極部の前記履帯状電極の間に流された電流値及び複数の前記電極部の前記履帯状電極の間の電圧値により前記地面の土の抵抗率を測定する、土質測定装置。
【請求項2】
地面と接触する複数の電極部と、
前記電極部により前記地面の土の抵抗率を測定する測定部と、
を備え、
前記電極部のそれぞれは、
前輪と、
後輪と、
前記前輪と前記後輪とをその内周面により囲繞しつつ一帯をなし、前記前輪と前記後輪との間でその外周面により前記地面と接触する履帯状電極と、
を有し、
前記履帯状電極が前記前輪及び前記後輪の周囲で回転することにより、前記履帯状電極は、前記前輪と前記後輪との間で前記履帯状電極の前記外周面により前記地面と接触しつつ前記地面を移動し、
複数の前記電極部の前記履帯状電極は、進行方向の左右方向に並列に配置され、
前記測定部は、複数の前記電極部の前記履帯状電極の間に流された電流値及び複数の前記電極部の前記履帯状電極の間の電圧値により前記地面の土の抵抗率を測定し、
複数の前記電極部の中央を前記履帯状電極の位置として、前記履帯状電極の位置を取得する測位部をさらに備え、
前記測定部は、前記測位部により取得された前記履帯状電極の位置と関連付けた前記地面の土の抵抗率を測定する、
土質測定装置。
【請求項3】
地面と接触する
複数の電極部と、
前記電極部により前記地面の土の抵抗率を測定する測定部と、
を備え、
前記電極部
のそれぞれは、
前輪と、
後輪と、
前記前輪と前記後輪とをその内周面により囲繞しつつ一帯をなし、前記前輪と前記後輪との間でその外周面により前記地面と接触する履帯状電極と、
を有し、
前記履帯状電極は、その全体が電極である金属製の切れ目の無い帯状体であり、
前記履帯状電極が前記前輪及び前記後輪の周囲で回転することにより、前記履帯状電極は、前記前輪と前記後輪との間で前記履帯状電極の前記外周面により前記地面と接触しつつ前記地面を移動する、土質測定装置。
【請求項4】
前記履帯状電極の位置を取得する測位部をさらに備え、
前記測定部は、前記測位部により取得された前記履帯状電極の位置と関連付けた前記地面の土の抵抗率を測定する、請求項1又は3に記載の土質測定装置。
【請求項5】
前記電極部は、前記履帯状電極の前記外周面が前記地面と接触する範囲における前記履帯状電極の前記内周面を支持する補助輪をさらに有する、請求項1~4のいずれか1項に記載の土質測定装置。
【請求項6】
前記電極部は、前記履帯状電極を前記前輪及び前記後輪の周囲で回転させることにより、前記履帯状電極に前記地面を移動させる駆動部をさらに有する、請求項1~5のいずれか1項に記載の土質測定装置。
【請求項7】
地面と接触する複数の電極部により前記地面の土の抵抗率を測定する土質測定方法であって、
前輪と、後輪と、前記前輪と前記後輪とをその内周面により囲繞しつつ一帯をなし、前記前輪と前記後輪との間でその外周面により前記地面と接触する履帯状電極とを有し、進行方向の左右方向に並列に配置された複数の前記電極部の前記履帯状電極を前記前輪及び前記後輪の周囲で回転させることにより、前記前輪と前記後輪との間で前記履帯状電極の前記外周面を前記地面と接触させつつ前記履帯状電極に前記地面を移動させ、複数の前記電極部の前記履帯状電極の間に流された電流値及び複数の前記電極部の前記履帯状電極の間の電圧値により、前記地面の土の抵抗率を測定する土質測定方法。
【請求項8】
地面と接触する複数の電極部により前記地面の土の抵抗率を測定する土質測定方法であって、
前輪と、後輪と、前記前輪と前記後輪とをその内周面により囲繞しつつ一帯をなし、前記前輪と前記後輪との間でその外周面により前記地面と接触する履帯状電極とを有し、進行方向の左右方向に並列に配置された複数の前記電極部の前記履帯状電極を前記前輪及び前記後輪の周囲で回転させることにより、前記前輪と前記後輪との間で前記履帯状電極の前記外周面を前記地面と接触させつつ前記履帯状電極に前記地面を移動させ、複数の前記電極部の中央を前記履帯状電極の位置として測位部により前記履帯状電極の位置を取得しつつ、複数の前記電極部の前記履帯状電極の間に流された電流値及び複数の前記電極部の前記履帯状電極の間の電圧値により、前記測位部により取得された前記履帯状電極の位置と関連付けた前記地面の土の抵抗率を測定する土質測定方法。
