(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-22
(45)【発行日】2022-03-30
(54)【発明の名称】脱サイズ方法及び脱サイズ装置並びに成形装置
(51)【国際特許分類】
D06M 10/00 20060101AFI20220323BHJP
D06M 101/40 20060101ALN20220323BHJP
【FI】
D06M10/00 L
D06M101:40
(21)【出願番号】P 2018065036
(22)【出願日】2018-03-29
【審査請求日】2021-03-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000003001
【氏名又は名称】帝人株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100167438
【氏名又は名称】原田 淳司
(74)【代理人】
【識別番号】100166800
【氏名又は名称】奥山 裕治
(72)【発明者】
【氏名】荒金 陽介
(72)【発明者】
【氏名】郷家 正義
(72)【発明者】
【氏名】澤田 瑞穗
【審査官】斎藤 克也
(56)【参考文献】
【文献】特公平07-032511(JP,B2)
【文献】特開昭59-137569(JP,A)
【文献】特開2015-021196(JP,A)
【文献】特開昭62-184172(JP,A)
【文献】特開2005-225993(JP,A)
【文献】特開平04-163367(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06M 10/00 - 11/84
D06M 16/00
D06M 19/00 - 23/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性繊維に付着したサイズ剤を除去する脱サイズ方法において、
前記導電性繊維はロービングから引き出された繊維であり、
前記サイズ剤が付着した
前記導電性繊維に通電する
脱サイズ方法。
【請求項2】
前記導電性繊維を走行させ、
走行方向における上流側ローラと下流側ローラとの間に印加電力を供給する
請求項1に記載の脱サイズ方法。
【請求項3】
導電性繊維に付着したサイズ剤を除去する脱サイズ装置において、
前記導電性繊維はロービングから引き出された繊維であり、
前記サイズ剤が付着した前記導電性繊維に通電する通電手段を備える
脱サイズ装置。
【請求項4】
サイズ剤が付着した導電性繊維を
ロービングから引き出して供給する繊維供給部と、
供給された前記導電性繊維に付着した前記サイズ剤を除去する脱サイズ部と、
前記サイズ剤が除去された前記導電性繊維に可塑性樹脂を供給する樹脂供給部と
を備え、
前記脱サイズ部は前記供給された前記導電性繊維に通電する通電手段を備える
成形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性繊維に付着したサイズ剤を除去する脱サイズ方法及び脱サイズ装置並びに前記脱サイズ方法により脱サイズされた導電性繊維を用いて成形物を成形する成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、導電性繊維の一例である炭素繊維には、操作性、摩耗性等を改善するために、サイズ剤が付着している。炭素繊維は、エポキシ等の熱硬化性樹脂と共に成形されて複合材料として広く利用されている。このため、マトリクス樹脂である熱硬化性樹脂と炭素繊維との密着性を良くするために、サイズ剤として熱硬化性樹脂が使用されている。
一方、マトリクス樹脂として熱可塑性樹脂を用いた複合材料もある。この場合、炭素繊維とマトリクス樹脂との密着性は、マトリクス樹脂として熱硬化性樹脂を用いた場合より悪くなる傾向にある。
このため、熱可塑性樹脂をマトリクス樹脂とする場合、炭素繊維のサイズ剤を除去することが好ましい。特許文献1には、脱サイズ方法の例として、炭素繊維をアセトン浴に浸漬する方法が記載されている。なお、サイズ剤を除去することを脱サイズともいう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術では、アセトン浴に炭素繊維を浸漬するため、脱サイズ用の設備が大掛かりになるという問題がある。
本開示は、上記のような問題点に着目し、大掛かりな設備を必要とせずに、導電性繊維からサイズ剤を除去する脱サイズ方法及び脱サイズされた導電性繊維と可塑性樹脂とを用いて成形物を成形する成形装置を提供することを目的とする。
