(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-22
(45)【発行日】2022-03-30
(54)【発明の名称】既設管の更生用支保装置
(51)【国際特許分類】
F16L 1/00 20060101AFI20220323BHJP
【FI】
F16L1/00 P
(21)【出願番号】P 2018072155
(22)【出願日】2018-04-04
【審査請求日】2021-01-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085556
【氏名又は名称】渡辺 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100115211
【氏名又は名称】原田 三十義
(74)【代理人】
【識別番号】100153800
【氏名又は名称】青野 哲巳
(72)【発明者】
【氏名】津田 直弥
(72)【発明者】
【氏名】北山 康
(72)【発明者】
【氏名】馬場 達郎
(72)【発明者】
【氏名】杉山 佳郎
【審査官】渡邉 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-125274(JP,A)
【文献】特開平09-132930(JP,A)
【文献】特開平04-085414(JP,A)
【文献】特開平07-138946(JP,A)
【文献】特開平11-077646(JP,A)
【文献】実開昭63-075305(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設管の内周に沿う更生管と前記既設管との間に裏込め材を充填する際に前記更生管に設置される支保装置であって、
前記更生管の周方向に間隔を置いて複数配置されるか又は前記更生管の少なくとも下側部に配置された腹起しを有して、前記更生管の内部に設けられた支保本体と、
前記支保本体に昇降可能に支持されるとともに、前記更生管の頂部に形成された貫通孔を貫通して前記既設管の頂部に突き当てられる支保材と、
前記支保材の上側部分に設けられ、前記裏込め材と前記支保材との接合を阻止又は解除する引抜容易化手段と、
を備え
、前記引抜容易化手段が、前記支保材における前記上側部分の上端面及び周側面に被せられた柔軟なシートを含み、
前記支保材の前記上側部分の外周面と前記貫通孔の内周面との間の隙間が、前記シートによって塞がれることを特徴とする支保装置。
【請求項2】
前記シートの一部が、前記貫通孔の内周面と前記支保材との間を通して前記更生管の内部に出ることを特徴とする請求項
1に記載の支保装置。
【請求項3】
前記引抜容易化手段が、前記支保材における前記上側部分に被覆された離型剤を含むことを特徴とする請求項1
又は2に記載の支保装置。
【請求項4】
前記支保材における前記上側部分が、上端へ向かって縮径するテーパ部となっていることを特徴とする請求項1~
3の何れか1項に記載の支保装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既設管の更生に用いられる支保装置に関し、特に既設管の内周に沿う更生管と既設管との間に裏込め材を充填する際に更生管内に設置される支保装置に関する。
【背景技術】
【0002】
老朽化した下水管等の既設管の内周に更生管をライニングすることによって、既設管を更生することは公知である。このような工法の多くは、更生管の外周面と既設管の内周面の間にセメントミルクやモルタルなどの裏込め材を充填する。その際、裏込め材の注入圧及び浮力によって、更生管が断面変形ひいては座屈したり浮き上がったりしないように、更生管内に支保装置を設置する(特許文献1、2等参照)。
【0003】
特許文献1,2の支保装置は、更生管内に配置された環状のフレームと、該環状フレームの外周の周方向に間隔を置いて設けられた複数の腹起しとを含む。各腹起しが更生管の内周面に押し当てられている。支保装置の上端部には、鉛直な棒状の支保材が設けられている。該支保材が、更生管の頂部に形成された貫通孔を通して既設管の頂部に突き当てられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平10-121565号公報
【文献】特開2013-256854号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
更生管と既設管との間に裏込め材を充填すると、前記棒状の支保材に裏込め材がくっ付く。このため、裏込め材の硬化後、前記支保材を撤去するために下方へ引き抜くのが容易でなかった。
