(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-22
(45)【発行日】2022-03-30
(54)【発明の名称】試運転制御ユニット及び床暖房装置
(51)【国際特許分類】
F24D 3/00 20220101AFI20220323BHJP
【FI】
F24D3/00 S
(21)【出願番号】P 2018029097
(22)【出願日】2018-02-21
【審査請求日】2020-09-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000220262
【氏名又は名称】東京瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】服部 遼馬
(72)【発明者】
【氏名】坂田 隆行
【審査官】河野 俊二
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-133371(JP,A)
【文献】特開2006-098008(JP,A)
【文献】特開2003-120946(JP,A)
【文献】特開平11-101458(JP,A)
【文献】国際公開第2015/111203(WO,A1)
【文献】特開2012-052678(JP,A)
【文献】特開2001-132959(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24D 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱源機の施工及び放熱マットの敷設後に実行される運転状態を確認するための試運転を制御する試運転制御ユニットであって、
前記放熱マットが敷設された床面温度を検出する検出素子と、
前記熱源機の運転開始から計時した所定時間内に前記床面温度が予め定めたしきい値以上となった否かを判定する判定機能、及び前記判定機能の判定結果を報知する報知機能を備えた制御デバイスと、
前記熱源機の運転開始に同期して前記制御デバイスの各機能の実行を指示する操作部と
、を有し、
前記検出素子を、前記試運転の制御終了後に、室温センサとして再利用する試運転制御ユニット。
【請求項2】
熱源機の施工及び放熱マットの敷設後に実行される運転状態を確認するための試運転を制御する試運転制御ユニットであって、
前記放熱マットが敷設された床面温度を検出する検出素子と、
前記熱源機の運転開始から計時した所定時間内に前記床面温度が予め定めたしきい値以上となった否かを判定する判定機能、及び前記判定機能の判定結果を報知する報知機能を備えた制御デバイスと、
前記熱源機の運転開始に同期して前記制御デバイスの各機能の実行を指示する操作部と、を有し、
前記検出素子、前記制御デバイス、及び前記操作部がユニット化されている試運転制御ユニット。
【請求項3】
熱源機の施工及び放熱マットの敷設後に実行される運転状態を確認するための試運転を制御する試運転制御ユニットであって、
前記放熱マットが敷設された床面温度を検出する検出素子と、
前記熱源機の運転開始から計時した所定時間内に前記床面温度が予め定めたしきい値以上となった否かを判定する判定機能、及び前記判定機能の判定結果を報知する報知機能を備えた制御デバイスと、
前記熱源機の運転開始に同期して前記制御デバイスの各機能の実行を指示する操作部と、
前記検出素子で検出した床面温度情報を、前記制御デバイスへ無線で通信する無線通信手段と、を有し、
前記制御デバイス及び前記操作部が前記熱源機に設けられている試運転制御ユニット。
【請求項4】
熱源機の施工及び放熱マットの敷設後に実行される運転状態を確認するための試運転を制御する試運転制御ユニットであって、
前記放熱マットが敷設された床面温度を検出する検出素子と、
前記熱源機の運転開始から計時した所定時間内に前記床面温度が予め定めたしきい値以上となった否かを判定する判定機能、及び前記判定機能の判定結果を報知する報知機能を備えた制御デバイスと、
前記熱源機の運転開始に同期して前記制御デバイスの各機能の実行を指示する操作部と、
前記制御デバイスの各機能及び前記操作部としての機能が搭載された合否判定用通信端末と、
前記検出素子が設けられた温度検出用通信端末と、を有し、
前記検出素子で検出した床面温度情報を、前記温度検出用通信端末から、通信回線網を介して前記合否判定用通信端末へ送信する試運転制御ユニット。
【請求項5】
前記検出素子を、前記試運転の制御終了後に、室温センサとして再利用する請求項2~請求項4の何れか1項記載の試運転制御ユニット。
【請求項6】
複数の前記温度検出用通信端末からの床面温度情報を、単一の前記合否判定用通信端末で受信することで、複数の試運転実行領域の試運転制御を一括管理する請求項4記載の試運転制御ユニット。