【請求項9】
地面と接触する
複数の電極部により前記地面の土の抵抗率を測定する土質測定方法であって、
前輪と、後輪と、前記前輪と前記後輪とをその内周面により囲繞しつつ一帯をなし、前記前輪と前記後輪との間でその外周面により前記地面と接触する履帯状電極とを有する
複数の前記電極部の前記履帯状電極であり、その全体が電極である金属製の切れ目の無い帯状体である前記履帯状電極を前記前輪及び前記後輪の周囲で回転させることにより、前記前輪と前記後輪との間で前記履帯状電極の前記外周面を前記地面と接触させつつ前記履帯状電極に前記地面を移動させることによって、前記地面の土の抵抗率を測定する土質測定方法。
【請求項10】
測位部により前記履帯状電極の位置を取得しつつ、前記測位部により取得された前記履帯状電極の位置と関連付けた前記地面の土の抵抗率を測定する、請求項
7又は
9に記載の土質測定方法。
【請求項11】
前記履帯状電極の前記外周面が前記地面と接触する範囲における前記履帯状電極の前記内周面を前記電極部の補助輪により支持しつつ、前記履帯状電極に前記地面を移動させることによって、前記地面の土の抵抗率を測定する、請求項
7~
10のいずれか1項に記載の土質測定方法。
【請求項12】
前記電極部の駆動部により、前記履帯状電極を前記前輪及び前記後輪の周囲で回転させることにより、前記履帯状電極に前記地面を移動させることによって、前記地面の土の抵抗率を測定する、請求項
7~
11のいずれか1項に記載の土質測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土質測定装置及び土質測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地面と接触する電極により地面の土の抵抗率を測定することによって、土の土質を測定する技術が提案されている。例えば、特許文献1には、複数の垂直方向に延在する棒状の電極の下端を転圧機による締固めが行われた土に圧接して土の抵抗率を測定することにより、測定された抵抗率と土の乾燥密度との相関に基づいて当該土の締固め度を取得する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のような技術では、測定された土の抵抗率に基づいた土の乾燥密度と、砂置換法等の直接的に測定された土の乾燥密度とが異なる場合がある。これは、土の抵抗率の測定の精度が低い場合があるためと考えられ、地面の土の抵抗率を測定する精度を向上させることが望まれている。
【0005】
そこで本発明は、地面の土の抵抗率を測定する精度を向上させることができる土質測定装置及び土質測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、地面と接触する電極部と、電極部により地面の土の抵抗率を測定する測定部とを備え、電極部は、前輪と、後輪と、前輪と後輪とをその内周面により囲繞しつつ一帯をなし、前輪と後輪との間でその外周面により地面と接触する履帯状電極とを有し、履帯状電極が前輪及び後輪の周囲で回転することにより、履帯状電極は、前輪と後輪との間で履帯状電極の外周面により地面と接触しつつ地面を移動する土質測定装置である。
【0007】
この構成によれば、地面と接触する電極部と、電極部により地面の土の抵抗率を測定する測定部とを備えた土質測定装置において、電極部は、前輪と、後輪と、前輪と後輪とをその内周面により囲繞しつつ一帯をなし、前輪と後輪との間でその外周面により地面と接触する履帯状電極とを有する。履帯状電極が前輪及び後輪の周囲で回転することにより、履帯状電極は、前輪と後輪との間の広い範囲で履帯状電極の外周面により地面と接触しつつ地面を移動するため、履帯状電極と地面との接触面積が増大することにより地面の不陸や剛性による影響が低減し、履帯状電極と特定の地点における地面との接触時間が増大することにより測定回数が増大するため、地面の土の抵抗率を測定する精度を向上させることができる。
【0008】
この場合、電極部は、履帯状電極の外周面が地面と接触する範囲における履帯状電極の内周面を支持する補助輪をさらに有することが好適である。
【0009】