なお、脱サイズは、マトリクス樹脂と同じ系(タイプ)の樹脂を主成分とするサイズ剤であっても、マトリクス樹脂と繊維との密着性が劣る(改善する)場合もあり、脱サイズの簡略化の要求は高い。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示に係る脱サイズ方法は、導電性繊維に付着したサイズ剤を除去する脱サイズ方法において、前記サイズ剤が付着した導電性繊維に通電する。また、前記導電性繊維を走行させ、走行方向における上流側ローラと下流側ローラとの間に印加電力を供給する。
本開示に係る脱サイズ装置は、導電性繊維に付着したサイズ剤を除去する脱サイズ装置において、前記サイズ剤が付着した前記導電性繊維に通電する通電手段を備える。
本開示に係る成形装置は、サイズ剤が付着した導電性繊維を供給する繊維供給部と、供給された前記導電性繊維に付着した前記サイズ剤を除去する脱サイズ部と、前記サイズ剤が除去された前記導電性繊維に可塑性樹脂を供給する樹脂供給部とを備え、前記脱サイズ部は前記供給された前記導電性繊維に通電する通電手段を備える。
【発明の効果】
【0006】
本開示に係る脱サイズ方法では、素材自体に通電することで、素材自体が発熱する。この熱を利用しているため、大掛かりな設備を必要とせずに、導電性繊維からサイズ剤を除去できる。
本開示に係る脱サイズ装置では、上記の脱サイズ方法を利用するため、大掛かりな設備を必要とせずに、導電性繊維からサイズ剤を除去できる。
本開示に係る成形装置では、上記脱サイズ方法を利用するため、大掛かりな設備を必要とせずに、導電性繊維からサイズ剤を除去できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1の実施形態に係る製造装置を説明するための概略図である。
【
図4】第2の実施形態に係る製造装置を説明するための概略図である。
【
図5】変形例1の脱サイズ部を説明する概略図である。
【
図6】変形例2の脱サイズ部を説明する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<本開示の概要>
1.脱サイズ
(1)導電性繊維
導電性繊維は、当該繊維に電流を流してジュール熱を発生できればよく、その導電率は特に限定するものではない。
導電性繊維は、長繊維であっても短繊維であってもよい。なお、ここでいう長繊維は、100[mm]以上の長さをいい、例えば、連続繊維も含まれる。長繊維の形態は、1本のフィラメントから構成されたものであってもよいし、複数本のフィラメントが束状になった繊維束(ストランド)であってもよい。
繊維が束状の場合、同じ種類の繊維(フィラメント)から構成されてもよいし、複数種類の繊維(フィラメント)から構成されてもよい。また、複数種類の繊維(フィラメント)から構成される場合、複数種類の中に導電性繊維が含まれていればよい。
導電性繊維の例としては、炭素繊維等の有機繊維や、ステンレス等の金属繊維等の無機繊維や、有機繊維の表面に導電処理(被覆や塗布)を施した繊維や、導電性フィラーが混入された有機繊維等がある。
【0009】
(2)サイズ剤
サイズ剤は硬化性樹脂を主成分とする。ここでいう主成分とは、サイズ剤に含まれる樹脂成分中において硬化性樹脂が50[%]より多く含まれることをいう。サイズ剤の例としては、エポキシ、ビニルエステル、ポリウレタン等がある。
なお、サイズ剤は可塑性樹脂を主成分としてもよい。例えば、導電性繊維を脱サイズして、熱硬化性樹脂をマトリクス樹脂として成形するような場合である。
【0010】
(3)通電
通電は導電性繊維に電流を流すことをいう。電流量(通電量)は、通電によりジュール熱が発生して、その熱によりサイズ剤を分解(除去)できる電流量以上であればよい。
【0011】
2.成形装置
(1)装置
成形装置は、少なくとも、繊維供給部、脱サイズ部、樹脂供給部を備えればよい。
(1-1)繊維供給部
繊維供給部はサイズ剤が付着した導電性繊維を供給できればよい。ここでの導電性繊維は連続繊維が好ましい。供給する繊維は、繊維束が好ましく、その本数は特に限定するものではない。
(1-2)脱サイズ部
脱サイズ部は、サイズ剤が付着する導電性繊維に対して可塑性樹脂が供給される(接触する)前に、導電性繊維のサイズ剤を除去できればよい。
脱サイズ部は、複数本の導電性繊維又は複数本の導電性繊維束が供給される場合、複数本の導電性繊維又は複数本の導電性繊維束が1つにまとめられる前に各導電性繊維又は導電性繊維束を脱サイズしてもよいし、複数本の導電性繊維又は複数本の導電性繊維束が1つにまとめられた後に、当該まとめられた導電性繊維を脱サイズしてもよい。