【請求項7】
前記制御デバイスの各機能及び前記操作部としての機能が搭載された合否判定用通信端末と、
前記検出素子が設けられた温度検出用通信端末と、をさらに有し、
前記検出素子で検出した床面温度情報を、前記温度検出用通信端末から、通信回線網を介して前記合否判定用通信端末へ送信すると共に、
複数の前記温度検出用通信端末からの床面温度情報を、単一の前記合否判定用通信端末で受信することで、複数の試運転実行領域の試運転制御を一括管理する請求項1記載の試運転制御ユニット。
【請求項8】
熱源機及び放熱マットを備え、熱源機の施工及び放熱マットの敷設後に運転状態を確認するための試運転制御機能を備えた床暖房装置であって、
前記熱源機を共有する給湯機器の運転状態を総合的に管理することを含み、予め定めた施設内でのインターフェイスとして機能するリモコンと、
前記放熱マットが敷設された床面温度を検出する検出素子、前記熱源機の運転開始から計時した所定時間内に前記床面温度が予め定めたしきい値以上となった否かを判定する判定機能、及び前記判定機能の判定結果を報知する報知機能を備えた制御デバイス、及び、前記熱源機の運転開始に同期して前記制御デバイスの各機能の実行を指示する操作部を備え、通信回線網を介して前記リモコンと通信可能な試運転用通信端末とを有し、
試運転制御の終了後に、前記試運転用通信端末を、室温センサとして機能させる床暖房装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床暖房装置施工後に運転状態を確認するための試運転を行う試運転制御ユニット及び床暖房装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
床暖房装置は、例えば、電気配線や温水流路配管に施工ミスがないか等、正常に施工されているかの確認のため、施工終了後に試運転を行うようにしている。
【0003】
床暖房装置の試運転の基本的な手順は、以下のとおりである。
【0004】
(手順1) 床暖房マットが敷設された室内の床面の温度を検出する温度センサの信号出力線を、床暖房リモコンに接続する。より具体的には、温度センサの信号出力線の端末に設けられたプラグを、床暖房リモコンの設けられたジャックに挿し込む。
【0005】
(手順2) 温度センサを床面に置く。
【0006】
(手順3) 床暖房マットに供給する温水を生成する熱源機に、床暖房リモコンの信号線を接続する。
【0007】
(手順4) 熱源機に設けられたスイッチ操作で、自動試運転を開始する(自動試運転プログラム起動)。
【0008】
(手順5) 自動試運転開始後、一定時間(例えば、49分)以内に、温度センサで検出した床面の温度が試運転開始時よりも3℃上昇したか否かを判定する。
【0009】
(手順6) 手順5の肯定判定で合格、否定判定でエラーを報知する(例えば、合否の報知は、ランプの点灯状態)
【0010】
この(手順1)から(手順6)の手順を基礎として、床暖房の試運転技術が提案されている(特許文献1~特許文献4参照)。
【0011】
特許文献1には、設置工事などの際に誤配管や誤配線の有無を効率よく判断する温水床暖房装置の試運転について記載されている。
【0012】
より具体的には、床温サーミスタを床暖房リモコンの接続部に接続し、試運転時に床温サーミスタで検出した温度に基づいて、試運転の合否を判定するようになっている。
【0013】
特許文献2には、無線通信床暖房リモコンにおいて、熱源機内にある試運転スイッチを押し、放熱パネルの表面に置かれたリモコンの床温感熱部で床温を測り、一定時間内に温度情報を検知すれば正常と判定することが記載されている。なお、特許文献2の主たる目的は複数の床暖房パネルと床暖房リモコンとの照合にある。
【0014】
特許文献3には、着脱可能な床暖房制御用のワイヤレスリモコンを備え、当該ワイヤレスリモコンには、試運転機能が備わっていることが記載されている。
【0015】
特許文献4には、床暖房システムにおいて、試運転時間の短縮のために、床の上に温度センサを置いて、床の表面の温度を直接検出し、この値を試運転判定制御部で試運転の成功、不成功を判定し、この結果を通信線、信号線を経由して熱源機で試運転中の作業者に報知することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【文献】特開平9-133371号公報
【文献】特開2003-120946号公報
【文献】特開平11-101458号公報
【文献】特開平8-270962号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