この構成によれば、電極部の補助輪により、履帯状電極の外周面が地面と接触する範囲における履帯状電極の内周面が支持されるため、地面の不陸や剛性による影響をさらに低減することができる。
【0010】
また、電極部は、履帯状電極を前輪及び後輪の周囲で回転させることにより、履帯状電極に地面を移動させる駆動部をさらに有することが好適である。
【0011】
この構成によれば、電極部の駆動部により、履帯状電極が前輪及び後輪の周囲で回転させられることにより、履帯状電極が地面を自走で移動させられるため、広範囲における地面の土の抵抗率の測定がさらに容易となる。
【0012】
この場合、駆動部への指令信号を受信する受信部をさらに備えることが好適である。
【0013】
この構成によれば、受信部により駆動部への指令信号が受信されるため、履帯状電極の自走による移動を遠隔操作で制御することができる。
【0014】
また、履帯状電極の位置を取得する測位部をさらに備え、測定部は、測位部により取得された履帯状電極の位置と関連付けた地面の土の抵抗率を測定することが好適である。
【0015】
この構成によれば、測定部によって、測位部により取得された履帯状電極の位置と関連付けた地面の土の抵抗率が測定されるため、地点ごとの土の抵抗率を測定することができる。
【0016】
また、測定部により測定された地面の土の抵抗率に関する情報を送信する送信部をさらに備えることが好適である。
【0017】
この構成によれば、送信部によって、測定部により測定された地面の土の抵抗率に関する情報が送信されるため、電極部から離れた場所において地面の土の抵抗率に関する情報を取得することができる。
【0018】
また、本発明は、地面と接触する電極部により地面の土の抵抗率を測定する土質測定方法であって、前輪と、後輪と、前輪と後輪とをその内周面により囲繞しつつ一帯をなし、前輪と後輪との間でその外周面により地面と接触する履帯状電極とを有する電極部の履帯状電極を前輪及び後輪の周囲で回転させることにより、前輪と後輪との間で履帯状電極の外周面を地面と接触させつつ履帯状電極に地面を移動させることによって、地面の土の抵抗率を測定する土質測定方法である。
【0019】
この場合、履帯状電極の外周面が地面と接触する範囲における履帯状電極の内周面を電極部の補助輪により支持しつつ、履帯状電極に地面を移動させることによって、地面の土の抵抗率を測定することが好適である。
【0020】
また、電極部の駆動部により、履帯状電極を前輪及び後輪の周囲で回転させることにより、履帯状電極に地面を移動させることによって、地面の土の抵抗率を測定することが好適である。
【0021】
この場合、駆動部への指令信号を受信部により受信しつつ、地面の土の抵抗率を測定することが好適である。
【0022】
また、測位部により履帯状電極の位置を取得しつつ、測位部により取得された履帯状電極の位置と関連付けた地面の土の抵抗率を測定することが好適である。
【0023】
また、測定された地面の土の抵抗率に関する情報を送信部により送信しつつ、地面の土の抵抗率を測定することが好適である。
【発明の効果】
【0024】
本発明の土質測定装置及び土質測定方法によれば、地面の土の抵抗率を測定する精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】(A)は実施形態の土質測定装置の構成を示す平面図であり、(B)は実施形態の土質測定装置の構成を示す側面図である。
【
図2】
図1(A)の電極部のそれぞれの間隔を変更した状態を示す平面図である。
【
図3】(A)及び(B)は、従来の電極の地面との接触面積と接触時間とを示す図である。
【
図4】(A)、(B)及び(C)は、本実施形態の電極部の地面との接触面積と接触時間とを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照しつつ本発明に係る土質測定装置及び土質測定方法の実施形態について詳細に説明する。本実施形態の土質測定装置及び土質測定方法は、例えば、ロードローラ等の締固め機械により締固められた後の地面の土の抵抗率を測定し、抵抗率と相関がある土の乾燥密度等を導出することによって、締固め機械による締固めの効果を確認するためのものである。
