(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-22
(45)【発行日】2022-03-30
(54)【発明の名称】更生管巻出し方法及び巻出帯材
(51)【国際特許分類】
B29C 63/32 20060101AFI20220323BHJP
F16L 11/24 20060101ALI20220323BHJP
F16L 1/00 20060101ALI20220323BHJP
【FI】
B29C63/32
F16L11/24
F16L1/00 J
(21)【出願番号】P 2018057588
(22)【出願日】2018-03-26
【審査請求日】2021-01-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085556
【氏名又は名称】渡辺 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100115211
【氏名又は名称】原田 三十義
(74)【代理人】
【識別番号】100153800
【氏名又は名称】青野 哲巳
(72)【発明者】
【氏名】馬場 達郎
(72)【発明者】
【氏名】杉山 佳郎
【審査官】北澤 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-137132(JP,A)
【文献】登録実用新案第3143303(JP,U)
【文献】特開2013-256048(JP,A)
【文献】農業用パイプライン更生工法[SPR工法施工事例],改訂3版-3刷,2010年05月,第1-30頁
【文献】日本非開削技術協会-JSTT,SPR工法(自走式)☆工法ナビ登録工法,[online],2017年03月02日,[令和3年12月10日検索],インターネット<URL:https://www.youtube.com/watch?v=PUSlOQ29rjw>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 63/00-63/48
F16L 1/00- 1/26
F16L 5/00- 7/02
F16L 9/00-11/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
製管機によって帯状部材を既設管の内周に沿う螺旋管状の更生管に製管するのに先立ち前記更生管を巻き出す方法であって、
前記更生管の周長に嵌合代を加えた長さの巻出帯材を用意し、
前記巻出帯材を螺旋状に一周巻いてその両端部を前記嵌合代の長さ分だけ嵌合させることによって巻出リングを作製し、
その後、前記巻出リングと前記製管機とを組み付け、
さらに前記帯状部材の端部を前記製管機に導入して前記
巻出リングにおける巻出帯材の一端部と接合することを特徴とする更生管巻出し方法。
【請求項2】
製管機によって帯状部材を既設管の内周に沿う螺旋管状の更生管に製管するのに先立ち前記更生管を巻き出す方法であって、
前記更生管の周長に嵌合代を加えた長さの巻出帯材を用意し、
前記巻出帯材と前記製管機とを組み付け、
その後、前記巻出帯材を螺旋状に一周巻いてその両端部を前記嵌合代の長さ分だけ嵌合させることによって巻出リングを作製し、
さらに前記帯状部材の端部を前記製管機に導入して前記巻出リングにおける巻出帯材の一端部と接合することを特徴とする更生管巻出し方法。
【請求項3】
前記巻出リングの周方向の一部分に前記製管機を配置し、かつ
前記巻出リングの周方向の前記一部分を除く部分を内周側へ解放させ、前記接合後、前記解放させた状態で前記製管を開始することを特徴とする請求項1
又は2に記載の更生管巻出し方法。
【請求項4】
前記巻出リングの外周にフレキシブルな条体を周方向へスライド可能に掛け回すとともに前記条体の両端部を前記製管機に係着し、
前記接合後、前記条体を掛け回した状態で前記製管を開始することを特徴とする請求項
3に記載の更生管巻出し方法。
【請求項5】
前記既設管の内周形状にしたがって作製された巻癖付与フレームに前記嵌合前の巻出帯材を巻き付けて前記巻出帯材に巻き癖を付与することを特徴とする請求項1~
4の何れか1項に記載の更生管巻出し方法。
【請求項6】
前記帯状部材を前記更生管の周長に嵌合代を加えた長さに切断することによって、前記帯状部材と同一の断面を有