上記手順に基づく試運転では、床暖房リモコンが設けられていることが前提で実行されることになるが、近年では、家屋全体の給湯を一括管理する給湯器リモコンから床暖房の動作を制御する、或いは、携帯端末機器に登録したアプリケーションプログラムによって床暖房を動作制御する等、床暖房リモコンの需要が少なくなっている。
【0018】
床暖房リモコンが不要になると、温度センサの接続(例えば、温度センサから繋がる信号線の先端のプラグを床暖房リモコンのジャックに接続)することができなくなり、自動試運転が困難となる。
【0019】
例えば、特許文献4では、床暖房リモコンを介さずに試運転結果を熱源機で試運転中の作業者に報知するようにしているが、熱源機と、温度検出及び合否判定機能を備えたユニットとを接続する配線系統が別途必要となる。
【0020】
すなわち、特許文献4では、温度センサが接続された試運転判定制御部と、熱源機から配線された信号線と、を接続するためのコネクター10(特許文献4に記載の符号)を床暖房が敷設された部屋(の壁面)に設ける必要がある。従って、仮に、床暖房リモコンが不要となっても、試運転専用の配線が必須となり、施工作業が繁雑となる。
【0021】
また、試運転専用のデバイスは、試運転制御の実行終了後は無駄な資源となる場合がある。
【0022】
本発明は上記事実を考慮し、試運転制御機能の仕様に関わらず、床暖房装置の運転合否判定を行うための床面温度を検出することができる試運転制御ユニット及び床暖房装置を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0023】
第1の発明に係る試運転制御ユニットは、熱源機の施工及び放熱マットの敷設後に実行される運転状態を確認するための試運転を制御する試運転制御ユニットであって、前記放熱マットが敷設された床面温度を検出する検出素子と、前記熱源機の運転開始から計時した所定時間内に前記床面温度が予め定めたしきい値以上となった否かを判定する判定機能、及び前記判定機能の判定結果を報知する報知機能を備えた制御デバイスと、前記熱源機の運転開始に同期して前記制御デバイスの各機能の実行を指示する操作部と、を有し、
前記検出素子を、前記試運転の制御終了後に、室温センサとして再利用することを特徴としている。
【0025】
第2の発明に係る試運転制御ユニットは、熱源機の施工及び放熱マットの敷設後に実行される運転状態を確認するための試運転を制御する試運転制御ユニットであって、前記放熱マットが敷設された床面温度を検出する検出素子と、前記熱源機の運転開始から計時した所定時間内に前記床面温度が予め定めたしきい値以上となった否かを判定する判定機能、及び前記判定機能の判定結果を報知する報知機能を備えた制御デバイスと、前記熱源機の運転開始に同期して前記制御デバイスの各機能の実行を指示する操作部と、を有し、前記検出素子、前記制御デバイス、及び前記操作部がユニット化されていることを特徴としている。
【0026】
第3の発明に係る試運転制御ユニットは、熱源機の施工及び放熱マットの敷設後に実行される運転状態を確認するための試運転を制御する試運転制御ユニットであって、前記放熱マットが敷設された床面温度を検出する検出素子と、前記熱源機の運転開始から計時した所定時間内に前記床面温度が予め定めたしきい値以上となった否かを判定する判定機能、及び前記判定機能の判定結果を報知する報知機能を備えた制御デバイスと、前記熱源機の運転開始に同期して前記制御デバイスの各機能の実行を指示する操作部と、前記検出素子で検出した床面温度情報を、前記制御デバイスへ無線で通信する無線通信手段と、を有し、前記制御デバイス及び前記操作部が前記熱源機に設けられていることを特徴としている。
【0027】
第4の発明に係る試運転制御ユニットは、熱源機の施工及び放熱マットの敷設後に実行される運転状態を確認するための試運転を制御する試運転制御ユニットであって、前記放熱マットが敷設された床面温度を検出する検出素子と、前記熱源機の運転開始から計時した所定時間内に前記床面温度が予め定めたしきい値以上となった否かを判定する判定機能、及び前記判定機能の判定結果を報知する報知機能を備えた制御デバイスと、前記熱源機の運転開始に同期して前記制御デバイスの各機能の実行を指示する操作部と、前記制御デバイスの各機能及び前記操作部としての機能が搭載された合否判定用通信端末と、前記検出素子が設けられた温度検出用通信端末と、を有し、前記検出素子で検出した床面温度情報を、前記温度検出用通信端末から、通信回線網を介して前記合否判定用通信端末へ送信することを特徴としている。
【0028】
第2の発明から第4の発明の何れかの発明において、前記検出素子を、前記試運転の制御終了後に、室温センサとして再利用することを特徴としている。
第4の発明において、複数の前記温度検出用通信端末からの床面温度情報を、単一の前記合否判定用通信端末で受信することで、複数の試運転実行領域の試運転制御を一括管理することを特徴としている。
