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特許7044596医療器具、医療器具管理システムおよび医療器具の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-22
(45)【発行日】2022-03-30
(54)【発明の名称】医療器具、医療器具管理システムおよび医療器具の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 90/90 20160101AFI20220323BHJP
【FI】
A61B90/90
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018043965
(22)【出願日】2018-03-12
(65)【公開番号】P2019154700
(43)【公開日】2019-09-19
【審査請求日】2021-03-05
(73)【特許権者】
【識別番号】317009525
【氏名又は名称】DGSHAPE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121500
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100189887
【弁理士】
【氏名又は名称】古市 昭博
(72)【発明者】
【氏名】小久保 貴章
(72)【発明者】
【氏名】尾藤 寿
(72)【発明者】
【氏名】久野 勉
(72)【発明者】
【氏名】花島 正樹
【審査官】小河 了一
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-271461(JP,A)
【文献】特開2009-142520(JP,A)
【文献】特開平11-096278(JP,A)
【文献】特開2005-237586(JP,A)
【文献】特開2017-148115(JP,A)
【文献】登録実用新案第3214551(JP,U)
【文献】国際公開第2017/044906(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 90/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の樹脂材料から形成された樹脂部材を有する医療器具本体と、
前記樹脂部材に設けられかつ第2の樹脂材料から形成され、前記医療器具本体の所定の情報が関連付けられた識別標識と、を備え、
前記医療器具本体を洗浄する洗浄工程と、前記医療器具本体に対して滅菌処理を行う滅菌工程とを含む所定の循環サイクルにおいて用いられ、
前記滅菌工程では、滅菌処理が行われると少なくとも一部の色が変化する滅菌テープが用いられ、
前記樹脂部材は、前記滅菌テープである、医療器具。
【請求項2】
前記所定の循環サイクルは、前記医療器具本体を用いて手術を行う手術工程と、手術後の前記医療器具本体を回収する回収工程と、洗浄後の前記医療器具本体を組み立てる組立工程と、滅菌処理後の前記医療器具本体を保管する保管工程とをさらに含み、
前記洗浄工程において、回収後の前記医療器具本体を洗浄し、
前記滅菌工程において、組立後の前記医療器具本体に対して滅菌処理を行う、請求項に記載の医療器具。
【請求項3】
前記医療器具本体は、前記滅菌テープが設けられた曲面を有する、請求項1または2に記載の医療器具。
【請求項4】
前記医療器具本体は、患者に接触する第1部分と、患者に接触しない第2部分とを備え、
前記識別標識は、前記第2部分に設けられている、請求項1からのいずれか一項に記載の医療器具。
【請求項5】
前記第2の樹脂材料は、アクリル系樹脂である、請求項1からのいずれか一項に記載の医療器具。
【請求項6】
前記所定の情報は、前記医療器具本体の使用回数の上限値を含む、請求項1からのいずれか一項に記載の医療器具。
【請求項7】
請求項1からのいずれか一項に記載の医療器具と、
前記識別標識から前記所定の情報を取得する情報取得装置と、
前記情報取得装置において取得された前記所定の情報を管理する管理端末と、を備えている、医療器具管理システム。
【請求項8】
第1の樹脂材料から形成された樹脂部材を有する医療器具本体を準備する工程と、
前記樹脂部材に、第2の樹脂材料から形成され、前記医療器具本体の所定の情報が関連付けられた識別標識を箔転写する工程と、を含み、