【0012】
導電性繊維への通電方法は、特に限定するものではなく、例えば、導電性繊維を樹脂供給位置まで走行させるためのローラであって走行方向に配された複数のローラ間に印加してもよいし、導電性繊維を走行させるためのニップローラを構成する一対のローラ間に印加してもよいし、導電性繊維を走行方向に沿って誘導するために走行方向に沿って配されたガイド間に印加してもよいし、ローラとガイドとの間に印加してもよいし、ローラとニップローラとの間に印加してもよいし、ニップローラとガイドとの間に印加してもよい。つまり、樹脂供給位置までに、走行する導電性繊維と接触する導電性部品間に印加すればよい。
印加電圧及び通電時間は、供給する導電性繊維の本数、導電性繊維の導電率、サイズ剤の種類等により適宜決定すればよい。
【0013】
(1-3)樹脂供給部
樹脂供給部は溶融した樹脂を導電性繊維に供給する。供給方法は、例えば、固体樹脂を加熱部に供給した後に溶融状態になった樹脂を導電性繊維に供給してもよいし、樹脂シートを複数本の導電性繊維(束)に供給した後に加熱ローラで樹脂シートを溶融させても良い。
【0014】
(2)可塑性樹脂
可塑化型樹脂は、熱、光(紫外線や赤外線)等で溶融し、溶融後に固化する樹脂である。可塑性樹脂としては、ポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂、及びその共重合体やブレンド物であるポリオレフィン系樹脂、ポリアミド66、ポリアミド6、ポリアミド12等の脂肪族ポリアミド系樹脂、酸成分として芳香族成分を有する半芳香族ポリアミド系樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)やポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)等の芳香族ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリスチレン系樹脂(ポリスチレン樹脂、AS樹脂、ABS樹脂等)、ポリ乳酸系などの脂肪族ポリエステル系樹脂、ポリスルフォン樹脂(PSu)ポリエーテルスルフォン樹脂(PES)、ポリエーテルイミド樹脂(PEI)、ポリエーテルケトン樹脂(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン樹脂(PEEK)などがある。また、樹脂として、これらの樹脂の混合物を使用することもできる。
【0015】
(3)成形物
成形物は導電性繊維と可塑性樹脂とからなる繊維樹脂材料を成形(固化)したものである。なお、繊維樹脂材料は、成形物の形状に固化される前の状態をいい、可塑性樹脂の状態は、固体状態、粉体状態、流体状態であってもよい。
成形物は、一定の形状を維持できる状態のものをいい、最終製品と形状が異なってもよいし、同じであってもよい。つまり、成形物は、最終製品であってもよいし、最終製品にするために供給される中間製品であってもよい。
【0016】
<第1の実施形態>
1.概要
主に
図1を用いて説明する。
第1の実施形態は、導電性繊維として炭素繊維束を利用し、連続状の炭素繊維束と熱可塑性樹脂とから成形物を連続して成形する成形装置1について説明する。なお、導電性繊維(炭素繊維束)を、以下「繊維」とし、符号「A」を用いる。熱可塑性樹脂を、以下「樹脂」とし、符号「B」を用いる。
成形装置1は、少なくとも、繊維供給部3、脱サイズ部5及び樹脂供給部7を備える。ここでの成形装置1は、樹脂Bが繊維Aに供給されてなる繊維樹脂材料を賦形する賦形部9を備える。なお、繊維樹脂材料の符号を「C」とする。
【0017】
ここで、繊維Aの走行方向において、繊維Aの進む側を下流側(
図1において下側である)とし、下流側と反対側を上流側(
図1において上側である)とする。成形装置1は、上流側から繊維供給部3、樹脂供給部7、賦形部9をこの順で備える。なお、一例としての脱サイズ部5は、繊維供給部3内に含まれている。
成形装置1は、繊維Aや繊維樹脂材料Cを走行させるための走行用ローラを1個以上有する。ここでは、成形装置1は樹脂供給部7と賦形部9との間に走行用ローラ(ニップローラ)8を備える。
【0018】
2.各部の構成
(1)繊維供給部
ここでの繊維Aはボビン31に巻き付けられたロービング33を利用する。
繊維供給部3はロービング33から引き出された繊維Aをローラ35やニップローラ36で誘導しつつ供給する。なお、ニップローラ36はロービング33から繊維Aを引き出す機能も有する。
【0019】
(2)脱サイズ部