第1の発明において、前記制御デバイスの各機能及び前記操作部としての機能が搭載された合否判定用通信端末と、前記検出素子が設けられた温度検出用通信端末と、をさらに有し、前記検出素子で検出した床面温度情報を、前記温度検出用通信端末から、通信回線網を介して前記合否判定用通信端末へ送信すると共に、複数の前記温度検出用通信端末からの床面温度情報を、単一の前記合否判定用通信端末で受信することで、複数の試運転実行領域の試運転制御を一括管理することを特徴としている。
【0029】
本発明に係る床暖房装置は、熱源機及び放熱マットを備え、熱源機の施工及び放熱マットの敷設後に運転状態を確認するための試運転制御機能を備えた床暖房装置であって、前記熱源機を共有する給湯機器の運転状態を総合的に管理することを含み、予め定めた施設内でのインターフェイスとして機能するリモコンと、前記放熱マットが敷設された床面温度を検出する検出素子、前記熱源機の運転開始から計時した所定時間内に前記床面温度が予め定めたしきい値以上となった否かを判定する判定機能、及び前記判定機能の判定結果を報知する報知機能を備えた制御デバイス、及び、前記熱源機の運転開始に同期して前記制御デバイスの各機能の実行を指示する操作部を備え、通信回線網を介して前記リモコンと通信可能な試運転用通信端末とを有し、試運転制御の終了後に、前記試運転用通信端末を、室温センサとして機能させることを特徴としている。
【0030】
本発明によれば、検出素子は、放熱マットが敷設された床面温度を検出する。
【0031】
操作部では、試運転の際に、熱源機の運転開始に同期して制御デバイスの各機能の実行を指示する。
【0032】
制御デバイスの判定機能では、少なくとも、熱源機の運転開始から計時した所定時間内に床面温度が予め定めたしきい値以上となった否かを判定する。
【0033】
制御デバイスの報知機能では、判定機能の判定結果を報知する。
【0034】
本発明は、試運転専用の配線が不要となることに加え、試運転の実行後に、当該試運転以外の用途を準備しておくことで、資源の無駄を省くことができる
【0035】
試運転制御以外の用途としては、壁掛けによるリモコンとしての機能、本来の通信端末としての機能、室温センサとしての機能、施工業者が他現場で利用可能な使い回し可能な機能等がある。
【発明の効果】
【0036】
以上説明した如く本発明では、試運転制御機能の仕様に関わらず、床暖房装置の運転合否判定を行うための床面温度を検出することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】第1の実施の形態に係る床暖房装置が施工された居住スペースを示す斜視図である。
【
図2】第1の実施の形態に係る床暖房試運転ユニットであり、(A)は斜視図、(B)は制御ブロック図である。
【
図3】第1の実施の形態に係る試運転時の操作状態を示し、(A)は熱源機の正面図、(B)は床暖房試運転ユニットの斜視図である。
【
図4】第1の実施の形態に係る試運転制御の手順を示すフローチャートである。
【
図5】第1の実施の形態に係る試運転制御時の温度上昇率の推移例(OK例及びNG例)を示す特性図である。
【
図6】第2の実施の形態に係る試運転時の操作状態を示し、(A)は熱源機の正面図、(B)は床暖房試運転ユニットの側面図である。
【
図7】第3の実施の形態に係る試運転のために設定されたネットワーク構成図である。
【
図8】第4の実施の形態に係る試運転時の操作状態を示し、(A)は熱源機の正面図、(B)は試運転のために設定されたネットワーク構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
(第1の実施の形態)
【0039】
図1は、第1の実施の形態に係る床暖房装置10が施工された居住スペースの概略図である。
【0040】
居住スペースの床部12は、表層部12Aと下地部12Bで構成されている。この表層部12Aと下地部12Bとの間には、複数の床暖房マット14が、相互に連結された状態で敷設されている。なお、
図1では、6枚(2列×3行)の床暖房マット14が敷設された例を示しているが、連結枚数は限定されるものではない。
【0041】
例えば、床暖房マット14は、連結される枚数毎にユニット化されて温度制御等が実行される。言い換えれば、同一の居住スペースに、複数ユニットが存在する場合は、別々に温度制御等が実行される。
【0042】
床部12の周端は、窓16や図示しない扉が取付けられた壁部18が設けられている。
【0043】
前述したように、第1の実施の形態では、6枚の床暖房マット14が連結され、1ユニットとして稼働するようになっている。すなわち、床暖房マット14には、図示しない温水流路としての配管が設けられており、当該1ユニットの床暖房マット14の1つ(