前記樹脂部材は、滅菌処理が行われると少なくとも一部の色が変化する滅菌テープである、医療器具の製造方法。
【請求項9】
医療器具本体を準備する工程と、
滅菌処理が行われると少なくとも一部の色が変化する滅菌テープを準備する工程と、
前記滅菌テープに、樹脂材料から形成され、前記医療器具本体の所定の情報が関連付けられた識別標識を箔転写する工程と、
前記識別標識が箔転写された前記滅菌テープを、前記医療器具に張り付ける工程と、を含む、医療器具の製造方法。
【請求項10】
前記医療器具本体は、前記医療器具本体を用いて手術を行う手術工程と、手術後の前記医療器具本体を回収する回収工程と、回収後の前記医療器具本体を洗浄する洗浄工程と、洗浄後の前記医療器具本体を組み立てる組立工程と、組立後の前記医療器具本体に対して滅菌処理を行う滅菌処理工程と、滅菌処理後の前記医療器具本体を保管する保管工程とを含む所定の循環サイクルにおいて用いられる、請求項8または9に記載の医療器具の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療器具、医療器具管理システムおよび医療器具の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、手術用器具等の医療器具の在庫管理や、医療器具の使用回数の管理等を行う管理システムが用いられている。例えば特許文献1には、再使用可能な手術用器具の在庫管理を行う管理システムが開示されている。この管理システムでは、再使用可能な手術用器具に識別標識を付与し、当該識別標識に基づいてデータベースを作成する。そして、それらの手術用器具の使用回数がカウントされ、使用回数が上限値を超えた手術用器具は破棄されたり補充されたりする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-237586号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載されたメスや鉗子のように金属材料から形成された医療器具に対しては、レーザーによって識別標識を刻印することができる。しかしながら、医療現場では、種々の材料から形成された医療器具が用いられている。例えば、医療器具には、医療器具の大部分が樹脂材料から形成されているものや、金属材料から形成されているが刻印するのに適した面を有しないもの等が存在する。このような場合には、レーザーによって識別標識を刻印することができず、メスや鉗子の場合と同じように在庫管理等をすることができなかった。
【0005】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、医療器具の管理を容易に行うことができる医療器具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、レーザーによって識別標識を刻印することができない医療器具であっても、樹脂部材を有する医療器具本体に関しては、レーザー刻印とは別の方法で識別標識を設けることができることを発見した。
【0007】
本発明に係る医療器具は、第1の樹脂材料から形成された樹脂部材を有する医療器具本体と、前記樹脂部材に設けられかつ第2の樹脂材料から形成され、前記医療器具本体の所定の情報が関連付けられた識別標識と、を備えている。
【0008】
本発明に係る医療器具によれば、医療器具本体の樹脂部材には、第2の樹脂部材から形成された識別標識が設けられている。このように、本発明者は、第1の樹脂材料から形成された樹脂部材には、第2の樹脂材料から形成された識別標識を設けることができることを見出した。これにより、レーザーによって識別標識を刻印することができない医療器具であっても、第2の樹脂材料から形成された識別標識を医療器具本体の樹脂部材に設けることによって、医療器具の管理を行うことができる。
【0009】
また、本発明者は、医療器具本体が洗浄工程において頻繁に洗浄される、即ち識別標識がブラシ等によって擦られたり、識別標識に洗剤等が付着したりする場合であっても、識別標識がほとんど劣化しないことを発見した。これにより、洗浄工程を経る必要がある医療器具であっても、第2の樹脂材料から形成された識別標識を医療器具本体の樹脂部材に設けることによって、医療器具の管理を行うことができることを見出した。
【0010】