する前記巻出帯材を得ることを特徴とする請求項1~5の何れか1項に記載の更生管巻出し方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、螺旋管状の更生管を巻き出す方法及び該方法に用いられる巻出帯材に関し、特に老朽化した下水管等の既設管の内周に沿って製管機によって帯状部材から更生管を製管するのに先立って行う巻出し方法及び巻出部材に関する。
【背景技術】
【0002】
老朽化した下水管等の既設管を例えばSPR(Spiral Pipe Renewal)工法によって更生することは公知である(特許文献1~2等参照)。SPR工法では、製管機を用いて、帯状部材(プロファイル)を既設管の内周に沿って螺旋状に巻回するとともに一周違いに隣接する縁どうしを凹凸嵌合によって接合させる。これによって、既設管の内周に沿う更生管が製管される。
製管機は、一対の駆動ローラと、環状の内周規制体(リンクローラ)を有している。駆動ローラによって前記凹凸嵌合がなされる。製管中、更生管の端部の一周部分が内周規制体(リンクローラ)の外周に巻き付けられることよって更生管径が決定される。
【0003】
この種の製管工法の初期段階では以下のような巻出し作業を行なう。製管機を人孔に搬入する。また、帯状部材を地上のドラムから繰り出して人孔に挿し入れる。そして、人孔内において、帯状部材の端部から一周以上を螺旋状に巻回して製管機に組み付けた後、帯状部材が内周規制体にぴったり巻き付くまで製管機を駆動させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第4866428号公報
【文献】国際公開番号WO2012/108434
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記の巻出し作業において、帯状部材が内周規制体にぴったり巻き付くまでには、製管機を数周分駆動させて製管を行なう必要があった。また、帯状部材の剛性や更生管径によっては、狭隘な人孔内や既設管内で帯状部材の製管機への供給・巻き付け作業を人力で行なうこと自体が困難であり、作業に時間を要していた。
本発明は、かかる事情に鑑み、帯状部材から螺旋管状の更生管を製管する際の巻出し作業を簡易かつ短時間で行う方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明は、製管機によって帯状部材を既設管の内周に沿う螺旋管状の更生管に製管するのに先立ち前記更生管を巻き出す方法であって、
前記更生管の周長に嵌合代を加えた長さの巻出帯材を用意し、
前記巻出帯材を螺旋状に一周巻いてその両端部を前記嵌合代の長さ分だけ嵌合させることによって巻出リングを作製し、
前記巻出リング又は前記嵌合前の巻出帯材と前記製管機とを組み付け、
さらに前記帯状部材の端部を前記製管機に導入して前記嵌合後の巻出帯材の一端部と接合することを特徴とする。
当該巻出し方法によれば、所定長さの巻出帯材から所定の直径ないしは周長の巻出リングが作製される。巻出しのために製管機を数周分駆動させる必要が無い。これによって、巻出し作業を簡易かつ短時間で行うことができる。狭隘な人孔内でも容易に作業を行なうことができる。
【0007】
前記巻出リングの周方向の一部分に前記製管機を配置し、かつ記巻出リングの周方向の前記一部分を除く部分を内周側へ解放させ、前記接合後、前記解放させた状態で前記製管を開始することが好ましい。
当該製管機としては、例えば国際公開WO2018/043619に記載の製管機を用いることができる。該製管機は、未製管の帯状部材を製管済の管部分へ斜めに押し込む駆動ローラと、前記製管済の管部分の端部に係止される管端ガイドとを有し、内周規制体が省略されている。このため、巻出帯材を内周規制体に巻き付ける必要が無く、巻出リングを容易に作製できる。かつ巻出リングと製管機との組み付け作業を容易化できる。
【0008】
前記巻出リングの外周にフレキシブルな条体を周方向へスライド可能に掛け回すとともに前記条体の両端部を前記製管機に係着し、前記接合後、前記条体を掛け回した状態で前記製管を開始することが好ましい。
更生管の外周に条体が張り付くように製管することによって条体に張力が働き、更生管が外周側から規制される。条体の長さによって更生管の周長を設定できる。
【0009】
前記既設管の内周形状にしたがって作製された巻癖付与フレームに前記嵌合前の巻出帯材を巻き付けて前記巻出帯材に巻き癖を付与しておくことにしてもよい。
これによって、人孔の内部などにおいて、巻出帯材を容易にループさせることができ、巻出リングを容易に作製できる。特に、既設管の内周形状が非円形断面である場合、該非円形断面に合わせて巻出部材に非円形の巻き癖を付けることができる。これによって、容易に巻出しを行なうことができる。