本発明は、かかる事情に鑑み、更生管の頂部を貫通して既設管の頂部に突き当てられた支保材を、裏込め材の硬化後に容易に引き抜いて撤去できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明は、既設管の内周に沿う更生管と前記既設管との間に裏込め材を充填する際に前記更生管に設置される支保装置であって、
前記更生管の周方向に間隔を置いて複数配置されるか又は前記更生管の少なくとも下側部に配置された腹起しを有して、前記更生管の内部に設けられた支保本体と、
前記支保本体に昇降可能に支持されるとともに、前記更生管の頂部に形成された貫通孔を貫通して前記既設管の頂部に突き当てられる支保材と、
前記支保材の上側部分に設けられ、前記裏込め材と前記支保材との接合を阻止又は解除する引抜容易化手段と、
を備えたことを特徴とする。
【0007】
当該支保装置によれば、引抜容易化手段を設けておくことによって、裏込め材の充填時に該裏込め材と支保材とが接合されるのを阻止できる。または、裏込め材の硬化後に、該裏込め材と支保材との接合を解除できる。これによって、支保材を容易に下方へ引き抜いて撤去できる。
前記更生管の周方向に間隔を置いて複数配置された腹起しによって、更生管を内面側から押さえることで、裏込め材の注入圧に対して更生管の断面形状を保持して座屈を防止できる。かつ前記複数の腹起しによる押えと、前記支保材の既設管頂部への突き当てとによって、裏込め材の注入による浮力に対して更生管が浮き上がるのを防止できる。または、更生管の少なくとも下側部に配置された腹起しと前記支保材とによって、更生管の浮き上がりを防止できる。したがって、当該支保装置によれば、更生管の断面形状保持機能及び浮上防止機能のうち少なくとも浮上防止機能を担う。更生管が裏込め材の注入圧によっては座屈しない程度に高剛性である場合には、支保装置は少なくとも浮上防止機能を有していればよい。
更生管の下側部とは、更生管の高さ方向の中間より下側の部分を云う。
【0008】
前記引抜容易化手段が、前記支保材における前記上側部分に被せられた柔軟なシートを含むことが好ましい。
これによって、裏込め材と支保材との間にシートが介在されることで、裏込め材と支保材との接合が阻止される。したがって、裏込め材の硬化後、支保材を容易に下方へ引き抜くことができる。
【0009】
前記シートの一部が、前記貫通孔の内周面と前記支保材との間を通して前記更生管の内部に出ていることが好ましい。
これによって、シートが貫通孔の内周面と支保材との間に介在されることで、支保材と貫通孔の内周面との摩擦抵抗を低減でき、支保材の引き抜きを一層容易化できる。
また、支保材の引き抜き時、又は支保材を引き抜いた後で、シートの前記一部を下方へ引っ張ることで、シートを貫通孔から更生管の内側へ簡単に取出して除去できる。
【0010】
前記引抜容易化手段が、前記支保材における前記上側部分に被覆された離型剤を含むことが好ましい。
離型剤によって、裏込め材と支保材との接合を阻止したり解除を容易化したりできる。
離型剤としては、グリス、潤滑油などが挙げられる。
【0011】
前記支保材における前記上側部分が、上端へ向かって縮径するテーパ部となっていることが好ましい。
これによって、裏込め材の硬化後、裏込め材と支保材との接合を解除しやすくなり、支保材を簡単に下方へ引き抜くことができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る支保装置によれば、更生管の頂部を貫通して既設管の頂部に突き当てられた支保材を、裏込め材の硬化後に容易に引き抜いて撤去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施形態に係る支保装置を用いて更生施工中の既設管を、裏込め材の養生時の状態で示す正面断面図である。
【
図2】
図2(a)は、前記支保装置の支保材を更生管の貫通孔に通す前の状態を示す正面断面図である。
図2(b)は、前記支保材を既設管の頂部に突き当てた状態を示す正面断面図である。
図2(c)は、裏込め材の硬化後、前記支保材を下方へ引き抜く状態を示す正面断面図である。
図2(d)は、さらにシートを撤去する状態を示す正面断面図である。
【
図3】
図3は、本発明の第2実施形態に係る支保装置を用いて更生施工中の既設管を、裏込め材の養生時の状態で示す正面断面図である。
【
図4】
図4は、本発明の第3実施形態に係る支保装置を用いて更生施工中の既設管を、裏込め材の養生時の状態で示す正面断面図である。
【
図5】
図5は、
図4の円部Vにおける支保材の上側部分の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面にしたがって説明する。