さらに、本発明者は、滅菌工程において用いられる滅菌テープに第2の樹脂材料から形成された識別標識を設けることができることを発見した。さらに、滅菌工程を経ても識別標識がほとんど劣化しないことを発見した。これにより、滅菌工程を経る必要がある医療器具であっても、第2の樹脂材料から形成された識別標識を医療器具本体の滅菌テープに設けることによって、医療器具の管理を行うことができることを見出した。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、医療器具の管理を容易に行うことができる医療器具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】一実施形態に係る医療器具管理システムを示す概略図である。
図2】一実施形態に係る医療器具が用いられる循環サイクルの説明図である。
図3】医療器具の一例を示す模式図である。
図4】医療器具の他の一例を示す模式図である。
図5】医療器具の他の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら、一実施形態に係る医療器具管理システムについて説明する。医療器具管理システムは、医療器具の情報(例えば医療器具本体の情報)を管理する。図1に示すように、医療器具管理システム10は、複数の医療器具20と、情報取得装置50と、管理端末60とを備えている。管理端末60と情報取得装置50とは、有線により通信可能に接続されている。なお、管理端末60と情報取得装置50とは、無線により通信可能に接続されていてもよい。管理端末60は、情報取得装置50において取得された後述する医療器具本体22の所定の情報を管理する。管理端末60としては、例えば、ノート型のパーソナルコンピュータ、タブレット端末およびスマートフォン等が挙げられる。
【0014】
医療器具本体22としては、例えば、手術用器具、病棟用器具、外来用器具等が挙げられる。手術用器具としては、例えば、鉗子、剪刃、メス(例えばレーザーメスや電気メス)、超音波カッター、メスホルダー、カニューレ、鑷子、開創器、スケール、ゾンデ、エレバ、ラスパ、吸引管、開胸器、閉胸器、持針器、注射器、金属ボール、膿盆、コップ、ピン、ミラー、やすり、開口器、クレンメ、ハンドピース、エレパトリューム、ノミ、鋭匙、剥離子、鏡、縫合針、スタンツェ、受水器、針、圧子、ブジー、通気管、骨片打ち込み棒、リウエル、ラジオペンチ、ハンマー、角度計、穿孔器、スポイト、金属綿棒、浣腸器、シリンジおよび内視鏡等が挙げられる。病棟器具としては、例えば、鑷子、聴診器、剪刃、カニューラ、ジャバラおよび膿盆等が挙げられる。外来器具としては、例えば、鑷子、聴診器、ペアン、モスキート、鉗子等があげられる。なお、上記例は、医療器具本体22の一部を列挙したに過ぎず、医療器具本体22は上記例に限定されない。また、上述したように、医療器具本体22には、例えば、鑷子のように、手術用器具、病棟用器具および外来用器具として用いられるものもある。
【0015】
ここで、医療器具本体22のうち手術用器具については、図2に示すような所定の循環サイクル90において用いられる。図2に示すように、循環サイクル90は、手術工程91と、回収工程92と、洗浄工程93と、組立工程94と、滅菌工程95と、保管工程96とから構成されている。循環サイクル90では、手術工程91、回収工程92、洗浄工程93、組立工程94、滅菌工程95、保管工程96、手術工程91の順に医療器具本体22(即ち医療器具20)が循環する。ここで、循環サイクル90では、典型的には、複数の医療器具20から構成された医療器具セットが循環する。手術工程91では、保管された医療器具セットの医療器具20(即ち医療器具本体22)を用いて患者の手術を行う。回収工程92では、手術で用いた医療器具20(即ち医療器具本体22)を回収する。洗浄工程93では、回収された医療器具20(即ち医療器具本体22)を洗浄する。組立工程94では、洗浄された医療器具20(即ち医療器具本体22)を組み立てる。組立工程94では、洗浄工程93においてバラバラに洗浄された各医療器具20(即ち医療器具本体22)を所定の医療器具セットに戻す。滅菌工程95では、組み立てられた医療器具20(即ち医療器具本体22)を滅菌する。保管工程96では、滅菌された医療器具20(即ち医療器具本体22)を所定の保管スペースに保管する。
【0016】