【0010】
前記巻出帯材は、前記帯状部材と同一の断面を有していることが好ましい。
前記巻出帯材として、帯状部材を所定長さすなわち更生管の周長に嵌合代を加えた長さに切断したものを用いることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、帯状部材から螺旋管状の更生管を製管する際の巻出し作業を簡易かつ短時間で行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1(a)】
図1(a)は、本発明の第1実施形態の巻出帯材を巻出リングにする前の状態で示す斜視図である。
【
図1(b)】
図1(b)は、前記巻出リングの斜視図である。
【
図2】
図2(a)は、
図1(a)のIIa-IIa線に沿う、前記巻出帯材の断面図である。
図2(b)は、
図1(b)のIIb-IIb線に沿う、前記巻出リングの嵌合代部分の断面図である。
【
図3】
図3は、前記巻出しリングに製管機を組み付ける様子を示す正面図である。
【
図4】
図4(a)は、前記巻出しリングに製管機を組み付けた状態の正面図である。
図4(b)は、同状態の斜視図である。
【
図5】
図5(a)は、帯状部材を製管機に通して巻出帯材に接合した状態を示す正面図である。
図5(b)は、同状態の斜視図である。
【
図6】
図6は、更生管の製管の様子を示す斜視図である。
【
図7】
図7は、既設管を更生する様子を示す断面図である
【
図8】
図8は、本発明の第2実施形態を示し、巻出帯材及び製管機を人孔に挿し入れる様子を示す人孔の断面図である。
【
図9】
図9は、本発明の第3実施形態を示し、
図9(a)は、巻出しリングの外周に外周規制条体を巻き付けた状態を示す正面図である。
図9(b)は、同状態の斜視図である。
【
図10】
図10は、第3実施形態における更生管の製管の様子を示す斜視図である。
【
図11】
図11は、本発明の第4実施形態を示し、巻出帯材に巻き癖を付与する状態の平面図である。
【
図12】
図12は、第4実施形態における更生管の製管の様子を示す既設管の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面にしたがって説明する。
<第1実施形態>
図7は、老朽化した既設管1を更生する様子を示したものである。既設管1としては、下水道管、上水道管、農業用水管、水力発電導水管、ガス管等が挙げられる。既設管1の内周に更生管9がライニングされることで、既設管1が更生されている。
【0014】
図7に示すように、更生管9は、帯状部材90によって構成されている。該帯状部材90が螺旋状に巻回されるとともに一周違いに隣接する縁どうしが接合されることによって、螺旋管状の更生管9が製管される。
【0015】
図7に示すように、製管は製管機3を用いて行われる。
図4に示すように、製管機3は、例えば国際公開WO2018/043619に開示された製管機と同様の構造であり、簡略的に図示する装置フレーム3fと、一対の駆動ローラ31と、管端ガイド32を含む。
図6に示すように、装置フレーム3fひいては製管機3は、帯状部材90における製管済部分(以下「先行螺旋管部9a」と称す)の管端部9eの周方向の一箇所に配置される。ここで、管端部9eは、先行螺旋管部9aの延伸方向の先端の約一周部分を云う。
【0016】
図6に示すように、装置フレーム3fに一対の駆動ローラ31と管端ガイド32が設けられている。一対の駆動ローラ31は、帯状部材90における未製管部分(以下「後続帯部90b」と称す)を挟み付ける。管端ガイド32は、製管機3の推進前後方向(
図6の白抜き矢印)に離れたガイド部32a,32bを含む。前側のガイド部32aは、押え部33及び係止部34を含む。後側のガイド部32bは、押え部35及び係止部36を含む。ローラ状又はブロック状の押え部33,35が、管端部9eに内周側から宛がわれる。フック状の係止部34,36が、管端部9eに外周側から係止される(
図2(b)の仮想線及び
図13参照)。係止部34,36ひいては管端ガイド32は、先行螺旋管部9aの管軸方向へ拘束されるとともに、先行螺旋管部9aの巻回方向へスライド可能である。
管端ガイド32のガイド部の数は、2つに限らず、3つ以上であってもよい。3つ以上のガイド部が、製管機3の推進前後方向に間隔を置いて配置されていてもよい。
【0017】