図1では、床暖房マット14Aとする)が基点となり、温水がその他のユニット内の床暖房マット14の配管を循環するようになっている。
【0044】
基点となる床暖房マット14Aには、温水の流入側配管口と流出側配管口(共に、図示省略)が設けられ、室外に設置された熱源機20からの配管20A、20Bと接続されている。
【0045】
この配管20Aは、熱源機20で加温された温水を床暖房マット14の配管へ流入側配管口を介して供給し、配管20Bは、床暖房マット14の配管から、流出側配管口を介して循環後の温水を回収する。
【0046】
床暖房マット14は、配管に温水が循環されることで、周囲(主として、床部12の表層部12A)を介して、居住スペースの雰囲気を暖める暖房機器として機能する。
【0047】
第1の実施の形態に適用される熱源機20は、床暖房マット14へ供給する温水だけでなく、給湯(蛇口から出す温水)、風呂(湯船に供給する温水)、空調(熱交換のための温水)、及び乾燥機(熱交換のための温水)等の他の温水利用機器へも温水を供給するようになっている。
【0048】
このため、この熱源機20には、接続される温水利用機器を一括して動作を管理する給湯器リモコン22が接続されている。給湯器リモコン22は、例えば、居住スペースとは異なる部屋(例えば、キッチン等)に設置される。
【0049】
言い換えれば、床暖房マット14が敷設された居住スペースには、床暖房マット14に循環させる温水の温度や流量等を制御するためのリモコンは存在せず、別室(キッチン)に設置された給湯器リモコン22を操作することで、床暖房マット14の配管内を循環する温水の温度や流量等を制御することになる。
【0050】
(床暖房マット14の敷設後の試運転)
【0051】
図1に示される如く、施工業者24は、床暖房装置10の施工、すなわち、床暖房マット14の敷設工事、配管工事、及び電気配線工事等といった全ての施工が終了すると、試運転を行い、正常に施工されているかを確認する。
【0052】
試運転では、基本的には、床部12の表層部12Aの温度を計測し、当該温度の上昇状態を監視する。
【0053】
ここで、比較例として、床暖房マット14を敷設した居住スペースに、床暖房専用リモコンを設置し、当該床暖房専用リモコンを用いた床暖房装置の試運転の基本的な手順は以下の通りである。
【0054】
まず、居住スペースの床部12の温度を検出する温度センサの信号出力線を、床暖房専用リモコンに接続し、温度センサを床面に置いて、熱源機20に設けられたスイッチ操作で、自動試運転を開始することで、熱源機20に搭載した制御部の自動試運転プログラムを起動させ、合否判定を行う。例えば、少なくとも異常時にエラーを報知する。
【0055】
この場合、熱源機20の制御部に自動試運転プログラムを登録しておく必要があると共に、当該自動試運転プログラムは、施工が合格となれば、所謂1回使い切りのプログラムとなる。
【0056】
これに対して、第1の実施の形態では、試運転時の温度監視用のデバイスとして、施工業者24は、床暖房試運転ユニット26を携帯しており、この床暖房試運転ユニット26を用いて、施工の合否を判定するようにした。
【0057】
図2に示される如く、床暖房試運転ユニット26は、筐体28で覆われている(
図2(A)参照)。
【0058】
筐体28には、試運転プログラムが登録されたICチップ(ASIC)30が収容されている(
図2(B)参照)。前記ICチップ30には、表示部32、電源スイッチ34、スタートスイッチ36、及び温度センサ40が接続されている。
【0059】
また、
図2(A)に示される如く、筐体28の上面には、開口部28A、28B、28Cが設けられおり、開口部28Aから表示部32が露出され、開口部28Bから電源スイッチ34が露出され、開口部28Cからスタートスイッチ36が露出されている。
【0060】
一方、温度センサ40は、筐体28の下面が温度検出面40Aとなるように設けられている。
【0061】
ここで、
図1に示される如く、施工業者24は、床暖房装置10の施工が終了すると、床暖房試運転ユニット26を、筐体28の下面が床部12の表層部12Aに接するように置くことで、試運転の準備を行う。温度センサ40は、温度検出面40Aが床部12の表層部12Aと対峙され、当該表層部12Aの温度が検出されることになる。表層部12Aの温度は、床暖房マット14の配管を循環する温水に影響される。従って、表層部12Aは、試運転による温度検出部位として最適である。なお、表層部12Aに直接触れることは必須ではなく、表層部12Aと温度センサ40の温度検出面40Aとの間に一定の空間を設けてもよい。また、表層部12Aのさらに上層に、絨毯等の調度品が存在してもよい。