図3に示すように、医療器具20は、医療器具本体22と、識別標識30とを備えている。なお、図3に示す医療器具20は、電気メスである。医療器具本体22は、本体部23Aと、プローブ23Bと、ケーブル23Cと、コネクタ23Dと、外部接続端子23Eとを備えている。本体部23Aは、ペンシル型に形成されている。本体部23Aは、細長円筒状に形成されている。本体部23Aは、医師によって把持される部分である。本体部23Aは、第1の樹脂材料から形成されている。第1の樹脂材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリエチレンナフタレート(PEN)樹脂等のポリエステル系樹脂、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)、エチレン-プロピレン共重合体等のポリオレフィン系樹脂等が挙げられる。プローブ23Bは、本体部23Aの先端に設けられている。プローブ23Bは、金属材料から形成されている。プローブ23Bは、例えば、ステンレス、チタン等から形成されている。ケーブル23Cは、本体部23Aとコネクタ23Dとを接続する。ケーブル23Cは、電気ケーブルである。コネクタ23Dは、第1の樹脂材料から形成されている。コネクタ23Dを形成する樹脂材料と本体部23Aを形成する樹脂材料とは同じであってもよいし、異なっていてもよい。コネクタ23Dは、樹脂部材の一例である。外部接続端子23Eは、コネクタ23Dに設けられている。
【0017】
識別標識30は、コネクタ23Dに設けられている。識別標識30は、第2の樹脂材料から形成されている。第2の樹脂材料は、典型的には、第1の樹脂材料とは異なる材料である。第2の樹脂材料としては、例えば、アクリル系樹脂が挙げられる。第2の樹脂材料は、上述した循環サイクル90の洗浄工程93において使用される洗剤やブラシ等の擦れによってほとんど劣化しない性質を有する。第2の樹脂材料は、循環サイクル90の滅菌工程95における滅菌処理を経てもほとんど劣化しない性質を有する。識別標識30としては、例えば、二次元コードやGS1コード体系(例えば26桁の番号)等が挙げられる。識別標識30には、医療器具本体22に関する所定の情報が関連付けられている。所定の情報としては、例えば、医療器具本体22の使用回数の上限値、医療器具本体22の使用回数、医療器具本体22を使用した日時、医療器具本体22を使用した作業者名等が挙げられる。図3に示す例では、識別標識30は、コネクタ23Dの平面に箔転写によって形成されている。第1の樹脂材料から形成された部材に対して第2の樹脂材料から形成された箔(即ち識別標識)を転写する方法は、特に限定されず、従来公知の箔転写装置を用いて箔転写を行うことができる。なお、図3に示す例では、患者に接触する部分は、プローブ23Bである。このため、識別標識30は、患者に接触しないコネクタ23Dに設けられている。ここで、患者に接触するとは、患者の体に接触する場合と、患者の血液が接触する場合とを含む。患者に接触しないとは、患者に全く接触しない場合と、患者に接触するときと比較して接触の頻度が極めて小さい場合とを含む。
【0018】
図4に示すように、医療器具20は、医療器具本体22と、識別標識30とを備えている。なお、図4に示す医療器具20は、超音波カッターである。医療器具本体22は、本体部24Aと、プローブ24Bと、コネクタ24Cと、外部接続端子24Dとを備えている。本体部24Aは、ペンシル型に形成されている。本体部24Aは、細長円筒状に形成されている。本体部24Aは、医師によって把持される部分である。本体部24Aは、上述した第1の樹脂材料から形成されている。プローブ24Bは、本体部24Aの先端に設けられている。プローブ24Bは、ステンレス、チタン等の金属材料から形成されている。コネクタ24Cは、第1の樹脂材料から形成されている。コネクタ24Cは、本体部24Aの後端に設けられている。コネクタ24Cは、円筒状に形成されている。外部接続端子24Dは、コネクタ24Cに設けられている。
【0019】
ここで、本体部24Aおよびコネクタ24Cは円筒状に形成されている。即ち、本体部24Aおよびコネクタ24Cは、曲面(例えば湾曲面)を有し平面を有していない。このため、従来公知の箔転写装置を用いて第2の樹脂材料から形成された識別標識30を直接箔転写することは困難である。そこで、まず、上記循環サイクル90の滅菌工程95において用いられる滅菌テープ25を準備する。そして、準備した滅菌テープ25に対して識別標識30を箔転写する。その後、識別標識30が箔転写された滅菌テープ25を本体部24Aの曲面に張り付ける。このように、医療器具本体22が平面を有さない形状であっても、滅菌テープ25を用いることによって、箔転写による識別標識30を医療器具本体22に設けることができる。なお、図4に示す例では、患者に接触する部分は、プローブ24Bである。このため、識別標識30は、患者に接触しない本体部24Aの後端に設けられている。