図1(A)に示すように、本実施形態の土質測定装置1は、左側の左フレーム部2Aと、右側の右フレーム部3Aと、左フレーム部2Aと右フレーム部3Aとを連結する中央フレーム部4Aとを備える。
【0027】
左フレーム部2A及び右側の右フレーム部3Aの全長は、例えば、200~400mm程度である。左フレーム部2A及び右側の右フレーム部3Aの全幅は、例えば、100~400mm程度である。中央フレーム部4Aの全長及び全幅は、例えば、40~200mm程度である。後述するように、本実施形態の土質測定装置1は、地面を自走可能である。つまり、本実施形態の土質測定装置1は、例えば、模型自動車のような形態を有する。
【0028】
土質測定装置1は、左フレーム部2A及び右側の右フレーム部3Aのそれぞれの左右の両端に地面と接触する合計4つの電極部5と、中央フレーム部4Aに電極部5により地面の土の抵抗率を測定する測定部11とを備える。
図1(B)に示すように、電極部5は、前輪6と、後輪7と、前輪6と後輪7とをその内周面8iにより囲繞しつつ一帯をなし、前輪6と後輪7との間でその外周面8oにより地面Sと接触する履帯状電極8とを有する。履帯状電極8が前輪6及び後輪7の周囲で回転することにより、履帯状電極8は、前輪6と後輪7との間で履帯状電極8の外周面8oにより地面Sと接触しつつ地面Sを移動する。
【0029】
履帯状電極8は、金属の電極が埋め込まれたゴム等の合成樹脂製の切れ目のない帯状体や、その全体が電極である金属製の切れ目のない帯状体である。電極部5は、履帯状電極8の外周面8oが地面Sと接触する範囲における履帯状電極8の内周面8iを支持する補助輪9をさらに有する。前輪6、後輪7及び補助輪9は懸架装置により懸架され、履帯状電極8の外周面8oが地面Sと接触する範囲において地面Sの不陸や剛性に関わらず地面Sと常に密着するようにされている。
【0030】
電極部5は、履帯状電極8を前輪6及び後輪7の周囲で回転させることにより、履帯状電極8に地面Sを移動させる駆動部10を有する。駆動部10は、例えば、前輪6及び後輪7のいずれかを電動機又は内燃機関等により回転駆動させることにより、履帯状電極8を前輪6及び後輪7の周囲で回転させる。これにより、本実施形態の土質測定装置1は、地面Sを自走可能である。
【0031】
各作業現場の土により、測定誤差を小さくできる履帯状電極8と地面Sとの接触面積や接触時間は異なると考えられる。そこで、駆動部10は、履帯状電極8を移動させる速度の調節が可能であり、各作業現場に適切な速度に設定可能である。可能な限り、履帯状電極8の速度は速い方が測定に必要な時間が短くなるため、好ましい。なお、土質測定装置1をロードローラ等の自走式の締固め機械や、電動立ち乗り二輪車や、人力等の何らかの手法で牽引することにより、履帯状電極8を移動させてもよい。また、土質測定装置1をロードローラ等の自走式の締固め機械と一体化することにより、履帯状電極8を移動させてもよい。
【0032】
以上のような合計4つの電極部5は、土質測定装置1の進行方向Dの垂直方向に並列に配置され、例えば、ウェンナー法により土の抵抗率が測定される。作業現場や作業箇所によって、要求される土質を測定する深度は異なる。そこで、
図2に示すように、例えば、電極部5及び測定部11等が取り付けられる左フレーム部2A、右フレーム部3A及び中央フレーム部4Aをこれらとは全幅が異なる左フレーム部2B、右フレーム部3B及び中央フレーム部4Bと交換し、電極部5及び測定部11等が同様に取り付けられることにより、4つの電極部5のそれぞれの間隔を変更可能である。4つの電極部5のそれぞれの間隔が変更されることにより、土の抵抗率を測定する深度が変更される。
【0033】
なお、前輪6は電極部5における最前部の転輪でなくともよく、後輪7は電極部5における最後部の転輪でなくともよい。また、必ずしも、前輪6及び後輪7が駆動部10により回転駆動させられることにより、履帯状電極8を前輪6及び後輪7の周囲で回転させられなくともよく、補助輪9等が駆動部10により回転駆動されることにより、履帯状電極8を前輪6及び後輪7の周囲で回転させられてもよい。前輪6、後輪7、履帯状電極8及び補助輪9の配置も適宜変更されてもよい。
【0034】