<第1実施形態>
図1及び
図2は、本発明の第1実施形態を示したものである。
図1に示すように、更生対象の既設管1は、老朽化した下水道管である。なお、既設管1は、下水道管に限られず、上水道管、農業用水管、水力発電導水管、ガス管等であってもよい。
既設管1の内周に沿って更生管3がライニングされることで、既設管1が更生される。
【0015】
詳細な図示は省略するが、更生管3は、例えば帯状部材(プロファイル)によって構成されている。該帯状部材が螺旋状に巻回されるとともに一周違いに隣接する縁どうしが接合されることによって、螺旋管状の更生管3が製管されている。
【0016】
更生管3と既設管1との間の管間隙間1dには裏込め材2が充填される。
充填に先立って、更生管3の内部に支保装置4が設置される。支保装置4は、支保本体10と、支保材20を備えている。支保本体10は、例えば八角形をなす環状のフレーム11と、複数の腹起し12を有している。環状のフレーム11が、更生管3の内周に沿っている。フレーム11の外周側部には周方向に間隔を置いて複数の腹起し12が配置されている。そのうち少なくとも1の腹起し12Bは、更生管3の底部(下側部)に設けられている。腹起し12は、更生管3の管軸方向(
図1において紙面直交方向)と平行に延びている。各腹起し12が、連結部材13を介してフレーム11に連結されている。
なお、フレーム11は、更生管3の管軸方向に離れて複数設置されている。各フレーム11から連結部材13が放射状に延び出ている。各腹起し12は、管軸方向に離れた複数の連結部材13に連結されて支持されている。
【0017】
連結部材13は、例えばねじ結合によってフレーム11と連結されており、フレーム11に対して径方向へ進退可能になっている。ひいては、腹起し12がフレーム11に対して径方向へ進退可能になっている。
【0018】
フレーム11の上部には、支保材20が鉛直に支持されている。支保材20は、鋼製の棒材または鋼管によって構成されている。支保材20の長さは、更生管3の半径より小さい。支保材20は、例えばねじ結合によってフレーム11と連結されており、フレーム11に対して昇降可能になっている。
図2に示すように、支保材20が下降位置にあるときは、支保材20の全体が更生管3の頂部よりも下方(更生管3の内側)に引っ込んでいる。
図1に示すように、支保材20が上昇位置にあるときは、支保材20の上端部が、更生管3の頂部に形成された貫通孔3cを貫通して既設管1の頂部に突き当てられている。
【0019】
図1に示すように、上昇位置にある支保材20における貫通孔3cより上側部分21には、柔軟なシート40(引抜容易化手段)が設けられている。シート40の材質は、軟質の樹脂でもよく、布切れでもよく、新聞紙などの紙であってもよい。シート40は、支保材20の上側部分21の上端面及び周側面に被さっている。シート20の端部(一部)は、貫通孔3cの内周面と支保材20との間を通して更生管3の内部に出ている。
【0020】
支保装置4は次のように使用される。
更生管3を既設管1の内周に沿って構築後、更生管3内に支保装置4を設置する。更生管3の頂部には予め貫通穴3cを形成しておく。
各連結部材13をフレーム11に対して径方向外側へ前進させることで、各腹起し12を更生管3の内周面に押し当てる。
図2(a)に示すように、支保材20にはシート40を被せる。
図2(b)に示すように、該支保材20をフレーム11に対して上昇させることで、上側部分21を貫通孔3cに通して既設管1の頂部に突き当てる。これによって、上下に突っ張り力が生じ、更生管3の底部が既設管1の底部に押し付けられる。
支保材20の外周面と貫通孔3cの内周面との間の隙間は、シート40によって塞ぐことで、容易に封止できる。
【0021】
その後、
図1に示すように、管間隙間1dにセメントミルクやモルタルなどの裏込め材2を充填する。このとき更生管3は外周側から裏込め材2の注入圧を受ける。これに対して、支保装置4の腹起し12が更生管3を内側から押さえることで、更生管3が断面変形するのを防止でき、ひいては更生管3が座屈するのを防止できる。
さらに更生管3は裏込め材2から浮力を受ける。一方、支保装置4の底部腹起し12Bやその他の腹起し12と支保材20とで上下に突っ張ることで、更生管3が前記浮力によって浮き上がるのを防止できる。これによって、更生管3の底部が既設管1の底部に押し付けられた状態に維持される。この結果、更生管3の流下勾配を既設管1の底部の流下勾配に合わせることができる。
支保装置4は、更生管3の断面形状保持機能及び浮上防止機能を担う。
【0022】