一対の駆動ローラ31の回転駆動によって、後続帯部90bが、管端部9eの内側から管端部9eへ向かって斜めに押し出され、管端部9eの一周先行する縁と凹凸嵌合される。これによって製管が進む。かつ前記凹凸嵌合によって推進反力が生まれることで、製管機3が、
図6の白抜き矢印にて示すように時計回りに推進(自走)される。
製管機3は、リンクローラ等の内周規制体を有していない。このため、管端部9eの周方向における装置フレーム3fが配置された部分を除く部分は、内周側へ解放される。
【0018】
<巻出し方法>
前記製管機3による更生管9の製管に先立ち、次のような巻出し作業が行われる。
<巻出帯材の用意>
図1(a)に示すように、先ず巻出帯材80を用意する。巻出帯材80の長さL
8は、更生管9の周長L
9に嵌合代8dの長さL
8dを加えた大きさ(L
8=L
9+L
8d)とする。巻出帯材80としては、好ましくは帯状部材90を所定長さL
8に切断して用いる。帯状部材90の端材を用いることもできる。
【0019】
巻出帯材80は、帯状部材90と同一の断面を有している。詳しくは、
図2(a)に示すように、巻出帯材80は、帯本体81と、補強帯材85を含む。帯本体81は、例えばポリ塩化ビニル等の合成樹脂にて構成されている。帯本体81は、平帯部82と、嵌合部83,84を有している。平帯部82の外側面(既設管1の内壁を向く面)における例えば幅方向の中央部にリブ86が設けられている。平帯部82の幅方向の一方側(
図2(a)において左側)の縁には、第1嵌合部83が形成され、他方側の縁には第2嵌合部84が形成されている。帯本体81における外側面(既設管1の内壁を向く面)に補強帯材85が設けられている。補強帯材85は、スチール等の金属にて構成されている。
なお、図示した巻出帯材80の断面形状(帯状部材90の断面形状)はあくまで例示であり、本発明方法は巻出帯材80(帯状部材90)の多様な断面形状に適用可能である。
補強帯材85が省略されていてもよい。
【0020】
<巻癖付与>
好ましくは、予め地上において前記巻出帯材80を一周程度ループさせて巻き癖を付けておく。特に、巻出帯材80が高剛性である場合、予め巻き癖を付けておくことが好ましい。ただし、当該巻き癖付与時には、巻出帯材80の両端部の嵌合部83,84どうしを嵌合させない。
【0021】
<巻出帯材の人孔挿入>
前記の巻出帯材80を地上から人孔4内に降ろす。巻出帯材80は両端部が解放されているため、人孔4が小径であっても容易に挿し入れることができる。
【0022】
<巻出リング作製>
図1(a))に示すように、人孔4内において、巻出帯材80を螺旋状に一周巻いてその両端部を嵌合代8dの長さL
8d分だけ幅方向に重ねる。地上で予め巻き癖を付けておくことによって、人孔4内での人力による巻回作業の負担を軽減できる。
そして、
図1(b)に示すように、巻出帯材80の両端部の対向する縁どうしを嵌合させる。詳しくは、
図2(b)に示すように、巻出帯材80の一端部(同図において右端部)の第1嵌合部83に、他端部(同図において左端部)の第2嵌合部84を内周側(同図において上側)から凹凸嵌合させる。嵌合作業は、ハンマーなどを用いて人力で行なうことができる。これによって、
図1(b)に示すように、巻出リング8が作製される。
巻出帯材80を単独でリング状に巻けばよく内周規制体などに巻き付ける必要が無い。したがって、狭隘な人孔4内においても容易に巻出リング8を作製できる。人孔4が大口径である場合には、巻出リング8を地上で作製した後、人孔4内に吊降ろしてもよい。
巻出帯材80を既設管1の内周に沿って張り付けながら一周巻くことで、巻出リングを作製してもよい。
さらに、嵌合代8dの長さを調節することで、巻出リング8の周長を更生管8の周長と簡単に一致させることができる。製管機を数周分駆動させる必要はない。
巻出帯材80の少なくとも一方の端部に嵌合代8dの範囲を示す標示8fを設けておいてもよい。これによって、巻出リング8の周長が更生管8の周長と確実かつ容易に一致するようにできる。
【0023】
<製管機の人孔挿入>
巻出リング8の作製と前後して、製管機3を人孔4内に降ろす。そして、
図3に示すように、係止部34,36を外した状態の製管機3を巻出リング8の内周側に配置する。その後、係止部34,36を巻出リング8の外周側から製管機3に装着するとともに巻出リング8に係止する。これによって、
図4(a)に示すように、巻出リング8(嵌合後の巻出帯材80)に製管機3が組み付けられる。製管機3は、係止部34,36による前記係止によって巻出帯材80の幅方向へ拘束されるとともに、巻出リング8の周方向へスライド可能である。