【0062】
床暖房装置10の試運転の際、施工業者24は、床暖房試運転ユニット26の電源スイッチ34を操作して電源オン状態とした上で、床暖房装置10の施工された居住スペースとは別の部屋(第1の実施の形態では、キッチン)に取り付けられた給湯器リモコン22からの操作で、床暖房装置10を、例えば、送水温度が最大となるような出力で動作開始を指示する(
図3(A)参照)。なお、熱源機20から動作を指示するようにしてもよい。
【0063】
その後、施工業者24が、床暖房試運転ユニット26のスタートスイッチ36を操作すると(
図3(B)参照)、ICチップ30に予め組み込まれた試運転プログラムが起動して、温度センサ40による温度検出から、経時的な温度変化の演算、並びに、温度変化による施工合否の判定までの一連の試運転制御処理が実行される。
【0064】
表示部32には、施工の合否判定が表示され、施工業者24は、この表示部32の表示を目視することで、施工の合否を認識することができる。なお、表示部32は必須ではなく、例えば、表示部32の代替として、LEDランプやスマートホンアプリで、施工の合否を含む状況を確認するようにしてもよい。また、試運転ユニット26と熱源機20もしくは端末(給湯器リモコン22等)に通信機能が搭載されている場合、試運転結果を熱源機20もしくは端末に送信することもできる。その際、有線か無線かは問わない。
【0065】
すなわち、第1の実施の形態では、熱源機20(又は給湯器リモコン22)に試運転プログラムを登録する必要はなく、施工業者24が、床暖房試運転ユニット26を持ち歩くことで、1つの床暖房試運転ユニット26により、他の複数の施工現場での試運転による施工合否判定ができる。
【0066】
なお、電源スイッチ34とスタートスイッチ36とを兼用した単一のスイッチとしてもよい。すなわち、単一のスイッチを操作することで、電源オンと同時又は一定時間後に試運転プログラムが起動するようにしてもよい。また、電源スイッチ34が無く、常時電源オンでもよい。すなわち、スタートスイッチ36が操作されるまでは、当該スタートスイッチ36の操作があったか否かのみを検出すればよく、消費電力が極めて少なく、常時電源オンでも問題無い。
【0067】
以下に第1の実施の形態の作用を、
図4のフローチャートに従い説明する。
【0068】
図4に示すフローチャートは、床暖房試運転ユニット26が、施工業者24によって、床部12の表層部12Aに置かれ、電源スイッチ34がオンされることで起動し、給湯器リモコン22の操作によって、床暖房運転が開始されているものとする。
【0069】
ステップ100では、スタートスイッチ36がオンされたか否かを判断し、肯定判定されるまで待機する。
【0070】
ステップ100で肯定判定されると、ステップ102へ移行して、タイマ、検出温度、及び表示をリセットし、ステップ104へ移行する。
【0071】
ステップ104では、温度センサ40により、初期床温度Tsを検出し、次いで、ステップ106へ移行して、検出した初期床温度Tsを一時記憶して、ステップ108へ移行する。
【0072】
ステップ108では、タイマをスタートさせ、次いで、ステップ110へ移行して、現在床温度Trを検出する。タイマは一定時間(
図5参照)を計測するものであり、特に、一定時間は限定されるものではないが、常用的に、例えば、49分とする場合が多い)。
【0073】
次のステップ112では、検出した現在床温度Trと、一時記憶した初期床温度Tsとの差分ΔT(=Tr-Ts)を演算する。なお、第1の実施の形態では、床暖房の試運転であり、温水を循環させるため、現在床温度Trが時間経過によって徐々に上昇することを前提としているため(
図5参照)、ΔTは必然的にプラス(+)の値となるが、数式上、差分の絶対値(ΔT=|Tr-Ts|)としてもよい。また、差分の演算初期は、ΔT≒0である(
図5のスタートスイッチ36の操作時参照)。
【0074】
次のステップ114では、差分ΔTが3℃以上(ΔT≧3℃)となったか否かを判断する。なお、差分ΔTのしきい値を3℃としたのは、常用的に適用される温度であり、しきい値は限定されるものではない。
【0075】
ステップ114で肯定判定(ΔT≧3℃)された場合は(
図5の特性曲線A参照)、正常に温度上昇されていると判断し、ステップ116へ移行して、床暖房試運転ユニット26の表示部32に、床暖房正常動作を意味する「OK表示」を実行し、このルーチンは終了する。
【0076】
また、ステップ114で否定判定(ΔT<3℃)された場合は(
図5の特性曲線B参照)、ステップ118へ移行して、一定時間(例えば、常用値である49分)が経過したか否かを判断する。
【0077】