ローラ35とニップローラ36は、繊維Aと接触する周面を導電性材料(例えば金属材料)で構成されている。脱サイズ部5は、ローラ35とニップローラ36との間に電圧を印加する電圧印加手段51を有する。これにより、ローラ35とニップローラ36との間を移動する繊維Aに電流が流れ、ジュール熱により繊維Aが発熱する。なお、電圧印加手段51は通電手段の一例に相当する。
【0020】
(3)樹脂供給部
樹脂供給部7は繊維Aが賦形部9に達する前に樹脂Bを供給する。ここでは溶融状態の樹脂Bが繊維Aに供給される。樹脂供給部7は、樹脂Bを貯留する樹脂貯留タンク71と、繊維Aに供給する樹脂Bを貯留する樹脂槽73と、貯留されている樹脂Bを樹脂槽73に送り出すポンプ75とを備える。
樹脂貯留タンク71にはヒータ(図示省略)が設けられている。これにより、樹脂貯留タンク71内の樹脂Bを溶融したり、溶融状態を維持したりする。樹脂槽73には貫通孔73aが設けられ、この貫通孔73aを所定本数の繊維Aが通過する。貫通孔73aは所定本数の繊維Aの太さに対応しており、溶融状態の樹脂Bが供給されている樹脂槽73の貫通孔73aを通過することで、所定量の樹脂Bが繊維Aに塗布(供給)される。この樹脂Bが付着したものが繊維樹脂材料Cである。
【0021】
(4)賦形部
賦形部9は繊維樹脂材料Cを所望の形状に賦形する。賦形部9は、繊維樹脂材料Cを軟化させるヒータ91と、軟化状態にある繊維樹脂材料Cを賦形させるための賦形用ローラ93とを備える。
樹脂供給部7から送り出される繊維樹脂材料Cの少なくとも表面が固化状態又は固化状態に近い状態になっている場合ある。このため、ヒータ91は少なくとも変形可能な程度にまで繊維樹脂材料Cを軟化させるためのものである。ヒータ91として、接触タイプ、非接触タイプ等を利用できる。なお、操作性、樹脂Bの付着を考慮すると非接触タイプが好ましい。
賦形用ローラ93は走行する繊維樹脂材料Cの両側に配された駆動ローラである。ここでの繊維樹脂材料Cの両側は、賦形用ローラ93に供給される繊維樹脂材料Cの移動方向と直交する方向において繊維樹脂材料Cの両側である。
図1では左右方向である。
【0022】
賦形用ローラ93は一対のローラ93a,93bにより構成されている。一対のローラ93a,93bは走行する繊維樹脂材料Cに当接し、繊維樹脂材料Cが所定方向(ここでは下方)に進むように回転する。一対のローラ93a,93bは賦形用ローラ93に進入する前の繊維Aの移動方向と直交する方向を回転軸としている。各ローラ93a,93bはその回転速度が独立して調整可能に設けられている。ローラ93a,93bの回転速度を異なるように調整することで、その速度差により繊維樹脂材料Cが変形する。なお、成形物は直線状に延伸する棒状、板状であってもよい。
【0023】
3.脱サイズ
繊維Aに電流を流すことで、繊維Aに付着したサイズ剤を除去している。以下、通電による脱サイジングの試験結果を説明する。
【0024】
(1)試験内容
試験は、
図2に示すように、2つのニップローラ11,12間に繊維を架設した状態で所定の電圧を2つのニップローラ11,12に印加した。ここでは、ニップローラ11に正電圧を印加した。
試験条件は、以下の通りである。
ニップローラ間隔:300[mm]
電流 :4.5[A]
通電時間 :1、3、5、7、10、120、240[sec]
繊維銘柄 :STS40 F13 24K 1600TEX S(東邦テナックス社製)
繊維本本数 :24,000本
サイズ剤 :F13
【0025】
(2)評価
通電前後の繊維Aの重量変化により脱サイズ剤を評価した。
試験結果は、
図3に示すように、通電時間が10[sec]まで繊維Aの重量は減少し、通電時間を10[sec]以上長くしても、重量変化は見られなかった。
つまり、繊維Aに通電させて発熱させることで、繊維Aに付着したサイズ剤が除去されることが明らかになった。
【0026】
(3)実用性
上記試験結果から、24,000[本]の繊維Aに対して4.5[A]の電流を10[sec]流すことで、サイズ剤を除去できる。
したがって、例えば、
図1で説明した成形装置1において、繊維Aの走行速度を1000[mm/min]に設定すると、
図1のローラ35とニップローラ36の間隔を167[mm]以上にすることで、脱サイズ処理が可能となり、成形装置1への組み込みで十分に実用できる。
【0027】
<第2の実施形態>
1.概略
図4を用いて説明する。
第2の実施形態においても繊維Aと樹脂Bとを用いて成形物を製造する。
成形装置101は、少なくとも、繊維供給部103、脱サイズ部105、樹脂供給部7、賦形部109を備える。なお、樹脂供給部7は第1の実施形態と同じ構成であるため、その説明を省略する。