【0020】
なお、滅菌テープ25は、滅菌工程95において滅菌処理が行われると少なくとも一部の色が変化するテープである。滅菌テープ25は、滅菌処理によってもほとんど劣化しない性質を有する。滅菌処理としては、例えば、酸化エチレンガスによるガス滅菌や、プラズマ滅菌、オートクレーブを用いた加熱滅菌等が挙げられる。滅菌テープ25は、他の部材と接着する接着層と、第1の樹脂材料から形成された樹脂層とを有している。滅菌テープ25は、樹脂部材の一例である。滅菌テープ25は、第1の樹脂材料から形成された樹脂層を有する限り、医療分野の滅菌工程において使用されるものを特に限定なく使用することができる。
【0021】
図5に示すように、医療器具20は、医療器具本体22と、識別標識30とを備えている。なお、図5に示す医療器具20は、鉗子である。医療器具本体22は、一対の鉗子片25A、25Bと、ピン25Cとを備えている。一対の鉗子片25A、25Bは、ステンレス、チタン等の金属材料から形成されている。一対の鉗子片25A、25Bは、ピン25Cに回動自在に支持されている。
【0022】
ここで、一対の鉗子片25A、25Bは、平面を有するが金属材料から形成されている。このため、従来公知の箔転写装置を用いて第2の樹脂材料から形成された識別標識30を直接箔転写することは困難である。そこで、まず、滅菌テープ25を準備する。そして、準備した滅菌テープ25に対して識別標識30を箔転写する。その後、識別標識30が箔転写された滅菌テープ25を例えば鉗子片25Aの平面に張り付ける。このように、医療器具本体22が金属材料から形成されていても、滅菌テープ25を用いることによって、箔転写による識別標識30を医療器具本体22に設けることができる。なお、上述した例では、滅菌テープ25に対して識別標識30を箔転写した後、滅菌テープ25を鉗子片25Aに貼りつけていたが、これに限定されない。たとえば、滅菌テープ25を鉗子片25Aの平面に貼りつけた後に、識別標識30を滅菌テープ25に対して箔転写してもよい。なお、図5に示す例では、患者に接触する部分は、一対の鉗子片25A、25Bの刃部25Xである。このため、識別標識30は、患者に接触しない把持部25Yに設けられている。把持部25Yは、医師によって把持される部分であり、一対の鉗子片25A、25Bのうち刃部25Xの反対側に設けられている。
【0023】
情報取得装置50は、医療器具20の識別標識30から医療器具本体22の上述した所定の情報を取得する。情報取得装置50は、識別標識30から取得した医療器具本体22の所定の情報を管理端末60に送信する。情報取得装置50は、識別標識30から医療器具本体22の所定の情報を取得することができれば特に限定されない。例えば、識別標識30が二次元コードの場合には、情報取得装置50としては、二次元コードを読み取ることができる二次元コードリーダが挙げられる。情報取得装置50を用いて識別標識30から医療器具本体22の所定の情報を取得する行為は、例えば上述した循環サイクル90の1つ以上の工程において行われる。
【0024】
図1に示すように、管理端末60は、記憶部62と、計数部64と、判定部66と、通知部68とを備えている。これら各部は、ソフトウェアによって構成されていてもよい。すなわち、上記各部は、コンピュータプログラムが管理端末60(コンピュータ)に読み込まれることにより、当該管理端末60によって実現されるようになっていてもよい。当該コンピュータプログラムは、CDやDVD等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体に含まれ得る。当該コンピュータプログラムは、インターネットを通じてダウンロードされるものであってもよい。また、上記各部は、管理端末60に構成されたプロセッサおよび/または回路によって実現されるものであってもよい。
【0025】
記憶部62は、情報取得装置50において取得された各医療器具本体22の所定の情報を記憶する。記憶部62は、医療器具本体22の使用回数等を記憶する。
【0026】
計数部64は、各医療器具本体22の使用回数を計数する。
【0027】
判定部66は、各医療器具本体22の使用回数が所定の上限値に到達したか否かを判定する。