図4(b)に示すように、製管機3の前後のガイド部32a,32bは、巻出リング8の周方向へ離れるとともに巻出リング8の螺旋ピッチ分だけずれている。
装置フレーム3fひいては製管機3は、巻出リング8の周方向の一部分に配置される。巻出リング8の周方向における前記一部分を除く部分は、内周側へ解放される。
【0024】
<帯状部材の導入>
次に、帯状部材90を地上のドラム5から繰り出して人孔4内に垂らす(
図7参照)。
図5に示すように、該帯状部材90の端部を製管機3に導入し、一対の駆動ローラ31に通すことで製管機3と係合させる。
【0025】
<帯状部材と巻出帯材との接合>
続いて、帯状部材90の端部を巻出リング8における巻出帯材80の一端部80eと接合する。接合方法としては、帯状部材どうしの公知の接合方法を応用できる。例えば、接続部材(図示省略)を帯状部材90と巻出帯材80の鋼製補強帯材どうし間に跨るように配置するとともに、該接続部材を帯状部材90の鋼製補強帯材と巻出帯材80の鋼製補強帯材85にそれぞれボルトや溶接などで接合する。帯状部材90と巻出帯材80の樹脂部どうし又は金属部どうしを突き当てて直接的に溶着してもよい。
このようにして、巻出し作業を短時間で簡単に行なうことができる。人孔4が狭隘であっても巻出し作業を容易に行なうことができる。
【0026】
<更生管の製管>
その後、巻出リング8を既設管1の口部に位置合わせして配置し、製管機3の駆動ローラ31を回転駆動させて製管を開始する。
図6及び
図7に示すように、これによって、巻出リング8に続いて更生管9が既設管1の内周に沿って製管される。製管開始時の巻出リング8は内周側へ解放された状態になっている。ひいては、更生管9が、管端部9eを内周側へ解放させた状態で内周規制体無しで製管される。
巻出リング8を含む更生管9の発進人孔4内への突出端部9dは、製管工程の途中又は製管後に切除してもよい。
【0027】
次に、本発明の他の実施形態を説明する。以下の実施形態において既述の形態と重複する構成に関しては、図面に同一符号を付して説明を省略する。
<第2実施形態>
図8は、本発明の第2実施形態を示したものである。
第2実施形態は巻出し手順の変形例に係る。
図8の二点鎖線に示すように、地上において、両端部を嵌合させる前の巻出帯材80に製管機3を組み付ける。このとき、例えば管端ガイド32の押え部33を締め付けることで、製管機3を巻出帯材80に対してスライド不能に係止する。そのうえで、
図8の実線に示すように、製管機3付きの巻出帯材80を人孔4内へ吊降ろす。
【0028】
そして、人孔4内において、巻出帯材80を螺旋状に一周巻いて両端部どうしを嵌合代8dの分だけ嵌合させることによって、巻出リング8を作製する。これによって、人孔4内での巻出し作業の工数を減らすことができる。
なお、人孔4の口径が大きい場合には、地上で製管機3の組み付けから巻出リング8の作製までを行なった後、製管機3付きの巻出リング8を人孔4内に吊降ろしてもよい。
その後、前記押え部33を緩めることで、製管機3を巻出リング8の周方向へスライド可能にする。そして、帯状部材90の接続工程を経て(
図5参照)、更生管9の製管を開始する(
図6、
図7参照)。
第2実施形態によれば、人孔4内での工数を減らせるため、短時間で巻出し作業を完了して製管を開始することができる。
【0029】
<第3実施形態>
図9及び
図10は、本発明の第3実施形態を示したものである。
図9に示すように、第3実施形態においては、フレキシブルな条体38を用意する。条体38は、ワイヤロープによって構成されている。条体38の長さは、巻出リング8の周長程度である。なお、条体38は、フレキシブル性(可撓性)のほか、引っ張られたとき伸び変形することなく張力を発現可能なものであればよく、ワイヤロープのほか、バンド、リンクチェーン、ローラーチェーンなどで構成されていてもよい。
【0030】
図9(a)及び同図(b)に示すように、該条体38を巻出リング8の外周に周方向へスライド可能に掛け回す。かつ条体38の両端部を製管機3に係着する。そして、帯状部材90の接続工程を経て、製管工程を開始する。つまり、条体38を巻出リング8の外周に掛け回した状態で製管を開始する。
【0031】
図10に示すように、製管機3の推進に伴って、条体38が、製管機3と一体に螺旋状に回転しながら、巻出しリング8の外周から先行螺旋管部9aの外周へスライドされる。したがって、条体38は、常に管端部9eの外周に配置される。