図1(A)に示すように、中央フレーム部4Aに配置された測定部11は、4つの電極部5により地面Sの土の抵抗率を測定する。なお、測定部11が地面Sの土の抵抗率を測定するとは、必ずしも、土の抵抗率の数値を算出することのみを意味せず、例えば、電極部5により検出された電流値及び電圧値等に関する情報を出力することも含まれる。
【0035】
土質測定装置1は、中央フレーム部4Aに、履帯状電極8の位置を取得する測位部12を備える。測定部11は、測位部12により取得された履帯状電極8の位置と関連付けた地面Sの土の抵抗率を測定する。中央フレーム部4A等の土質測定装置1の位置が履帯状電極8の位置とみなされてもよい。測位部12は、例えば、GNSS(GlobalNavigation Satellite System)測量により履帯状電極8の位置を測位する。GNSS測量では、3個以上の衛星から信号を受信することにより、履帯状電極8の位置(例えば履帯状電極8の緯度及び経度)を測位する。GNSS測量に替えて、光学測量機能による自動追尾TS(Total Station)により履帯状電極8の位置が測位されてもよい。
【0036】
土質測定装置1は、中央フレーム部4Aに、駆動部10及び測定部11への指令信号を受信する受信部である通信部13を備える。これにより、駆動部10及び測定部11の動作は通信部13により受信された指令信号による遠隔操作によって制御される。通信部13は、測定部11により測定された地面Sの土の抵抗率に関する情報を送信する送信部としても機能する。なお、土質測定装置1に搭載された記録装置に測定部11による測定結果が記録されてもよい。
【0037】
また、土質測定装置1は、中央フレーム部4Aに、駆動部10及び測定部11の動作を制御する制御部14を備える。また、制御部14により、例えば、ロードローラ等の自走式の締固め機械の後方を土質測定装置1が追随して移動するように制御されてもよい。また、制御部14により作業現場の任意の経路を土質測定装置1が移動するように制御されてもよい。
【0038】
本実施形態の土質測定装置1を用いた土質測定方法では、例えば、土質測定装置1を地面Sの上で移動させつつ、作業現場の任意の場所の土の抵抗率が測定される。土の抵抗率と土の乾燥密度とは相関関係があることが知られているため、土の抵抗率に基づいて土の乾燥密度を導出することができる。導出された土の乾燥密度により、締固め機械による締固めの効果を確認することができる。測定部11は、測定された土の抵抗率に基づいて土の乾燥密度を導出し、通信部13は導出された土の乾燥密度を送信してもよい。また、測定部11は、電極部5により検出された電流値及び電圧値等に関する情報や土の抵抗率に関する情報を出力し、通信部13は当該情報を送信し、土の乾燥密度の導出は土質測定装置1の外部の携帯通信端末で行われてもよい。
【0039】
本実施形態によれば、地面Sと接触する電極部5と、電極部5により地面Sの土の抵抗率を測定する測定部11とを備えた土質測定装置1において、電極部5は、前輪6と、後輪7と、前輪6と後輪7とをその内周面8iにより囲繞しつつ一帯をなし、前輪6と後輪7との間でその外周面8oにより地面Sと接触する履帯状電極8とを有する。履帯状電極8が前輪6及び後輪7の周囲で回転することにより、履帯状電極8は、前輪6と後輪7との間の広い範囲で履帯状電極8の外周面8oにより地面Sと接触しつつ地面Sを移動するため、履帯状電極8と地面Sとの接触面積が増大することにより地面Sの不陸や剛性による影響が低減し、履帯状電極8と特定の地点における地面Sとの接触時間が増大することにより測定回数が増大するため、地面Sの土の抵抗率を測定する精度を向上させることができる。
【0040】
つまり、
図3(A)及び
図3(B)に示すように、上記特許文献1のような垂直方向に延在する棒状の電極50では、電極50と地面Sとの接触面積zは小さい。このため、地面Sの不陸や剛性による影響を受け易く、抵抗率の測定値が安定しない。また、電極50と特定の地点Pにおける地面Sとの接触時間は短いため、測定回数が少ない。
【0041】