【0028】
通知部68は、判定部66によって医療器具本体22の使用回数が所定の上限値に到達した場合に、作業者に医療器具本体22の交換または廃棄を通知する。なお、通知方法は特に限定されず、例えば、視覚的な表示、音声等による通知が挙げられる。本実施形態では、表示装置(図示せず)を通じて視覚的に作業者に対する通知を行う。
【0029】
以上のように、本実施形態の医療器具20によると、医療器具本体22のコネクタ23Dには、第2の樹脂材料から形成された識別標識30が設けられている。このように、本発明者は、第1の樹脂材料から形成されたコネクタ23Dには、第2の樹脂材料から形成された識別標識30を設けることができることを見出した。これにより、レーザーによって識別標識30を刻印することができない医療器具20であっても、第2の樹脂材料から形成された識別標識30を医療器具本体22のコネクタ23Dに設けることによって、医療器具20の管理を行うことができる。
【0030】
本実施形態の医療器具20は、医療器具本体22を洗浄する洗浄工程93を含む所定の循環サイクル90において用いられる。本発明者は、洗浄工程93において医療器具本体22が洗浄されても識別標識30がほとんど劣化しないことを発見し、洗浄工程93を経る必要がある医療器具本体22の樹脂部材に識別標識30を用いても医療器具20を問題なく管理することができることを確認できた。
【0031】
本実施形態の医療器具20によると、医療器具本体22は滅菌テープ25を有し、該滅菌テープ25には、第2の樹脂材料から形成された識別標識30が設けられている。本発明者は、滅菌テープ25に識別標識30を設けた場合であっても、洗浄工程93や滅菌工程95において識別標識30がほとんど劣化しないことを発見し、洗浄工程93および滅菌工程95を経る必要がある医療器具本体22の滅菌テープ25に識別標識30を用いても医療器具20を問題なく管理することができることを確認できた。
【0032】
本実施形態の医療器具20は、手術工程91と、回収工程92と、洗浄工程93と、組立工程94と、滅菌工程95と、保管工程96とを含む所定の循環サイクル90において用いられる。上記各工程91~96では、医療器具20の管理が特に重要であるため、識別標識30によって容易に管理することによって作業者の負担を軽減することができる。
【0033】
本実施形態の医療器具20によると、医療器具本体22は、滅菌テープ25が設けられた曲面を有する。仮に医療器具本体22が金属材料から形成されている場合であっても、通常、曲面にはレーザーによって刻印することができない。しかし、滅菌テープ25に予め識別標識30を設け、該滅菌テープ25を曲面に例えば貼りつけることによって、曲面であっても識別標識30を設けることができる。
【0034】
本実施形態の医療器具20によると、医療器具本体22は、患者に接触するプローブ23Bと、患者に接触しないコネクタ23Dとを備え、識別標識30は、コネクタ23Dに設けられている。識別標識30は、患者に接触しないコネクタ23Dに設けられているため、プローブ23Bに設けられている場合と比較して識別標識30の劣化を抑制することができる。
【0035】
本実施形態の医療器具20によると、識別標識30を形成する第2の樹脂材料は、アクリル系樹脂である。本発明者は、識別標識30をアクリル系樹脂で形成することによって、識別標識30を長期間に亘って使用することができることを見出した。
【0036】
本実施形態の医療器具20によると、識別標識30に関連付けられた所定の情報は、医療器具本体22の使用回数の上限値を含む。これにより、医療器具20の交換または廃棄時期を正確に認識することができる。
【0037】
以上、本発明の好適な実施形態について説明した。しかし、上述の各実施形態は例示に過ぎず、本発明は他の種々の形態で実施することができる。
【0038】
上述した実施形態では、識別標識30は患者に接触しない部分に設けられていた。ここで、患者に接触しない部分であっても、例えば、医療器具本体22が2以上の部品を組み合わせて用いられる場合には、識別標識30は、部品同士の接合部分や、外部から視認できない部分には設けない。
【符号の説明】
【0039】
10 医療器具管理システム
20 医療器具
22 医療器具本体
25 滅菌テープ
30 識別標識
50 情報取得装置
60 管理端末
90 循環サイクル
93 洗浄工程
95 滅菌工程
図1
図2
図3
図4
図5