このステップ118で否定判定された場合は、ステップ110へ移行して、上記工程を、一定時間内にステップ114で肯定判定されるまで繰り返す。
【0078】
また、ステップ118で肯定判定された場合は、一定時間が経過しても、温度上昇率が小さく、温度上昇率が異常であると判断し、ステップ120へ移行して、床暖房試運転ユニット26の表示部32に、床暖房異常動作を意味する「NG表示」を実行し、このルーチンは終了する。
【0079】
図5は、第1の実施の形態に係る床暖房試運転ユニット26における試運転時の温度上昇率の推移例を示す特性図であり、特性曲線Aが正常動作、特性曲線Bが異常動作を示す。
【0080】
すなわち、給湯器リモコン22から試運転開始操作が実行され、過渡期を過ぎた時点までは(過渡期は無くてもよい)、温度センサ40の検出値が上昇するものとする。
【0081】
その後、スタートスイッチ36が操作されると、特性曲線Aは一定時間までの間で差分ΔT(=Tr-Ts)が3℃以上となり、正常動作と判断される。
【0082】
一方、特性曲線Bは、一定時間までの間で差分ΔT(=Tr-Ts)が3℃未満となり、異常動作と判断される。
【0083】
異常動作は、例えば、温水の温度が規定値よりも低い、或いは、流量が少ない、或いは、配管で水漏れが発生している等、様々な原因で発生するが、第1の実施の形態では、この異常を、試運転の状態で認識可能であるため、施工の見直し等を容易に行うことができる。
【0084】
以上説明した如く、第1の実施の形態の床暖房試運転ユニット26は、床暖房装置10に床暖房専用のリモコンが存在せず、給湯器リモコン22等で一括管理する場合であっても、施工業者24が所持する床暖房試運転ユニット26により、容易に試運転処理を行うことができる。
【0085】
また、第1の実施の形態の床暖房試運転ユニット26は、汎用性があるため、例えば、集合住宅において、複数の居住スペースを施工した場合、単一の床暖房試運転ユニット26によって、複数の試運転処理を行うことができる。複数の試運転処理は、複数の試運転プログラムを同時に実行可能であれば、時間を重複して効率的に処理することができる。
【0086】
(第2の実施の形態)
【0087】
以下に、本発明の第2の実施の形態について説明する。
【0088】
なお、第2の実施の形態において、前述した第1の実施の形態と同一構成部分については、同一の符号を付して、その構成の説明を省略する。
【0089】
第2の実施の形態の特徴は、給湯器リモコン22で試運転を指示して合否を判定し、かつ合否を表示することである。
【0090】
図6に示される如く、施工業者24が、温度センサ50と、温度センサ50と近距離通信(例えば、Bluetooth(登録商標))可能な第1送受信デバイス52を所持しており、温度センサ50で検出した検出値情報を第1送受信デバイス52へ送信することが可能となっている。なお、第1送受信デバイス52の機能が、温度センサ50に搭載されていて、各温度センサ50が第2送受信デバイス54や熱源機20、その他端末(給湯器リモコン22等)と送受信するようにしてもよい。
【0091】
一方、熱源機20には、有線で前記第1送受信デバイス52と対をなす第2送受信デバイス54が接続されている。
【0092】
第1送受信デバイス52及び第2送受信デバイス54は、別途遠距離通信(例えば、免許不要な920MHz、2.4GHz等の無線局)によって、相互に通信可能であり、居住スペースにいる施工業者が所持する第1送受信デバイス52から、熱源機20に接続された第2送受信デバイス54へ、温度センサ50で検出した温度情報を送信する。
【0093】
第2送受信デバイスで受信した温度情報は、熱源機20の制御系を介して、給湯器リモコン22へ送信可能となっている。
【0094】
給湯器リモコン22には、第1の実施の形態で説明した床暖房試運転ユニット26の機能を備えており、スタートスイッチ機能の操作によって、熱源機20による試運転用の動作が開始され、かつ、試運転プログラムが起動して、検出温度の差分ΔT(=Tr-Ts)に基づく、合否判定が実行される。
【0095】
(第3の実施の形態)
【0096】
以下に、本発明の第3の実施の形態について説明する。
【0097】
なお、第3の実施の形態において、前述した第1の実施の形態と同一構成部分については、同一の符号を付して、その構成の説明を省略する。
【0098】
第3の実施の形態の特徴は、試運転の合否を判定した後、ネットワークシステムを介して多機能リモコンとして利用することである。
【0099】
図7に示される如く、施工業者24は、通信端末60を所持している。通信端末60は、少なくとも、第1の実施の形態で説明した第1の実施の形態の床暖房試運転ユニット26と同等の機能を備えている(
図2(B)参照)。
【0100】