裏込め材2はシート40にくっ付く。一方、裏込め材2と支保材20との間にはシート40が介在されるために、裏込め材2と支保材20との接合が阻止される。
シート40は、裏込め材2と支保材との接合を阻止する引抜容易化手段を構成している。
支保材20が上端開口の管である場合、シート40によって前記上端開口を覆うことで、裏込め材2が前記上端開口から支保材20の内部に流入するのを防止できる。
【0023】
図2(c)に示すように、裏込め材2の養生、硬化後、支保材20を下降させて、上側部分21を貫通孔3cから下方へ引き抜く。支保材20は、裏込め材2とは接合されていないため、簡単に引き抜くことができる。また、貫通孔3cの内周面と支保材20との間にシート40が介在されることで、支保材20と貫通孔3cの内周面との間の摩擦を低減でき、支保材20の引き抜きを一層容易化できる。
その後、
図2(d)に示すように、シート40の端部を掴んで下方へ引っ張る。これによって、シート40を貫通孔3cから更生管3の内側へ簡単に引き抜いて除去できる。支保材20の引き抜きと同時にシートを除去してもよい。
支保材20及びシート40の引き抜き後の貫通孔3cは、プラグ(図示せず)を嵌めて塞ぐ。
さらに腹起し12を径方向内側へ引っ込ませることで、支保装置4を更生管から解放できる。その後、支保装置4を分解して撤去したり、次の施工スパンへ移設したりする。
【0024】
次に、本発明の他の実施形態を説明する。以下の実施形態において既述の形態と重複する構成に関しては、図面に同一符号を付して説明を省略する。
<第2実施形態>
図3は、本発明の第2実施形態を示したものである。
第2実施形態においては、更生管3Bが高剛性である。すなわち、充填時の裏込め材2からの圧力で座屈しない程度の剛性を有している。具体的には、詳細な図示は省略するが、螺旋管状の更生管3Bとなる帯状部材(プロファイル)が、ポリ塩化ビニルなどの合成樹脂からなる主帯材と、スチールなどの金属からなる補強帯材を有しており、補強帯材によって帯状部材ひいては更生管3Bの剛性が高められている。補強帯材は、合成樹脂製の主帯材の裏側部(製管されたとき外周側を向く側部)のリブ間に嵌め込まれていてもよく、主帯材のリブ等の内部に埋め込まれていてもよい。
【0025】
第2実施形態の支保装置4Bは、底部腹起し12Bと、支保材20Bと、ジャッキ30(突張力付与手段)を備えている。
支保材20Bは、例えば円筒形の鋼管によって構成されている。支保材20Bの長さは、更生管3Bの半径より大きく、かつ更生管3Bの直径より少し小さい。該支保材20Bが、底部腹起し12B上に鉛直に立設され、柱状の支保を構成している。支保材20Bの上端部は、更生管3Bの頂部の貫通穴3cを貫通している。支保材20Bの少なくとも上端部は貫通孔3cより少し小径である。
【0026】
支保材20Bと底部腹起し12Bとの間にジャッキ30が介在されている。ジャッキ30は、ベース部材31と、軸部材32と、昇降部材33とを有している。ベース部材31は、断面コ字状に形成され、底部腹起し12Bに被さるとともに、該底部腹起し12Bの両側面に宛がわれることによって、底部腹起し12Bに回転不能に係止されている。
【0027】
ベース部材31には雄ネジ状の軸部材32が鉛直に立設されている。軸部材32にナット状の昇降部材33が螺合されている。昇降部材33は、回転されることで軸部材32に沿って昇降される。昇降部材33には、回転操作用の取っ手34が設けられている。
支保材20Bの下端が昇降部材33に突き当てられている。ひいては、支保材20Bの下端が、ジャッキ30を介して底部腹起し12Bに突き当てられている。
昇降部材33の昇降に伴って支保材20Bが昇降される。ジャッキ30及び底部腹起し12Bによって、支保材20Bを昇降可能に保持する支保本体10Bが構成されている。
【0028】
支保装置4Bは次のように使用される。
更生管3Bを既設管1の内周に沿って構築後、更生管3B内の底部に支保装置4Bを設置する。
該底部腹起し12B上にジャッキ30を介して支保材20Bを立設する。詳しくは、まずジャッキ30のコ字状のベース部材31を底部腹起し12Bに載せる。
好ましくは、昇降部材33は下降させておく。該昇降部材33に支保材20Bの下端部を載せる。
支保材20Bの上側部分21にはシート40を被せる。
更生管3Bの頂部には予め貫通穴3cを形成しておく。
【0029】
更に、取っ手34で昇降部材33を上昇方向へ回すことで、支保材20Bを上昇させる。これによって、