【0028】
(1)繊維供給部
ここでの繊維供給部103は、複数個所(例えば2箇所)から繊維Aを供給する。繊維供給部103は、ボビン31に巻き付けられたロービング33を複数本(例えば2本)備え、複数本(例えば2本)の繊維Aを上流側のローラ131,133、下流側のローラ135で誘導して供給する。なお、ローラ135はニップローラであり、複数のロービング33から繊維Aを引き出す機能も有する。
【0029】
(2)脱サイズ部
脱サイズ部105は、第1の実施形態と同様に、繊維供給部103のローラ131,133,135を利用して、繊維Aに通電させている。ここでは、ローラ131,133に正電圧を印加する。
【0030】
(3)賦形部
賦形部109は繊維樹脂材料Cを所望の形状に賦形する。賦形部109は、繊維樹脂材料Cを下流側に移動させるための移動用ローラ(ニップローラ)191と、繊維樹脂材料Cを賦形させる賦形用ローラ193とを備える。
賦形用ローラ193に供給される繊維樹脂材料Cが変形自在な場合はヒータを備えなくてもよいが、ここでの賦形部109はヒータを備える。
ヒータは、
図4に示すように、走行用ローラ191と賦形用ローラ193とに印加する印加手段195により構成される。電圧の印加により、走行用ローラ191と賦形用ローラ193との間を走行する繊維Aに電流が流れ、ジュール熱による発熱により繊維樹脂材料Cが加熱される。
賦形用ローラ193は、第1の実施形態と同様に、一対のローラ193a,193bにより構成され、各ローラ193a,193bはその回転速度が独立して調整可能に設けられている。
【0031】
2.賦形部のヒータ
第2の実施形態では、賦形部109におけるヒータとして、繊維樹脂材料Cを走行させるための走行用ローラ191と賦形用ローラ193に電流を流している。これにより、走行用ローラ191と賦形用ローラ193間を走行する繊維Aが発熱する。この場合、繊維A自体が発熱するため、樹脂Bと繊維Aとの密着性を向上させることができる。つまり、繊維Aへの樹脂Bの含浸に着目すると、繊維(フィラメント)への通電により繊維A周辺の樹脂Bを溶融させて繊維A間に浸透させ易くする含浸方法とも言える。
【0032】
<変形例>
以上、第1及び第2の実施形態を説明したが、これらの実施形態に限られるものではなく、例えば、以下のような変形例であってもよい。また、実施形態と変形例、変形例同士を組み合わせたものであってよい。
また、実施形態や変形例に記載していていない例や、要旨を逸脱しない範囲の設計変更があっても本発明に含まれる。
【0033】
1.脱サイズ
脱サイズは導電性繊維に電気を流してジュール熱を発生させることで行っている。したがって、脱サイズは導電性繊維に電流を流せればよく、その通電方法について特に限定するものではない。
以下、第1及び第2の実施形態と異なる変形例について説明する。
【0034】
図5に示す変形例では、繊維供給部は第2の実施形態と同じであり、2本の繊維A1,A2は各ロービング33から引き出され、ローラ131,133でガイドされながら、ローラ(ニップローラ)135により1つの繊維束Aとなって下流側へ送り出される。ジュール熱用の電圧がローラ131とローラ133との間に印加されている。ここでは、ローラ131に正電圧が印加されている。これにより、電流は、図中の矢印で示すように、ローラ131から繊維A1、ローラ135で合流する繊維A2を通り、ローラ133へと流れる。
【0035】
図6に示す例では、繊維供給部は第1の実施形態と同じであり、1本の繊維Aはロービング33から引き出され、ローラ35でガイドされながら、ニップローラ36により下流側へ送り出される。ニップローラ36は一対のローラ36a,36bにより構成されている。ジュール熱用の電圧がローラ36aとローラ36bとの間に印加されている。ここでは、ローラ36bに正電圧が印加されている。これにより、電流は、繊維Aを横切るように流れる。この場合、通電時間が短くなるため、通電量を多くすることで脱サイズが可能となる。
【0036】
2.賦形部
第2の実施形態では、走行用ローラ191と賦形用ローラ193とに印加して、走行用ローラ191と賦形用ローラ193との間の繊維樹脂材料C(繊維A)を通電により加熱している。しかしながら、例えば、走行用ローラ191を構成する2個のローラに印加してもよいし、賦形用ローラ193の2個のローラ193a,193bに印加してもよい。なお、ここでの印加は樹脂Bの加熱目的である。
【0037】
1 成形装置
3 繊維供給部
5 脱サイズ部
7 樹脂供給部