ここで、管端部9eの周長又は直径が大きくなるように製管することによって、管端部9eの外周に条体38が張り付き、条体38に張力が働く。該張力によって管端部9eの周長又は直径を規制できる。また、前記張力によって条体38がほぼ真円形になり、管端部91eをほぼ真円の円形断面にすることができる。
なお、製管機3においては前側ガイド部32aと管端部91eとの間の摩擦抵抗力と駆動ローラ31による帯状部材90の押し込み力とを互いに調節したり、製管装置3の推進前後方向及び幅方向と直交する高さ方向を管端部91eの径方向に対して傾斜させたりすることで、周長又は直径が増減するように製管できる(国際公開WO2016/175243参照)。
【0032】
<第4実施形態>
図11~
図13は、本発明の第4実施形態を示したものである。
図12に示すように、第4実施形態における既設管1Dは、非円形断面になっている。
図11に示すように、該既設管1Dを更生する場合、巻癖付与フレーム2を用意する。巻癖付与フレーム2の外周形状は、既設管1Dの非円形の内周形状に合わせた形状になっている。巻癖付与フレーム2は、周方向に複数個のピース2aに分割され、使用時にこれらピース2aを環状に接合することで巻癖付与フレーム2を組み立てるようになっていてもよい。
該巻癖付与フレーム2の外周に巻出帯材80を巻き付けることによって、巻出帯材80に巻癖付与フレーム2の外周形状に倣うように巻癖を付与する。当該巻癖付与工程は、地上で行なうことができる。
【0033】
その後、巻出帯材80を巻癖付与フレーム2から外し、人孔4内へ挿し入れる。このとき、巻出帯材80を多少伸ばすことで挿し入れやすくしてもよい。その後、前記伸ばしていた力が解除されると、巻出帯材80が巻癖の付いた形状に戻ろうとする。
【0034】
図12に示すように、該巻出帯材80を既設管1Dの口部に沿って所定の非円形の螺旋状に一周巻く。事前に巻癖を付与しておくことによって、巻出帯材80を容易に所定の非円形に巻くことができる。続いて、巻出帯材80の両端部を嵌合代8dの分だけ嵌合させる。これによって、既設管1Dの内周に沿う非円形状の巻出リング8Dを容易に作製することができる。
【0035】
続いて、製管機3を巻出リング8Dに組み付ける。詳しくは、例えば係止部34,36を外した製管機3を巻出リング8Dの周方向の一箇所の内周に設置する。続いて、
図12及び
図13に示すように、巻出リング8Dにおける前記一箇所とは別の箇所に係止部34,36を係止させる。前記別の箇所としては、例えば既設管1Dの底面と側面とのコーナー部1cが挙げられる。コーナー部1cにおいては、巻出リング8Dが既設管1Dの内周面から離れるため、該巻出リング8Dに係止部34,36を係止させやすい。その後、該係止部34,36を巻出リング8Dの周方向にスライドさせて製管機3に装着する。
次に、
図12の二点鎖線にて示すように、帯状部材90の端部を製管機3に導入するとともに、巻出リング8Dを構成する巻出帯材80の一端部に前記帯状部材90の端部を接合する。
そして、製管機3を駆動して更生管9の製管を行なう。
【0036】
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の改変をなすことができる。
例えば、製管機として、リンクローラ等の内周規制体付きの製管機を用いてもよい。
元押し式又は牽引式によって更生管9を製管してもよい。
巻出帯材80の断面が、帯状部材90の断面とは異なっていてもよい。
複数の実施形態を組み合わせてもよい。たとえば第1実施形態(
図1~
図7)の円形断面の既設管1を更生する場合においても、非円形断面の既設管1Dを更生する第4実施形態(
図11)と同様に、巻出帯材80にあらかじめ地上で巻癖を付けたうえで、該巻出帯材80を人孔4へ挿し入れてもよい。第4実施形態における製管機3の組み付け工程を、第2実施形態(
図8)と同様に地上で行ってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、例えば老朽化した下水管の更生技術に適用できる。
【符号の説明】
【0038】
1,1D 既設管
2 巻癖付与フレーム
3 製管機
31 駆動ローラ
32 管端ガイド
38 条体
4 人孔
8 巻出リング
8d 嵌合代
8f 標示
80 巻出帯材
85 補強帯材
9 更生管
9a 先行螺旋管部
9e 管端部
90 帯状部材
90b 後続帯部
L8d 嵌合代の長さ