図3に示すように、支保材20Bの上側部分21及びシート40を貫通穴3cから管間隙間1dに挿し入れ、支保材20Bの上端部をシート40を介して既設管1の頂部に突き当てる。ベース部材31が底部腹起し12Bの回転不能に係止されているために、昇降部材33を回す際にベース部材31が回転することが無く、昇降操作を安定的に行なうことができる。また、支保材20Bの直径を貫通孔3cより小径にしておくことによって、支保材20Bの上側部分21を貫通孔3cに簡単に通すことができる。つまり、支保材20Bを高剛性の更生管3Bの貫通孔3cに圧入する必要が無い。
【0030】
更に昇降部材33を締め付けることで、支保材20Bを既設管1の頂部と底部腹起し12Bとの間で突っ張らせる。すなわち、ジャッキ30(突張力付与手段)によって支保材20Bに突っ張り力を付与する。この突っ張り力によって、更生管3Bの底部が既設管1の底部に押し付けられる。
その後、管間隙間1dにセメントミルクやモルタルなどの裏込め材を充填する。このとき、更生管3Bは裏込め材から浮力を受ける。一方、支保材20Bを突っ張らせておくことで、更生管3Bが前記浮力によって浮き上がるのを防止できる。
また、更生管3Bは裏込め材の注入圧を受ける。一方、更生管3Bは、高剛性であるために前記注入圧で座屈することがない。したがって、前記注入圧に対抗する機構を別途設けたり、支保装置4Bに付加したりする必要がない。
【0031】
第2実施形態の支保装置4Bは、更生管3Bの浮上防止機能を有していればよく、更生管3Bの断面保持機能を有している必要がない。このため、支保装置4Bは、構造が簡素であり容易に短時間で設置でき、設置作業性が良好である。ジャッキ30は人力で操作でき、駆動源や特殊な治具無しで、支保材20Bの昇降及び突っ張り操作を行なうことができる。
【0032】
裏込め材の養生、硬化後、昇降部材33を下降するように回し、支保材20Bを下降させて、支保材20Bの上側部分21を貫通孔3cから下方へ引き抜く。これによって、支保材20Bを更生管3Bから解放できる。その後、支保装置4Bを分解して撤去したり、次の施工スパンへ移設したりできる。支保装置4Bは構造が簡素であるために、分解、撤去、移設が容易である。
【0033】
<第3実施形態>
図4及び
図5は、本発明の第3実施形態を示したものである。
図4に示すように、第3実施形態においては、第2実施形態(
図3)と同様の支保装置4Bにおける、支保材20Bの上側部分21にテーパ部21f(引抜容易化手段)が形成されている。テーパ部21fは、支保材20Bの上端へ向かって縮径されている。
工場での支保材20Bの製造時にテーパ部21fを形成してもよく、既設管1の更生施工現場においてストレートな単管などの先端部をグラインダーで削ったりハンマーで叩いて凹ませたりすることでテーパ部21fを形成してもよい。
【0034】
さらに、
図5に示すように、テーパ部21fを含む上側部分21の外周面は、離型剤43(引抜容易化手段)によって被覆されている。離型剤43としては、グリス、潤滑油などが用いられている。
【0035】
管間隙間1dに裏込め材2を充填すると、支保材20Bの表面の離型剤43が裏込め材2と接する。これによって、支保材20Bと裏込め材2とが接合されるのを阻止できる。或いは接合されたとしても簡単に剥離可能(接合解除可能)な状態になる。しかも、上側部分21をテーパ部21fとすることによって、裏込め材2の硬化後、裏込め材2と支保材20Bとの接合を一層解除しやすくなる。したがって、支保材20Bを簡単に下方へ引き抜くことができる。
【0036】
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の改変をなすことができる。
例えば、第3実施形態(
図4)を第1実施形態(
図1~
図2)と同様の支保装置4に適用してもよい。
第1、第2実施形態(
図1~
図3)において、支保材20,20Bの上側部分21に第3実施形態(
図4)と同様のテーパ部21fを形成し、かつ柔軟シート40を被せてもよい。
第1、第2実施形態(
図1~
図3)において、支保材20,20Bの上側部分21に第3実施形態(
図4)と同様の離型剤43を塗布し、かつ柔軟シート40を被せてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、例えば老朽化した下水道管の更生に適用できる。
【符号の説明】
【0038】
1 既設管
1d 管間隙間
2 裏込め材
3 更生管
3B 高剛性更生管
3c 貫通孔
4,4B 支保装置
10,10B 支保本体
11 フレーム
12 腹起し
12B 底部腹起し
20,20B 支保材
21 上側部分
21f テーパ部(引抜容易化手段)
30 ジャッキ(突張力付与手段)
40 シート(引抜容易化手段)
43 離型剤(引抜容易化手段)