このため、試運転に際しては、第1の実施の形態と同様に、通信端末を床部12の表層部12Aに置き、電源スイッチ34を操作し、熱源機20を試運転動作を開始し、スタートスイッチ36を操作することで、試運転が実行される(
図4のフローチャート参照)。
【0101】
また、通信端末60は、WiFi等の無線LANの機能を備えており、インターネット62に接続可能となっている。
【0102】
一方、熱源機20及び給湯器リモコン22は、施工したスペース(住居等)内に設けられたネットワークシステム64によって相互に情報通信可能に接続されている。
【0103】
通信端末60は、無線LAN機能により、インターネット62、ゲートウェイ66を介して、ネットワークシステム64に接続可能となっている。
【0104】
すなわち、通信端末60は、試運転機能のみならず、試運転処理が終了した後は、例えば、居住スペースの壁部18に取り付けることで、熱源機20及び給湯器リモコン22と相互に通信可能な多機能リモコンとして利用することができる。
【0105】
例えば、居住スペースから、他の居住スペースの空調を制御したり、風呂を沸かす等の指示が可能となる。また、多機能リモコンとしては、熱源機20及び給湯器リモコン22と相互に通信可能とする機能に限定されるものではない。例えば、集合住宅であれば、マンションのサーバーと通信し、エレベータを自室のある階まで呼ぶ等、生活に関連した多機能リモコンとして利用してもよい。また、戸建て住宅であれば、ガレージの開閉、車両内の空調の電源制御等の多機能リモコンとして利用してもよい。さらには、通信端末60は、HEMS(ホームエネルギーマネージメントシステム)に関連する電化製品等とのインターフェイスとして適用してもよい。
【0106】
(第4の実施の形態)
【0107】
以下に、本発明の第4の実施の形態について説明する。
【0108】
なお、第4の実施の形態において、前述した第1の実施の形態と同一構成部分については、同一の符号を付して、その構成の説明を省略する。
【0109】
第4の実施の形態の特徴は、施工業者24が所持するスマートホン70(
図8参照)を利用して、試運転の合否を判定することである。
【0110】
図8に示される如く、試運転を実行する居住スペースの床部12の表層部12Aには、温度センサ72が置かれる。
【0111】
温度センサ72は、WiFi等の無線LANの機能を備えている。このため、温度センサ72、ゲートウェイ74を介してインターネット76に接続されている。
【0112】
このため、スマートホン70は、インターネット76及びゲートウェイ74を介して、温度センサ72と相互に通信可能となる。スマートホン70には、第1の実施の形態のICチップ30(
図2(B)参照)に記憶された試運転プログラムと同等のアプリケーション(以下、試運転アプリという)が予めインストールされている。なお、温度センサ72は、ゲートウェイ74を介さず、直接スマートホン70につながるようにしてもよい。
【0113】
このため、給湯器リモコン22によって、熱源機20に対して、試運転のための床暖房運転開始操作がなされた後、施工業者24は、スマートホン70の試運転アプリを起動させると、温度センサ72との通信が実行され、温度検出及び合否判定制御(
図4のフローチャートと同等の制御)が実行される。
【0114】
第4の実施の形態によれば、施工業者24が所持するスマートホン70に試運転アプリを登録すると共に、無線通信機能を備えた温度センサ72を複数用意することで、例えば集合住宅の複数の床暖房敷設箇所の試運転を同時進行で行い、かつ、確認することができるため、従来の床暖房装置と試運転機能とが1対1で設定されていた場合に比べて、複数の試運転実行領域の試運転制御を一括管理することができるため、効率的に試運転作業を行うことができる。なお、温度センサ72は、ラジエータ等に貼り付けることができるものでもよく、ラジエータ等の試運転に使用してもよい。
【符号の説明】
【0115】
10 床暖房装置
12 床部
12A 表層部
12B 下地部
14 床暖房マット
14A 床暖房マット
16 窓
18 壁部
20 熱源機
20A、20B 配管
22 給湯器リモコン
24 施工業者
26 床暖房試運転ユニット
28 筐体
28A、28B、28C 開口部
30 ICチップ(制御デバイス)
32 表示部
34 電源スイッチ(操作部)
36 スタートスイッチ(操作部)
40 温度センサ(検出素子)
40A 温度検出面
(第2の実施の形態)
50 温度センサ
52 第1送受信デバイス
54 第2送受信デバイス
(第3の実施の形態)
60 通信端末
62 インターネット
64 ネットワークシステム
66 ゲートウェイ
(第4の実施の形態)
70 スマートホン
72 温度センサ
74 ゲートウェイ
76 インターネット