つまり、例えば、抵抗率の測定は、電極によりある周波数の交流電流を土に流して土のインピーダンスや位相差を測定することにより行われる。このため、電極を移動させながら土の抵抗率を測定する場合は、ある特定の地点Pにおいて抵抗率を測定できる回数が移動速度と周波数とに依存することになる。測定回数が多いほど誤差を小さくできるが、その場合、移動速度を遅くするか交流電流を高周波で送る必要がある。しかしながら、高周波で電流を送ることは、インピーダンスや位相差の値の傾向が大きく変化する等の測定上の問題により、現実的ではない。そのため、上記特許文献1のような垂直方向に延在する棒状の電極50を用いた抵抗率の測定では、低速度で電極50を移動させるしか対策がなく、土の抵抗率の測定を高精度且つ短時間で行うことが難しい。
【0042】
一方、本実施形態によれば、
図4(A)、
図4(B)及び
図4(C)に示すように、履帯状電極8は、前輪6と後輪7との間の広い範囲で履帯状電極8の外周面8oにより地面Sと接触しつつ地面Sを移動するため、履帯状電極8と地面Sとの接触面積Zが増大することにより地面Sの不陸や剛性による影響が低減する。さらに、本実施形態によれば、履帯状電極8と特定の地点Pにおける地面Sとの接触時間が増大することにより測定回数が増大するため、地面Sの土の抵抗率を高精度且つ短時間で行うことができる。
【0043】
なお、前輪6と後輪7との間の距離と履帯状電極8の長さとを現実的な範囲で長くし、履帯状電極8の前輪6と後輪7との間でその外周面8oにより地面Sと接触する範囲の長さを現実的な範囲で長くすることにより、同じ移動速度における履帯状電極8と特定の地点Pにおける地面Sとの接触時間をさらに長くすることができ、測定回数を増やすことも可能である。
【0044】
また、本実施形態によれば、電極部5の補助輪9により、履帯状電極8の外周面8oが地面Sと接触する範囲における履帯状電極8の内周面8iが支持されるため、地面Sの不陸や剛性による影響をさらに低減することができる。
【0045】
また、本実施形態によれば、電極部5の駆動部10により、履帯状電極8が前輪6及び後輪7の周囲で回転させられることにより、履帯状電極8が地面Sを自走で移動させられるため、広範囲における地面Sの土の抵抗率の測定がさらに容易となる。
【0046】
また、本実施形態によれば、通信部13により駆動部10への指令信号が受信されるため、土質測定装置1の履帯状電極8の自走による移動を遠隔操作で制御することができる。これにより、例えば、これまでラジオアイソトープ(RI)や砂置換法等の人力による作業であった締固めの品質管理の自動化に寄与できる。
【0047】
また、本実施形態によれば、測定部11によって、測位部12により取得された履帯状電極8の位置と関連付けた地面Sの土の抵抗率が測定されるため、地点ごとの土の抵抗率を測定することができる。つまり、例えば、作業現場における締固め機械による締固めの効果を示すマップを作成することも可能である。
【0048】
また、本実施形態によれば、通信部13によって、測定部11により測定された地面Sの土の抵抗率に関する情報が送信されるため、電極部5から離れた場所において地面の土の抵抗率に関する情報を取得することができる。つまり、例えば、作業現場の作業員が所持する携帯通信端末により、地面の土の抵抗率に関する情報を即時的に受信することができ、締固めの品質管理の効率を向上させることができる。
【0049】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されることなく様々な形態で実施される。例えば、上記実施形態では、測定された地面Sの土の抵抗率に基づいて土の乾燥密度が導出され、導出された土の乾燥密度により、締固め機械による締固めの効果を確認する態様について説明したが、例えば、締固め機械による締固めの効果の確認は、他の手法と本実施形態の手法とを併用して行われてもよい。また、本実施形態による土の抵抗率の測定は、土の乾燥密度の導出だけではなく、乾燥密度以外の他の要素に関する土の土質測定のために行われてもよい。
【符号の説明】
【0050】
1…土質測定装置、2A,2B…左フレーム部、3A,3B…右フレーム部、4A,4B…中央フレーム部、5…電極部、6…前輪、7…後輪、8…履帯状電極、8i…内周面、8o…外周面、9…補助輪、10…駆動部、11…測定部、12…測位部、13…通信部、14…制御部、50…電極、S…地面、D…進行方向、P…地点、Z,z…接触面積。